(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】施工実績データ管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20240823BHJP
【FI】
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2021022228
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100184712
【氏名又は名称】扇原 梢伸
(74)【代理人】
【識別番号】100192223
【氏名又は名称】加久田 典子
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 廣海
(72)【発明者】
【氏名】桑名 春人
(72)【発明者】
【氏名】安藤 徹
【審査官】菅原 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-166156(JP,A)
【文献】特開2011-170496(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0336652(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも建設物の所在地及び施工内容を含む施工実績データを蓄積した施工実績データベースを備え、
GISデータと前記施工実績データベースとを関連付けて参照可能とするデータ連係手段と、
建設を予定する建設計画地を取得すると、前記建設計画地に関連付けられた災害リスクをGISデータから抽出し、当該抽出した災害リスクへの対策が施された対策工を施工内容に含む施工実績データを前記施工実績データベースから抽出する計画地別抽出手段と、
前記計画地別抽出手段の抽出結果である施工実績データを出力する出力手段と
を備えた施工実績データ管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の施工実績データ管理システムにおいて、
前記計画地別抽出手段は、
抽出した災害リスクの種別及び危険度を含むリスク条件とともに、前記建設計画地の用途地域区分及び地形分類を含む土地条件をGISデータから合わせて抽出し、当該抽出したリスク条件及び土地条件の中から指定された条件に一致する施工実績データを前記施工実績データベースから抽出することを特徴とする施工実績データ管理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の施工実績データ管理システムにおいて、
前記出力手段は、
前記施工実績データの出力に先立って前記計画地別抽出手段が抽出したリスク条件及び土地条件を出力することにより、前記計画地別抽出手段へのリスク条件及び土地条件の指定を可能とすることを特徴とする施工実績データ管理システム。
【請求項4】
少なくとも建設物の所在地及び施工内容を含む施工実績データを蓄積した施工実績データベースを備え、
GISデータと前記施工実績データベースとを関連付けて参照可能とするデータ連係手段と、
予定する建設物が対策を要する災害リスクを要対策リスクとして取得することで、前記要対策リスクに該当する災害リスクがGISデータ上で関連付けられた土地にて施された対策工を施工内容に含む施工実績データを前記施工実績データベースから抽出する災害リスク別抽出手段と、
前記災害リスク別抽出手段の抽出結果である施工実績データを出力する出力手段と
を備えた施工実績データ管理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の施工実績データ管理システムにおいて、
前記災害リスク別抽出手段は、
災害リスクの種別及び危険度を含むリスク条件が指定されることで前記要対策リスクを抽出し、前記リスク条件に該当する災害リスクをGISデータ上で関連付けられた前記土地を抽出し、前記土地に施された対策工を含む施工実績データを前記施工実績データベースから抽出することを特徴とする施工実績データ管理システム。
【請求項6】
少なくとも建設物の所在地及び施工内容を含む施工実績データを蓄積した施工実績データベースを備え、
GISデータと前記施工実績データベースとを関連付けて参照可能とするデータ連係手段と、
災害リスク対策として実施可能な複数の対策工の中から選択対策工を選択すると、前記施工実績データベースに蓄積された施工実績データから前記選択対策工に関係する施工内容を抽出する対策工別抽出手段と
を備えた施工実績データ管理システム。
【請求項7】
請求項6に記載の施工実績データ管理システムにおいて、
前記対策工別抽出手段は、
災害リスクの種別及び危険度を含むリスク条件がさらに指定されることで前記災害リスクに必要となる対策工を前記選択対策工として取得することを特徴とする施工実績データ管理システム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の施工実績データ管理システムにおいて、
前記対策工別抽出手段が抽出した施工内容についての統計処理を実行する処理手段と、
前記処理手段の処理結果である施工内容についての統計データをGISデータと関連付けて出力する出力手段と
