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特許7542446パラレルリンク機構およびリンク作動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】パラレルリンク機構およびリンク作動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 21/54 20060101AFI20240823BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
F16H21/54
B25J11/00 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021002701
(22)【出願日】2021-01-12
(65)【公開番号】P2022107968
(43)【公開日】2022-07-25
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松澤 英樹
(72)【発明者】
【氏名】野瀬 賢蔵
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-219122(JP,A)
【文献】特開2001-4005(JP,A)
【文献】米国特許第06330837(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 21/54
B25J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側の基端リンクハブと、
先端側の先端リンクハブと、
前記基端リンクハブと前記先端リンクハブとを連結する少なくとも3つのリンク機構とを備え、
前記少なくとも3つのリンク機構の各々は、
前記基端リンクハブから延びる直動体と、
前記直動体に対して回転可能に連結された回転部材と、
前記先端リンクハブに対して回転可能に連結された端部リンク部材と、
前記端部リンク部材および前記回転部材の各々に対して回転可能に連結された中央リンク部材とを含み、
前記少なくとも3つのリンク機構において、
前記直動体は、前記基端リンクハブの主表面に対して交差する第1方向に移動可能であり、
前記先端リンクハブと前記端部リンク部材との第1回転対偶部の少なくとも3つの第1中心軸および、前記端部リンク部材と前記中央リンク部材との第2回転対偶部の少なくとも3つの第2中心軸は、先端リンクハブ中心点で交わり、
前記中央リンク部材と前記回転部材との第3回転対偶部の少なくとも3つの第3中心軸が前記主表面に対して同一の角度を有するように配置される第1状態において、前記第3回転対偶部の少なくとも3つの前記第3中心軸が基端リンクハブ中心点で交わり、
前記回転部材と前記直動体との第4回転対偶部の少なくとも3つの第4中心軸が、前記第3回転対偶部の少なくとも3つの前記第3中心軸の前記基端リンクハブ中心点に向かうベクトル、および前記直動体の移動可能な前記第1方向に沿う直動軸の各々に直交し、
少なくとも3つの前記直動軸の各々から等しい距離にあり前記直動軸に平行に延びる基端リンクハブ中心軸上に前記基端リンクハブ中心点が配置され、
少なくとも3つの前記直動軸の各々から等しい距離にあり前記直動軸に平行に延びる先端リンクハブ中心軸上に前記先端リンクハブ中心点が配置される、パラレルリンク機構。
【請求項2】
前記第1~第3回転対偶部に転がり軸受を備える、請求項1に記載のパラレルリンク機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパラレルリンク機構の前記直動体の外部に取り付けられた直動伝達機構をさらに備えるリンク作動装置であり、
前記直動伝達機構は姿勢制御用駆動源である、リンク作動装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のパラレルリンク機構の前記直動体に取り付けられた直動伝達機構をさらに備えるリンク作動装置であり、
前記直動伝達機構は前記直動体に含まれる、リンク作動装置。
【請求項5】
前記リンク機構および前記直動伝達機構を4つ備える、請求項3または4に記載のリンク作動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パラレルリンク機構およびリンク作動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療機器や産業機器などの各種装置に用いられるパラレルリンク機構が知られている(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-94245号公報
【文献】特許6289973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のパラレルリンク機構は、構成が比較的簡単であるが、各リンクの作動角が小さい。このため、トラベリングプレートの作動範囲を大きく設定すると、リンク長が長くなることにより、機構全体の寸法が大きくなって装置の大型化を招くという問題がある。
【0005】
特許文献2のリンク作動装置は、基端側のリンクハブと先端側のリンクハブとを、4節連鎖の3組以上のリンク機構を介して連結した構成としている。特許文献2のリンク作動装置は、コンパクトでありながら、精密かつ広範な作動範囲の動作が可能である。
【0006】
