(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】二次電池、電池パック、及び車両
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0562 20100101AFI20240823BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240823BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20240823BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20240823BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20240823BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20240823BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240823BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/052
H01M10/058
H01M4/131
H01M4/136
H01M4/485
H01M4/58
(21)【出願番号】P 2021046107
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】盛本 さやか
(72)【発明者】
【氏名】笹川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】八木 亮介
(72)【発明者】
【氏名】沖 充浩
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-129519(JP,A)
【文献】特開2010-073339(JP,A)
【文献】特開2014-212046(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110688(WO,A1)
【文献】特開2020-181636(JP,A)
【文献】特開2020-161467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極に対する対極を含む第2電極と
を具備し、
前記第1電極は、二相共存反応をする第1活物質を含有し第1方向に沿う一対の第1辺を含む第1主面を有する第1活物質含有層と、
前記第1活物質含有層の前記第1主面上に設けられており固体電解質を含有する第1固体電解質層と
を具備し、
前記第2電極は、単一固相反応をする第2活物質を含有する第2活物質含有層を具備し、
前記第1固体電解質層は、前記一対の第1辺の少なくとも一方に沿い、且つ、前記一対の第1辺の間の第1幅F
Aに対し0.03F
A以上0.25F
A以下の第1周縁幅F
Sを有する第1部を含み、前記第1活物質含有層は、前記第1固体電解質層が設けられていない第1固体電解質非担持部を含む、
二次電池。
【請求項2】
前記第1固体電解質層は、前記一対の第1辺にそれぞれ沿う一対の前記第1部を含む、請求項
1に記載の
二次電池。
【請求項3】
前記第1主面は前記第1方向と交差する第2方向に沿う一対の第2辺をさらに含み、前記第1固体電解質層は前記一対の第2辺の少なくとも一方に沿い、且つ、前記一対の第2辺の間の第2幅S
Aに対し0.25S
A以下の第2周縁幅S
Sを有する第2部をさらに含む、請求項
1又は2に記載の
二次電池。
【請求項4】
前記第1活物質は、スピネル構造を有するリチウムチタン酸化物を含む、請求項
1から3のいずれか1項に記載の
二次電池。
【請求項5】
前記第1活物質は、オリビン構造を有するリン酸鉄リチウムを含む、請求項
1から3のいずれか1項に記載の
二次電池。
【請求項6】
前記第2活物質含有層は第3方向に沿う一対の第3辺を含む第2主面を有
し、
前記第2電極は前記第2活物質含有層の前記第2主面上に設けられており固体電解質を含有する第2固体電解質層
をさらに具備し、
前記第2固体電解質層は、前記一対の第3辺の少なくとも一方に沿い、且つ、前記一対の第3辺の間の第3幅T
Aに対し0.25T
A以下の第3周縁幅T
Sを有する第3部を含み、前記第2活物質含有層は、前記第2固体電解質層が設けられていない第2固体電解質非担持部を含む、
請求項1から5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記第2主面は前記第3方向と交差する第4方向に沿う一対の第4辺をさらに含み、前記第2固体電解質層は前記一対の第4辺の少なくとも一方に沿い、且つ、前記一対の第4辺の間の第4幅U
Aに対し0.25U
A以下の第4周縁幅U
Sを有する第4部をさらに含む、請求項
6に記載の二次電池。
【請求項8】
請求項
1から7のいずれか1項に記載の二次電池を具備する、電池パック。
【請求項9】
通電用の外部端子と、
保護回路と
を更に具備する、請求項
8に記載の電池パック。
【請求項10】
複数の前記二次電池を具備し、
前記二次電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている、請求項
8又は9に記載の電池パック。
【請求項11】
請求項
8から10のいずれか1項に記載の電池パックを具備する、車両。
【請求項12】
前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む、請求項
11に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電極及び二次電池等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高エネルギー密度電池として、リチウムイオン二次電池や非水電解質二次電池などの二次電池の研究開発が盛んに進められている。二次電池は、ハイブリッド自動車や電気自動車といった車両用電源、又は携帯電話基地局の無停電電源用などの電源として期待されている。そのため、二次電池にはエネルギー密度に加え、急速充放電性能や長期信頼性などといった他の性能に優れることも要求されている。
【0003】
カーボン系負極を用いた電池は、急速充放電を繰り返すと、電極上に金属リチウムのデンドライト析出が生じ、内部短絡による発熱や発火の虞があった。そこで、炭素質物の代わりに金属複合酸化物を負極に用いた電池が開発された。例えば、Li4Ti5O12を負極に用いた電池は、安定的な急速充放電が可能であり、カーボン系負極を用いた電池と比較して寿命も長い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-176549号公報
【文献】特開2014-143185号公報
【文献】特開2015-56318号公報
【文献】特開2018-49716号公報
【文献】特開2018-156899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、容量低下が抑制された二次電池を実現できる電極及び容量低下が抑制された二次電池等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、第1電極と第2電極とを具備する二次電池が提供される。第1電極は、第1活物質含有層と、第1固体電解質層とを具備する。第1活物質含有層は、二相共存反応をする第1活物質を含有し、第1方向に沿う一対の第1辺を含む第1主面を有する。第2電極は、第1電極に対する対極を含む。第2電極は、単一固相反応をする第2活物質を含有する第2活物質含有層を具備する。第1固体電解質層は、第1活物質含有層の第1主面上に設けられており、固体電解質を含有する。第1固体電解質層は、上記一対の第1辺の少なくとも一方に沿い、且つ、上記一対の第1辺の間の第1幅FAに対し0.03FA以上0.25FA以下の第1周縁幅FSを有する第1部を含む。第1活物質含有層は、第1固体電解質層が設けられていない第1固体電解質非担持部を含む。
【0009】
更に他の実施形態によれば、上記実施形態に係る二次電池を具備する電池パックが提供される。
【0010】
また更に他の実施形態によれば、上記実施形態に係る電池パックを具備する車両が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る電極の一例を概略的に示す平面図。
【
図3】実施形態に係る電極の他の例を概略的に示す平面図。
【
図6】実施形態に係る二次電池の一例を概略的に示す断面図。
【
図7】
図6に示す二次電池のA部を拡大した断面図。
【
図8】実施形態に係る二次電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図。
【
図9】
図8に示す二次電池のB部を拡大した断面図。
【
図10】実施形態に係る二次電池が含み得る第2電極の一例を概略的に示す平面図。
【
図12】実施形態に係る二次電池が含み得る第2電極の他の例を概略的に示す平面図。
【
図13】
図12のXIII-XIII’線に沿った概略断面図。
【
図15】実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図。
【
図16】実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図。
【
図17】
図16に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図。
【
図18】実施形態に係る車両の一例を概略的に示す部分透過図。
【
図19】実施形態に係る車両における電気系統に関する制御システムの一例を概略的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
Li4Ti5O12に代表されるスピネル構造を有するリチウムチタン酸化物では、充放電反応が二相共存反応で進行する。そのため、スピネル構造を有するリチウムチタン酸化物は、多くの他の負極活物質とは異なり、平坦な充放電電位を示す。電位が平坦であるリチウムチタン酸化物を用いた負極では、電位勾配がないため電極内のリチウムイオンの濃度分布が緩和されにくい。従って、二相共存反応をする活物質を用いた負極では、単一固相反応により充放電が進む活物質を用いた電極よりも緩和速度が遅い。その結果、例えば、スピネル型Li4Ti5O12を活物質に用いた負極と、単一固相反応をする固溶体であるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を活物質に用いた正極とを組み合わせた電池では、負極と正極との間でリチウムイオンの濃度分布の緩和速度に差が生じることになる。
【0013】
負極と正極との間にLi(リチウム)濃度分布の緩和速度の差があると、高いレートでの充放電に伴って各々の電極の面内でLi濃度分布にムラが生じる場合がある。急速充放電を繰り返すと、ムラのあるLi濃度分布を解消せずにさらに分布が偏り、Li濃度分布の偏りの進行に伴って電池容量が低下する。
【0014】
二相共存反応をする活物質を用いた正極と単一固相反応をする活物質を用いた負極とを組み合わせた電池においても、同様な現象が起こり得る。例えば、正極活物質として慣用されているLiFePO4に代表されるオリビン構造を有するリン酸鉄リチウムでは、二相共存反応で充放電反応が進行する。例えば、オリビン型LiFePO4を活物質に用いた正極と、固溶体であるニオブチタン酸化物を活物質に用いた負極とを組み合わせた電池では、正極と負極との間のLi濃度分布の緩和速度の差に起因して、急速充放電を繰り返すと電池容量が低下し得る。
【0015】
上記容量低下は一時的な電池性能の減少であって、永続的な電池の劣化ではない。急速充放電を繰り返した後、急速ではないレート(例えば、1C/1Cレート)で充放電サイクルを複数回実施することで、電池容量を回復させることができる。利便性を鑑みると、たとえ一時的な現象であっても、電池容量の低下を抑えることが望ましい。以下に説明する実施形態では、上述の一時的な容量低下が抑制される。
【0016】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。なお、各図は実施形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる点があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜設計変更することができる。
【0017】
[第1の実施形態]
第1の実施形態によれば、電極が提供される。係る電極は、二相共存反応をする活物質を含有する活物質含有層を具備する。ここで、二相共存反応をする活物質を第1活物質と呼び、この第1活物質を含有する活物質含有層を第1活物質含有層と呼ぶことがある。上記活物質含有層(第1活物質含有層)は、第1方向に沿う一対の第1辺を含む主面を有する。ここで、第1活物質含有層の主面を、第1主面と呼ぶことがある。上記主面(第1主面)内の第1領域を含んだ外縁部における、活物質含有層(第1活物質含有層)の主面(第1主面)と交差する厚さ方向へのリチウム拡散係数DtEは、上記主面(第1主面)のうち外縁部を除く中心部における厚さ方向へのリチウム拡散係数DtCより高い。第1領域は、一対の第1辺の少なくとも一方に沿っている。尚且つ、第1領域は、一対の第1辺の間の第1幅FAに対し0.03FA以上0.25FA以下の第1周縁幅FSを有する。
【0018】
係る電極の具体的な態様によれば、該電極は、第1活物質含有層の第1主面上に設けられている第1固体電解質層をさらに具備している。第1固体電解質層は、固体電解質を含有する。第1固体電解質層は、上記一対の第1辺の少なくとも一方に沿う第1部を含む。第1部は、一対の第1辺の間の第1幅FAに対し0.03FA以上0.25FA以下の第1周縁幅FSを有する。本態様によれば、上記第1領域は、電極のうち第1固体電解質層の第1部が設けられている部分に対応する。第1活物質含有層は、第1固体電解質層が設けられていない第1固体電解質非担持部を含む。
【0019】
係る電極は、電池用電極であり得る。該電極は、例えば、リチウムイオン電池や非水電解質電池等の二次電池に用いられる電極であり得る。電極は、その態様によって、二次電池の負極又は正極であり得る。なお、係る電極を含んだ二次電池は、当該電池に対する対極を含み得る。両者を区別する目的で、第1の実施形態に係る電極を第1電極とよび、対極を第2電極と呼ぶことがある。
【0020】
電極(第1電極)は、集電体を含み得る。活物質含有層(第1活物質含有層)は、集電体の片方の主面又は表裏両方の主面に担持され得る。活物質含有層(第1活物質含有層)は、二相共存反応をする活物質(第1活物質)に加え、導電剤及び結着剤をさらに含むことができる。
【0021】
二次電池では、例えば、アルカリ金属イオンを電荷のキャリアイオンとし、正極と負極との間のキャリアイオンの行き来によって充放電が行われ得る。キャリアイオンとしては、例えば、リチウムイオンやナトリウムイオンが挙げられる。二次電池の具体例としては、リチウムイオンが正極と負極との間を行き来することで充放電が行われるリチウムイオン二次電池が挙げられる。典型的には、正極と負極との間をキャリアイオンが行き来する面積を確保するために、電池内で正極と負極は面で向かい合うように配置される。
【0022】
二次電池の急速充放電が行われる際、正極及び負極の各々の面に沿った中央部分及び端部付近とで、キャリアイオンの拡散速度に差が生じる場合がある。具体的には、各電極の中央部分にて厚さ方向へのキャリアイオン拡散が速い傾向があり、端に沿った部分では厚さ方向へのキャリアイオン拡散が遅い傾向がある。ここでいう厚さ方向とは即ち、向かい合う面と交差する方向であって、正極から負極へ向かう方向、及び負極から正極へ向かう方向にそれぞれ沿っている。正極及び負極のそれぞれの面内の中央領域と端部領域とで厚さ方向へのキャリアイオンの拡散速度にこのような差があるため、急速充放電のサイクルを繰り返すと各電極の中央部分にてキャリアイオンが多く端部にてキャリアイオンが少ない濃度分布が生じる傾向がある。
