(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】走行制御方法及び走行制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/02 20120101AFI20240823BHJP
B60T 8/1755 20060101ALI20240823BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B60W30/02
B60T8/1755 Z
B62D6/00
(21)【出願番号】P 2021048702
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 雄哉
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-025629(JP,A)
【文献】特開2002-137721(JP,A)
【文献】特開2000-190832(JP,A)
【文献】特開2006-168438(JP,A)
【文献】特開2009-113773(JP,A)
【文献】特開2010-089724(JP,A)
【文献】特開2005-289217(JP,A)
【文献】特開2010-184652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/02
B60T 8/1755
B62D 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に発生させる目標横力を設定し、又はステアリングホイールの操舵角を検出し、
前記目標横力又は前記操舵角のいずれか一方と前記自車両の車速とに基づいて、前記自車両に発生させるヨーモーメント及びヨーレイトの目標値である第1目標ヨーモーメント及び目標ヨーレイトと、前記自車両の車体姿勢角の目標値である目標車体姿勢角と、をそれぞれ設定し、
前記第1目標ヨーモーメントを、前輪及び後輪の転舵により達成する第2目標ヨーモーメントと、左右車輪の制動力差により達成する第3目標ヨーモーメントとに分配し、
前記目標横力と、前記第2目標ヨーモーメントと、前記目標ヨーレイトと、前記目標車体姿勢角とに基づいて、前輪及び後輪の転舵角の目標値である目標前輪転舵角及び目標後輪転舵角をそれぞれ設定し、
前記第3目標ヨーモーメントに基づいて、前記左右車輪の制動力差の目標値である目標制動力差を設定し、
前記目標前輪転舵角及び前記目標後輪転舵角に基づいて前記前輪及び前記後輪をそれぞれ転舵し、
前記目標制動力差に基づいて前記左右車輪を制動する、
ことを特徴とする走行制御方法。
【請求項2】
前記前輪及び前記後輪の転舵によって実現可能なヨーモーメントに応じた制限値で前記第1目標ヨーモーメントを制限することにより前記第2目標ヨーモーメントを設定し、
前記第1目標ヨーモーメントから前記第2目標ヨーモーメントを減算して得られる差分を前記第3目標ヨーモーメントとして設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の走行制御方法。
【請求項3】
前記後輪の転舵角の大きさの上限に基づいて前記制限値を設定する、ことを特徴とする請求項2に記載の走行制御方法。
【請求項4】
前記前輪の転舵角とゲインとの積にオフセットを加算して、前記後輪の転舵角の大きさの上限を設定することを特徴とする請求項3に記載の走行制御方法。
【請求項5】
前記後輪の転舵角の大きさの上限と、前記目標横力と、前記目標ヨーレイトと、前記目標車体姿勢角とに基づいて、前記制限値を設定することを特徴とする請求項3又は4に記載の走行制御方法。
【請求項6】
前記第1目標ヨーモーメントが前記制限値に近づくにつれて前記制動力差が増加するように前記第3目標ヨーモーメントを徐変させることを特徴とする請求項2~5のいずれか一項に記載の走行制御方法。
【請求項7】
自車両に発生させる目標横力を設定し、又は操舵角センサが検出したステアリングホイールの操舵角を入力し、前記目標横力又は前記操舵角のいずれか一方と前記自車両の車速とに基づいて、前記自車両に発生させるヨーモーメント及びヨーレイトの目標値である第1目標ヨーモーメント及び目標ヨーレイトと、前記自車両の車体姿勢角の目標値である目標車体姿勢角と、をそれぞれ設定し、前記第1目標ヨーモーメントを、前輪及び後輪の転舵により達成する第2目標ヨーモーメントと、左右車輪の制動力差により達成する第3目標ヨーモーメントとに分配し、前記目標横力と、前記第2目標ヨーモーメントと、前記目標ヨーレイトと、前記目標車体姿勢角とに基づいて、前輪及び後輪の転舵角の目標値である目標前輪転舵角及び目標後輪転舵角をそれぞれ設定し、前記第3目標ヨーモーメントに基づいて、前記左右車輪の制動力差の目標値である目標制動力差を設定するコントローラと、
