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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】ケーブル連結機構
(51)【国際特許分類】
   F16C 1/14 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
F16C1/14 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021112174
(22)【出願日】2021-07-06
(65)【公開番号】P2023008533
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今川 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】三枝 修平
(72)【発明者】
【氏名】西村 淳史
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0347344(US,A1)
【文献】米国特許第06817451(US,B1)
【文献】米国特許第05829314(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 10/00-11/34
F16C 1/00- 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部に直接または間接的に接続される操作ケーブルと、
前記操作ケーブルの操作力によって操作される第1被操作ケーブルと、
前記操作ケーブルの操作力によって操作される第2被操作ケーブルと、
前記操作ケーブルと、前記第1被操作ケーブルおよび前記第2被操作ケーブルとを連結する連結装置と
を備え、
前記連結装置は、ハウジングと、前記ハウジング内でスライドするスライダとを有し、
前記ハウジングは、前記スライダのスライド方向に沿って延び、かつ、前記スライド方向に対して垂直な方向となる幅方向で互いに対向する一対のガイド面を有し、
前記スライダは、
前記スライド方向の一方側に前記操作ケーブルが延びるように前記操作ケーブルの一端が連結される操作ケーブル連結部と、
前記スライド方向の他方側に前記第1被操作ケーブルが延びるように前記第1被操作ケーブルの一端が連結される第1被操作ケーブル連結部と、
前記スライド方向の他方側に前記第2被操作ケーブルが延びるように前記第2被操作ケーブルの一端が連結される第2被操作ケーブル連結部と
を有し、
前記第1被操作ケーブル連結部は、前記操作ケーブル連結部に対して、前記幅方向で一方側に設けられ、前記第2被操作ケーブル連結部は、前記操作ケーブル連結部に対して、前記幅方向で他方側に設けられ、
前記操作ケーブル連結部、前記第1被操作ケーブル連結部および前記第2被操作ケーブル連結部は、前記スライダに連結された前記操作ケーブルの一端の一部、前記第1被操作ケーブルの一端の一部および前記第2被操作ケーブルの一端の一部が、前記スライド方向で所定の長さオーバーラップするように、前記幅方向に並んで配列され、
前記スライダは、前記スライド方向および前記幅方向に垂直な軸周りに回転可能に構成され、
前記スライダの前記幅方向の両側縁は、前記スライダが前記軸周りに回転したときに、前記スライダのスライド方向の移動が阻害されないように、前記一対のガイド面のそれぞれに向かって凸となる湾曲面を有し、
前記湾曲面は、前記スライダが軸周りに回転したとしても、前記スライダの前記湾曲面が、前記一対のガイド面に対してガイドされた状態で維持されるように、前記スライダの回転中心となる軸を中心とした円弧面によって構成され
前記スライダは、前記スライド方向の長さが前記幅方向の長さよりも短くなるように構成されている、
ケーブル連結機構。
【請求項2】
前記操作ケーブル連結部は、前記操作ケーブルの一端が収容される操作ケーブル収容凹部と、前記操作ケーブル収容凹部から前記スライド方向の一方側に前記操作ケーブルを導出する操作ケーブル導出口とを有し、
前記第1被操作ケーブル連結部は、前記第1被操作ケーブルの一端が収容される第1被操作ケーブル収容凹部と、前記第1被操作ケーブル収容凹部から前記スライド方向の他方側に前記第1被操作ケーブルを導出する第1被操作ケーブル導出口とを有し、
前記第2被操作ケーブル連結部は、前記第2被操作ケーブルの一端が収容される第2被操作ケーブル収容凹部と、前記第2被操作ケーブル収容凹部から前記スライド方向の他方側に前記第2被操作ケーブルを導出する第2被操作ケーブル導出口とを有し、
前記操作ケーブル導出口、前記第1被操作ケーブル導出口および前記第2被操作ケーブル導出口は、前記スライダが回転したときに、前記スライダと、前記操作ケーブル、前記第1被操作ケーブルおよび前記第2被操作ケーブルとの干渉を抑制するように、前記幅方向に所定の幅で延びている、
請求項1に記載のケーブル連結機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル連結機構に関する。
【背景技術】
【0002】
1本の操作ケーブルの操作力を、2本の被操作ケーブルに伝達することで、2本の被操作ケーブルのそれぞれの操作対象を操作する操作機構が知られている。このような操作機構の一例として、例えば、車両のフード(ボンネットなど)を開放するための、フードのロック解除機構が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなロック解除機構は、操作レバーと、1本の操作ケーブルおよび2本の被操作ケーブルを連結するケーブル連結機構と、2本の被操作ケーブルに接続された2つのロック部材とを備えている。ケーブル連結機構は、1本の操作ケーブルと、2本の被操作ケーブルと、連結装置とを有している。連結装置は、ハウジングと、ハウジング内でスライドするスライダとを有し、スライダには、操作ケーブルおよび2本の被操作ケーブルが接続されている。操作レバーが操作されて、操作ケーブルが引き操作されることによって、操作ケーブルが接続されたスライダは、ハウジング内で一方向にスライドする。スライダが一方向にスライドすると、スライダによって2本の被操作ケーブルが一方向に引き操作される。これにより、2本の被操作ケーブルに接続されたロック部材が、フードのロックを解除する方向に操作され、フードの開放が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平4-95469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば、操作レバーが運転席にある場合には、連結装置から操作対象(ロック部材など)までの2本の被操作ケーブルそれぞれの長さが互いに異なっている場合がある。または、2本の被操作ケーブルの長さが同じであっても、2本の被操作ケーブルは互いに異なる配索経路(湾曲回数や湾曲の曲率が異なる)で配索される場合や、操作ケーブルや被操作ケーブルの製造上のばらつきや操作対象の取付位置のばらつきが生じることもある。このように、2本の被操作ケーブルの配索長さや配索状態が互いに異なると、2本の被操作ケーブルを同期させて操作することが難しくなる。
【0006】
そこで、本発明は、2本の被操作ケーブルを容易に同期させて操作することが可能な、ケーブル連結機構の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のケーブル連結機構は、操作部に直接または間接的に接続される操作ケーブルと、前記操作ケーブルの操作力によって操作される第1被操作ケーブルと、前記操作ケーブルの操作力によって操作される第2被操作ケーブルと、前記操作ケーブルと、前記第1被操作ケーブルおよび前記第2被操作ケーブルとを連結する連結装置とを備え、前記連結装置は、ハウジングと、前記ハウジング内でスライドするスライダとを有し、前記ハウジングは、前記スライダのスライド方向に沿って延び、かつ、前記スライド方向に対して垂直な方向となる幅方向で互いに対向する一対のガイド面を有し、前記スライダは、前記スライド方向の一方側に前記操作ケーブルが延びるように前記操作ケーブルの一端が連結される操作ケーブル連結部と、前記スライド方向の他方側に前記第1被操作ケーブルが延びるように前記第1被操作ケーブルの一端が連結される第1被操作ケーブル連結部と、前記スライド方向の他方側に前記第2被操作ケーブルが延びるように前記第2被操作ケーブルの一端が連結される第2被操作ケーブル連結部とを有し、前記第1被操作ケーブル連結部は、前記操作ケーブル連結部に対して、前記幅方向で一方側に設けられ、前記第2被操作ケーブル連結部は、前記操作ケーブル連結部に対して、前記幅方向で他方側に設けられ、前記スライダは、前記スライド方向および前記幅方向に垂直な軸周りに回転可能に構成され、前記スライダの前記幅方向の両側縁は、前記スライダが前記軸周りに回転したときに、前記スライダのスライド方向の移動が阻害されないように、前記一対のガイド面のそれぞれに向かって凸となる湾曲面を有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明のケーブル連結機構によれば、2本の被操作ケーブルを容易に同期させて操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態のケーブル連結機構が設けられた車両を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態のケーブル連結機構において、操作ケーブルが操作される前のスライダの状態を示す図である。
