(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】電磁誘導負荷制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/00 20070101AFI20240823BHJP
H03K 17/00 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
H02M1/00 C
H03K17/00 B
(21)【出願番号】P 2021008339
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】名倉 宏貴
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 甚之
(72)【発明者】
【氏名】佐圓 真
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/013934(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/130669(WO,A1)
【文献】特開2019-002528(JP,A)
【文献】特開2013-204785(JP,A)
【文献】特開2019-154006(JP,A)
【文献】特開2016-127702(JP,A)
【文献】特開2012-109659(JP,A)
【文献】特開平8-113151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00
H03K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電磁誘導負荷に対する通電電流を遮断する電源遮断スイッチ回路を有する電磁誘導負荷制御装置であって、
予め設定されたPWM制御周期内で互いに同期したPWM信号により前記複数の電磁誘導負荷の負荷駆動制御を行い、前記PWM制御周期内において前記複数の電磁誘導負荷の全ての出力デューティがオフになってから次のPWM制御周期が開始するまでの非通電期間に前記電源遮断スイッチ回路の故障診断を実行することを特徴とする電磁誘導負荷制御装置。
【請求項2】
前記故障診断では、前記電源遮断スイッチ回路により前記通電電流を遮断して前記電源遮断スイッチ回路の上流側と下流側の電圧差を検出し、前記電圧差が閾値以上であるときは前記電源遮断スイッチ回路が正常であり、前記電圧差が閾値未満であるときは前記電源遮断スイッチ回路が故障していると判断することを特徴とする請求項1に記載の電磁誘導負荷制御装置。
【請求項3】
前記電源遮断スイッチ回路の故障診断に必要な前記電源遮断スイッチ回路による前記通電電流の遮断時間の長さと前記非通電期間の長さとを比較し、前記遮断時間よりも前記非通電期間の方が長い場合に前記故障診断を実行することを特徴とする請求項2に記載の電磁誘導負荷制御装置。
【請求項4】
前記非通電期間は、前記PWM制御周期と、前記複数の電磁誘導負荷の各出力デューティにおける最長のオン時間とに基づいて算出されることを特徴とする請求項2に記載の電磁誘導負荷制御装置。
【請求項5】
前記複数の電磁誘導負荷において予め設定された出力デューティのオン時間と、前記電源遮断スイッチ回路の故障診断に必要な前記電源遮断スイッチ回路による前記通電電流の遮断時間と、を加算した時間を前記PWM制御周期とし、
前記PWM制御周期内において前記出力デューティのオン時間が経過した後に前記故障診断を実行することを特徴とする請求項2に記載の電磁誘導負荷制御装置。
【請求項6】
前記複数の電磁誘導負荷に対する全ての前記PWM信号を監視する負荷出力監視部を有し、
該負荷出力監視部から出力される出力状態信号に基づいて、前記PWM制御周期内で前記電源遮断スイッチ回路による通電電流の遮断を開始する時点を決定することを特徴とする請求項1に記載の電磁誘導負荷制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導負荷制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車、建設機械、産業用機械の制御システムにおいて、電子制御システムがより重要な役割を担うようになってきている。