【0023】
正極と負極との間で活物質によるキャリアイオンの濃度分布の緩和速度が異なると、緩和速度の差に起因して正極と負極との間で上述の急速充放電による濃度分布のムラの程度にズレが生じる。急速充放電の繰り返しサイクルが進行するにつれて、正極と負極とで濃度分布のズレが大きくなるとともに、電池容量が低下する。
【0024】
実施形態に係る電極(第1電極)では、電極面の端部領域に対応する活物質含有層の主面の第1領域を含む外縁部における厚さ方向へのリチウム拡散係数DtEが、主面のうち外縁部を除いた中心部における厚さ方向へのリチウム拡散係数DtCより高い。ここでいう厚さ方向は、活物質含有層の主面と交差する方向である。このように電極面内の中央領域よりも端部領域での厚さ方向へのキャリアイオンの拡散速度が速いことで、急速充放電による電極面内のキャリアイオンの濃度分布のムラを少なくすることができる。従って、濃度分布の緩和速度が異なる正極及び負極を用いた二次電池における両電極間の濃度分布のズレを低減し、ひいては急速充放電を繰り返した際に生じ得る一時的な容量低下を抑制することができる。
【0025】
第1電極が含む第1活物質含有層は、二相共存反応をする第1活物質を含有する。第1活物質含有層は、第1主面を有する。第1主面は、例えば、帯形状又は矩形形状を有し得る。第1主面は、第1方向に沿う一対の第1辺を含む。
【0026】
電極の厚さ方向へのリチウム拡散係数DtEが第1主面の中心部におけるリチウム拡散係数DtCより高い外縁部には、一対の第1辺のうち少なくとも一方に沿う第1領域が含まれる。即ち、外縁部は、第1主面のうちの端の部分に該当する。外縁部は、一対の第1辺の一方に沿う1つの第1領域を含むことができ、又は一対の第1辺のそれぞれに沿う一対の第1領域を含むことができる。
【0027】
第1主面内の外縁部が含む第1領域は、一対の第1辺の一方又は両方に沿う第1周縁幅FSを有する領域に該当する。ここで、各第1領域の第1周縁幅FSは、一対の第1辺の間の第1幅FA、即ち第2方向への第1活物質含有層の幅(集電体を除いた電極の幅)に対し0.03FA以上0.25FA以下の範囲内にある。一対の第1領域の間で、第1周縁幅FSは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0028】
第1主面内の外縁部は、上記第1領域に加え、第2領域をさらに含むことができる。第1主面は第1方向と交差する第2方向に沿う一対の第2辺をさらに含み得るところ、第2領域は、この一対の第2辺の少なくとも一方に沿っている。外縁部は、一対の第2辺の一方に沿う1つの第2領域を含むことができ、又は一対の第2辺のそれぞれに沿う一対の第2領域を含むことができる。
【0029】
各第2領域は、一対の第2辺の間の第2幅SA、即ち第1方向への第1活物質含有層の幅(集電体を除いた電極の幅)に対し0.25SA以下の第2周縁幅SSを有する。第2領域の第2周縁幅SSは、0.03SA以上であることが好ましい。一対の第2領域の間で、第2周縁幅SSは同じであってもよく、異なっていてもよい。また、各第2領域の第2周縁幅SSは、第1領域の第1周縁幅FSと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0030】
外縁部のうち第1領域及び第2領域の何れにおいても、電極の厚さ方向へのリチウム拡散係数(DtE)は、中心部にでの厚さ方向へのリチウム拡散係数DtCより高い。
【0031】
外縁部が第1領域のみ含む場合は、外縁部は、例えば、第1主面の第1辺に沿った長辺を含む帯形状を有し得る。つまり外縁部は、長辺が一対の第1辺の一方に沿った帯形状の第1領域、又は各々の長辺が両方の第1辺にそれぞれ沿った一対の帯形状の第1領域を含み得る。
【0032】
第2領域を含む電極では、第1領域と第2領域とが重なり得る。例えば、少なくとも1つの第1領域と少なくとも1つの第2領域を含んだ電極では、第1主面のうち1以上の角付近の部分にて第1領域と第2領域が重なり得る。具体的な例として、矩形形状の第1主面を有する第1活物質含有層を含んだ電極において外縁部が1対の第1領域と1対の第2領域を含む場合、第1主面の四角のそれぞれにおいてFS×SSの面積の部分にて第1領域と第2領域が重なった状態にあり得る。この例では、第1領域と第2領域とが組み合わさって、第1主面の外周の内側をなぞる枠形状の外縁部を構成し得る。
【0033】
具体的な態様によれば、第1主面のうち外縁部に当たる部分の上に、第1固体電解質層が設けられている。外縁部を除いた中心部に当たる部分には、第1固体電解質層が設けられない。この部分を、第1固体電解質非担持部と呼ぶ。第1固体電解質層には固体電解質が含まれており、リチウムイオン等のキャリアイオンに対する伝導性を示す。外縁部に第1固体電解質層が含まれていることで、外縁部での厚さ方向へのリチウム拡散係数DtEが、固体電解質の層を含まない中心部(第1固体電解質非担持部)での厚さ方向へのリチウム拡散係数DtCよりも高くなっている。
【0034】
第1固体電解質層は、第1主面の第1辺の少なくとも一方に沿う第1部を少なくとも含む。第1固体電解質層の第1部は、第1主面上の第1固体電解質層のうち外縁部の第1領域上に設けられている部分に該当する。従って、第1固体電解質層は、一対の第1辺の一方に沿う1つの第1部を含むことができ、又は一対の第1辺のそれぞれに沿う一対の第1部を含むことができる。また、各第1部は、一対の第1辺の間の第1幅FAに対し0.03FA以上0.25FA以下の第1周縁幅FSを有する。一対の第1部の間で、第1周縁幅FSは同じであってもよく、異なっていてもよい。第1辺間の第1幅FA及び第1部の第1周縁幅FSは、それぞれ同じ方向への幅である。
【0035】
第1固体電解質層は、第1主面の第2辺の少なくとも一方に沿う第2部をさらに含み得る。第1固体電解質層の第2部は、第1主面上の第1固体電解質層のうち外縁部の第2領域上に設けられている部分に該当する。従って、第1固体電解質層は、一対の第2辺の一方に沿う1つの第2部を含むことができ、又は一対の第2辺のそれぞれに沿う一対の第2部を含むことができる。また、各第2部は、一対の第2辺の間の第2幅SAに対し0.25SA以下の第2周縁幅SSを有する。第2周縁幅SSが0.03SA以上であることが好ましい。一対の第2部の間で、第2周縁幅SSは同じであってもよく、異なっていてもよい。各第2部の第2周縁幅SSは、第1部の第1周縁幅FSと同じであってもよく、異なっていてもよい。第2辺間の第2幅SA及び第2部の第2周縁幅SSは、それぞれ同じ方向への幅である。
【0036】
集電体の両主面にそれぞれ第1活物質含有層が形成されている電極では、集電体の片方の主面上の第1活物質含有層の第1主面上に設けられた第1固体電解質層の第1部の位置及び幅(第1周縁幅FS)は、集電体の他方の主面上の第1活物質含有層の第1主面上の第1部の位置及び幅(第1周縁幅FS)と一致していることが望ましい。同様に、集電体の片方の主面上の第1活物質含有層の第1主面上に設けられた第1固体電解質層の第2部の位置及び幅(第2周縁幅SS)は、集電体の他方の主面上の第1活物質含有層の第1主面上の第2部の位置及び幅(第2周縁幅SS)と一致していることが望ましい。言い換えると、電極の両面にて、外縁部及び第1固体電解質層のレイアウトが一致することが望ましい。或いは、集電体の両主面にそれぞれ形成されている第1活物質含有層のうち一方の主面上にのみ第1固体電解質層が設けられていてもよい。
【0037】
例えば、第1固体電解質層が第1部のみ含む場合は、第1固体電解質層は、第1主面の第1辺に沿った長辺を含む帯形状を有し得る。つまり第1固体電解質層は、長辺が一対の第1辺の一方に沿った帯形状の第1部、又は各々の長辺が両方の第1辺にそれぞれ沿った一対の帯形状の第1部を含み得る。また、第2部を含んだ一つの具体例では、第1部と第2部とが組み合わさって、第1主面の外周の内側をなぞるように設置された枠形状の第1固体電解質層が構成され得る。第1活物質含有層の第1主面が長辺及び短辺を含む場合、少なくとも1つの長辺に沿って第1固体電解質層が設けられることが望ましい。
【0038】
上述したとおり、第1電極の態様には、負極としての態様及び正極としての態様が含まれる。一方では、負極としての態様では、第1活物質を第1負極活物質又は単に負極活物質と呼び、第1活物質含有層を第1負極活物質含有層又は単に負極活物質含有層と呼ぶことがある。他方、正極としての態様では、第1活物質を第1正極活物質又は単に正極活物質と呼ぶことがある。
【0039】
負極の態様に用いることのできる二相共存反応をする第1活物質、つまり第1負極活物質として、スピネル構造を有するリチウムチタン酸化物(例えば、Li4+vTi5O12で表され0≦v≦3である化合物)が挙げられる。このようなリチウムチタン酸化物の一例であるスピネル型Li4Ti5O12は、充電によりリチウムイオンが挿入されるとLi7Ti5O12に変化する。完全に充電されるまでは、Li4Ti5O12とLi7Ti5O12の二相が共存しており、その間は充電電位はほとんど変化せず、電位が一定に保たれる。但し、充電末期には充電電位が急峻に変化する。
【0040】
正極の態様に用いることのできる二相共存反応をする第1活物質、つまり第1正極活物質として、オリビン構造を有するリン酸鉄リチウム(例えば、LixFePO4で表され、0<x≦1である化合物)が挙げられる。オリビン型のリン酸鉄リチウムの一例であるLiFePO4では、充電によりリチウムイオンが脱離されるとFePO4が生成する。完全に充電されるまでは、LiFePO4とFePO4の二相が共存しており、その間は充電電位はほとんど変化せず、電位が一定に保たれる。
【0041】
導電剤は、集電性能を高め、且つ、活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバーのような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。また、導電剤を省略することもできる。或いは、導電剤を用いる代わりに、活物質粒子の表面に、炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。また、導電剤を用いると共に活物質表面に炭素や導電性材料を被覆することで、活物質含有層の集電性能を向上させることもできる。
【0042】
結着剤は、分散された活物質の間隙を埋め、また、活物質と集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム(styrene-butadiene rubber;SBR)、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
【0043】
活物質含有層中の活物質、導電剤及び結着剤の配合割合は、電極の用途に応じて適宜変更することができる。
【0044】
例えば、電極を二次電池の負極として用いる場合は、活物質(負極活物質)、導電剤及び結着剤を、それぞれ、68質量%以上96質量%以下、2質量%以上30質量%以下及び2質量%以上30質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、活物質含有層の集電性能を向上させることができる。また、結着剤の量を2質量%以上とすることにより、活物質含有層と集電体との結着性が十分となり、優れたサイクル性能を期待できる。一方、導電剤及び結着剤はそれぞれ30質量%以下にすることが高容量化を図る上で好ましい。
【0045】
活物質表面を炭素や導電性材料で被覆する場合、被覆材量は導電剤量に含めたものとみなすことができる。炭素又は導電性材料による被覆量は、0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましい。この範囲の被覆量であれば、集電性能と電極密度を高められる。
【0046】
例えば、電極を二次電池の正極として用いる場合は、活物質(正極活物質)及び結着剤は、それぞれ、80質量%以上99質量%以下、及び1質量%以上20質量%以下の割合で配合することが好ましい。結着剤の量を1質量%以上にすることにより、十分な電極強度が得られる。また、結着剤は、絶縁体として機能し得る。そのため、結着剤の量を20質量%以下にすると、電極に含まれる絶縁体の量が減るため、内部抵抗を減少できる。
【0047】
導電剤を加える場合には、活物質(正極活物質)、結着剤及び導電剤は、それぞれ、77質量%以上96質量%以下、1質量%以上20質量%以下、及び3質量%以上15質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤の量を3質量%以上にすることにより、上述した効果を発揮することができる。また、導電剤の量を15質量%以下にすることにより、電解質と接触する導電剤の割合を低くすることができる。この割合が低いと、高温保存下において、電解質の分解を低減することができる。
【0048】
集電体は、第1活物質にリチウム(Li)が挿入及び脱離される電位において電気化学的に安定である材料が用いられる。
【0049】
例えば、負極としての態様では、集電体(負極集電体)は、銅、ニッケル、ステンレス又はアルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiからなる群より選択される1以上の元素を含むアルミニウム合金から作られることが好ましい。集電体の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。このような厚さを有する集電体は、電極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
【0050】
例えば、正極としての態様では、集電体(正極集電体)は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される1以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、及びクロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。
【0051】
また、集電体は、その表面に第1活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、集電タブとして働くことができる。
【0052】
負極活物質含有層の密度(集電体を含まず)は、1.8g/cm3以上2.8g/cm3以下であることが好ましい。負極活物質含有層の密度がこの範囲内にある負極は、エネルギー密度と液状又はゲル状の電解質の保持性とに優れている。負極活物質含有層の密度は、2.1g/cm3以上2.6g/cm3以下であることがより好ましい。
【0053】
正極活物質の一次粒径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。一次粒径が100nm以上の正極活物質は、工業生産上の取り扱いが容易である。一次粒径が1μm以下の正極活物質は、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
【0054】
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、Liイオンの挿入脱離サイトを十分に確保できる。10m2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
【0055】
第1固体電解質層は、固体電解質を含有する。固体電解質は、例えば、粒子の形態で第1固体電解質層に含有され得る。第1固体電解質層は、固体電解質に加え、後述する無機化合物粒子及び結着剤を更に含み得る。