図3図2に示される状態から、操作ケーブルが操作されて、スライダが回転した状態を示す図である。
図4図3に示される状態から、さらに操作ケーブルが操作されて、スライダがスライド方向に移動した状態を示す図である。
図5図4のV-V線に沿ってハウジングが切断された斜視図である。
図6図4のVI-VI線に沿ってハウジングが切断された斜視図である。
図7A】スライダの変形例を示す図である。
図7B】スライダの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態のケーブル連結機構を説明する。なお、本明細書において、「Aに垂直」およびこれに類する表現は、Aに対して完全に垂直な方向のみを指すのではなく、Aに対して略垂直であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「Bに平行」およびこれに類する表現は、Bに対して完全に平行な方向のみを指すのではなく、Bに対して略平行であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「C形状」およびこれに類する表現は、完全なC形状のみを指すのではなく、見た目にC形状を連想させる形状(略C形状)を含んで指すものとする。
【0011】
図1に示されるように、本実施形態のケーブル連結機構1は、操作部OP1に直接または間接的に接続される操作ケーブル2と、操作ケーブル2の操作力によって操作される第1被操作ケーブル31と、操作ケーブル2の操作力によって操作される第2被操作ケーブル32と、操作ケーブル2と、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32とを連結する連結装置4とを備えている。詳細は後述するが、連結装置4は、図2に示されるように、ハウジング41と、ハウジング41内でスライドするスライダ42とを有している。
【0012】
ケーブル連結機構1は、所定の取付対象において、1本の操作ケーブル2と、2本の被操作ケーブル(本実施形態では、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32。以下、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32をまとめて被操作ケーブル31、32と呼ぶ)とを連結する。ケーブル連結機構1は、操作ケーブル2の操作力によって、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32の両方が操作されるように、操作ケーブル2と、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32とを連結するように構成されている。
【0013】
なお、本実施形態では、ケーブル連結機構1は、図1および図2に示されるように、単一の操作ケーブル2と2本の被操作ケーブル(第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32)とを連結するように構成されている。しかし、ケーブル連結機構には、操作ケーブルが2本以上設けられていてもよいし、被操作ケーブルが3本以上設けられていてもよい。
【0014】
ケーブル連結機構1の用途は、1本の操作ケーブル2の操作力によって、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32が操作されるように構成される用途であれば、特に限定されない。本実施形態では、後述するように、ケーブル連結機構1は、所定の取付対象において、第1被操作ケーブル31と第2被操作ケーブル32とが、互いに異なる長さで配索される、および/または、互いに異なる配索経路で配索されるケーブル操作機構に適用される。
【0015】
より具体的には、ケーブル連結機構1は、図1に示されるように、操作部OP1の操作によって、2つの被操作部OP21、OP22が操作されるケーブル操作機構Mに適用されている。本実施形態では、ケーブル操作機構Mは、ケーブル連結機構1と、操作ケーブル2を操作するために操作可能な操作部OP1と、第1被操作ケーブル31によって操作される第1被操作部OP21と、第2被操作ケーブル32によって操作される第2被操作部OP22とを備えている。より具体的には、ケーブル操作機構Mは、取付対象である車両VのフードHのロックを解除するためのロック解除機構であり、車両Vの運転席に設けられたフードオープナー(操作部OP1)を操作することによって、2つのロック部材(第1被操作部OP21および第2被操作部OP22)のロックが解除されるように構成されている。操作部OP1が操作され、操作ケーブル2が操作されると、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32が操作される。第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32が操作されると、第1被操作部OP21および第2被操作部OP22が同時に操作されることで、フードHの開放が可能となる。なお、ケーブル連結機構は、例えば、2つのロック部材を有するシートのリクライニング機構等の、他のロック解除機構、他のケーブル操作機構に適用されてもよい。また、ケーブル連結機構1の取付対象は、本実施形態では車両Vであるが、車両以外の他の構造であってもよい。
【0016】
操作ケーブル2は、図1に示されるように、操作部OP1および連結装置4に接続される。操作ケーブル2は、操作部OP1が操作されることによって、一方の方向に引き操作される。後述するように、操作ケーブル2に加わった操作力は、スライダ42を介して第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32に伝達される。
【0017】
本実施形態では、操作ケーブル2は、操作部OP1に直接接続されているが、伝動部材等の別部材を介して操作部OP1に間接的に接続されていてもよい。なお、操作部OP1は、レバー等の手動操作部であってもよいし、モータ等、電動で駆動されて操作ケーブル2を電動操作する操作部であってもよい。
【0018】
操作ケーブル2の一端2aは連結装置4に接続されている(図2参照)。具体的には、操作ケーブル2の一端2aは、連結装置4のスライダ42に接続されている。操作ケーブル2の他端は操作部OP1側に接続されている。
【0019】
操作ケーブル2の構造は、操作ケーブル2の操作力が、スライダ42を介して第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32に伝達されるように構成されていれば、特に限定されない。操作ケーブル2は、例えば、公知のコントロールケーブルのインナーケーブルとすることができる。本実施形態では、操作ケーブル2は、図2に示されるように、操作ケーブル2の一端2aに設けられたケーブルエンド(以下、ケーブルエンド2aとも呼ぶ)、操作ケーブル2の他端に設けられたケーブルエンド(図示せず)、および、ケーブル本体2bを有している。
【0020】
本実施形態では、操作ケーブル2は、図2に示されるように、アウターケーシングOC1に収容されており、取付対象(本実施形態では車両V)において、アウターケーシングOC1により、操作部OP1から連結装置4まで所定の配索経路で配索される。アウターケーシングOC1の一端は連結装置4のハウジング41に取り付けられ、他端は操作部OP1側に取り付けられる。
【0021】
操作ケーブル2の一端(ケーブルエンド)2aの形状は、操作ケーブル2の操作力が、スライダ42を介して第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32に伝達されるように構成されていれば、特に限定されない。本実施形態では、操作ケーブル2の一端(ケーブルエンド)2aは、後述するようにスライダ42が所定の軸(軸X)周りに回転したときに、スライダ42に対して相対回転可能となる形状を有している。相対回転可能となる形状は、操作ケーブル2の一端2aの、スライダ42に対する軸X周り方向での相対回転が阻害されない形状であればよく、例えば、球状、後述する厚さ方向D3(図5参照)に中心軸を有する円柱状、多角柱状等とすることができる。また、操作ケーブル2の一端2aは、外周の一部のみに、操作ケーブル2の一端2aの、スライダ42に対する軸X周り方向での相対回転を可能にする曲面や、多角形状の部分が形成されているものであってもよい。なお、スライダ42の後述する操作ケーブル連結部421が、操作ケーブル2の一端2aの相対回転を許容する形状を有している場合は、操作ケーブル2の一端2aの形状は特に限定されない。なお、操作ケーブル2の一端2aは、操作ケーブル2の長さ方向での端部領域を指すものであり、操作ケーブル2の先端のみを指すものでない。したがって、例えば、操作ケーブル2の一端(ケーブルエンド)2aの先にさらにケーブル部分が延びていても構わない。この点は、以下で説明する第1被操作ケーブル31の一端31aおよび第2被操作ケーブル32の一端32aも同様である。
