(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】挿通部材導出装置
(51)【国際特許分類】
A61M 39/02 20060101AFI20240823BHJP
A61M 25/02 20060101ALI20240823BHJP
A61B 17/34 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
A61M39/02
A61M25/02 500
A61B17/34
(21)【出願番号】P 2021118785
(22)【出願日】2021-07-19
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小嵐 伸作
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/111183(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/230681(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/085274(WO,A1)
【文献】特開2017-104437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/34
A61M 25/02
A61M 39/02
F16J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状の挿通部材を生体の壁状の組織に挿通するための挿通部材導出装置であって、前記挿通部材導出装置が、
前記壁状の組織の壁厚方向の一方側に配置可能な本体と、
前記本体に対して相対移動可能であり、前記壁状の組織を前記一方側から他方側に向かう第1方向に穿孔する穿孔孔を形成するための穿孔部材と、
一端側において前記穿孔部材に接続可能な第1接続部と、他端側において前記挿通部材に接続可能な第2接続部とを備え、前記穿孔部材と前記挿通部材とを接続するように構成されたコネクタと
を備え、
前記穿孔部材は、先端部と、前記穿孔部材の長さ方向で前記先端部に隣接し、前記壁状の組織に挿入される部位となる穿孔軸部とを有し、
前記挿通部材の径方向における、前記穿孔軸部の最大寸法は、前記挿通部材の外径よりも小さく、
前記本体は、前記第1方向に沿って延びる内部空間を有する導出孔を有し、
前記穿孔部材は、前記導出孔の内部で、前記導出孔の軸心と同軸上に、前記第1方向および前記第1方向と反対側の第2方向に案内されるように構成され、
前記導出孔は、
前記穿孔部材が、前記壁状の組織の他方側で、前記挿通部材に接続された状態のコネクタに接続された状態で前記穿孔部材を前記第2方向に移動させるときに、前記コネクタおよび前記挿通部材が挿通可能な大きさを有している、
挿通部材導出装置。
【請求項2】
前記挿通部材導出装置はさらに、
前記導出孔内に少なくとも部分的に挿入可能であり、前記穿孔部材を前記導出孔の軸心と同軸上に案内するガイド孔を有するガイド部材を備え、
前記ガイド部材は、前記穿孔部材と共に、前記導出孔から引き出し可能に構成されている、請求項1に記載の挿通部材導出装置。
【請求項3】
前記ガイド部材が、前記導出孔内に挿入される筒状のガイド部と、前記ガイド部の前記第2方向側に設けられ、前記ガイド部の外周に対して径方向外側に張り出した張り出し部とを備え、
前記ガイド部材が、前記本体と係合し、前記ガイド部材の前記ガイド部が前記導出孔から離脱することを抑制する係合部を有している、請求項2に記載の挿通部材導出装置。
【請求項4】
前記穿孔部材が、前記穿孔部材の前記本体からの突出量を所定範囲に規制するストッパ部を有している、請求項1~3のいずれか1項に記載の挿通部材導出装置。
【請求項5】
前記コネクタは、
前記穿孔部材が、前記壁状の組織の他方側において、前記挿通部材に接続されたコネクタに接続された状態で、前記穿孔部材を前記第2方向に移動させる際に、前記穿孔部材によって穿孔された穿孔孔を広げるために、前記径方向での幅が拡幅された拡幅部を有している、請求項1~4のいずれか1項に記載の挿通部材導出装置。
【請求項6】
前記拡幅部は、前記コネクタの前記一端側から前記他端側に向かうにつれて拡幅する円錐台状に形成されたテーパー部を有し、前記テーパー部の最大の外径は、前記挿通部材の外径と同等であるかまたは大きい、請求項5に記載の挿通部材導出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿通部材導出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体を含む生体を治療等する際に、生体の壁状の組織の一方から他方へと線状の挿通部材が貫通される場合がある。例えば、特許文献1には、ドライブラインを配置するための皮膚ボタンが開示されている。ドライブラインは、人体に埋め込まれた補助人工心臓(VAD)に電力を供給するために、人体の皮膚、筋膜、筋層、腹膜等の壁状の組織を貫通した状態で、皮膚ボタンによって人体の壁状の組織に対して所定の角度で配置される。皮膚ボタンは、ドライブラインが挿通される連通部と、連通部の周囲にフランジ状に設けられたフランジ部とを有している。皮膚ボタンは、フランジ部が皮膚の表皮と真皮との間に配置された状態で、人体の皮膚に固定される。
【0003】
