(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】容器と球状内容物とからなる製品
(51)【国際特許分類】
B65D 83/04 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
B65D83/04 H
(21)【出願番号】P 2021048611
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 将行
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】実公昭39-008591(JP,Y1)
【文献】特開2011-131931(JP,A)
【文献】特開2017-013841(JP,A)
【文献】特開2020-164213(JP,A)
【文献】米国特許第02960259(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0377286(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110182475(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と球状内容物とからなる製品であって、
前記容器は、スクイズ変形可能な容器本体と該容器本体に連設された口首部とを備え、該容器本体内に該球状内容物が収容されており、該容器本体のスクイズによって該球状内容物が該口首部を通過して外部へ取り出されるようになされており、
前記口首部は、前記球状内容物を外部へ取り出すための円形吐出口が形成された膜体部を有し、
前記円形吐出口の直径が、前記球状内容物の球径よりも小径となっており、
前記球状内容物が前記円形吐出口を閉塞した状態下で、該容器本体をスクイズ変形させて該容器本体の内圧を上昇させることによって、該球状内容物が該円形吐出口から吐出さ
れ、
前記球状内容物が吐出される際に、前記球状内容物の吐出によって生じる感覚フィードバックを使用者に提供するようにした、容器と球状内容物とからなる製品。
【請求項2】
前記円形吐出口が前記容器本体よりも下方に位置するように、前記容器を傾けると、前記球状内容物が移動し、前記円形吐出口において停止して、前記円形吐出口を閉塞し、
前記球状内容物が前記円形吐出口を閉塞した状態下で、前記容器本体をスクイズ変形させて該容器本体の内圧を上昇させることによって、前記球状内容物及び前記膜体部の少なくとも一方が変形することで、前記球状内容物が吐出される、請求項1に記載の容器と球状内容物とからなる製品。
【請求項3】
前記感覚フィードバックは、前記球状内容物が吐出され前記円形吐出口を通過する際に生じる音及び振動の少なくともいずれかである、
請求項1又は2に記載の容器と球状内容物とからなる製品。
【請求項4】
前記膜体部が弾性を有し、該膜体部の弾性により前記円形吐出口が変形可能になっている、請求項1~
3のいずれか1項に記載の容器と球状内容物とからなる製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器と球状内容物とからなる製品に関する。
【背景技術】
【0002】
球状内容物と、これを収容する容器本体とを有する、内容物入り容器が知られている。一般的に、該内容物を吐出する口首部に、吐出孔を有する容器用キャップが取り付けられている。容器の操作性等の観点から、容器用キャップを容器に固定するためのパーツ及び吐出孔を有するパーツ等の複数の部材からなる容器用キャップが提案されている。例えば、特許文献1には、球状物を収容する容器本体と、該容器本体の一部に設けられた口部と、該口部に該球状物を取り出す取り出し口を有するキャップとを有し、前記口部の内側に、周囲に複数の円孔が開口された分離管が設けられた、容器が記載されている。この分離管により容器本体内の球状物が分離されて、取り出し口から1個ずつ球状物を連続的に取り出せる。
【0003】
また、特許文献2には、球状の内容物の収容空間と該内容物よりも大径の吐出口とを有する容器本体を備え、該吐出口にはフィルム体が装着されており、該フィルム体は、該内容物の最大径部分における断面積よりも小さな開口面積の開孔と、該開孔の内周縁から径方向外側に向けて延びて設けられたスリットとを備えている、球状物用容器が記載されている。このフィルム体は、スリットを有することで、開孔を内容物が通過可能な大きさにまで変形可能である。
【0004】
また、特許文献3には、粒状物を収容する収容空間と、これに連通する取出し口とを有する本体部を備えた粒状物収納容器であって、該取出し口を閉塞する蓋部と、本体部の内側に設けられたガイド部に沿って移動可能な可動弁体とを備えており、該可動弁体が、蓋部を開いた状態で本体部を倒立姿勢とすることで所定の位置に配置され、収容空間から取出し口を通して送出される所定量の粒状物を、本体部の外側から摘み出し可能な状態で保持するよう構成されている、粒状物収納容器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-128107号公報