前記目標前輪転舵角及び前記目標後輪転舵角に基づいて前記前輪及び前記後輪をそれぞれ転舵する転舵アクチュエータと、
前記目標制動力差に基づいて前記左右車輪を制動する制動アクチュエータと、
を備えることを特徴とする走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行制御方法及び走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、運転者の操舵によって後輪転舵角が、転舵可能な最大転舵角を越える場合に、後輪転舵角を制限するとともに不足するヨーモーメントを左右車輪の差圧制動によって発生させる車両制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
四輪操舵車両は、前輪及び後輪をそれぞれ転舵することにより、自車両に発生させるヨーレイトと車体姿勢角を独立して生成できる。このため、ヨーレイトの目標値である目標ヨーレイトと車体姿勢角の目標値である目標車体姿勢角とを同時に満足することができる。なお、車体姿勢角(スリップ角ともいう)とは、車体の前後方向と車両の進行方向とのずれ角をいう。
特許文献1の車両制御装置によれば、後輪転舵角が制限される状況では、ヨーレイトと車体姿勢角を独立して生成できない。このため、目標ヨーレイトと目標車体姿勢角とを同時に満足できない。
本発明は、後輪転舵角が制限される状況において目標ヨーレイトと目標車体姿勢角とを同時に満足することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による走行制御方法では、自車両に発生させる目標横力を設定し、又はステアリングホイールの操舵角を検出し、目標横力又は操舵角のいずれか一方と自車両の車速とに基づいて、自車両に発生させるヨーモーメント及びヨーレイトの目標値である第1目標ヨーモーメント及び目標ヨーレイトと、自車両の車体姿勢角の目標値である目標車体姿勢角と、をそれぞれ設定し、第1目標ヨーモーメントを、前輪及び後輪の転舵により達成する第2目標ヨーモーメントと、左右車輪の制動力差により達成する第3目標ヨーモーメントとに分配し、目標横力と、第2目標ヨーモーメントと、目標ヨーレイトと、目標車体姿勢角とに基づいて、前輪及び後輪の転舵角の目標値である目標前輪転舵角及び目標後輪転舵角をそれぞれ設定し、第3目標ヨーモーメントに基づいて、左右車輪の制動力差の目標値である目標制動力差を設定し、目標前輪転舵角及び目標後輪転舵角に基づいて前輪及び後輪をそれぞれ転舵し、目標制動力差に基づいて左右車輪を制動する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、後輪転舵角が制限される状況において目標ヨーレイトと目標車体姿勢角とを同時に満足できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の走行制御装置の概略構成図である。
【
図2】実施形態の走行制御装置による自動運転制御のアーキテクチャの一例の説明図である。
【
図3】実施形態の走行制御装置の自動運転制御部の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図1に示す車両制御部の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】第3目標ヨーモーメントの設定方法の一例の説明図である。
【
図6】実施形態の走行制御方法の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(構成)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下に示す本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
(構成)
図1を参照する。自車両1は、右前輪2FR、左前輪2FL、右後輪2RR及び左後輪2RLを転舵可能な四輪操舵車両である。
自車両1は、自車両1の走行制御を行う走行制御装置10を備える。走行制御装置10による走行制御には、自車両1の周辺の走行環境に基づいて、運転者が関与せずに自車両1を自動で運転する自動運転制御や、運転者による自車両1の運転を支援する運転支援制御を含んでよい。
運転支援制御には、自動操舵、自動ブレーキ、定速走行制御、車線維持制御、合流支援制御など、自車両1の転舵装置、駆動装置、制動装置の少なくとも一つを制御する走行制御を含んでよい。
【0010】
走行制御装置10は、物体センサ11と、車両センサ12と、測位装置13と、地図データベース(地
図DB)14と、ナビゲーション装置15と、コントローラ17と、アクチュエータ18とを備える。