【0003】
電子制御ユニットには、その内部、外部に故障が生じた場合に、故障を確実に検知し、機械の動作への影響を最小限にする為、油圧ポンプ等を制御する電磁誘導負荷の通電を遮断する機能の実装が求められる。さらに、その機能自体の確実性を担保するため、遮断の役目を担う回路の故障診断を実施することが求められるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6445699号公報
【文献】特許第4509914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献においては、電子制御ユニットの稼働中に、電源遮断回路に一時的な遮断動作を行わせて故障診断する場合、電源電圧の規格値からの低下はコンデンサの放電時定数で定まる放電動作に従う。したがって、接続負荷が動作可能電圧範囲内で推移するように、コンデンサ容量を考慮した上で電源遮断回路の遮断動作期間の制御を行い、負荷の動作に与える影響を少なくし、電源遮断回路の故障診断を行うことが可能となる技術を記載している。
【0006】
建設機械において上記手法を用いた場合、油圧ポンプ、信号制御弁、コントロールバルブ等を制御する電磁誘導負荷の数が多い為、負荷の通電中に電源遮断回路の故障診断を実施するとコンデンサの電荷が即座に放電し、故障診断が困難になる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、多数の電磁誘導負荷制御中であっても、コンデンサの電荷容量を考慮することなく、負荷電源遮断機能の故障診断を実施することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の電磁誘導負荷制御装置は、
複数の電磁誘導負荷に対する通電電流を遮断する電源遮断スイッチ回路を有する電磁誘導負荷制御装置であって、
予め設定されたPWM制御周期内で互いに同期したPWM信号により前記複数の電磁誘導負荷の負荷駆動制御を行い、前記PWM制御周期内において前記複数の電磁誘導負荷の全ての出力デューティがオフになってから次のPWM制御周期が開始するまでの非通電期間に前記電源遮断スイッチ回路の故障診断を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多数の電磁誘導負荷を制御中である場合にも、負荷の動作に影響を与えることなく電源遮断スイッチ回路を遮断し、その故障診断を行うことができる。本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】油圧ショベル制御部を模式的に示す図である。
【
図2】電磁誘導負荷制御ユニットの回路構成図である。
【
図3】本発明の第1実施形態における、一時遮断フラグの生成過程を説明するタイミングチャートである。
【
図4】本発明の第1実施形態における、一時遮断フラグの生成過程を説明するタイミングチャートである。
【
図5】本発明の第1実施形態における、一時遮断フラグの生成過程を説明するフローチャートである。
【
図6】本発明の第1実施形態における、電源遮断スイッチ回路の故障診断動作を説明するタイミングチャートである。
【
図7】本発明の第1実施形態における、電源遮断スイッチ回路の故障診断動作を説明するタイミングチャートである。
【
図8】本発明の第2実施形態における、電源遮断スイッチ回路の故障診断動作を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するにあたり、
図1に示すような油圧システムを対象とする。
図1に示す油圧システムは、例えばパワーショベルやダンプカーなどの建設機械に搭載される。原動機3はポンプユニット4に回転駆動力を与え、ポンプユニット4はコントロールバルブ5、信号制御弁6のそれぞれに圧油を供給する。
【0012】