上述したドライブラインを腹腔内から体外に引き抜く際には、人体の壁状の組織にドライブラインが挿通される挿通孔を形成するためのトンネラーを用いることができる。この場合、ドライブラインを、トンネラーによって形成された人体の挿通孔に挿通させた後に、ドライブラインを皮膚ボタンに挿通させて、皮膚ボタンを人体の皮膚に配置して、皮膚ボタンを人体の皮膚に固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、トンネラーによって挿通孔を形成する施術を行う際に、挿通孔を形成する位置や角度が、本来形成されるべき理想の位置および角度に対してズレが生じてしまう場合がある。このように、位置および角度にズレが生じた挿通孔にドライブラインが挿通されると、挿通孔内でのドライブラインが配置される位置および角度にもズレが生じる。したがって、ドライブラインが皮膚ボタンに挿通され、皮膚ボタンが皮膚に固定されると、皮膚ボタンが皮膚に対して浮き上がったり、沈み込んだりしてしまい、皮膚組織への引っ張りや圧縮荷重によって、組織の初期治療の促進が阻害される可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、生体の壁状の組織に挿入される挿通部材を、正確かつ容易に体外へと導出可能である、挿通部材導出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の挿通部材導出装置は、線状の挿通部材を生体の壁状の組織に挿通するための挿通部材導出装置であって、前記挿通部材導出装置が、前記壁状の組織の壁厚方向の一方側に配置可能な本体と、前記本体に対して相対移動可能であり、前記壁状の組織を前記一方側から他方側に向かう第1方向に穿孔する穿孔孔を形成するための穿孔部材と、一端側において前記穿孔部材に接続可能な第1接続部と、他端側において前記挿通部材に接続可能な第2接続部とを備え、前記穿孔部材と前記挿通部材とを接続するように構成されたコネクタとを備え、前記穿孔部材は、先端部と、前記穿孔部材の長さ方向で前記先端部に隣接し、前記壁状の組織に挿入される部位となる穿孔軸部とを有し、前記挿通部材の径方向における、前記穿孔軸部の最大寸法は、前記挿通部材の外径よりも小さく、前記本体は、前記第1方向に沿って延びる内部空間を有する導出孔を有し、前記穿孔部材は、前記導出孔の内部で、前記導出孔の軸心と同軸上に、前記第1方向および前記第1方向と反対側の第2方向に案内されるように構成され、前記導出孔は、前記穿孔部材が、前記壁状の組織の他方側で、前記挿通部材に接続された状態のコネクタに接続された状態で前記穿孔部材を前記第2方向に移動させるときに、前記コネクタおよび前記挿通部材が挿通可能な大きさを有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の挿通部材導出装置によれば、生体の壁状の組織に挿入される挿通部材を、正確かつ容易に体外へと導出可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】壁状の組織に形成された挿通孔に挿通された挿通部材が、固定装置によって壁状の組織に固定された状態を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態の挿通部材導出装置の分解図である。
【
図3】
図2に示される挿通部材導出装置が組み立てられ、穿孔部材が壁状の組織を穿孔する前の状態を示す部分断面図である。
【
図4】
図3に示される状態から穿孔部材が第1方向に移動して、穿孔部材が壁状の組織を穿孔した状態を示す部分断面図である。
【
図5】挿通部材導出装置の本体にガイド部材が組み付けられた状態を示す上面図である。
【
図6】挿通部材導出装置の本体にガイド部材が組み付けられた状態を示す正面図である。
【
図7】穿孔部材、コネクタおよび挿通部材が接続される前の状態を示す図である。
【
図8】穿孔部材、コネクタおよび挿通部材が接続された状態を示す図である。
【
図9】挿通部材導出装置の本体が壁状の組織に配置され、穿孔部材が壁状の組織を穿孔する前の状態を示す概略図である。
【
図10】
図9に示される状態から、穿孔部材が壁状の組織を穿孔した状態を示す概略図である。
【
図11】
図10に示される状態から、穿孔部材、コネクタおよび挿通部材が接続された状態を示す概略図である。
【
図12】
図11に示される状態から、コネクタが部分的に壁状の組織に入り込み、穿孔孔を部分的に広げている状態を示す概略図である。
【
図13】
図12に示される状態から、挿通部材が壁状の組織の一方側に導出された状態を示す概略図である。
【
図14】
図13に示される状態から、本体が壁状の組織から取り外され、挿通部材が挿通された固定装置が壁状の組織に固定された状態を示す概略図である。
【
図15】固定装置の連通路と平行に延びる理想的な挿通孔に対してズレが生じた角度で形成された挿通孔に挿通部材が挿通された固定装置を示す参考図である。
【
図16】
図15に示される固定装置において、皮膚に浮き上がりが生じた状態を示す参考図である。
【
図17】本発明の第2実施形態の挿通部材導出装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の挿通部材導出装置を説明する。なお、本明細書において、「Aに垂直」およびこれに類する表現は、Aに対して完全に垂直な方向のみを指すのではなく、Aに対して略垂直であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「Bに平行」およびこれに類する表現は、Bに対して完全に平行な方向のみを指すのではなく、Bに対して略平行であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「C形状」およびこれに類する表現は、完全なC形状のみを指すのではなく、見た目にC形状を連想させる形状(略C形状)を含んで指すものとする。