【文献】特開2017-013840号公報
【文献】特開2020-138777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内容物を取り出す際の操作性及び利便性の観点から、特許文献2に記載の球状物用容器は、その内容物である球状物を1個ずつ取り出し可能になされている。一方、内容物を取り出す際の手応えが分かり難いと、取り出す際の操作不良が生じ易くなるとともに、取り出し操作に伴う使用感が得られ難い。特許文献1~3は、内容物を取り出す際の手応えを得るための技術を開示するものではない。
【0007】
したがって、本発明の課題は、内容物を取り出す際の手応えが分かり易く、取り出し操作に伴う使用感が得られる、容器と球状内容物とからなる製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、容器と球状内容物とからなる製品に関する。
前記容器は、スクイズ変形可能な容器本体と該容器本体に連設された口首部とを備えていることが好ましい。
前記容器本体内に球状内容物が収容されており、該容器本体のスクイズによって該球状内容物が該口首部を通過して外部へ取り出されるようになされていることが好ましい。
前記口首部は、前記球状内容物を外部へ取り出すための円形吐出口が形成された膜体部を有していることが好ましい。
前記円形吐出口の直径が、前記球状内容物の球径よりも小径となっていることが好ましい。
前記球状内容物が前記円形吐出口を閉塞した状態下で、該容器本体をスクイズ変形させて該容器本体の内圧を上昇させることによって、該球状内容物が該円形吐出口から吐出されることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の容器と球状内容物とからなる製品によれば、内容物を取り出す際の手応えが分かり易く、取り出し操作に伴う使用感が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明に係る容器と球状内容物とからなる製品の一実施形態を示す一部破断斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す容器の口首部とその近傍を、球状内容物とともに示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すキャップを
図1における下方から視た図であって、蓋体を開いた状態にした平面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す口首部及びキャップ本体の拡大断面図である。
【
図5】
図5(a)及び(b)は、
図4に示す口首部から球状内容物を吐出する様子を示した断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の容器と球状内容物とからなる製品のさらに別の実施形態を示す
図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の容器と球状内容物とからなる製品の一実施形態が示されている。斯かる製品は、球状内容物が収容された、内容物入りスクイズ容器である。以下、内容物入りスクイズ容器1(製品)を単に容器1ともいう。
本実施形態の容器1はチューブ容器であり、該球状内容物5が収容された容器本体30を備えている。容器本体30は、合成樹脂製の筒状のチューブ体からなる胴部37と、該チューブ体の長手方向の一端における内面間を熱融着や超音波等の公知の方法によって形成したエンドシール部38とを有しており、該チューブ体の長手方向の他端には後述するように口首部31が連接されている。
【0012】
本実施形態の容器本体30は、スクイズ可能なチューブ形態である。これに代えて、容器本体30は、スクイズ可能なブローボトル、ブローチューブ等のブロー成形体であってもよい。
【0013】
本実施形態の容器本体30は、一方向に長い形状を有しており、その長手方向と、球状内容物5が外部へ吐出される吐出方向Vとが一致している。
図1~
図6では、吐出方向が符号Vで表されている。また、
図1に示す吐出方向Vは、上方から下方に向かう方向と一致している。
【0014】
本明細書において「上側」及び「上方」、並びに「下側」及び「下方」は、容器1を以下に説明する状態としたときの向きとする。
