(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】配列決定の間のアンラベル化ヌクレオチドによるフェージング減少
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20240823BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
(21)【出願番号】P 2020572430
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2019083175
(87)【国際公開番号】W WO2020120179
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-08-26
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502279294
【氏名又は名称】イルミナ ケンブリッジ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】ピエトロ ガッティ ラフランコーニ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ボールディング
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0044715(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0137091(US,A1)
【文献】ACCOUNTS OF CHEMICAL RESEARCH,2010年,Vol.43, No.4,pp551-563
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/6869
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヌクレオチド配列決定方法であって、以下:
(a)同じヌクレオチド配列を有する多様な鋳型ポリヌクレオチド鎖がフローセルの表面に結合する部位を含むフローセルに、第一の鎖伸長酵素およびブロック化、ラベル化ヌクレオチドの混合物を導入する工程であって、第一の鎖伸長酵素は、コピーポリヌクレオチド鎖が対応する鋳型鎖の配列に基づいて適切な一のブロック化、ラベル化ヌクレオチドをコピーポリヌクレオチド鎖中に組み込むように構成される、工程;
(b)組み込まれていないブロック化、ラベル化ヌクレオチドをフローセルから洗い流す工程;
(c)組み込まれていないブロック化、ラベル化ヌクレオチドのフローセルからの洗い流しの間またはその後ブロック化、アンラベル化ヌクレオチドの混合物を含む組成物をフローセルに導入する工程であって、ブロック化、アンラベル化ヌクレオチドの混合物のうちのあるブロック化、アンラベル化ヌクレオチドは、コピーポリヌクレオチド鎖が対応する鋳型鎖の配列に基づいてコピーポリヌクレオチド鎖中への組込みに利用可能であり、ただし、コピー鎖における以前に組み込まれたヌクレオチドは、もしあれば、ブロック化されない、工程
;
(d)コピー鎖中に組み込まれた一のブロック化、ラベル化ヌクレオチドの同一性を検出する工程であって、もしあれば、その一方でブロック化、アンラベル化ヌクレオチドの混合物はフローセルと共にインキュベーションされる、工程
;および
(e)ラベルおよびブロッキングモイエティをコピー鎖中に組み込まれた任意の第一のラベル化、ブロック化ヌクレオチドから除去し、およびブロッキングモイエティをコピー鎖中に組み込まれた任意の第二のブロック化、アンラベル化ヌクレオチドから除去する工程
をこの順序で含
み、
ステップ(a)~(d)を繰り返すことをさらに含む、
方法。
【請求項2】
ブロック化、アンラベル化ヌクレオチドの混合物を含む組成物は、組み込まれていないブロック化、ラベル化ヌクレオチドのフローセルからの洗い流し後フローセルに導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
組み込まれていないブロック化、ラベル化ヌクレオチドをフローセルから洗い流す工程は、ブロック化、アンラベル化ヌクレオチドの混合物を含む組成物をフローセルに導入することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ブロック化、アンラベル化ヌクレオチドの混合物のうちのあるブロック化、アンラベル化ヌクレオチドは、コピー鎖中に組み込まれた第一のブロック化、ラベル化ヌクレオチドの同一性が検出されるときコピーポリヌクレオチド鎖中への組込みに利用可能である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
コピー鎖中に組み込まれた第一のブロック化、ラベル化ヌクレオチドの同一性を検出することには、フローセルの画像化を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
コピー鎖中に組み込まれた第一のブロック化、ラベル化ヌクレオチドの同一性を検出する工程は、120秒またはそれよりも短い期間にわたって生じる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
コピー鎖中に組み込まれた第一のブロック化、ラベル化ヌクレオチドの同一性を検出する工程は、10秒またはそれよりも長い期間にわたって生じる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第一の鎖伸長酵素およびブロック化、ラベル化ヌクレオチドの混合物は、組み込まれていないブロック化、ラベル化ヌクレオチドをフローセルから洗い流すことに先立ってフローセルと共に15秒またはそれよりも短い間インキュベーションされる、請求項1~
7のいずれか
一項に記載の方法。
【請求項9】
第一の鎖伸長酵素およびブロック化、ラベル化ヌクレオチドの混合物は、組み込まれていないブロック化、ラベル化ヌクレオチドをフローセルから洗い流すことに先立ってフローセルと共に10秒またはそれよりも短い間インキュベーションされる、請求項1~
7のいずれか
一項に記載の方法。
【請求項10】
第一の鎖伸長酵素およびブロック化、ラベル化ヌクレオチドの混合物は、組み込まれていないブロック化、ラベル化ヌクレオチドをフローセルから洗い流すことに先立ってフローセルと共に7.5秒またはそれよりも短い間インキュベーションされる、請求項1~
7のいずれか
一項に記載の方法。
【請求項11】
ブロック化、アンラベル化ヌクレオチドの混合物を含む組成物は、コピーポリヌクレオチド鎖が対応する鋳型鎖の配列に基づき、適切な一のブロック化、アンラベル化ヌクレオチドがコピーポリヌクレオチド鎖中に組み込まれるように構成される第二の鎖伸長酵素を含み、ただし、コピー鎖において以前に組み込まれたヌクレオチドは、もしあれば、ブロックされない、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第一の鎖伸長酵素および第二の鎖伸長酵素は、同じ酵素または異なる酵素である、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
ブロック化、アンラベル化ヌクレオチドの混合物を含む組成物は、9~9.5のpHを有し、および緩衝剤、洗浄剤、硫酸マグネシウム、EDTA、および抗酸化剤を含む、請求項1~
12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特に、ポリヌクレオチドの配列決定に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳型ポリヌクレオチド鎖の配列決定は反応の多様なサイクルを通して生じ得、それによってサイクル毎に一の検出可能なヌクレオチドがコピー鎖中に組み込まれる。検出可能なヌクレオチドは、サイクル毎に一よりも多くの検出可能なヌクレオチドの組込みを防ぐために典型的にブロックされる。インキュベーション時間の後、組み込まれていない検出可能なヌクレオチドを除去するために洗浄ステップが典型的に実行される。次いで検出ステップが、そこではコピー鎖中に組み込まれた検出可能なヌクレオチドの同一性が決定されるが、実行され得る。次に、アンブロッキングステップおよび開裂またはマスキングステップが実行され、そこではブロッキング剤がコピー鎖において最後に組み込まれたヌクレオチドから除去され、および検出可能なモイエティがコピー鎖に組み込まれた最後のヌクレオチドから開裂され、またはその上をマスキングされる。いくらかの事例では、検出可能なモイエティはブロッキング剤として機能し、および検出可能なモイエティの除去はブロッキング剤を除去し得る。次いでサイクルは組込みステップにおいて検出可能なヌクレオチドを導入することによって繰り返される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
多くの場合、同じ配列を有する鋳型ポリヌクレオチド鎖のクラスターは同時に配列決定される。クラスターはコピー鎖中に組み込まれた検出可能なヌクレオチドによって生成される信号を増幅するのに役立つ。クラスターは、同じ配列の多様な鋳型鎖を含むため、ヌクレオチド追加の各ラウンドにて対応するコピー鎖中に組み込まれたヌクレオチドは同じである必要があり、および検出可能なヌクレオチドからの信号はクラスターにおいて鋳型鎖のコピーの数に比例して増強される必要がある。
【0004】
ポリヌクレオチドの配列決定の最近の目標は、高い忠実度を維持しながら配列決定を完了する時間を短くすることである。短縮した配列決定時間を達する一つの手段は組込みステップの期間を短かくすることによってサイクル時間を減らすことである。若干のより一層効率的なポリメラーゼおよび修飾されたヌクレオチドがヌクレオチドのコピー鎖へのより一層効率的な組込みを提供するために開発されてきた。しかしながら、組込みステップは依然として配列決定されているすべての鋳型鎖にわたるヌクレオチドの不完全な組込みに悩まされがちである。
【0005】
組込みステップの間、同じ配列を有する多様な鋳型鎖を含むクラスターにおいて、コピー鎖中にヌクレオチドが組み込まれていないとき、ヌクレオチドが組み込まれていないコピー鎖は、組込みステップの間にヌクレオチドが組み込まれるところのそれらのコピー鎖とアウトオブフェーズと言われる。アウトオブフェーズであるコピー鎖の数は更なるサイクルと共に増加するので、クラスターからの信号はイン-フェーズのコピー鎖中に組み込まれたヌクレオチドを決定するためにはあまりに不均一すぎることがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
本開示は特に、フェージングを低減しながら、ラベル化ヌクレオチドの組込みのための短いサイクル時間を可能にするポリヌクレオチド配列決定法を記載する。方法は、以前に加えられたラベル化ヌクレオチドの同一性が検出されているとき、アンラベル化ヌクレオチドと、同じ配列を有する鋳型ポリヌクレオチド鎖のクラスターとをインキュベーションすることを含む。検出ステップはコピー鎖中に組み込まれるアンラベル化ヌクレオチドの追加のための時間を提供し、そこでは以前に加えられたラベル化ヌクレオチドは組み込まれるようにされなかった。それゆえに、検出ステップの終わりに、コピー鎖のすべてまたはほとんどがインフェーズにあり、および次に起こる一体化ステップにおいて適切なラベル化ヌクレオチドを組み込む用意ができている。
【0007】