コントロールバルブ5は、油圧シリンダ1、油圧モーター2をはじめとする複数のアクチュエータを駆動するため、図示しないスプールによって油圧経路の切り替えを行う。コントロールバルブ5の動作は、主に、信号制御弁6から供給される、アクチュエータ駆動回路よりも低圧の圧油によって制御される。
【0013】
ポンプユニット4、コントロールバルブ5、及び信号制御弁6はいずれも、搭載される電磁誘導負荷14によって、動作の一部または全部の制御が行われる。全ての電磁誘導負荷は、電磁誘導負荷制御ユニット(電磁誘導負荷制御装置)10から供給される電流によって動作する。電磁誘導負荷制御ユニット10は、操作装置15をはじめとする各種外部装置からの入力信号を処理し、電磁誘導負荷に供給する負荷電流の制御を行う。
【0014】
[第1実施形態]
図2は、電磁誘導負荷制御ユニットの構成図である。電磁誘導負荷制御ユニット10は、中央処理部20、電源遮断スイッチ回路21、電圧検出回路23、逆流防止回路27、平滑コンデンサ28、及び負荷駆動回路251、252、・・・、25nを備える。
【0015】
電源遮断スイッチ回路21は駆動電源+VB(バッテリー)と接続されており、後段に逆流防止回路27が接続される。逆流防止回路27の後段には、平滑コンデンサ28が接続され、更にその後段に負荷駆動回路251、252、・・・、25nがそれぞれ互いに並列となるように接続される。
【0016】
電源遮断スイッチ回路21は、スイッチ駆動信号(22)によって制御され、電源遮断スイッチ回路21の下流側に配置された負荷駆動回路251、252、・・・、25nに対して電源電圧を供給または遮断する。また、電源遮断スイッチ回路21は、電磁誘導負荷制御ユニット10の内部あるいは外部で、部品故障や配線短絡をはじめ何らか異常が検出された際に、全ての電磁誘導負荷141、142、・・・、14nの通電電流を遮断する役割を担う。異常時に全ての電磁誘導負荷の通電電流を遮断することで、油圧機器の動作を停止させ、異常に起因する油圧システムの意図せぬ挙動を最小限に抑える。
【0017】
逆流防止回路27は、前段の電源遮断スイッチ回路21の動作と同期し、電源遮断スイッチ回路21が導通状態の場合は、後段の負荷駆動回路251、252、・・・、25nへ電源電圧を供給し、遮断状態の場合は、後段の平滑コンデンサ28から前段の電源遮断スイッチ回路21側に逆流してくる電流を阻止する役割を持つ。さらに、逆流防止回路27は、電磁誘導負荷制御ユニット10の駆動電源+VB(バッテリー)が誤って逆接続された場合に内部回路を保護する役割も併せ持つ。
【0018】
電圧検出回路(電圧検出部)23は、電源遮断スイッチ回路21の上流側と下流側それぞれに接続され、電源遮断スイッチ回路21の上流電圧と下流電圧を検出し、その検出結果を中央処理部20に対して出力する。電源遮断スイッチ回路21が導通している場合は、電源遮断スイッチ回路21の前段監視電圧(24a)と後段監視電圧(24b)は同等となる。電源遮断スイッチ回路21が遮断している場合は、電源遮断スイッチ回路21の前段監視電圧(24a)と後段監視電圧(24b)は互いに乖離した値となる。
【0019】
中央処理部20は異常判定部35、導通指令生成部33、一時遮断フラグ生成部34、負荷駆動信号生成部31、及び負荷出力監視部32を備える。
負荷駆動信号生成部31は、負荷駆動回路251、252、・・・、25nの負荷駆動信号291、292、・・・、29nの生成を行う。
【0020】
導通指令生成部33は、通常運転時には電源遮断スイッチ回路21を導通させる指令を出力するとともに、電磁誘導負荷制御ユニットの内外で何らかの異常が検出された際に遮断指令を出力し、電源遮断スイッチ回路21を遮断させる。さらに、一時遮断フラグ生成部34から出力される一時遮断フラグ信号(341)に従い、電源遮断スイッチ回路21の故障診断のための遮断制御を実行する。
【0021】
一時遮断フラグ生成部34は、負荷出力監視部32からの出力状態信号(32m)に基づいて、導通指令生成部33に対して一時遮断フラグ信号(341)を出力する。
【0022】
負荷出力監視部32は、電源遮断スイッチ回路21の故障診断タイミングを決定するために、負荷出力301、302、・・・、30n(PWM出力)を監視し、出力状態信号(32m)を一時遮断フラグ生成部34に出力する。なお、