しかし、特許文献2のリンク作動装置では、3組以上のリンク機構に設けた姿勢制御用の駆動源に対して、先端側のリンクハブが回転2自由度で動作する。そのため、姿勢が変化しても、基端側と先端側との球面リンク中心間の距離は変化しない。つまり特許文献2のリンク作動装置に対して、球面リンク中心間の距離が変化するよう伸縮する方向の自由度を加えるには、リンク作動装置の外側にその全体を伸縮させる機構を必要とする。このためこのようにすれば回転軸の数が過剰に増加してリンク作動装置の構成が複雑となり、リンク作動装置全体が大型になるといった課題があった。
【0007】
本開示は上記の課題に鑑みなされたものである。その目的は、装置を複雑化および大型化させることなく、回転中心から一定の半径を有する球面上を先端部材が移動可能であるとともに、基端側と先端側との球面リンク中心間の距離を変更可能なパラレルリンク機構およびリンク作動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に従ったパラレルリンク機構は、基端側の基端リンクハブと、先端側の先端リンクハブと、基端リンクハブと先端リンクハブとを連結する少なくとも3つのリンク機構とを備えている。少なくとも3つのリンク機構の各々は、直動体と、回転部材と、端部リンク部材と、中央リンク部材とを含む。直動体は基端リンクハブから延びる。回転部材は直動体に対して回転可能に連結される。端部リンク部材は先端リンクハブに対して回転可能に連結される。中央リンク部材は端部リンク部材および回転部材の各々に対して回転可能に連結される。少なくとも3つのリンク機構において、直動体は、基端リンクハブの主表面に対して交差する第1方向に移動可能である。先端リンクハブと端部リンク部材との第1回転対偶部の少なくとも3つの第1中心軸および、端部リンク部材と中央リンク部材との第2回転対偶部の少なくとも3つの第2中心軸は、先端リンクハブ中心点で交わる。中央リンク部材と回転部材との第3回転対偶部の少なくとも3つの第3中心軸が主表面に対して同一の角度を有するように配置される第1状態において、第3回転対偶部の少なくとも3つの第3中心軸が基端リンクハブ中心点で交わる。回転部材と直動体との第4回転対偶部の少なくとも3つの第4中心軸が、第3回転対偶部の少なくとも3つの第3中心軸の基端リンクハブ中心点に向かうベクトル、および直動体の移動可能な第1方向に沿う直動軸の各々に直交する。少なくとも3つの直動軸の各々から等しい距離にあり直動軸に平行に延びる基端リンクハブ中心軸上に基端リンクハブ中心点が配置される。少なくとも3つの直動軸の各々から等しい距離にあり直動軸に平行に延びる先端リンクハブ中心軸上に先端リンクハブ中心点が配置される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、装置を複雑化および大型化させることなく、回転中心から一定の半径を有する球面上を先端部材が移動可能であるとともに、基端側と先端側との球面リンク中心間の距離を変更可能なパラレルリンク機構およびリンク作動装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係るリンク作動装置の、基端リンクハブが水平である状態における正面図である。
図2】実施の形態1に係るリンク作動装置のうち、1組のリンク機構に対応する構成を代表的に示した図である。
図3】実施の形態1のパラレルリンク機構の先端側の端部リンク部材の1つを抽出して示した模式図である。
図4図2中の点線で囲まれた領域IVの概略拡大図である。
図5図4で示す領域の概略拡大断面図である。
図6図4および図5に示される各軸の配置態様の一例を示す概略図である。
図7図1のリンク作動装置において、直動体が基端リンクハブの上方に第1の寸法分だけ突起した状態を示す概略図である。
図8図1のリンク作動装置において、直動体が基端リンクハブの上方に第2の寸法分だけ突起した状態を示す概略図である。
図9図1のリンク作動装置において、直動体が基端リンクハブの上方に第3の寸法分だけ突起した状態を示す概略図である。
図10】実施の形態1の直動体の構成を示す概略図である。
図11図2の先端リンクハブが基端リンクハブに対して傾斜する態様を示す概略図である。
図12】実施の形態1のパラレルリンク機構の3つのリンク機構のうちの1つの一部を抽出して直線で表現した模式図である。
図13】実施の形態2に係るリンク作動装置の、基端リンクハブが水平である状態における正面図である。
図14】実施の形態3に係るリンク作動装置の、基端リンクハブが水平である状態における正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。また説明の便宜上、X方向、Y方向、Z方向が導入されている。
【0012】
(実施の形態1)
<リンク作動装置の構成>
図1は、実施の形態1に係るリンク作動装置の、基端リンクハブが水平である状態における正面図である。図1を参照して、本実施の形態に係るリンク作動装置50は、パラレルリンク機構1と、パラレルリンク機構1の姿勢制御用の姿勢制御用駆動源35a,35b,35cとを備えている。パラレルリンク機構1は、Z方向にたとえば伸縮するように移動(直動)可能な直動体5を備える。第1中心軸16a~16cおよび第2中心軸17a~17cは、先端側の球面リンク中心である先端リンクハブ中心点PBで交わる。第3中心軸18a~18cがXY平面となす角度が等しくなるように配置される第1状態にて、第3中心軸18a~18cが、基端側の球面リンク中心である基端リンクハブ中心点PAで交わる。回転部材8と直動体5との第4中心軸が、第3中心軸18a~18cの基端リンクハブ中心点PAに向かうベクトル、および直動体5の伸縮するように直動(移動)する方向すなわちZ方向に沿う直動軸19a~19cの各々に直交する。直動軸19a~19cの各々から等しい距離にあり直動軸19a~19cに平行に延びる基端リンクハブ中心軸QA上に基端リンクハブ中心点PAが配置される。直動軸19a~19cの各々から等しい距離にあり直動軸19a~19cに平行に延びる先端リンクハブ中心軸QB上に先端リンクハブ中心点PBが配置される。以下、当該パラレルリンク機構1およびリンク作動装置50について詳細に説明する。
