(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 37/42 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
D06F37/42 A
(21)【出願番号】P 2020558342
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(86)【国際出願番号】 JP2019044816
(87)【国際公開番号】W WO2020105549
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2018218365
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】領家 英之
(72)【発明者】
【氏名】林 敬彦
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-303499(JP,A)
【文献】特開平03-141995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 37/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外槽の内部に水槽を配置し、前記水槽の内部に回転槽を配置した洗濯機であって、
前記水槽
の上面に取り付けられた少なくとも一つの測距センサを有し、
前記測距センサは、その測定方向が前記水槽の内周方向を向いており、
前記測距センサによって、前記測定方向における物体と前記測距センサとの距離を測定し、
前記測距センサの測定値に基づいて前記水槽の異常振動および/または前記回転槽からの洗濯物の飛び出しを検知し、前記水槽の異常振動および/または前記回転槽からの洗濯物の飛び出しが検知された場合に運転を停止することを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯機であって、
二つの前記測距センサを有しており、
前記二つの前記測距センサは、平面視において測定方向が互いに直交することを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
請求項
1に記載の洗濯機であって、
前記測距センサとは別の測距センサを有しており、前記別の測距センサは、その測定方向が前記水槽の外周方向を向いており、当該測距センサに最も近い位置にある前記外槽の内壁との距離を測定することを特徴とする洗濯機。
【請求項4】
外槽の内部に水槽を配置し、前記水槽の内部に回転槽を配置した洗濯機であって、
前記水槽の上面に取り付けられた少なくとも一つの測距センサを有し、
前記測距センサは
、その測定方向が前記水槽の内周方向を向いており、
前記回転槽からの洗濯物の飛び出しの検知、および/または前記外槽の内壁との距離を測定することを特徴とする洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水槽の異常振動を防止する安全装置を備えた洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯機における脱水時などには、回転槽内における洗濯物の偏りなどによって回転槽および水槽の揺れが大きくなり、異常振動が生じる場合がある。従来、このような異常振動を防止するため、水槽の揺れが規定量を超えた場合にこれを検知して、運転を停止させる安全装置が洗濯機において備えられている。
【0003】
特許文献1には、水槽の外側に機械式のスイッチレバーを設け、水槽の揺れが規定量を超えた場合に水槽がスイッチレバーと当接することで異常振動と判断する安全装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
機械式のスイッチレバーは、揺れの発生した水槽の外周側面に接触して異常振動を判断するものである。但し、機械式のスイッチレバーは、当然ながら初期位置から振動検知位置までの動作範囲を必要とするものであるため、ある程度の大きな変位が生じる揺れでないと検知できない。また、機械式のスイッチレバーは、洗濯機の経年使用において水槽との接触を繰り返すことによって、その取付位置が水槽に対して外周側に移動することもあり得る。スイッチレバーの取付位置がこのように移動すると、検知可能となる水槽の変位はさらに大きくなる(振動の検知精度が低くなる)。
【0006】