物体センサ11は、自車両1の周囲の物体を検出する。物体センサ11は、自車両1に搭載されたレーザレーダやミリ波レーダ、カメラ、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)など、自車両1の周辺の物体を検出する複数の異なる種類の物体検出センサを備える。
【0011】
車両センサ12は、自車両1に搭載され、自車両1から得られる様々な情報(車両信号)を検出する。車両センサ12には、例えば、自車両1の車速(走行速度)Vを検出する車速センサ、車輪の回転速度や回転量を検出する車輪センサ、自車両1の3軸方向の加速度(減速度を含む)を検出する3軸加速度センサ(Gセンサ)、操舵角を検出する操舵角センサ、前輪2FR、2FLの転舵角である前輪転舵角δF及び後輪2RR、2RLの転舵角である後輪転舵角δRを検出する転舵角センサ、自車両1に生じる角速度を検出するジャイロセンサ、ヨーレイトを検出するヨーレイトセンサ、自車両1のアクセル開度を検出するアクセルセンサと、運転者によるブレーキ操作量を検出するブレーキセンサが含まれる。
【0012】
測位装置13は、全地球型測位システム(GNSS)受信機を備え、複数の航法衛星から電波を受信して自車両1の現在位置を測定する。GNSS受信機は、例えば地球測位システム(GPS)受信機等であってよい。測位装置13は、例えば慣性航法装置であってもよい。
地図データベース14は、自動運転用の地図として好適な高精度地図データ(以下、単に「高精度地図」という。)を記憶してよい。高精度地図は、ナビゲーション用の地図データ(以下、単に「ナビ地図」という。)よりも高精度の地図データであり、道路単位の情報よりも詳細な車線単位の情報を含む。
ナビゲーション装置15は、測位装置13等により自車両1の現在位置を認識する。ナビゲーション装置15は、認識した現在位置に基づいて、自車両1の周囲の道路情報や交通情報を取得し、コントローラ17に出力する。また、ナビゲーション装置15は、乗員に対して経路案内を行い、また道路情報、交通情報を提供する。
【0013】
コントローラ17は、プロセッサと、記憶装置等の周辺部品とを含み、自車両1の走行制御を行う電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)である。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)であってよい。
記憶装置は、半導体記憶装置や、磁気記憶装置、光学記憶装置等を備えてよい。記憶装置は、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のメモリを含んでよい。
コントローラ17のプロセッサが、記憶装置に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより、コントローラ17は、自動運転制御部20、入力仲裁部21及び車両制御部22として機能する。自動運転制御部20、入力仲裁部21及び車両制御部22の機能については後述する。
【0014】
なお、コントローラ17を、以下に説明する各情報処理を実行するための専用のハードウエアにより形成してもよい。
例えば、コントローラ17は、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路を備えてもよい。例えばコントローラはフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:Field-Programmable Gate Array)等のプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD:Programmable Logic Device)等を有していてもよい。
【0015】
アクチュエータ18は、コントローラ17からの制御信号に応じて、自車両1の転舵装置と、駆動装置と制動装置を操作して、自車両1の車両挙動を発生させる。アクチュエータ18は、転舵アクチュエータ18aと、アクセルアクチュエータ18bと、制動アクチュエータ18cを備える。
転舵アクチュエータ18aは、前輪転舵角δFと後輪転舵角δRを制御する。
転舵アクチュエータ18aは、例えば、電動パワーステアリングシステムにおいて操舵補助力を付与する操舵補助モータであってもよく、ステアリングホイールと車輪2FR、2FL、2RR、2RLとが機械的に分離されたステアリングバイワイヤシステムにおいてこれら車輪を転舵する転舵モータであってもよい。
アクセルアクチュエータ18bは、自車両1の駆動力を発生させる動力源である駆動装置(例えばエンジン、電動機)のアクセル開度を制御する。