【0013】
パラレルリンク機構1は、基端側の基端リンクハブ2に対し先端側の先端リンクハブ3を3組のリンク機構4を介して姿勢変更可能に連結したものである。なお、リンク機構4の数は、4組以上であっても良い。先端リンクハブ3には、図示されないエンドエフェクタが設置される。図1では3つのリンク機構4は周方向に120°ずつ空けて等間隔に設けられているが、このように3つのリンク機構4が周方向に等間隔に設けられなくてもよい。
【0014】
図2は、実施の形態1に係るリンク作動装置のうち、1組のリンク機構に対応する構成を代表的に示した図である。図2では一例として、姿勢制御用駆動源35aに繋がる直動体5に連結されたリンク機構4を抽出している。図2を参照して、各リンク機構4は、直動体5と、端部リンク部材6と、中央リンク部材7と、回転部材8とを含んでいる。これらにより、3つのリンク機構4のそれぞれは、4つの回転対偶部からなる4節連鎖となっている。
【0015】
直動体5は、基端リンクハブ2からZ方向に沿って延びている。より具体的には、基端リンクハブ2は、その主要な面である主表面がたとえばXY平面に沿うように配置可能な平板状の土台10からなる部材である。基端リンクハブ2には、その平面視における中央の基端リンクハブ中心軸QAを通る(中心とする)ようにエンドエフェクタを貫通させることが可能なたとえば円形の貫通孔が形成されていてもよい。また基端リンクハブ2は、中央の上記貫通孔のたとえば周囲に少なくとも3つの貫通孔hを有していてもよい。貫通孔hは基端リンクハブ2の主表面と、これに対向する反対側の主表面との間をZ方向に沿って貫通している。図2においては貫通孔hを貫通可能となるように、直動体5が配置されている。このような構成であってもよい。ただし基端リンクハブ2は貫通孔hを有さず、たとえば直動体5が基端リンクハブ2の外周の外側に隣接する位置に、Z方向に沿って延びるように配置されてもよい。
【0016】
端部リンク部材6は、一端が先端リンクハブ3に対して回転可能に連結されている。中央リンク部材7は、端部リンク部材6および回転部材8の各々に対して回転可能に連結されている。つまり中央リンク部材7の一端には端部リンク部材6の他端が回転自在に連結されている。中央リンク部材7の他端には回転部材8の一端が回転可能に連結されている。なお回転部材8の他端には直動体5の一端が、直動体5に対して回転部材8が回転可能となるように連結されている。このように以下では各部材の「一端」とは先端リンクハブ3側の端部を意味し、各部材の「他端」とは基端リンクハブ2側の端部を意味する。
【0017】
以上より、先端リンクハブ3と基端リンクハブ2との間では、先端リンクハブ3側(Z方向の上側)から基端リンクハブ2側(Z方向の下側)へ、端部リンク部材6、中央リンク部材7、回転部材8、直動体5の順に並ぶように各部材が連結されている。
【0018】
図1図2に示すように、先端リンクハブ3は、平板状の先端部材20と、先端部材20に円周方向に等間隔に配置された3個の回転軸連結部材21とで構成される。各回転軸連結部材21は、軸心が先端リンクハブ中心軸QBと交差する回転軸体22が回転自在に連結されている。このリンクハブ3の回転軸体22に、端部リンク部材6の一端が連結される。端部リンク部材6の他端には、中央リンク部材7の一端に回転自在に連結された回転軸体25が連結される。また中央リンク部材7の他端には、回転部材8の一端に回転可能に連結された回転軸体15が連結される。
【0019】
図1においては基端リンクハブ2の土台10、および先端リンクハブ3の先端部材20は八角形の平板形状であるがこれに限らず、たとえばこれらは六角形の平板形状であってもよい。
【0020】
回転部材8と中央リンク部材7との回転対偶の中心軸O2(A)と、端部リンク部材6と中央リンク部材7との回転対偶の中心軸O2(B)とは、点Aにおいて交差角γで交差する。
【0021】
図3は、実施の形態1のパラレルリンク機構の先端側の端部リンク部材の1つを抽出して示した模式図である。図3には、図1の姿勢のパラレルリンク機構の3つの端部リンク部材6のうちの1つ、およびこれに連結された回転軸体22,25が示されている。なお3つの端部リンク部材6のうち、図3では一例として、姿勢制御用駆動源35aに繋がる直動体5に連結された端部リンク部材6を抽出し示されている。
【0022】
図1および図3を参照して、端部リンク部材6は、L字形状を有する。端部リンク部材6は、1つの湾曲部材30と、この湾曲部材30の両端の外径側の側面と内径側の側面にそれぞれ固定された計4つの回転軸支持部材31とで構成される。本実施例において、端部リンク部材6は、L字形状を有しているが必ずしもL字である必要はない。湾曲部材30は、平面視にて湾曲するように延びるような外観態様を有する部材である。これにより端部リンク部材6の全体が湾曲するように延びている。一方、回転軸支持部材31は直線状(板状)に延びる部材である。
【0023】