をさらに備えた施工実績データ管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設物の災害対策に適用可能な施工実績データ管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、災害対策に適用されるシステムの先行技術として、土砂災害システムや砂防情報システム、震度情報システム等の所定地域内に設置された各種の防災システムを統合し、各防災システムで取り扱う情報をリアルタイム且つ一括で収集しながら、運用と管理を行う統合防災システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この先行技術は、所定地域内に設置した複数の計測手段から収集した水位や雨量、震度等の計測情報をGIS情報と統合して情報出力する。出力した統合情報は、災害予防や避難勧告の発出等の防災計画を動的に立案する際に利用したり、将来のシステム環境整備に反映させたりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した先行技術は、既存施設がある地域内で防災計画を立案したり、今後のシステム環境を整備したりする用途にはある程度利用できると考えられる。
【0005】
しかしながら、新たな土地での建設を計画する場合、建設予定施設の事業継続計画(BCP)や災害対策工を検討するためには、その都度、建設計画地の土地情報に基づく様々な災害リスク情報を一から個別に参照しなければならないため、既存の防災システムでは役に立たない。
【0006】
例えば、建築物等の施設を新たに計画する際には、土地特有のリスク条件が建設候補地それぞれについて異なるため、その都度、ハザードマップ等を参照して災害リスクを把握したり、近隣のボーリングデータベースを参照して地盤条件を把握し、必要な災害対策工や基礎の形式を検討したりする必要がある。特に、建設費の概算見積もりを行う上では、このような細かいプロセスが不可欠である。また、そうやって施設が建設された後は、自然災害等により被災した際の施設の点検結果や補修等の記録は、当該施設に対しては活用されてきたものの、同様の条件で被災が想定される他の施設に対してシステマチックに活用できるものではなかった。
【0007】
そこで本発明は、建設計画に際して災害対策に適用可能なシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、施工実績データ管理システムを提供する。このシステムは、以下の第1~第3システムの構成をとる。
【0009】
〔第1システム〕
第1システムは、建設計画地から概算見積に必要な情報を得やすくするものである。本システムは、例えば建設事業者が保有する施工実績データを蓄積した施工実績データベースを有する。施工実績データは、少なくとも建設物の所在地及び施工内容を含むものであり、施工内容には、災害リスクに対して建設物に施された対策工や、工事費用等の情報を含むことができる。また本システムは、ハザードマップ等を含むGISデータと施工実績データベースとを関連付けて参照可能とする機能を有する。この関連付けは、例えば施工実績データベース上の所在地や対策工が対応する災害リスク等のデータをハザードマップ等のGISデータと連係させて利用できることを意味する。
【0010】
そして第1システムは、これから建設を予定する建設計画地を取得すると、その建設計画地に関連付けられた災害リスクをハザードマップ等のGISデータから抽出し、その抽出した災害リスクに対して施された対策工を施工内容に含む施工実績データをデータベースから抽出することができる。そのようにして抽出した施工実績データを出力することで、これから建設を計画する土地に対して必要な対策工としてどのようなものがあるか、対策工費がどの程度必要になるかといった概算見積もりに有用な情報を容易に得ることができ、建設計画に必要なトータルコストをイメージしやすくなる。
【0011】
第1システムによれば、例えば施設用途、規模(階高、延べ床面積等)、想定されるハザード条件(想定浸水深、土砂災害の種別、想定最大震度等)、基礎形式(杭長等)、用途地域区分等の条件から、複数の条件が一致する過去の施工実績を自動的に抽出し、見積や設計情報を表示することができる。また、想定されるハザード情報から、実際に同様の災害で被災した施設の点検結果や補修記録が施工実績データベースから自動的に抽出され、計画案として提示することもできる。
【0012】
〔第2システム〕
第2システムは、特定の災害リスク(想定浸水深、想定震度、液状化危険度等)から概算見積もりに必要な情報を得やすくするものである。第2システムもまた、第1システムと同様の施工実績データベースを備える。また、第2システムは、ハザードマップ等を含むGISデータとの連係を可能とする機能を有する。第2システムの場合、これから建設を予定する建設物がどのような災害リスクに対策を要するかの情報を要対策リスクとして取得する。そして、対策を要する災害リスクがハザードマップ等のGISデータ上で関連付けられた土地にて施された対策工を施工内容に含む施工実績データをデータベースから抽出する。そのようにして抽出した施工実績データを結果出力することで、これから建設を計画する建設物が対策を要する土地の災害リスクを想定するだけで、実際の土地で施された対策工としてどのようなものがあるか、対策工費がどの程度必要になるかといった概算見積もりに有用な情報を容易に得ることができ、建設計画に必要なトータルコストをイメージしやすくなる。
【0013】