図1に示すように、エンドシール部38を鉛直方向の上側に向けて、胴部37及び口首部31の中心軸を鉛直方向と平行な状態としたとき、「上側」及び「上方」は鉛直上側及び鉛直上方であり、「下側」及び「下方」は鉛直下側及び鉛直下方である。「上側」及び「上方」は、口首部31においては容器本体30側となり、「下側」及び「下方」は、容器本体30とは反対側となる。
また、本明細書において「末端」は、口首部31においては容器本体30側であり、容器本体30においてはエンドシール部38側である。逆に「先端」は、口首部31においては容器本体30とは反対側であり、容器本体30においてはエンドシール部38とは反対側である。
【0015】
容器1は、
図2に示すように、吐出方向Vにおいてエンドシール部38とは反対側の端部に、口首部形成部材34を有している。口首部形成部材34は、外部へ取り出される際に球状内容物5が通過する口首部31、及び該口首部31と胴部37との間に形成された円錐台状の肩部33を有している。口首部31は、肩部33を介して容器本体30(
図2において図示せず)に連設されている。
【0016】
容器本体30は、スクイズ変形可能であり、胴部37を手で把持して押圧(スクイズ)することにより、容器本体30内に収容された球状内容物5が外部へ取り出されるようになされている。具体的には、胴部37をスクイズ変形させることで、容器本体30内の球状内容物5を、口首部31を介して後述する円形吐出口12から吐出できる。
【0017】
スクイズによる変形及び容器本体30の内圧上昇をより容易にし、且つ該変形後に容器本体30の形状をより効率的に復元させる観点から、容器本体30は以下の物性を具備することが好ましい。
容器本体30の内部体積は、好ましくは30mL以上、より好ましくは50mL以上であり、また好ましくは600mL以下、より好ましくは500mL以下であり、また好ましくは30mL以上600mL以下、より好ましくは50mL以上500mL以下である。
【0018】
上記と同様の観点から、容器本体30の形成材料の厚みは、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上であり、また好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.0mm以下である。
【0019】
口首部31は、球状内容物5が外部へ吐出される先端開口部32aと、容器本体30と連通する末端開口部32bとを有している(
図4参照)。先端開口部32aと末端開口部32bとは、吐出方向Vにおいて対向しており、口首部31の内部におけるこれら両開口部32a,32b間が、球状内容物5が通過する通路となっている。
本実施形態の口首部31は、その外周面に螺条が設けられている。口首部31の螺条は、後述するキャップ2が有する内筒部24の内周面に設けられた螺条と螺合可能であり、これにより、キャップ2が口首部31に着脱自在に装着される。
【0020】
容器1は、口首部31にキャップ2を備えている。本実施形態のキャップ2は、
図2に示すように、口首部31に取り付けられるキャップ本体20、及びヒンジ部25を介して該キャップ本体20と連結された蓋体27とを備えている。蓋体27は、円形状の平面視形状を有しており、ヒンジ部25を介してキャップ本体20と回動可能に接続されている。本実施形態の蓋体27は、口首部31の先端開口部32a及びそこに位置する円形吐出口12を開閉する。
図2では蓋体27を閉じた状態を示し、
図3では蓋体27を開けた状態を示す。説明の便宜上、
図4では、蓋体27の図示を省略している。
ヒンジ部25は板状であり、キャップ本体20及び蓋体27と連続して一体化している。
蓋体27の内面の中央には、蓋側筒部26が形成されている。蓋体27を閉じた状態において、蓋側筒部26は、蓋体27の内面から吐出方向Vの末端側に突出している(
図2参照)。
【0021】
本実施形態のキャップ本体20は、
図3に示すように、円形状の平面視形状を有している。キャップ本体20は、平面視において、中央に位置する円形状の本体開口部20aと、該本体開口部20aの外周に形成され、先端側に平滑な面を有する板状の本体天面部21とを備えている。キャップ本体20は、
図4に示すように、本体天面部21の裏面において末端側に突出する円筒状の内筒部24及び外筒部23を備えている。「裏面」とは、吐出方向Vにおける容器本体30側の面である。外筒部23は、内筒部24と同心円状に間隔を空けて配されている。内筒部24は、
図4に示すように、口首部31と螺合して、該口首部31の外周に配置される。この内筒部24の内周面及び口首部31の外周面それぞれには、これらが互いに螺合する凹凸(螺条)が設けられている。内筒部24及び口首部31の螺合により、キャップ本体20は、該口首部31に取り付けられる。外筒部23は、キャップ本体20の外周面を形成している。本実施形態においては、キャップ本体20は着脱可能に取り付けられており、内容物を補充(詰め替え)可能である。
【0022】
口首部31は、先端側に膜体部10を有している。本実施形態の膜体部10は、