さらに、洗濯機の省スペース化を図るためには、水槽と外槽(洗濯機筐体)との間のスペースはできるだけ小さくすることが望ましい。水槽と外槽との間のスペースが小さいと、機械式のスイッチレバーを用いた安全装置では、水槽の異常振動が検知されて運転が停止される前に、揺れの発生した水槽が外槽に衝突し、大きな騒音が発生したり、場合によっては外槽に変形が生じたりする。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、水槽と外槽との衝突が生じる前に、確実に水槽の異常振動を検知することのできる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、外槽の内部に水槽を配置し、前記水槽の内部に回転槽を配置した洗濯機であって、前記水槽に取り付けられた少なくとも一つの測距センサを有し、前記測距センサによって、所定の方向における前記外槽の内壁と測距センサとの距離を測定し、前記測距センサの測定値に基づいて前記水槽の異常振動を検知し、前記水槽の異常振動が検知された場合に運転を停止することを特徴としている。
【0009】
上記の構成によれば、水槽に対して測距センサを取り付け、測距センサの測定値(外槽の内壁と測距センサとの距離)に基づいて水槽の異常振動が検知される。この場合、非接触で距離を測定する測距センサを用いることで、変位が小さい水槽の揺れも検知することができ、水槽と外槽との衝突が生じる前に確実に水槽の異常振動を検知し、水槽と外槽との衝突を防止することができる。また、非接触で距離を測定する測距センサは、基本的に外槽との接触が生じるものではない。そのため、測距センサの取付位置が洗濯機の経年使用において変化することはなく、高い検知精度を維持することができる。
【0010】
また、上記洗濯機は、二つの前記測距センサを有しており、前記二つの前記測距センサは、平面視において測定方向が互いに直交する構成とすることができる。
【0011】
上記の構成によれば、二つの測距センサによって直交する二方向において揺れの検知を行うことが可能となるため、水槽の揺れがどの方向に生じたとしても揺れを検知し、水槽の異常振動をより確実に防止することができる。
【0012】
また、上記洗濯機では、少なくとも一つの前記測距センサは、その測定方向が前記水槽の外周方向を向いており、当該測距センサに最も近い位置にある前記外槽の内壁との距離を測定する構成とすることができる。
【0013】
上記の構成によれば、測距センサによって測定される距離が短くなるため、測距センサとして三角測量タイプなどの安価なセンサを用いることができる。
【0014】
また、上記洗濯機では、少なくとも一つの前記測距センサは、前記水槽の上面に取り付けられており、かつ、その測定方向が前記水槽の内周方向を向いており、当該測距センサと最も離れた位置にある前記外槽の内壁との距離を測定する構成とすることができる。
【0015】
上記の構成によれば、測距センサによって水槽の異常振動を検知することに加え、回転槽からの洗濯物の飛び出しも検知できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の洗濯機は、非接触で距離を測定する測距センサを用いることで、変位が小さい水槽の揺れも検知することができ、水槽と外槽との衝突が生じる前に確実に水槽の異常振動を検知することができるといった効果を奏する。また、非接触で距離を測定する測距センサは、測距センサの取付位置が洗濯機の経年使用において変化することはなく、高い検知精度を維持することができるといった効果を併せて奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態1に係る洗濯機の概略構成を示す図であり、(a)は洗濯機を側面側から見た模式断面図、(b)は洗濯機を正面側から見た模式断面図、(c)は洗濯機の内部を上面側から見た模式図である。
【
図2】実施の形態1の洗濯機における測距センサの測定方向を示す図であり、洗濯機の内部を上面側から見た模式図である。
【
図3】実施の形態1の洗濯機の変形例を示す図であり、(a)は洗濯機を正面側から見た模式断面図、(b)は洗濯機の内部を上面側から見た模式図である。
【
図4】実施の形態2に係る洗濯機の概略構成を示す図であり、洗濯機の内部を上面側から見た模式図である。
【
図5】実施の形態3に係る洗濯機の概略構成を示す図であり、洗濯機の内部を上面側から見た模式図である。
【
図6】(a)~(d)は、実施の形態3に係る洗濯機において回転槽から洗濯物が飛び出した状態を示す図であり、洗濯機の内部を上面側から見た模式図である。