制動アクチュエータ18cは、コントローラ17が生成する各輪2FR、2FL、2RR、2RLの目標制動液圧Pbrtに基づいて、各輪2FR、2FL、2RR、2RLを制動する。
【0016】
次に、実施形態の走行制御装置10による走行制御の一例を説明する。
図2は、走行制御装置10による自動運転制御のアーキテクチャの一例を示す。自動運転制御は、自動運転レイヤ(AD Layer)30と、仲裁部(Arbitration)31と、規範モデル部(Reference Model)32と、車体挙動制御部(Body Motion Control)33と、車輪挙動制御部(Wheel Motion Control)34と、上述のアクチュエータ18によって実行される。
自動運転レイヤ30は、自車両1の目的地を設定し、自車両1の現在位置から目的地までの走行経路を設定する。
自動運転レイヤ30は、走行経路を走行する自車両1の目標走行軌道と目標速度プロファイルとを、自動運転レイヤ30からの指示入力である自動運転入力(AD入力)として生成する。
【0017】
仲裁部31は、運転者によるステアリングホイール、アクセル及びブレーキの操作入力である手動運転入力(MD入力)と、自動運転レイヤ30からの自動運転入力とを仲裁し、自車両1が行うべき車両運動を設定する。
規範モデル部32は、仲裁部31が設定した車両運動を自車両1が実現するための自車両1の車体挙動を計算するために用いる車両運動モデルのパラメータ(例えばヨー慣性モーメント、車輪のコーナリングスティフネス等)を設定する。
車体挙動制御部33は、規範モデル部32によって設定された車両運動モデルに基づいて、仲裁部31が設定した車両運動を実現するための車体挙動(例えば、車速、加減速、ヨーレイト、ヨー角加速度、ヨーモーメント等)を算出する。
【0018】
車輪挙動制御部34は、車体挙動制御部33が算出した車体挙動を自車両1に発生させるための車輪の制御量(転舵角、制動量、駆動量等)を算出し、アクチュエータ18により車輪挙動を制御する。
例えば、自動運転レイヤ30の機能は、
図1に示す自動運転制御部20が担い、仲裁部31の機能は入力仲裁部21が担い、規範モデル部32、車体挙動制御部33及び車輪挙動制御部34の機能は、車両制御部22が担ってよい。
【0019】
次に、
図3を参照して自動運転制御部20の機能構成の一例を説明する。自動運転制御部20は、定位部(Localization)40と、目的地設定部41(Destination Setting)と、経路計画部(Route Planning)42と、行動決定部(Decision Making)43と、運転ゾーン計画部(Drive Zone Planning)44と、軌道生成部(Trajectory)45を備える。
【0020】
定位部40は、物体センサ11の検出信号に基づいて自車両1の周囲環境を認識する。定位部40は、認識結果と地図データベース14の高精度地図との間のマップマッチングにより、高精度地図上の自車両1の現在位置を判断する。
また、周囲環境の認識結果に基づいて、自車両1の周囲環境のモデルであるローカルモデル(Local Model)47が生成される。さらに、ローカルモデル47と、高精度地図と、ナビゲーション装置15の道路情報や交通情報とを融合することによって、ワールドモデル(World Model)46が生成される。
【0021】
目的地設定部41は、ナビゲーション装置15を介した運転者の操作入力に基づいて自車両1の目的地を設定する。
経路計画部42は、ナビゲーション装置15の道路情報に基づいて、現在位置から目的地までの予定走行経路を演算する。
行動決定部43は、周囲環境の認識結果と、自車両1の現在位置と、ワールドモデル46と、予定走行経路とに基づいて、走行制御装置10により実行する自車両1の運転行動計画を決定する。
【0022】
運転行動には、例えば、自車両1の停止、一時停止、走行速度、減速、加速、進路変更、右折、左折、直進、合流区間や複数車線における車線変更、車線維持、追越、障害物への対応などの行動が含まれる。
行動決定部43は、自車両1の現在位置及び姿勢と、自車両1の周囲環境と、ワールドモデル46とに基づいて、自車両1の運転行動計画を生成する。
【0023】
運転ゾーン計画部44は、生成した運転行動計画と、自車両1の運動特性、ローカルモデル47に基づいて、自車両1を走行させることができる領域である運転ゾーンを算出する。
軌道生成部45は、運転ゾーン計画部44が算出した運転ゾーン内を自車両1が走行するように、自車両1の目標走行軌道と目標速度プロファイルを生成する。
【0024】
図1を参照する。入力仲裁部21は、自動運転制御部20が設定した目標走行軌道及び目標速度プロファイルの自動運転入力と運転者による手動運転入力とを仲裁して、自車両1が行うべき車両運動を設定する。