【0011】
本実施形態の挿通部材導出装置1は、線状の挿通部材I(
図1参照)を生体の壁状の組織Tに挿通するために用いられる(
図9~
図13参照)。詳細は後述するが、挿通部材導出装置1は、
図9~
図13に示されるように、生体の壁状の組織Tの壁厚方向TDの一方Ta側から他方Tb側へと穿孔孔H1(
図4参照)を形成した後、壁状の組織Tの他方Tb側から一方Ta側へと挿通部材Iが移動する際に、後述するコネクタ4によって穿孔孔H1が広げられて、穿孔孔H1よりも大きな挿通孔H2(
図1および
図13参照)が形成される。これにより、挿通部材Iが壁状の組織Tの挿通孔H2に挿通されて、挿通部材Iが壁状の組織Tから導出される。
【0012】
本明細書において、「生体」とは、ヒトおよびヒト以外の動物の体をいう。「壁状の組織」とは、後述する穿孔部材3(
図2参照)によって穿孔可能であり、貫通可能な所定の厚さを有する生体の任意の壁、膜などの組織をいう。具体的には、壁状の組織は、皮膚(表皮、真皮、皮下組織)、筋層、各種臓器を構成する組織など、生体内の各種組織、およびこれらが組み合わされた層をいう。本実施形態では、挿通部材Iが挿通される壁状の組織Tは、皮膚および筋層を含む組織である。また、本実施形態では、壁状の組織Tの一方Ta側は体外側であり、壁状の組織の他方Tb側は体内側となっている。なお、壁状の組織の一方側および他方側は、壁状の組織のいずれかの側であればよく、挿通部材導出装置の用途に応じて適宜変更され得る。
【0013】
本実施形態では、挿通部材導出装置1は、壁状の組織Tに固定される固定装置F(
図1参照)に挿通される挿通部材Iを体外に導出するために用いられる。より具体的には、挿通部材導出装置1は、人体内に埋め込まれた医療機器(例えば、人工補助心臓(VAD)、人工肺などの人工臓器)に用いられるドライブライン(挿通部材I)を腹部の壁状の組織Tである皮膚、筋層に挿通し、人体の体内から体外にドライブラインを導出させるために用いられる。体外に導出されたドライブラインは、
図1に示されるように、固定装置Fを介して腹部の所定の位置で固定される。
【0014】
挿通部材Iは、所定の長さを有し、生体の壁状の組織Tに挿通される部材である。なお、線状の挿通部材Iの「線状」とは、中空であるか中実であるかを問わず、挿通部材Iが所定の長さで延びるものであることを意味している。本実施形態では、挿通部材Iは、生体の壁状の組織Tの一方Ta側から他方側Tbへと貫通した状態で配置される医療用の長尺部材である。より具体的には、挿通部材Iは、人工臓器(人工補助心臓)用のドライブラインである。挿通部材Iは、一方の端部は、体内の所定の位置に配置された図示しない人工臓器に連結され、他方の端部は、体外に配置された機器(電源など)に連結される。なお、挿通部材Iは、後述するように、体外に配置された機器に連結される前に、生体の壁状の組織Tに挿通されて、体内から体外へと導出される。
【0015】
挿通部材Iは、
図2および
図4に示されるように、挿通部材Iの他方の端部に設けられ、体外に配置された機器に連結するための連結部Iaと、挿通部材本体Ibとを有している。連結部Iaは、例えば、電源などの体外に配置された機器の電源接続部(雌プラグ)に接続される、略円筒状のプラグ(雄プラグ)とすることができるが、連結部Iaの形状および構造は特に限定されない。なお、本実施形態では、連結部Iaの外径は、
図2および
図4に示されるように、挿通部材本体Ibの外径よりも大きくなるように構成されている。しかし、連結部Iaの外径は、挿通部材本体Ibの外径よりも小さくてもよいし、同じであってもよい。挿通部材本体Ibは、本実施形態では、所定の可撓性および剛性を有している。挿通部材本体Ibは、曲げ変形を受けると復元して元の形状に戻ろうとする所定の弾性を有している。
【0016】
挿通部材Iの内部構造は特に限定されないが、本実施形態では、挿通部材Iは、
図1に示されるように、体内の人工臓器と体外の圧送ポンプとの間で冷却水を循環させる冷却水循環通路Icと、体内の人工臓器および体外の電源を連結する電源ケーブルIdとを有している。なお、挿通部材Iは、電源ケーブルのみを有する構成としても良いし、冷却水循環路のみを有する構成としてもよいし、他の機能を有する部材などを有する構成としてもよいし、内部に部材を有しない中空部材として構成されていてもよい。挿通部材Iは、体内と体外とを連通する中空の部材として用いる場合、体外から体内の治療部位へ治療のため薬を送達するために用いられてもよい。
【0017】
挿通部材導出装置1によって、挿通部材Iが壁状の組織Tに挿通されると、例えば、
図1に示されるように、固定装置Fに挿通部材Iが挿通されて、固定装置Fが壁状の組織Tに固定される。これにより、固定装置Fを介して挿通部材Iが壁状の組織Tに挿通された状態で所定の位置に固定される。なお、本実施形態では、挿通部材導出装置1によって、挿通部材Iが壁状の組織Tに挿通された後(
図13参照)、挿通部材導出装置1が取り外されて、挿通部材導出装置1とは別部材である固定装置Fが壁状の組織Tに固定される(
図1および
図14参照)。しかし、挿通部材導出装置1が固定装置Fとして必要な機能を備えていれば、挿通部材導出装置1を壁状の組織Tから取り外さずにそのまま固定装置として使用することもできる。
【0018】
固定装置Fとしては、いわゆる皮膚ボタンとして知られている公知の固定装置を用いることができるので、詳細な説明は省略する。一例として、固定装置Fは、