いくらかの実施態様において、ポリヌクレオチド配列決定法は、同じヌクレオチド配列を有する多様な鋳型ポリヌクレオチド鎖をフローセルの表面に結合する部位を含むフローセルに、鎖伸長酵素およびブロック化、ラベル化ヌクレオチドの混合物を導入することを含む。鎖伸長酵素はコピーポリヌクレオチド鎖が対応する鋳型鎖の配列に基づいて適切な一のブロック化、ラベル化ヌクレオチドをコピーポリヌクレオチド鎖中に組み込むように構成される。方法は、組み込まれていないブロック化、ラベル化ヌクレオチドをフローセルから洗い流すこと、および組み込まれていないブロック化、ラベル化ヌクレオチドをフローセルからの洗い流しの間またはその後ブロック化、アンラベル化ヌクレオチドの混合物を含む組成物をフローセルに導入することをさらに含む。ブロック化、アンラベル化ヌクレオチドの混合物のあるブロック化、アンラベル化ヌクレオチドはコピーポリヌクレオチド鎖が対応する鋳型鎖の配列に基づいてコピーポリヌクレオチド鎖への組込みに利用可能であり、ただし、コピー鎖における以前に組み込まれたヌクレオチドは、もしあれば、ブロックされない。方法にはまた、コピー鎖中に組み込まれた一のブロック化、ラベル化ヌクレオチドの同一性を検出することを含み、もしあれば、その一方でブロック化、アンラベル化ヌクレオチドの混合物はフローセルと共にインキュベーションされる。
【0008】
次いで、ラベルおよびブロックはコピー鎖中に組み込まれたブロック化、ラベル化ヌクレオチドから除去され得、およびブロックはブロック化、アンラベル化ヌクレオチドから除去され得、もしあれば、コピー鎖中に組み込まれる。プロセスは次いで、あらかじめ定めるサイクルの数の間、または配列決定が完了するまで繰り返され得る。
【0009】
一またはそれよりも多くの実施形態の詳細は添付の図面および以下の説明に記載する。他の特徴、目的、および利益は説明および図面から、および請求の範囲から明らかであろう。
【0010】
前述の包括的な説明および以下の詳細な説明の双方は本開示の主題の実施形態を提示し、および本開示の主題の性質および特質をそれがクレームされるように理解されるための概観または枠組みを提供することを意図するということが理解される。添付する図面は本開示の主題のさらなる理解を提供するために含まれ、およびこの明細中に組み込まれ、およびその一部分を構成する。図面は本開示の主題の様々な実施形態を例示し、および説明と一緒に本開示の主題の原理および働きを説明するのに役立つ。追加的に、図面および説明は単に例示を意図するものであり、およびいかなる意味でも請求の範囲の射程を制限ことは意図しない。
【0011】
本開示の特定の実施形態の以下の詳細な記載は以下の図面と併せて読むとき最も良好に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1~2はここに記載するシーケンス方法の実施形態を例示する流れ図である。
【
図3】ここに示す教示に従って採用され得るフローセルの実施形態の概略平面図である。
【
図4】4A~Gは走査(検出)ステップの間の配列決定の種々のサイクルおよびフェージングのための補償を例示する概略図である。
【
図5】フェージング(フェージング重量%)およびPhiXエラー率(ER/%)間の相関を例示するプロットであり、異なる組込み時間(46秒、23秒、および12秒)を伴うIllumina MiniSeq(商標)シーケンサーを使用する。
【
図6】配列決定の80サイクルにわたる累積的PhiXエラー率のプロットであり、そこではブロック化、アンラベル化ヌクレオチドは検出ステップの間に使用せず(標準スキャンミックス)、または使用したブロック化、アンラベル化ヌクレオチドを検出ステップの間に使用した(ScanAndFillミックス)。
【
図7】配列決定の40サイクルにわたるフェージング、プレフェージング、および%Q30率の棒グラフであり、そこではブロック化、アンラベル化ヌクレオチド(ScanAndFill)を検出ステップの間に追加のポリメラーゼ(Pol1671)と共にまたは追加のポリメラーゼなし(Polなし)で使用した。
【
図8】100サイクルの配列決定にわたり観察されたシグナル減衰(P90Red)のプロットであり、そこではブロック化、アンラベル化ヌクレオチド(S&F)を3mMアスコルビン酸塩の存在下および不存在下で検出ステップの間に使用したが、それはDNAを光学的スキャンによって生じる酸化的損傷から保護する。
【
図9】100サイクルの配列決定にわたって観察される累積PhiXエラー率(%Error(エラー)、%Q30-挿入図)のプロットであり、そこではブロック化、アンラベル化ヌクレオチド(S&F)は3mMのアスコルビン酸塩の存在および不存在下において検出ステップの間に使用した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概略図は必ずしも縮尺どおりではない。図において用いる同様の番号は同様の構成要素、ステップおよびその他同種類のものなどに言及する。しかしながら、与えられる図において構成要素に言及するための番号の使用は同じ番号によりラベル化される別の図における構成要素を制限することを意図していないことが理解されるであろう。加えて、構成要素に言及するための異なる番号の使用は異なる番号付けられた構成要素が他の番号付けられた構成要素と同じまたは類似することがないことを指し示すことを意図しない。
【0014】
(詳細な説明)
ここで、本開示の主題の種々の実施形態をより一層詳細に参照し、それらのいくらかの実施形態を添付の図面に例示する。
【0015】
ここで使用するすべての科学的および技術的用語は別なふうに明記しない限り、当技術において普通に使用される意味を有する。ここに提供する規定はここでしばしば使用される一定の用語の理解を容易にするためのものであり、および本開示の範囲を制限することを意味するものではない。
【0016】
ここで使用するように、単数形「a」、「an」および「the」は文脈が明らかに別なふうに示さない限り、複数の参照対象を含む。それゆえに、例えば、「鋳型(以下でテンプレートとも言う)ポリヌクレオチド配列」への言及は文脈が明らかに別なふうに指示しない限り、二またはそれよりも多く(以下で二以上とも言う)のそのような「テンプレートポリヌクレオチド配列」を有する例を含む。
【0017】
この明細および添付の請求の範囲において使用するように、「または」という用語は概して、内容が明確に別なふうに示さない限り、「および/または」を含むその意味において使用される。「および/または」という用語はリストされた要素の一またはすべて、あるいはリストされた要素の任意の二以上の組合せを意味する。「および/または」のいくらかの事例における使用は他の事例における「または」の使用が「および/または」を意味し得ることを暗示しない。
【0018】
ここで使用するように、「have(有する)」、「has」、「having(有すること)」、「include(含む)」、「includes」、「including(含むこと)」、「comprise(包含する)」、「comprises」、「comprising(包含すること)」またはその種の他のものなどはそれらのオープンエンドの包括的意味において使用され、および概して「include, but not limited to(制限されないが、含む)」、「includes, but not limited to」、または「including, but not limited to(制限されないが、含むこと)」を意味する。
【0019】
「Optional(随意の)」または「optionally(随意に)」は続いて説明する事象、状況、または構成要素が生じることができ、またはそうできないこと、および説明は、事象、状況、または構成要素が生じる事例およびそれがない事例を含む。
【0020】
「好ましい」および「好ましくは」という言葉は一定の状況下で一定の利益を供給し得る本開示の実施形態に言及する。しかしながら、他の実施形態もまた同じまたは他の状況下で好ましくてよい。さらに、一以上の好ましい実施形態の列挙は他の実施形態が有用でないことを意味するものではなく、および創意に富む技術の範囲から他の実施形態を除外することを意図しない。
【0021】
加えて、終点による数値範囲のここでの引用は、その範囲内に包摂されるすべての数値を含む(例は、1ないし5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5、などを含む)。値の範囲が「より大きい」、「より小さい」、などの特定の値である場合、その値は範囲内に含まれる。
【0022】
別なふうに明記しない限り、ここに記載の任意の方法は決してそのステップが特定の順序において実行されることを要求すると解釈されることを意図しない。したがって、方法クレームが実際にそのステップによって続けられる順序を引用しない場合、またはステップが特定の順序に制限されることが請求の範囲または説明において別なふうに具体的に述べられない場合、任意の特定の順序が推測されることは決して意図しない。しかしながら、提示された順序はそれによって方法が遂行され得る順序の一実施形態であることが理解されるであろう。任意の一つのクレームにおける任意の引用された単一または多様な(multiple)特徴または態様は任意の他のクレームまたは請求の範囲において引用された他の特徴または態様と組み合わせ、または並べ替えてよい。
【0023】
特定の実施形態の種々の特徴、要素またはステップは移行句「comprising(包含すること)」を使用して開示し得るが、代替の実施形態は、「consisting(からなる)」または「consisting essentially of(から本質的になる)」移行句を使用して説明され得るものを含め、含意されると理解するべきである。それゆえ、例えば、組込みステップ、検出ステップ、脱保護ステップ、および一以上の洗浄ステップを含む方法に対する含蓄された代替実施形態は、方法が列挙されたステップからなる実施形態および方法が列挙されたものから本質的になる実施形態を含む。
【0024】
ここで使用するように、化合物、組成物、または物品との関連で「providing(提供すること)」は、化合物、組成物、または物品を作成すること、化合物、組成物または物品を購入すること、または化合物、組成物または物品を別なふうに取得することを意味する。
【0025】
ここで使用するように、「鎖伸長酵素(chain extending enzyme)」という用語はポリヌクレオチドをテンプレート鎖(template strand)として使用してポリヌクレオチドのコピー複写物(copy replicate)を生産する酵素である。例えば、鎖伸長酵素はポリメラーゼ活性を有する酵素であってよい。典型的に、DNAポリメラーゼはテンプレート鎖に結合し、および次いでテンプレート鎖の下に移動して核酸の増殖性鎖(growing strand)の3´端での遊離ヒドロキシル基にヌクレオチドが逐次的に加えられる。DNAポリメラーゼは典型的にDNAテンプレートから相補的DNA分子を合成し、およびRNAポリメラーゼは典型的にDNAテンプレートからRNA分子を合成する(転写)。ポリメラーゼは鎖成長(strand growth)を開始するために短いRNAまたはDNA鎖で、プライマーと呼ばれるものを使用し得る。いくらかのポリメラーゼは部位の上流のストランドを置換し得、そこでそれらはチェーンに対する付加性塩基である。そのようなポリメラーゼは鎖置換性(strand displacing)であると言われ、それらはポリメラーゼによって読み取られるテンプレート鎖から相補鎖を除去する活性を有することが意味される。鎖置換性活性を有する例示的なポリメラーゼは、制限を伴うことなく、Bst(Bacillus stearothermophilus(バチルス・ステアロサーモフィルス))ポリメラーゼのラージフラグメント、エキソ-Klenow(クレノウ)ポリメラーゼまたは配列決定グレードT7エキソポリメラーゼを含む。いくらかのポリメラーゼはそれらの前部においてストランドを分解し、それを後ろの増殖性チェーン(growing chain)に効果的に置き換える(5´エキソヌクレアーゼ活性)。いくらかのポリメラーゼはそれらの後ろのストランドを分解する活性を有する(3´エキソヌクレアーゼ活性)。いくらかの有用なポリメラーゼは変異によってまたは別なふうに3´および/または5´エキソヌクレアーゼ活性を低下または排除するために修飾されている。