車両制御部22は、入力仲裁部21により設定された車両運動を実現するように自車両1の挙動を制御する。
【0025】
次に、車両制御部22による走行制御について説明する。上述のとおり、四輪操舵車両は、前輪転舵角δFと後輪転舵角δRとを制御することにより、自車両に発生させるヨーレイトと車体姿勢角を独立して生成できる。このため、目標ヨーレイトと目標車体姿勢角とを同時に満足することができる。
しかしながら、一般的に、転舵アクチュエータ18aが実現可能な後輪転舵角δRの範囲は、実現可能な前輪転舵角δFの範囲に比べて狭い。このため、後輪転舵角δRが制限されることがある。
【0026】
上記特許文献1の車両制御装置では、後輪転舵角δRが制限される場合には不足するヨーモーメントを左右車輪の差圧制動によって補償することにより、目標ヨーレイトを満足する。
しかしながら、特許文献1の車両制御装置は、後輪転舵角δRが制限されたことを前輪転舵角δFの目標値に反映していない。このため、後輪転舵角δRが制限されるか否かに関わらず同じ前輪転舵角δFを生成する。前輪転舵角δFと後輪転舵角δRの目標値は、目標車体姿勢角に基づいて設定されているため、前輪転舵角δFのみが目標値を満たしても目標車体姿勢角を満足できない。
【0027】
そこで、本実施形態では、自車両1に発生させるヨーモーメントの目標値である第1目標ヨーモーメントMzREQ1を、前輪2FR、2FL及び後輪2RR、2RLの転舵により達成する第2目標ヨーモーメントMzREQ2と、左車輪2FL、2RL及び右車輪2FR、2RRの制動力差により達成する第3目標ヨーモーメントMzREQ3とに分配する。
第2目標ヨーモーメントMzREQ2に基づいて、前輪転舵角δFと後輪転舵角δRの目標値である目標前輪転舵角δFREQ及び目標後輪転舵角δRREQをそれぞれ設定し、第3目標ヨーモーメントに基づいて、左車輪2FL、2RL及び右車輪2FR、2RRの制動力差の目標値である目標制動力差Pbrrtを設定する。
目標前輪転舵角δFREQ及び目標後輪転舵角δRREQに基づいて前輪2FR、2FL及び後輪2RR、2RLをそれぞれ転舵し、目標制動力差Pbrrtに基づいて左車輪2FL、2RL及び右車輪2FR、2RRを制動する。
【0028】
このように、自車両1に発生させる目標ヨーモーメントを、前後輪の転舵により達成する第2目標ヨーモーメントMzREQ2と、左右車輪の制動力差により達成する第3目標ヨーモーメントMzREQ3とに分配することにより、実際に転舵可能な転舵角で達成できる範囲(すなわち、転舵により達成できる範囲)に第2目標ヨーモーメントMzREQ2を制限できる。
このため、このように制限した第2目標ヨーモーメントMzREQ2に基づいて、目標前輪転舵角δFREQと目標後輪転舵角δRREQとを設定すれば、実際に転舵可能な目標後輪転舵角δRREQを設定しつつ、目標車体姿勢角を満たすように目標前輪転舵角δFREQを設定できる。
このため、目標ヨーレイトと目標車体姿勢角とを同時に満たすように、目標前輪転舵角δFREQ及び目標後輪転舵角δRREQと、目標制動力差Pbrrtとを設定できる。
【0029】
続いて、車両制御部22の詳細を説明する。
図4は、車両制御部22の機能構成の一例を示すブロック図である。車両制御部22は、目標挙動設定部50と、制限値設定部51と、第2ヨーモーメント設定部52と、第3ヨーモーメント設定部53と、目標転舵角設定部54と、制動液圧変換部55を備える。
車両制御部22は、入力仲裁部21から要求された自車両1の車両運動に基づいて、自車両1を旋回させるための目標横力Fy
REQを設定する。例えば
図3の軌道生成部45が生成した目標走行軌道に基づいて、目標走行軌道に沿って自車両1を旋回させるための目標横力Fy
REQを設定する。
【0030】
目標挙動設定部50は、自車両1を走行させるときに生じる車両運動の規範モデルを設定する。目標挙動設定部50には、車両制御部22が設定した目標横力FyREQと車両センサ12で検出した車速Vの情報が入力される。目標挙動設定部50は、目標横力FyREQと車速Vとに基づいて車両挙動の規範モデル値を算出する。
例えば目標挙動設定部50は、「規範モデル値」として、例えば、ヨーモーメント規範モデルを用いたときの第1目標ヨーモーメントMzREQ1や、ヨーレイト規範モデルを用いたときの目標ヨーレイトrREQ、車体姿勢角規範モデルを用いたときの目標車体姿勢角βREQを設定する。
目標挙動設定部50は、規範モデルである運動方程式に目標横力FyREQと車速Vとを代入して第1目標ヨーモーメントMzREQ1、目標ヨーレイトrREQ、目標車体姿勢角βREQを算出してもよく、目標横力FyREQと車速Vとに基づいて所定のルックアップテーブルを参照して、第1目標ヨーモーメントMzREQ1、目標ヨーレイトrREQ、目標車体姿勢角βREQを取得してもよい。