図4に示すように、口首部31の先端開口部32aを閉塞するように、該先端開口部32a側を被覆している。膜体部10は、先端開口部32aよりも大きい面積を有しており、先端開口部32aを被覆するとともに、先端開口部32aからはみ出した周縁部が口首部31の外周面の一部を被覆している。
【0023】
膜体部10には、球状内容物5を外部へ取り出すための円形吐出口12が形成されている。円形吐出口12は、平面視において膜体部10の中央に形成されている。口首部31の平面視において円形吐出口12の中央位置は、口首部31の中心軸の位置と一致しており、該円形吐出口12の全域が先端開口部32aと重なっている。
円形吐出口12の直径L1(
図4参照)は、口首部31の先端開口部32aの直径L3(
図4参照)よりも小さい。
【0024】
本実施形態の膜体部10は、該膜体部10よりも吐出方向Vの先端側に位置する膜体固定部15によって、口首部31に固定されている。具体的には、膜体部10は、口首部31の先端と膜体固定部15との間に挟まれた状態で固定されている(
図4参照)。
膜体固定部15は、これと口首部31との間に膜体部10を挟んだ状態で、該口首部31の先端に嵌合可能に固定されている。膜体固定部15は、平面視において円形の開口部を有しており、口首部31に固定された状態において、該開口部が膜体部10の円形吐出口12全域と重なるように配されている。膜体固定部15と膜体部10とは同心円状に配置されており、膜体固定部15が有する開口部の開口端から中央に向かって、膜体部10が延出している。
【0025】
膜体固定部15の開口部、及びキャップ本体20の本体開口部20aそれぞれの開口径は、円形吐出口12の直径L1よりも大きい。球状内容物5をより容易に取り出す観点から、膜体固定部15の開口部、及び本体開口部20aそれぞれの開口径は、球状内容物5の球径L5よりも大きいことが好ましい。
【0026】
膜体部10は、円形吐出口12の直径L1(
図4参照)が、球状内容物5の球径L5〔
図5(a)参照〕よりも小径となっている。斯かる円形吐出口12の直径L1は、球状内容物5が円形吐出口12を通過する前の状態の直径である。「円形吐出口12を通過する前の状態」には、球状内容物5が円形吐出口12を通過する最中の状態は含まれない。
球状内容物5を外部へ取り出す操作性をより向上させる観点から、円形吐出口12の直径L1(
図4参照)は、球状内容物5の球径L5〔
図5(a)参照〕に対して、好ましくは75%以上、より好ましくは95%以上であり、また好ましくは90%以下、より好ましくは90%以下であり、また好ましくは75%以上95%以下、より好ましくは80%以上90%以下である。
【0027】
上記と同様の観点から、球状内容物5の球径L5〔
図5(a)参照〕は、好ましくは5mm以上20mm以下であり、より好ましくは10mm以上15mm以下である。なお、球状内容物5の球径とは、その最小径をいう。
球状内容物5の形状は、略真球であってもよく、楕円球であってもよい。球状内容物5が楕円球である場合、楕円球をその長手方向(長軸方向)に沿って視たとき、該楕円球の短手方向(短軸方向)断面のうち、直径が最大となる断面の直径を、球状内容物5の球径とする。また、容器1内に吐出方向Vに延びる配列構造(ガイド)を設け、楕円球の長手方向と吐出方向が一致するように、吐出される楕円球の向きを整えることが好ましい。
【0028】
上記と同様の観点から、円形吐出口12の直径L1(
図4参照)は、口首部31の先端開口部32aの直径L3(
図4参照)よりも小径となっていることが好ましい。
この場合、円形吐出口12の直径L1(
図4参照)は、口首部31の先端開口部32aの直径L3(
図4参照)に対して、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上であり、また好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。
【0029】
図1に示すように、口首部31側が下方になるように、すなわち円形吐出口12が容器本体30よりも下方に位置するように、容器1を傾けると、容器1内の球状内容物5が移動し、円形吐出口12において停止して、円形吐出口12を閉塞する。
図5(a)に、本実施形態の容器1において、球状内容物5が円形吐出口12を閉塞した状態を示す。
前述したように、円形吐出口12の直径L1が、球状内容物5の球径L5よりも小径となっているので、口首部31内を移動した球状内容物5は円形吐出口12に嵌った状態で停止する〔
図5(a)参照〕。
【0030】
このように球状内容物5が円形吐出口12を閉塞した状態下で、該容器本体30をスクイズ変形させて該容器本体30の内圧を上昇させると、該球状内容物5が該円形吐出口12から吐出される〔