図2では監視対象の信号として負荷出力301、302、・・・、30nが入力されているが、本願発明の実施においては負荷駆動信号291、292、・・・、29nを入力してもよい。
【0023】
異常判定部35は、電圧検出部23から出力される検出電圧に基づき、電源遮断スイッチ回路21が正常に動作しているか否かの判定を行うとともに、電源遮断スイッチ回路21の異常が検出された際には負荷駆動信号生成部31から出力される負荷駆動信号291、292、・・・、29nの出力を停止する指令を発行する。
【0024】
負荷駆動回路251、252、・・・、25nは、電磁誘導負荷141、142、・・・14nを駆動するための駆動電圧を制御する回路である。負荷駆動回路251、252、・・・、25nは、還流ダイオード261、262、・・・、26nを備える。中央処理部20は、
図1の操作装置15のような外部装置から来る入力信号に応じて負荷駆動信号291、292、・・・、29nの出力デューティを決定し、負荷駆動回路251、252、・・・、25nを動作させ、電磁誘導負荷141、142、・・・14nに対して通電電流を出力する。負荷駆動回路251、252、・・・、25nが動作状態から非動作状態に変わった後の非動作期間中のみ還流ダイオードを通して還流電流が流れる。
【0025】
図3ならびに
図4は、一時遮断フラグ(341)の生成過程を説明するタイミングチャート、
図5はフローチャートを示す。前述の通り、負荷駆動信号291、292、・・・29nは同期したPWM信号であり、PWM制御周期T内で全ての電磁誘導負荷駆動回路がオフになる非通電期間が存在する。
【0026】
一時遮断フラグ生成部34は、
図5のフローチャートに示す処理をPWM制御周期T内で予め定められた間隔Δt毎に、最大N回実行する。また、一時遮断フラグ生成部34は、カウンタ機能を有し、PWM制御周期T内で
図5のフローチャートに示す処理を実施した回数nを記録する。
【0027】
電源遮断スイッチ回路21の故障診断を確実に実施するためには、一定以上の遮断時間を確保する必要があり、その時間を診断用の遮断時間ΔTsminとする。
【0028】
負荷出力監視部32は負荷出力301、302、・・・、30nの論理和である出力状態信号(32m)を一時遮断フラグ生成部34に出力する。負荷出力監視部32は、全ての負荷出力301、302、・・・、30nの論理和を参照する(S140)。出力状態信号(32m)は、全ての電磁誘導負荷の出力デューティがオフになる非通電状態になるとオフに遷移する。
【0029】
一時遮断フラグ生成部34は、出力状態信号(32m)がオフ(S150でYes)になった時点から次のPWM制御周期が開始するまでの遮断可能時間である非通電期間の長さΔTsを算出(S160)する。そして、非通電期間の長さΔTsが、遮断時間の長さΔTsminよりも大きければ(S170でYes)、当該PWM制御周期の非通電期間ΔTs内において、電源遮断スイッチ駆動信号22を一定時間オフする(S190)。
【0030】
非通電期間の長さΔTsは、PWM制御周期Tと、複数の電磁誘導負荷の各出力デューティにおける最長のオン時間とに基づいて算出できる。具体的には、非通電期間の長さΔTsの算出は、出力状態信号(32m)がオフになったことを検出した時点のカウンタ値nと、PWM制御周期Tのカウンタ最大値Nとの差分をとり、その差分と一時遮断フラグ判定間隔Δtとを乗算することによって求めることができる。
【0031】
図3中(A)の時点で一時遮断フラグ判定処理を実行した場合、
図5のフローチャートにおける分岐について、S110はNo、S130はYes、S140で全負荷出力の論理和を参照し、S150はNoを辿ることで、結果、一時遮断フラグはオフ(S180)で処理は終了する。
【0032】
図3中(B)の時点で一時遮断フラグ判定処理を実行した場合、
図5のフローチャートにおける分岐について、S110はNo、S130はYes、S140で全負荷出力の論理和を参照し、S150はYes、S160で遮断可能時間ΔTsを計算し、S170はYesを辿ることによって、結果、一時遮断フラグはオン(S190)で処理は終了する。