【0031】
制限値設定部51は、目標前輪転舵角δFREQ及び目標後輪転舵角δRREQの設定に用いる目標ヨーモーメントを、前輪2FR、2FL及び後輪2RR、2RLの転舵によって実現可能なヨーモーメントに制限する制限値MzU、MzLを設定する。
制限値MzU及びMzLは、例えば、前輪2FR、2FL及び後輪2RR、2RLの転舵によって実現可能なヨーモーメントの最大値と最小値であってよい。
制限値設定部51は、目標横力FyREQと、目標ヨーレイトrREQと、目標車体姿勢角βREQと、車両センサ12で検出した前輪転舵角δFと、に基づいて制限値MzU及びMzLを設定する。
【0032】
以下、制限値Mz
U及びMz
Lの設定方法の一例について説明する。本実施形態では、転舵アクチュエータ18aにより生成される後輪転舵角δ
Rの制限方法が既知である場合を想定する。
例えば、後輪転舵角δ
Rは、前輪転舵角δ
Fに応じて以下の範囲の値に制限されてもよい。
【数1】
【0033】
上式(1)においてκは所定のゲインであり、Δδは所定のオフセットであり、各々定数である。上式(1)に示すように、後輪転舵角δRの最大値は、前輪転舵角δFの絶対値とゲインκとの積にオフセットを加算した和に設定され、後輪転舵角δRの最小値は最大値の符号を反転した値に設定される。すなわち、後輪転舵角δRの大きさ(絶対値)は、前輪転舵角δFの絶対値とゲインκとの積にオフセットを加算した和の値に設定される。
なお、後輪転舵角δRの制限方法は上記に限定されず様々な方法を採用できる。例えば、定数δ1を用いて、一律に後輪転舵角δRを(-δ1)~(+δ1)の範囲の値に制限してもよい。
【0034】
ここで後輪転舵角δ
Rについて次式(2)が成り立つ。
【数2】
式(2)において、lはホイールベース長であり、l
Fは車両重心から前輪軸までの長さであり、l
Rは車両重心から後輪軸までの長さであり、目標ヨーモーメントMz
REQであり、C
Rは後輪のタイヤのコーナリングスティフネスである。
【0035】
上式(2)を上式(1)に代入すると次式(3)が得られる。
【数3】
【0036】
上式(3)に含まれる2つの不等式を、目標ヨーモーメントMz
REQについて整理することにより、目標ヨーモーメントMz
REQの最小値及び最大値を制限する以下の条件式(4)及び(5)が得られる。
【数4】
【0037】
ここで、上記の条件式(4)及び(5)の
【数5】
は目標横力Fy
REQと目標ヨーレイトr
REQと目標車体姿勢角β
REQとに依存する変数であり、これをδ
0とおくと、条件式(4)及び(5)は次式(6)となる。
【数6】
【0038】
条件式(6)により、前輪2FR、2FL及び後輪2RR、2RLの転舵によって実現可能なヨーモーメントの最小値2lCR(δ0-κ|δF|-Δδ)と最大値2lCR(δ0+κ|δF|+Δδ)が得られる。
制限値設定部51は、最小値2lCR(δ0-κ|δF|-Δδ)を制限値MzLとして設定し、最大値2lCR(δ0+κ|δF|+Δδ)を制限値MzUとして設定する。
【0039】
第2ヨーモーメント設定部52は、第1目標ヨーモーメントMzREQ1を制限値MzU、MzLで制限することにより第2目標ヨーモーメントMzREQ2を設定する。すなわち、第1目標ヨーモーメントMzREQ1が制限値MzLよりも小さい場合には、制限値MzLを第2目標ヨーモーメントMzREQ2として設定し、第1目標ヨーモーメントMzREQ1が制限値MzUよりも大きい場合には、制限値MzUを第2目標ヨーモーメントMzREQ2として設定し、第1目標ヨーモーメントMzREQ1が制限値MzL以上且つ制限値MzU以下の場合には、第1目標ヨーモーメントMzREQ1をそのまま第2目標ヨーモーメントMzREQ2として設定する。
これにより、第2ヨーモーメント設定部52は、実際に転舵可能な転舵角で達成できる範囲(すなわち、転舵により達成できる範囲)の値に第2目標ヨーモーメントMzREQ2を設定する。
【0040】
第3ヨーモーメント設定部53は、次式(7)に基づいて第1目標ヨーモーメントMzREQ1から前記第2目標ヨーモーメントMzREQ2を減算して得られる差分を、左車輪2FL、2RL及び右車輪2FR、2RRの制動力差により達成する第3目標ヨーモーメントMzREQ3として設定する。
MzREQ3=MzREQ1-MzREQ2…(7)
【0041】
なお、第3ヨーモーメント設定部53は、第1目標ヨーモーメントMz
REQ1がMz
L≦Mz
REQ1≦Mz
Uの範囲を超えた時に急に制動が開始するのを緩和して、旋回挙動を円滑に遷移させるために、第1目標ヨーモーメントMz
REQ1が制限値Mz
U、Mz
Lに近づくにつれて制動力差が増加するように第3目標ヨーモーメントMz
REQ3を徐変させてもよい。