図5(b)参照〕。具体的には、スクイズ変形された容器本体30の内圧によって、球状内容物5が口首部31の先端側に向かって押し出され、円形吐出口12から容器1外部へ吐出される。この球状内容物5を吐出後、円形吐出口12の閉塞が開放されるので、容器本体30内は減圧され、容器本体30の形状が復元される。
【0031】
本実施形態の容器1は、容器本体30をスクイズ変形させ、且つ該容器本体30における内圧の上昇を利用して、球状内容物5を取り出すので、該容器本体30における内圧の変動が、取り出す際の手応えとして使用者に伝わり易い。これにより、球状内容物5を容器1から確実に取り出すことができ、操作不良が生じ難い。また、円形吐出口12の直径L1が、球状内容物5の球径L5よりも小径となっているので、球状内容物5を1個ずつ取り出すことができる上、球状内容物5を取り出す毎に前記手応えが得られるので、取り出し操作に伴う使用感が使用者に得られ易い。
【0032】
上記の効果をより確実に奏させる観点、及び後述する感覚フィードバックをより得易くする観点から、スクイズ変形させた容器本体30の最大内圧は、好ましくは0.5kPa以上、より好ましくは1kPa以上であり、また好ましくは4kPa以下、より好ましくは3kPa以下であり、また好ましくは0.5kPa以上4kPa以下、より好ましくは1kPa以上3kPa以下である。斯かる最大内圧は、球状内容物5が吐出されずに円形吐出口12を閉塞し得る最大内圧である。
【0033】
前記最大内圧は、以下の方法により測定される。
先ず、容器1において、球状内容物5が円形吐出口12を閉塞した状態とする。斯かる容器1を卓上型物性測定機(山電社製、型番TPU-2D)にセットする。容器1は、卓上型物性測定機の圧縮方向と吐出方向Vとが直交する状態でセットする。容器本体30の胴部37を卓上型物性測定機にて圧縮する。圧縮速度は、5mm/秒とする。圧縮は、容器1から球状内容物5が吐出するまで行い、その圧縮過程で測定された胴部37の最大内圧を求める。以上の操作を同じ容器1について5回繰り返し、その平均値を容器本体30の最大内圧とする。
【0034】
前記手応えをより確実に得る観点から、前記容器本体30の内圧を上昇させることにより、球状内容物5及び膜体部10の少なくとも一方が変形することで、球状内容物5が吐出されることが好ましい。球状内容物5及び膜体部10の少なくとも一方が変形することで、容器本体30内がより気密状態となり、容器本体30の内圧がより変動し易くなる。これにより、前記の手応え及び使用感をより向上できる。
【0035】
前記の手応え及び使用感をより向上させる観点から、球状内容物5が吐出される際に、球状内容物5の吐出によって生じる感覚フィードバックを使用者に提供するようになされていることが好ましい。感覚フィードバックは、容器1(本実施形態の製品)の使用者の五感に訴えかけるフィードバックである。具体的には、容器1から球状内容物5を取り出す際に使用者に付与される感覚刺激であって、主に聴覚及び触覚のいずれかの感覚刺激である。例えば、球状内容物5が円形吐出口12を通過する際に生じる音及び振動の少なくともいずれかが、感覚刺激となって使用者に付与される。感覚フィードバックが音である場合、円形吐出口12を通過して、球状内容物5が吐出される際の気圧の変化で音が発生することにより、使用者に感覚フィードバックが提供される。斯かる音は特に限定されないが、例えば「ポン」等といった、球状内容物5による閉塞が開放されたときに生じる音である。また、感覚フィードバックが振動である場合、球状内容物5が円形吐出口12を通過する際に膜体部10や容器本体30が振動して、該振動が使用者の手に伝わることで、使用者に感覚フィードバックが提供される。このような音や振動等の感覚フィードバックを知覚することで、使用者は、球状内容物5を外部へ取り出す操作の完了をより実感することができ、達成感や、高揚感、心地良さ(爽快感)等の感情が喚起され易くなる。
【0036】
本実施形態の膜体部10は、弾性を有している。具体的には、膜体部10は、弾性樹脂からなる弾性フィルムにより形成されており、外力に応じて弾性変形可能である。これにより、膜体部10において円形吐出口12が変形可能になっている。すなわち、本実施形態の容器1では、膜体部10が変形することで、球状内容物5が吐出される。
膜体部10が弾性を有すると、音や振動を生じ易くなるので、感覚フィードバックをより使用者に提供できる点で好ましい。換言すると、球状内容物5を吐出する際のエネルギーによって、膜体部10が振動し、その音や振動が使用者に伝達される。
また、膜体部10が弾性を有すると、振動を吸収しやすくなる。吐出の際に生じる振動が早く減衰し余韻を残しにくくなることで、使用者にフィードバックされる振動は、はっきりした感覚として認識されやすくなる。これと同様に、音についても、余韻を残さず切れの良い「ポン」という音を得やすくなり、使用者により好ましい感覚をフィードバックできる。