【0022】
第1被操作ケーブル31は、操作ケーブル2の操作力によって操作されるケーブルである。具体的には、図2図4に示されるように、操作ケーブル2が引き操作されたときに、操作ケーブル2の操作力によってスライダ42がスライド方向D1で一方側に移動することにより、第1被操作ケーブル31は、スライダ42によってスライド方向D1で一方側(図2~4における左方向)に引き操作される。これにより、本実施形態では、第1被操作ケーブル31に接続された第1被操作部OP21が操作される。
【0023】
なお、本明細書において、「スライド方向D1」は、スライダ42が移動する方向(図2における左右方向)である。本実施形態では、スライド方向D1は、ハウジング41内で操作ケーブル2が延びる方向と平行な方向となっている。また、「幅方向D2」は、スライダ42のスライド方向D1に垂直な一の方向である。本実施形態では、幅方向D2は、操作ケーブル2の一端2a、第1被操作ケーブル31の一端31a、第2被操作ケーブル32の一端32aが並ぶ方向となっている。また、幅方向D2は、ハウジング41内で第1被操作ケーブル31と第2被操作ケーブル32とが離間する方向となっている。また、「厚さ方向D3」は、スライド方向D1および幅方向D2の両方に垂直な方向である。
【0024】
本実施形態では、図2に示されるように、第1被操作ケーブル31の一端31aは、連結装置4に接続されている。具体的には、第1被操作ケーブル31の一端31aは、連結装置4のスライダ42に接続されている。第1被操作ケーブル31の他端(図示せず)は、第1被操作部OP21側に接続されている。
【0025】
第1被操作ケーブル31の構造は、第1被操作ケーブル31に接続された操作対象(第1被操作部OP21)を操作できるように、操作ケーブル2の操作力が、スライダ42を介して第1被操作ケーブル31に伝達可能に構成されていれば、特に限定されない。第1被操作ケーブル31は、例えば、公知のコントロールケーブルのインナーケーブルとすることができる。本実施形態では、第1被操作ケーブル31は、図2に示されるように、第1被操作ケーブル31の一端31aに設けられたケーブルエンド(以下、ケーブルエンド31aとも呼ぶ)、第1被操作ケーブル31の他端に設けられたケーブルエンド(図示せず)、および、ケーブル本体31bを有している。
【0026】
本実施形態では、第1被操作ケーブル31は、図2に示されるように、アウターケーシングOC2に収容されており、取付対象(本実施形態では車両V)において、アウターケーシングOC2により、連結装置4から第1被操作部OP21まで所定の配索経路で配索される。アウターケーシングOC2の一端は連結装置4のハウジング41に取り付けられ、他端は第1被操作部OP21側に取り付けられる。
【0027】
第1被操作ケーブル31の一端(ケーブルエンド)31aの形状は、操作ケーブル2の操作力が、スライダ42を介して第1被操作ケーブル31に伝達されるように構成されていれば、特に限定されない。本実施形態では、第1被操作ケーブル31の一端(ケーブルエンド)31aは、後述するようにスライダ42が所定の軸(軸X)周りに回転したときに、スライダ42に対して相対回転可能となる形状を有している。相対回転可能となる形状は、第1被操作ケーブル31の一端31aの、スライダ42に対する軸X周り方向の相対回転が阻害されない形状であればよく、例えば、球状、厚さ方向D3に中心軸を有する円柱状、多角柱状等とすることができる。また、第1被操作ケーブル31の一端31aは、外周の一部のみに、第1被操作ケーブル31の一端31aの、スライダ42に対する軸X周り方向での相対回転を可能にする曲面や、多角形状の部分が形成されているものであってもよい。なお、スライダ42の後述する第1被操作ケーブル連結部422が、第1被操作ケーブル31の一端31aの相対回転を許容する形状を有している場合は、第1被操作ケーブル31の一端31aの形状は特に限定されない。
【0028】
第2被操作ケーブル32は、操作ケーブル2の操作力によって操作されるケーブルである。具体的には、図2図4に示されるように、操作ケーブル2が引き操作されたときに、操作ケーブル2の操作力によってスライダ42がスライド方向D1で一方側に移動することにより、第2被操作ケーブル32は、スライダ42によってスライド方向D1で一方側に引き操作される。これにより、本実施形態では、第2被操作ケーブル32に接続された第2被操作部OP22が操作される。
【0029】
本実施形態では、図2に示されるように、第2被操作ケーブル32の一端32aは、連結装置4に接続されている。具体的には、第2被操作ケーブル32の一端32aは、連結装置4のスライダ42に接続されている。第2被操作ケーブル32の他端(図示せず)は、第2被操作部OP22側に接続されている。
【0030】
第2被操作ケーブル32の構造は、第2被操作ケーブル32に接続された操作対象(第2被操作部OP22)を操作できるように、操作ケーブル2の操作力が、スライダ42を介して第2被操作ケーブル32に伝達可能に構成されていれば、特に限定されない。第2被操作ケーブル32は、例えば、公知のコントロールケーブルのインナーケーブルとすることができる。本実施形態では、第2被操作ケーブル32は、図2に示されるように、第2被操作ケーブル32の一端32aに設けられたケーブルエンド(以下、ケーブルエンド32aとも呼ぶ)、第2被操作ケーブル32の他端に設けられたケーブルエンド(図示せず)、および、ケーブル本体32bを有している。
【0031】
本実施形態では、第2被操作ケーブル32は、図2に示されるように、アウターケーシングOC3に収容されており、取付対象(本実施形態では車両V)において、アウターケーシングOC3により、連結装置4から第2被操作部OP22まで所定の配索経路で配索される。アウターケーシングOC3の一端は連結装置4のハウジング41に取り付けられ、他端は第2被操作部OP22側に取り付けられる。なお、本実施形態では、図1に示されるように、第2被操作ケーブル32の長さは、第1被操作ケーブル31の長さと異なり、第2被操作ケーブル32の配索経路は、第1被操作ケーブル31の配索経路と異なる。具体的には、第2被操作ケーブル32の長さは、第1被操作ケーブル31の長さよりも長く、第2被操作ケーブル32は、第1被操作ケーブル31の配索経路とは異なる経路で配索されている。
【0032】
第2被操作ケーブル32の一端(ケーブルエンド)32aの形状は、操作ケーブル2の操作力が、スライダ42を介して第2被操作ケーブル32に伝達されるように構成されていれば、特に限定されない。本実施形態では、第2被操作ケーブル32の一端(ケーブルエンド)32aは、後述するようにスライダ42が所定の軸(軸X)周りに回転したときに、スライダ42に対して相対回転可能となる形状を有している。相対回転可能となる形状は、第2被操作ケーブル32の一端32aの、スライダ42に対する軸X周り方向の相対回転が阻害されない形状であればよく、例えば、球状、厚さ方向D3に中心軸を有する円柱状、多角柱状等とすることができる。また、第2被操作ケーブル32の一端32aは、外周の一部のみに、第2被操作ケーブル32の一端32aの、スライダ42に対する軸X周り方向での相対回転を可能にする曲面や、多角形状の部分が形成されているものであってもよい。なお、スライダ42の後述する第2被操作ケーブル連結部423が、第2被操作ケーブル32の一端32aの相対回転を許容する形状を有している場合は、第2被操作ケーブル32の一端32aの形状は特に限定されない。
【0033】
連結装置4は、図2に示されるように、操作ケーブル2と、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32とをスライダ42を介して連結する。連結装置4は、操作ケーブル2の操作力が第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32に伝達されるように、スライダ42を介して、操作ケーブル2と、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32とを連結する。連結装置4は、図2に示されるように、ハウジング41と、ハウジング41内でスライドするスライダ42とを有している。また、本実施形態では、連結装置4は、連結装置4のハウジング41を取付対象に固定するための固定部43を備えている。なお、固定部43は、取付対象に設けられた被固定部(例えば、車体に設けられた嵌合孔など)に固定される部分である。固定部43の構造は、連結装置4のハウジング41を取付対象に固定することができれば、特に限定されない。固定部43は、例えば、嵌合孔などに圧入して嵌合する嵌合部材であってもよいし、ネジやボルトなどの螺合接続される部材であってもよいし、それ以外の公知の固定手段であってもよい。