図1に示されるように、壁状の組織Tに固定される固定部F1と、挿通部材Iが挿通される連通路F21を有する連通部F2と、挿通部材Iを液密に固定するチャック部材F3とを有している。固定装置Fの少なくとも一部には、壁状の組織T(皮膚)の一部のアンカリングを促進するために表面処理が施されていることが好ましい。また、固定装置Fの材料は生体適合性を有する材料で形成されていることが好ましい。生体適合性を有する材料として、金属材料では、例えば、チタン、チタン合金等が挙げられ、樹脂材料では、圧縮成形による高強度のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ポリテトラフルオロエチレンやポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。固定装置Fに用いられる材料は、固定装置Fを用いる部位や用途によって適宜選定される。
【0019】
固定装置Fの固定部F1には、切開された壁状の組織T(皮膚の皮膚組織)が誘導されて、壁状の組織Tが固定される。本実施形態では、固定部F1は、連通部F2のうち、壁状の組織T側の端部において、連通部F2に対して径方向外側に延出するように設けられている。本実施形態では、固定部F1は、連通部F2の周囲を取り囲むフランジ状に形成されている。
【0020】
連通部F2は、本実施形態では、生体内と生体外とを連通する。連通部F2は、挿通部材Iが挿通される部分であり、略円筒状に構成されている。チャック部材F3は、連通部F2の連通路F21の内壁と挿通部材Iの外面との間に配置される部材であり、挿通部材Iを締め付けて液密に保持している。挿通部材Iが挿通された状態の固定装置Fが壁状の組織Tに固定されると、細胞が繁殖して固定装置Fが壁状の組織Tに対して固定される。
【0021】
次に、本実施形態の挿通部材導出装置1の構成について説明する。
【0022】
図2~
図4に示されるように、挿通部材導出装置1は、壁状の組織Tの壁厚方向TDの一方Ta側に配置可能な本体2と、本体2に対して相対移動可能であり、壁状の組織Tを一方Ta側から他方Tb側に向かう第1方向D1に穿孔する穿孔孔H1(
図4参照)を形成するための穿孔部材3と、一端4a側において穿孔部材3に接続可能な第1接続部41(
図7および
図8参照)と、他端4b側において挿通部材Iに接続可能な第2接続部42(
図7および
図8参照)とを備え、穿孔部材3と挿通部材Iとを接続するように構成されたコネクタ4(
図2および
図4参照)とを備えている。また、本実施形態では、
図2~
図4に示されるように、挿通部材導出装置1はさらに、ガイド部材5を備えている。
【0023】
本明細書において、「壁厚方向TD」とは、壁状の組織Tの厚さ方向、すなわち、壁状の組織Tの一方Ta側の面と他方Tb側の面とを結ぶ方向をいう。本実施形態では、壁厚方向TDは、壁状の組織Tの表面(体外側の面または体内側の面)に対して近付く方向または離れる方向(表面に対して垂直な方向)でもある。なお、本明細書において、挿通部材導出装置1の各構成要素を説明する際に、挿通部材導出装置1が壁状の組織Tに配置された状態における壁厚方向TDに平行な方向を、同様に壁厚方向TDと呼ぶ場合がある。また、第1方向D1は、穿孔部材3が壁状の組織Tを穿孔するときに、一方Ta側から他方Tb側に向かって移動する方向をいう。「一方Ta側から他方Tb側に向かう第1方向D1」は、壁厚方向TDに対して傾斜していてもよいし、壁厚方向TDと平行であってもよい。本実施形態では、第1方向D1(穿孔部材3の軸X)と、壁状の組織Tの、本体2と対向する面(面が湾曲している場合は、穿孔孔H1が形成される部位に接する面)とが為す角θ(
図4参照)は、例えば、10~80°、好ましくは、20~70°、より好ましくは30~60°とすることができる。第2方向D2は、第1方向D1とは反対の方向であり、穿孔部材3が壁状の組織Tを穿孔した後、抜去されるときに移動する移動方向をいう。なお、本明細書において、第1方向D1および第2方向D2の両方を含む方向を軸X方向(穿孔部材3の軸X方向)と呼ぶ。
【0024】
本体2は、
図3および
図4に示されるように、壁状の組織Tの壁厚方向TDの一方Ta側に配置される部位である。本実施形態では、本体2は、壁状の組織Tの皮膚に固定される。本体2の形状および構造は、壁状の組織Tの壁厚方向TDの一方Ta側に配置可能であり、後述する導出孔24を有していれば、特に限定されない。本実施形態では、本体2は、本体部21と、フランジ部22と、把持部23とを有している。
【0025】
本体部21は、後述する導出孔24が設けられる部位であり、本体2の大部分を占める基体となる部分である。本体部21は、本実施形態では、
図3~
図6に示されるように、壁厚方向TDに延びる柱状に形成されている。本体部21には、導出孔24が貫通して設けられている。フランジ部22は、本実施形態では、本体部21の壁厚方向TDの一方の端部(壁状の組織T側の端部)の外周から壁厚方向TDに垂直に外側に向かって延びている(
図5および
図6参照)。フランジ部22は、固定装置Fの固定部F1に対応した形状、大きさにされていることが好ましい。把持部23は、本体2を移動させる際、穿孔部材3によって穿孔する際、挿通部材Iを導出する際など、挿通部材導出装置1の使用時に施術者によって把持される部位である。
【0026】
なお、本体2の壁状の組織Tへの固定方法は特に限定されない。本実施形態では、本体部21に対応した大きさの皮膚(壁状の組織T)が切除され、フランジ部22が皮膚の下に潜り込めるようにフランジ部22に対応する部分の皮膚が切開処置される。これにより、本体2は、