【0037】
「弾性を有する」とは、以下の方法で測定されるサンプル(膜体部10)の破断時の伸び量が200%以上であることを意味する。
先ず、チャック間距離を10mmとし、容器1から取り出したサンプルを引張試験機(例えば株式会社 島津製作所製、機種「AUTOGRAPH AG-X」)のチャックに取り付ける。次いで、サンプルを、200mm/分の引張速度で且つ該サンプルが破断するまで引っ張り、その伸長過程における、引張距離に伴って変化する引張強度(N)を測定する。この伸長過程において、引張距離に伴って変化する引張強度の最大値を、破断強度とし、該破断強度を示した時点を伸長部の「破断時」とする。この破断時におけるサンプルのチャック間の距離を、破断時の伸び量とする。「破断時の伸び量が200%以上」とは、破断時のサンプルのチャック間距離が、伸長前のチャック間距離(10mm)の200%以上、すなわち20mm以上であることを意味する。
【0038】
膜体部10は、弾性を有する場合及び弾性を有しない場合の双方において、該膜体部10の全域において厚みが一定であってもよく、位置によって厚みが異なっていてもよい。例えば、膜体部10の径方向の外方又は内方に向かって、厚みが漸次増減していてもよい。また、膜体部10の一部に、他の部分よりも厚みが大きい肉厚部を有していてもよい。
【0039】
感覚フィードバックをより得易くする観点から、膜体部10が弾性を有する場合、膜体部10の厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上であり、また好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下である。
膜体部10の厚みが位置によって異なる場合、膜体部10の最小厚み及び最大厚みが上述した範囲内であることが好ましい。
【0040】
音や振動をより生じ易くする観点から、膜体部10が弾性を有する場合、該膜体部10は伸張状態で口首部31に取り付けられていることが好ましい。本実施形態の膜体部10は、膜体固定部15と口首部31との挟持によって伸張状態で取り付けられている。
上記と同様の観点から、膜体固定部15は、非弾性材料により形成されていることが好ましい。弾性変形可能な膜体部10が、非弾性の膜体固定部15に固定されていることで、膜体部10の伸縮量や変形量の制御が容易になり、該膜体部10をより振動し易くできる。非弾性材料は、上述した破断時の伸び量が200%未満のものである。
【0041】
本実施形態の膜体部10は、平面視では、中央に円形吐出口12が形成されたドーナツ形の形状を有している。膜体部10は、容器本体30の内圧の上昇過程における該容器本体30内の気密状態を維持し得る形状を有していることが好ましい。斯かる膜体部10の形状としては、例えば、膜体部10の外縁部に沿って末端側に突出する筒状の壁を有したもので、該壁の内周と、該先端開口部32aの外周とが嵌合可能な形状であるものが挙げられる。斯かる形状により、膜体部10が先端開口部32aの開口縁に密着できるので、容器本体30内の気密状態を維持できる。この膜体部10の形状は、該膜体部10が口首部31に取り付けられた状態における平面視形状である。
【0042】
本実施形態の膜体部10は、円形吐出口12を画成する開口縁から、径方向の外方へ延びる切り込みを有していない(
図3参照)。斯かる構成は、音や振動といった感覚フィードバックをより生じ易くする観点から好ましい。
【0043】
膜体部10が弾性を有する場合、球状内容物5は、変形可能であるものであってもよく、変形可能でないものであってもよい。いずれの場合にしても、球状内容物5が円形吐出口12を通過する際に、膜体部10の弾性によって、円形吐出口12が変形するので、球状内容物5を外部へ吐出できる。
【0044】
球状内容物5に関し「変形可能」とは、以下の方法で測定されるヤング率が、100Pa以上であるものを意味し、好ましくは100Pa以上、より好ましくは1kPa以上であり、また好ましくは100kPa以下、より好ましくは80kPa以下であり、また好ましくは100Pa以上100kPa以下、より好ましくは1kPa以上80kPa以下である。
球状内容物5のヤング率は、やわらかさ計測機(株式会社テック技販製、型番YWS-5N-1)を用いて測定する。測定は、測定対象物(球状内容物5)に圧子を押し当てて、該球状内容物5を圧縮して行う。圧縮速度は、1mm/秒とする。当該圧縮は、球状内容物5の変化量が2mmとなるまで行い、その圧縮過程で測定された球状内容物5のヤング率を求める。以上の操作を同じ球状内容物5について5回繰り返し、その平均値を球状内容物5のヤング率とする。
【0045】
球状内容物5が変形可能である形態としては、(a1)弾性又は柔軟性を有する固体、(a2)粉体、液体、又は固体が内容物として充填されたソフトカプセル等が挙げられる。