【0056】
第1固体電解質層は、固体電解質を、例えば、50質量%以上100質量%以下の割合で含み得る。第1固体電解質層は、好ましくは固体電解質を80質量%以上100質量%以下の割合で含む。
【0057】
第1固体電解質層は、例えば、1μm以上50μm以下の範囲内の厚さを有し得る。第1固体電解質層の厚さが3μm以上20μm以下の範囲内にあることが好ましい。
【0058】
固体電解質としては、例えば、NASICON型骨格を有するLiM2(PO4)3、アモルファス状のLIPON化合物、及びガーネット型構造を有する酸化物などの酸化物を挙げることができる。
【0059】
NASICON型骨格を有するLiM2(PO4)3の例は、Li1+aAlaGe2-a(PO4)3、Li1+aAlaZr2-a(PO4)3及びLi1+aAlaTi2-a(PO4)3を含む。上記において、添字aは0以上2以下の範囲内にあり、0以上0.5以下の範囲内が好ましい。
【0060】
NASICON型骨格を有するLiM2(PO4)3の具体例としては、Li1+bAlbTi2-b(PO4)3で表され0.1≦b≦0.5であるLATP化合物;Li1+cAldM12-d(PO4)3で表されM1はTi,Ge,Sr,Zr,Sn,及びCaからなる群より選択される1以上であり0≦c≦1及び0≦d≦1である化合物;Li1+aAlaGe2-a(PO4)3で表され0≦a≦2である化合物;及び、Li1+aAlaZr2-a(PO4)3で表され0≦a≦2である化合物;Li1+e+fAleM22-eSifP3-vO12で表されM2はTi及びGeからなる群より選択される1以上であり0<e≦2、0≦f<3である化合物;Li1+2gZr1-gCag(PO4)3で表され0≦g<1である化合物を挙げることができる。
【0061】
アモルファス状のLIPON化合物は、例えば、LihPOiNjで表され2.6≦h≦3.5、1.9≦i≦3.8、及び0.1≦j≦1.3である化合物を含む。LIPONの具体例として、Li2.9PO3.3N0.46が挙げられる。
【0062】
ガーネット型構造を有する酸化物としては、例えば、Li5+mAnLa3-nM32O12で表され、AはCa,Sr及びBaからなる群より選択される1以上であり、M3はNb及びTaからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、0≦m<0.8、及び0≦n<2である化合物;Li3M32-mZr2O12で表され、M3はTa及びNbからなる群より選択される1以上であり、0≦m<0.8である化合物;Li7-3mAlmLa3Zr3O12で表され、0≦m<0.8であるLLZ化合物が挙げられる。上記において、添字mは、0≦m≦0.5の範囲内に在ることが好ましい。ガーネット型構造を有する酸化物は、これら化合物のうちの1種からなっていてもよく、これら化合物の2種以上を混合して含んでいてもよい。これらの中でもLi6.25Al0.25La3Zr3O12及びLi7La3Zr2O12(LLZ)はイオン伝導性が高く電気化学的に安定なため、好適に用いることができる。
【0063】
参考として、NASICON型骨格を有するLiM2(PO4)3で表される無機化合物の25℃におけるリチウムイオン伝導率は、例えば、1×10-3 S/cm以上1×10-1 S/cm以下の範囲内にある。LIPONの具体例Li2.9PO3.3N0.46の25℃におけるリチウムイオン伝導率は、3×10-6 S/cmである。ガーネット型のLLZの具体例Li7La3Zr2O12の25℃におけるリチウムイオン伝導率は、3×10-4 S/cmである。
【0064】
固体電解質として高分子型固体電解質粒子を第1固体電解質層に含むこともできる。高分子型固体電解質粒子は、リチウムイオン伝導性を有する有機化合物とリチウム塩とを含む。リチウム塩の例として、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO2F)2;LiFSI)を挙げることができる。これらのうち1つを選択してリチウム塩に用いてもよく、2つ以上を混合してリチウム塩に用いてもよい。高分子型固体電解質粒子は、有機溶媒などの溶媒を更に含んでいてもよい。
【0065】
高分子材料の例は、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアミン系、ポリエチレン系、シリコーン系及びポリスルフィド系を含む。
【0066】
無機化合物粒子としては、例えば、アルミナ、酸化チタン、水酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化鉄、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、ギブサイト、ベーマイト、バイヤライト、酸化マグネシウム、シリカ、酸化ジルコニウム、水酸化マグネシウム、シリカ、四ホウ酸リチウム、タンタル酸リチウム、雲母、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、及び沸石からなる群より選ばれる少なくとも1つを挙げることができる。
【0067】
結着剤としては、例えば、酢酸セルロース、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、及びスチレンブタジェンゴム(styrene-butadiene rubber;SBR)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、ポリアクリル酸化合物、及びイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つを挙げることができる。
【0068】
第1固体電解質層が第1活物質含有層上の第1主面を覆う面積は、第1活物質含有層の厚み、例えば、集電体上に担持されている第1活物質含有層の目付が厚いほど、広い方が望ましい。つまり、第1固体電解質層の第1部の第1周縁幅FS及び第2部の第2周縁幅SSの何れについても、第1活物質含有層の厚さに応じて寸法を調節することが望ましい。
【0069】
次に、第1の実施形態に係る電極(第1電極)について、図面を参照しながらより具体的に説明する。
【0070】
図1は、実施形態に係る電極の一例を概略的に示す平面図である。
図2は、
図1のII-II’線に沿った概略断面図である。
図1及び
図2に示す例の電極では、第1活物質含有層の第1主面内の外縁部が第1領域を含むものの第2領域を含まない。即ち、
図1及び
図2に示す電極は、第1固体電解質層が第1部を含むものの第2部を含まない例である。
【0071】
図1及び
図2に図示する例の第1電極3は、第1方向11に沿う1対の長辺と、第1方向11と交差する第2方向12に沿う一対の短辺で規定された帯形状を有する。このような帯形状を有する電極は、例えば、捲回型の電極群の構成に好適である。帯形状は、矩形形状であり得る。第1電極3は、帯形状を有する第1集電体3aとその一方の主面に設けられた帯形状を有する第1活物質含有層3bと、第1活物質含有層3b上に設けられた第1固体電解質層3dを含む。
【0072】
第1集電体3aは、第1活物質含有層3bが担持されていない部分を含み、当該部分は第1集電タブ3cとして機能する。図示する例では、第1集電タブ3cは、帯形状の長辺に沿っている。
【0073】
第1活物質含有層3bの第1主面上には、一対の第1固体電解質層3dが担持されている。各第1固体電解質層3dは、帯形状を有しており、第1活物質含有層3bの第1方向11に沿う一対の第1辺21に長辺が沿うように各々配値されている。
【0074】
この例では、第1固体電解質層3dは、第1活物質含有層3bの第1主面内の第1領域31の範囲内に設けられている一対の第1部31aを含む。各第1部31aは、各第1辺21にそれぞれ沿って配置されている。各々の第1部31aの第2方向12への第1周縁幅FSは、同じく第2方向12への第1活物質含有層3bの幅であるとともに第1辺21の間の幅である第1幅FAに対し0.03FA以上0.25FA以下の範囲内の値を取る。
【0075】
第1主面の範囲内にて、第1領域31を含めた外縁部を除いた部分が、中心部30に該当する。第1活物質含有層3bは、第1主面内の中心部30に対応し、且つ、第1固体電解質層3dが設けられていない第1固体電解質非担持部30aを含む。
【0076】
第1電極3では、中心部30に対応する領域には第1固体電解質層3dが設けられておらず、外縁部(第1領域31)に対応する領域には第1固体電解質層3dが設けられている。それにより、中心部30における厚さ方向へのリチウム拡散係数Dt
Cより、外縁部(第1部31a)における厚さ方向へのリチウム拡散係数Dt
Eの方が高い。ここでいう厚さ方向は、第1主面と交差する方向であって、第1活物質含有層3bと第1固体電解質層3dとの積層方向に沿っている。
図2でいうと、厚さ方向は縦方向に該当する。
【0077】
第2方向12に沿った断面を示す
図2に図示する例では、第1集電体3aの片面にのみ第1活物質含有層3bが担持されているが、第1集電体3aの表裏両面にて第1活物質含有層3bを担持してもよい。その場合、両面の第1活物質含有層3bの一方又は両方の第1主面上に第1固体電解質層3dを設けてもよい。
【0078】
また、上記例では、帯形状の第1主面の両方の長辺、つまり両側の第1辺21に沿って第1固体電解質層3dが各々設けられているが、第1固体電解質層3dは一方の第1辺21にのみ沿って設けてもよい。加えて、第1辺21は、帯形状の長辺の代わりに短辺であってもよい。
【0079】
図3は、実施形態に係る電極の他の例を概略的に示す平面図である。
図4は、
図3のIV-IV’線に沿った概略断面図である。
図5は、
図3のV-V’線に沿った概略断面図である。
図3から
図5までに示す例の電極では、第1活物質含有層の第1主面内の外縁部が第1領域及び第2領域を含む。即ち、
図3から
図5までに示す電極は、第1固体電解質層が第1部及び第2部を含む例である。
【0080】
図3から
図5までに図示する例の第1電極3は、第1方向11に沿う1対の短辺と、第1方向11と交差する第2方向12に沿う一対の長辺で規定された矩形形状を有する。このような矩形形状を有する電極は、例えば、積層型の電極群の構成に好適である。第1電極3は、平板形状の第1集電体3aとその一方の主面に設けられた矩形形状を有する第1活物質含有層3bと、第1活物質含有層3b上に設けられた第1固体電解質層3dを含む。
【0081】
第1集電体3aは、第1活物質含有層3bが担持されていない部分を含み、当該部分は第1集電タブ3cとして機能する。図示する例では、第1集電タブ3cは第1電極3の短辺に設けられているが、第1集電タブ3cは、長辺に設けられていてもよい。また、この例では第1集電タブ3cはその他の部分よりも狭い幅を有する狭小部となっているが、第1集電タブ3cの形状はこのような形状に限られない。機械的強度を高くするために第1集電タブ3cの根元に第1活物質含有層3bの一部が設置されているが、この部分の第1活物質含有層3bを省略してもよい。
【0082】
この例では、第1固体電解質層3dは、枠形状を有している。第1固体電解質層3dは、第1活物質含有層3bの第1方向11に沿う一対の第1辺21に沿っている一対の第1部31aを含む。第1部31aは、第1活物質含有層3bの第1主面内の第1領域31の範囲内に設けられている。また、第1固体電解質層3dは、第1活物質含有層3bの第2方向12に沿う一対の第2辺22に沿っている一対の第2部32aも含む。第2部32aは、第1活物質含有層3bの第1主面内の第2領域32の範囲内に設けられている。
【0083】
第1固体電解質層3dが含む各第1部31aは、各第1辺21にそれぞれ沿って配置されている。各々の第1部31aの第2方向12への第1周縁幅FSは、同じく第2方向12への第1活物質含有層3bの幅であるとともに第1辺21の間の幅である第1幅FAに対し0.03FA以上0.25FA以下の範囲内の値を取る。
【0084】
第1固体電解質層3dが含む各第2部32aは、各第2辺22にそれぞれ沿って配置されている。各々の第2部32aの第1方向11への第2周縁幅SSは、同じく第1方向11への第1活物質含有層3bの幅であるとともに第2辺22の間の幅である第2幅SAに対し0.25SA以下の値を取る。第2周縁幅SSは、0.03SA以上0.25SA以下の範囲内の値を取ることが好ましい。
【0085】
第1主面の範囲内にて、第1領域31及び第2領域32を含めた外縁部を除いた部分が、中心部30に該当する。第1活物質含有層3bは、第1主面内の中心部30に対応し、且つ、第1固体電解質層3dが設けられていない第1固体電解質非担持部30aを含む。
【0086】
第1電極3では、中心部30に対応する領域には第1固体電解質層3dが設けられておらず、第1領域31及び第2領域32を含めた外縁部に対応する領域には第1固体電解質層3dが設けられている。それにより、中心部30における厚さ方向へのリチウム拡散係数Dt
Cより、外縁部における厚さ方向へのリチウム拡散係数Dt
Eの方が高い。ここでいう厚さ方向は、第1主面と交差する方向であって、第1活物質含有層3bと第1固体電解質層3dとの積層方向に沿っている。
図4及び
図5でいうと、厚さ方向は縦方向に該当する。
【0087】
第2方向12に沿った断面を示す
図4及び第1方向11に沿った断面を示す
図5にて図示する例では、第1集電体3aの表裏両面に第1活物質含有層3bが担持されているが、第1集電体3aの片面にのみ第1活物質含有層3bを担持してもよい。また、両面の第1活物質含有層3bの両方ではなく一方のみに第1固体電解質層3dを設けてもよい。加えて、枠形状の第1固体電解質層3dの代わりに、例えば、一方の第1部31aを省略したU字型又は一方の第2部32aを省略したC字型(“コの字型”)の第1固体電解質層3dを採用することもできる。
【0088】
ここでは矩形形状の第1主面の短辺を第1辺21とし長辺を第2辺22として説明したが、第1辺21が長辺で第2辺22が短辺であってもよい。また、第1辺21及び第2辺22は、同一の寸法を有していてもよい。つまり、第1主面が有する矩形形状は、長方形又は正方形であり得る。
【0089】
<製造方法>
係る電極は、例えば次の方法により製造することができる。まず、第1活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁して活物質含有スラリーを調製する。活物質含有スラリーを、集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布した活物質含有スラリーを乾燥させて、第1活物質含有層と集電体との積層体を得る。その後、この積層体にプレスを施す。
【0090】
続いて、第1固体電解質層の材料である固体電解質、並びに任意に無機化合物粒子と結着剤とを水などの適切な溶媒に分散させて固体電解質含有スラリーを調製する。固体電解質含有スラリーを空気ジェットで噴射し、第1活物質含有層の第1主面にて外縁部とする領域上に塗布する。塗布後に、固体電解質含有スラリーを乾燥させることにより、第1活物質含有層上に、第1固体電解質層が形成される。
【0091】
このようにして、電極を製造する。
【0092】
固体電解質含有スラリーの塗布方法は、上記のようなスプレー堆積法のみならず、例えば、グラビア印刷、スロットダイ方式、マイクログラビア印刷、エレクトロスピニング、筆及びブラシなどを使用した塗布、並びにディップコートなどの方法であってもよい。また、活物質含有スラリー及び固体電解質含有スラリーを同時に塗工することが可能な塗工装置を用いることもできる。固体電解質含有スラリーの塗布は、これらの塗布方法の1種類のみによって行ってもよく、複数種類の塗布方法を組み合わせて行ってもよい。
【0093】
<測定方法>