【0034】
ハウジング41は、スライダ42を収容し、スライダ42がスライド方向D1に移動できるように、スライダ42をガイドする。本実施形態では、ハウジング41は、図2に示されるように、スライダ42のスライド方向D1に沿って延び、かつ、スライド方向D1に対して垂直な方向となる幅方向D2で互いに対向する一対のガイド面G1、G2を有している。
【0035】
ガイド面G1、G2は、スライダ42がスライド方向D1に移動できるように、スライダ42をガイドする。ガイド面G1、G2は、図2に示されるように、スライダ42の幅方向D2の両側縁(後述する側面427、428)に当接可能に対向している。ガイド面G1、G2は、図2に示されるように、スライダ42のスライド方向D1に沿って延びている。より具体的には、ガイド面G1、G2は、スライド方向D1および厚さ方向D3に延びる面であり、スライド方向D1の位置が変わっても、幅方向D2での距離が一定となるように、互いに平行に延びている。
【0036】
ハウジング41の全体形状は、スライダ42を収容することができ、スライダ42がスライド方向D1に移動できるようにスライダ42をガイドすることができれば、特に限定されない。本実施形態では、ハウジング41は、スライダ42を収容可能な内部空間を有する略矩形の箱状に設けられている。本実施形態では、ハウジング41は、図2に示されるように、互いに離間して設けられた一対の側壁411a、411bと、一対の側壁411a、411bを幅方向D2に繋ぐ底壁412と、底壁412に対向する上壁(図示せず)と、スライド方向D1でハウジング41の両端に設けられた端壁413a、413bとを備えている。
【0037】
一対の側壁411a、411bは、スライド方向D1および厚さ方向D3に延びる壁である。一対の側壁411a、411bは、互いに幅方向D2に対向して設けられている。本実施形態では、一対の側壁411a、411bの内面にガイド面G1、G2が設けられ、スライダ42は、一対の側壁411a、411bにガイドされる。本実施形態では、一対の側壁411a、411bは互いに平行に設けられている。また、一対の側壁411a、411bは、底壁412および上壁に対して垂直に延び、一対の端壁413a、413bに対して垂直に延びている。
【0038】
厚さ方向D3における側壁411a、411bの端部(底壁412とは反対側の端部)には、図2図5および図6に示されるように、スライド方向D1に沿って、所定の幅で幅方向D2において内側に突出する離脱防止部Pが設けられている。離脱防止部Pは、厚さ方向D3で、スライダ42の幅方向D2の両端部と対向することによって、ハウジング41内に収容されたスライダ42がハウジング41から離脱することを抑制する。離脱防止部Pは、本実施形態では、側壁411a、411bの長さ方向(スライド方向D1)の一部に設けられたスライド方向D1に細長く延びる板状片である。側壁411a、411bのうち、離脱防止部Pが設けられていない非形成領域(図2において、側壁411a、411bの右側の領域)は、スライダ42のスライド方向D1の長さよりも長くなるように構成されている。この場合、スライダ42を、離脱防止部Pが設けられていない非形成領域からハウジング41内に容易に収容させることができる。スライダ42がハウジング41内に収容された後、アウターケーシングOC2、OC3が端壁413bに取り付けられると、図2に示されるように、アウターケーシングOC2、OC3の端末部材E2、E3が端壁413a、413bの内面から突出するように取り付けられる。本実施形態では、図2に示されるように、端末部材E2、E3の先端と、離脱防止部Pのスライド方向D1で他方側の端部までの間のスライド方向D1の距離は、スライダ42のスライド方向D1の長さよりも短くなっており、この場合、スライダ42が非形成領域から離脱することが抑制される。
【0039】
本実施形態では、図2に示されるように、側壁411bに固定部43が設けられている。これにより、ハウジング41の側壁411bの部分が取付対象に固定され、連結装置4が取付対象の所定の位置に固定される。なお、固定部43は、もう一方の側壁411a、底壁412、端壁413a、413bなど、他の部位に設けられていてもよい。
【0040】
底壁412は、スライド方向D1および幅方向D2に延びる壁である。底壁412は、本実施形態では、一対の側壁411a、411bを幅方向D2に繋ぎ、一対の端壁413a、413bをスライド方向D3に繋いでいる。底壁412は、スライダ42の厚さ方向D3の一方の面(以下、底面とも呼ぶ)に対向している。底壁412は、スライダ42の底面が摺動する摺動面を有している。本実施形態では、底壁412は、スライダ42との間の接触面積を減らし、摺動抵抗を低減するために、スライド方向D1に延びる凹部を有している。
【0041】
図示しない上壁は、底壁412に対向して設けられる壁である。上壁は、ハウジング41の蓋部となり、スライダ42が収容された状態の、一方が開口したハウジング41(図2参照)を封鎖するように構成される。上壁は、例えば、側壁411a、411bまたは端壁413a、413bと係合することで固定されてもよいし、側壁411a、411b、または端壁413a、413bにヒンジによって接続されていてもよい。
【0042】
一対の端壁413a、413bは、幅方向D2および厚さ方向D3に延びる壁である。一対の端壁413a、413bは、互いにスライド方向D1に対向して設けられている。一方の端壁413aは、操作ケーブル2がハウジング41の外部から内部へと導入されるように構成されている。具体的には、一方の端壁413aは、図2に示されるように、操作ケーブル2が挿通されるアウターケーシングOC1の端末部材E1が固定される端末固定部F1を有している。端末固定部F1は、例えば、端壁413aをスライド方向D1に貫通した開口、溝とすることができる。また、他方の端壁413bは、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32がハウジング41の外部から内部へと導入されるように構成されている。具体的には、他方の端壁413bは、図2に示されるように、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32が挿通されるアウターケーシングOC2、OC3の端末部材E2、E3がそれぞれ固定される端末固定部F2、F3を有している。端末固定部F2、F3は、例えば、端壁413bをスライド方向D1に貫通した開口、溝とすることができる。なお、上述したように、端末部材E1、E2、E3は、端壁413aまたは端壁413bの端末固定部F1、F2、F3にそれぞれ固定されたときに、端壁413aまたは端壁413bの内面からスライド方向D1に突出するように固定される。
【0043】
スライダ42は、ハウジング41内でスライドするように構成された移動部材である。スライダ42には、図2に示されるように、操作ケーブル2、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32が接続される。スライダ42は、操作ケーブル2が操作されることによって、スライド方向D1で一方側(図2において左方向)に移動する。スライド方向D1で一方側へのスライダ42の移動によって、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32が、スライド方向D2で一方側に引き操作される。これにより、第1被操作ケーブル31に直接または間接的に接続された第1被操作部OP21、および、第2被操作ケーブル32に直接または間接的に接続された第2被操作部OP22が操作される。また、スライダ42は、詳細は後述するが、スライド方向D1および幅方向D2に垂直な軸X(図2参照)周りに回転可能に構成されている。これにより、スライダ42は、スライド方向D1に移動するだけでなく、軸X周りに回転することができる。したがって、後述するように、第1被操作ケーブル31と、第2被操作ケーブル32とを、容易に同期させて操作することが可能となる。
【0044】
スライダ42は、図2に示されるように、スライド方向D1の一方側に操作ケーブル2が延びるように操作ケーブル2の一端2aが連結される操作ケーブル連結部421と、スライド方向D1の他方側に第1被操作ケーブル31が延びるように第1被操作ケーブル31の一端31aが連結される第1被操作ケーブル連結部422と、スライド方向D1の他方側に第2被操作ケーブル32が延びるように第2被操作ケーブル32の一端32aが連結される第2被操作ケーブル連結部423とを有している。ここで、「スライド方向D1の一方側」は、ハウジング41内でのスライダ42のスライド方向D1のうち、操作ケーブル2が操作部OP1に向かって引き操作されたときに、スライダ42が移動する方向(図2図4における左方向)である。また、「スライド方向D1の他方側」は、ハウジング41内でのスライダ42のスライド方向D1のうち、スライド方向D1の一方側の反対方向をいう。具体的には、操作部OP1による操作ケーブル2の引き操作が解除され、例えば、第1被操作部OP21および第2被操作部OP22に設けられたバネ等の付勢部材によって、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32が、図4に示される状態から図2または図3に示される状態に戻るように引き操作されたときに、スライダ42が移動する方向(図2図4における右方向)である。