図3に示されるように、フランジ部22が皮膚に潜り込み、本体部21が皮膚から露出した状態で、壁状の組織Tに固定される。本実施形態では、本体2の、壁状の組織Tに配置される部位は、上述した固定装置Fに対応した形状を有しており、本体2が壁状の組織Tから取り外された後、固定装置Fを本体2と同じ状態(例えば位置および向き)で壁状の組織Tに固定することができる。この場合、固定装置Fの壁状の組織Tへの固定作業を容易に行うことができる。また、固定装置Fの連通路F21と本体2の導出孔24とが同じ大きさ、同じ位置、同じ角度で延びている場合、後述するように、挿通部材Iを固定装置Fの連通路F21に挿通したときに、固定装置Fは、挿通部材Iから固定装置Fの所望の位置に対してずらす方向の力を受けにくくなる。この場合、後述するように、壁状の組織Tに対する固定装置Fの浮き上がりや沈み込みを抑制することができる。
【0027】
なお、本体2の壁状の組織Tへの固定方法は、本体2が壁状の組織Tに対して位置ズレを生じにくいのであれば、例えば医療用のテープなど、他の固定方法を用いることもできる。また、本体2は、手術中のみなど、一時的に壁状の組織Tに固定されてもよいし、患者の治療に必要な長期間に亘って、または、永続的に壁状の組織Tに固定されてもよい。また、本体2を構成する材料は特に限定されないが、例えば、生体適合性を有する金属または樹脂などが用いられる。
【0028】
上述したように、本体2は、
図2~
図4に示されるように、第1方向D1に沿って延びる内部空間を有する導出孔24を有している。また、詳細は後述するが、導出孔24は、穿孔部材3が、壁状の組織Tの他方Tb側で、挿通部材Iに接続された状態のコネクタ4に接続された状態で穿孔部材3を第2方向D2に移動させるときに(
図12および
図13参照)、コネクタ4および挿通部材Iが挿通可能な大きさを有している。また、本実施形態では、導出孔24は、
図3および
図4に示されるように、穿孔部材3が壁状の組織Tを穿孔する際に導出孔24を通るように構成されている。また、本実施形態では、導出孔24には、ガイド部材5の少なくとも一部が挿入される。
【0029】
導出孔24は、第1方向D1(軸X方向)に沿って延びており、導出孔24に挿通部材Iが挿通されたときの挿通部材Iの挿通角度を画定させる。また、本実施形態では、後述するように、穿孔部材3は、
図3および
図4に示されるように、導出孔24の内部で、導出孔24の軸心と同軸上(軸X上)に、第1方向D1および第2方向D2に案内されるように構成されている。この場合、後述するように、穿孔部材3により形成された壁状の組織Tの穿孔孔H1の軸心と、壁状の組織Tが穿孔された後、導出孔24(または固定装置Fの連通路F21)に挿通された挿通部材Iの軸心とが一致する。これにより、挿通部材Iの、壁状の組織Tを貫通する部分と、挿通部材Iの、本体2の導出孔24(または固定装置Fの連通路F21)を貫通する部分とが同軸上に配置される。したがって、詳細は後述するが、本体2が、挿通部材Iのうち、導出孔24(または固定装置Fの連通路F21)に挿通されている部分から力を受けて、所望の位置に対して浮き上がったり、沈み込んだりすることが抑制される。なお、「穿孔部材3が導出孔24の内部で案内される」とは、穿孔部材3が導出孔24の中で直接または間接的に導出孔24に案内されていることを意味する。本実施形態では、穿孔部材3は、ガイド部材5のガイド孔51を介して間接的に導出孔24の内部で案内されている。なお、後述する実施形態(
図17参照)のように、穿孔部材3が直接的に導出孔24の内部で案内されていてもよい。また、「同軸上」とは、穿孔部材3と導出孔24とが実質的に共通の軸上に延びていることをいう。本実施形態では、穿孔部材3の軸心の延びる方向と導出孔24の軸心の延びる方向とは、実質的に同一直線上となっている。なお、穿孔部材3および導出孔24は、実質的に共通の軸上に延びていれば、わずかに湾曲していてもよい。
【0030】
導出孔24が延びる角度は特に限定されないが、上述したように、導出孔24の軸心(軸X)と、壁状の組織Tの一方Ta側の面(面が湾曲している場合は、穿孔孔H1が形成される部位に接する面)とが為す角θ(
図4参照)は、例えば、10~80°、好ましくは、20~70°、より好ましくは30~60°とすることができる。導出孔24の角度は、固定装置Fの連通路F21の角度と対応した角度(例えば、連通路F21の軸心との角度の差が10°以下、好ましくは5°以下)または同一の角度とすることができる。
【0031】
本実施形態では、導出孔24は、軸X方向に直線状に所定の長さで延びている。導出孔24の断面形状は、コネクタ4および挿通部材Iを挿通することができれば、特に限定されない。本実施形態では、導出孔24の第1方向D1に垂直な断面は、円形となるように構成されている。また、導出孔24の大きさは、壁状の組織Tを穿孔できるように穿孔部材3を通すことができ、かつ、コネクタ4および挿通部材Iを挿通可能な大きさであれば、特に限定されない。本実施形態では、導出孔24の内径は、コネクタ4および挿通部材Iのうち、最大の外径を有する部分に対応した内径(例えば、コネクタ4および挿通部材Iのうち最大の外径を有する部分の外径の100~110%、好ましくは100~105%、より好ましくは、100~103%の内径)を有している。
【0032】
導出孔24は、
図2~
図4に示されるように、壁状の組織Tに面する第1開口部24aと、第1開口部24aとは反対側の開口となる第2開口部24bとを有している。第1開口部24aと第2開口部24bとの間には、導出孔24の内部空間が形成されている。第1開口部24aは、壁状の組織Tに面し、本体部21の下面において開口している。第2開口部24bは、本体部21の側面において開口している。
【0033】
導出孔24の第2方向D2側の内面には、
図2~