【0026】
ここで使用するように、「プライマー」およびその誘導体という用語は概して、興味がある標的配列にハイブリダイゼーションし得る任意のポリヌクレオチドに言及する。典型的には、プライマーは基質として機能し、その上でヌクレオチドがポリメラーゼによって重合され得;いくらかの実施形態では、しかしながら、プライマーは合成されたポリヌクレオチド鎖中に組み込まれることになり得、および合成された核酸分子に対して相補的な新しいストランドの合成を刺激するために別のプライマーがハイブリダイゼーションし得る部位を提供し得る。プライマーはヌクレオチドまたはその類似体の任意の組合せから構成され得る。いくらかの実施形態において、プライマーは一本鎖オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドである。
【0027】
「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態に言及するために互換的にここで使用され、およびリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、それらの類似体、またはそれらの混合物を包含し得る。この用語は分子の一次構造に言及するだけである。それゆえ、その用語は、三本、二本および一本鎖デオキシリボ核酸(「DNA」)、ならびに三本、二本および一本鎖リボ核酸(「RNA」)を含む。ここで使用するように、「増幅された標的配列」およびその誘導体は概して、標的特異的プライマーおよびここで提供される方法を使用して標的配列を増幅することによって生産されるポリヌクレオチド配列に言及する。増幅された標的配列は標的配列に関して同じセンス(即ち、正のストランド)またはアンチセンス(即ち、負のストランド)のいずれかでもあり得る。
【0028】
提供される方法において使用するのに適したヌクレオチドは、制限されないが、デオキシヌクレオチド三リン酸、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、およびデオキシグアノシン三リン酸(dGTP)を含む。随意に、提供する方法において使用されるヌクレオチドは、ラベル化またはアンラベル化にかかわらず、ブロッキングモイエティ、例えば、鎖伸長を抑制する可逆的ターミネーターモイエティなどのようなものを包含することができる。ラベル化ヌクレオチドでの使用に適するラベルは、制限されないが、ハプテン、放射性ヌクレオチド、酵素、蛍光ラベル、化学発光ラベル、および色素生産性薬剤を含む。
【0029】
ポリヌクレオチドは概して、ホスホジエステル結合を含むであろうが、いくらかの場合には、核酸類似体は代わりの骨格を有することができ、例えば、ホスホルアミド(Beaucage(ボーケージ)ら、Tetrahedron(テトラヘドロン)49(10):1925(1993)およびそこでの参考文献;Letsinger(レツィンガー)、J. Org. Chem.(ザ・ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー)35:3800(1970);Sprinzl(スプリンツ)ら、Eur. J. Biochem.(ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー)81:579(1977);Letsingerら、Nucl. Acids Res.(ヌクレイック・アシッヅ・リサーチ)14:3487(1986);Sawai(サワイ)ら、Chem. Lett.(ケミストリー・レターズ)805(1984)、Letsingerら、J. Am. Chem. Soc.(ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ)110:4470(1988);およびPauwels(パウエルズ)ら、Chemica Scripta(ケミカ・スクリプタ)26:141 91986))、ホスホロチオアート(Mag(マグ)ら、Nucleic Acids Res. 19:1437(1991);および米国特許第5,644,048号)、ホスホロジチオアート(Briu(ブリウ)ら、J. Am. Chem. Soc. 111:2321(1989)、O-メチルホスホロアミダイト連結(O-methylphophoroamidite linkages)(Eckstein(エクスタイン)、Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach(オリゴヌクレオチドおよび類似体:実用的アプローチ)、Oxford University Press(オックスフォード大学出版)を参照)、およびペプチド核酸骨格および連結(Egholm(エゴム)、J. Am. Chem. Soc. 114:1895(1992);Meier(マイヤー)ら、Chem. Int. Ed.であり、他のアナログ核酸には、正の骨格(Denpcy(デンプシー)ら、Proc. Nat. Acad. Sci. USA(プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステーツ・オブ・アメリカ)92:6097(1995);非イオン性骨格(米国特許第5,386,023号、第5,637,684号、第5,602,240号、第5,216,141号および第4,469,863号;Kiedrowshi(キードゥラウシャイ)ら、Angew. Chem. lntl. Ed. English(アンゲヴァンテ・ケミー・インターナショナル・エディション・イン・イングリッシュ)30:423(1991);Letsingerら、J. Am. Chem. Soc. 110:4470(1988);Letsingerら、Nucleoside&Nucleotide(ヌクレオシド&ヌクレオチド)13:1597(1994);第2および第3章、ASC Symposium Series 580(ASCシンポジウムシリーズ580)、「Carbohydrate Modifications in Antisense Research(アンチセンス研究における糖質修飾)」、Ed. Y.S. Sanghui(サンギ)およびP. Dan Cook(ダン・クック);Mesmaeker(メスメーカー)ら、Bioorganic&Medicinal Chem. Lett.(バイオオーガニック&メディシナル・ケミストリー・レターズ)4:395(1994);Jeffs(ジェフス)ら、J. Biomolecule NMR(ジャーナル・オブ・バイオモレキュラーNMR)34:17(1994);Tetrahedron Lett.(テトラへドロン・レターズ)37:743(1996))および米国特許第5,235,033号および第5,034,506号、ならびに第6および第7章、ASC Symposium Series 580、「"Carbohydrate Modifications in Antisense Research」、Ed. Y.S. SanghuiおよびP. Dan Cookを含めて、非リボース骨格を有するものを含む。一以上の炭素環糖を含むポリヌクレオチドもまた、ポリヌクレオチドの規定内に含まれる(Jenkins(ジェンキンズ)ら、Chem. Soc. Rev.(1995)pp169-176)。いくつかのポリヌクレオチド類似体はRawls(ロールズ)、C&E News(C&Eニュース)1997年6月2日第35頁に記載される。これらの参考文献はすべて参照によってここに明示的に組み込まれる。リボース-リン酸骨格のこれらの修飾はラベルの付加を容易にするために、または生理学的環境におけるそのような分子の安定性および半減期を増加させるために行われ得る。
【0030】
ポリヌクレオチドは、概して四つのヌクレオチド塩基:アデニン(A);シトシン(C);グアニン(G);およびチミン(T)の特定の配列を含む。ウラシル(U)はまた、例えば、核酸がRNAであるときチミンの自然代替物として存在することができる。ウラシルはまたDNAにおいて使用することができる。ポリヌクレオチドはまた、自然または非自然の塩基を含み得る。このことについて、自然のデオキシリボ核酸ポリヌクレオチドはアデニン、チミン、シトシンまたはグアニンからなる群より選ばれる一以上の塩基を有してよく、およびリボ核酸はウラシル、アデニン、シトシンまたはグアニンからなる群より選ばれる一以上の塩基を有し得る。ここに記載の方法または組成物において使用されるデオキシリボ核酸ポリヌクレオチドは、例えば、ウラシル塩基を含み得、およびリボ核酸は、例えば、チミン塩基を含むことができることが理解されるであろう。核酸において含まれ得る模範的な非自然塩基は、自然骨格または類似体構造を有するかどうかにかかわらず、制限を伴わず、イノシン、キサタニン、ヒポキサタニン、イソシトシン、イソグアニン、2-アミノプリン、5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、2-アミノアデニン、6-メチルアデニン、6-メチルグアニン、2-プロピルグアニン、2-プロピルアデニン、2-thioLiracil(2-チオリラシル)、2-チオチミン、2-チオシトシン、15-ハロウラシル、15-ハロシトシン、5-プロピニルウラシル、5-プロピニルシトシン、6-アゾウラシル、6-アゾシトシン、6-アゾチミン、5-ウラシル、4-チオウラシル、8-ハロアデニンまたはグアニン、8-アミノアデニンまたはグアニン、8-チオールアデニンまたはグアニン、8-チオアルキルアデニンまたはグアニン、8-ヒドロキシルアデニンまたはグアニン、5-ハロ置換ウラシルまたはシトシン、7-メチルグアニン、7-メチルアデニン、8-アザグアニン、8-アザアデニン、7-デアザグアニン、7-デアザアデニン、3-デアザグアニン、3-デアザアデニンまたはその種の他のものなどを含む。随意に、イソシトシンおよびイソグアニンは米国特許第5,681,702号で、それは参照によってその全体においてここに組み込まれるものに概して記載されるように、非特異的ハイブリダイゼーションを低減するために核酸において含まれ得る。
【0031】
ポリヌクレオチドにおいて使用される非自然塩基はそれが他の自然に発生する任意の塩基と塩基対形成することが可能なようにユニバーサル塩基対形成活性を有し得る。ユニバーサル塩基対形成活性を有する模範的な塩基は、3-ニトロピロールおよび5-ニトロインドールを含む。使用することができる他の塩基は、自然に発生する塩基、例えば、シトシン、アデニンまたはウラシルと塩基対形成するイノシンなどのようなもののサブセットとの塩基対形成活性を有するものを包含することができる。
【0032】
ヌクレオチドのポリヌクレオチド鎖への組込みはヌクレオチドの5´リン酸基とのホスホジエステル連結の形成を介するヌクレオチドのポリヌクレオチド鎖の遊離3´ヒドロキシル基への接合に言及する。配列決定されるポリヌクレオチドテンプレートはDNAまたはRNA、あるいはデオキシヌクレオチドおよびリボヌクレオチドの双方を含むハイブリッド分子でさえあることができる。ポリヌクレオチドは自然に発生し、および/または自然に発生しないヌクレオチド、ならびに自然または非自然の骨格結合を包含することができる。
【0033】
