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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】ダイヤフラムポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 45/047 20060101AFI20240823BHJP
   F04B 43/04 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
F04B45/047 Z
F04B43/04 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021060883
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156939
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000121833
【氏名又は名称】マブチモーターオーケン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】板原 一毅
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-299530(JP,A)
【文献】特開2016-41910(JP,A)
【文献】特開2007-9716(JP,A)
【文献】特開2019-31921(JP,A)
【文献】特開2013-19296(JP,A)
【文献】特開2005-337212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/02-43/073
F04B 45/04-45/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと一体的に構成されたダイヤフラムホルダと、
前記ダイヤフラムホルダに保持され、拡張・収縮を行うポンプ部を有するダイヤフラムと、
モータを駆動源として回転するクランク台と、
前記クランク台の回転中心から偏心した部位に傾斜した状態で取付けられた駆動軸と、
前記駆動軸に第1の軸受構造を介して支持されるとともに、前記ダイヤフラムホルダに第2の軸受構造を介して支持され、前記クランク台の回転に伴って繰り返し揺動して前記ポンプ部を駆動する駆動体とを備え、
前記第1の軸受構造は、
前記駆動軸が回転自在に嵌合しかつ前記駆動体に対する回転が規制される状態で前記駆動体に前記駆動軸の軸線方向へ移動自在に連結された軸受部材と、
前記駆動軸の軸線方向において前記駆動体と前記軸受部材との間に介在される緩衝材とを有し、
前記第2の軸受構造は、
前記ダイヤフラムホルダと前記駆動体との何れか一方に設けられた凸曲面と他方に設けられた凹曲面とからなり、
前記凸曲面と前記凹曲面は、前記駆動体の揺動中心部で互いに摺動自在に嵌合するように構成されていることを特徴とするダイヤフラムポンプ。
【請求項2】
請求項1記載のダイヤフラムポンプにおいて、
前記駆動体は、前記ダイヤフラムとは反対側の端部に開口して前記駆動軸の軸線と平行な方向に延びる非貫通穴を有し、
前記軸受部材は、前記非貫通穴に嵌合する有底筒状に形成され、
前記駆動体と前記軸受部材との嵌合部に、前記駆動軸の軸線方向に延びるとともに互いに嵌合する凹部と凸部とが形成され、
前記凹部と前記凸部とによって前記駆動体に対する前記軸受部材の回転が規制されていることを特徴とするダイヤフラムポンプ。
【請求項3】
請求項2記載のダイヤフラムポンプにおいて、
前記軸受部材は、底部がその他の部分より細くなるように形成され、
前記緩衝材は、前記底部に嵌合するリング状に形成されていることを特徴とするダイヤフラムポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音低減を図る軸受構造を備えたダイヤフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のダイヤフラムポンプとしては例えば特許文献1に記載されているものがある。特許文献1には図4図6に示すようなダイヤフラムポンプが開示されている。図4図6に示すダイヤフラムポンプ1は、ダイヤフラム2にポンプ部3が1つ設けられた単気筒型のものである。ポンプ部3は、駆動体4の腕部4aに連結されており、腕部4aが往復運動をすることにより拡張・収縮を交互に繰り返す。腕部4aがポンプ部3を引いてポンプ部3が拡張することにより、ポンプ部3内に吸気弁5を通して空気が吸引される。腕部4aがポンプ部3を押してポンプ部3が収縮することにより、ポンプ部3内の空気が吐出弁6を通して吐出される。駆動体4は、傾斜した駆動軸7に回転自在に支持され、駆動軸7がクランク台8とともに回転することによって回転を往復運動に変換する。すなわち、駆動体4は、クランク台8の回転に伴って繰り返し揺動してポンプ部3を駆動する。