図4に示されるように、後述するガイド部材5の係合部Eと係合する被係合部24cを有している。導出孔24の被係合部24cは、後述するように、ガイド部材5の係合部Eと係合することで、ガイド部材5のガイド部52が導出孔24から離脱することを抑制する。被係合部の構造は、ガイド部52が導出孔24から離脱することを抑制できるように、係合部と係合することができれば、特に限定されない。本実施形態では、被係合部24cは、雄ネジとして設けられた係合部Eに係合する雌ネジである。しかし、被係合部は、係合部の構造に応じて、係合爪や係合凹部、係合凸部等とすることもできる。なお、被係合部24cの内径(被係合部24cのうち内径が最小の部分)は、コネクタ4および挿通部材Iが導出孔24の第2開口部24bから第2方向D2に出ることができるように、コネクタ4および挿通部材Iの外径よりも大きくなっている。被係合部24cを本実施形態のように雄ネジとして設ける場合は、後述のようにコネクタ4の一端4aが壁状の組織Tを挿通する前(壁状の組織Tに一端4aが入り込む前)に、係合部Eと被係合部24cの係合が解除されることが望ましい。すなわち、係合部Eと被係合部24cとの間の係合が解除されたときに、コネクタ4の一端4aが、壁状の組織Tよりも体内側に位置するように、係合部E、被係合部24cおよびコネクタ4の一端4aの位置が設定される。これにより、コネクタ4の一端4aが壁状の組織Tを通過する際に、ガイド部材5の回転(係合部Eと被係合部24cとの間の螺合が解除されるときの回転)に追従したコネクタ4の回転を防止できる。したがって、組織Tにコネクタ4が入り込んだ状態で回転することにより、穿孔軸部32とコネクタ4との間の螺合が解除されることが抑制される。
【0034】
導出孔24の第2方向D2側には、
図2~
図4に示されるように、ガイド部材5のストッパ面54と当接して、ガイド部材5が本体2に対して第1方向D1に移動することを規制する本体側当接面25を有している。本実施形態では、本体側当接面25は、軸X方向に対して垂直に延びる面である、導出孔24の第2開口部24bの周縁部によって構成されている。
【0035】
本実施形態では、挿通部材導出装置1は、
図2~
図6に示されるように、導出孔24内に少なくとも部分的に挿入可能であり、穿孔部材3を導出孔24の軸心(軸X)と同軸上に案内するガイド孔51を有するガイド部材5を備えている。ガイド部材5は、本体2の導出孔24に第2開口部24b側から部分的に挿入されて本体2に対して着脱可能に取り付けられる。ガイド部材5は、ガイド孔51によって穿孔部材3を第1方向D1に(軸Xに沿って)案内する。ガイド部材5の形状および構造は、導出孔24内に少なくとも部分的に挿入可能であり、穿孔部材3を導出孔24の軸心と同軸上に案内するガイド孔51を有していれば、特に限定されない。なお、後述するように、挿通部材導出装置1において、穿孔部材3にガイド部材5の機能の一部(例えば、ガイド部52の機能)を持たせるように構成して、ガイド部材5を省略することもできる(
図17参照)。
【0036】
ガイド孔51は、穿孔部材3を導出孔24の軸心と同軸上に案内し、穿孔部材3による穿孔方向を画定させる。
図3および
図4に示されるように、ガイド孔51によって、穿孔部材3は軸Xに沿って第1方向D1に移動するように案内され、穿孔部材3は、壁状の組織Tに導出孔24の軸心と同軸となる軸Xに沿った穿孔孔H1を形成することができる。穿孔孔H1の軸心と導出孔24の軸心とは共に第1方向D1に沿って同軸上(軸X上)に並ぶ。これにより、上述したように、挿通部材Iが導出孔24(または固定装置Fの連通路F21)に挿通された状態において、挿通部材Iのうち、壁状の組織Tを貫通した挿通孔H2を通る部分と、挿通部材Iのうち、本体2の導出孔24(または固定装置Fの連通路F21)を通る部分とが同軸上に配置される。
【0037】
ガイド孔51は、軸X方向にガイド部材5を貫通して設けられ、第1方向D1側の開口と、第2方向D2側の開口とを有している。ガイド孔51の形状は、穿孔部材3を導出孔24の軸心と同軸上に案内することができれば、特に限定されない。本実施形態では、ガイド孔51は、断面が円形の開口であり、断面円形の穿孔部材3を案内するように構成されている。ガイド孔51の大きさは、穿孔部材3がガイド孔51を通るときに、穿孔部材3が第1方向D1に安定して移動できように、穿孔部材3の大きさに対応した大きさとされており、穿孔部材3がガイド孔51に案内される際に、穿孔部材3がガイド孔51に対してガタつくことにより皮膚への所定の穿孔位置から外れたり、挿入部材3をガイド孔51に対する挿入、抜き取りに無理に力を作用させることがないようにすることができればよい。
【0038】
本実施形態では、ガイド部材5は、
図2~
図6に示されるように、導出孔24内に挿入される筒状のガイド部52と、ガイド部52の第2方向D2側に設けられ、ガイド部52の外周に対して径方向外側に張り出した張り出し部53とを備えている。また、本実施形態では、ガイド部材5は、第1方向D1でガイド部52と張り出し部53との間に、上述したストッパ面54を有する、ガイド部52よりも大径の筒状部55を有している。
【0039】
ガイド部52は、導出孔24に挿入される部分である。本実施形態では、ガイド部52は、導出孔24内に挿入されたときに、ガイド部材5のガイド孔51が、導出孔24の軸心と同軸上に配置されるように、導出孔24内でガイドされる。この場合、ガイド部52が導出孔24内でガイドされることでガイド部材5が本体2に対して安定して保持され、ガイド部材5のガイド孔51によって穿孔部材3が安定して第1方向D1に案内される。また、ガイド部52は、穿孔部材3によって壁状の組織Tの穿孔が完了し、穿孔部材3とコネクタ4および挿通部材Iとが接続された後、穿孔部材3およびガイド部材5が導出孔24の軸心(軸X)に沿って第2方向D2に移動できるように、導出孔24に案内される。これにより、後述するように、コネクタ4および挿通部材Iが、壁状の組織Tの他方Tb側から一方Ta側へと挿通される際に(