本開示は特に、フェージングを低減しながら、ラベル化ヌクレオチドの組込みのための短いサイクル時間を可能にするポリヌクレオチド配列決定法を記載する。方法は、以前に加えられたラベル化ヌクレオチドの同一性が検出されているとき同じ配列を有するテンプレートポリヌクレオチド鎖のクラスターと共にアンラベル化ヌクレオチドをインキュベーションすることを含む。検出ステップは、以前の組込みステップからの以前にラベル化されたヌクレオチドは組み込まれるようにされなかったコピー鎖中に組み込まれるアンラベル化ヌクレオチドの付加のための時間を提供する。それゆえ、検出ステップの終わりに、コピー鎖のすべてまたはほとんどがインフェーズにあり、および次に起こる一体化ステップにおいて適切なラベル化ヌクレオチドを組み込む用意ができている。
【0034】
検出ステップは、特に、検出ステップに画像化を含む場合、組込みステップよりも実質一層長い時間がかかる傾向がある。したがって、検出ステップはヌクレオチド組込みについて組込みステップよりも実質一層長い時間を提供し得、それはラギングによるフェージングを実質低減し得る。ラギングコピー鎖中に組み込まれたヌクレオチドはラベル化されていないため、検出の間にシグナルを生産せず、および従って検出を妨害しない。
【0035】
全体を通して議論するように、提供されるのは、ポリヌクレオチドを配列決定するための向上した方法である。模範的な配列決定方法は、例えば、Bentley(ベントリー)ら、Nature(ネイチャー)456:53-59(2008)、WO 04/018497(国際公開第04/018497号);US 7,057,026(米国特許第7,057,026号明細書);WO 91/06678;WO 07/123744;US 7,329,492;US 7,211,414;US 7,315,019;US 7,405,281、およびUS 2008/0108082(米国特許出願公開第2008/0108082号)において記載され、これらのそれぞれは参照によってここに組み込まれる。高処理量または迅速な配列決定のための一つの有用な方法はシーケンシングバイシンセシス(sequencing by synthesis)(SBS)である。SBS技術は、制限されないが、Genome Analyzer system(ゲノムアナライザーシステム)(Illumina Inc.(イルミナ社)、San Diego, CA(米国カリフォルニア州サンディエゴ))およびTrue Single Molecule Sequencing(tSMS)(商標) system(トゥルー・シングル・モレキュル・シーケンシング(tSMS)システム)(Helicos BioSciences Corporation(ヘリコス・バイオサイエンシーズ・コーポレーション)、Cambridge, MA(マサチューセッツ州ケンブリッジ))を含む。簡単に言えば、かなりの数のシーケンシングバイシンセシス反応は標的配列内の標的位置での複数の塩基の同一性を解明するために使用する。これらの反応はすべて少なくとも二つのドメインを有する標的核酸配列の使用に依存し;第一のドメインはそれに配列決定プライマーがハイブリダイゼーションし、および隣接する第二のドメインはそれについて配列情報が望まれる。アッセイ複合体の形成の際、伸長酵素は、第一のドメインにハイブリダイゼーションする配列決定プライマーにデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTPs)を加えるために使用され、およびdNTPsの各付加は、加えられたdNTPの同一性を決定するために読み取られる。このことは多くのサイクルについて進行し得る。SBS技術、例えば、Genome Analyzerシステム(Illumina Inc.、San Diego、CA)およびTrue Single Molecule Sequencing(tSMS)(商標)システム(Helicos BioSciences Corporation、Cambridge, MA)などのようなものは、標的核酸分子の配列を決定するためにラベル化ヌクレオチドを利用する。標的核酸分子は、プライマーとハイブリダイゼーションし、ならびにポリメラーゼおよびブロッキング基を含むラベル化ヌクレオチドの存在下でインキュベーションすることができる。プライマーはヌクレオチドが組み込まれるように伸長される。ブロッキング基の存在は一つのラウンドの組込み、すなわち、単一ヌクレオチドの組込みだけを可能にする。ラベルの存在は組み込まれたヌクレオチドの識別を可能にする。複数の同種の単一ヌクレオチド塩基は各サイクルの間に加えることができ、例えば、True Single Molecule Sequencing(tSMS)(商標)システム(Helicos BioSciences Corporation、Cambridge, MA)において使用するなどのようなものであり、またはあるいは、四つのヌクレオチド塩基すべては各サイクルの間に同時に加えることができ、例えば、Genome Analyzerシステム(Illumina Inc.、San Diego, CA)において、特に各塩基が識別可能なラベルに関連付けられるときに使用するなどのようなものである。組み込まれたヌクレオチドをその対応するラベルによって識別して後、ラベルおよびブロッキング基の双方を除去することができ、それによって、その後の組込みおよび識別のラウンドが可能になる。加えられたヌクレオチド塩基の同一性を決定することは、いくらかの実施態様において、特定のヌクレオチド塩基、即ち、dATP、dCTP、dGTPまたはdTTPの付加により検出可能な放射を誘導することができる光源の新たに加えられたラベル化塩基の反復曝露を含む。ここに開示する方法および組成物はそのようなSBS技術について特に有用である。加えて、ここに記載する方法および組成物は核酸のアレイからの配列決定について特に有用であり得、その場合多様な配列はアレイ上の多様な位置から同時に読み取ることができ、それは各位置での各ヌクレオチドがその識別可能なラベルに基づいて識別することができるからである。模範的な方法はUS 2009/0088327;US 2010/0028885;およびUS 2009/0325172において記載され、それらの各々は参照によってここに組み込む。
【0036】
次に
図1-2を参照し、配列決定法の実施形態の概観を示す。方法は、同じヌクレオチド配列を有する多様なテンプレートポリヌクレオチド鎖を含む部位に、第一の鎖伸長酵素およびブロック化、ラベル化ヌクレオチドの混合物を導入すること(100)を含む。第一の鎖伸長酵素はコピーポリヌクレオチド鎖が対応するテンプレート鎖の配列に基づいて、適切な一のブロック化、ラベル化(ブロックされ、ラベルされたとも言う)ヌクレオチドをコピーポリヌクレオチド鎖中に組み込むように構成される。ヌクレオチドの第一のラウンドの組込みの間またはそれに先立ち、あらかじめ定める開始位置からの配列決定を促進するためにポリヌクレオチドプライマーをテンプレート鎖にハイブリダイゼーションさせ得る。
【0037】
ブロック化、ラベル化ヌクレオチドは「組込みステップ」においてテンプレート鎖および鎖伸長酵素と共にある一定の期間インキュベーションされる。組込みステップは任意の適切な量の時間がかかる場合がある。組込みステップの時間が長くなるにつれて、フェージングは減少に向かい、それはブロック化、ラベル化ヌクレオチドのコピー鎖への組込みについて十分な時間が提供されるからである。ただし、より一層長い組込みステップはより一層速い配列決定の共通の目標を妨げる。
【0038】
多くの目下の配列決定法は十分に低いレベルにまでフェージングを減少させて実行におけるサイクルの数にわたって許容可能なエラー率を提供するために十分長い組込みステップ時間を提供する一方、本方法は、いくらかの実施形態において、組込みステップの間にフェージングのより一層高いレベルを適応させ、それはフェージングの修正が検出ステップの間に発生し得るからである。
【0039】
ここに記載する方法の一つの利益は組込みステップの時間が以前には許容できないレベルのフェージングをもたらすレベルに短くされ得ることであり、その理由はラギングコピー鎖が検出ステップの間にフェーズに戻され得るからである。組込みステップの時間を減少させることによって全体的な配列決定プロセスの時間は短くされ得る。
【0040】
いくらかの実施形態において、ブロック化、ラベル化ヌクレオチドの混合物を含む組成物がテンプレートポリヌクレオチドと共にインキュベーションされる時間は、1秒および60秒間、例えば、5秒から45セクションまで、または10秒から30秒までなどのようなものである。いくらかの実施形態において、組成物がブロック化、ラベル化ヌクレオチドの混合物を含む組成物とテンプレートポリヌクレオチドとの時間は15秒またはそれよりも短い(15秒以下とも言う)、例えば10秒以下、または7.5秒以下などのようなものである。
【0041】
なるべくなら、組込みステップは、十分な数のコピー鎖においてブロック化、ラベル化ヌクレオチドの組込みを可能にして検出ステップの間に検出可能なシグナルを生産するために十分に長い。
【0042】
なお
図1~2を参照して、ブロック化、ラベル化ヌクレオチドをテンプレート鎖および鎖伸長酵素と共に組込みステップにおいてインキュベーションすることの後、組み込まれていない(非組込み化のとも言う)ブロック化、ラベル化ヌクレオチドをその部位から洗い流し得(110)、およびブロック化、アンラベル化ヌクレオチドの混合物を含む組成物は多様なテンプレートポリヌクレオチド鎖を含む部位に導入され得る(120)。いくらかの実施態様において、ブロック化、アンラベル化ヌクレオチドの混合物を含む組成物の導入(ステップ120)は組み込まれていないブロック化、ラベル化ヌクレオチド(ステップ110)を洗い流すのに役立つ。別個の洗浄ステップの存在(110)は、いくらかの実施態様では、好適な場合がある。
【0043】
次いで、ステップ100の間にコピー鎖中に組み込まれたラベル化、ブロック化ヌクレオチドの同一性は、「検出ステップ」において、ブロック化、アンラベル化ヌクレオチドの混合物の存在下で検出される(130)。ラベル化、アンブロック化ヌクレオチドはラギングおよびアウトオブフェーズであるコピー鎖中に組み込まれ得る。すなわち、ブロック化、ラベル化ヌクレオチドがステップ100の間にコピー鎖中に組み込まれなかった場合、ブロック化、アンラベル化ヌクレオチドはラギングコピー鎖をフェーズに戻させるために検出ステップ130の間に組み込まれ得る。
【0044】
ブロック化、アンラベル化ヌクレオチドを含む組成物の成分は組み込まれたラベル化ヌクレオチドの同一性の検出を実質妨げてはならない。例えば、ラベル化ヌクレオチドが蛍光ラベルを含む場合、組成物の成分はラベル化ヌクレオチドからの蛍光シグナルをもたらす条件下で蛍光シグナルを生産しないのが好ましく、および組成物の成分は好ましくは、ラベル化ヌクレオチドによって生成される蛍光シグナルを妨げない。
【0045】
ブロック化、ラベル化ヌクレオチドを含む組成物が検出ステップの間にテンプレート鎖と共にインキュベーションされる時間はなるべくなら、フェージングを減少させるのに十分である。好適には、検出ステップの長さはブロック化、ラベル化ヌクレオチドの組込みのための付加的時間を可能にするために増加されない。すなわち、検出ステップの持続時間はなるべくなら、組込みステップにおいて組込まれるブロック化、ラベル化ヌクレオチドの同一性を検出するのに十分な持続時間である。
【0046】
目下の配列決定方法は冗長な検出ステップを提供し得る一方、はるかにより一層短い検出ステップはまだ、最適な条件に満たない場合でもフェージングの十分な修正(即ち、ブロック化、アンラベル化ヌクレオチドの組込み)を可能にし得るであろう。例えば、90秒の検出ステップはIllumina MiniSeq(商標)シーケンサーにより使用されることが多い。しかしながら、はるかにより一層短い検出時間は検出ステップの間にヌクレオチドのラギング鎖中への組込みを可能にするのに十分であり得ると考えられる。
【0047】