ポンプ部3は、ダイヤフラムホルダ9のシリンダ部9aに収容されている。
【0003】
図4は単気筒型の正圧ポンプが吸気する状態を示している。この吸気行程においては、ポンプ部3が拡張することによりポンプ部3内が負圧となり、駆動体4が駆動軸7から浮き上がる。負圧が大きくなると、駆動体4がシリンダ部9aに接触する。また、空気を吐出する際は、ポンプ部3内が正圧となり、浮き上がった駆動体4が駆動軸7側に押されて駆動軸7に接触するようになる。
【0004】
図5に示すダイヤフラムポンプ1は、駆動体4とダイヤフラムホルダ9との間に緩衝材11を備えている。緩衝材11は、駆動体4の先端部と接触するように形成され、吸気行程で駆動体4が浮き上がる動きを抑制する。
図6に示すダイヤフラムポンプ1は、ダイヤフラム2にダイヤフラムホルダ9の穴9bを通して駆動体4側に突出する凸部12が設けられ、この凸部12が駆動体4の先端部と接触するように構成されている。図6に示すダイヤフラムポンプ1においては、凸部12が緩衝材として機能し、吸気行程で駆動体4が浮き上がる動きを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4959936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図4に示すダイヤフラムポンプ1では、運転時に駆動体4がシリンダ部9aと駆動軸7とに交互に接触するようになり、騒音が発生する。
図5図6に示すダイヤフラムポンプでは、駆動体4がシリンダ部9aに接触することを緩衝材11、凸部12によって抑えることができるから、騒音を低減することができる。しかし、駆動体4が緩衝材11や凸部12にこじれるように接触するから、これらの緩衝材11、凸部12の損耗が激しいという新たな問題が生じる。
【0007】
このような騒音が発生する問題や、緩衝材が損耗し易いという問題は、負圧ポンプであっても同様に生じる。また、これらの問題は、多気筒の正圧ポンプにおいても、排気側の圧力が低いときには駆動体が浮き上がる傾向にあるので単気筒のポンプと同様に発生する。なお、これらの問題を解消するにあたっては、構造が複雑になってポンプの組立性が損なわれるようなことは避けなければならない。
【0008】
本発明の目的は、ポンプの組立性を損なうことなく、騒音低減用の緩衝材の損耗を少なく抑えながら騒音低減を図ることが可能なダイヤフラムポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために本発明に係るダイヤフラムポンプは、ハウジングと一体的に構成されたダイヤフラムホルダと、前記ダイヤフラムホルダに保持され、拡張・収縮を行うポンプ部を有するダイヤフラムと、モータを駆動源として回転するクランク台と、前記クランク台の回転中心から偏心した部位に傾斜した状態で取付けられた駆動軸と、前記駆動軸に第1の軸受構造を介して支持されるとともに、前記ダイヤフラムホルダに第2の軸受構造を介して支持され、前記クランク台の回転に伴って繰り返し揺動して前記ポンプ部を駆動する駆動体とを備え、前記第1の軸受構造は、前記駆動軸が回転自在に嵌合しかつ前記駆動体に対する回転が規制される状態で前記駆動体に前記駆動軸の軸線方向へ移動自在に連結された軸受部材と、前記駆動軸の軸線方向において前記駆動体と前記軸受部材との間に介在される緩衝材とを有し、前記第2の軸受構造は、前記ダイヤフラムホルダと前記駆動体との何れか一方に設けられた凸曲面と他方に設けられた凹曲面とからなり、前記凸曲面と前記凹曲面は、駆動体の揺動中心部で互いに摺動自在に嵌合するように構成されているものである。
【0010】
本発明は、前記ダイヤフラムポンプにおいて、前記駆動体は、前記ダイヤフラムとは反対側の端部に開口して前記駆動軸の軸線と平行な方向に延びる非貫通穴を有し、前記軸受部材は、前記非貫通穴に嵌合する有底筒状に形成され、前記駆動体と前記軸受部材との嵌合部に、前記駆動軸の軸線方向に延びるとともに互いに嵌合する凹部と凸部とが形成され、前記凹部と前記凸部とによって前記駆動体に対する前記軸受部材の回転が規制されていてもよい。
【0011】