回転軸支持部材31は、湾曲部材30の一端と他端とに隣接する領域において、部分的に湾曲部材30と重なっている。この重なった領域において、湾曲部材30および回転軸支持部材31の双方を一続きに、図3の外側から内側まで貫通するように、位置決めピン11bが配置されている。湾曲部材30および回転軸支持部材31には図3の外側から内側まで貫通する貫通孔が形成され、当該貫通孔内に位置決めピン11bが配置可能とされる。位置決めピン11bは湾曲部材30の一端と他端のそれぞれに隣接する領域に1対ずつ、湾曲部材30の延びる方向に間隔をあけて配置されている。1対の位置決めピン11bに挟まれた領域に、たとえば1対のボルト11aが配置されている。1対のボルト11aは、そのうち一方は頭部が図3の湾曲部材30の外側を向き、他方は頭部が図3の湾曲部材30の内側を向くように、言い換えればそれぞれの頭部が互いに反対側を向くように配置されることが好ましい。これら1対のボルト11aが全体として1対の位置決めピン11bに挟まれた領域を貫通するように配置されている。なおそれぞれのボルト11aの頭部は1対の互いに対向する回転軸支持部材31に挟まれた領域の外側に配置される。なお1対のボルト11aのそれぞれは湾曲部材30および回転軸支持部材31に形成され図3の外側から内側まで貫通する貫通孔内に配置可能とされる。位置決めピン11bおよびボルト11aにより、湾曲部材30の延びる方向の一方側および他方側に1対ずつの回転軸支持部材31が固定される。こうして湾曲部材30と合計4つの回転軸支持部材31とが互いに固定された構成の図3の端部リンク部材6が形成されている。
【0024】
また1対の回転軸支持部材31のそれぞれには上記貫通孔の他に、その延びる方向についての湾曲部材30と重なる領域の外側に、他の貫通孔が形成されている。
【0025】
湾曲部材30の延びる方向の一方の回転軸支持部材31にある上記他の貫通孔と、これに連結される回転軸連結部材21に形成される貫通孔とは、同心円状に並ぶように配置される。回転軸連結部材21に形成される貫通孔には転がり軸受26の外輪が嵌められている。また回転軸支持部材31の上記他の貫通孔の内部および転がり軸受26の内輪には回転軸体22(の一部である小径部22b)が挿通されている。回転軸体22は、大径部22aと、小径部22bとにより構成されており、小径部22bの雄ねじがナット22cの雌ねじと嵌合する。これにより回転軸体22は、先端リンクハブ3の回転軸連結部材21と、端部リンク部材6の回転軸支持部材31とを相対的に回転可能な状態で連結する。回転軸体22と転がり軸受26と、当該回転軸体22および転がり軸受26が挿入された回転軸連結部材21と、上記他の貫通孔が形成された回転軸支持部材31の部分とにより、第1回転対偶部R1が構成される。
【0026】
湾曲部材30の延びる方向の他方の回転軸支持部材31にある上記他の貫通孔と、これに連結される中央リンク部材7に形成される貫通孔とは、同心円状に並ぶように配置される。中央リンク部材7に形成される貫通孔には転がり軸受27の外輪が嵌められている。また回転軸支持部材31の上記他の貫通孔の内部および転がり軸受27の内輪には回転軸体25(の一部である小径部25b)が挿通されている。回転軸体25は、大径部25aと、小径部25bとにより構成されており、小径部25bの雄ねじがナット25cの雌ねじと嵌合する。これにより回転軸体25は、中央リンク部材7と、端部リンク部材6の回転軸支持部材31とを相対的に回転可能な状態で連結する。回転軸体25と転がり軸受27と、当該回転軸体25および転がり軸受27が挿入された中央リンク部材7と、上記他の貫通孔が形成された回転軸支持部材31の部分とにより、第2回転対偶部R2が構成される。
【0027】
なお回転軸支持部材31と回転軸連結部材21との間、および回転軸支持部材31と中央リンク部材7との間には、スペーサSが配置されてもよい。
【0028】
図4は、図2中の点線で囲まれた領域IVの概略拡大図である。図5は、図4で示す領域の概略拡大断面図である。図4および図5を参照して、回転部材8は、湾曲部材30および中央リンク部材7と同様の連結用の部材である。ただし回転部材8は、中央リンク部材7よりも、その延びる方向に沿う長さが短いことが好ましい。言い換えれば、回転部材8は、端部リンク部材6の一部(または中央リンク部材7の一部)と同様であるとみなされる。これにより回転部材8の占有するスペースを小さくできる。
【0029】
回転部材8の一端に隣接する領域には、その延びる方向に交差するように貫通孔が形成されている。また中央リンク部材7の他端に隣接する領域にも、回転部材8の上記貫通孔と同じ方向に沿って延びる貫通孔が形成されている。ただし中央リンク部材7の貫通孔は回転部材8の貫通孔よりも外径が大きい。中央リンク部材7に形成される貫通孔には転がり軸受28の外輪が嵌められている。また回転部材8の上記貫通孔の内部および転がり軸受28の内輪には回転軸体15(の一部である小径部15b)が挿通されている。回転軸体15は、大径部15aと、小径部15bとにより構成されており、小径部15bの雄ねじがナット15cの雌ねじと嵌合する。これにより回転軸体15は、中央リンク部材7と、回転部材8とを相対的に回転可能な状態で連結する。回転軸体15と転がり軸受28と、これらが挿入された貫通孔と、これらを貫通する貫通孔が形成された中央リンク部材7および回転部材8の部分とにより、第3回転対偶部R3が構成される。
【0030】
回転部材8の他端に隣接する領域には他の貫通孔が形成されている。この貫通孔は、回転部材8の一端に隣接する領域の上記貫通孔に交差するように形成されている。また直動体5(特に後述する最も断面の径が小さい直動体部51)の一端に隣接する領域にも、回転部材8の他端の上記貫通孔と同じ方向に沿って延びる貫通孔が形成されている。これら2つの貫通孔の内部には1つの回転軸体12が挿通されている。回転軸体12はその外壁が各貫通孔の内壁に対向しながら滑るように配置されている。これにより回転軸体12は、回転部材8を直動体5に対して相対的に回転可能な状態で連結する。たとえば回転部材8を回転させ、回転軸体15のZ方向に対する傾斜角度を変更できる。ただし回転部材8の貫通孔には他の回転対偶部と同様に転がり軸受が挿入され、当該転がり軸受により回転部材8が直動体5に対して回転可能であってもよい。また回転部材8の貫通孔には滑り軸受が設けられ、当該滑り軸受により回転部材8が直動体5に対して回転可能であってもよい。