いくらかの実施態様において、ブロック化、ラベル化ヌクレオチドを含む組成物が検出ステップの間にテンプレート鎖と共にインキュベーションされる時間は、5秒および120秒間、例えば、10秒および90秒間などのようなものである。いくらかの実施態様において、ブロック化、ラベル化ヌクレオチドを含む組成物が検出ステップの間にテンプレート鎖と共にインキュベーションされる時間は、120秒以下、例えば、60秒以下、30秒以下、10秒以下、または5秒以下などのようなものである。いくらかの実施態様では、ブロック化、ラベル化ヌクレオチドを含む組成物が、検出ステップの間にテンプレート鎖と共にインキュベーションされる時間は、1秒以上、例えば、5秒以上、または10秒以上などのようなものである。
【0048】
なお
図1-2を参照し、ステップ140では、方法はステップ100においてコピー鎖中に組み込まれた任意のラベル化、ブロック化ヌクレオチドのアンブロッキングおよびアン-ラベリング、ならびにステップ130においてコピー鎖中に組み込まれた任意のアンラベル化、ブロック化ヌクレオチドのアンブロッキングをさらに含み得る。アンブロッキングステップはコピー鎖において最後に組み込まれたヌクレオチドからブロッキングモイエティを除去することに関与し、および検出可能なモイエティはコピー鎖中に組み込まれた最後のヌクレオチドから開裂され、またはマスクされる。
【0049】
洗浄ステップ(示さず)はステップ130および140の間またはステップ140の後、または双方で実行し得る。
【0050】
アンブロッキングおよびアン-ラベリング(140)に続いて、あらかじめ定める数のサイクルが進められ、または配列決定が完了するまで、プロセスは繰り返され得る。あるいはまた、ブロック化、ラベル化ヌクレオチドの混合物は、鎖伸長酵素を伴わずに、多様なテンプレートポリヌクレオチド鎖を含む部位に導入することができ(150)、およびプロセスは繰り返し得、ステップ110から始められる。鎖伸長酵素はその部位に残り得る。例えば、鎖伸長酵素はテンプレート鎖、コピー鎖または双方に結合し、および多様な配列決定サイクルについて活性を残し得る。しかしながら、いくらかの実施態様において、ブロック化、ラベル化ヌクレオチドの混合物と共に追加の鎖伸長酵素を導入すること(100)が好ましく、それは機能し得る鎖伸長酵素の量がアンブロッキングおよびアン-ラベリングステップ(140)の後に低下する傾向があるからである。
【0051】
図2に示すように、ステップ125にて、第二の鎖伸長酵素は、それがステップ100にて導入される第一の鎖伸長酵素と同じ酵素または異なる酵素であり得、ブロック化、アンラベル化ヌクレオチドの混合物を含む組成物を伴って含まれ、および多様なテンプレート鎖を含む部位に導入され得る。
図2でのステップ125は、
図1のプロセスの一以上のサイクルにおいてステップ120を置き換え得る。驚くべきことに、第二の鎖伸長酵素が加えられない場合(例は、
図1でのステップ120において指し示されるように)、第二の鎖伸長酵素がステップ125で追加される場合よりも少ないフェージングが起こり得ることが見出された。
【0052】
提供する方法において、ヌクレオチドの組込みおよび検出のステップは一以上の回数繰り返すことができる。例えば、ステップはいくらかの実施態様では少なくとも25回、他の実施形態では少なくとも75回、およびさらに他の実施形態では少なくとも100回繰り返すことができる。それゆえ、提供する方法には、制限されないが、いくらかの実施態様では、約100サイクルないし約1,000サイクルの間から、他の実施形態では、約100サイクルないし約500サイクルの間から、およびまだ他の実施形態では、約100サイクルないし約300サイクルの間からの範囲におけるサイクルの若干について組込みおよび検出ステップを繰り返すことを含む。
【0053】
ここに記載する配列決定方法は任意の適切な装置を使用して任意の適切なマナーにおいて実行し得る。いくらかの実施態様では、配列決定方法は固形支持体を採用し、その上では多様なテンプレートポリヌクレオチド鎖を固定化する。ここで使用する固定化という用語は共有または非共有結合(群)を介する固形支持体への直接または間接的な付着を包含することを意図する。特定の実施形態において、必要とされるのは、例えば、核酸増幅および/または配列決定を必要とする用途において、支持体を使用することが意図される条件下で、ポリヌクレオチドが支持体に固定化または付着したままであるということだけである。例えば、オリゴヌクレオチドまたはプライマーは3´端が酵素的伸長に利用可能であり、および/または配列の少なくとも一部分が相補的配列にハイブリダイゼーションすることが可能であるように固定化され得る。固定化は表面に付着したプライマーへのハイブリダイゼーションを介して起こることができ、その場合において固定化プライマーまたはオリゴヌクレオチドは3´-5´配向にあり得る。あるいはまた、固定化は、非塩基対形成ハイブリダイゼーション、例えば、共有結合付着などのようなものによって起こり得る。
【0054】
例として、ポリヌクレオチドはプライマーのパッチにおいて一以上のプライマーへのハイブリダイゼーションまたはアニーリングによって表面に付着し得る。ハイブリダイゼーションは、例えば、アダプターをテンプレートポリヌクレオチドの端部に連結することによって達成することができる。アダプターの核酸配列はプライマーの核酸配列に相補的であることができ、それゆえ、アダプターが表面上のプライマーに結合またはハイブリダイゼーションすることが許容される。随意に、ポリヌクレオチドは一本鎖または二本鎖であり得、およびアダプターはポリヌクレオチドの5´および/または3´端に付加され得る。随意に、ポリヌクレオチドは二本鎖であり得、およびアダプターは二本鎖ポリヌクレオチドの3´端上に連結され得る。随意に、ポリヌクレオチドは何らかのアダプターを伴わずに使用し得る。いくらかの実施態様において、テンプレートポリヌクレオチドは相補的プライマーへのハイブリダイゼーション以外の相互作用によって表面に付着され得る。例えば、ポリヌクレオチドは化学的連結、例えば、クリックケミストリーまたは受容体-リガンド相互作用、例えば、ストレプトアビジン-ビオチン結合などのようなものから生じるものなどのようなものを使用して表面に共有結合的に付着され得る。
【0055】
プライマーオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチドプライマーおよびプライマーは全体を通して交換可能に使用され、および増幅または配列決定される一以上のポリヌクレオチドテンプレートに特異的にアニーリングする能力があるポリヌクレオチド配列である。概して、プライマーオリゴヌクレオチドは一本鎖または部分的に一本鎖である。プライマーはまた、非自然の実体がプライマーの機能を妨げない限り、非自然の塩基、非ヌクレオチドの化学的修飾または非自然の骨格連結の混合を含み得る。随意に、固形支持体の表面上のプライマーのパッチは、一以上の異なる複数のプライマー分子を含み得る。例として、パッチには、異なる配列を有するプライマー分子の各複数の第一、第二、第三、第四、またはそれよりも多くの複数を含み得る。単一のパッチにおいて異なる複数のプライマーを有する実施形態について、異なる複数のプライマーは異なる複数のプライマーの少なくとも一部分の間に配列の違いがある限り、共通の配列を共有し得ることが理解されるであろう。例えば、第一の複数のプライマーは一つの複数におけるプライマーが他の複数のプライマーには見られない異なる配列を有する限り、第二の複数のプライマーと共に配列を共有し得る。
【0056】
テンプレートポリヌクレオチドは固形支持体の表面にて増幅され得る。ポリヌクレオチド増幅は、テンプレートおよび/またはその相補物の一以上のコピーを生産することによって存在するポリヌクレオチドテンプレートおよび/またはその補完物の数を増幅または増加させるプロセスを含む。増幅は、制限されないが、サーモサイクリング増幅または等温増幅を含む条件下で、様々な既知の方法によって遂行し得る。例えば、増幅を遂行するための方法は、U.S. Publication No.(米国公開番号)第2009/0226975号;WO 98/44151;WO 00/18957;WO 02/46456;WO 06/064199;およびWO 07/010251に記載され;それらは参照によってそれらの全体においてここに組み込まれる。簡単に言えば、提供される方法において、増幅はポリヌクレオチド分子が付着している表面にて起こることができる。このタイプの増幅は固相増幅と称することができ、それはポリヌクレオチドに関して使用されるとき、表面(例は、固形支持体)上でまたはそれに関連して遂行される任意のポリヌクレオチド増幅反応に言及する。典型的に、増幅生産物のすべてまたは一部分は固定化されるプライマーの伸長によって合成される。固相増幅反応は増幅プライマーの少なくとも一が表面(例は、固形支持体)にて固定化されることを除いて標準溶液相増幅に似ている。
【0057】
適切な条件は、ポリヌクレオチドを増幅するための適切な緩衝剤/溶液を提供することを含む。そのような溶液は、例えば、ポリメラーゼ活性を有する酵素、ヌクレオチド三リン酸、および、随意に、添加物、例えば、DMSOまたはベタインなどのようなものを含む。随意に、増幅は米国特許第7,485,428号で、それが参照によってその全体においてここに組み込まれるものに記載されるようにリコンビナーゼ剤の存在下で遂行され、それは熱融解なしに増幅を許容する。簡単に説明すると、リコンビナーゼ剤、例えば、E. coli(エシェリキア・コリ、大腸菌)由来のRecAタンパク質(または他の門由来のRecA)などのようなものは、例えば、ATP、dATP、ddATP、UTP、またはATPγSの存在下で、一本鎖DNAの周りに核タンパク質フィラメントを形成する(例は、プライマー)。この複合体が相同配列と接触するとき、リコンビナーゼ剤は鎖浸潤反応およびプライマーと標的DNAの相同鎖とのペアリングを触媒する。元のペアリング鎖は鎖浸潤によって置き換えられ、その領域において一本鎖DNAのバブルが残り、それが増幅のためのテンプレートとして機能する。
【0058】
固相増幅は、表面に固定化されるオリゴヌクレオチドプライマーの一つの種だけを含むポリヌクレオチド増幅反応を含み得る。あるいはまた、表面は、複数の第一および第二の異なる固定化オリゴヌクレオチドプライマー種を含み得る。固相核酸増幅反応には概して、二つの異なるタイプの核酸増幅、界面および表面(またはブリッジ)増幅の少なくとも一つを含む。例として、界面増幅において、固形支持体は、固定化オリゴヌクレオチドプライマーへのハイブリダイゼーションによって固形支持体に間接的に固定化されるテンプレートポリヌクレオチドを含み、固定化プライマーは固定化ポリヌクレオチドを生成するためにポリメラーゼ触媒による、テンプレート指向化鎖延長反応(例、プライマー伸長)の過程において伸長され得、それは固形支持体に付着したままである。伸長相の後、ポリヌクレオチド(例、テンプレートおよびその相補的生産物)はテンプレートポリヌクレオチドが溶液中に放出され、および別の固定化オリゴヌクレオチドプライマーへのハイブリダイゼーションについて利用可能となるように変性される。テンプレートポリヌクレオチドは、1、2、3、4、5またはそれよりも多くのラウンドのプライマー伸長において利用可能にされ得、または1、2、3、4、5またはそれよりも多くのラウンドのプライマー伸長後に反応から洗い流し得る。
【0059】
表面(またはブリッジ)増幅では、固定化されたポリヌクレオチドが固定化されたオリゴヌクレオチドプライマーにハイブリダイゼーションする。固定化されたポリヌクレオチドの3´端は固定化されたオリゴヌクレオチドプライマーから伸長するポリメラーゼ触媒化、テンプレート指向化鎖延長反応(例は、プライマー伸長)のためのテンプレートを提供する。結果として得られる二本鎖生産物は二つのプライマーを「橋渡し」し、および双方のストランドが支持体に共有結合的に付着する。次のサイクルでは、固形支持体に固定化された一本鎖のペア(固定化されたテンプレートおよび伸長されたプライマー生産物)を産生する変性に続いて、双方の固定化されたストランドは新しいプライマー伸長のテンプレートとして機能する。
