(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】感度カーブ学習装置、その学習方法、性能値算出装置、および、その性能値算出方法
(51)【国際特許分類】
F02C 7/00 20060101AFI20240823BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
F02C7/00 Z
F01D25/00 W
(21)【出願番号】P 2021080445
(22)【出願日】2021-05-11
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】大塚 愛里梨
(72)【発明者】
【氏名】岸 真人
(72)【発明者】
【氏名】藤井 慶太
(72)【発明者】
【氏名】森 圭祐
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-024119(JP,A)
【文献】特開平11-242503(JP,A)
【文献】特開2013-040565(JP,A)
【文献】特開2017-172391(JP,A)
【文献】特開2009-047092(JP,A)
【文献】特開2019-124134(JP,A)
【文献】特開2018-189081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/00
F01D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンの性能値に影響を与える外部条件を表す複数の第1の説明変数各々に対応する
複数のニューラルネットワークであって、
各々のニューラルネットワークが、対応する前記第1の説明変数の値を入力とし、
各々のニューラルネットワークが、前記性能値を補正する第1の補正係数を表す補正情報を出力とする
複数のニューラルネットワークと、
前記ニューラルネットワーク各々が出力した前記補正情報が表す前記第1の補正係数を、基準となる性能値に乗じた値を、前記外部条件における性能値とする性能値算出部と、
前記複数の第1の説明変数各々の値と、前記値に対応する前記外部条件における性能値とを含む教師データの複数のセットを用いて、前記ニューラルネットワークの各々に、対応する前記第1の説明変数に応じた前記第1の補正係数を表す感度カーブを学習させる教師データ提供部と
を備える感度カーブ学習装置。
【請求項2】
前記外部条件を表す複数の第1の説明変数は、大気温度、大気圧力、湿度、運転時間、入口案内翼開度、大気温度により決まる基準の入口案内翼開度からの差分、ガスタービンの個体識別のうち、いずれかを含む、
請求項1に記載の感度カーブ学習装置。
【請求項3】
前記性能値は、ガスタービンの出力、ガスタービンの効率、圧力比、吸気流量、排ガス温度、圧縮機効率のいずれかである、請求項1または請求項2に記載の感度カーブ学習装置。
【請求項4】
外部条件を表す第2の説明変数の値を入力とし、既知の感度カーブに基づく、前記性能値を補正する第2の補正係数を表す補正情報を出力とする既知感度部を備え、
前記性能値算出部は、前記ニューラルネットワーク各々が出力した補正情報が表す前記第1の補正係数に加えて、前記既知感度部が出力した補正情報が表す前記第2の補正係数を、前記基準となる性能値に乗じた値を、前記外部条件における性能値とし、
前記教師データは、前記第2の説明変数の値を含む、
請求項1に記載の感度カーブ学習装置。
【請求項5】
外部条件を表す第3の説明変数の値を入力とし、ガウス過程回帰に基づく、前記性能値を補正する第3の補正係数を表す補正情報を出力とするガウス過程回帰部を備え、
前記性能値算出部は、前記ニューラルネットワーク各々が出力した補正情報が表す前記第1の補正係数に加えて、前記ガウス過程回帰部が出力した補正情報が表す前記第3の補正係数を、前記基準となる性能値に乗じた値を、前記外部条件における性能値とし、
前記教師データは、前記第3の説明変数の値を含み、
前記教師データ提供部は、さらに、前記第3の説明変数に応じた前記第3の補正係数を表す感度カーブを学習させる、
請求項1に記載の感度カーブ学習装置。
【請求項6】
前記教師データ提供部は、前記教師データの複数のセットを用いて前記ニューラルネットワークの各々に前記感度カーブを学習させる前に、少なくとも1つの前記ニューラルネットワークに、既知の感度カーブを学習させる、
請求項1に記載の感度カーブ学習装置。
【請求項7】
感度カーブ学習装置のための学習方法であって、
前記感度カーブ学習装置は、
ガスタービンの性能値に影響を与える、外部条件を表す複数の第1の説明変数各々に対応する