図12および
図13参照)、導出孔24の第1開口部24aに向かって正確に軸Xに沿って案内され、挿通部材Iが所望の角度で壁状の組織Tを貫通して導出孔24に挿入される。
【0040】
本実施形態では、ガイド部52は、導出孔24内で安定して案内および配置されるように、導出孔24に対応した形状および大きさを有している。本実施形態では、ガイド部52は円筒状に形成され、導出孔24は円筒状の内部空間を有している。なお、ガイド部52は、導出孔24内に配置された状態で、必要以上にガタツキが生じなければ、導出孔24の内面との間にクリアランスを有していてもよい。導出孔24の内径は、例えば、ガイド部52の外径の100~110%、好ましくは100~105%、より好ましくは、100~103%とすることができる。
【0041】
ガイド部52の軸X方向の長さは、特に限定されない。本実施形態では、穿孔部材3によって穿孔孔H1が形成され、壁状の組織Tの他方Tb側において、コネクタ4が穿孔部材3に接続された状態(
図11参照)から、穿孔部材3およびコネクタ4が第2方向D2に移動して、コネクタ4の一端4aが導出孔24の第1開口部24aに到達した状態までの間、ガイド部52が導出孔24に案内されるように、ガイド部52(および導出孔24)の長さが設定されることが好ましい。この場合、コネクタ4が穿孔部材3に接続されてから、導出孔24に入るまでの間、コネクタ4および挿通部材Iは、導出孔24の軸と同軸上に軸Xに沿って移動する。したがって、コネクタ4および挿通部材Iを確実に導出孔24内に移動させることができる。コネクタ4が導出孔24の第1開口部24aに入った後は、コネクタ4は導出孔24内で案内されるので、ガイド部52が導出孔24から第2方向D2に外された後、ガイド部材5や穿孔部材3が導出孔24の軸心に対して傾くように移動しても、コネクタ4および挿通部材Iは導出孔24内で軸Xに沿って移動する。したがって、安定してコネクタ4および挿通部材Iを導出することができる。
【0042】
ガイド部材5は、
図2~
図4に示されるように、本体2と係合し、ガイド部材5のガイド部52が導出孔24から離脱することを抑制する係合部Eを有している。係合部Eが設けられていることによって、穿孔部材3によって壁状の組織Tを穿孔する際に、ガイド部材5に第2方向D2の力が加わっても、ガイド部材5が導出孔24から離脱することが抑制される。したがって、安定して穿孔部材3を第1方向D1に移動させることができる(
図9および
図10参照)。係合部Eは、本体2に対してガイド部材5の第2方向D2の移動が規制されるように本体2に係合する。好ましくは、係合部Eは、本体2に対してガイド部材5の第1方向D1および第2方向D2の両方の移動を規制するように構成される。本実施形態では、係合部Eはガイド部52の第2方向D2側の端部に設けられた雄ネジであり、本体2の被係合部24cに設けられた雌ネジに係合している。しかし、係合部の形状および構造は、本体2と係合し、ガイド部材5のガイド部52が導出孔24から離脱することを抑制することができれば、特に限定されない。例えば、係合部は、本体2の被係合部の構造に応じた構造を有し、被係合部と軸X方向に係合する、係合爪、係合凹部、係合凸部等であってもよい。
【0043】
係合部Eは、被係合部24cに対して係合の解除が可能となるように係合している。これにより、穿孔部材3による壁状の組織Tの穿孔が完了した後は、ガイド部材5を本体2から外すことで、コネクタ4および挿通部材Iを導出孔24へと導出することが可能となる(
図11~
図13参照)。
【0044】
張り出し部53は、
図2~
図6に示されるように、ガイド部52の第2方向D2側に設けられ、ガイド部52の外周に対して径方向外側に張り出している。張り出し部53は、穿孔部材3によって壁状の組織Tを穿孔する際の操作性を向上させる。具体的には、張り出し部53の第1方向D1側の面に指を掛けながら、穿孔部材3を第1方向D1に押し込むことができる。言い換えると、穿孔部材3が注射器のプランジャとして、張り出し部53が注射器のシリンジのフランジ部のように機能する。したがって、穿孔部材3に力を加えやすく、穿孔部材3での壁状の組織Tの穿孔が容易となる。また、張り出し部53は、ガイド部52を本体2に対して着脱する際の操作性を向上させることもできる。具体的には、ネジ構造である係合部Eと被係合部24cとの間の螺合および螺合を解除するときに、張り出し部53を持ってガイド部材5を回転させることにより、容易にガイド部材5を軸X周りに回転させることができる。したがって、本体2に対するガイド部材5の着脱が容易になる。
【0045】
なお、本実施形態では、張り出し部53は、
図5および
図6に示されるように、ガイド部材5の筒状部55の第2方向D2側に設けられ、筒状部55に対して周方向の全体に張り出すように構成されている。しかし、張り出し部53の形状は特に限定されず、周方向の一部のみから突出するように構成されていてもよい。
【0046】
穿孔部材3は、本体2に対して相対移動可能であり、壁状の組織Tに穿孔孔H1を形成する部材である。本実施形態では、穿孔部材3の先端部31は針状に形成されているが、壁状の組織Tに穿孔孔H1を形成することができれば、必ずしも針状である必要はない。
【0047】
本実施形態では、穿孔部材3は、壁状の組織Tの穿孔時には、
図3、
図4、