本発明は、前記ダイヤフラムポンプにおいて、前記軸受部材は、底部がその他の部分より細くなるように形成され、前記緩衝材は、前記底部に嵌合するリング状に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポンプ部が拡張する行程においては、駆動体が第2の軸受構造によって支持された状態で揺動する。ポンプ部が収縮する工程においては、駆動体が緩衝材を駆動軸の軸線方向に押しながら揺動する。このため、駆動体の揺動に伴う振動を緩衝材で減衰させることができ、騒音の発生を防ぐことができる。また、駆動体は緩衝材を駆動軸の軸線方向に押すから、緩衝材がこじられるようなことはなく、緩衝材の損耗量を低く抑えることができる。第1の軸受構造を構成する軸受部材と緩衝材は、駆動軸の軸線方向に重ねるようにして駆動軸や駆動体に組み付けることができるから、組立が容易である。第2の軸受構造は、駆動体とダイヤフラムホルダとによって構成されているから、ダイヤフラムポンプを組み立てる過程で操作を何ら行うことなく組み込まれるようになる。
したがって、本発明によれば、ポンプの組立性を損なうことなく、騒音低減用の緩衝材の損耗を少なく抑えながら騒音低減を図ることが可能なダイヤフラムポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明に係るダイヤフラムポンプの断面図である。
図2図2は、ダイヤフラムホルダの一部を拡大して示す断面図である。
図3図3は、第1の軸受構造を示す断面図である。
図4図4は、従来のダイヤフラムポンプの断面図である。
図5図5は、従来のダイヤフラムポンプの断面図である。
図6図6は、従来のダイヤフラムポンプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るダイヤフラムポンプの一実施の形態を図1図3を参照して詳細に説明する。
図1に示すダイヤフラムポンプ21は、図1において最も下に位置する駆動源としてのポンプ駆動用モータ22に取付けられており、ポンプ駆動用モータ22に固定された駆動部23と、この駆動部23に取付けられた弁部24とを備えている。このダイヤフラムポンプ21は、詳細は後述するが、ポンプ駆動用モータ22によって駆動されることにより空気を加圧して吐出する。
【0015】
<駆動部の構成>
駆動部23は、ポンプ駆動用モータ22に固定されたベース部材25と、このベース部材25の中に収容された駆動機構26とによって構成されている。
ベース部材25は、有底円筒状に形成されてポンプ駆動用モータ22に図示していない固定用ボルトによって固定されている。
駆動機構26は、ポンプ駆動用モータ22の回転軸27に取付けられたクランク台28と、このクランク台28に駆動軸29および後述する第1の軸受構造31を介して連結された駆動体32などを備えている。第1の軸受構造31の説明は後述する。
【0016】
駆動軸29は、クランク台28の回転中心から偏心した部位に傾斜した状態で取付けられている。駆動軸29が傾斜する方向は、駆動軸29の軸線C1と回転軸27の軸線C2とが駆動体32側で交差する方向である。
駆動体32は、駆動軸29に後述する第1の軸受構造31を介して回転自在に支持された円筒状の軸部33と、この軸部33から径方向の外側に突出する複数の腕部34とによって構成されている。
腕部34は、後述するダイヤフラム35のポンプ部36毎に設けられており、軸部33から放射状に径方向の外側へ延びている。
【0017】
腕部34には貫通穴34aが穿設されている。この貫通穴34aには、ダイヤフラム35の連結片37が係入されている。連結片37は、腕部34を貫通した状態で腕部34に固定されている。
駆動体32のモータ22とは反対側に位置する中心部には、後述する第2の軸受構造41の一部を構成する凹曲面42(図3参照)が形成されている。
この駆動機構26によれば、ポンプ駆動用モータ22の回転軸27から回転力が加えられてクランク台28と駆動軸29とが回転することにより、駆動体32が回転を往復運動に変換して揺動し、ダイヤフラム35のポンプ部36が収縮と拡張とを繰り返す。
【0018】
<弁部の構成>
弁部24は、駆動体32に接続されたダイヤフラム35と、ベース部材25の開口部分に取付けられてダイヤフラム35を保持するダイヤフラムホルダ43と、このダイヤフラムホルダ43との間にダイヤフラム35が挟まれる状態でダイヤフラムホルダ43に取付けられたバルブホルダ44と、このバルブホルダ44に取付けられたカバー45などを備えている。ダイヤフラムホルダ43と、バルブホルダ44と、カバー45は、ポンプ駆動用モータ22の軸線方向から見て円形に形成されている。この実施の形態においては、ベース部材25と、ダイヤフラムホルダ43と、バルブホルダ44と、カバー45などによって、本発明でいう「ハウジング」が構成されている。