【0033】
図3中(C)の時点で一時遮断フラグ判定処理を実行した場合、
図5のフローチャートにおける分岐について、S110はNo、S130はNoを辿ることによって、結果、一時遮断フラグはオン(S190)で処理は終了する。
【0034】
図3中(D)の時点で一時遮断フラグ判定処理を実行した場合、PWM制御周期Tが終了しカウンタ値はNに到達しているため、S110でYesを辿ることによって、結果、一時遮断フラグはオフ(S180)で処理は終了する。なお、次のPWM制御周期が開始されるにあたり、
図5中S120でカウンタ値のリセットが実行される。
【0035】
さらに、
図4に示すタイミングチャートの(E)の時点について述べる。ここでは
図3と比べ、最大デューティである負荷出力(302)のデューティが
図3に比べて横軸方向に長くなっている。(E)の時点では、
図5におけるS110はNo、S130はYes、S150はYesを辿るものの、S170でNoを辿り、結果、一時遮断フラグはオフ(S180)で処理は終了する。以降の同じ処理において、次のPWM制御周期に移行するまで一時遮断フラグはオンにならない。
【0036】
次に、一時遮断フラグ(341)に対する、導通指令生成部33の振る舞いについて説明する。ここでは、電源遮断スイッチ回路21の故障診断に必要な電源遮断スイッチ回路21による通電電流の遮断時間の長さΔTsminと非通電期間の長さΔTsとを比較し、遮断時間よりも非通電期間の方が長い場合に故障診断を実行する処理が行われる。
【0037】
図6は、電磁誘導負荷制御ユニット10が電源遮断スイッチ回路21の故障診断を実施する過程を説明するタイミングチャートである。時刻t10からt20、およびt20からt30までは、負荷駆動信号291、292、・・・29nの1周期を示す。時刻t10からt11、およびt20からt21は、負荷駆動信号291、292、・・・、29nがオンしている最長の期間、すなわち最大デューティであり、負荷出力301、302、・・・、30nも同様な振る舞いとなる。時刻t11からt20、およびt21からt30は全ての負荷駆動信号291、292、・・・、29nがオフされる期間であり、負荷出力301、302、・・・、30nも同様な振る舞いとなる。
【0038】
一時遮断フラグ生成部34は、前述した通り、故障診断のために必要な遮断時間ΔTsminよりも実際の非通電期間の長さΔTsが長いと判断した場合、一時遮断フラグ(341)を立ち上げる。導通指令生成部33は、一時遮断フラグ(341)の立ち上がりを検出すると、電源遮断スイッチ駆動信号(22)を操作し、所定の時間ΔTsminの期間だけ立ち下げる。
【0039】
電源遮断スイッチ回路21が正常に動作していれば、電源遮断スイッチ駆動信号(22)の立ち下がりに従い負荷駆動回路251、252、・・・、25nの電源が一時遮断される。遮断している期間、後段監視電圧(24b)は低下し、前段監視電圧(24a)との間で電圧差が発生する(図中ΔV)。異常判定部35は、遮断動作中に検出された電圧差ΔVを、予め設定した電圧差しきい値ΔVthと照合することによって、電源遮断スイッチ回路21が正常に動作しているか判定する。例えば、ΔVが所定のしきい値ΔVth以上の場合(ΔV≧ΔVth)、電源遮断スイッチ回路21が正常と判定される。
【0040】
一方、電源遮断スイッチ回路21に異常が発生し、一時遮断時に後段監視電圧(24b)が十分に低下しないと、前段監視電圧との電圧差ΔVは小さくなる(
図7)。ΔVが所定のしきい値ΔVthよりも小さい値で検出された場合(ΔV<ΔVth)、異常判定部35は電源遮断スイッチ回路21が絶縁不良(短絡)故障を起こしたと判定する。異常判定部35が電源遮断スイッチ回路21の故障を検出した場合、駆動信号生成部31は負荷駆動信号291、292、・・・29nをオフする。しきい値ΔVthは、システムの構成や目的に応じて予め設定される。
【0041】
本第1実施形態に係る電磁誘導負荷制御ユニット10は、同期したPWM制御周期内で負荷出力301、302、・・・、30nがオフになる期間に、電源遮断スイッチ回路21の遮断動作を実行する。そのため、平滑コンデンサ28の容量に左右されず、電磁誘導負荷の動作に与える影響を少なくして電源遮断スイッチ回路21の故障診断を実施することができる。