以下、電極についての測定方法を説明する。具体的には、活物質の確認方法、外縁部におけるリチウム拡散係数DtE及び中心部におけるリチウム拡散係数DtCを求める方法、外縁部の第1領域及び第1固体電解質層の第1部の第1周縁幅FSの測定方法、及び外縁部の第2領域及び第2固体電解質層の第2部の第2周縁幅SSの測定方法を説明する。
【0094】
(活物質の確認)
電極に含まれている活物質は、X線回折(X-Ray Diffraction;XRD)測定及び誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分光法を組合わせることにより、確認することができる。XRD測定により活物質含有層に含まれている材料の結晶構造を確認できる。ICP測定により、活物質含有層中の元素を定量できる。
【0095】
電池の電極に含まれている活物質を試料とする場合、次の方法により前処理を行って、測定試料を準備する。先ず、電池を完全に放電状態(例えば、SOC (State Of Charge)が0%)とする。次いで、不活性雰囲気のグローブボックス、例えば、アルゴン雰囲気下のグローブボックス中で電池を分解し、電極を取り出す。次いで、取り出した電極をエチルメチルカーボネートなどの溶媒を用いて洗浄する。電極を室温環境下で真空乾燥して、測定試料を得る。
【0096】
次に、得られた測定試料を、ガラスホルダーに直接貼り付けて測定を行う。測定の際には、集電体である金属箔、導電剤、及び結着剤などに由来するピークをXRDを用いて予め測定して把握しておく。もちろん、これらを事前に把握できているのであれば、この操作は省略することができる。
【0097】
集電体のピークと活物質のピークとが重なる場合、集電体から活物質含有層を剥離して測定することが望ましい。これは、ピーク強度を定量的に測定する際、重なったピークを分離するためである。活物質含有層を物理的に剥離しても良いが、溶媒中で超音波をかけると剥離しやすい。集電体から活物質含有層を剥離するのに超音波処理を行った場合、溶媒を揮発させることで、電極体粉末(活物質、導電剤、結着剤を含む)を回収することができる。回収した電極体粉末を、例えばリンデマンガラス製キャピラリ等に充填して測定することで、活物質の粉末X線回折測定を行うことができる。なお、超音波処理を行って回収した電極体粉末は、ICP測定に供することもできる。
【0098】
次に、活物質含有層をキャピラリに封入し、回転試料台に載置して測定する。このような方法により、配向性の影響を低減したうえで、活物質のXRDパターンを得ることができる。
【0099】
粉末X線回折測定の装置としては、例えばRigaku社製SmartLabを用いる。測定条件は以下の通りとする:
X線源:Cuターゲット
出力:45kV、200mA
ソーラスリット:入射及び受光共に5°
ステップ幅(2θ):0.02deg
スキャン速度:20deg/分
半導体検出器:D/teX Ultra 250
試料板ホルダー:平板ガラス試料板ホルダー(厚さ0.5mm)
測定範囲:5°≦2θ≦90°。
【0100】
その他の装置を使用する場合は、粉末X線回折用標準Si粉末を用いた測定を行って、上記装置によって得られる結果と同等のピーク強度、半値幅及び回折角の測定結果が得られる条件を見つけ、その条件で試料の測定を行う。
【0101】
上記粉末X線回折測定の条件は、リートベルト解析に適用できるXRDパターンを取得できる条件とすることが望ましい。リートベルト解析用のデータを収集するには、具体的にはステップ幅が回折ピークの最小半値幅の1/3-1/5となるようにし、最強度反射のピーク位置における強度が5000cps以上となるように適宜、測定時間又はX線強度を調整する。
【0102】
電極に含まれている活物質の組成をICP発光分光法により測定するには、先ず、電極から活物質含有層を剥離する。例えば、超音波を照射することにより電極活物質が含まれている部分を剥離することができる。具体例として、例えば、ガラスビーカー中に入れたエチルメチルカーボネートに電極を入れ、超音波洗浄機中で振動させることで、電極集電体から電極活物質を含む活物質含有層を剥離させることができる。
【0103】
次に、剥離した部分を大気中で短時間加熱して(例えば、500℃で1時間程度)、結着剤成分やカーボンなど不要な成分を焼失させる。この残渣を酸で溶解することで、活物質を含む液体サンプルを作製できる。このとき、酸としては塩酸、硝酸、硫酸、フッ化水素などを使用できる。この液体サンプルをICP分析に供することで、活物質中の組成を知ることができる。
【0104】
(リチウム拡散係数DtE、リチウム拡散係数DtC、第1周縁幅FS及び第1周縁幅FSの測定)
外縁部における厚さ方向へのリチウム拡散係数DtE及び中心部における厚さ方向へのリチウム拡散係数DtCは、次のとおり測定することができる。ここで、リチウム拡散係数DtE及びDtCを包括して、リチウム拡散係数Dtという総称で呼ぶ。
【0105】
電池に含まれている電極を試料とする場合、次の方法により前処理を行って、測定試料を準備する。
【0106】
先ず、電池を完全に放電状態とする。次いで、不活性雰囲気のグローブボックス、例えば、アルゴン雰囲気下のグローブボックス中で電池を分解し、電極を取り出す。ここで、正極及び負極の両電極を取り出す。次いで、取り出した各電極をエチルメチルカーボネートなどの溶媒を用いて洗浄して、室温環境下で真空乾燥する。
【0107】
各々の電極から、φ10mmの円形試料を打ち出し、得られた円形の正負極を用いてコインセルを作製する。コインセルには、セパレータ及び電解質をさらに用いる。セパレータ及び電解質としては、第2の実施形態にて説明するものを用いることができる。ここで、解体した電池に用いられていたセパレータ及び電解質と同等のセパレータ及び電解質を用いることが望ましい。各電極の主面の端部から中心部までの複数箇所から、円形試料を打ち出す。但し、正極と負極との間で、円形試料を打ち出す箇所をなるべく重ねさせる。具体的には、電池内で正極と負極とが向かい合っていた箇所同士から円形試料を打ち出す。コインセルは、両電極にて対応する箇所から打ち出した円形試料同士を用いて作製する。また、正負極を別々に電池から取り出すのではなく、電極群として重なったまま洗浄及び乾燥し、重ねたまま円形に打ち出すことで、コインセル用の電極群を準備してもよい。
【0108】
固体電解質層が設けられている電極については、固体電解質層が在る部分及び固体電解質層がない部分から少なくとも1箇所ずつ円形試料を打ち出す。但し、電極主面の全体に固体電解質層が設けられている電極についてはもちろん、固体電解質層がない部分から試料を打ち出さなくてもよい。
【0109】
次いで、コインセルを半充電状態まで充電する。ここでいう半充電状態とは、例えば、SOC(State Of Charge)が50%の状態を指す。半充電状態のコインセルから負極と正極を含んだ積層体を取り出す。この積層体を洗浄及び室温環境下で真空乾燥して、測定試料を得る。
【0110】
その後、この測定試料に対して、ソーラトロン社製周波数応答アナライザ1260型を用いて交流インピーダンスの測定を行う。測定周波数範囲は、5Hzから32MHzの範囲とする。測定は、測定試料を大気に暴露することなく乾燥アルゴン雰囲気下に入れ、25℃環境下にて行う。
【0111】
リチウム拡散係数Dtは電極厚み方向の抵抗値の逆数で示され、次のとおり算出する。測定された交流インピーダンスに基づいて、複素インピーダンスプロット(Cole-Coleプロット)を作成する。Cole-Coleプロットは、横軸を実数成分として、縦軸に虚数成分をプロットしたものである。以下の式(1)により電極厚み方向の抵抗値を算出する。なお、下記式(1)において、ZはCole-Coleプロットの円弧の直径から算出される抵抗値であり、Sは電極面積(円形の面積)である。
【0112】
Dt = 1 /(Z/S) ・・・(1)。
【0113】
電極の主面内の複数箇所にて測定したリチウム拡散係数Dtを比較する。電極主面におけるリチウム拡散係数Dtの増減に基づいて、電極主面のうち外縁部に対応する部分と中心部に対応する部分とを判別しても良い。但し、固体電解質層が含まれている場合は、固体電解質層のレイアウトに基づいて、外縁部及び中心部を判別する。対象の電極自体が固体電解質層を有していないものの対極が固体電解質層を有している場合、対極における外縁部及び中心部と重なる部分を、その電極における外縁部及び中心部と見なしてもよい。
【0114】
外縁部と判断した部分に対応する箇所について得られたリチウム拡散係数Dtを、外縁部におけるリチウム拡散係数DtEとする。同様に、中心部と判断した部分に対応する箇所について得られたリチウム拡散係数Dtを、中心部におけるリチウム拡散係数DtCとする。
【0115】
外縁部の第1領域又は第1固体電解質層の第1部の第1周縁幅FS、及び外縁部の第2領域又は第2固体電解質層の第2部の第2周縁幅SSは、外縁部と判断した部分又は固体電解質層のレイアウトに基づいて寸法測定を行うことで求められる。外縁部における第1領域及び第2領域の設定は、任意に行うことができる。第1固体電解質層における第1部及び第2部の設定は、任意に行うことができる。但し、第1領域を設定せずに第2領域を設定することはない。同様に、第1部を設定せずに第2部を設定することはない。
【0116】
第1の実施形態に係る電極は、二相共存反応をする活物質を含有する活物質含有層を具備する。この活物質含有層は第1方向に沿う一対の第1辺を含む主面を有し、該主面内の外縁部における厚さ方向へのリチウム拡散係数DtEと、中心部における厚さ方向へのリチウム拡散係数DtCとは、DtE>DtCの関係を満たす。ここでいう厚さ方向は、活物質含有層の主面と交差する。外縁部は、第1辺の少なくとも一方に沿う第1領域を含む。第1領域の第1周縁幅FSは、一対の第1辺の間の第1幅FAに対し0.03FA以上0.25FA以下である。中心部は、主面のうち外縁部を除く部分に対応する。係る電極は、容量低下が抑制された二次電池を提供することができる。
【0117】
[第2の実施形態]
第2の実施形態によると、第1電極と第2電極とを含む二次電池が提供される。第1電極は、第1の実施形態に係る電極を含む。第2電極は、第1電極に対する対極を含む。
【0118】
第1電極は、二次電池の負極又は正極であり得る。つまりこの二次電池は、負極又は正極として、第1の実施形態に係る電極を含む。
【0119】
第2電極は、第1電極に対する対極に該当する。つまり第2電極は、負極としての第1電極を含む二次電池において、正極として含まれる。そして第2電極は、正極としての第1電極を含む二次電池において、負極として含まれる。
【0120】
第2の実施形態に係る二次電池は、第1電極と第2電極との間に配されたセパレータを更に具備することもできる。第1電極、第2電極、及びセパレータは、電極群を構成することができる。電解質は、電極群に保持され得る。電極群における厚さ方向、つまり第1電極と第2電極との積層方向へのリチウム拡散係数Dtは、第1電極の外縁部に対応する部分でのリチウム拡散係数DtEの方が、第1電極の中心部に対応する部分でのリチウム拡散係数DtCより高い。
【0121】
また、第2の実施形態に係る二次電池は、電極群及び電解質を収容する外装部材を更に具備することができる。
【0122】
さらに、第2の実施形態に係る二次電池は、第1電極に電気的に接続された第1電極端子及び第2電極に電気的に接続された第2電極端子を更に具備することができる。ここでは、第1電極端子及び第2電極端子について、負極としての第1電極又は負極としての第2電極と電気的に接続される場合は、負極端子と呼ぶ。同様に、第1電極端子及び第2電極端子について、正極としての第1電極又は正極としての第2電極と電気的に接続される場合は、正極端子と呼ぶ。
【0123】
第2の実施形態に係る二次電池は、例えばリチウム二次電池であり得る。また、二次電池は、非水電解質を含んだ非水電解質二次電池を含む。
【0124】
以下、第1電極、第2電極、電解質、セパレータ、外装部材、負極端子及び正極端子について詳細に説明する。
【0125】
1)第1電極
第1電極の詳細は、第1の実施形態に係る電極の詳細と重複する。そのため、ここでは説明を省略する。
【0126】
2)第2電極
第2電極は、第2活物質含有層を含むことができる。第2活物質含有層は、単一固相反応により充放電反応が進行する固溶体である第2活物質を含有することができる。
【0127】
第2電極は、集電体を含み得る。第2活物質含有層は、集電体の片方の主面又は表裏両方の主面に担持され得る。第2活物質含有層は、第2活物質に加え、導電剤及び結着剤をさらに含むことができる。
【0128】
第2電極は、第2活物質含有層の第2主面上に設けられている第2固体電解質層をさらに含んでもよい。第2固体電解質層は、固体電解質を含有する。第2固体電解質層は、結着剤をさらに含むことができる。第2固体電解質層が含むことのできる各種材料は、第1の実施形態に係る電極にて第1固体電解質層が含むことのできる各種材料(固体電解質、無機化合物、及び結着剤)と同様のものである。第2固体電解質層の組成は、第1固体電解質層の組成と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0129】
第2固体電解質層を含む第2電極では、第2活物質含有層は、第2固体電解質層が設けられていない第2固体電解質非担持部を含むことが望ましい。以下、第2固体電解質非担持部を含む態様の第2電極を説明する。
【0130】
第2電極活物質含有層の第2主面は、第3方向に沿う一対の第3辺を含む。第2固体電解質層は、一対の第3辺の少なくとも一方に沿う第3部を含み得る。第2固体電解質層は、一対の第3辺の一方に沿う1つの第3部を含むことができ、又は一対の第3辺のそれぞれに沿う一対の第3部を含むことができる。また、各第3部は、一対の第3辺の間の第3幅TAに対し0.25TA以下の第3周縁幅TSを有し得る。第3周縁幅TSは、0.03TA以上であることが好ましい。一対の第3部の間で、第3周縁幅TSは同じであってもよく、異なっていてもよい。各第3部の第3周縁幅TSは、第1部の第1周縁幅FS及び/又は第2部の第2周縁幅SSと同じであってもよく、異なっていてもよい。第3辺間の第3幅TA及び第3部の第3周縁幅TSは、それぞれ同じ方向への幅である。
【0131】
ここでいう第3方向は、上述した第1方向と平行であるとともに第2方向と交差し得る。或いは、第3方向は、第1方向と交差するとともに第2方向と平行であり得る。第3方向と第1方向とが並行であることが好ましい。
【0132】
第2固体電解質層は、第4部をさらに含み得る。第2電極活物質含有層の第2主面は、第3方向と交差する第4方向に沿う一対の第4辺をらに含み得るところ、第4部は、この一対の第4辺の少なくとも一方に沿っている。従って、第2固体電解質層は、一対の第4辺の一方に沿う1つの第4部を含むことができ、又は一対の第4辺のそれぞれに沿う一対の第4部を含むことができる。また、各第4部は、一対の第4辺の間の第4幅UAに対し0.25UA以下の第4周縁幅USを有する。第4周縁幅USは、0.03UA以上であることが好ましい。一対の第4部の間で、第4周縁幅USは同じであってもよく、異なっていてもよい。各第4部の第4周縁幅USは、第1部の第1周縁幅FS及び/又は第2部の第2周縁幅SS及び/又は第3部の第3周縁幅TSと同じであってもよく、異なっていてもよい。第4辺間の第4幅UA及び第4部の第4周縁幅USは、それぞれ同じ方向への幅である。
【0133】
第4方向は、第3方向と交差する。第4方向は、第1方向と交差するとともに第2方向と平行であり得る。或いは、第4方向は、第1方向と平行であるとともに第2方向と交差し得る。
【0134】
第2固体電解質層の第3部及び第4部は、第1固体電解質層の第1部及び第2部と同様の構成を有し得る。つまり、第2固体電解質層を有する第2電極は、第1活物質を含有する第1活物質含有層の代わりに第2活物質を含有する第2活物質含有層を備えることを除き第1の実施形態に係る電極(第1電極)と同様の構成を有する。詳細が重複するため、ここでは説明を省略する。