【0031】
回転軸体12とこれが挿入された貫通孔と、当該貫通孔が形成された直動体5の部分および回転部材8とにより、第4回転対偶部R4が構成される。以上のように、3つのリンク機構4のそれぞれは、4つの回転対偶部(第1回転対偶部R1、第2回転対偶部R2、第3回転対偶部R3および第4回転対偶部R4)を有している。以上のように各回転対偶部には、転がり軸受または滑り軸受などの回転抵抗低減手段が設けられている。
【0032】
図6は、図4および図5に示される各軸の配置態様の一例を示す概略図である。図6を参照して、第4回転対偶部R4の回転軸体12の延びる方向に沿う軸としての第4中心軸20aは、第3回転対偶部R3の回転軸体15の小径部15bの延びる方向に沿う軸としての第3中心軸18aの基端リンクハブ中心点PA(図1図2参照)に向かうベクトルに直交することができる。また第4中心軸20aは、直動体5(直動体部51)の伸縮するように移動可能なZ方向に沿う直動軸19aに直交することができる。図6では、第4中心軸20aはたとえばY方向に沿い、第3中心軸18aは基端リンクハブ中心点PAに向かう図中矢印で示すベクトルがたとえばX方向よりもZ方向下向きに傾斜している。ただし第3中心軸18aの延びる方向は基端リンクハブ中心点PAの位置に応じて変化する。図6では一例として、3つのリンク機構4のうち姿勢制御用駆動源35aに繋がるリンク機構4の各軸について示している。しかしこれに限らず、姿勢制御用駆動源35b,35cに繋がるリンク機構4の各軸についても上記と同様である。
【0033】
図7は、図1のリンク作動装置において、直動体が基端リンクハブの上方に第1の寸法分だけ突起した状態を示す概略図である。図8は、図1のリンク作動装置において、直動体が基端リンクハブの上方に第2の寸法分だけ突起した状態を示す概略図である。図9は、図1のリンク作動装置において、直動体が基端リンクハブの上方に第3の寸法分だけ突起した状態を示す概略図である。図7図9を参照して、直動体5の長さは、第4回転対偶部R4から基端リンクハブ2の上側の主表面までのZ方向の距離として定義することができる。この直動体5の長さは、第4回転対偶部R4と基端リンクハブ2との間において直動体5のどの部分がどの長さだけ露出しているか、その程度に応じて任意に調整できる。直動体5のうち、姿勢制御用駆動源35aに繋がる直動体5aの露出する長さは、アクチュエータとしての姿勢制御用駆動源35aにより制御される。同様に、姿勢制御用駆動源35bに繋がる直動体5bの露出する長さは、アクチュエータとしての姿勢制御用駆動源35bにより制御される。姿勢制御用駆動源35cに繋がる直動体5cの露出する長さは、アクチュエータとしての姿勢制御用駆動源35cにより制御される。図7図9に示すように、1つのパラレルリンク機構1に含まれる直動体5a,5b,5cの露出長さを各々異なるようにすることもできる。たとえば図7図9では3つの直動体のうち直動体5cが最も露出部が長く、直動体5bが露出部の長さが中間であり、直動体5aが最も露出部が短い。以下では代表として露出部が中間の長さの直動体5bの長さをH1~H3として用いながら図7図9の説明がなされる。
【0034】
図7では直動体5bは、直動体5の一部である長さH1だけ、基端リンクハブ2と回転部材8との間にて露出している。図8での直動体5bは長さH2だけ、図9での直動体5bは長さH3だけ、基端リンクハブ2と回転部材8との間にて露出している。これらの長さの大小関係はH1<H2<H3である。
【0035】
図10は、実施の形態1の直動体の構成を示す概略図である。なお図10の直動体5の構成は、直動体5a,5b,5cのすべてに共通である。図10を参照して、Z軸に延びる直動体5は、直動体部51と、直動体部52と、直動体部53とを有している。直動体5の延びるZ方向に交差する断面において、直動体部51の外側にこれを囲むように直動体部52が配置されている。また直動体部52の外側にこれを囲むように直動体部53が配置されている。したがって直動体部51よりも直動体部52の方が外径が大きく、直動体部52よりも直動体部53の方が外径が大きい。少なくとも直動体部52および直動体部53は、直動体部51などを収納可能な筒状(円筒状)を有している。
【0036】
直動体部51は一端に隣接する領域が第4回転対偶部R4として回転部材8と連結されるため、少なくとも直動体部51の一端を含む一部は常時、基端リンクハブ2の上方に露出する。たとえば直動体部51の一部である長さH1だけ露出している状態が図7であり、直動体部51の全部および直動体部52の一部が、合計で図7よりも長いH2だけ露出している状態が図8であり、直動体部51,52の全部および直動体部53の一部が、合計で図8よりも長いH3だけ露出している状態が図9である場合が考えられる。このようにして直動体5は、基端リンクハブ2の主表面に対して交差するZ方向に(沿って)アンテナのように伸縮する。このため直動体5は少なくともその一端である、直動体部51のZ方向上側の端部などがZ方向に移動可能である。
【0037】
直動体5aは、その断面の中心の軸としての、Z方向に沿う直動軸19a,19b,19c(図1参照)が、第4回転対偶部R4から姿勢制御用駆動源35a内まで延びている。したがって直動体5aのうち基端リンクハブ2の上側に露出する部分以外の部分は、たとえば姿勢制御用駆動源35aを示す図7などの直方体状部材の内部に収納されてもよい。すなわちこの場合、直動体5の外部にこれを伸縮するように移動(直動)させる直動伝達機構が取り付けられている。直動伝達機構はたとえば姿勢制御用駆動源35a~35cのアクチュエータである。アクチュエータはたとえば図1における姿勢制御用駆動源35a~35cの内部に収納されている。本実施の形態では、姿勢制御用駆動源35a~35cの直方体状部材は、Z方向に長く延びる(すなわち縦長となる)ように配置されている。これにより姿勢制御用駆動源35a~35cは、リンク作動装置50全体をZ方向上側から平面視したときに、直動体5(直動体5a~5c)と重なるように配置されている。