複数のニューラルネットワークであって、
各々のニューラルネットワークが、対応する前記第1の説明変数の値を入力とし、
各々のニューラルネットワークが、前記性能値を補正する第1の補正係数を表す補正情報を出力とする
複数のニューラルネットワークと、
前記ニューラルネットワーク各々が出力した前記補正情報が表す前記第1の補正係数を、基準となる性能値に乗じた値を、前記外部条件における性能値とする性能値算出部と、
を備え、
前記複数の第1の説明変数各々の値と、前記値に対応する前記外部条件における性能値とを含む教師データの複数のセットを用いて、前記ニューラルネットワークの各々が、対応する前記第1の説明変数に応じた前記第1の補正係数を表す感度カーブを学習するステップ、
を有する学習方法。
【請求項8】
ガスタービンの性能値に影響を与える、外部条件を表す複数の第1の説明変数各々に対応する感度カーブであって、請求項7に記載の学習方法により学習した感度カーブに基づき、対応する前記第1の説明変数の値を入力とし、前記性能値を補正する第1の補正係数を表す補正情報を出力とする感度カーブ部と、
前記感度カーブ部各々が出力した前記補正情報が表す前記第1の補正係数の逆数を、前記外部条件における性能値に乗じた値を、基準となる外部条件における性能値とする基準時性能値算出部と
を備える性能値算出装置。
【請求項9】
性能値算出装置による性能値算出方法であって、
ガスタービンの性能値に影響を与える、外部条件を表す複数の第1の説明変数各々に対応する感度カーブであって、請求項7に記載の学習方法により学習した感度カーブに基づき、対応する前記第1の説明変数の値を入力とし、前記性能値を補正する第1の補正係数を表す補正情報を出力とする第1のステップと、
前記性能値算出装置が、前記ニューラルネットワーク各々が出力した前記補正情報が表す前記第1の補正係数の逆数を、前記外部条件における性能値に乗じた値を、基準となる外部条件における性能値とする第2のステップと
を有する性能値算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの感度カーブ学習装置、その学習方法、性能値算出装置、および、その性能値算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの性能は、大気温度、大気圧力などの外部条件により大きく変化する。このため、基準となる外部条件下における性能値で、性能が評価される。しかし、基準となる外部条件下における性能値を測定しようとしても、外部条件を、基準となる外部条件に合わせるのが困難なことがある。その場合、測定した性能値を、測定時の外部条件に基づく補正係数で割るなどして、基準となる外部条件下における性能値を推定している。従来、外部条件と補正係数の関係を表す感度カーブとして、様々な外部条件における測定値から、一次関数や二次関数で近似して求めたカーブを用いているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-040565号公報
【文献】国際公開第2017/163489号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の基準となる外部条件下における性能値の推定においては、外部条件と補正係数の関係を示す感度カーブを、一次関数や二次関数による近似を用いて求めると、精度の高いガスタービン性能の推定値が得られないことがあるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、より精度の高いガスタービン性能の推定値が得られる感度カーブ学習装置、その学習方法、性能値算出装置、および、その性能値算出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の一態様は、ガスタービンの性能値に影響を与える外部条件を表す複数の第1の説明変数各々に対応するニューラルネットワークであって、対応する前記第1の説明変数の値を入力とし、前記性能値を補正する第1の補正係数を表す補正情報を出力とするニューラルネットワークと、前記ニューラルネットワーク各々が出力した前記補正情報が表す前記第1の補正係数を、基準となる性能値に乗じた値を、前記外部条件における性能値とする性能値算出部と、前記複数の第1の説明変数各々の値と、前記値に対応する前記外部条件における性能値とを含む教師データの複数のセットを用いて、前記ニューラルネットワークの各々に、対応する前記第1の説明変数に応じた前記第1の補正係数を表す感度カーブを学習させる教師データ提供部とを備える感度カーブ学習装置である。
【0007】