【0042】
本第1実施形態に係る電磁誘導負荷制御ユニット10は、全ての電磁誘導負荷に対する出力の駆動信号の同期をとり、予め定めた周波数でPWM制御を行う。そして、PWM制御周期内に発生する全ての負荷が非通電になる期間ΔTsを、電源遮断スイッチ回路21の故障診断に必要な遮断時間ΔTsmin以上確保できる場合、電源遮断スイッチ回路21を遮断し、電源遮断スイッチ回路21に直列な箇所の電圧に基づいて電源遮断スイッチ回路21を診断する。
【0043】
本第1実施形態に係る電磁誘導負荷制御ユニット10によれば、多数の電磁誘導負荷を制御中である場合にも、負荷の動作に影響を与えることなく電源遮断スイッチ回路の故障診断を行うことができる。そして、電源遮断スイッチ回路21が故障していると診断された場合、負荷駆動信号生成部31により負荷駆動回路251、252、・・・、25nに対する駆動信号の出力を停止することができる。そして、建設機械のオペレータに対して、電源遮断スイッチ回路21に故障が発生していることの表示やアラームにより警報することができる。
【0044】
[第2実施形態]
本第2実施形態に係る電磁誘導負荷制御ユニットは、複数の電磁誘導負荷において予め設定された出力デューティのオン時間と、電源遮断スイッチ回路の故障診断に必要な電源遮断スイッチ回路による通電電流の遮断時間と、を加算した時間をPWM制御周期とし、PWM制御周期内において出力デューティのオン時間が経過した後に故障診断を実行することを特徴とする。
【0045】
対象とする油圧システム及び、電磁誘導負荷制御ユニットの構成は、
図1および
図2と同様とする。第1実施形態との違いは、負荷駆動信号291、292、・・・、29nのデューティに予め上限値を設け、負荷出力301、302、・・・、30nがPWM制御周期T内でオフになる期間を一意に定め、電源遮断スイッチ回路21の故障診断を実施することである。
【0046】
図8は、第2実施形態の電源遮断スイッチ回路21の故障診断動作を説明するタイミングチャートである。図中t40からt50、およびt50からt60は負荷出力の1周期を示す。時刻t40からt41、およびt50からt51は、全ての負荷出力に一律に定められたデューティに相当するオン時間ΔTsmaxとし、全ての負荷出力においてこれを超えるオン時間は禁止されるものとする。また、周期TからΔTsmaxを減算した時間幅ΔTsminは、電源遮断スイッチ回路21の故障診断に必要な時間である。
【0047】
一時遮断フラグ生成部34は、ΔTsminが確保可能な時刻t41で遮断フラグ(341)を立てる。導通指令生成部33は遮断フラグ(341)を検知すると、電源遮断スイッチ駆動信号(22)を制御し、電源遮断スイッチ回路21の故障診断を実行する。
【0048】
第2実施形態では、故障診断に必要な時間ΔTsminがPWM制御周期内で必ず確保される為、電源遮断スイッチ回路21の故障診断を意図したタイミングで実行できる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1・・・油圧シリンダ、2・・・油圧モーター、3・・・原動機、4・・・ポンプユニット、5・・・コントロールバルブ、6・・・信号制御弁、10・・・電磁誘導負荷制御ユニット、14・・・電磁誘導負荷、15・・・操作装置、141、142、14n・・・電磁誘導負荷、20・・・中央処理部、21・・・電源遮断スイッチ回路、(22)・・・スイッチ駆動信号、23・・・電圧検出回路(電圧検出部)、(24a)・・・前段監視電圧、(24b) ・・・後段監視電圧、251、252、25n・・・負荷駆動回路、261、262、26n・・・還流ダイオード、27・・・逆流防止回路、28・・・平滑コンデンサ、291、292、29n・・・負荷駆動信号、301、302、30n・・・負荷出力、31・・・負荷駆動信号生成部、32・・・負荷出力監視部、(32m)・・・出力状態信号、33・・・導通指令生成部、4・・・一時遮断フラグ生成部、35・・・異常判定部