【0045】
スライダ42の全体形状は、スライダ42がスライド方向D1に移動し、軸X周りに回転することができれば、特に限定されない。本実施形態では、スライダ42は、図2に示されるように、スライド方向D1の一方側の端面となる前面424と、スライド方向D1の他方側の端面となる後面425と、ハウジング41の底壁412に対向する底面と、スライダ42の底面と反対側の面となる上面426と、ハウジング41の一対のガイド面G1、G2に対向し、前面424および後面425をスライド方向D1に繋ぐ側面(幅方向D2の側縁)427、428を有している。本実施形態では、スライダ42の前面424および後面425は、スライド方向D1に垂直な平面によって構成されている。また、底面および上面426は、ハウジング41の底壁412および上壁に対して平行な平面によって構成されている。また、側面427および側面428は、後述するように、湾曲面として構成されている。
【0046】
本実施形態では、図2に示されるように、スライダ42は、スライド方向D1の長さが幅方向D2の長さよりも短くなるように構成されている。スライダ42が幅方向D2に細長く、スライド方向D1に短い構造を有していることにより、スライド方向D1に長い構造を有しているスライダ(例えば、スライド方向D1の長さが幅方向D2の長さよりも長いスライダ)と比較して、限られたスライド方向D1のスペースを有するハウジング41内において、スライダ42のスライド方向D1のストローク(図2における左右方向での移動可能な長さ)を長くすることができる。なお、本実施形態では、スライダ42のスライド方向D1の長さは、図2に示される、スライダ42に操作ケーブル2から力が加わっていない初期状態(スライダ42が回転する前の状態)において、スライダ42の前面424から後面425までのスライド方向D1の距離をいう。また、本実施形態では、スライダ42の幅方向D2の長さは、図2に示される、スライダ42に操作ケーブル2から力が加わっていない初期状態(スライダ42が回転する前の状態)において、幅方向D2で側面427の最も外側の部分から、側面428の最も外側の部分までの幅方向D2の距離をいう。
【0047】
スライダ42の操作ケーブル連結部421は、操作ケーブル2の一端(ケーブルエンド)2aが連結される部位である。操作ケーブル連結部421は、操作ケーブル2がスライド方向D1で一方側に操作されたときに、操作ケーブル2の一端2aとスライド方向D1で係合して、操作ケーブル2に加わった操作力をスライダ42に伝達し、スライダ42がスライド方向D1で一方側に移動することが可能となる。
【0048】
操作ケーブル連結部421の形状および構造は、操作ケーブル2が操作された際に、スライダ42がスライド方向D1に移動し、軸X周りに回転することができるように構成されていれば、特に限定されない。本実施形態では、操作ケーブル連結部421は、スライダ42が軸X周りに回転したときに、操作ケーブル2の一端2aが、操作ケーブル連結部421に対して相対回転(スライダ42が操作ケーブル2の一端2aに対して回転)できるように構成されている。この場合、後述するように、スライダ42が軸X周りに回転したときに、操作ケーブル2の一端2aがスライダ42と同じ方向に回転して、操作ケーブル2の一端2aの近傍のケーブル本体2bに曲げ変形が生じることが抑制される。したがって、ケーブル本体2bの繰り返しの曲げ変形によるケーブル本体2bの破損が抑制される。本実施形態では、図2に示されるように、操作ケーブル連結部421のうち、操作ケーブル2が引き操作されたときに、操作ケーブル2のケーブルエンド2aと接触した状態で対向する面が湾曲している。より具体的には、操作ケーブル連結部421は、円弧面を有する操作ケーブル2のケーブルエンド2aに対向する円弧面を有している。しかし、操作ケーブル連結部421は、操作ケーブル2が操作された際に、スライダ42がスライド方向D1に移動し、軸X周りに回転することができるように構成されていれば、円弧面以外の曲面や、多角形状に形成されていてもよい。
【0049】
本実施形態では、操作ケーブル連結部421は、図2および図6に示されるように、操作ケーブル2の一端2aが収容される操作ケーブル収容凹部421aと、操作ケーブル収容凹部421aからスライド方向D1の一方側に操作ケーブル2を導出する操作ケーブル導出口421bとを有している。
【0050】
操作ケーブル収容凹部421aは、操作ケーブル2の一端(ケーブルエンド)2aが配置されて、操作ケーブル2の一端2aとスライド方向D1に係合する部位である。操作ケーブル収容凹部421aの形状および構造は特に限定されない。操作ケーブル収容凹部421aは、操作ケーブル2の一端2aのスライダ42への取り付けを容易にするために、図2および変形例である図7Aに示されるように、操作ケーブル2の一端2aのスライド方向D1の長さよりも長くなるように、スライド方向D1に細長く形成されている。なお、他の変形例である図7Bに示されるように、操作ケーブル収容凹部421aは、操作ケーブルの一端(例えば、図7Bでは、操作ケーブル収容凹部421aに球状のケーブルエンドが収容される)と実質的に同じスライド方向D1の長さを有していてもよい。操作ケーブル収容凹部421aは、厚さ方向D3で見たときに、例えば、円形、長円形、楕円形状、これらの形状の一部を有する形状とすることができる。なお、操作ケーブル2の一端2aおよび操作ケーブル収容凹部421aの少なくとも一方(好ましくは両方)は、スライダ42が軸X周りに回転したときに、操作ケーブル2の一端2aが、操作ケーブル収容凹部421aに対して相対回転できるように構成することができる。本実施形態では、操作ケーブル2の一端2aおよび操作ケーブル収容凹部421aは共に、スライド方向D1で互いに対向する部分に円弧面を有している。なお、操作ケーブル2の一端2aが、例えば、球状に形成されている場合、操作ケーブル収容凹部421aは、厚さ方向D3で見たときに、四角形状であってもよい。また、例えば、操作ケーブル収容凹部421aが、例えば円形など、円弧面を有している場合、操作ケーブル2の一端2aは、多角柱形状であってもよい。
【0051】
操作ケーブル導出口421bは、操作ケーブル収容凹部421aからスライダ42の外部へと操作ケーブル2を導出する部位である。本実施形態では、図2図4および図6に示されるように、操作ケーブル導出口421bは、スライダ42が回転したときに、スライダ42と、操作ケーブル2との干渉を抑制するように、幅方向D2に所定の幅で延びている。この場合、図3図4および図6に示されるように、スライダ42が軸X周りに回転したときに、操作ケーブル2の一端2a近傍の部位(ケーブル本体2b)がスライダ42(操作ケーブル導出口421bの内面)と接触して折り曲げられることが抑制され、操作ケーブル2の折損を抑制することができる。
【0052】
具体的には、本実施形態では、操作ケーブル導出口421bは、図2図4および図6に示されるように、操作ケーブル収容凹部421a側となるスライド方向D1で他方側の開口端と、スライダ42の、スライド方向D1で一方側の開口端(前面424における開口部)との間で、スライド方向D1で一方側に向かうにつれて、幅方向D2の開口幅が広くなるように構成された内部空洞を有している。より具体的には、操作ケーブル導出口421bの内部空洞は、スライド方向D1で一方側に向かうにつれて、幅方向D2の開口幅が徐々に広くなる扇状に形成されている。なお、本実施形態では、スライダ42の厚さ方向D3の一方の面(本実施形態では上面426)には、操作ケーブル導出口421bの内部空洞へと繋がり、ケーブル本体2bの径方向の幅よりもわずかに大きい幅を有する、スリットSLが設けられている。操作ケーブル2がスライダ42に厚さ方向D3で取り付けられる際に、このスリットSLを経由して、操作ケーブル導出口421bに、ケーブル本体2bが導入される。
【0053】
スライダ42の第1被操作ケーブル連結部422は、第1被操作ケーブル31の一端(ケーブルエンド)31aが連結される部位である。第1被操作ケーブル連結部422は、操作ケーブル2がスライド方向D1で一方側に操作されて、スライダ42がスライド方向D1で一方側に移動したときに、第1被操作ケーブル31の一端31aとスライド方向D1で係合して、スライダ42に加わった操作ケーブル2への操作力を、スライダ42を介して第1被操作ケーブル31に伝達する。
【0054】