【0019】
ダイヤフラムホルダ43は、ベース部材25に接続可能な円筒部43aと、後述するダイヤフラム35のポンプ部36が挿入される複数のシリンダ孔46と、これらのシリンダ孔46に囲まれた軸心部に位置する突起47とを有している。突起47は、ダイヤフラムホルダ43の軸心部から駆動体32に向けて突出している。突起47の先端部には、図2に示すよぅに、凸曲面48が形成されている。この凸曲面48は、駆動体32の凹曲面42と協働して第2の軸受構造41を構成するもので、球面の一部となるように形成されている。この凸曲面48と駆動体32の凹曲面42は、駆動体32の揺動中心部で互いに摺動自在に嵌合するように構成されている。
【0020】
ダイヤフラム35は、バルブホルダ44に向けて開口する複数のカップ状のポンプ部36を有している。
ポンプ部36は、ダイヤフラムホルダ43の円筒部43aの周方向において、ダイヤフラム35を複数に分割する位置にそれぞれ設けられている。これらのポンプ部36は、ダイヤフラムホルダ43に形成されたシリンダ孔46の中に挿入されている。
【0021】
ポンプ部36の開口部は、バルブホルダ44によって閉塞されている。このポンプ部36とバルブホルダ44との間に、ポンプ部36が壁の一部となるようにポンプ室51が形成されている。
カップ状を呈するポンプ部36の底にはピストン52が設けられているとともに、ポンプ室51とは反対方向に向けて突出する連結片37が設けられている。この連結片37は、上述したように駆動機構26の駆動体32に連結されている。このため、駆動体32が揺動することにより、ポンプ部36の底(ピストン52)がバルブホルダ44に対して接離し、ポンプ室51の容積が増減する。
【0022】
バルブホルダ44は、円板状に形成されており、外周側で複数の吸入弁53を支持しているとともに、中心部で一つの吐出弁54を支持している。バルブホルダ44とカバー45との間であって外周部には、環状の吸入用流体室55が形成されている。また、バルブホルダ44とカバー45との間であって中心側には、吸入用流体室55とは筒状の壁56によって仕切られた吐出用流体室57が形成されている。
【0023】
吸入用流体室55は、バルブホルダ44にポンプ室51毎に設けられた第1の貫通孔58を通して複数のポンプ室51のそれぞれに連通されている。また、吸入用流体室55は、カバー45に形成された第2の貫通孔59を通して大気中に連通されている。第2の貫通孔59は、ポンプ外側となるカバー45の外面に形成された流体入口60から吸入用流体室55まで延びている。この実施の形態においては、ポンプ室51毎の第1の貫通孔58と、吸入用流体室55と、第2の貫通孔59などによって、一端がポンプ室51に接続されかつ他端がポンプ外側の流体入口60に接続された吸入通路61が構成されている。
【0024】
吸入弁53は、吸入通路61を開閉するためのもので、ゴム材料によって所定の形状に形成されている。この実施の形態による吸入弁53は、バルブホルダ44を貫通してバルブホルダ44に固定された軸部53aと、軸部53aの先端に円板状に形成された弁体53bとを有している。この吸入弁53は、弁体53bが各ポンプ室51内に位置するようにポンプ室51毎に設けられている。弁体53bは、ダイヤフラム35のポンプ部36が拡張してポンプ室51の容積が増える行程で第1の貫通孔58の開口部分を開き、ポンプ部36が収縮してポンプ室51の容積が減少する行程で第1の貫通孔58の開口部分を閉じる。すなわち、吸入弁53は、ポンプ室51の容積が増える行程で流体が流体入口60からポンプ室51に向けて流れるように吸入通路61を開閉する。
【0025】
吐出用流体室57は、バルブホルダ44にポンプ室51毎に形成された第3の貫通孔62を通して複数のポンプ室51のそれぞれに連通されている。また、吐出用流体室57は、カバー45に形成された吐出パイプ63を通して大気中に連通されている。
吐出パイプ63の中空部63aは、ポンプ外側となる吐出パイプ63の外面に形成された流体吐出口64から吐出用流体室57まで延びている。この実施の形態においては、ポンプ室51毎の第3の貫通孔62と、吐出用流体室57と、吐出パイプ63の中空部63aなどによって、一端がポンプ室51に接続されかつ他端がポンプ外側の流体吐出口64に接続された吐出通路65が構成されている。