また、本発明の一態様は、上述の感度カーブ学習装置であって、前記外部条件を表す複数の第1の説明変数、大気温度、大気圧力、湿度、運転時間、入口案内翼開度、大気温度により決まる基準の入口案内翼開度からの差分、ガスタービンの個体識別のうち、いずれかを含む。
【0008】
また、本発明の一態様は、上述の感度カーブ学習装置であって、前記性能値は、ガスタービンの出力、ガスタービンの効率、圧力比、吸気流量、排ガス温度、圧縮機効率のいずれかである。
【0009】
また、本発明の一態様は、上述の感度カーブ学習装置であって、外部条件を表す第2の説明変数の値を入力とし、既知の感度カーブに基づく、前記性能値を補正する第2の補正係数を表す補正情報を出力とする既知感度部を備え、前記性能値算出部は、前記ニューラルネットワーク各々が出力した補正情報が表す前記第1の補正係数に加えて、前記既知感度部が出力した補正情報が表す前記第2の補正係数を、前記基準となる性能値に乗じた値を、前記外部条件における性能値とし、前記教師データは、前記第2の説明変数の値を含む。
【0010】
また、本発明の一態様は、上述の感度カーブ学習装置であって、外部条件を表す第3の説明変数の値を入力とし、ガウス過程回帰に基づく、前記性能値を補正する第3の補正係数を表す補正情報を出力とするガウス過程回帰部を備え、前記性能値算出部は、前記ニューラルネットワーク各々が出力した補正情報が表す前記第1の補正係数に加えて、前記ガウス過程回帰部が出力した補正情報が表す前記第3の補正係数を、前記基準となる性能値に乗じた値を、前記外部条件における性能値とし、前記教師データは、前記第3の説明変数の値を含み、前記教師データ提供部は、さらに、前記第3の説明変数に応じた前記第3の補正係数を表す感度カーブを学習させる。
【0011】
また、本発明の一態様は、上述の感度カーブ学習装置であって、前記教師データ提供部は、前記教師データの複数のセットを用いて前記ニューラルネットワークの各々に前記感度カーブを学習させる前に、少なくとも1つの前記ニューラルネットワークに、既知の感度カーブを学習させる。
【0012】
また、本発明の一態様は、感度カーブ学習装置のための学習方法であって、前記感度カーブ学習装置は、ガスタービンの性能値に影響を与える、外部条件を表す複数の第1の説明変数各々に対応するニューラルネットワークであって、対応する前記第1の説明変数の値を入力とし、前記性能値を補正する第1の補正係数を表す補正情報を出力とするニューラルネットワークと、前記ニューラルネットワーク各々が出力した前記補正情報が表す前記第1の補正係数を、基準となる性能値に乗じた値を、前記外部条件における性能値とする性能値算出部と、を備え、前記複数の第1の説明変数各々の値と、前記値に対応する前記外部条件における性能値とを含む教師データの複数のセットを用いて、前記ニューラルネットワークの各々が、対応する前記第1の説明変数に応じた前記第1の補正係数を表す感度カーブを学習するステップ、を有する。
【0013】
また、本発明の一態様は、ガスタービンの性能値に影響を与える、外部条件を表す複数の第1の説明変数各々に対応する感度カーブであって、上述した学習方法により学習した感度カーブに基づき、対応する前記第1の説明変数の値を入力とし、前記性能値を補正する第1の補正係数を表す補正情報を出力とする感度カーブ部と、前記感度カーブ部各々が出力した前記補正情報が表す前記第1の補正係数の逆数を、前記外部条件における性能値に乗じた値を、基準となる外部条件における性能値とする基準時性能値算出部とを備える性能値算出装置である。
【0014】
また、本発明の一態様は、性能値算出装置による性能値算出方法であって、ガスタービンの性能値に影響を与える、外部条件を表す複数の第1の説明変数各々に対応する感度カーブであって、上述した学習方法により学習した感度カーブに基づき、対応する前記第1の説明変数の値を入力とし、前記性能値を補正する第1の補正係数を表す補正情報を出力とする第1のステップと、前記性能値算出装置が、前記ニューラルネットワーク各々が出力した前記補正情報が表す前記第1の補正係数の逆数を、前記外部条件における性能値に乗じた値を、基準となる外部条件における性能値とする第2のステップとを有する。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、より精度の高いガスタービン性能の推定値が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の一実施形態による感度カーブ学習装置100の構成を示す概略ブロック図である。
【
図2】同実施形態による大気温度の感度カーブの例を示すグラフである。
【
図3】同実施形態による大気圧力の感度カーブの例を示すグラフである。