例えば、第3ヨーモーメント設定部53は、
図5に示すような特性の第3目標ヨーモーメントMz
REQ3を設定してもよい。
【0042】
第3目標ヨーモーメントMzREQ3は、第1目標ヨーモーメントMzREQ1が増加して制限値MzUよりも小さな値Mz1を越えると徐々に増加を開始し、制限値MzUよりも大きな値Mz2に達すると(MzREQ1-MzREQ2)と等しくなる。
また、第1目標ヨーモーメントMzREQ1が減少して負の制限値MzLよりも大きな値Mz3(すなわち|Mz3|<|MzL|)を越えると徐々に減少を開始し、制限値MzLよりも小さな値Mz4(すなわち|Mz4|>|MzL|)に達すると(MzREQ1-MzREQ2)と等しくなる。
【0043】
第1目標ヨーモーメントMzREQ1の変化に対する第3目標ヨーモーメントMzREQ3の変化の傾きは、MzREQ1=Mz1のとき0であり、徐変区間Mz1≦MzREQ1≦Mz2において徐々に増加し、MzREQ1=Mz2のとき(MzREQ1-MzREQ2)の傾きと等しくなる。
同様に、MzREQ1=Mz3のとき0であり、徐変区間Mz1≦MzREQ1≦Mz2において徐々に増加し、MzREQ1=Mz4のとき(MzREQ1-MzREQ2)の傾きと等しくなる。
【0044】
図4を参照する。目標転舵角設定部54は、目標横力Fy
REQと第2目標ヨーモーメントMz
REQ2とを自車両1に付与するのに要する前輪2FR、2FLの横力の目標値である目標前輪横力Fy
Fと後輪2RR、2RLの横力の目標値である目標後輪横力Fy
Rを算出する。
目標転舵角設定部54は、目標前輪横力Fy
F及び目標後輪横力Fy
Rと、目標ヨーレイトr
REQと、目標車体姿勢角β
REQに基づいて、これらの目標値を達成する目標前輪転舵角δ
FREQ及び目標後輪転舵角δ
RREQを算出する。例えば転舵角算出部62は、自車両1の車両運動モデルに基づいて、目標前輪転舵角δ
FREQ及び目標後輪転舵角δ
RREQを算出してよい。
転舵アクチュエータ18aは、前輪転舵角δ
F、後輪転舵角δ
Rがそれぞれ目標前輪転舵角δ
FREQ、目標後輪転舵角δ
RREQとなるように、前輪2FR、2FL及び後輪2RR、2RLを転舵する。
【0045】
制動液圧変換部55は、左車輪2FL、2RL及び右車輪2FR、2RRの制動力差によって第3目標ヨーモーメントMzREQ3を自車両1に発生させるための各輪の目標制動液圧(目標ブレーキ液圧)Pbrtを設定する。
例えば制動液圧変換部55は、次式(8)に示すように、前輪における左右輪の制動力差ΔPsf、及び後輪における左右輪の制動力差ΔPsrを設定してよい。
ΔPsf=2×Kbf×(|MzREQ3|-Ms0)/T
ΔPsr=2×Kbr×Ms0/T …(8)
上式(8)において、Tはトレッドを示し、Kbf、Kbrは制動力を制動液圧に換算する場合の換算係数を示し、Ms0は所定の設定値である。
【0046】
制動液圧変換部55は、前輪の左右輪のブレーキ液圧差が算出した目標ブレーキ液圧差ΔPsfとなり、後輪の左右輪の液圧差が算出した目標ブレーキ液圧差ΔPsrとなるように、各輪の目標ブレーキ液圧(目標制動液圧)Pbrtを設定する。
制動アクチュエータ18cは、コントローラ17が生成する各輪2FR、2FL、2RR、2RLの目標制動液圧Pbrtに基づいて、各輪2FR、2FL、2RR、2RLを制動する。
【0047】
なお、上記の実施形態において目標挙動設定部50は、目標横力FyREQと車速Vとに基づいて、第1目標ヨーモーメントMzREQ1、目標ヨーレイトrREQ、目標車体姿勢角βREQを算出した。
これに代えて目標挙動設定部50は、車両センサ12の操舵角センサが検出したステアリングホイールの操舵角を入力し、操舵角と車速Vとに基づいて目標横力FyREQ、第1目標ヨーモーメントMzREQ1、目標ヨーレイトrREQ、目標車体姿勢角βREQを算出するように変更してもよい。
【0048】
(動作)
図6は、実施形態の走行制御方法の一例のフローチャートである。
ステップS1において車両制御部22は、自車両1を旋回させるための目標横力Fy
REQを設定する。
ステップS2において目標挙動設定部50は、目標横力Fy
REQと車速Vとに基づいて第1目標ヨーモーメントMz
REQ1、目標ヨーレイトr
REQ、目標車体姿勢角β
REQを設定する。
【0049】
ステップS3において制限値設定部51と、第2ヨーモーメント設定部52と、第3ヨーモーメント設定部53は、第1目標ヨーモーメントMzREQ1を、第2目標ヨーモーメントMzREQ2と第3目標ヨーモーメントMzREQ3とに分配する。