【
図7】実施の形態3に係る洗濯機における測距センサの形状例を示す図であり、水槽上部を側面側から見た模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態1に係る洗濯機10の概略構成を示す図であり、(a)は洗濯機10を側面側から見た模式断面図、(b)は洗濯機10を正面側から見た模式断面図、(c)は洗濯機10の内部(蓋部16を外した状態)を上面側から見た模式図である。
【0019】
洗濯機10は、洗濯機筐体である外槽11の内部に水槽12を配置し、水槽12の内部に回転槽13を配置した構成となっている。水槽12は洗濯や脱水時に水を貯めたり回転槽13から排出される水を受けたりする槽である。回転槽13は、洗濯時には洗濯槽、脱水時には脱水槽として機能するものであり、水槽12の内部で回転可能に設けられている。
【0020】
水槽12の上面には、リング状の水槽カバー121が設けられている。また、回転槽13の上縁部には、回転槽13を安定して回転させるためのリング状のバランサー14が取り付けられている。洗濯機10の上部には、開閉可能な蓋部16が設けられている。
【0021】
洗濯機10において、脱水運転時などに回転槽13を回転させると、回転槽13内の洗濯物の偏り具合によっては、回転槽13および水槽12において揺れが発生する。この揺れが大きくなると、水槽12が外槽11の内壁に衝突する虞のある異常振動となる。このため、洗濯機10は、このような異常振動を検知し、異常振動が検知された場合には運転を停止する(回転槽13の回転を停止する)安全装置を備えている。
【0022】
本実施の形態1に係る洗濯機10は、安全装置の主要素として水槽12の外周側面に測距センサ15を有している。すなわち、洗濯機10における安全装置は、測距センサ15と、測距センサ15の測定値に基づいて異常振動を検知し、異常振動の検知時に洗濯機10の運転を停止させる制御部(図示せず)とによって構成される。測距センサ15は、
図2に示すように、その測定方向(図中矢印A)が水槽12の外周方向を向いている。より具体的には、測距センサ15は、外槽11における何れかの内壁と対向する位置に設けられており、測距センサ15に最も近い位置にある内壁111との距離L1を測定するようになっている。
【0023】
洗濯機10は、測距センサ15の測定値(測距センサ15と外槽11における内壁111との距離L1)に基づいて水槽12の異常振動を検知し、水槽12の異常振動が検知された場合に運転を停止する。尚、測距センサ15によって測定される距離L1に基づいて異常振動を検知する具体的方法については、本発明において特に限定されるものではないが、以下に二つの方法を例示する。
【0024】
(第1の例)
水槽12に揺れが発生すると、測距センサ15の測定値、すなわち距離L1が振動する。第1の例では、距離L1を所定の閾値Lth1と比較し、距離L1が閾値Lth1よりも小さい値となった場合に異常振動を検知する。この場合の閾値Lth1は、水槽12が外槽11の内壁111に近づきすぎた状態となる距離である。第1の例では、測距センサ15の測定値である距離L1をそのまま閾値Lth1と比較するため、判定を行う制御部における負荷が小さくなる。
【0025】
(第2の例)
第2の例では、距離L1が入力される制御部において、振動する距離L1の最大値Lmaxと最小値Lminとの差分値を水槽12の振動幅Lwとして算出する。そして、算出した振動幅Lwを所定の閾値Lth2と比較し、振動幅Lwが閾値Lth2よりも大きい値となった場合に異常振動を検知する。第2の例では、制御部において振動幅Lwを算出する演算処理が必要となるが、振動中心から両側への変位に基づいて検知を行うことができるため、検知精度が高くなる。
【0026】
尚、洗濯機10における水槽12の揺れは、主に回転槽13内の洗濯物の偏りによって発生するものであるが、回転槽13の回転開始に洗濯物の偏りがあっても、ある程度回転が続くことによってその偏りが均されて水槽12の揺れが小さくなることもある。このため、第1の例では、距離L1が閾値Lth1よりも小さい値となった時点で直ちに異常振動を検知するのではなく、距離L1が閾値Lth1よりも小さい値となった状態が規定回数以上検出された場合に異常振動を検知してもよい。同様に、第2の例では、振動幅Lwが閾値Lth2よりも大きい値となった状態が規定回数以上検出された場合に異常振動を検知してもよい。
【0027】