第2システムによれば、特定の災害リスク(想定浸水深、想定震度、液状化危険度等)を指定すると、そのリスクがある土地に建設された施工実績を抽出することができる。また、施工実績データベースには、建設後の被災記録や復旧工事の記録を紐づけて登録することができ、実際の災害で建物に生じた被害等をリストアップすることができる。これにより、建設計画地が災害リスクを有する土地に決まっている場合に、同様の土地条件での対策工を含む施工実績を対策工選定のための条件にしたり、採用された対策工と被害実績、補修実績を対比したりして、最適な対策工諸元を決定するための条件にすることができる。
【0014】
〔第3システム〕
第3システムは、予め災害対策工を選択・指定すると、これまでに蓄積された施工実績データを統計し、その結果をGISデータと関連付けて提示するものである。第3システムは、第1、第2システム同様に施工実績データベースを備える。また、第3システムは、ハザードマップ等を含むGISデータとの連係を可能とする機能を有する。その上で、第3システムの場合、災害リスクに必要な対策工の中から指定された選択対策工を取得すると、その選択対策工に関係する施工内容をデータベースから抽出することができる。これにより、選択対策工が実際に採用された施工実績として、どのようなものがあるかを容易に確認することができる。さらに、第3システムは、それらの統計データ(対策工の採用率、平米あたりの平均対策工費、最小・最大・平均の対策工規模(止水板高さ、免制震装置諸元、薬液注入量等))を地図上にコンター図やヒートマップ等の形式で表すことができる。これにより、対策工費の高低度合いや対策工別の採用率といった施工実績の数値的な分布を地図上に視覚化し、今後の建設候補地を選定する場面では、災害対策工に要する費用を見積もることができ、最適な建設地を選定する計画に資することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、建設計画に際して災害対策に適用可能なシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】施工実績データ管理システム100の構成を示すブロック図である。
【
図2】施工実績データベース110に蓄積・記録される施工実績データの構成例を示す図である。
【
図3】システム処理(1)の手順例を示すフローチャートである。
【
図5】項目の選択及び抽出結果の出力例を示す概要図である。
【
図6】システム処理(2)の手順例を示すフローチャートである。
【
図7】要対策リスク情報の入力とデータ抽出結果の出力例を示す概要図である。
【
図8】システム処理(3)の手順例を示すフローチャートである。
【
図9】災害対策工情報の入力と施工実績データの抽出、そして統計データを地形図データと関連付けた出力例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の実施形態では、施工実績データ管理システムの好適な一例を挙げているが、本発明の形態は例示のものに限らない。
【0018】
〔システムの構成例〕
図1は、施工実績データ管理システム100の構成を示すブロック図である。
図1には施工実績データ管理システム100のブロック構成とともに、施工実績データ管理システム100に関係する要素もまた、合わせて示されている。
【0019】
施工実績データ管理システム100は、施工実績データベース110を有する。施工実績データベース110には、例えば本システム100の所有者である建設事業者や、本システム100の利用者、運用者、管理者等が保有する過去の施工実績が所定のデータフォーマットで記録・蓄積されている。施工実績としては、例えば過去に採用された災害対策工、工事費、施設の諸元、対策工の諸元、顧客満足度・評価等が挙げられるが、これらに限られない。なお、施工実績データベース110の構成例については、別の図面を用いてさらに後述する。
【0020】
施工実績データ管理システム100は、GISデータ120と連係することが可能である。GISデータ120は、例えば一般に公開されている外部システムを利用することもできるし、独自に構築することもできる。本システム100では、GISデータ120が提供するハザードマップ122、都市計画上の用途地域124、地盤情報126等のデータを利用することができる。利用可能なハザードマップ122としては、例えば土砂災害警戒区域、洪水浸水想定区域、津波浸水想定区域、想定最大震度、液状化危険度等の分布を地図データ等で表したものが挙げられる。また、都市計画上の用途地域124としては、例えば第一種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、商業地域、準工業地域、工業地域等の区分を地図データ等で表したものが挙げられる。地盤情報126としては、例えば地形分類、ボーリングデータ、表層地盤の土質、地すべり地形、旧地形、過去の土地利用状況等の情報を地図データ等で表したものが挙げられる。なお、GISデータ120には、これら以外のものが含まれていてもよい。
【0021】
施工実績データ管理システム100は、中枢部分に例えば管理制御部130を備える。管理制御部130は、例えば汎用のサーバ型コンピュータを用いたり、パーソナルコンピュータを用いたり、ワークステーション型コンピュータを用いたりすることができる。管理制御部130は、機能的な要素として入力処理部132、出力処理部134、データ連係部136、データ抽出部138、演算部140等を備える。これらの機能的な要素は、例えば管理制御部130のハードウェア資源や、これを用いたソフトウェア処理によって実現することができる。
【0022】