【0038】
直動体5の伸縮するように行なわれる移動(直動)は、たとえばリニアスライダ、ボールねじ、油圧シリンダ、およびエアシリンダのいずれかの部材により可能である。つまり上記いずれかの部材により多段伸縮機構(直動体部51~53)を有する直動体5が直動体部51~53を適宜露出することにより、直動体5が伸縮し、直動体5の一端などがZ方向に移動(直動)できる。あるいは直動体5は、周囲に減速機を有するモータに接続された態様であってもよい。この場合、たとえばモータの減速された回転トルクが直動体5においてZ方向の移動量に変換される構成であってもよい。
【0039】
再度図1図2図7図9を参照して、本実施の形態の3つのリンク機構4の各々において、先端リンクハブ3と端部リンク部材6との第1回転対偶部R1の回転中心としての第1中心軸16a,16b,16cを考える。第1中心軸16a,16b,16cの各々は姿勢制御用駆動源35a,35b,35cに繋がるリンク機構4のものである。第1中心軸16a,16b,16cは回転軸体22の中心軸である。
【0040】
また端部リンク部材6と中央リンク部材7との第2回転対偶部R2の回転中心としての第2中心軸17a,17b,17cを考える。第2中心軸17a,17b,17cの各々は姿勢制御用駆動源35a,35b,35cに繋がるリンク機構4のものである。第2中心軸17a,17b,17cは回転軸体25の中心軸である。このとき3つの第1中心軸16a~16cおよび3つの第2中心軸17a~17cは先端リンクハブ中心点PBで交わっている。
【0041】
3つのリンク機構4の各々において、中央リンク部材7と回転部材8との第3回転対偶部R3の回転中心としての第3中心軸18a,18b,18cを考える。第3中心軸18a,18b,18cの各々は姿勢制御用駆動源35a,35b,35cに繋がるリンク機構4のものである。第3中心軸18a,18b,18cは回転軸体15の中心軸である。第3中心軸18a~18cが基端リンクハブ2の主表面に沿う平面に対して同一の角度αを有するように配置される第1状態を考える。この第1状態において、第3回転対偶部R3の3つの第3中心軸18a~18cが基端リンクハブ中心点PAで交わる。
【0042】
なお第1状態は、図2における第3中心軸18aのXY平面に対する角度αが、図2に示されない第3中心軸18bのXY平面に対する角度、および図2に示されない第3中心軸18cのXY平面に対する角度に等しい状態である。言い換えれば第1状態は、図1に示す3つの第3中心軸18a~18cのそれぞれがXY平面となす角度αがすべてほぼ等しい状態である。なおここでの角度αが等しい(主表面に沿う平面に対して同一の角度αを有する)とは、全く誤差のない場合に限らず、±0.1°程度以内の誤差を有する場合を含むものとする。
【0043】
図1においては、基端リンクハブ2の主表面と先端リンクハブ3の主表面とが互いに(ほぼ)平行となる(沿う)ように対向している第2状態である。直動体5a,5b,5cの各々の直動軸19a,19b,19cは、すべてZ方向に沿うように延びている。このため直動軸19a~19cは互いに平行である。特に第2状態においては、直動軸19a,19b,19cの各々からの距離が等しい位置に、基端リンクハブ中心軸QAおよび先端リンクハブ中心軸QBが配置されている。具体的には、少なくとも第2状態において、先端リンクハブ中心軸QBは先端リンクハブ3の中心を通り、直動軸19a~19cに平行に(Z方向に)延びている。また基端リンクハブ中心軸QAは基端リンクハブ2の中心を通り、直動軸19a~19cに平行に(Z方向に)延びている。図1の第2状態では、基端リンクハブ中心軸QA上に基端リンクハブ中心点PAが配置され、先端リンクハブ中心軸QB上に先端リンクハブ中心点PBが配置される。
【0044】
<パラレルリンク機構の動作>
図11は、図2の先端リンクハブが基端リンクハブに対して傾斜する態様を示す概略図である。図11を参照して、本実施の形態のリンク作動装置50(パラレルリンク機構1)は、基端リンクハブ2に対する先端リンクハブ3の姿勢が変更されている。すなわち図11においては上記図1の第2状態とは異なり、基端リンクハブ2の主表面と先端リンクハブ3の主表面とが互いに平行とはなっていない。図11においては先端リンクハブ中心軸QBが基端リンクハブ中心軸QAに対して角度を有するように傾斜している。このことは図7図9においても同様である。図7図9では1つのパラレルリンク機構1に含まれる直動体5a,5b,5cの露出長さを各々異なるようにしているためである。つまり図7図9では、露出長さの短い直動体5aの真上で、露出長さの長い直動体5cの真上よりも下側に配置されるように、先端リンクハブ3が水平面に対して傾斜した姿勢となっている。このように直動体5a~5cの各々の露出長さを調整することにより、先端リンクハブ3の姿勢を変更できる。
【0045】
先端リンクハブ中心軸QBの基端リンクハブ中心軸QAに対する方向を任意に変更することにより、基端リンクハブ2に対する先端リンクハブ3の姿勢を任意に変更できる。先端リンクハブ3の姿勢の変更は、姿勢制御用駆動源35a,35b,35cが各リンク機構4のたとえば直動軸19a,19b,19c周りの回転角度を変更することによってもなされる。先端リンクハブ3の姿勢を変更することによって、先端リンクハブ3に設置された図示されないエンドエフェクタの2自由度の角度を制御できる。
【0046】