以上のように、本実施の形態1に係る洗濯機10は、水槽12に対して測距センサ15を取り付け、測距センサ15によって所定の方向における外槽11の内壁と測距センサ15との距離L1を測定し、測距センサ15の測定値に基づいて水槽12の異常振動を検知するものである。非接触で距離を測定する測距センサ15を用いることで、洗濯機10では、変位が小さい水槽12の揺れも検知することができる。したがって、洗濯機10は、水槽12と外槽11との衝突が生じる前に確実に水槽12の異常振動を検知し、水槽12と外槽11との衝突を防止することができる。
【0028】
また、非接触で距離を測定する測距センサ15は、基本的に外槽11との接触が生じるものではない。そのため、測距センサ15の取付位置が洗濯機10の経年使用において変化することはなく、高い検知精度を維持することができる。
【0029】
さらに、測距センサ15の測定方向が水槽12の外周方向を向いており、測距センサ15は最も近い位置にある内壁111との距離L1を測定するものであるため、測定される距離L1は短い距離となる。この場合、測距センサ15には、三角測量タイプなどの安価なセンサを用いることができる。無論、測距センサ15に使用するセンサの種類は特に限定されるものではなく、超音波センサやレーザセンサなども使用可能である。
【0030】
図1に示した洗濯機10において、測距センサ15は水槽12の外周側面に取り付けられる構成を例示した。しかしながら、実施の形態1に係る洗濯機10において、測距センサ15の取付箇所はこれに限定されるものではない。例えば、測距センサ15は、
図3に示すように、水槽12の上面(すなわち水槽カバー121の上面)に取り付けられていてもよい。
【0031】
〔実施の形態2〕
図4は、本実施の形態2に係る洗濯機10Aの概略構成を示す図であり、洗濯機10Aの内部(蓋部16を外した状態)を上面側から見た模式図である。
【0032】
本実施の形態2に係る洗濯機10Aは、水槽12に対して二つの測距センサ15a,15bを備えており、測距センサ15a,15bは水槽12の外周方向に沿って互いに90°離れて取り付けられている。また、測距センサ15a,15bのそれぞれは、実施の形態1における測距センサ15と同様、その測定方向が水槽12の外周方向を向いている。そのため、測距センサ15aは
図4に示す内壁111との距離を測定し、測距センサ15bは内壁112との距離を測定する。
【0033】
そして、測距センサ15a,15bが水槽12の外周方向に沿って互いに90°離れて取り付けられていることから、二つの測距センサ15a,15bの測定方向は、平面視において互いに直交する。具体的には、測距センサ15aは水槽12における左右方向の揺れを検知することができ、測距センサ15bは水槽12における前後方向の揺れを検知することができる。
【0034】
洗濯機10Aは、測距センサ15a,15bの何れかで異常振動が検知された場合に運転を停止する(回転槽13の回転を停止する)ようになっている。
【0035】
このように、本実施の形態2に係る洗濯機10Aにおいて、二つの測距センサ15a,15bを備え、二方向の揺れを検知するようにした理由は以下の通りである。
【0036】
脱水運転時などに発生する水槽12の揺れは、主に、回転槽13内の洗濯物に偏りがある場合に回転槽13の遠心力によって生じるものである。しかしながら、水槽12に取り付けられる駆動部や排水ホースなどの機構の影響や洗濯機10Aの設置面の傾きなどにより、水槽12の揺れは全方位に均等に発生するとは限らず、ある一方向の揺れが他方向の揺れよりも大きくなることもある。例えば、前後方向の揺れが左右方向の揺れよりも大きくなることもある。
【0037】
実施の形態1における一つの測距センサ15のみでは、左右方向の揺れは検知できるものの、前後方向の揺れは検知できず、水槽12の揺れが前後方向において大きく生じた場合には、適切に運転を停止することができず、水槽12の異常振動が生じることも起こりうる。
【0038】
これに対し、本実施の形態2に係る洗濯機10Aは、二つの測距センサ15a,15bを備え、直交する二方向において揺れの検知を行うことが可能となっている。このため、水槽12の揺れがどの方向に生じたとしても、これを検知し、水槽12の異常振動をより確実に防止することができる。
【0039】