管理制御部130には、例えば端末機器150が接続されており、端末機器150は、ディスプレイ152等の表示装置、キーボード154やマウス156等の入力装置、プリンタ等の出力装置158である。なお、管理制御部130がサーバ型コンピュータである場合、端末機器150をリモートのクライアントコンピュータとしてもよい。
【0023】
管理制御部130の機能的要素について概略的に説明すると、入力処理部132は、端末機器150からの信号入力処理を行い、管理制御部130内での処理に供する。出力処理部134は、逆に端末機器150への信号出力処理を行い、端末機器150での処理に供する。データ連係部136は、GISデータ120との連係を可能にする。特に本システム100では、施工実績データベース110とGISデータ120とを関連付けて利用する処理を行うことができる。なお、データ連係部136による処理については、具体例を挙げてさらに後述する。
【0024】
データ抽出部138は、データ連係部136で関連付けた施工実績データベース110とGISデータ120を元に、そこから必要なデータを抽出する処理を行う。抽出したデータは、例えば出力処理部134から端末機器150に出力して提供したり、さらに管理制御部130内で演算部140に提供したりすることができる。なお、データ抽出部138による処理についても、具体例を挙げてさらに後述する。
【0025】
演算部140は、例えばデータ抽出部138が抽出したデータを用いた演算処理を行う。演算処理の結果は、例えば出力処理部134から端末機器150に出力して提供することができる。なお、演算部140による処理についても、具体例を挙げてさらに後述する。
【0026】
〔システムアップデート〕
以上の構成から本実施形態の施工実績データ管理システム100が構築されているが、
図1に示されているように、本システム100は、施工実績データベース110及びGISデータ120について適宜アップデートが行われる。すなわち、施工実績データベース110には、事後的に施工実績データの更新・追加が行われる。例えば、新規施工実績の追加、施設ごとのアフターフォロー記録、施設完成後の被災履歴・被害情報、施設ごとのメンテナンス記録、施設被災後の補修工事記録等のデータが適宜、施工実績データベース110に追加・更新される。
【0027】
また、GISデータ120は、例えば外部機関によるデータ更新・追加が行われている。例えば、ハザードマップ122については、マップの再整備に伴う追加・更新が行われる。都市計画上の用途地域124については、行政上の都市計画変更に伴う更新等が行われる。また、地盤情報126については、新規ボーリングデータ等が随時追加・更新されている。
【0028】
〔施工実績データベース〕
図2は、施工実績データベース110に蓄積・記録される施工実績データの構成例を示す図である。施工実績データ管理システム100は、施工実績データベース110を構築することによって運用が可能となる。また、上記のように施工実績データベース110をアップデートすることで、より有用性を高めることができる。
【0029】
施工実績データベース110は、例えば大きく分けて入力データDI及び自動計算データDCから構成されている。入力データDIには、
図2の左カラムから順に示すように、施設名、位置情報(緯度経度、住所)、総工費、規模、対策工等の施工内容を表す各種データが含まれており、このうち規模には、法定床面積及び地上階数の情報がさらに含まれ、また、対策工には、種別、施工方法・メーカー等及び対策工費の情報がさらに含まれている。施工実績データベース110の構築に際して、建設事業者は過去の施工実績データをこれらのフォーマットに従って入力する。
【0030】
自動計算データDCには、対策工費の割合として、法定床面積あたり対策工費(円/m2)、地上階数あたり対策工費(億円/階)、総工費に占める対策工費の割合(%)といったデータが含まれる。これらの自動計算データDCは、入力データDIに基づいて自動的に計算され、施設名に紐づけて施工実績データベース110内に記録される。あるいは、自動計算データDCは、必要とするタイミングで入力データDIを用いて動的に計算されることとしてもよい。
【0031】
次に、施工実績データ管理システム100の利用例について説明する。施工実績データ管理システム100は、例えばユーザが何らかの条件を指定・入力すると、内部で必要な処理を実行し、その結果をユーザに返すことができる。施工実績データ管理システム100の管理制御部130は、ユーザの様々な利用パターンに応じて、以下に挙げる複数の処理を実行することができる。
【0032】
〔システム処理(1)〕
図3は、施工実績データ管理システム100の管理制御部130で実行されるシステム処理(1)の手順例を示すフローチャートである。このシステム処理(1)は、例えばユーザが施設の建設を予定する建設計画地が決まっている場合に実行することができる。以下、手順例に沿って説明する。
【0033】
ステップS100:管理制御部130は、計画条件入力処理を実行する。この処理では、例えば端末機器150を通じて建設計画地の情報が取得される。また適宜、用途や規模といった計画施設の諸元が取得される。端末機器150は、例えば本システム100のユーザにより操作される。ユーザは、施設の建設を予定する建設計画地の情報を、端末機器150を用いて入力する。建設計画地の情報は、例えばディスプレイ152上に表示される地図上で位置を指定(マウス156のクリック操作、範囲指定操作等)してもよいし、キーボード154で住所を入力したり、緯度経度を入力したりしてもよい。また、計画施設の諸元は、例えばディスプレイ152の画面上で表示される選択肢の中から選択したり、入力欄にキーボード154で入力したりすることができる。いずれにしても、建設計画地の情報や計画施設の諸元といった計画条件を取得すると、管理制御部130は次のステップS102に移行する。