【0026】
吐出弁54は、ゴム材料によって形成され、バルブホルダ44における吐出用流体室57側の壁面に密着する弁体54aを有している。この弁体54aは、第3の貫通孔62の開口部分を開閉可能に閉塞しており、ダイヤフラム35のポンプ部36が拡張してポンプ室51の容積が増える行程で第3の貫通孔62の開口部分を閉じ、ポンプ部36が収縮してポンプ室51の容積が減少する行程で第3の貫通孔62の開口部分を開く。すなわち、吐出弁54は、ポンプ室51の容積が減少する行程で流体がポンプ室51から流体吐出口64に向けて流れるように吐出通路65を開閉する。
【0027】
カバー45における吐出用流体室57を覆う部分には第4の貫通孔66からなる排出通路67が設けられている。排出通路67の一端は、吐出通路65に接続されている。排出通路67の他端は、ポンプ外側となるカバー45の外面に形成された流体排出口68に接続されている。
【0028】
<第1の軸受構造の構成>
第1の軸受構造31は、図3に示すように、駆動体32の軸部33の中に収容された軸受部材71と緩衝材72とを有している。駆動体32の軸部33は、ダイヤフラム35とは反対側の端部33a(図3においては下側の端部)に開口して駆動軸29の軸線C1と平行な方向に延びる非貫通穴73を有している。非貫通穴73は、筒状の軸部33の中空部となる大径部73aと、最奥部を形成する小径部73bとによって構成されている。大径部73aの穴壁面には、駆動軸29の軸線方向に延びる複数の凹部74が形成されている。これらの凹部74は、非貫通穴73の開口端から非貫通穴73内を軸部33の周方向に所定の数だけ分割する位置にそれぞれ形成されている。
【0029】
軸受部材71は、非貫通穴73に嵌合する有底筒状に形成されている。軸受部材71を形成する材料は、摩擦抵抗が小さいプラスチック材料である。軸受部材71の軸心部には、駆動軸29が移動自在に嵌合する軸孔75が形成されている。この軸孔75に駆動軸29が嵌合することにより、軸受部材71が駆動軸29に回転自在に支持されることになる。
軸受部材71の底部71a(駆動軸29の先端と対向する部分であって、図3においては上端部)は、開口部側となるその他の部分71bより細くなるように形成されている。
【0030】
この底部71aの外径は、非貫通穴73の小径部73bの内径より小さい。
軸受部材71の外周部には、複数の凸部76が形成されている。これらの凸部76は、非貫通穴73の凹部74に駆動軸29の軸線方向へ移動自在に嵌合するように形成されている。このため、軸受部材71は、駆動軸29が回転自在に嵌合し、かつ駆動体32に対する回転が規制される状態で駆動体32に駆動軸29の軸線方向へ移動自在に連結されることになる。
【0031】
緩衝材72は、ゴム材料などの弾性材によってリング状に形成されており、軸受部材71の底部71aに嵌合状態で取付けられている。この緩衝材72は、軸受部材71の底部71aとその他の部分71bとの境界となる第1の段差部77と、非貫通穴73の大径部73aと小径部73bとの境界となる第2の段差部78とに挟まれている。すなわち、緩衝材72は、駆動軸29の軸線方向において、駆動体32と軸受部材71との間に介在されている。この実施の形態による第1の軸受構造31は、緩衝材72が駆動体32と軸受部材71とに挟まれている状態において、軸受部材71の底部71aの端面79と非貫通穴73の底面80との間に予め定めた隙間Sが形成されるように構成されている。
【0032】
<動作の説明>
このように構成されたダイヤフラムポンプ21において、駆動体32は、第1の軸受構造31を介して駆動軸29に取付けられる。この取付作業は、例えば、予め緩衝材72が取付けられた軸受部材71を駆動軸29に組み付け、さらに、この軸受部材71に駆動体32を組み付けて行うことができる。ダイヤフラム35は、ポンプ部36をダイヤフラムホルダ43にシリンダ孔46に挿入してダイヤフラムホルダ43に組み付けられた状態で、駆動体32に取付けられる。このとき、ダイヤフラムホルダ43の突起47が駆動体32の凹曲面42に嵌合し、突起47と駆動軸29との間に、駆動体32と、緩衝材72と、軸受部材71とがこの順に並ぶ状態で挟まれる。
この実施の形態によるダイヤフラムポンプ21は、このように駆動体32と、緩衝材72および軸受部材71とからなる組立体が突起47と駆動軸29との間に挟まれている状態で使用される。
【0033】