【0060】
増幅は固定化ポリヌクレオチドのコロニーを生産するために使用され得る。例えば、方法は米国特許第7,115,400号;U.S. Publication No.第2005/0100900号;WO 00/18957;およびWO 98/44151で、それらが参照によってそれらの全体においてここに組み込まれるものに記載されるものと似ているポリヌクレオチドコロニーのクラスター化されたアレイを生産することができる。「クラスター」および「コロニー」は交換可能に使用され、および同じ配列および/または表面に付着するその補完物を有するポリヌクレオチドの複数のコピーに言及する。典型的には、クラスターは、それらの5´末端を介して表面に付着する、同じ配列および/またはその補完物を有するポリヌクレオチドの複数のコピーを含む。クラスターを構成するコピーポリヌクレオチドは一本鎖または二本鎖の形態であり得る。
【0061】
したがって、複数のテンプレートポリヌクレオチドはクラスターにあってよく、各クラスターは同じ配列のテンプレートポリヌクレオチドを含む。複数のクラスターを配列決定することができ、各クラスターは、同じ配列のポリヌクレオチドを含む。随意に、第一のクラスターにおけるポリヌクレオチドの配列は第二のクラスターの核酸分子の配列とは異なる。随意に、クラスターは、固形表面上のプライマーにテンプレートポリヌクレオチドをアニーリングすること、および同じ配列の複数のテンプレートポリヌクレオチドを含むクラスターを形成するためにある条件下でテンプレートポリヌクレオチドを増幅することによって形成される。増幅は熱的または等温的であることができる。
【0062】
各コロニーは、同じ配列のポリヌクレオチドを含み得る。特定の実施形態では、一つのコロニーのポリヌクレオチドの配列は別のコロニーのポリヌクレオチドの配列とは異なる。それゆえ、各コロニーは、異なる核酸配列を有するポリヌクレオチドを含む。コロニーにおける固定化されたすべてのポリヌクレオチドは典型的に、同じポリヌクレオチドの増幅によって生産される。いくらかの実施態様では、固定化されたポリヌクレオチドのコロニーが固定化されたポリヌクレオチドを伴わない一以上のプライマーを含み、それらには異なる配列の別のポリヌクレオチドが遊離または結合してないポリヌクレオチドを含む溶液の追加の適用時に結合し得るかもしれない。しかしながら、コロニーにおいて十分な数の遊離のプライマーがないため、この第二のまたは侵入性ポリヌクレオチドは十分な数に増幅されないことがある。第二のまたは侵入性ポリヌクレオチドは典型的には、単一コロニーにおいてポリヌクレオチドの合計集団の1、0.5、0.25、0.1、0.001または0.0001%よりも少ない。それゆえ、第二のまたは侵入性ポリヌクレオチドは光学的に検出されないかもしれず、または第二のもしくは侵入性ポリヌクレオチドの検出はバックグラウンドノイズと考えられ、またはコロニーにおいて元の、固定化ポリヌクレオチドの検出を妨害しない。そのような実施形態では、コロニーはコロニーを検出するために使用する方法または装置の解像度に従って明らかに均質または均一であろう。
【0063】
クラスターは使用する条件に応じて異なる形状、サイズおよび密度を有し得る。例えば、クラスターは実質円形、多面形、ドーナツ形またはリング形である形状を有し得る。クラスターの直径または最大断面は約0.2μmから約6μmまで、約0.3μmないし約4μm、約0.4μmないし約3μm、約0.5μmないし約2μm、約0.75μmないし約1.5μm、または任意の間にある直径であり得る。随意に、クラスターの直径または最大断面は少なくとも約0.5μm、少なくとも約1μm、少なくとも約1.5μm、少なくとも約2μm、少なくとも約2.5μm、少なくとも約3μm、少なくとも約4μm、少なくとも約5μm、または少なくとも約6μmであり得る。クラスターの直径は若干のパラメーターによって影響され得、制限されないが、クラスターを生産する際に実行される増幅サイクルの数、ポリヌクレオチドテンプレートの長さ、ポリヌクレオチドテンプレートのGC含量、パッチの形状でそれらにプライマーが付着するもの、またはクラスターが形成される表面に付着するプライマーの密度を含む。しかしながら、前述のように、すべての場合において、クラスターの直径はクラスターが形成されるパッチより大きくなり得ない。例えば、パッチがビーズである場合、クラスターサイズはビーズの表面積ほどの大きさであろう。クラスターの密度は少なくとも約0.1/mm2、少なくとも約1/mm2、少なくとも約10/mm2、少なくとも約100/mm2、少なくとも約1,000/mm2、少なくとも約10,000/mm2ないし少なくとも約100,000/mm2の範囲にあることができる。随意に、クラスターは例えば、100,000/mm2ないし1,000,000/mm2または1,000,000/mm2ないし10,000,000/mm2の密度を有する。ここで提供する方法はおおよそ等しいサイズであるコロニーを生産することができる。これは異なる配列のポリヌクレオチドの増幅効率における違いに関係なく発生する。
【0064】
クラスターは、例えば、適切な画像化手段、例えば、共焦点画像化デバイスまたは電荷結合素子(CCD)またはCMOSカメラなどのようなものを使用して検出し得る。模範的な画像化デバイスには、制限されないが、米国特許第7,329,860号;第5,754,291号;および第5,981,956号;ならびにWO 2007/123744で、それらのそれぞれが参照によってその全体においてここに組み込まれるものにおいて記載されるものを含む。画像化装置は、あるクラスターにおいてまたは表面上の複数のクラスターにおいて、例えば、一または複数のクラスターの(および/またはそこから発生する検出可能な信号の)位置、境界、直径、面積、形状、重なりおよび/または中心などのようなものにおける基準位置を決定するために使用され得る。そのような基準位置は意味のある情報を産生するために、記録され、文書化され、注釈が付けられ、解釈可能な信号に変換され、またはその種の他のものなどであり得る。
【0065】
ここで使用するように、「支持体」という用語はポリヌクレオチドを付着させるための基材に言及する。支持体はポリヌクレオチドを付着させることができ、またはその上で核酸を合成および/または修飾することができる剛性または半剛性の表面を有する物質である。支持体は、任意の樹脂、ゲル、ビーズ、ウェル、カラム、チップ、フローセル、膜、マトリクス、プレート、フィルタ、ガラス、制御された細孔ガラス(CPG)、ポリマーサポート、メンブレン、紙、プラスチック、プラスチックチューブまたはタブレット、プラスチックビーズ、ガラスビーズ、スライド、セラミック、シリコンチップ、マルチウェルプレート、ナイロンメンブレン、光ファイバー、およびPVDFメンブレンを包含することができる。
【0066】
支持体は任意のフラットウェファ様基材およびウェルを有するフラット基材、例えば、96ウェルプレートを含め、マイクロタイタープレートなどのようなものを含み得る。模範的なフラット基材には、多様なマイクロ流体チャネル、例えば、cBotシーケンシングワークステーション(Illumina, Inc.(イルミナ社)、San Diego, CA(米国カリフォルニア州サンディエゴ))において用いるエイトチャネルフローセルなどのようなものを有するマルチレーンフローセルリアクターを含め、チップ、スライド、エッチングされた基材、マイクロタイタープレート、およびフローセルリアクターを含む。模範的なフローセルは、WO 2007/123744で、参照によってその全体においてここに組み込まれるものに記載される。随意に、フローセルはパターン化されたフローセルである。適切なパターン化されたフローセルは、制限されないが、WO 2008/157640で、参照によってその全体においてここに組み込まれるものに記載されるフローセルを含む。
【0067】
支持体はまた、磁気ビーズ、中空ビーズ、および固形ビーズを含め、ビーズを含み得る。ビーズはフラット支持体と組み合わせて使用してよく、そのようなフラット支持体は随意にウェルも含む。ビーズ、またはあるいはミクロスフェアは概して、剛性または半剛性の物質で作られた小さな物体に言及する。物体は例えば、球、楕円形、ミクロスフェア、または規則的または不規則な寸法を有するかどうかにかかわらず他の認識された粒子形状として特徴付けられる形状を有し得る。ビーズのサイズは、特に、制限を伴わずに、直径で約1μm、約2μm、約3μm、約5μm、約10μm、約20μm、約30μm、約40μm、約60μm、約100μm、約150μm、または約200μmを含む。他の粒子はビーズおよびミクロスフェアについてここに記載するものと同様の方法で使用し得る。
【0068】
支持体の組成は、例えば、フォーマット、化学的性質および/または付着の方法に、および/または核酸合成の方法に応じて変動し得る。本開示に従って使用することができる支持体物質は、制限されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、ナイロン、金属、および他の適切な物質を含む。模範的な組成物は、支持体を含み、および化学的機能性がそれに付与され、ポリペプチド、ポリヌクレオチドおよび/または有機モイエティ合成において使用される。そのような組成物は、例えば、プラスチック、セラミック、ガラス、ポリスチレン、メラミン、メチルスチレン、アクリルポリマー、常磁性体物質、トリアゾル、カーボングラファイト、二酸化チタン、ラテックスまたは架橋デキストランで例えばSepharose(商標)などのようなもの、セルロース、ナイロン、架橋ミセルおよびTeflon(商標)、ならびに見出されることができる任意の他の物質でそれらは例えば、Bangs Laboratories(バングス・ラボラトリーズ)、Fishers IN(米国インディアナ州フィッシャーズ)からの「Microsphere Detection Guide(ミクロスフェア検出ガイド)」であり参照によってここに組み込まれるものに記載されるものを含む。支持体粒子は架橋でんぷん、デキストラン、セルロース、タンパク質、ポリスチレンおよびメチルスチレンを包含するスチレンポリマーを含む有機ポリマー、ならびに他のスチレンコポリマー、プラスチック、ガラス、セラミック、アクリルポリマー、磁気応答性材料、コロイド、トリアゾール、カーボングラファイト、二酸化チタン、ナイロン、ラテックス、またはTEFLON(登録商標)から作製され得る。Bangs Laboratories、Fishers, Inc.からの「Micro sphere Detection Guide」は参照によってその全体がここに組み込まれ、有用なガイドである。本開示の範囲内のさらなる模範的な支持体は、例えば、US Application Publication No.(米国特許出願公開番号)第02/0102578号および米国特許第6,429,027号に記載されるものを含み、それらの双方は参照によってそれらの全体においてここに組み込まれる。
【0069】
例えば、および
図3を参照し、固形支持体200、例えば、フローセルなどのようなものの実施形態を示す。固形支持体200は同じヌクレオチド配列を有する多様なテンプレートポリヌクレオチド鎖を含むクラスター300が結合する表面210を有する。固形支持体200の表面210は平坦面であり得る。
【0070】
試薬、洗浄緩衝剤、およびその他同種類のものなどが包含される流体組成物は、クラスター300においてテンプレートポリヌクレオチドと相互作用するために固形支持体200の表面210上を流れ得る。組成物の流れは任意の方向、例えば、