【
図4】同実施形態による湿度の感度カーブの例を示すグラフである。
【
図5】同実施形態による運転時間の感度カーブの例を示すグラフである。
【
図6】同実施形態によるデルタ入口案内翼開度の感度カーブの例を示すグラフである。
【
図7】同実施形態によるガスタービンの個体識別の感度カーブの例を示すグラフである。
【
図8】同実施形態による性能値算出装置200の構成を示す概略ブロック図である。
【
図9】同実施形態の第1の変形例における感度カーブ学習装置100aの構成を示す概略ブロック図である。
【
図10】同実施形態の第2の変形例における感度カーブ学習装置100bの構成を示す概略ブロック図である。
【
図11】同変形例における入口案内翼開度の感度カーブの例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、この発明の一実施形態による感度カーブ学習装置100の構成を示す概略ブロック図である。感度カーブ学習装置100は、ガスタービンの性能値に影響を与える外部条件を表す第1の説明変数各々と、対応する第1の補正係数との関係を表す感度カーブを学習する。ここで、ガスタービンの性能値は、出力[MW]、ガスタービンの効率、圧力比(圧縮機出口圧力/圧縮機入口圧力)、吸気流量、排ガス温度、圧縮機効率などであるが、これらに限らない。また、第1の説明変数は、大気温度、大気圧力、湿度、運転時間、入口案内翼開度、入口案内翼開度、ガスタービンの個体識別、および、他、ガスタービンの状態に影響するもののうち、いずれか、もしくは全てを含む。
【0018】
なお、入口案内翼開度は、大気温度により決まることが多いため、代わりにデルタ入口案内翼開度を用いてもよい。ここで、大気温度により決まる値を基準値とし、基準値との差をデルタ入口案内翼開度とする。第1の説明変数に、大気温度と入口案内翼開度のように、互いに相関関係の強いものが含まれていると、感度カーブを学習する際に、演算が不安定になり易い。しかし、デルタ入口案内翼開度のように、一方の値に対応した基準値との差を用いて、相関関係を弱くする、あるいは無くすことで、演算が不安定になるのを抑えることが出来る。
【0019】
感度カーブ学習装置100は、ニューラルネットワーク部110、111、112、性能値算出部120、教師データ提供部130を備える。なお、
図1において、感度カーブ学習装置100は、ニューラルネットワーク部110、111、112の3つを備えるが、3つに限らず、第1の説明変数の数だけ備えていてよい。
【0020】
ニューラルネットワーク部110、111、112は、それぞれが、いずれかの第1の説明変数と対応しており、対応する第1の説明変数の値を入力とし、ガスタービンの性能値を補正する第1の補正係数を表す補正情報を出力とするニューラルネットワークである。性能値算出部120は、ニューラルネットワーク部110、111、112の各々が出力した補正情報が表す第1の補正係数を、基準となる性能値(基準性能値S)に乗じた値を、第1の説明変数が表す外部条件における性能値とする。基準性能値Sは、設計値、標準規格などの基準となる外部条件における性能値である。
【0021】
例えば、ニューラルネットワーク部110、111、112の各々が対応する第1の説明変数が、大気温度、大気圧力、湿度であるとき、ニューラルネットワーク部110、111、112は、それぞれ、大気温度による第1の補正係数FT、大気圧力による第1の補正係数FB、湿度による第1の補正係数FHを出力とする。性能値算出部120は、基準性能値Sに、大気温度による第1の補正係数FTと、大気圧力による第1の補正係数FBと、湿度による第1の補正係数FHとを乗じた値を、第1の説明変数が表す外部条件における性能値とする。
【0022】
教師データ提供部130は、教師データの複数のセットを用いて、ニューラルネットワーク部110、111、112の各々に、対応する第1の説明変数に応じた第1の補正係数を表す感度カーブを学習させる。ここで、教師データの各セットは、複数の第1の説明変数各々の値と、その値に対応する外部条件における性能値とを含む。この教師データの各セットは、測定した性能値と、そのときの外部条件から構成されている。
【0023】
すなわち、教師データ提供部130は、性能値を測定したときの外部条件を表す複数の第1の説明変数各々の値を、ニューラルネットワーク部110、111、112各々の入力とし、性能値算出部120が算出する性能値が、測定した性能値となるように、ニューラルネットワーク部110、111、112に感度カーブを学習させる。なお、設計値など、既知の感度カーブがある場合は、教師データを用いて学習させる前に、ニューラルネットワーク部110、111、112に、該既知の感度カーブを学習させておいてもよい。