第1被操作ケーブル連結部422の形状および構造は、スライダ42に加わった操作ケーブル2の操作力を、スライダ42を介して第1被操作ケーブル31に伝達することができ、スライダ42が軸X周りに回転することを阻害しなければ、特に限定されない。本実施形態では、第1被操作ケーブル連結部422は、スライダ42が軸X周りに回転したときに、第1被操作ケーブル31の一端31aが、第1被操作ケーブル連結部422に対して相対回転(スライダ42が第1被操作ケーブル31の一端31aに対して回転)できるように構成されている。この場合、後述するように、スライダ42が軸X周りに回転したときに、第1被操作ケーブル31の一端31aがスライダ42と同じ方向に回転して、第1被操作ケーブル31の一端31a近傍のケーブル本体31bに曲げ変形が生じることが抑制される。
【0055】
本実施形態では、第1被操作ケーブル連結部422は、図2および図5に示されるように、第1被操作ケーブル31の一端31aが収容される第1被操作ケーブル収容凹部422aと、第1被操作ケーブル収容凹部422aからスライド方向D1の他方側に第1被操作ケーブル31を導出する第1被操作ケーブル導出口422bとを有している。
【0056】
第1被操作ケーブル収容凹部422aは、第1被操作ケーブル31の一端(ケーブルエンド)31aが配置されて、第1被操作ケーブル31の一端31aとスライド方向D1に係合する部位である。第1被操作ケーブル収容凹部422aの形状および構造は特に限定されない。第1被操作ケーブル収容凹部422aのスライド方向D1の長さは、本実施形態では、図2に示されるように、実質的に第1被操作ケーブル31の一端31aのスライド方向D1の長さと同程度の長さ(第1被操作ケーブル31の一端31aのスライド方向D1の長さよりもわずかに長い)とされている。しかし、第1被操作ケーブル収容凹部422aのスライド方向D1の長さは、第1被操作ケーブル31の一端31aのスライダ42への取り付けを容易にするために、第1被操作ケーブル31の一端31aのスライド方向D1の長さよりも長くなるように、スライド方向D1に細長く形成されていてもよい。なお、本実施形態では、第1被操作ケーブル収容凹部422aは、図2図4に示されるように、厚さ方向D3で見たときに矩形状に形成されているが、例えば、変形例である図7Aに示されるように、円形等、他の形状に形成されていてもよい。
【0057】
なお、第1被操作ケーブル31の一端31aおよび第1被操作ケーブル収容凹部422aの少なくとも一方(好ましくは両方)は、スライダ42が軸X周りに回転したときに、第1被操作ケーブル31の一端31aが、第1被操作ケーブル収容凹部422aに対して相対回転できるように構成されていればよい。本実施形態では、第1被操作ケーブル31の一端31aは、スライド方向D1で第1被操作ケーブル収容凹部422aと係合する部位に円弧面が設けられ、第1被操作ケーブル収容凹部422aは厚さ方向D3で見たときに矩形状に形成されている。しかし、第1被操作ケーブル31の一端31aおよび第1被操作ケーブル収容凹部422aは共に、変形例である図7Aに示されるように、スライド方向D1で互いに対向する部分に円弧面を有するように構成されていてもよい。また、例えば、第1被操作ケーブル収容凹部422aが、例えば円形など、円弧面を有している場合、第1被操作ケーブル31の一端31aは、多角柱形状であってもよい。
【0058】
第1被操作ケーブル導出口422bは、第1被操作ケーブル収容凹部422aからスライダ42の外部へと第1被操作ケーブル31を導出する部位である。本実施形態では、図2図5に示されるように、第1被操作ケーブル導出口422bは、スライダ42が回転したときに、スライダ42と、第1被操作ケーブル31との干渉を抑制するように、幅方向D2に所定の幅で延びている。この場合、図3図5に示されるように、スライダ42が軸X周りに回転したときに、第1被操作ケーブル31の一端31a近傍の部位(ケーブル本体31b)がスライダ42(第1被操作ケーブル導出口422bの内面)と接触して折り曲げられることが抑制され、第1被操作ケーブル31の折損を抑制することができる。
【0059】
具体的には、本実施形態では、第1被操作ケーブル導出口422bは、図2図5に示されるように、第1被操作ケーブル収容凹部422a側となるスライド方向D1で一方側の開口端と、スライダ42の、スライド方向D1で他方側の開口端(後面425における開口部)との間で、スライド方向D1で他方側に向かうにつれて、幅方向D2の開口幅が広くなるように構成された内部空洞を有している。より具体的には、第1被操作ケーブル導出口422bの内部空洞は、スライド方向D1で他方側に向かうにつれて、幅方向D2の開口幅が徐々に広くなる扇状に形成されている。なお、本実施形態では、スライダ42の厚さ方向D3の一方の面(本実施形態では上面426)には、第1被操作ケーブル導出口422bの内部空洞へと繋がり、ケーブル本体31bの径方向の幅よりもわずかに大きい幅を有する、スリットSLが設けられている。第1被操作ケーブル31がスライダ42に厚さ方向D3で取り付けられる際に、このスリットSLを経由して、第1被操作ケーブル導出口422bに、ケーブル本体31bが導入される。
【0060】
第2被操作ケーブル連結部423は、第1被操作ケーブル連結部422と基本的に同様の構造を有しているため、詳細な説明は省略する。第1被操作ケーブル連結部422に関して説明した事項は、同様に第2被操作ケーブル連結部423に適用することができる。なお、本実施形態では、設けられる部位を除き、第1被操作ケーブル連結部422と第2被操作ケーブル連結部423とは同じ特徴を有しているが、第1被操作ケーブル連結部422と第2被操作ケーブル連結部423とは互いに異なる形状および構造を有していても構わない。
【0061】
第2被操作ケーブル連結部423は、第2被操作ケーブル32の一端(ケーブルエンド)32aが連結される部位である。第2被操作ケーブル連結部423は、操作ケーブル2がスライド方向D1で一方側に操作されて、スライダ42がスライド方向D1で一方側に移動したときに、第2被操作ケーブル32の一端32aとスライド方向D1で係合して、スライダ42に加わった操作ケーブル2への操作力を、スライダ42を介して第2被操作ケーブル32に伝達する。
【0062】
本実施形態では、第2被操作ケーブル連結部423は、図2および図5に示されるように、第1被操作ケーブル連結部422と同様に、第2被操作ケーブル32の一端32aが収容される第2被操作ケーブル収容凹部423aと、第2被操作ケーブル収容凹部423aからスライド方向D1の他方側に第2被操作ケーブル32を導出する第2被操作ケーブル導出口423bとを有している。また、第2被操作ケーブル導出口423bは、図2図5に示されるように、スライダ42が回転したときに、スライダ42と、第2被操作ケーブル32との干渉を抑制するように、幅方向D2に所定の幅で延びている。
【0063】
図2に示されるように、第1被操作ケーブル連結部422は、操作ケーブル連結部421に対して、幅方向D2で一方側に設けられ、第2被操作ケーブル連結部423は、操作ケーブル連結部421に対して、幅方向D2で他方側に設けられている。すなわち、操作ケーブル連結部421の幅方向D2での位置が、第1被操作ケーブル連結部422の幅方向D2での位置と、第2被操作ケーブル連結部423の幅方向D2での位置との間となっている。ここで、「第1被操作ケーブル連結部422は、操作ケーブル連結部421に対して、幅方向D2で一方側に設けられ」とは、スライド方向D1および厚さ方向D3の位置に関係なく、第1被操作ケーブル連結部422(第1被操作ケーブル連結部422に係合する第1被操作ケーブル31の一端31a)が、スライダ42において、操作ケーブル連結部421(操作ケーブル連結部421に係合する操作ケーブル2の一端2a)よりも幅方向D2で一方側(ガイド面G1に近い位置)に配置されていることをいう。また、「第2被操作ケーブル連結部423は、操作ケーブル連結部421に対して、幅方向D2で他方側に設けられ」とは、スライド方向D1および厚さ方向D3の位置に関係なく、第2被操作ケーブル連結部423(第2被操作ケーブル連結部423に係合する第2被操作ケーブル32の一端32a)が、スライダ42において、操作ケーブル連結部421(操作ケーブル連結部421に係合する操作ケーブル2の一端2a)よりも幅方向D2で他方側(ガイド面G2に近い位置)に配置されていることをいう。なお、第1被操作ケーブル連結部422(第1被操作ケーブル連結部422に係合する第1被操作ケーブル31の一端31a)および第2被操作ケーブル連結部423(第2被操作ケーブル連結部423に係合する第2被操作ケーブル32の一端32a)の、操作ケーブル連結部421(操作ケーブル連結部421に係合する操作ケーブル2の一端2a)に対するスライド方向D1および厚さ方向D3の位置は、スライダ42がスライド方向D1に移動することができ、軸X周りに回転することができれば、特に限定されない。例えば、第1被操作ケーブル連結部422および第2被操作ケーブル連結部423は、操作ケーブル連結部421に対して、スライド方向D1でずれた配置に設けられていてもよいし、厚さ方向でずれた位置に設けられていてもよい。
【0064】