図3における矢印によって示される方向などのようなものにおいて起こり得る。
【0071】
フローセル300を使用し得る配列決定装置は、試薬および組成物が表面210を横切って流れてクラスター300においてテンプレート鎖と相互作用するために構成され得る。例えば、装置は、クラスター300において適切な時間テンプレートポリヌクレオチドと相互作用させ、テンプレート鎖の配列決定を遂行するために、鎖伸長酵素、配列決定プライマー、ヌクレオチド、洗浄組成物、アンブロッキング試薬、アン-ラベリング試薬、およびその他同種類のものなどを固形支持体200、例えば、フローセルなどのようなものの表面210を横切って流すようにさせ得る。
【0072】
各クラスター300は別のクラスター300と同じテンプレートポリヌクレオチドまたは異なるポリヌクレオチドを含んでよい。
【0073】
配列決定されるテンプレートポリヌクレオチドは、既知の、日常的な方法を使用して任意の生物学的サンプルから取得し得る。適切な生物学的サンプルは、制限されないが、血液サンプル、生検標本、組織外植片、器官培養物、生物学的流体または他の任意の組織または細胞調製物、あるいはそれらの画分または誘導体、またはそれらから分離されたものを含む。生物学的サンプルは、初代細胞培養物または培養適応細胞系であることができ、制限されないが、遺伝子操作された細胞系を含み、それには、染色体に組み込まれた、またはエピソームの組換え核酸配列、不死化または不死化可能な細胞系、体細胞ハイブリッド細胞系、分化または分化可能な細胞系、形質転換細胞系、幹細胞、生殖細胞(例は、精子、卵母細胞)、形質転換細胞株およびその他同種類のものなどを含む。例えば、ポリヌクレオチド分子は初代細胞、細胞系、新たに分離された細胞または組織、凍結細胞または組織、パラフィン包埋細胞または組織、固定細胞または組織、および/またはレーザー切開された細胞または組織から得られ得る。生物学的サンプルは、例えば、ヒトまたは非ヒト動物を含め、哺乳動物および非哺乳動物、脊椎動物および無脊椎動物を含む任意の対象または生物学的供給源から得ることができ、およびまた任意の多細胞有機体または単細胞有機体、例えば、真核生物(植物および藻類を含み)または原核生物有機体、古細菌(archaeon)、微生物(例は、細菌、古生物、真菌、原生生物、ウイルス)、および水生プランクトンなどのようなものであり得る。
【0074】
ポリヌクレオチドが得られたら、提供された方法において使用するための異なる配列の複数のポリヌクレオチド分子は、利用可能なおよび既知の様々な標準的な技術を使用して調製し得る。ポリヌクレオチド分子調製の模範的な方法には、制限されないが、Bentleyら、Nature 456:49-51(2008);米国特許第7,115,400号;および米国特許出願公開第2007/0128624号;第2009/0226975号;第2005/0100900号;第2005/0059048号;第2007/0110638号;および第2007/0128624号に記載されているものを含み、それらのそれぞれはその全体において参照によってここに組み込まれる。テンプレートポリヌクレオチドには、制限されないが、ユニバーサルシーケンスおよび既知または未知の配列を含め、様々な配列を含み得る。例えば、ポリヌクレオチドには、5´および/または3´端に位置する既知の配列の一以上の領域(例は、アダプター)を含み得る。そのようなテンプレートポリヌクレオチドは未知の配列のポリヌクレオチドの端部にアダプターを付着させることによって形成し得る。ポリヌクレオチドに5´および3´端上で既知の配列を含むとき、既知の配列は同じまたは異なる配列であり得る。随意に、ポリヌクレオチドの5´および/または3´端に位置する既知の配列は、表面上に固定化される一以上のプライマーにハイブリダイゼーションする能力がある。例えば、5´の既知配列を含むポリヌクレオチドは、第一の複数のプライマーにハイブリダイゼーションし得る一方、3´の既知配列は第二の複数のプライマーにハイブリダイゼーションし得る。随意に、ポリヌクレオチドには、一以上の検出可能なラベルを含む。一以上の検出可能なラベルは5´端にて、3´端にて、および/またはポリヌクレオチド分子内の任意のヌクレオチド位置にてポリヌクレオチドテンプレートに付着され得る。提供される方法において使用するためのポリヌクレオチドは、増幅および/または配列決定されるポリヌクレオチド、および随意に、5´および/または3´端(群)にて短い核酸配列を含み得る。
【0075】
ポリヌクレオチドの5´および/または3´端に付加される短い核酸配列はユニバーサルシーケンスであり得る。ユニバーサルシーケンスは二以上のポリヌクレオチドに共通であり、即ち、それらによって共有されるヌクレオチド配列の領域であり、そこで二以上のポリヌクレオチドはまた、配列の違いの領域を有する。複数のポリヌクレオチドの異なるメンバーにおいて存在し得るユニバーサルシーケンスは、ユニバーサルシーケンスに相補的である単一のユニバーサルプライマーを使用して多様な異なる配列の複製または増幅を可能にし得る。同様に、ポリヌクレオチドの収集物の異なるメンバーにおいて存在し得る少なくとも一つ、二つ(例は、ペア)またはそれよりも多くのユニバーサルシーケンスは、少なくとも一つ、二つ(例は、ペア)またはユニバーサルシーケンスに相補的であるそれよりも多くの単一ユニバーサルプライマーを使用する多様な異なる配列の複製または増幅を許容し得る。それゆえ、ユニバーサルプライマーは、そのようなユニバーサルシーケンスに特異的にハイブリダイゼーションし得る配列を含む。ポリヌクレオチドはユニバーサルアダプター(例は、非標的核酸配列)を異なる標的配列の一端または両端に付着させるように修飾され得、アダプターはユニバーサルプライマーのハイブリダイゼーションのための部位を提供する。このアプローチには、生成、増幅、配列決定、および/または別なふうに分析する各ポリヌクレオチドに対して特定ペアのプライマーを設計する必要がないという利益があり;単一ペアのプライマーは、各ポリヌクレオチドがその5´および3´端への同じユニバーサルプライマー結合配列の付加によって修飾されるという条件で、異なるポリヌクレオチドの増幅のために使用することができる。
【0076】
ポリヌクレオチドはまた、標準的な、既知の方法を使用して望ましい任意の核酸配列を含むように修飾され得る。そのような追加の配列は、例えば、与えられる核酸配列の増幅生産物の識別を許容するために、制限酵素部位、またはインデックスタグを含み得る。
【0077】
ここで使用するように、二以上のポリヌクレオチドに関して使用するとき異なるという用語は、二以上のポリヌクレオチドが同じではないヌクレオチド配列を有することを意味する。例えば、二つのポリヌクレオチドは他のポリヌクレオチドと比較して一つのポリヌクレオチドの配列中のヌクレオチドの含量および順序が異なることができる。用語はポリヌクレオチドがコピー、アンプリコン、テンプレート、ターゲット、プライマー、オリゴヌクレオチド、またはその種の他のものなどと称されるかどうかを説明するために使用することができる。
【0078】
次に、
図4A~Gを参照し、配列決定法の一実施形態を例示する概略図を示す。図示の実施形態はフェージングを伴う問題、および本方法がどのようにその問題に対処するかを例示する。
図4A~Gにおいて、同じ配列を有する複数のポリヌクレオチド400が示される。ポリヌクレオチド400はそれらの3´または5´端にて固形支持体の表面に結合され得る。例えば、ポリヌクレオチドは、
図3に描くように、フローセル200上のクラスター300における表面210に結合され得る。
【0079】
図4Aは配列決定の開始に先立つテンプレートポリヌクレオチド400を示す。
図4Bは、配列決定の第1ラウンドの間、例えば、
図1-2の洗浄ステップ110の後などのようなものにおいて、コピー鎖590中に組み込まれる単一のブロック化、ラベル化ヌクレオチド510を示す。利便性および明確さのために、鎖伸長酵素は、洗浄ステップ後にテンプレートポリヌクレオチド400上に残り得るが示していない。いくらかの実施態様では、ヌクレオチド510の組み込みを容易にするために、テンプレートの配列の一部分に相補的なプライマーポリヌクレオチド(示さず)を使用し得る。
図4Bにおいて描く実施形態では、ブロック化、ラベル化ヌクレオチド510は五つのテンプレートポリヌクレオチド400のうちの四つについてコピー鎖590中に組み込まれる。ただちに、ブロック化、ラベル化ヌクレオチド510が組み込まれていないストランドはアウトオブフェーズであろう。
【0080】
しかしながら、
図4Cに示すように、ブロック化、アンラベル化ヌクレオチド(例は、
図1または
図2におけるステップ120または125)がブロック化、ラベル化ヌクレオチド510の同一性の検出の間にテンプレートポリヌクレオチド400と共にインキュベーションされた場合(例は、
図1~2のステップ130)、ブロック化、アンラベル化ヌクレオチド515はラギング鎖をフェーズにいたらせるために、配列決定の次のサイクルに先立ちラギング鎖中に組み込むことができた。上記に述べるように、ブロック化、アンラベル化ヌクレオチド515は鎖伸長酵素(示さず)によって組み込まれ得、それは洗浄ステップの後に残り(例は、
図1~2のステップ110)、またはアンブロック化、アンラベル化ヌクレオチドの混合物と共に導入される(例は、
図2のステップ125)。次いで、組み込まれたヌクレオチド510、515は、ヌクレオチド510の場合(例は、
図1~2のステップ140)、アンブロック化およびアンラベル化され得、および配列決定の別のサイクルが実行され得る。
【0081】
図4Dは配列決定の第二のサイクルにおいて組込みステップ(例えば、
図1~2のステップ100などのようなもの)および洗浄ステップ(例えば、
図1~2のステップ110などのようなもの)に続く第二のブロック化、ラベル化ヌクレオチド520のコピー鎖590への組込みを示す。
図4Dにおいて描く実施形態では、ブロック化、ラベル化ヌクレオチド520は五つのテンプレートポリヌクレオチド400のうちの四つについてコピー鎖590中に組み込まれる。ただちに、ブロック化、ラベル化ヌクレオチド510が組み込まれてないコピー鎖590はアウトオブフェーズであろう。
【0082】
しかしながら、
図4Eに示すように、ブロック化、アンラベル化ヌクレオチド(例は、
図1または
図2におけるステップ120または125)がブロック化、ラベル化ヌクレオチド520の同一性の検出の間にテンプレートポリヌクレオチド400と共にインキュベーションされた場合(例は、
図1~2のステップ130)、ブロック化、アンラベル化ヌクレオチド525は、ラギング鎖をフェーズにいたらせるために、配列決定の次のサイクルに先立ちラギング鎖中に組み込むことができた。組み込まれたヌクレオチド520、525は、ヌクレオチド520の場合(例は、
図1~2のステップ140)においてアンブロック化およびアンラベル化されてもよく、および配列決定の別のサイクルが実行され得る。
【0083】
図4Fはブロック化、ラベル化ヌクレオチド530が組込みステップに続いて五つのコピー鎖590のうちの四つ中に組み込まれる配列決定の別のサイクルを例示する。
図4Gは、配列決定の次のサイクルに先立ちラギング鎖をフェーズ(同相)にいたらせるためのブロック化、アンラベル化ヌクレオチド535のラギング鎖への組込みを例示する。
図4Gにおいて例示するように配列決定の三つのサイクル後、すべてのコピー鎖590はインフェーズである。しかしながら、検出ステップの間でブロック化、アンラベル化ヌクレオチドをインキュベーションしなければ、五つのストランドのうちの三つは例示の実施形態においてアウトオブフェーズであったであろう。コピー鎖の60%がアウトオブフェーズであると、検出ステップの間に生産される信号は異なるラベル化ヌクレオチドの組込みのため、適切なヌクレオチドを適切に識別するにはおそらく不均一すぎるであろう。