前記(a1)の形態としては、グミ等といった菓子やタブレット型栄養補助食品等の食品、ゴム製ボール等の玩具、吸水性ポリマーからなるゼリーボールに香気成分を含ませた芳香剤(吸水ビーズ型芳香剤)等が挙げられる。
【0046】
前記(a2)における前記内容物としては、例えば、化粧水、乳液、美容液、日焼け止め、メイク落とし等の化粧料、シャンプー、リンス、染毛剤、整髪剤、育毛剤等のヘアケア剤、ボディソープやハンドソープ等の石鹸、食品洗剤や洗濯洗剤等の洗剤、歯磨き粉等の口腔内洗浄剤、柔軟剤、漂白剤、アロマオイル等の芳香剤、入浴剤、目薬等の液状の医薬品、サプリメント、バスやトイレ、床洗浄用の洗浄剤、スープ、ソース、ドレッシング等の液状食品、香辛料、粉末調味料等の粉末食品等が挙げられる。
前記(a2)におけるソフトカプセルは、水溶性ポリマーにより形成できる。水溶性ポリマーとしては、プルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリ-γ-グルタミン酸、変性コーンスターチ、β-グルカン、グルコオリゴ糖、ヘパリン、及びケラト硫酸のムコ多糖、セルロース、ペクチン、キシラン、リグニン、グルコマンナン、ガラクツロン酸、サイリウムシードガム、タマリンド種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、大豆水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナン、ラミナラン、寒天(アガロース)、フコイダン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースの天然高分子、部分鹸化ポリビニルアルコール(架橋剤と併用しない場合)、低鹸化ポリビニルアルコール、及びポリビニルピロリドン(PVP)、並びにポリエチレンオキサイド、及びポリアクリル酸ナトリウムの合成高分子から選ばれる一種又は二種以上である。
【0047】
球状内容物5が変形可能でない形態としては、(b1)弾性又は柔軟性を有しない固体、(b2)粉体、液体、固体、又は半固体が内容物として充填されたハードカプセル等が挙げられる。
【0048】
前記(b1)の形態としては、飴、ガム等といった菓子や錠剤、サプリメント等の食品、玩具用鉄砲等の玩具、粉体を球状に固めた入浴剤や洗剤等が挙げられる。
前記(b2)における前記内容物としては、前記(a2)の内容物として挙げたものを用いることができる。
前記(b2)におけるハードカプセルは、ゼラチン、デンプン、寒天、プルラン、セルロース、カラギーナン等により形成できる。前記(b2)の形態としては、錠剤、サプリメント等の食品、医薬品等が挙げられる。また食品及び医薬品以外に、例えば、肥料や飼料を前記ハードカプセルに内包させた、園芸肥料や養魚飼料等が挙げられる。
【0049】
次に、本実施形態に係る容器1の各構成部材の形成材料について説明する。
スクイズによる変形性の観点から、容器本体30は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の柔軟な樹脂により形成されていることが好ましい。また、容器本体30は、これらの樹脂層、アルミニウム箔やバリア性樹脂や吸着剤等によるバリア層を一種以上用いた積層体又は複合体から構成されていてもよい。
【0050】
本実施形態の膜体部10は、前述したように、弾性樹脂からなる弾性フィルムにより形成されている。弾性樹脂としては、例えば、SBS(スチレン-ブタジエン-スチレン)、SIS(スチレン-イソプレン-スチレン)、SEBS(スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン)、SEPS(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン)等のスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー(エチレン系のα-オレフィンエラストマー、エチレン・ブテン・オクテン等を共重合したプロピレン系エラストマー)、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、シリコーンゴム等が挙げられ、これらの一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。前述した物性を得る観点から、膜体部10の形成材料としては、シリコーンゴムが好ましい。
【0051】
膜体固定部15の形成材料である非弾性材料としては、例えばPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)等のポリオレフィン、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ乳酸等の合成樹脂、金属等が挙げられる。