【0135】
第2固体電解質層を含まない第2電極は、第2固体電解質層の有無以外については第2固体電解質層を有する第2電極と同様の構成を有する。詳細が重複するため、ここでは説明を省略する。
【0136】
第2電極は、第1電極に対する対極として、二次電池に含まれる。一方では、正極としての態様では、第2活物質を第2正極活物質又は単に正極活物質と呼ぶことがある。他方、負極としての態様では、第2活物質を第2負極活物質又は単に負極活物質と呼び、第2活物質含有層を第2負極活物質含有層又は単に負極活物質含有層と呼ぶことがある。
【0137】
正極である第2電極に含むことができる単一固相反応をする第2活物質、つまり第2正極活物質の例には、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えば、LixMn2-wNiwO4で表され0<x≦1及び0<w<2である化合物)及びリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えば、LixNi1-y-zCoyMnzO2で表され0<x≦1、0<y<1、0<z<1、及びy+z<1である化合物)が含まれる。
【0138】
負極である第2電極に含むことができる単一固相反応をする第2活物質、つまり第2負極活物質の例には、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物が含まれる。
【0139】
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の例として、LisTi1-tM4tNb2-uM5uO7+δで表される化合物が挙げられる。ここで、M4は、Zr,Si,及びSnからなる群より選択される少なくとも1つである。M5は、V,Ta,及びBiからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦s≦5、0≦t<1、0≦u<2、-0.3≦δ≦0.3である。単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の具体例として、LisNb2TiO7(0≦s≦5)が挙げられる。
【0140】
単斜晶型ニオブチタン複合酸化物の他の例として、LisTi1-tM6t+uNb2-uO7-δで表される化合物が挙げられる。ここで、M6は、Mg,Fe,Ni,Co,W,Ta,及びMoからなる群より選択される少なくとも1つである。組成式中のそれぞれの添字は、0≦s≦5、0≦t<1、0≦u<2、-0.3≦δ≦0.3である。
【0141】
導電剤、結着剤、及び集電体の詳細は、第1の実施形態に係る電極におけるそれと同様である。そのため、ここでは説明を省略する。
【0142】
第2負極活物質含有層の密度(集電体を含まず)は、1.8g/cm3以上2.8g/cm3以下であることが好ましい。その理由は、第1の実施形態にて説明した第1負極活物質含有層の密度のものと同様である。負極活物質含有層の密度は、2.1g/cm3以上2.6g/cm3以下であることがより好ましい。
【0143】
第2正極活物質の一次粒径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。第2正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。それらの理由は、第1の実施形態にて説明した第1正極活物質のものと同様である。
【0144】
第1活物質を用いて第1活物質含有層を形成する代わりに第2活物質を用いて第2活物質含有層を形成することを除き、第1の実施形態に係る電極と同様の方法で第2電極を作製することができる。また、第2電極の作製においては、固体電解質層(第1固体電解質層)の形成、つまり固体電解質含有スラリーの塗布及び乾燥を省略してもよい。固体電解質層を設ける場合は、第1固体電解質層の形成と同様の手順で、第1活物質含有層の上に第1固体電解質層を形成する代わりに、第2活物質含有層の上に第2固体電解質層を形成する。
【0145】
第2電極に対し、第1の実施形態にて説明した各種測定方法、即ち第1電極についての測定方法を、同様に適用できる。例えば、第1電極における第1周縁幅FS及び第2周縁幅SSの測定方法と同様の方法で、第2電極における第3周縁幅TS及び第4周縁幅USを測定することができる。
【0146】
3)電解質
電解質としては、例えば液状非水電解質又はゲル状非水電解質を用いることができる。液状非水電解質は、溶質としての電解質塩を有機溶媒に溶解することにより調製される。電解質塩の濃度は、0.5 mol/L以上2.5 mol/L以下であることが好ましい。
【0147】
電解質塩の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SO2F)2;LiFSI)のようなリチウム塩、及び、これらの混合物が含まれる。電解質塩は、高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
【0148】
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate;EC)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate;VC)のような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate;DMC)、メチルエチルカーボネート(methyl ethyl carbonate;MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2-methyl tetrahydrofuran;2MeTHF)、ジオキソラン(dioxolane;DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(dimethoxy ethane;DME)、ジエトキシエタン(diethoxy ethane;DEE)のような鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone;GBL)、アセトニトリル(acetonitrile;AN)、及びスルホラン(sulfolane;SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。
【0149】
ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と高分子材料とを複合化することにより調製される。高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide;PEO)、又はこれらの混合物が含まれる。
【0150】
或いは、非水電解質としては、液状非水電解質及びゲル状非水電解質の他に、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、及び無機固体電解質等を用いてもよい。
【0151】
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩の内、常温(15℃以上25℃以下)で液体として存在し得る化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質塩と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩、又はこれらの混合物が含まれる。一般に、二次電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
【0152】
高分子固体電解質は、電解質塩を高分子材料に溶解し、固体化することによって調製される。
【0153】
無機固体電解質は、Liイオン伝導性を有する固体物質である。
【0154】
或いは、非水電解質の代わりに、液状水系電解質又はゲル状水系電解質を電解質として用いることができる。液状水系電解質は、溶質として、例えば、上記電解質塩を水系溶媒に溶解することにより調製される。ゲル状水系電解質は、液状水系電解質と上記高分子材料とを複合化することにより調製される。水系溶媒としては、水を含む溶液を用い得る。水を含む溶液とは、純水であってもよく、水と有機溶媒との混合溶媒であってsもよい。
【0155】
4)セパレータ
セパレータは、例えば、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、セルロース、若しくはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)を含む多孔質フィルム、又は合成樹脂製不織布から形成される。安全性の観点からは、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成された多孔質フィルムを用いることが好ましい。これらの多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能なためである。
【0156】
5)外装部材
外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムからなる容器、又は金属製容器を用いることができる。
【0157】
ラミネートフィルムの厚さは、例えば、0.5mm以下であり、好ましくは、0.2mm以下である。
【0158】
ラミネートフィルムとしては、複数の樹脂層とこれらの樹脂層間に介在した金属層とを含む多層フィルムが用いられる。樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)等の高分子材料を含んでいる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなることが好ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、外装部材の形状に成形され得る。
【0159】
金属製容器の壁の厚さは、例えば、1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは、0.2mm以下である。
【0160】
金属製容器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及びケイ素等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金は、鉄、銅、ニッケル、及びクロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は1質量%以下であることが好ましい。
【0161】
外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又はボタン型等であってもよい。外装部材は、電池寸法や電池の用途に応じて適宜選択することができる。
【0162】
6)負極端子
負極端子は、リチウムの酸化還元電位に対し0.8V以上3V以下の電位範囲(vs.Li/Li+)において電気化学的に安定であり、かつ導電性を有する材料から形成することができる。具体的には、負極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子の材料としては、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料からなることが好ましい。
【0163】
7)正極端子
正極端子は、リチウムの酸化還元電位に対し3V以上4.5V以下の電位範囲(vs.Li/Li+)において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成することができる。正極端子の材料としては、アルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
【0164】
次に、第2の実施形態に係る二次電池について、図面を参照しながらより具体的に説明する。
【0165】
図6は、第2の実施形態に係る二次電池の一例を概略的に示す断面図である。
図7は、
図6に示す二次電池のA部を拡大した断面図である。具体的には、
図7は、
図6に示す二次電池が含む第1電極の第1辺に沿った断面を示す。
【0166】
図6及び
図7に示す二次電池100は、
図6に示す電極群1と、
図6及び
図7に示す袋状外装部材2と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、袋状外装部材2内に収納されている。電解質(図示しない)は、電極群1に保持されている。
【0167】
袋状外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
【0168】
図6に示すように、電極群1は、扁平状の捲回型電極群である。扁平状で捲回型である電極群1は、
図7に示すように、第1電極3と、セパレータ4と、第2電極5とを含む。セパレータ4は、第1電極3と第2電極5との間に介在している。
【0169】
第1電極3は、第1集電体3aと第1活物質含有層3bと第1固体電解質層3dとを含む。第1電極3のうち、捲回型の電極群1の最外殻に位置する部分は、
図7に示すように第1集電体3aの内面側のみに第1活物質含有層3bが形成されている。第1電極3におけるその他の部分では、第1集電体3aの両面に第1活物質含有層3bが形成されている。第1固体電解質層3dは、第1集電体3aに対し反対側に第1活物質含有層3b上に形成されている。第1固体電解質層3dは、第1活物質含有層3bとセパレータ4との間に介在している。
【0170】
第1電極3のうち、捲回型の電極群1の最外殻に位置する部分は、
図1及び
図2に例示した第1電極3と同様の構造を有し得る。第1電極3の他の部分は、第1集電体3aの片面だけでなく両面に第1活物質含有層3b及び第1固体電解質層3dが設けられていることを除いて、
図1及び
図2に例示した第1電極3と同様の構造を有し得る。このように
図6及び
図7に示す第1電極3が
図1及び
図2に示す第1電極3に対応するものと見なした場合、
図6及び
図7は、
図1に示す第1方向11に沿った断面であるといえる。また、この場合に、捲回型の電極群1は、第1電極3と、セパレータ4と、第2電極5との積層体を第2方向12に平行な仮想軸を中心に捲回したものといえる。
【0171】
第2電極5は、第2集電体5aと、その両面に形成された第2活物質含有層5bとを含んでいる。
【0172】
図6に示すように、第1電極端子6及び第2電極端子7は、捲回型の電極群1の外周端近傍に位置している。この第1電極端子6は、第1集電体3aの最外殻に位置する部分に接続されている。また、第2電極端子7は、第2集電体5aの最外殻に位置する部分に接続されている。これらの第1電極端子6及び第2電極端子7は、袋状外装部材2の開口部から外部に延出されている。袋状外装部材2の内面には、熱可塑性樹脂層が設置されており、これが熱融着されていることにより、開口部が閉じられている。
【0173】
第2の実施形態に係る二次電池は、
図6及び
図7に示す構成の二次電池に限らず、例えば
図8及び
図9に示す構成の電池であってもよい。
【0174】
図8は、第2の実施形態に係る二次電池の他の例を模式的に示す部分切欠斜視図である。
図9は、
図8に示す二次電池のB部を拡大した断面図である。
【0175】
図8及び
図9に示す二次電池100は、
図8及び
図9に示す電極群1と、
図8に示す外装部材2と、図示しない電解質とを具備する。電極群1及び電解質は、外装部材2内に収納されている。電解質は、電極群1に保持されている。
【0176】
外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
【0177】
電極群1は、
図9に示すように、積層型の電極群である。積層型の電極群1は、第1電極3と第2電極5とをその間にセパレータ4を介在させながら交互に積層した構造を有している。