【0084】
図4A~Gに提示する図面は概略図であり、それらはいくつかの重要なポイントを例示する。例えば、配列決定の多様なサイクルにわたって小レートのフェージングが複合され得る。しかしながら、アンラベル化ヌクレオチドの組込みを通して検出の間にラギングコピー鎖をフェーズにいたらせることは組込みのラウンド後のラギング鎖の数が比較的少ないため、大量の鎖伸長活性を必要としない。それゆえ、アンラベル化ヌクレオチドの組込みについては、アンラベル化ヌクレオチドの組込みについて最適とは言えない条件が許容され得る。それゆえ、鎖伸長酵素の効率および精度を最適化することが意図されていない条件が許容され得る。
【0085】
ブロック化、アンラベル化ヌクレオチドの混合物を含む任意の適切な組成物は使用し得る。いくらかの実施態様では、組成物は、約8から約10までのpH、例えば、約9から約9.5までなどのようなものを有する緩衝化溶液を含む。任意の適切な緩衝剤、例えば、Tris(トリス、tris(hydroxymethyl)aminomethane)緩衝剤などのようなものを使用し得る。ブロック化、アンラベル化ヌクレオチドは、任意の適切な濃度、例えば、約0.001から約15μMまでなどのようなもの、例えば、約0.5μMから約5μMまでのようなもの、例えば、約2μMなどのようなものにおいて存在し得る。組成物は、任意の適切な量のキレート剤、例えば、約0mMから約5mMまでのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、または約0mMから約2mMまでのEDTA、または約0mMから約1mMまでのEDTAなどのようなものを含み得る。組成物は、任意の適切な量の硫酸マグネシウム、例えば、約1mMから約10mMまでのMgSO4、約2mMから約6mMまでのMgSO4、または約4mMのMgSO4などのようなものを含み得る。組成物は、任意の適切な量の洗浄剤を含み得る。例えば、組成物は、重量によって約0.05%から約1%までの洗浄剤、例えば、重量によって約0.1%から約0.5%までの洗浄剤、または重量によって約0.2%の洗浄剤を含み得る。任意の適切な洗浄剤を用い得る。例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(また、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、またはTweenとも称される)または3-[(3-コルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート水和物(CHAPS)洗浄剤を使用し得る。組成物は、任意の適切な量の抗酸化剤を含み得る。例えば、洗浄剤は、約1mMから約50mMまで、例えば、約2mMから約40mMまで、約3mMから約20mMまで、または約15mMから約25mMまでのようなものの組み合わせた合計抗酸化剤濃度において一以上の抗酸化剤を含み得る。適切な抗酸化剤は、アスコルビン酸塩、アセトバニロン、およびTrolox(トロロックス)を含む。なるべくなら、組成物はラベル化ヌクレオチドを含まない。
【0086】
いくらかの実施態様では、ブロック化、アンラベル化ヌクレオチドの混合物を含む組成物は、Tris緩衝剤を含み、約9ないし約9.5のpHを有し、洗浄剤、MgSO
4、EDTA、アスコルビン酸塩、およびアセトバニロンを有する。例えば、組成物は以下の表1において記載するような成分を含み得る:
【表1】
【0087】
開示するのは物質、組成物、および構成要素であり、それらは開示された方法および組成物のために使用することができ、それらと組み合わせて使用することができ、それらのための調製において使用することができ、またはそれらの生産物であるものである。これらのおよび他の物質はここに開示し、およびこれらの物質の組合せ、サブセット、相互作用、グループ、などを開示するとき、それは各種々の個々および集合的な組合せおよび並べ替えの特定の参照は明示的に開示されないかもしれないが、それぞれがここで具体的に企図され、および説明される。例えば、方法が開示および議論され、および方法ステップに行うことができるいくつかの修飾が議論される場合、方法ステップのありとあらゆる組合せおよび並べ替え、ならびに可能な修飾は、特に反対に指示されない限り具体的に企図される。同じく、これらの任意のサブセットまたは組合せも具体的に企図され、および開示される。この概念はこの開示のすべての態様に適用される。それゆえに、実行することができる様々な追加のステップがある場合、これらの各々の追加のステップは開示した方法の任意の特定の方法ステップまたは方法ステップの組合せと共に実行することができること、およびそのような各組合せまたは組合せのサブセットが具体的に企図され、および開示すると考えられるべきであることが理解される。
【0088】
この出願全体を通して、種々の刊行物が参照される。これらの刊行物の開示はそれらの全体においてこの出願への参照によってここに組み込まれる。
【実施例】
【0089】
例1.フェージングの増加は組込み時間の減少と相関する
【0090】
減少した組込み時間のフェージングおよびエラー率に及ぼす影響を理解するために、Illumina MiniSeq(商標)シーケンサーを用い異なる組込み時間を使用して、既知の配列のポリペプチドの配列決定を配列決定した。具体的に、組込み時間は46秒、23秒、および12秒であった。フェージングおよびエラー率間の相関関係を
図5において示す。示されるように、エラー率およびフェージングは長い組込み時間(46秒)にて低く保たれる。しかしながら、組込み時間が短くなると(例は、12秒)、増加したフェージングおよびエラー率がもたらされる。したがって、組込み時間における減少は増加したフェージングおよびエラー率をもたらす傾向がある。
【0091】
例2.検出の間のブロック化、アンラベル化ヌクレオチドによる減少した組込み時間での減少したフェージング
【0092】
検出ステップの間にブロック化、アンラベル化ヌクレオチドおよびポリメラーゼと共にインキュベーションすることによって、フェージングおよびエラー率が影響を受けるかどうかを評価するために、検出ステップの間にIllumina MiniSeq(商標)シーケンサーを用い、(i)製造業者のスキャンミックス(ブロック化、アンラベル化ヌクレオチドおよびポリメラーゼなし-「標準試薬」)、および(ii)修飾したスキャンミックスで、それがブロック化、アンラベル化ヌクレオチドおよびポリメラーゼを含むもの[「ScanAndFill」]を使用して、既知の配列のポリヌクレオチドを配列決定した。ScanAndFillミックスは、ポリメラーゼPol812を含んだ。80サイクルの配列決定は標準スキャンミックスでは25秒および7.5秒の組込み時間およびScanAndFillミックスおよびScanAndFillミックスでは7.5秒の組込み時間を使用して行った。各サイクルでのエラー率、フェージング、およびプレフェージング(そこでコピー鎖はインフェーズコピー鎖を超えて追加のヌクレオチドを組み込む)を決定した。結果を
図6および以下の表2において提示する。
【表2】
【0093】
図6および表2において示すように、ScanAndFillミックスを使用すると、ベースラインにいくらか匹敵するメトリックが得られたが(2×25秒での標準試薬)、その一方でサイクルあたりの合計ケミストリー時間(total chemistry time)は約32%まで減少する(112秒ないし77秒)。表2において指し示すように、エラー率における減少はフェージングにおける減少によるものと考えられる。
【0094】
例3.検出の間のブロック化、アンラベル化ヌクレオチドによる追加のポリメラーゼを伴わない減少した組込み時間での減少したフェージング
【0095】
ScanAndFillミックスにおける追加されたポリメラーゼがフェージング、プレフェージングおよびエラー率に及ぼす影響を評価するために、Illumina MiniSeq(商標)シーケンサーを用い検出ステップの間にポリメラーゼを伴いおよび伴わずにScanAndFillミックスを使用して、既知の配列のポリヌクレオチドを配列決定した。ScanAndFillミックスは、ポリメラーゼを伴うミックスに60μg/ml Pol1671を含むことを除いて同じであったが、それは2018年10月31日付け出願の「Polymerases, compositions, and methods of use」と題する仮の米国特許出願第62/753,558号に記載され、その全体の内容は参照によってここに組み込まれる。ScanAndFillミックスの他の成分はEA緩衝剤;pH9.85;MgSO4;EDTA;例えば、米国特許出願公開第2013/0079232号および2016/0040225号(A-LN3、C-LN3、およびT-LN3))に記載されるように、開裂可能なLN3リンカーを有する蛍光色素を含むように修飾されたA、C、およびTヌクレオチド三リン酸;Dark(ダーク)(アンラベル化)G、およびCHAPSであった。7.5秒の組込み時間を使用した。各サイクルでのQ30、フェージング、およびプレフェージングの値を算出した。「Q30」はQ30品質フィルタを通過する読取りのパーセンテージ、即ち、1000分の1、または0.1%に等しいものより小さい(of less of equal to)エラー率に言及する。結果を
図7において提示する。
【0096】
示されるように、フェージングは追加されたポリメラーゼの存在および不存在下において低いままであり、組込みステップからのポリメラーゼは活性なままであり、および検出ステップの間に存在することが示唆される。驚くべきことに、追加的なポリメラーゼの不存在下に、より一層低いレートのフェージングが観察された。全体的なエラー率はフェージングおよびプレフェージングのレートと同様に、より一層高いQ30値に反映されるように減少した。
【0097】
例4.酸化防止剤の添加はエラー率および信号減衰をさらに減少させる
【0098】
ScanAndFillミックス(ポリメラーゼなし)において添加した抗酸化剤が検出ステップの信号減衰および配列決定エラー率に及ぼす影響を評価するために、Illumina MiniSeq(商標)シーケンサーを用い検出ステップの間にScanAndFillミックスをポリメラーゼなしに、および3mMアスコルビン酸塩を伴いまたは伴わないで使用して、既知の配列のポリヌクレオチドを配列決定した。ScanAndFillミックスは、EA緩衝剤、pH9.85、MgSO4、EDTA、A-LN3、C-LN3、T-LN3、Dark G、およびCHAPSを含んだ。7.5秒の組込み時間を用いて100サイクルの配列決定を行い、およびサイクルあたり25秒の組込み時間により標準スキャンミックスを使用してベースラインと比較した。結果を
図8~9に示す。
【0099】
アスコルビン酸塩の添加はアスコルビン酸塩なしのScanAndFillと比べて実質改善された信号減衰の減少(
図8)およびエラー率での減少(
図9)をもたらした。酸化防止剤を添加すると、75サイクルを超える読み取り長が可能になる。
図9挿入図に示すように、アスコルビン酸塩もまた%Q30を改善した。追加的に、アスコルビン酸塩は%Align PhiXを改善した。
【0100】
同様の結果は他の濃度のアスコルビン酸塩(最大20mMまで)により、さまざまな濃度のアセトバニロン(最大20mMまで)により、およびアスコルビン酸塩とアセトバニロンとの組合せ(データは示さない)で観察された。
【0101】
加えて、pHを変動させてよく、および同様の結果を取得し得る。
【0102】
いくらかの実施態様を説明してきた。それにもかかわらず、様々な修飾がなされ得ることが理解されるであろう。したがって、他の実施形態は以下の請求の範囲の射程内にある。