【0034】
ステップS102:管理制御部130は、GISデータ参照処理を実行する。この処理では、管理制御部130のデータ連係部136がGISデータ120のハザードマップ122を参照し、取得した建設計画地で想定される災害リスク(ハザード)の種別や危険度といった情報を抽出する。例えば、今回の建設計画地が「A県B市C町○○番地」であったとすると、その建設計画地に想定されている各種の災害リスク(洪水浸水リスク、津波浸水リスク、土砂災害リスク等)とそれらの危険度をハザードマップ122から自動抽出する。
【0035】
〔災害リスク(ハザード)の抽出例〕
ここで、
図4は、ステップS102の実行に伴う災害リスクの抽出例を示す概要図である。上記のように、端末機器150から建設計画地を入力すると、管理制御部130がデータ連係部136によりGISデータ120を参照し、今回の建設計画地(図中に「計画地」で示す)に対して想定されている各種の災害リスク及びその危険度を、各種ハザードマップ122a~122gから抽出する。今回の抽出例では、津波ハザードマップ122aから「津波浸水リスクが3~5m」であること、洪水ハザードマップ122bから「洪水浸水リスクが1~2m」であること、土砂災害ハザードマップ122cから「土砂災害リスクが無し」であること等が抽出されたことになる。なお、その他のハザードマップ122d~122gからも、それぞれ建設計画地に対して想定される「土石流リスク」、「急傾斜地崩壊リスク」、「地すべりリスク」、「想定震度」・・・等が土地によっては抽出される場合があるが、今回の建設計画地では抽出されなかったものとして図示を省略している。また、図示していないが、管理制御部130は、建設計画地の用途地域区分、地形分類等の土地条件を都市計画上の用途地域124から自動抽出し、次にステップS104を実行する。
【0036】
〔
図3:システム処理(1)続き〕
ステップS104:次に管理制御部130は、項目選択処理を実行する。この処理では、先のステップS102で自動抽出した災害リスクとその危険度、土地条件の情報を出力処理部134から端末機器150に出力して返すことで、ユーザによる任意の項目選択操作を可能にする。ユーザは、例えばディスプレイ152に表示されている計画施設の諸元や、返された災害リスクと危険度、土地条件等の中から所望の項目を選択することができる。なお、抽出したデータを端末機器150に返すのは、先のステップS102で行うこととし、ここでは項目選択操作の入力だけを受け付けることとしてもよい。管理制御部130は、選択された項目を端末機器150から取得すると、次にステップS106を実行する。
【0037】
ステップS106:管理制御部130は、施工実績データ抽出処理を実行する。この処理では、データ連係部136が施工実績データベース110を検索すると、データ抽出部138が先のステップS104で選択された項目について条件が一致する施工実績データを抽出する。なお、施工実績データベース110の検索は、データ抽出部138が行ってもよい。そして、次にステップS108を実行する。
【0038】
ステップS108:管理制御部130は、データ出力処理を実行する。この処理では、先のステップS106で抽出した施工実績データの結果を端末機器150に出力する。これを受けて端末機器150では、ディスプレイ152に施工実績データの抽出結果を表示し、ユーザの確認に供することができる。また、抽出結果はプリンタ等の出力装置158から印刷出力することもできる。
【0039】
〔項目選択及び抽出結果出力例〕
図5は、ステップS104,S106の実行に伴う項目の選択及び抽出結果の出力例を示す概要図である。
図5中の左上欄に示されているように、今回の建設計画地に対して自動抽出された各種の災害リスクは、端末機器150のディスプレイ152等に表示してユーザが確認することができる。そしてユーザは、例えばマウス156を用いてディスプレイ152上で項目選択操作を行うことができる。今回の例では、自動抽出された想定災害リスクの「津波浸水リスクが3~5m」、「洪水浸水リスクが1~2m」、「土砂災害リスクが無し」の全ての項目が選択されている(図中のチェックマーク)。また、ディスプレイ152に表示された施工実績データベース110の登録情報の「用途」、「構造」、「総工費」、「規模」・・・等の中から、今回の建設計画地が該当する用途地域区分「工場」の項目が選択されている(図中のチェックマーク)。なお、ここでは図示されていないが、土地条件に地形分類の項目がある場合は、当該項目の選択も可能である。
【0040】
次に、
図5中の右側欄に示されているように、管理制御部130では、選択された項目について条件が一致する施工実績データを抽出する。この抽出例では、選択された項目の条件である「津波浸水リスクが3~5m」、「洪水浸水リスクが1~2m」、「土砂災害リスクが無し」に対応する対策工が過去に施工されており、かつ、用途地域区分が「工場」に該当する土地で施工された施設の施工実績データが2例、抽出されている(図中に「OUTPUT」で示す)。
【0041】
そして、