【0024】
図2から
図7に、感度カーブ学習装置100が学習して得られた感度カーブの例を示す。
図2から
図7の各々において、教師データである測定値は、グレーでプロットされており、感度カーブは黒色でプロットされている。なお、ここで、感度カーブとして、プロットされている値は、ニューラルネットワーク部110、111、112の出力である補正係数に、基準性能値Sを乗じた値である。
【0025】
図2は、大気温度の感度カーブの例を示すグラフである。
図2の横軸は、大気温度[℃]であり、縦軸は、ガスタービンの出力[MW]である。
図3は、大気圧力の感度カーブの例を示すグラフである。
図3の横軸は、大気圧力[kPa]であり、縦軸は、ガスタービンの出力[MW]である。
図4は、湿度の感度カーブの例を示すグラフである。
図4の横軸は、湿度[%]であり、縦軸は、ガスタービンの出力[MW]である。
図5は、運転時間の感度カーブの例を示すグラフである。
図5の横軸は、運転時間[h]であり、縦軸は、ガスタービンの出力[MW]である。
図6は、デルタ入口案内翼開度の感度カーブの例を示すグラフである。
図6の横軸は、デルタ入口案内翼開度[度]であり、縦軸は、ガスタービンの出力[MW]である。
図7は、ガスタービンの個体識別の感度カーブの例を示すグラフである。
図7の横軸は、ガスタービンの個体識別番号であり、縦軸は、ガスタービンの出力[MW]である。各図における教師データは、感度カーブの説明変数以外の外部条件も、測定値によって異なっているため、性能値は様々な値となっている。感度カーブ学習装置100は、このような教師データからも、感度カーブを算出することができる。また、第1の説明変数に、ガスタービンの個体識別を含めることにより、同一の機種であっても、個体に依る感度カーブの変化を反映させることができる。
【0026】
図8は、性能値算出装置200の構成を示す概略ブロック図である。性能値算出装置200は、感度カーブ学習装置100が学習した感度カーブを用いて、任意の外部条件において測定された性能値を、基準となる外部条件における性能値に変換する。性能値算出装置200は、測定値・外部条件入力部210、感度カーブ部220、221、222、基準時性能値算出部230を備える。なお、
図8において、性能値算出装置200は、感度カーブ部220、221、222の3つを備えるが、3つに限らず、第1の説明変数の数だけ備えていてよい。
【0027】
測定値・外部条件入力部210は、外部条件を表す複数の第1の説明変数の値を、それぞれ対応する感度カーブ部220、221、222に入力する。また、測定値・外部条件入力部210は、測定された性能値を、基準時性能値算出部230に入力する。感度カーブ部220、221、222は、それぞれ、感度カーブ学習装置100のニューラルネットワーク部110、111、112が学習した感度カーブを格納している。感度カーブ部220、221、222は、それぞれが、いずれかの第1の説明変数と対応しており、対応する第1の説明変数の値を入力とし、記憶している感度カーブに基づく、ガスタービンの性能値を補正する第1の補正係数を表す補正情報を出力とする。
【0028】
基準時性能値算出部230は、測定値・外部条件入力部210から入力された性能値と、感度カーブ部220、221、222の各々から入力された第1の補正係数を表す補正情報とから、基準となる外部条件における性能値を算出する。具体的には、基準時性能値算出部230は、入力された性能値に、各第1の補正係数の逆数を乗じることで、基準条件における性能値を算出する。
【0029】
このように、感度カーブ学習装置100は、説明変数毎のニューラルネットワークを備えるので、各説明変数の精度良い感度カーブを学習することができる。性能値算出装置200は、感度カーブ学習装置100が学習した感度カーブを用いて、任意の外部条件において測定した性能値を、基準となる外部条件における性能値に、精度良く変換することができる。
【0030】
<第1の変形例>
図9は、本実施形態の第1の変形例における感度カーブ学習装置100aの構成を示す概略ブロック図である。感度カーブ学習装置100aは、
図1の感度カーブ学習装置100とは、ニューラルネットワーク部112に代えて、既知感度カーブ部140を備える点が異なる。既知感度カーブ部140は、外部条件のうち、感度カーブが既知である第2の説明変数を入力とし、既知の感度カーブに基づく、性能値を補正する第2の補正係数を表す補正情報を出力とする。性能値算出部120には、ニューラルネットワーク部112の出力に代えて、既知感度カーブ部140の出力が入力される。教師データの各セットには、第2の説明変数の値が含まれる。