図12は、実施の形態1のパラレルリンク機構の3つのリンク機構のうちの1つの一部を抽出して直線で表現した模式図である。図12においては、先端リンクハブ3と、リンク機構4の一部である端部リンク部材6および中央リンク部材7とを示している。図12および図2を参照して、基端リンクハブ2の基端リンクハブ中心軸QAと先端リンクハブ3の先端リンクハブ中心軸QBとの折れ角θの最大値を約±90°とすることができる。また、基端リンクハブ2に対する先端リンクハブ3の旋回角φを0°~360°の範囲に設定できる。折れ角θは、基端リンクハブ中心軸QAおよび先端リンクハブ中心軸QBを含む垂直面において基端リンクハブ中心軸QAに対して先端リンクハブ中心軸QBが傾斜した角度のことであり、旋回角φは、基準位置に対して先端リンクハブ中心軸QBの水平面への投影直線がなす角度のことである。また図12に示されないが、直動体5a~5cがZ軸に沿う方向に伸縮移動することにより、基端リンクハブ2と先端リンクハブ3とのZ方向の距離rを任意に変更できる。
【0047】
4節連鎖となるように繋がれた基端リンクハブ2および先端リンクハブ3と、3組のリンク機構4とによって、基端リンクハブ2に対し先端リンクハブ3が直交2軸周りに回転自在な2自由度機構が構成される。2自由度機構は、言い換えると、基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブ3の姿勢を、2自由度で自在に変更可能な機構である。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の可動範囲を広くとれる。
【0048】
<作用効果>
本開示に従ったパラレルリンク機構1は、基端側の基端リンクハブ2と、先端側の先端リンクハブ3と、基端リンクハブ2と先端リンクハブ3とを連結する少なくとも3つのリンク機構4とを備えている。少なくとも3つのリンク機構4の各々は、直動体5と、回転部材8と、端部リンク部材6と、中央リンク部材7とを含む。直動体5は基端リンクハブ2から延びる。回転部材8は直動体5に対して回転可能に連結される。端部リンク部材6は先端リンクハブ3に対して回転可能に連結される。中央リンク部材7は端部リンク部材6および回転部材8の各々に対して回転可能に連結される。少なくとも3つのリンク機構4において、直動体5は、基端リンクハブ2の主表面に対して交差する第1方向(Z方向)に移動可能である。先端リンクハブ3と端部リンク部材6との第1回転対偶部R1の少なくとも3つの第1中心軸16a~16cおよび、端部リンク部材6と中央リンク部材7との第2回転対偶部R2の少なくとも3つの第2中心軸17a~17cは、先端リンクハブ中心点PBで交わる。中央リンク部材7と回転部材8との第3回転対偶部R3の少なくとも3つの第3中心軸18a~18cが主表面に対して同一の角度を有するように配置される第1状態において、第3回転対偶部R3の少なくとも3つの第3中心軸18a~18cが基端リンクハブ中心点PAで交わる。回転部材8と直動体5との第4回転対偶部R4の少なくとも3つの第4中心軸20a(~20c)が、第3回転対偶部R3の少なくとも3つの第3中心軸18a~18cの基端リンクハブ中心点PAに向かうベクトル、および直動体5の移動可能な第1方向(Z方向)に沿う直動軸19a~19cの各々に直交する(図6)。少なくとも3つの直動軸19a~19cの各々から等しい距離にあり直動軸19a~19cに平行に延びる基端リンクハブ中心軸QA上に基端リンクハブ中心点PAが配置される。少なくとも3つの直動軸19a~19cの各々から等しい距離にあり直動軸19a~19cに平行に延びる先端リンクハブ中心軸QB上に先端リンクハブ中心点PBが配置される。
【0049】
第1回転対偶部R1から第4回転対偶部R4まで4つの回転対偶部を有し(4節連鎖)、基端リンクハブ2と先端リンクハブ3とを連結するリンク機構4を3つ以上有する。これにより、基端リンクハブ中心軸QAと先端リンクハブ中心軸QBとの交点PCを回転中心として、基端リンクハブ中心軸QAに対する先端リンクハブ中心軸QBの姿勢を図12の折れ角θと旋回角φとの回転2自由度で調整できる。このため基端リンクハブ2に対する先端リンクハブ3の姿勢を折れ角θと旋回角φとの回転2自由度で変更できる。また3つの直動体5a~5cをいずれも同じ長さ分だけ伸縮するようにZ方向に移動させ、基端リンクハブ中心点PAを第1方向に沿って移動させることで、基端リンクハブ中心点PAと先端リンクハブ中心点PBとの距離を変更できる。このため基端リンクハブ2と先端リンクハブ3との距離を変更できる。さらに3つの直動体5a~5cの長さを個別に調整することによっても、基端リンクハブ2に対する先端リンクハブ3の姿勢を折れ角θと旋回角φとの回転2自由度で変更できる。
【0050】
以上の基端リンクハブ2に対して先端リンクハブ3が回転2自由度および伸縮方向1自由度で移動可能な構成は、上記のように第1中心軸16a~16c、第2中心軸17a~17c、第3中心軸18a~18c、直動軸19a~19cおよび第4中心軸20a,20b,20cが交差することにより可能となる。
【0051】
以上より、本実施の形態によれば、装置全体の構成を複雑にしたり、装置全体を大型化させる必要はない。つまり比較的コンパクトなサイズを維持しつつ、回転中心としての交点PCから一定の半径を有する球面上を先端リンクハブ3が移動可能であるとともに、基端リンクハブ2と先端リンクハブ3との距離を変更可能なパラレルリンク機構1が得られる。
【0052】
上記パラレルリンク機構1において、第1~第3回転対偶部R1,R2,R3に転がり軸受を備えてもよい。このようにすれば、回転対偶部の摩擦を低減できる。
【0053】