図5中の左下欄に示されているように、端末機器150に抽出結果が出力され、ディスプレイ152での表示が行われる。この例では、施工実績データ2例の施設に紐づけられた「対策工費」、「被災/補修履歴」・・・等が表示されている。ユーザは、これらの施工実績データを参考情報として利用することで、今回の建設予定施設と条件が類似する施設で実際に採用された対策工費がどの程度の規模であるかを知ることができる。また、施工実績データに紐づけられた既存の見積書、採用された対策工や技術、設計図、竣工図等を適宜参照することで、概算見積もりや概略計画を作成する際の参考情報として利用することができ、効率良く工事の見積もりや計画を立てることができる。
【0042】
〔システム処理(2)〕
次に
図6は、システム処理(2)の手順例を示すフローチャートである。このシステム処理(2)は、例えばユーザが予め特定の災害リスクを指定することで、施工実績データを今後の建設計画の参考にする場合に利用することができる。以下、手順例に沿って説明する。
【0043】
ステップS200:管理制御部130は、リスク条件入力処理を実行する。この処理では、例えば端末機器150を通じて要対策リスクの情報が取得される。要対策リスクの情報は、これから建設を予定する施設(建設物)がどのような災害リスクへの対策を必要とするかの情報である。要対策リスクの情報は、例えばディスプレイ152上に表示される選択肢の中からユーザが選択(マウス156のクリック操作等)したり、入力欄にキーボード154で入力したりすることができる。また、このときユーザは、要対策リスクの情報として、リスク種類ごとに危険度を詳細に指定することもできる。いずれにしても、要対策リスクの情報を取得すると、管理制御部130は次のステップS202に移行する。
【0044】
ステップS202:管理制御部130は、GISデータ参照処理を実行する。この処理では、管理制御部130のデータ連係部136がGISデータ120のハザードマップ122を参照し、取得した要対策リスクの種別や、リスクごとの危険度等の条件が関連付けられた土地をピックアップし、次のステップS206に進む。
【0045】
ステップS206:管理制御部130は、施工実績データ抽出処理を実行する。この処理では、先のステップS202でピックアップした土地で施された対策工が施工内容に含まれている施工実績データをデータ抽出部138が探索し、施工実績データベース110から抽出する。そして、次にステップS208を実行する。
【0046】
ステップS208:管理制御部130は、データ出力処理を実行する。この処理では、先のステップS206で抽出した施工実績データの結果を端末機器150に出力する。これを受けて端末機器150では、ディスプレイ152に施工実績データの抽出結果を表示し、ユーザの確認に供することができる。また、抽出結果はプリンタ等の出力装置158から印刷出力することもできる。
【0047】
〔情報入力及び抽出結果出力例〕
図7は、システム処理(2)の実行に伴う要対策リスク情報の入力とデータ抽出結果の出力例を示す概要図である。
図7中の左上欄に示されているように、要対策リスク情報の入力は、端末機器150のディスプレイ152等に表示された選択肢の中から、例えばマウス156を用いてユーザが選択・指定することができる。今回の例では、想定する要対策リスクとして「洪水浸水リスク」と「津波浸水リスク」があり、このうち「洪水浸水リスク」の危険度は「1.0~2.0m」、また、「津波浸水リスク」の危険度は「2.0~5.0m」が選択されている(図中のチェックマーク)。なお、今回の例で「土砂災害リスク」は選択されていない(図中のチェックマーク無)。また、ここでは図示されていないが、上記以外の災害リスクとその危険度が選択肢として表示されている場合は、そのような選択肢からの選択も可能である。選択されたリスク情報は、端末機器150から管理制御部130に入力される。
【0048】
次に、
図7中の右側欄に示されているように、管理制御部130では、入力されたリスク情報に該当する災害リスクがGISデータ120上で関連付けられた土地をピックアップし、そのような土地での施工実績データを抽出する。この抽出例では、津波ハザードマップ122a及び洪水ハザードマップ122b上で要対策リスクに該当する土地の施工実績データが3例、抽出されている(図中に「OUTPUT(1)~(3)」で示す)。なお、この例では土砂災害ハザードマップ122cは参照していないが、要対策リスク情報に「土砂災害リスク」が含まれている場合、土砂災害ハザードマップ122cも参照する対象となる(その他の種類の要対策リスクが選択された場合も同様に、該当のハザードマップが参照される。)。
【0049】
そして、
図7中の左下欄に示されているように、端末機器150に抽出結果が出力され、ディスプレイ152での表示が行われる。この例では、施工実績データの3例である「(1)○○工場」、「(2)△△倉庫」及び「(3)××センター」が施設名称として表示されるとともに、それぞれの施設に紐づけられた「法定床面積」、「階高」、「浸水対策工」、「工事費」、「補助金申請書類」、「被災/補修履歴」・・・等が表示されている。ユーザは、これらの施工実績データを参考情報として利用することで、今回の想定する要対策リスクへの対策工が施された施設で実際に採用された対策工費がどの程度の規模になるかを容易にイメージすることができ、効率良く工事の見積もりや計画を立てることができる。
【0050】