【0178】
電極群1は、複数の第1電極3を含んでいる。複数の第1電極3は、それぞれが、第1集電体3aと、第1集電体3aの両面に担持された第1活物質含有層3bと、各面の第1活物質含有層3bの主面上の縁部分に沿って担持された第1固体電解質層3dとを備えている。第1活物質含有層3bの主面のうち、中心の部分には、第1固体電解質層3dが担持されていない。また、電極群1は、複数の第2電極5を含んでいる。複数の第2電極5は、それぞれが、第2集電体5aと、第2集電体5aの両面に担持された第2活物質含有層5bとを備えている。
【0179】
各第1電極3の第1集電体3aは、その一辺において、いずれの表面にも第1活物質含有層3bが担持されていない部分、即ち、第1集電タブ3cを含む。
図9に示すように、第1集電タブ3cは、第2電極5と重なっていない。また、複数の第1集電タブ3cは、帯状の第1電極端子6に電気的に接続されている。帯状の第1電極端子6の先端は、外装部材2の外部に引き出されている。
【0180】
各第1電極3は、
図3から
図5までに例示した第1電極3であり得る。
【0181】
また、図示しないが、各第2電極5の第2集電体5aは、その一辺において、いずれの表面にも第2活物質含有層5bが担持されていない部分を含む。この部分は、第2集電タブとして働く。第2集電タブは、第1集電タブ3cと同様に、第1電極3と重なっていない。また、第2集電タブは、第1集電タブ3cに対し電極群1の反対側に位置する。第2集電タブは、帯状の第2電極端子7に電気的に接続されている。帯状の第2電極端子7の先端は、第1電極端子6とは反対側に位置し、外装部材2の外部に引き出されている。
【0182】
上記例では、第2電極には第2活物質含有層上に固体電解質層が設けられていない態様の二次電池を例示した。しかし、上述したとおり、第1電極の第1活物質含有層の主面における外縁の部分に設ける第1固体電解質層に加え、第2電極の第2活物質含有層の主面における外縁の部分にも第2固体電解質層を設けることができる。第2固体電解質層を含んだ第2電極の例を示す。
【0183】
図10は、実施形態に係る二次電池が含み得る第2電極の一例を概略的に示す平面図である。
図11は、
図10のXI-XI’線に沿った概略断面図である。
図10及び
図11に示す例の電極では、第2活物質含有層の第2主面内の外縁部が第3領域を含むものの第4領域を含まない。即ち、
図10及び
図11に示す第2電極は、第2固体電解質層が第3部を含むものの第4部を含まない例である。
【0184】
図10及び
図11に図示する例の第2電極5は、第3方向13に沿う1対の長辺と、第3方向13と交差する第4方向14に沿う一対の短辺で規定された帯形状を有する。このような帯形状を有する第2電極5は、例えば、
図6及び
図7に示した捲回型の電極群1が含む第2電極5の変形例であり得る。帯形状は、矩形形状であり得る。第2電極5は、帯形状を有する第2集電体5aとその一方の主面に設けられた帯形状を有する第2活物質含有層5bと、第2活物質含有層5b上に設けられた第2固体電解質層5dを含む。
【0185】
この例の第2電極5の構成は、二相共存反応をする第1活物質を含有する第1活物質含有層3bの代わりに単一固相反応をする第2活物質を含有する第2活物質含有層5bを含んでいることを除き、
図1及び
図2に例示した第1電極3の構成と本質的に同等であるため、説明を一部省略する。
【0186】
一対の帯形状を有する第2固体電解質層5dが、第2活物質含有層5bの第3方向13に沿う一対の第3辺23に長辺が沿うように各々配値されている。第2固体電解質層5dは、第2活物質含有層5bの第2主面内の第3領域53の範囲内に設けられている一対の第3部53aを含む。各第3部53aは、各第3辺23にそれぞれ沿って配置されている。各々の第3部53aの第4方向14への第3周縁幅TSは、同じく第4方向14への第2活物質含有層5bの幅であるとともに第3辺23の間の幅である第3幅TAに対し0.25TA以下の値を取る。第3周縁幅TSが0.03TA以上0.25TA以下の範囲内の値を取ることが好ましい。
【0187】
第2主面の範囲内にて、第3領域53を含めた外縁部を除いた部分が、中心部50に該当する。第2活物質含有層5bは、第2主面内の中心部50に対応し、且つ、第2固体電解質層5dが設けられていない第2固体電解質非担持部50aを含む。
【0188】
このように外縁部(第3領域53)に対応する領域に第2固体電解質層5dが設けられている第2電極5では、中心部50における厚さ方向へのリチウム拡散係数Dt
Cより、外縁部(第3部53a)における厚さ方向へのリチウム拡散係数Dt
Eの方が高い。ここでいう厚さ方向は、第2主面と交差する方向であって、第2活物質含有層5bと第2固体電解質層5dとの積層方向に沿っている。
図11でいうと、厚さ方向は縦方向に対応する。
【0189】
図12は、実施形態に係る二次電池が含み得る第2電極の他の例を概略的に示す平面図である。
図13は、
図12のXIII-XIII’線に沿った概略断面図である。
図14は、
図12のXIV-XIV’線に沿った概略断面図である。
【0190】
図12から14までに図示する例の第2電極5は、第3方向13に沿う1対の短辺と、第3方向13と交差する第4方向14に沿う一対の長辺で規定された矩形形状を有する。このような矩形形状を有する電極は、例えば、
図8及び
図9に示した積層型の電極群1が含む第2電極5の変形例であり得る。第2電極5は、平板形状の第2集電体5aとその一方の主面に設けられた矩形形状を有する第2活物質含有層5bと、第2活物質含有層5b上に設けられた第2固体電解質層5dを含む。
【0191】
この例の第2電極5の構成は、二相共存反応をする第1活物質を含有する第1活物質含有層3bの代わりに単一固相反応をする第2活物質を含有する第2活物質含有層5bを含んでいることを除き、
図3から
図5までに例示した第1電極3の構成と本質的に同等であるため、説明を一部省略する。
【0192】
枠形状を有する第2固体電解質層5dは、第2活物質含有層5bの第2主面内の第3領域53の範囲内に設けられており、且つ、第3方向13に沿う一対の第3辺23に沿っている一対の第3部53aを含む。また、第1固体電解質層3dの第2部32aは、第2活物質含有層5bの第2主面内の第4領域54の範囲内に設けられており、且つ、第4方向14に沿う一対の第4辺24に沿っている一対の第4部54aも含む。
【0193】
各々の第3部53aの第4方向14への第3周縁幅TSは、同じく第4方向14への第2活物質含有層5bの幅であるとともに第3辺23の間の幅である第3幅TAに対し0.25TA以下の値を取る。第3周縁幅TSが0.03TA以上0.25TA以下の範囲内の値を取ることが好ましい。各々の第4部54aの第3方向13への第4周縁幅USは、同じく第3方向13への第2活物質含有層5bの幅であるとともに第4辺24の間の幅である第4幅UAに対し0.25UA以下の範囲内の値を取る。第4周縁幅USが0.03UA以上0.25UA以下の範囲内の値を取ることが好ましい。
【0194】
第2主面の範囲内にて、第3領域53及び第4領域54を含めた外縁部を除いた部分が、中心部50に該当する。第2活物質含有層5bは、第2主面内の中心部50に対応し、且つ、第2固体電解質層5dが設けられていない第2固体電解質非担持部50aを含む。
【0195】
このように第3領域53及び第4領域54を含めた外縁部に対応する領域に第2固体電解質層5dが設けられている第2電極5では、中心部50における厚さ方向へのリチウム拡散係数Dt
Cより、外縁部における厚さ方向へのリチウム拡散係数Dt
Eの方が高い。ここでいう厚さ方向は、第2主面と交差する方向であって、第2活物質含有層5bと第2固体電解質層5dとの積層方向に沿っている。
図13及び
図14でいうと、厚さ方向は縦方向に対応する。
【0196】
第2の実施形態に係る二次電池は、第1の実施形態に係る電極を含んでいる。そのため、第2の実施形態に係る二次電池では、容量低下が抑制されている。
【0197】
[第3の実施形態]
第3の実施形態によると、組電池が提供される。第3の実施形態に係る組電池は、第2の実施形態に係る二次電池を複数個具備している。
【0198】
第3の実施形態に係る組電池において、各単電池は、電気的に直列若しくは並列に接続して配置してもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて配置してもよい。
【0199】
次に、第3の実施形態に係る組電池の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0200】
図15は、第3の実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図である。
図15に示す組電池200は、5つの単電池100a~100eと、4つのバスバー201と、正極側リード202と、負極側リード203とを具備している。5つの単電池100a~100eのそれぞれは、第2の実施形態に係る二次電池である。
【0201】
バスバー201は、例えば、1つの単電池100aの負極端子206と、隣に位置する単電池100bの正極端子207とを接続している。このようにして、5つの単電池100は、4つのバスバー201により直列に接続されている。すなわち、
図15の組電池200は、5直列の組電池である。例を図示しないが、電気的に並列に接続されている複数の単電池を含む組電池では、例えば、複数の負極端子同士がバスバーにより接続されるとともに複数の正極端子同士がバスバーにより接続されることで、複数の単電池が電気的に接続され得る。
【0202】
5つの単電池100a~100eのうち少なくとも1つの電池の正極端子207は、外部接続用の正極側リード202に電気的に接続されている。また、5つの単電池100a~100eうち少なくとも1つの電池の負極端子206は、外部接続用の負極側リード203に電気的に接続されている。
【0203】
第3の実施形態に係る組電池は、第2の実施形態に係る二次電池を具備する。従って、係る組電池では容量低下が抑制されている。
【0204】
[第4の実施形態]
第4の実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第3の実施形態に係る組電池を具備している。この電池パックは、第3の実施形態に係る組電池の代わりに、単一の第2の実施形態に係る二次電池を具備していてもよい。
【0205】
第4の実施形態に係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用してもよい。
【0206】
また、第4の実施形態に係る電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、外部に二次電池からの電流を出力するため、及び/又は二次電池に外部からの電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
【0207】
次に、第4の実施形態に係る電池パックの一例について、図面を参照しながら説明する。
【0208】
図16は、第4の実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図である。
図17は、
図16に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
【0209】
図16及び
図17に示す電池パック300は、収容容器301と、蓋302と、保護シート303と、組電池200と、プリント配線基板340と、配線347と、図示しない絶縁板とを備えている。
【0210】
図16に示す収容容器301は、長方形の底面を有する有底角型容器である。収容容器301は、保護シート303と、組電池200と、プリント配線基板340と、配線347とを収容可能に構成されている。蓋302は、矩形型の形状を有する。蓋302は、収容容器301を覆うことにより、上記組電池200等を収容する。収容容器301及び蓋302には、図示していないが、外部機器等へと接続するための開口部又は接続端子等が設けられている。
【0211】
組電池200は、複数の単電池100と、正極側リード202と、負極側リード203と、粘着テープ204とを備えている。
【0212】
複数の単電池100の少なくとも1つは、第2の実施形態に係る二次電池である。複数の単電池100の各々は、
図17に示すように電気的に直列に接続されている。複数の単電池100は、電気的に並列に接続されていてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されていてもよい。複数の単電池100を並列接続すると、直列接続した場合と比較して、電池容量が増大する。
【0213】
粘着テープ204は、複数の単電池100を締結している。粘着テープ204の代わりに、熱収縮テープを用いて複数の単電池100を固定してもよい。この場合、組電池200の両側面に保護シート303を配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて複数の単電池100を結束させる。
【0214】
正極側リード202の一端は、組電池200に接続されている。正極側リード202の一端は、1以上の単電池100の正極と電気的に接続されている。負極側リード203の一端は、組電池200に接続されている。負極側リード203の一端は、1以上の単電池100の負極と電気的に接続されている。
【0215】
プリント配線基板340は、収容容器301の内側面のうち、一方の短辺方向の面に沿って設置されている。プリント配線基板340は、正極側コネクタ342と、負極側コネクタ343と、サーミスタ345と、保護回路346と、配線342a及び343aと、通電用の外部端子350と、プラス側配線(正側配線)348aと、マイナス側配線(負側配線)348bとを備えている。プリント配線基板340の一方の主面は、組電池200の一側面と向き合っている。プリント配線基板340と組電池200との間には、図示しない絶縁板が介在している。
【0216】
正極側コネクタ342に、正極側リード202の他端202aが電気的に接続されている。負極側コネクタ343に、負極側リード203の他端203aが電気的に接続されている。
【0217】
サーミスタ345は、プリント配線基板340の一方の主面に固定されている。サーミスタ345は、単電池100の各々の温度を検出し、その検出信号を保護回路346に送信する。
【0218】
通電用の外部端子350は、プリント配線基板340の他方の主面に固定されている。通電用の外部端子350は、電池パック300の外部に存在する機器と電気的に接続されている。通電用の外部端子350は、正側端子352と負側端子353とを含む。
【0219】
保護回路346は、プリント配線基板340の他方の主面に固定されている。保護回路346は、プラス側配線348aを介して正側端子352と接続されている。保護回路346は、マイナス側配線348bを介して負側端子353と接続されている。また、保護回路346は、配線342aを介して正極側コネクタ342に電気的に接続されている。保護回路346は、配線343aを介して負極側コネクタ343に電気的に接続されている。更に、保護回路346は、複数の単電池100の各々と配線347を介して電気的に接続されている。
【0220】
保護シート303は、収容容器301の長辺方向の両方の内側面と、組電池200を介してプリント配線基板340と向き合う短辺方向の内側面とに配置されている。保護シート303は、例えば、樹脂又はゴムからなる。
【0221】
保護回路346は、複数の単電池100の充放電を制御する。また、保護回路346は、サーミスタ345から送信される検出信号、又は、個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号に基づいて、保護回路346と外部機器への通電用の外部端子350(正側端子352、負側端子353)との電気的な接続を遮断する。