本開示に従ったリンク作動装置50は、上記パラレルリンク機構1の上記直動体5の外部に取り付けられた直動伝達機構をさらに備える。当該直動伝達機構は姿勢制御用駆動源35a~35cである。アクチュエータなどの駆動源を外付けすることにより、当該駆動力を利用した直動体5のZ方向の移動が容易となる。
【0054】
(実施の形態2)
図13は、実施の形態2に係るリンク作動装置の、基端リンクハブが水平である状態における正面図である。図13を参照して、本実施の形態に係るリンク作動装置50は、基本的に図1の実施の形態1のリンク作動装置50と同様の構成を有する。ただし本実施の形態では、姿勢制御用駆動源35a~35cの直方体状部材は、直動体5a~5cとXY平面に沿う方向において並ぶように、配置されている。つまり直動体5aと並ぶように姿勢制御用駆動源35aが、直動体5bと並ぶように姿勢制御用駆動源35bが、直動体5cと並ぶように姿勢制御用駆動源35cが、それぞれ配置される。姿勢制御用駆動源35a~35cの直方体状部材は、XY平面上に長く延びるように(すなわち横長となる)ように配置されている。
【0055】
本実施の形態でも実施の形態1と同様に、直動体5a~5cはZ方向に移動(直動)する。ただし本実施の形態では、直動体5を移動させる直動伝達機構が、直動体5自身に含まれている。すなわち直動体5自体が直動伝達機構の少なくとも一部である。具体的には、たとえばZ方向に延びる直動体5は、たとえばラックアンドピニオンのラックである。直動体5としてのラックの歯と、姿勢制御用駆動源35a~35c内から延びる回転軸36に取り付けられたラックアンドピニオンに含まれるピニオンの歯とが、互いに噛み合いながらピニオンが回転する。これにより、ラックとしての直動体5がZ方向に移動する。このようにして直動体5の一端が上下方向に移動する。ただしこのような機構に限らず、本実施の形態の直動体5も、実施の形態1の直動体5と同様に直動体部51~53からなる多段伸縮機構(図10参照)であってもよい。また本実施の形態の直動体5も、実施の形態1と同様に、リニアスライダ、ボールねじ、油圧シリンダ、およびエアシリンダのいずれかにより駆動してもよい。
【0056】
本開示に従ったリンク作動装置50は、上記パラレルリンク機構1の上記直動体5の外部に取り付けられた直動伝達機構をさらに備える。当該直動伝達機構は直動体5a~5cに含まれる。アクチュエータなどの駆動源を直動体5そのものに含ませる(直動体5そのものがアクチュエータなどの駆動源の少なくとも一部である)ことにより、当該駆動力を利用した直動体5の構成が単純となる。
【0057】
(実施の形態3)
図14は、実施の形態3に係るリンク作動装置の、基端リンクハブが水平である状態における正面図である。図14を参照して、本実施の形態に係るリンク作動装置50は、基本的に図1の実施の形態1のリンク作動装置50と同様の構成を有する。ただし本実施の形態では、4組のリンク機構4を有している。これに伴い図14では、4つの直動体5a,5b,5c,5dを備え、4つの直動伝達機構としての姿勢制御用駆動源35a,35b,35c,35dを備えている。ただし本実施の形態では、4つのリンク機構4および4つの直動体5a~5dを有しても、3つの姿勢制御用駆動源35a~35cのみを有し、姿勢制御用駆動源35dを有さない構成であってもよい。また図14での直動伝達機構は実施の形態1と同様の姿勢制御用駆動源35a~35dであるが、これに限らず実施の形態2と同様の直動体5自身に含まれるラックアンドピニオンのラックなどであってもよい。なお5本以上のリンク機構4および直動体5を有し、それらすべてに直動伝達機構が備えられてもよい。あるいは5本以上のリンク機構4および直動体5のうち3本のみに直動伝達機構が備えられてもよい。
【0058】
本開示に従ったリンク作動装置50は、リンク機構4および直動伝達機構を4つ備える。このようにすれば、たとえば当該4つの直動伝達機構を同期制御することにより、リンク機構4が3つの場合に比べて装置全体の剛性を高めることができる。また4つ目のリンク機構4は、先端リンクハブ3の姿勢を変更する駆動用に限らず、たとえば当該姿勢の制御の安定性を高めるために、パラレルリンク機構1の全体に予圧を印加する用途で設けることができる。
【0059】
以上に述べた各実施の形態(に含まれる各例)に記載した特徴を、技術的に矛盾のない範囲で適宜組み合わせるように適用してもよい。
【0060】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
1 パラレルリンク機構、2 基端リンクハブ、3 先端リンクハブ、4 リンク機構、5,5a,5b,5c,5d 直動体、6 端部リンク部材、7 中央リンク部材、8 回転部材、10 土台、11a ボルト、11b 位置決めピン、12,15,22,25 回転軸体、15a,22a,25a 大径部、15b,22b,25b 小径部、15c,22c,25c ナット、16a,16b,16c 第1中心軸、17a,17b,17c 第2中心軸、18a,18b,18c 第3中心軸、19a,19b,19c 直動軸、20 先端部材、20a 第4中心軸、21 回転軸連結部材、22a,25a 大径部、22b,25b 小径部、22c,25c ナット、26,27,28 転がり軸受、30 湾曲部材、31 回転軸支持部材、35a,35b,35c,35d 姿勢制御用駆動源、50 リンク作動装置、51,52,53 直動体部、h 貫通孔、PA 基端リンクハブ中心点、PB 先端リンクハブ中心点、PC 交点、QA 基端リンクハブ中心軸、QB 先端リンクハブ中心軸、R1 第1回転対偶部、R2 第2回転対偶部、R3 第3回転対偶部、R4 第4回転対偶部、S スペーサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14