また、施工実績データベースには建設後の被災記録や復旧工事の記録を紐づけて登録することができるため、そこから実際の災害で建物に生じた被害等をリストアップすることもできる。これにより、建設予定地が災害リスクを有する土地に決まっている場合に、同様の土地条件での対策工を含む施工実績を対策工選定の条件にすることができる。また、採用された対策工と被害実績、補修実績を対比することができ、最適な対策工諸元を決定するための条件にすることができる。
【0051】
〔システム処理(3)〕
次に
図8は、システム処理(3)の手順例を示すフローチャートである。このシステム処理(3)は、例えばユーザが災害対策工をリストから選択すると、想定リスクレベル(例えば想定浸水深、想定震度、液状化危険度等の度合い)別に、その対策工の採用率、平均対策工費、平均対策工規模(止水板高さ、免制震装置諸元、薬液注入量等)といった統計データを算出し、地図上にコンター図やヒートマップの形で表すことができるものである。以下、手順例に沿って説明する。
【0052】
ステップS300:管理制御部130は、災害対策工入力処理を実行する。この処理では、例えば端末機器150を通じて災害対策工の情報が取得される。災害対策工の情報は、例えばこれから施設の建設を予定する際に、計画施設に対してどのような災害対策工を適用するかの情報である。災害対策工の情報は、例えばディスプレイ152上に表示される選択肢の中からユーザが選択(マウス156のクリック操作等)したり、入力欄にキーボード154で入力したりすることができる。また、このときユーザは、災害対策工の情報として、災害対策工の種類ごとに想定リスクレベルの条件を詳細に指定することもできる。いずれにしても、災害対策工の情報を取得すると、管理制御部130は次のステップS302に移行する。
【0053】
ステップS302:管理制御部130は、施工実績データ抽出処理を実行する。この処理では、管理制御部130のデータ連係部136が施工実績データベース110を参照し、先のステップS300で取得した災害対策工が採用された施工実績データをデータ抽出部138が抽出する。そして、次のステップS304に進む。
【0054】
ステップS304:管理制御部130は、データ統計処理を実行する。この処理では、先のステップS302で抽出した施工実績データについて演算部140が統計処理を実行し、上記のような統計データを算出する。そして、次にステップS306を実行する。
【0055】
ステップS306:管理制御部130は、GISデータ参照処理を実行する。この処理では、管理制御部130のデータ連係部136がGISデータ120を参照し、例えば地盤情報126から地形図のデータを取得する。そして、次にステップS308を実行する。
【0056】
ステップS308:管理制御部130は、データ出力処理を実行する。この処理では、先のステップS304で算出した統計データを地形図データと関連付けて端末機器150のディスプレイ152等に出力する。このとき、統計データには、施工実績データで紐づけられた所在地及び災害対策工の内容が含まれるため、例えば、災害対策工についての統計値を地形図データ上で視覚化し、コンター図やヒートマップの形で表すことができる。
【0057】
〔情報入力及びデータ出力例〕
図9は、システム処理(3)の実行に伴う災害対策工情報の入力と施工実績データの抽出、そして統計データを地形図データと関連付けた出力例を示す概要図である。
図9中の左上欄に示されているように、災害対策工情報の入力は、端末機器150のディスプレイ152等に表示された選択肢の中から、例えばマウス156を用いてユーザが選択・指定することができる。今回の例では、災害対策工として「洪水浸水対策工」が選択され、さらにその種類として「止水壁」が選択されている(図中のチェックマーク)。なお、この例では「止水壁」の想定リスクレベル(想定浸水深)の条件までは指定されていないが、ユーザは適宜、想定リスクレベルの想定浸水深として「H=0.0~1.0m」、「H=1.0~3.0m」、「H=3.0m以上」といった詳細条件を指定することもできる。今回の例では「止水壁」が選択され、その他の「非常電源設備」や「土地嵩上げ」の対策工は選択されていないが、これらも所望によりユーザが選択することができる。
【0058】
また、その他の「土砂災害対策工」や「津波浸水対策工」、「地震対策工」の条件は選択されていないが(図中のチェックマーク無)、これらも所望によりユーザが選択することができる。なお、ここでは図示されていないが、上記以外の災害対策工とその種類、リスクレベルが選択肢として表示されている場合は、そのような選択肢からの選択も可能である。選択されたリスク情報は、端末機器150から管理制御部130に入力される。
【0059】
次に、
図9中の左下欄に示されているように、管理制御部130では、入力された災害対策工(今回は「浸水対策工」として「止水壁」)が採用された施工実績データを施工実績データベース110から抽出する。抽出結果には、「浸水対策工=止水壁」の施工内容が含まれる全ての施設についての施工実績データが含まれ、かつ、各施設に紐づけられた法定床面積、階高、工事費、補助金申請書類、被災/補修履歴・・・等の登録情報が含まれる。
【0060】
また、管理制御部130では、上記の抽出結果である施工内容についての統計処理を実行し、例えば法定床面積あたりの対策費、対策工(止水壁)の採用率といった統計データを算出する。これらの統計処理の結果は、例えば
図9中の右上欄に示されているように、「法定床面積あたり対策費コンターマップ」として画像データの形式で出力表示したり、
図9中の右下欄に示されているように、「対策工(止水壁)採用率ヒートマップ」として画像データの形式で出力表示したりすることができる。
【0061】