【0222】
サーミスタ345から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の温度が所定の温度以上であることを検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の過充電、過放電及び過電流を検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100について過充電等を検出する場合、電池電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の単電池100に挿入する。
【0223】
なお、保護回路346としては、電池パック300を電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を用いてもよい。
【0224】
また、この電池パック300は、上述したように通電用の外部端子350を備えている。したがって、この電池パック300は、通電用の外部端子350を介して、組電池200からの電流を外部機器に出力するとともに、外部機器からの電流を、組電池200に入力することができる。言い換えると、電池パック300を電源として使用する際には、組電池200からの電流が、通電用の外部端子350を通して外部機器に供給される。また、電池パック300を充電する際には、外部機器からの充電電流が、通電用の外部端子350を通して電池パック300に供給される。この電池パック300を車載用電池として用いた場合、外部機器からの充電電流として、車両の動力の回生エネルギーを用いることができる。
【0225】
なお、電池パック300は、複数の組電池200を備えていてもよい。この場合、複数の組電池200は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。また、プリント配線基板340及び配線347は省略してもよい。この場合、正極側リード202及び負極側リード203を通電用の外部端子350の正側端子352と負側端子353としてそれぞれ用いてもよい。
【0226】
このような電池パックは、例えば大電流を取り出したときにサイクル性能が優れていることが要求される用途に用いられる。この電池パックは、具体的には、例えば、電子機器の電源、定置用電池、各種車両の車載用電池として用いられる。電子機器としては、例えば、デジタルカメラを挙げることができる。この電池パックは、車載用電池として特に好適に用いられる。
【0227】
第4の実施形態に係る電池パックは、第2の実施形態に係る二次電池又は第3の実施形態に係る組電池を備えている。従って、係る電池パックでは容量低下が抑制されている。
【0228】
[第5の実施形態]
第5の実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第4の実施形態に係る電池パックを搭載している。
【0229】
第5の実施形態に係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。車両は、この車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構(Regenerator:再生器)を含んでいてもよい。
【0230】
第5の実施形態に係る車両の例としては、例えば、二輪から四輪までのハイブリッド電気自動車、二輪から四輪までの電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両が挙げられる。
【0231】
第5の実施形態に係る車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
【0232】
第5の実施形態に係る車両は、複数の電池パックを搭載してもよい。この場合、それぞれの電池パックが含む電池同士は、電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。例えば、各電池パックが組電池を含む場合は、組電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、又は電気的に並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。或いは、各電池パックが単一の電池を含む場合は、それぞれの電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。
【0233】
次に、第5の実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0234】
図18は、第5の実施形態に係る車両の一例を概略的に示す部分透過図である。
【0235】
図18に示す車両400は、車両本体40と、第4の実施形態に係る電池パック300とを含んでいる。
図18に示す例では、車両400は、四輪の自動車である。
【0236】
この車両400は、複数の電池パック300を搭載してもよい。この場合、電池パック300が含む電池(例えば、単電池又は組電池)は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
【0237】
図18では、電池パック300が車両本体40の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている例を図示している。上述したとおり、電池パック300は、例えば、車両本体40の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック300は、車両400の電源として用いることができる。また、この電池パック300は、車両400の動力の回生エネルギーを回収することができる。
【0238】
次に、
図19を参照しながら、第5の実施形態に係る車両の実施態様について説明する。
【0239】
図19は、第5の実施形態に係る車両における電気系統に関する制御システムの一例を概略的に示した図である。
図19に示す車両400は、電気自動車である。
【0240】
図19に示す車両400は、車両本体40と、車両用電源41と、車両用電源41の上位の制御装置である車両ECU(ECU:Electric Control Unit;電気制御装置)42と、外部端子(外部電源に接続するための端子)43と、インバータ44と、駆動モータ45とを備えている。
【0241】
車両400は、車両用電源41を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。なお、
図19に示す車両400では、車両用電源41の搭載箇所については概略的に示している。
【0242】
車両用電源41は、複数(例えば3つ)の電池パック300a、300b及び300cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)411と、通信バス412とを備えている。
【0243】
電池パック300aは、組電池200aと組電池監視装置310a(例えば、VTM:Voltage Temperature Monitoring)とを備えている。電池パック300bは、組電池200bと組電池監視装置310bとを備えている。電池パック300cは、組電池200cと組電池監視装置310cとを備えている。電池パック300a~300cは、前述の電池パック300と同様の電池パックであり、組電池200a~200cは、前述の組電池200と同様の組電池である。組電池200a~200cは、電気的に直列に接続されている。電池パック300a、300b、及び300cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パック300と交換することができる。
【0244】
組電池200a~200cのそれぞれは、直列に接続された複数の単電池を備えている。複数の単電池の少なくとも1つは、第2の実施形態に係る二次電池である。組電池200a~200cは、それぞれ、正極端子413及び負極端子414を通じて充放電を行う。
【0245】
電池管理装置411は、組電池監視装置310a~310cとの間で通信を行い、車両用電源41に含まれる組電池200a~200cに含まれる単電池100のそれぞれについて電圧及び温度などに関する情報を収集する。これにより、電池管理装置411は、車両用電源41の保全に関する情報を収集する。
【0246】
電池管理装置411と組電池監視装置310a~310cとは、通信バス412を介して接続されている。通信バス412では、1組の通信線が複数のノード(電池管理装置411と1つ以上の組電池監視装置310a~310cと)で共有されている。通信バス412は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
【0247】
組電池監視装置310a~310cは、電池管理装置411からの通信による指令に基づいて、組電池200a~200cを構成する個々の単電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての単電池の温度を測定しなくてもよい。
【0248】
車両用電源41は、正極端子413と負極端子414との間の電気的な接続の有無を切り替える電磁接触器(例えば
図19に示すスイッチ装置415)を有することもできる。スイッチ装置415は、組電池200a~200cへの充電が行われるときにオンになるプリチャージスイッチ(図示せず)、及び、組電池200a~200cからの出力が負荷へ供給されるときにオンになるメインスイッチ(図示せず)を含んでいる。プリチャージスイッチ及びメインスイッチのそれぞれは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオン又はオフに切り替わるリレー回路(図示せず)を備えている。スイッチ装置415等の電磁接触器は、電池管理装置411又は車両400全体の動作を制御する車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。
【0249】
インバータ44は、入力された直流電圧を、モータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ44の3相の出力端子は、駆動モータ45の各3相の入力端子に接続されている。インバータ44は、電池管理装置411又は車両全体の動作を制御するための車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。インバータ44が制御されることにより、インバータ44からの出力電圧が調整される。
【0250】
駆動モータ45は、インバータ44から供給される電力により回転する。駆動モータ45の回転によって発生する駆動力は、例えば差動ギアユニットを介して車軸及び駆動輪Wに伝達される。
【0251】
また、図示はしていないが、車両400は、回生ブレーキ機構(リジェネレータ)を備えている。回生ブレーキ機構は、車両400を制動した際に駆動モータ45を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ44に入力され、直流電流に変換される。変換された直流電流は、車両用電源41に入力される。
【0252】
車両用電源41の負極端子414には、接続ラインL1の一方の端子が接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ44の負極入力端子417に接続されている。接続ラインL1には、負極端子414と負極入力端子417との間に電池管理装置411内の電流検出部(電流検出回路)416が設けられている。
【0253】
車両用電源41の正極端子413には、接続ラインL2の一方の端子が、接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ44の正極入力端子418に接続されている。接続ラインL2には、正極端子413と正極入力端子418との間にスイッチ装置415が設けられている。
【0254】
外部端子43は、電池管理装置411に接続されている。外部端子43は、例えば、外部電源に接続することができる。
【0255】
車両ECU42は、運転者などの操作入力に応答して電池管理装置411を含む他の管理装置及び制御装置とともに車両用電源41、スイッチ装置415、及びインバータ44等を協調制御する。車両ECU42等の協調制御によって、車両用電源41からの電力の出力及び車両用電源41の充電等が制御され、車両400全体の管理が行われる。電池管理装置411と車両ECU42との間では、通信線により、車両用電源41の残容量など、車両用電源41の保全に関するデータ転送が行われる。
【0256】
第5の実施形態に係る車両は、第4の実施形態に係る電池パックを搭載している。電池パックでは容量低下が抑制されているため、信頼性の高い車両を提供することが可能である。
【0257】
[実施例]
以下に実施例を説明するが、実施形態は、以下に記載される実施例に限定されるものではない。
【0258】
(実施例1)
<第1電極の作製>
第1活物質としてスピネル型チタン酸リチウムLi4Ti5O12(LTO)を準備した。導電剤としてカーボンブラック(CB)を準備した。結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を準備した。これら材料をLTO:CB:PVdF=100:4:2の質量割合で分散溶媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に加えて混合して活物質含有スラリーを調製した。このスラリーを、厚さ12μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布した。その後、スラリー塗膜を乾燥し、プレスすることにより、第1活物質含有層を形成した。その後、第1活物質含有層の主面の輪郭が長方形となるように切出した。但し、長方形の一辺にて、集電体のうち活物質含有層が形成されていない部分を残すことで、集電タブを形成した。
【0259】
続いて、固体電解質としてLi1.5Al0.5Ti1.5(PO4)3(LATP)を準備した。結着剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)及びスチレンブタジェンゴム(SBR)を準備した。これら材料を、質量比でLATP:CMC:SBR=100:1:1となるように秤量し、分散溶媒としての水と混合して固体電解質含有スラリーを調製した。このスラリーを、スプレー堆積法により両面の第1活物質含有層に塗布し、乾燥させて水を除去することで、第1固体電解質層を形成した。
【0260】
ここで、各面の第1活物質含有層の主面上で長方形の4辺に沿って固体電解質含有スラリーを塗布し、枠形状の第1固体電解質層を形成した。各辺にて、第1固体電解質層は、第1活物質含有層の全幅に対し0.1倍の幅で形成した。つまり、長方形の4辺のうち平行な2辺に沿った第1固体電解質層の第1部の第1周縁幅FSがそれら2辺の間の第1幅FAに対し0.1FAであり、残り2辺に沿った第1固体電解質層の第2部の第2周縁幅SSがそれら2辺の間の第2幅SAに対し0.1SAであった。
【0261】
こうして、第1活物質含有層及び第1固体電解質層を備えた第1電極を作製した。
【0262】
<第2電極の作製>