本実施形態では、図2に示されるように、操作ケーブル連結部421、第1被操作ケーブル連結部422および第2被操作ケーブル連結部423は、スライダ42に連結された操作ケーブル2の一端2a、第1被操作ケーブル31の一端31aおよび第2被操作ケーブル32の一端32aが、幅方向D2に並んで配列されるように構成されている。ここで、「幅方向D2に並んで配列」とは、操作ケーブル連結部421、第1被操作ケーブル連結部422および第2被操作ケーブル連結部423のそれぞれに連結された、操作ケーブル2の一端2aの一部、第1被操作ケーブル31の一端31aの一部および第2被操作ケーブル32の一端32aの一部が、スライド方向D1で所定の長さオーバーラップするように、幅方向D2に並んで設けられている状態を指す。この場合、例えば、第1被操作ケーブル連結部および第2被操作ケーブル連結部が、操作ケーブル連結部に対して、スライド方向D1でオーバーラップしないようにずれて配置されている場合と比較して、スライダ42をスライド方向D1でコンパクトに構成することができる。
【0065】
本実施形態では、スライダ42は、上述したように、スライド方向D1および幅方向D2に垂直な軸X周りに回転可能に構成されている。これにより、操作ケーブル2がスライド方向D1で一方向に操作されたときに、第1被操作ケーブル31と第2被操作ケーブル32とが、互いに異なる長さ、および/または、互いに異なる配索経路で配索されている場合であっても、2本の被操作ケーブル31、32を容易に同期させて操作することが可能となる。具体的には、スライダ42が軸X周りに回転するように構成されているので、図2および図3に示されるように、操作ケーブル2が引き操作されたときに、第1被操作ケーブル31に生じる遊び(第1被操作ケーブル31によって操作される対象(第1被操作部OP21)に力が伝達されるまでに除去される遊び)の量と、第2被操作ケーブル32に生じる遊び(第2被操作ケーブル32によって操作される対象(第2被操作部OP22)に力が伝達されるまでに除去される遊び)の量とが異なっている場合に、両方の被操作ケーブルの遊びが無くなるまでスライダ42が回転する(またはスライドおよび回転する)。これにより、2本の被操作ケーブル31、32が、互いに異なる長さ、および/または、互いに異なる配索経路で配索されることに起因して、互いに異なる遊びの量を有している場合であっても、スライダ42が回転することによって両方の被操作ケーブル31、32の遊びが除去された状態で、スライダ42がスライド方向D1にスライドする。したがって、第1被操作ケーブル31と第2被操作ケーブル32とを容易に同期させて操作することができる。これにより、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32によって、第1被操作ケーブル31の操作対象(第1被操作部OP21)と第2被操作ケーブル32の操作対象(第2被操作部OP22)とは、実質的に同時に操作され得る。
【0066】
なお、軸Xは、スライダ42の回転軸であり、軸Xの位置は、スライド方向D1および幅方向D2に垂直な軸(厚さ方向D3に延びる軸)であれば、特に限定されない。本実施形態では、軸Xは、操作ケーブル連結部421に連結された操作ケーブル2のケーブルエンド2aの位置に位置するように構成され、スライダ42が操作ケーブル2のケーブルエンド2a周りに回転するように構成されている。しかし、例えば、スライダ42に、ハウジング41に対してスライド方向D1に案内される軸部材(厚さ方向D3に延びる軸部材であり、この軸部材が軸Xとなる)を別途設けて、その軸部材を中心にスライダ42が回転するように構成されていてもよい。なお、この場合、当該軸部材は、例えば、ハウジング41の底壁412に設けられたスライド方向D1に延びる案内溝などによってスライド方向D1に案内され得る。また、操作ケーブル2の一端2aは、軸Xに対してスライド方向D1または幅方向D2にずれて配置されていてもよい。
【0067】
本実施形態では、図2に示されるように、軸Xは、操作ケーブル連結部421に連結された操作ケーブル2の一端2a上に位置し、スライダ42が、操作ケーブル2の一端2aを中心として回転するように構成されている。この場合、スライダ42の回転中心が操作ケーブル2の一端2a(軸X)となるので、操作ケーブル2が引き操作されたときにスライダ42にスライド方向D1に力が加わっても、そのスライド方向D1に加わる力によってスライダ42の回転が阻害されにくい。したがって、スライダ42の回転動作を円滑にすることができる。より具体的には、操作ケーブル2のケーブルエンド2aは、球状または厚さ方向D3に延びる円筒状であり、厚さ方向D3で見たときのケーブルエンド2aの円の中心が軸Xを構成する。また、操作ケーブル収容凹部421aの、ケーブルエンド2aに対向する部分は、ケーブルエンド2aの円弧面の曲率に対応した曲率を有する円弧面を有している。この場合、ケーブルエンド2aの中心となる軸X周りに、スライダ42がケーブルエンド2aに対してより円滑に相対回転する。
【0068】
また、本実施形態では、スライダ42の幅方向D2の両側縁(側面427、428)は、図2図4に示されるように、スライダ42が軸X周りに回転したときに、スライダ42のスライド方向D1の移動が阻害されないように、一対のガイド面G1、G2のそれぞれに向かって凸となる湾曲面C1、C2を有している。ここで、「スライダ42が軸X周りに回転したときに、スライダ42のスライド方向D1の移動が阻害されないように」とは、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32の遊びを除去するためのスライダ42の回転が阻害されず、スライダ42が回転したときに、スライダ42の幅方向D2の両側縁がガイド面G1、G2に引っ掛かることなく、スライダ42が継続してスライド方向D1に移動することを意味している。本実施形態では、湾曲面C1、C2は、スライダ42の軸X周りの回転の前後で、幅方向D2の一方の端部から他方の端部までの距離が、一対のガイド面G1、G2との距離以下となるように湾曲していることが好ましい。湾曲面C1、C2の形状や曲率は、スライダ42が軸X周りに回転したときに、スライダ42のスライド方向D1の移動が阻害されないように湾曲していれば、特に限定されない。湾曲面C1、C2は、後述するように円弧面であってもよいし、楕円弧の一部であってもよいし、湾曲面C1、C2の延びる方向に沿って曲率が変化してもよい。
【0069】
スライダ42の幅方向D2の両側縁に湾曲面C1、C2が設けられていることによって、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32の遊びを除去するために、スライダ42が軸X周りに回転したとしても、スライダ42の湾曲面C1、C2が、一対のガイド面G1、G2に対してガイドされた状態が維持されやすくなる。したがって、スライダ42が回転した後も、安定してスライダ42はスライド方向D1に移動することができる。
【0070】
本実施形態では、湾曲面C1、C2は、スライダ42の回転中心となる軸Xを中心とした円弧面によって構成されている。この場合、スライダ42が回転しても、スライダ42の幅方向D2の一端から他端までの距離は一定となる。したがって、スライダ42の回転角度によらずに、スライダ42の湾曲面C1、C2とハウジング41のガイド面G1、G2との間の相対位置が変化しにくい。したがって、スライダ42の回転角度が大きくても、小さくても、スライダ42の湾曲面C1、C2は、ガイド面G1、G2に対するガイドが同様に維持されて、スライダ42をスライド方向D1に安定して移動させることができる。
【0071】
円弧面として構成された湾曲面C1、C2は、スライダ42の回転中心となる軸Xから湾曲面C1、C2までの半径が一定となるように構成されている。これにより、スライダ42の回転の前後で、幅方向D2の一端から他端までの距離が変化しないようになっている。ガイド面G1、G2の幅方向D2の離間距離は、軸Xを中心とした円弧である湾曲面C1、C2の直径に対応した距離とされている。なお、「対応した距離」は、円弧である湾曲面C1、C2の直径とガイド面G1、G2との離間距離とがほぼ同じであるか、または湾曲面C1、C2とガイド面G1、G2との間に、スライダ42の取付や摺動の円滑性を確保するためのわずかなクリアランスがあることをいう。このクリアランスの数値は、当業者に明らかであり、当業者によって適宜変更可能であるので、特に限定されない。
【0072】
次に、本実施形態のケーブル連結機構1が車両VのフードHのロックを解除するためのケーブル操作機構Mに適用された例を用いて、ケーブル連結機構1の作用効果を説明する。なお、以下の説明はあくまで一例であり、本発明のケーブル連結機構は、以下の説明によって限定されるものではない。
【0073】