〔法定床面積あたり対策費コンターマップの表示内容〕
図9中の右上欄に示されるコンター図では、地図上のグレーに着色した点(○)が止水壁を災害対策工として採用した施設の所在地(分布)を表しており、点を取り囲む曲線が法定床面積あたり対策費の等値線を表している。また、等値線で囲まれた範囲の濃淡で対策費の大小を表しており、色が濃いエリアほど法定床面積あたり対策費は高く、薄いエリアほど対策費が安いことを表している。
【0062】
〔対策工(止水壁)採用率ヒートマップの表示内容〕
図9中の右下欄に示されるヒートマップでは、地図上の標準地域メッシュ別に対策工(止水壁)の採用率の分布を表している。メッシュの着色濃淡は、採用率の高低度合いを表しており、色が濃いエリアほど採用率が高く、薄いエリアほど採用率が低いことを表しており、無着色(白地図)のエリアでは対策工(止水壁)が採用されていないことを表している。
【0063】
このように、災害対策工が採用された施工実績データを統計処理し、コンター図やヒートマップの形に視覚化して出力表示することにより、建設候補地を選定する場面では、災害対策工に要する費用をマップから容易に見積もることができる。したがって、費用計画に応じた最適な建設地を選定することができる。
【0064】
上述した実施形態の施工実績データ管理システム100によれば、以下の利点が得られる。
(1)従来、建設事業者が保有する施工実績は、データとして蓄積されてはいたものの、建築物等の施設を新たに計画する際には、建設候補地に特有の災害リスクをハザードマップ等で確認し、施工実績の前例等を調べた上で、必要な災害対策工を個別に検討していたため、システマチックな活用はされていなかった。この点、本システム100によれば、建設候補地を入力すると、当該土地に関連付けられた災害リスクを自動で判別した上で、既存の施工実績から類似のケースに該当する災害対策工の施工内容を容易に参照することができ、さらには対策工費やその後のメンテナンス記録等の情報も得られるため、概算見積もりに必要な情報を容易に入手することができる点で極めて利便である。
【0065】
(2)また、従来は建設計画地に災害リスクがあることが予め分かっていても、対策工としてどのようなものがあり、どのような対策工を検討すればよいかといった指標となるものがなかったが、本システム100によれば、災害リスクを入力すると、そのリスクがある土地の施工実績から対策工の施工内容が自動的に抽出されるため、抽出された結果を参考にして対策工を容易に選定することができる。
【0066】
(3)また、従来は建設計画地を選定する際に、土地の災害リスクに対する対策工費がどの程度になるか、どのような対策工が多く採用されているか、といった俯瞰的な情報を与えるものがなかったが、本システム100によれば、災害対策工やその詳細を選定するだけで、地域ごとの対策工費や採用率といった統計データを地図上に視覚化して表示できるので、予算等のバランスから適切な建設計画地を容易に選定することができる。
【0067】
本発明は上述した実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することが可能である。
既に述べたように、施工実績データ管理システム100は、管理制御部130をサーバ型としてクラウド上に構築することもできる。この場合、利用権限を付与されたユーザが遠隔地から施工実績データ管理システム100にアクセスし、抽出結果の出力を得ることができる。
【0068】
施工実績データベース110の内容は、
図2に示されるものだけでなく、その他の入力データDIとその自動計算データDCが含まれていてもよい。また、施工実績データベース110に登録可能な施設は、商業施設やアトラクション施設、戸建て住宅等、多様な建設物が含まれていてもよい。
【0069】
システム処理(1)では、例えばステップS100で建設計画地を入力すると、リアルタイムでステップS102,S106,S108が実行され、項目選択(絞り込む)前の全ての施工実績を抽出することとしてもよい。そして、抽出結果を確認しながらユーザが項目選択によって条件を絞り込むと、ステップS104で項目選択された条件で抽出結果の出力がリアルタイムで更新されることとしてもよい。
【0070】
システム処理(2)では、例えばステップS200で要対策リスクの大項目(「土砂災害リスク」、「洪水浸水リスク」、「津波浸水リスク」等)を指定すると、危険度を細かく指定する(絞り込む)前の全ての施工実績を抽出することとしてもよい。そして、抽出結果を確認しながらユーザが項目選択によって危険度等の条件を絞り込むと、その都度、項目選択された条件で抽出結果の出力がリアルタイムで更新されることとしてもよい。
【0071】
システム処理(3)では、ステップS300の入力条件に応じてステップS302~S308までの処理が随時更新され、ユーザがディスプレイ152の画面上で入力条件を変更すると、それに応じてリアルタイムでコンター図やヒートマップの表示が更新されることとしてもよい。
【0072】
その他、実施形態において図示とともに挙げたものはいずれも、あくまで好ましい一例であり、基本的な態様に各種の要素を付加し、あるいは一部を置換しても本発明を好適に実施可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0073】
100 施工実績データ管理システム
110 施工実績データベース
120 GISデータ
130 管理制御部
136 データ連係部
138 データ抽出部
140 演算部
150 端末機器