尚、本実施の形態2に係る洗濯機10Aは、直交する二方向において揺れの検知を行うに当たって、一方の方向の揺れ検知のみに測距センサを用い、他方の方向の揺れ検知には、従来の安全装置で用いられていた機械式のスイッチレバーを用いてもよい。この場合、従来設計の洗濯機に一つの測距センサを加えることで対応でき、洗濯機の設計変更が容易となる。この場合は、水槽12と外槽11との距離が比較的大きい方向には従来の機械式センサを用い、水槽12と外槽11との距離が比較的小さい方向には高い検知精度を有する測距センサを用いることが好ましい。
【0040】
〔実施の形態3〕
図5は、本実施の形態3に係る洗濯機10Bの概略構成を示す図であり、洗濯機10Bの内部(蓋部16を外した状態)を上面側から見た模式図である。
【0041】
本実施の形態3に係る洗濯機10Bは、水槽12の上面(すなわち水槽カバー121の上面)に測距センサ15を有している。測距センサ15は、
図5に示すように、その測定方向(図中矢印B)が水槽12の内周方向を向いている。これにより、測距センサ15は、測距センサ15から最も離れた位置にある内壁113との距離L2を測定するようになっている。
【0042】
洗濯機10Bの測距センサ15によって測定される距離L2は、実施の形態1における距離L1よりも長い距離ではあるが、水槽12に揺れに応じて変位が生じることは距離L1と同様である。このため、本実施の形態3に係る洗濯機10Bは、測距センサ15によって測定される距離L2に基づいて、実施の形態1と同様の原理により水槽12の異常振動を検知することができる。
【0043】
さらに、本実施の形態3に係る洗濯機10Bは、測距センサ15によって、回転槽13からの洗濯物の飛び出しも検知できるといった利点がある。一般の洗濯機において、洗濯または脱水運転の開始時などに回転槽から洗濯物が飛び出し、飛び出した洗濯物の一部が水槽カバーの上面に載ることがある。このような洗濯物の飛び出しは、特に水槽の揺れを増大させるものではないので、水槽の揺れを検知する従来の安全装置では検知できない。しかしながら、洗濯物が回転槽から飛び出した状態で洗濯機の運転を続けると、飛び出した洗濯物に損傷が生じるであろうことは容易に想像できる。したがって、回転槽からの洗濯物の飛び出しが生じた場合には、これを検知して運転を停止することが望ましい。
【0044】
本実施の形態3に係る洗濯機10Bでは、測距センサ15の測定方向が水槽12の内周方向を向いている。このため、
図6(a),(c)に示すように、飛び出した洗濯物LDが測距センサ15の測定方向側にある時には、測距センサ15は洗濯物LDまでの距離を測定することになり、その測定値が著しく短くなる。これにより、洗濯機10Bは、測距センサ15によって回転槽13からの洗濯物の飛び出しを検知でき、これを検知した場合に運転を停止することができる。
【0045】
尚、
図6(b),(d)に示すように、飛び出した洗濯物LDが測距センサ15の測定方向側にない時には、この時点で回転槽13からの洗濯物の飛び出しは検知できない。但し、この場合も、飛び出した洗濯物LDは回転槽13の回転につられて水槽カバー121の上面を移動し、やがては
図6(a),(c)に示す状態に至る。したがって、回転槽13から洗濯物が飛び出した状態で長時間の運転が続くことを防止することができる。
【0046】
また、本実施の形態3に係る洗濯機10Bでは、測距センサ15は、水槽カバー121の上面に配置される。この場合、測距センサ15は、
図7に示すように、測距センサ15の配置箇所における回転槽13の回転方向(図中矢印C)の上流側が傾斜したカバーによって覆われていることが好ましい。これにより、飛び出した洗濯物LDが測距センサ15に引っ掛かることを防止できる。
【0047】
上記実施の形態1~3では、本発明を縦型洗濯機または縦型洗濯乾燥機において適用した場合を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ドラム式の洗濯機や乾燥機にも適用可能である。
【0048】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0049】
〔援用の記載〕
本国際出願は、2018年11月21日に日本特許庁に出願された日本国特許出願第2018-218365号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2018-218365号の全内容を参照により本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0050】
10,10A,10B 洗濯機
11 外槽
111,112,113 内壁
12 水槽
121 水槽カバー
13 回転槽
14 バランサー
15,15a,15b 測距センサ
16 蓋部