【0052】
キャップ2の形成材料としては、例えば、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)等のポリオレフィン、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ乳酸等の合成樹脂等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0053】
次に本実施形態の容器1の製造方法について説明する。
容器本体30は、胴部37等を構成するチューブ体が、合成樹脂の押出成形により形成されている。これに代えて、容器本体30は、シート状の成形体を円筒状に丸めて重ねた側縁同士を融着させて形成されてもよい。
【0054】
容器1は、容器本体30と、口首部形成部材34とが一体成形されている。これに代えて、容器1は、胴部37とは別に成形した口首部形成部材34を、該胴部37の一端部に接合することで、形成されていてもよい。
また、キャップは、金型を用いた射出成形により製造できる。
【0055】
本発明の内容物入りスクイズ容器は、
図1~5に示す実施形態に限定されない。以下に、本発明に係る内容物入りスクイズ容器の別の実施形態について説明する。以下では、別の実施形態について、
図1~5に示す実施形態と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、
図1に示す実施形態についての説明が適宜適用される。
【0056】
図6に示す実施形態では、膜体部10が先端開口部32aではなく、該開口部32aよりも末端側に位置している。すなわち、本実施形態の膜体部10は、吐出方向Vにおける先端開口部32aと末端開口部32bとの間に位置している。本実施形態の口首部31は、該口首部31の外周を形成する本体筒部36から、先端開口部32aにおいて吐出方向Vの末端側に折り返された構造を有する内側筒部35を有している。斯かる内側筒部35は、吐出方向Vの末端側に突出しており、その突出した端部に沿って膜体部10が固定されている。
【0057】
上述した
図1~
図5に示す実施形態において、膜体部10は弾性を有するものであったが、膜体部10は、弾性を有していなくともよい。膜体部10が弾性を有しない場合、容器1には、球状内容物5として変形可能な内容物が収容される。変形可能な内容物は、例えば前述した(a1)~(a3)の形態である。
この場合、球状内容物5の方が変形すればよいので、膜体部10の形状(成形)をより自由に設定できる上、感覚フィードバックを含む前記手応えを容易に制御できる。
【0058】
膜体部10が弾性を有しない場合、膜体部10の形成材料としては、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)等のポリオレフィン、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ乳酸等の合成樹脂等が挙げられる。
【0059】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、上述した実施形態におけるキャップ2は、キャップ本体20と蓋体27とがヒンジ部25を介して連結されていたが、キャップ2は、ヒンジ部25のない、キャップ本体20と蓋体27とが完全に分離可能なものであってもよい。例えば、キャップ本体20の外周部を蓋体27の外周部の内面に嵌めるものであってもよい。この場合、蓋体27を所定の向きにしたとき、蓋体27の輪郭が、キャップ本体20の輪郭と相似の関係になることが好ましい。このような輪郭の形状としては、前述した曲率が異なる複数の曲線部分を輪郭に含む形状や、曲線部分と直線部分とを輪郭に含む形状等が挙げられる。
【0060】
上述した実施形態における膜体部10は、円形吐出口12を画成する開口縁に切れ込みを有するものではなかったが、これに代えて、膜体部10は、円形吐出口12を画成する開口縁から、径方向の外方へ延びる切れ込みを1以上有していてもよい。この場合、円形吐出口12の中心から切れ込み先端までの長さは、球状内容物5の球径の1/2よりも短いことが好ましい。
また、本発明の容器と球状内容物とからなる製品は、球状内容物を収容する容器としての用途の他に、玩具、リフレッシュグッズとしても使用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 容器
10 膜体部
12 円形吐出口
15 膜体固定部
2 キャップ
20 キャップ本体
20a 本体開口部
21 本体天面部
25 ヒンジ部
27 蓋体
30 容器本体
31 口首部
32a 先端開口部
32b 末端開口部
33 肩部
34 口首部形成部材
35 内側筒部
36 本体筒部
37 胴部
38 エンドシール部
V 吐出方向