図1に示されるように、ケーブル操作機構Mは、車両Vの運転席に設けられた操作部OP1(フードオープナー)と、操作部OP1に接続された操作ケーブル2と、連結装置4と、第1被操作ケーブル31と、第2被操作ケーブル32と、第1被操作ケーブル31に接続された第1被操作部OP21と、第2被操作ケーブル32に接続された第2被操作部OP22とを備えている。第1被操作部OP21および第2被操作部OP22は、フードHを車体にロックするためのロック部材である。第1被操作部OP21および第2被操作部OP22は、操作部OP1が操作されたときの操作ケーブル2の引き操作により、連結装置4のスライダ42を介して、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32が引き操作されることによって操作される。ロック部材である、第1被操作部OP21および第2被操作部OP22と、フードHの被ロック部材との間の係合が解除され、フードHを車体に対して開放することができる。このように取付対象(車両V)の2か所に第1被操作部OP21および第2被操作部OP22が別々に設けられている場合、図1に示されるように、第1被操作ケーブル31の長さと、第2被操作ケーブル32との長さとは互いに異なり、配索経路も異なる。このような場合、長い方の第2被操作ケーブル32の、アウターケーシングOC2内での遊びの量は、短い方の第1被操作ケーブル31の、アウターケーシングOC3内での遊びの量よりも多くなる。したがって、本実施形態のケーブル連結機構1が無い場合、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32の連結装置4側の端部(一端31a、32a)が同時に引っ張られると、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32の遊びは同時に除去されず、短い方の第1被操作ケーブル31によって第1被操作部OP21が操作され、その後遅れて第2被操作ケーブル32によって第2被操作部OP22が操作されてしまう。このように、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32が同期して操作されない場合、例えば、第1被操作部OP21が操作限度まで操作されてそれ以上第1被操作部OP21が動けない状態(スライダおよび第1被操作ケーブル31が動けない状態)となると、操作途中の第2被操作部OP22および第2被操作ケーブル32もそれ以上操作できなくなる。その場合、第2被操作部OP22におけるロック解除ができなくなったり、ロック部材である第1被操作部OP21または第2被操作部OP22に無理な力が加わって、部材の破損の原因ともなり得る。
【0074】
本実施形態では、連結装置4に設けられたスライダ42が軸X周りに回転可能となっていることによって、上述した第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32の遊びを除去した状態で、同期して操作することができる。以下、この点について詳細に説明する。
【0075】
図2は、操作ケーブル2が操作される前のスライダ42の状態を示している。この状態から、操作部OP1が操作されて操作ケーブル2が引き操作されると、スライダ42は、操作ケーブル2からスライド方向D1で一方側(図2における左側)に力を受ける。スライダ42は、第1被操作ケーブル31の遊びと第2被操作ケーブル32の両方の遊びがほぼ同じ量取れるまでは、スライド方向D1で一方側にほぼ回転することなく移動する。短い方の第1被操作ケーブル31の遊びが除去され、長い方の第2被操作ケーブル32の遊びが残っている場合、さらに操作ケーブル2がスライド方向D1で一方側に引き操作されると、スライダ42は図3に示されるように、軸X周りに回転する。このとき、遊びが除去された第1被操作ケーブル31は、第1被操作部OP21に力を伝達することが可能となっており、第1被操作ケーブル31は張力がかかった状態となっている。一方、第2被操作ケーブル32にはまだ遊びが残っている。そのため、操作ケーブル2によってスライダ42にスライド方向D1で一方側に力が加わり、操作ケーブル2のケーブルエンド2aがわずかにスライド方向D1で一方側(図2および図3における左側)に移動したときに、第1被操作ケーブル31のケーブルエンド31aはスライド方向D1で一方側にほぼ移動しない。一方、第2被操作ケーブル32のケーブルエンド32aは、第2被操作ケーブル32に遊びがある分、スライダ42が軸X周りに回転することで、スライド方向D1で一方側に移動する。このように、図3に示されるように、スライダ42が軸X周りに回転して、第2被操作ケーブル32のケーブルエンド32aが、第1被操作ケーブル31のケーブルエンド31aに対してスライド方向D1で相対移動することによって、第2被操作ケーブル32の遊びが除去される。これにより、第1被操作部OP1と第2操作部OP2とが操作される前に、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32の遊びが共に除去される。
【0076】
図3に示されるように、スライダ42は、幅方向D2に所定の幅で延びている操作ケーブル導出口421b、第1被操作ケーブル導出口422b、第2被操作ケーブル導出口423bを有している。これにより、スライダ42が軸X周りに回転したとき、操作ケーブル2のケーブルエンド2aの近傍の部位、第1被操作ケーブル31のケーブルエンド31aの近傍の部位、および、第2被操作ケーブル32のケーブルエンド32aの近傍の部位が、スライダ42の一部と接触して折り曲げられることが抑制されている。これにより、操作ケーブル2、第1被操作ケーブル31、および、第2被操作ケーブル32は、ハウジング41内でスライダ42の回転の前後でスライド方向D1に沿って直線状態で維持され、操作ケーブル2、第1被操作ケーブル31、および、第2被操作ケーブル32の破損が抑制される。
【0077】
スライダ42が、図3に示されるように、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32の遊びの量の差に対応した所定の角度回転した後、さらに操作ケーブル2がスライド方向D1で一方側に引き操作される。スライダ42は、図3に示される第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32の遊びが取れた状態の回転角度を維持しながら、図4に示されるように、スライド方向D1に平行移動する。これにより、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32は、遊びが除去された状態で、スライダ42によってスライド方向D1で一方側に同時に引き操作される。したがって、第1被操作ケーブル31に接続された第1被操作部OP21と、第2被操作ケーブル32に接続された第2被操作部OP22とが、同じタイミングで同じ量操作される。よって、第1被操作部OP21および第2被操作部OP22でのロック解除操作が確実に行われ、各部材に無理な力が加わることも抑制される。また、第1被操作ケーブル31および第2被操作ケーブル32の遊びが除去された後、第1被操作ケーブル31および/または第2被操作ケーブル32に弾性伸びが生じた場合であっても、上述のようにスライダ42がスライド移動しし、それぞれの被操作ケーブルの弾性伸び量に応じて回転することで弾性伸びを除去することができる。
【0078】
また、スライダ42の幅方向D2の両側縁に設けられた湾曲面C1、C2が軸Xを中心とした円弧面として形成されているので、スライダ42は回転の前後で、ガイド面G1、G2との所定の接触状態または所定の距離を維持することができる。したがって、スライダ42はハウジング41内で大きくガタつくことなく、円滑にスライド方向D1にスライドすることが可能となる。
【符号の説明】
【0079】
1 ケーブル連結機構
2 操作ケーブル
2a 操作ケーブルの一端(ケーブルエンド)
2b ケーブル本体
31 第1被操作ケーブル
31a 第1被操作ケーブルの一端(ケーブルエンド)
31b ケーブル本体
32 第2被操作ケーブル
32a 第2被操作ケーブルの一端(ケーブルエンド)
32b ケーブル本体
4 連結装置
41 ハウジング
411a、411b 側壁
412 底壁
413a、413b 端壁
42 スライダ
421 操作ケーブル連結部
421a 操作ケーブル収容凹部
421b 操作ケーブル導出口
422 第1被操作ケーブル連結部
422a 第1被操作ケーブル収容凹部
422b 第1被操作ケーブル導出口
423 第2被操作ケーブル連結部
423a 第2被操作ケーブル収容凹部
423b 第2被操作ケーブル導出口
424 前面
425 後面
426 上面
427、428 側面
43 固定部
C1、C2 湾曲面
D1 スライド方向
D2 幅方向
D3 厚さ方向
E1、E2、E3 アウターケーシングの端末部材
F1、F2、F3 端末固定部
G1、G2 ガイド面
H フード
M ケーブル操作機構
OC1、OC2、OC3 アウターケーシング
OP1 操作部
OP21 第1被操作部
OP22 第2被操作部
P 離脱防止部
SL スリット
V 車両
X 軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B