【0031】
なお、本変形例では、感度カーブ学習装置100aが備える既知感度カーブ部140は、1つのみであるが、複数であってもよい。すなわち、感度カーブ学習装置100が備えるニューラルネットワーク部110、111、112のうち、複数が既知感度カーブ部140に置き換えられていてもよい。また、性能値算出装置200の感度カーブ部220、221、222のうち、一部が既知感度カーブ部140に置き換えられていてもよい。
【0032】
これにより、高精度な感度カーブが既知であれば、高精度な感度カーブを用いることができる。また、教師データが存在しない領域があっても、該領域の感度カーブが得られる。また、感度カーブ学習装置100aは、感度カーブ学習装置100に比べて、学習する感度カーブの数を減らし、学習に必要な演算量(演算時間)を減らすことができる。
【0033】
<第2の変形例>
図10は、本実施形態の第2の変形例における感度カーブ学習装置100bの構成を示す概略ブロック図である。感度カーブ学習装置100bは、
図1の感度カーブ学習装置100とは、ニューラルネットワーク部112に代えて、ガウス過程回帰部150を備える点が異なる。ガウス過程回帰部150は、ニューラルネットワーク部112と同様に、対応する説明変数(第3の説明変数)の値を入力とし、ガスタービンの性能値を補正する補正係数(第3の補正係数)を表す補正情報を出力とする。ガウス過程回帰部150は、ガウス過程回帰により、感度カーブを学習する点が、ニューラルネットワーク部112と異なる。性能値算出部120には、ニューラルネットワーク部112の出力に代えて、ガウス過程回帰部150の出力が入力される。教師データの各セットには、第3の説明変数の値が含まれる。
【0034】
なお、本変形例では、感度カーブ学習装置100bが備えるガウス過程回帰部150は、1つのみであるが、複数であってもよい。すなわち、感度カーブ学習装置100が備えるニューラルネットワーク部110、111、112のうち、複数がガウス過程回帰部150に置き換えられていてもよい。また、性能値算出装置200の感度カーブ部220、221、222のうち、一部がガウス過程回帰部150に置き換えられていてもよい。また、ガウス過程回帰以外の機械学習手法を用いてもよい。
【0035】
図11は、本変形例における入口案内翼開度の感度カーブの例を示すグラフである。
図11において、横軸は、入口案内翼開度(IGV開度)であり、縦軸は、出力である。
図11の実線は、ガウス過程回帰部150により算出された感度カーブの例を示す。ハッチング部は、その幅が狭いほど、信頼性が高いことを示す。例えば、A部分は、ハッチング部が狭いので、該部分の感度カーブの信頼性が高い。一方、B部分は、ハッチング部が広いので、該部分の感度カーブの信頼性が低い。ユーザは、ハッチング部が広いところの信頼性を上げるために、該部分の外部条件を含む教師データが得られるような測定計画を立てることができる。
【0036】
なお、上述の各実施形態において、教師データとして用いる測定値は、ガスタービンの定期検査と定期検査の間のデータのみを用いることが望ましい。これにより、定期検査による性能の変化の影響を受けることが避けられるため、精度の良い感度カーブを得ることができる。
また、上述の各実施形態において、教師データとして用いる測定値は、同一の仕様のガスタービンのデータのみを用いることが望ましい。これにより、ガスタービンの仕様差による影響を受けることが避けられるため、精度の良い感度カーブを得ることができる。
【0037】
また、
図1、8、9、10における感度カーブ学習装置100、100a、100b、性能値算出装置200の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより感度カーブ学習装置100、100a、100b、性能値算出装置200を実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0038】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0039】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0040】
100、100a、100b…感度カーブ学習装置
110、111、112…ニューラルネットワーク部
120…性能値算出部
130…教師データ提供部
140…既知感度カーブ部
150…ガウス過程回帰部
200…性能値算出装置
210…測定値・外部条件入力部
220、221、222…感度カーブ部
230…基準時性能値算出部