第2活物質としてリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM)を準備した。導電剤としてアセチレンブラック(AB)及びカーボンブラック(CB)を準備した。結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を準備した。これら材料をNCM:AB:CB:PVdF=100:3.33:1.67:1.2の質量割合で分散溶媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に加えて混合して活物質含有スラリーを調製した。このスラリーを、厚さ12μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布した。その後、スラリー塗膜を乾燥し、プレスすることにより、第2活物質含有層を形成した。その後、第2活物質含有層の主面の輪郭が長方形となるように切出した。但し、長方形の一辺にて、集電体のうち活物質含有層が形成されていない部分を残すことで、集電タブを形成した。
【0263】
こうして、第2活物質含有層を備えた第2電極を作製した。
【0264】
<電極群の作製>
15μmの厚さを有するセルロースセパレータを準備した。複数の上記第1電極と、セパレータと、複数の上記第2電極とを、“-第1電極-セパレータ-第2電極-セパレータ-第1電極-セパレータ-第2電極-セパレータ-”の順で積層させて、積層型電極群を得た。
【0265】
<液状電解質の調製>
プロピレンカーボネート(PC)及びジエチルカーボネート(DEC)を、PC:DEC=1:2の体積割合で混合して、混合溶媒を得た。混合溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.0M溶解させて、液状非水電解質を調製した。
【0266】
<電池の組み立て>
上記電極群を、アルミニウム箔とその両面に形成されたポリプロピレン層とから構成されたラミネートフィルムからなるパックに収納した。その後、電極群が収納されたラミネートフィルムパック内に上記液状非水電解質を注入した。ラミネートフィルムパックをヒートシールにより完全密閉し、電池を作製した。
【0267】
(実施例2)
第1固体電解質層の第1部の第1周縁幅FSを0.25FAに変更するとともに第2部の第2周縁幅SSを0.25SAに変更したことを除き、実施例1と同様の手順で電池を作製した。
【0268】
(実施例3)
下記のとおり第2電極の第2活物質含有層の両側の主面上に第2固体電解質層を形成したことを除き、実施例1と同様の手順で電池を作製した。
【0269】
第1固体電解質層の形成のために調製したものと同様の組成を有する固体電解質含有スラリーを調製した。このスラリーを、スプレー堆積法により両面の第2活物質含有層に塗布し、乾燥させて水を除去することで、第2固体電解質層を形成した。
【0270】
ここで、各面の第2活物質含有層の主面上で長方形の4辺に沿って固体電解質含有スラリーを塗布し、枠形状の第2固体電解質層を形成した。各辺にて、第2固体電解質層は、第2活物質含有層の全幅に対し0.1倍の幅で形成した。つまり、長方形の4辺のうち平行な2辺に沿った第2固体電解質層の第3部の第3周縁幅TSがそれら2辺の間の第3幅TAに対し0.1TAであり、残り2辺に沿った第2固体電解質層の第4部の第4周縁幅USがそれら2辺の間の第4幅UAに対し0.1UAであった。
【0271】
(実施例4)
第1電極及び第2電極の作製条件を下記のとおりそれぞれ変更したことを除き、実施例1と同様の手順で電池を作製した。
【0272】
第1電極を作製する際の活物質含有スラリーの組成を次のとおり変更したことを除き、実施例1と同様の手順で第1電極を作製した。第1活物質としてオリビン構造を有するリン酸鉄リチウムLiFePO4(LFP)を準備した。導電剤としてアセチレンブラック(AB)及びカーボンブラック(CB)を準備した。結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を準備した。これら材料をLFP:AB:CB:PVdF=100:3.33:1.67:1.2の質量割合で分散溶媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に加えて混合して活物質含有スラリーを調製した。
【0273】
第2電極を作製する際の活物質含有スラリーの組成を次のとおり変更したことを除き、実施例1と同様の手順で第2電極を作製した。第1活物質として単斜晶型ニオブチタン複合酸化物Nb2TiO7(NTO)を準備した。導電剤としてカーボンブラック(CB)を準備した。結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を準備した。これら材料をNTO:CB:PVdF=100:4:2の質量割合で分散溶媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に加えて混合して活物質含有スラリーを調製した。
【0274】
(実施例5)
実施例3で形成した第2固体電解質層と同様の第2固体電解質層を第2電極の第2活物質含有層の両面に形成したことを除き、実施例4と同様の手順で電池を作製した。
【0275】
(比較例1)
第1電極を作製する際に、第1固体電解質層の形成を省略したことを除き、実施例1と同様の手順で電池を作製した。
【0276】
<リチウム拡散係数Dtの測定>
実施例1-5及び比較例1で各々作製した第1電極及び第2電極からφ10mm(直径)の円形試料をそれぞれ打ち出した。また、15μmの厚さを有する円形のセルロースセパレータを準備した。各例について第1電極及び第2電極からそれぞれ打ち出した円形の電極、円形のセパレータ、及び上記液状非水電解質を用いてコインセルを作製した。コインセルは、実施例1-5及び比較例1の各々について、下記のとおり外縁部と見なした部分及び中心部と見なした部分から打ち出した円形電極を用いて作製した。
【0277】
実施例1-5の第1電極については、枠形状の第1固体電解質層が形成されている部分を外縁部と見なした。第1固体電解質層の枠形状の内側の固体電解質が設けられていない第1固体電解質非担持部に対応する部分を中心部と見なした。比較例1の第1電極については、実施例1の第1電極にて外縁部及び中心部と見なした部分と対応する部分を、外縁部及び中心部とそれぞれ見なした。各第2電極については、電極群にて第1電極から打ち抜いた円形部分と重なる箇所を打ち抜いた。
【0278】
上述した方法に沿って、各コインセルを半充電状態まで充電し、測定試料を準備して、交流インピーダンスを測定し、測定結果から電極厚さ方向へのリチウム拡散係数Dt(DtE及びDtC)を算出した。ここでいう電極厚さ方向とは、集電体と活物質含有層との積層方向と平行な方向を指す。
【0279】
下記表1に、実施例1-5及び比較例1にて作製した第1電極及び第2電極の詳細、並びにリチウム拡散係数Dtの測定結果を示す。第1電極及び第2電極の詳細としては、第1活物質、第2活物質、第1固体電解質層の第1部及び第2部のそれぞれの幅、並びに第2固体電解質層の第3部及び第4部のそれぞれの幅を示す。リチウム拡散係数Dtとしては、中心部と見なした部分の厚さ方向へのリチウム拡散係数DtC及び外縁部と見なした部分の厚さ方向へのリチウム拡散係数DtEを示す。
【0280】
【0281】
<寿命評価>
実施例1-5及び比較例1で作製した各々の電池について、下記のとおり寿命性能を評価した。
【0282】
先ず、次のようにして初回放電容量を測定した。25℃の温度環境下、1Cレート(600 mA)の定電流でSOC 100%まで充電した。10分間の休止時間を設けた後、0.2Cレート(120 mA)の定電流でSOC 0%まで放電した。放電の際の容量を測定し、記録した。
【0283】
上記初回充放電を0サイクル目として、その後12000サイクルの充放電を繰り返した。但し、2000サイクル毎に容量確認試験を実施し、その時点での容量維持率を算出した(放電容量維持率 = [各サイクル目の放電容量/初回(0サイクル目)放電容量]×100%)。
【0284】
各サイクル毎の充放電は、次の条件で行った。温度は25℃とし、SOC 27.5%~42.5%の範囲内で充放電を行った。充電は5Cレート(3 A)の定電流で行い、放電は5Cレート(3 A)の定電流で行った。充電及び放電の間に休止時間を設けなかった。
【0285】
2000サイクル毎の容量確認試験は、初回放電容量の測定と同様の条件で行った。つまり、温度は25℃とし、SOC 0%~100%の範囲内で充放電を行った。充電は1Cレート(600 mA)の定電流で行い、放電は0.2Cレート(120 mA)の定電流で行った。充電の後、放電を開始する前に、10分間の休止時間を設けた。
【0286】
下記表2に、寿命性能の評価結果を示す。具体的には、初回放電容量及び2000サイクル毎の放電容量維持率を示す。
【0287】
【0288】
表2に示すとおり、実施例1-5及び比較例1に係る電池は、何れも同程度の初回放電容量を示した。また、実施例1-5に係る電池では、比較例1に係る電池よりも放電容量の低下が少なかった。実施例1-5に係る電池では、表1に示したとおり少なくとも二相共存反応をする第1活物質を含んだ第1電極にて外縁部に第1固体電解質層が設けられており、それにより中心部の厚さ方向へのリチウム拡散係数DtCよりも外縁部と見なした部分の厚さ方向へのリチウム拡散係数DtEが高かった。実施例1-5と比較例1との間の比較から、電極の中心部よりも外縁部における厚さ方向へのリチウム拡散係数Dtを高くしたことにより急速充放電サイクルの繰り返しに伴う容量低下の抑制が見られた。
【0289】
以上説明した1以上の実施形態及び実施例によれば、電極が提供される。係る電極は、二相共存反応をする活物質を含有し第1方向に沿う一対の第1辺を含む主面を有する活物質含有層を具備する。上記一対の第1辺の少なくとも一方に沿い、且つ、それら第1辺の間の第1幅FAに対し0.03FA以上0.25FA以下の第1周縁幅FSを有する主面内の第1領域を含んだ外縁部における、活物質含有層の厚さ方向へのリチウム拡散係数DtEは、主面のうち外縁部を除く中心部における厚さ方向へのリチウム拡散係数DtCより高い。厚さ方向は、活物質含有層の主面と交差する。係る電極は、容量低下が抑制された二次電池及び電池パック、並びにのこの電池パックを搭載した車両を提供することができる。
【0290】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 二相共存反応をする活物質を含有し第1方向に沿う一対の第1辺を含む主面を有する活物質含有層を具備し、前記一対の第1辺の少なくとも一方に沿い、且つ、前記一対の第1辺の間の第1幅F
A
に対し0.03F
A
以上0.25F
A
以下の第1周縁幅F
S
を有する前記主面内の第1領域を含んだ外縁部における、前記活物質含有層の前記主面と交差する厚さ方向へのリチウム拡散係数Dt
E
は、前記主面のうち前記外縁部を除く中心部における前記厚さ方向へのリチウム拡散係数Dt
C
より高い、電極。
[2] 前記外縁部は、前記一対の第1辺にそれぞれ沿う一対の前記第1領域を含む、[1]に記載の電極。
[3] 前記主面は前記第1方向と交差する第2方向に沿う一対の第2辺をさらに含み、前記外縁部は前記一対の第2辺の少なくとも一方に沿い、且つ、前記一対の第2辺の間の第2幅S
A
に対し0.25S
A
以下の第2周縁幅S
S
を有する前記主面内の第2領域をさらに含む、[1]又は[2]に記載の電極。
[4] 二相共存反応をする第1活物質を含有し第1方向に沿う一対の第1辺を含む第1主面を有する第1活物質含有層と、
前記第1活物質含有層の前記第1主面上に設けられており固体電解質を含有する第1固体電解質層と
を具備し、
前記第1固体電解質層は、前記一対の第1辺の少なくとも一方に沿い、且つ、前記一対の第1辺の間の第1幅F
A
に対し0.03F
A
以上0.25F
A
以下の第1周縁幅F
S
を有する第1部を含み、前記第1活物質含有層は、前記第1固体電解質層が設けられていない第1固体電解質非担持部を含む、電極。
[5] 前記第1固体電解質層は、前記一対の第1辺にそれぞれ沿う一対の前記第1部を含む、[4]に記載の電極。
[6] 前記第1主面は前記第1方向と交差する第2方向に沿う一対の第2辺をさらに含み、前記第1固体電解質層は前記一対の第2辺の少なくとも一方に沿い、且つ、前記一対の第2辺の間の第2幅S
A
に対し0.25S
A
以下の第2周縁幅S
S
を有する第2部をさらに含む、[4]又は[5]に記載の電極。
[7] 前記第1活物質は、スピネル構造を有するリチウムチタン酸化物を含む、[4]から[6]のいずれか1つに記載の電極。
[8] 前記第1活物質は、オリビン構造を有するリン酸鉄リチウムを含む、[4]から[6]のいずれか1つに記載の電極。
[9] [1]から[8]のいずれか1つに記載の電極を含む第1電極と、
前記第1電極に対する対極を含む第2電極と
を具備する、二次電池。
[10] 前記第2電極は、単一固相反応をする第2活物質を含有する第2活物質含有層を具備する、[9]に記載の二次電池。
[11] [4]から[8]のいずれか1つに記載の電極を含む第1電極と、
単一固相反応をする第2活物質を含有し第3方向に沿う一対の第3辺を含む第2主面を有する第2活物質含有層と前記第2活物質含有層の前記第2主面上に設けられており固体電解質を含有する第2固体電解質層とを備える対極を含む第2電極と
を具備し、
前記第2固体電解質層は、前記一対の第3辺の少なくとも一方に沿い、且つ、前記一対の第3辺の間の第3幅T
A
に対し0.25T
A
以下の第3周縁幅T
S
を有する第3部を含み、前記第2活物質含有層は、前記第2固体電解質層が設けられていない第2固体電解質非担持部を含む、二次電池。
[12] 前記第2主面は前記第3方向と交差する第4方向に沿う一対の第4辺をさらに含み、前記第2固体電解質層は前記一対の第4辺の少なくとも一方に沿い、且つ、前記一対の第4辺の間の第4幅U
A
に対し0.25U
A
以下の第4周縁幅U
S
を有する第4部をさらに含む、[11]に記載の二次電池。
[13] [9]から[12]のいずれか1つに記載の二次電池を具備する、電池パック。
[14] 通電用の外部端子と、
保護回路と
を更に具備する、[13]に記載の電池パック。
[15] 複数の前記二次電池を具備し、
前記二次電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている、[13]又は[14]に記載の電池パック。
[16] [13]から[15]のいずれか1つに記載の電池パックを具備する、車両。
[17] 前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む、[16]に記載の車両。
【符号の説明】
【0291】
1…電極群、2…外装部材、3…第1電極、3a…第1集電体、3b…第1活物質含有層、3c…第1集電タブ、3d…第1固体電解質層、4…セパレータ、5…第2電極、5a…第2集電体、5b…第2活物質含有層、5c…第2集電タブ、5d…第2固体電解質層、6…第1電極端子、7…第2電極端子、40…車両本体、41…車両用電源、42…電気制御装置、43…外部端子、44…インバータ、45…駆動モータ、100…二次電池、200…組電池、200a…組電池、200b…組電池、200c…組電池、201…バスバー、202…正極側リード、203…負極側リード、204…粘着テープ、206…負極端子、207…正極端子、300…電池パック、300a…電池パック、300b…電池パック、300c…電池パック、301…収容容器、302…蓋、303…保護シート、310a…組電池監視装置、310b…組電池監視装置、310c…組電池監視装置、340…プリント配線基板、342…正極側コネクタ、342a…配線、343…負極側コネクタ、343a…配線、345…サーミスタ、346…保護回路、347…配線、350…通電用の外部端子、352…正側端子、353…負側端子、348a…プラス側配線、348b…マイナス側配線、400…車両、411…電池管理装置、412…通信バス、413…正極端子、414…負極端子、415…スイッチ装置、416…電流検出部、417…負極入力端子、418…正極入力端子、L1…接続ライン、L2…接続ライン、W…駆動輪。