具体的には、制限値設定部51は、上記の制限値MzU、MzLを設定する。第2ヨーモーメント設定部52は、第1目標ヨーモーメントMzREQ1を制限値MzU、MzLで制限することにより第2目標ヨーモーメントMzREQ2を設定する。第3ヨーモーメント設定部53は、第1目標ヨーモーメントMzREQ1から前記第2目標ヨーモーメントMzREQ2を減算して得られる差分を、第3目標ヨーモーメントMzREQ3として設定する。
【0050】
ステップS4において目標転舵角設定部54は、目標横力FyREQと第2目標ヨーモーメントMzREQ2と目標ヨーレイトrREQと目標車体姿勢角βREQに基づいて、目標前輪転舵角δFREQ及び目標後輪転舵角δRREQを算出する。
ステップS5において制動液圧変換部55は、第3目標ヨーモーメントMzREQ3を自車両1に発生させる各輪の目標制動液圧Pbrtを設定する。
ステップS6において転舵アクチュエータ18aは、前輪転舵角δF、後輪転舵角δRがそれぞれ目標前輪転舵角δFREQ、目標後輪転舵角δRREQとなるように、前輪2FR、2FL及び後輪2RR、2RLを転舵する。制動アクチュエータ18cは、目標制動液圧Pbrtに基づいて、各輪2FR、2FL、2RR、2RLを制動する。その後に処理は終了する。
【0051】
(実施形態の効果)
(1)コントローラ17は、自車両に発生させる目標横力を設定する。又は車両センサ12の操舵角センサは、ステアリングホイールの操舵角を検出する。コントローラ17は、目標横力又は操舵角のいずれか一方と自車両の車速とに基づいて、自車両に発生させるヨーモーメント及びヨーレイトの目標値である第1目標ヨーモーメント及び目標ヨーレイトと、自車両の車体姿勢角の目標値である目標車体姿勢角と、をそれぞれ設定し、第1目標ヨーモーメントを、前輪及び後輪の転舵により達成する第2目標ヨーモーメントと、左右車輪の制動力差により達成する第3目標ヨーモーメントとに分配し、目標横力と、第2目標ヨーモーメントと、目標ヨーレイトと、目標車体姿勢角とに基づいて、前輪及び後輪の転舵角の目標値である目標前輪転舵角及び目標後輪転舵角をそれぞれ設定し、第3目標ヨーモーメントに基づいて、左右車輪の制動力差の目標値である目標制動力差を設定する。転舵アクチュエータ18aは、目標前輪転舵角及び目標後輪転舵角に基づいて前輪及び後輪をそれぞれ転舵する。制動アクチュエータ18cは、目標制動力差に基づいて左右車輪を制動する。
【0052】
これにより、前輪及び後輪の転舵により達成する第2目標ヨーモーメントを、実際に転舵可能な転舵角で達成できる範囲(すなわち、転舵により達成できる範囲)の値に制限できる。
このため、このように制限した第2目標ヨーモーメントに基づいて、目標前輪転舵角と目標後輪転舵角とを設定すれば、実際に転舵可能な目標後輪転舵角を設定しつつ、目標車体姿勢角を満たすように目標前輪転舵角を設定できる。
このため、目標ヨーレイトと目標車体姿勢角とを同時に満たすように、目標前輪転舵角及び目標後輪転舵角と、目標制動力差とを設定できる。
【0053】
(2)コントローラ17は、前輪及び後輪の転舵によって実現可能なヨーモーメントに応じた制限値で第1目標ヨーモーメントを制限することにより第2目標ヨーモーメントを設定してもよい。また、第1目標ヨーモーメントから第2目標ヨーモーメントを減算して得られる差分を第3目標ヨーモーメントとして設定してもよい。
これにより、第2目標ヨーモーメントを実際に転舵可能な転舵角で達成できる範囲の値に制限し、制限により不足するヨーモーメントを第3目標ヨーモーメントとして設定できる。
【0054】
(3)後輪の転舵角の大きさの上限に基づいて制限値を設定してもよい。これにより、後輪の転舵角の制限に基づいて第2目標ヨーモーメントを設定できる。
(4)このとき、前輪の転舵角とゲインとの積にオフセットを加算して、後輪の転舵角の大きさの上限を設定してもよい。これにより、後輪の転舵角の上限を前輪の転舵角に応じて動的に設定できる。
【0055】
(5)後輪の転舵角の大きさの上限と、目標横力と、目標ヨーレイトと、目標車体姿勢角とに基づいて、制限値を設定してもよい。これにより、後輪の転舵角の制限に応じて、第2目標ヨーモーメントを設定できる。
(6)第1目標ヨーモーメントが制限値に近づくにつれて制動力差が増加するように第3目標ヨーモーメントを徐変させてもよい。これにより、第1目標ヨーモーメント制限値を超えた時に急に制動が開始するのを緩和して、旋回挙動を円滑に遷移させることができる。
【符号の説明】
【0056】
1…自車両、10…走行制御装置、11…物体センサ、12…車両センサ、13…測位装置、14…地図データベース、15…ナビゲーション装置、17…コントローラ、18…アクチュエータ、18a転舵アクチュエータ、18b…アクセルアクチュエータ、18c…制動アクチュエータ、50…目標挙動設定部、51…制限値設定部、52…第2ヨーモーメント設定部、53…第3ヨーモーメント設定部、54…目標転舵角設定部、55…制動液圧変換部