このダイヤフラムポンプ21において、駆動軸29がクランク台28とともに回転することにより、駆動体32の腕部34がポンプ部36を駆動し、ポンプ部36が拡張と収縮とを繰り返すようになる。ポンプ部36が拡張する行程においては、このポンプ部36に連結されている駆動体32の腕部34にポンプ室51側から引かれるような力が作用する。このため、このときには、駆動体32の凹曲面42が突起47の凸曲面48に押し付けられ、駆動体32が第2の軸受構造41によって支持された状態で揺動する。
【0034】
一方、ポンプ部36が収縮する工程においては、ポンプ部36に連結されている駆動体32の腕部34にポンプ室51側から押されるような力が作用する。このため、このときには、駆動体32が緩衝材72を駆動軸29の軸線方向に押しながら揺動する。緩衝材72は、駆動体32によって押されることにより、軸受部材71の第1の段差部77に押し付けられて弾性変形により圧縮される。
このように駆動体32が緩衝材72を押すことにより、駆動体32の揺動に伴って生じる振動を緩衝材72で減衰させることができる。このため、駆動体32の振動に伴って騒音が発生することを防ぐことができる。また、駆動体32は緩衝材72を駆動軸29の軸線方向に押すから、緩衝材72がこじられるようなことはなく、緩衝材72の損耗量を低く抑えることができる。
【0035】
第1の軸受構造31を構成する軸受部材71と緩衝材72は、駆動軸29の軸線方向に重ねるようにして駆動軸29や駆動体32に組み付けることができるから、組立が容易である。第2の軸受構造41は、駆動体32とダイヤフラムホルダ43とによって構成されているから、ダイヤフラムポンプ21を組み立てる過程で操作を何ら行うことなく組み込まれるようになる。
したがって、この実施の形態によれば、ポンプの組立性を損なうことなく、騒音低減用の緩衝材の損耗を少なく抑えながら騒音低減を図ることが可能なダイヤフラムポンプを提供することができる。
【0036】
この実施の形態による駆動体32は、ダイヤフラム35とは反対側の端部33aに開口して駆動軸29の軸線と平行な方向に延びる非貫通穴73を有している。軸受部材71は、非貫通穴73に嵌合する有底筒状に形成されている。駆動体32と軸受部材71との嵌合部に、駆動軸29の軸線方向に延びるとともに互いに嵌合する凹部74と凸部76とが形成されている。これらの凹部74と凸部76とによって駆動体32に対する軸受部材71の回転が規制されている。
このため、駆動体32に対する軸受部材71の回転を規制するとともに駆動体32に対して軸受部材71を駆動軸29の軸線方向に移動自在とするにあたって、単純な構造で実現することができるから、駆動体32に軸受部材71を組み付ける作業をより一層容易に行うことができる。
【0037】
この実施の形態による軸受部材71は、底部71aがその他の部分71bより細くなるように形成されている。緩衝材72は、底部71aに嵌合するリング状に形成されている。このため、緩衝材72が軸受部材71の外周部に配置されるから、緩衝材72の外径を可及的大きくすることができ、駆動体32の押圧力を広い範囲で受けることが可能になる。この結果、緩衝材72に作用する面圧が低下し、緩衝材72の損耗をより一層少なく抑えることができるようになる。
【0038】
上述した実施の形態においては、駆動体32の非貫通穴73に凹部74を形成し、軸受部材71に凸部76を形成する例を示したが、凹部74を軸受部材71に形成し、凸部76を非貫通穴73に形成してもよい。また、上述した実施の形態においては緩衝材72をリング状に形成する例を示したが、緩衝材72は、図示してはいないが、例えば円板状に形成して軸受部材71の端面79と非貫通穴73の底面80との間に介在させることもできる。
さらに、上述した実施の形態による第2の軸受構造41は、駆動体32に形成された凹曲面42と、ダイヤフラムホルダ43の突起47に形成された凸曲面48とによって構成されている。しかし、第2の軸受構造41は、図示してはいないが、駆動体32に形成された突起47の凸曲面48と、ダイヤフラムホルダ43に形成された凹曲面42とによって構成することもできる。
【符号の説明】
【0039】
21…ダイヤフラムポンプ、22…モータ、25…ベース部材、28…クランク台、29…駆動軸、31…第1の軸受構造、32…駆動体、35…ダイヤフラム、36…ポンプ部、41…第2の軸受構造、42…凹曲面、43…ダイヤフラムホルダ、44…バルブホルダ、45…カバー、48…凸曲面、71…軸受部材、71a…底部、72…緩衝材、73…非貫通穴、74…凹部、76…凸部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6