図9および
図10に示されるように、本体2およびガイド部材5に対して、第1方向D1に相対移動することで、導出孔24の第1開口部24aから軸Xに沿って第1方向D1に突出する。これにより、壁状の組織Tに穿孔孔H1が形成される。また、穿孔部材3は、穿孔孔H1を形成した後は、
図11~
図13に示されるように、コネクタ4を介して挿通部材Iに間接的に接続されて、穿孔部材3が第2方向D2に移動して壁状の組織Tから第2方向D2に抜去される際に、挿通部材Iを壁状の組織Tの他方Tb側から一方Ta側へと導出させる。
【0048】
穿孔部材3は、
図2~
図4に示されるように、先端部31と、穿孔部材3の長さ方向で先端部31に隣接し、壁状の組織Tに挿入される部位となる穿孔軸部32とを有している。また、穿孔部材3は、コネクタ4に接続される接続部Cを有している。
【0049】
先端部31は、穿孔部材3の長手方向で第1方向D1側の端部に設けられた部分である。穿孔部材3を第1方向D1に移動させることによって、先端部31が壁状の組織Tを穿孔して、壁状の組織Tの一方Ta側から他方Tb側へと貫通した穿孔孔H1が形成される。なお、先端部31は、本実施形態では、先端部31の先端に向かって先細となる針状に形成されているが、壁状の組織Tに穿孔孔H1を形成することができれば、例えば、筒状など先細となっていなくてもよいし、先端部31の先端が鋭利でなくても構わない。
【0050】
穿孔軸部32は、穿孔部材3の長さ方向(軸X方向)で先端部31に隣接し、壁状の組織Tに挿入される。穿孔軸部32は、壁状の組織Tを貫通できる軸X方向の長さを有し、穿孔軸部32の少なくとも一部が壁状の組織Tに挿入される。穿孔軸部32の形状は、壁状の組織Tを穿孔することができれば、特に限定されない。本実施形態では、穿孔軸部32の、長手方向に垂直な断面が円形となるように形成されている。
【0051】
挿通部材Iの径方向(挿通部材Iの長手方向に対して垂直な方向)における、穿孔軸部32の最大寸法は、挿通部材Iの外径よりも小さい。本実施形態では、穿孔軸部32は、長手方向で同一の外径を有する円柱状に形成されており、
図2~
図4に示されるように、穿孔軸部32の外径が、挿通部材Iの外径よりも小さくなるように構成されている。穿孔軸部32の最大寸法が、挿通部材Iの外径よりも小さいことによって、挿通部材Iの外径と同じ寸法の穿孔軸部で壁状の組織Tに穿孔孔をあける場合と比較して、小さな力で穿孔孔H1を形成することができる。ここで、「穿孔軸部32の最大寸法」は、穿孔軸部32のうち、壁状の組織Tに進入する部分における最大寸法である。また、「挿通部材Iの外径」は、連結部Iaを含む挿通部材Iの外径が挿通部材Iの長手方向で一様である場合は、挿通部材Iの外径をいい、連結部Iaを含む挿通部材Iの外径が長手方向で部分的に変化する場合は、挿通部材Iが壁状の組織Tの他方Tb側から一方Ta側へ導出される部分のうち最大の外径の部分をいう(例えば、連結部Iaの外径が最も大きい場合、連結部Iaの外径が最大の外径となる)。なお、穿孔部材3の穿孔軸部32の最大寸法は特に限定されないが、穿孔部材3の穿孔軸部32の径は、壁状の組織Tに穿孔するのに所望のサイズであって破損しない寸法であり、コネクタ4に接続した際に、コネクタ4および挿通部材Iを引き出すのに必要な力を作用することができるものであればよく、例えば、挿通部材Iの外径の5~70%、好ましくは20~60%、より好ましくは、35~50%とすることができる。
【0052】
また、本実施形態では、穿孔部材3は、
図2~
図4に示されるように、穿孔部材3の本体2からの突出量を所定範囲に規制するストッパ部33を有している。ストッパ部33は、穿孔部材3により壁状の組織Tが一方Ta側から他方Tb側に向かって穿孔されるときに、穿孔部材3の本体2(導出孔24の第1開口部24a)からの突出量(
図4参照)を所定範囲に規制する。これにより、例えば、壁状の組織Tが体外から体内に向かって穿孔部材3によって穿孔される際に、穿孔部材3の先端部31が到達する位置を容易に制御することができる。したがって、穿孔部材3の突出量が大きくなることで、他の臓器などの組織を傷つけてしまう危険性を低下させることができる。なお、「所定範囲」は、例えば、穿孔部材3が壁状の組織Tに進入したときに、内部の臓器など、穿孔対象となる組織以外の組織に、穿孔部材の先端部が到達しない程度の範囲とすることができ、この所定範囲は、穿孔対象(生体の穿孔部位、体格、年齢、性別等)に応じて適宜変更される。
【0053】
本実施形態では、ストッパ部33は、ガイド部材5に設けられた当接部53aと当接することで、穿孔部材3の本体2からの突出量を所定範囲に規制している。本実施形態では、ストッパ部33は、穿孔軸部32に対して、軸X方向に垂直な方向に張り出している。より具体的には、張り出したストッパ部33は、ガイド部材5のガイド孔51の第2方向D2側の開口の周縁部(本実施形態では、張り出し部53の第2方向D2側の端面)に設けられた当接部53aに当接するように構成されている。
【0054】
なお、ストッパ部の形状は、穿孔部材3の本体2からの突出量を所定範囲に規制することができれば、特に限定されず、円盤状であってもよいし、矩形の板状であってもよい。また、本実施形態では、ストッパ部33は、穿孔部材3の第2方向D2側の端部に設けられているが、穿孔部材3の端部以外の部位(例えば穿孔部材3の第2方向D2側の端部と穿孔軸部32の中央部との間の位置など)に設けられていてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、ストッパ部33とガイド部材5とが軸X方向で互いに係合している。これにより、穿孔部材3によって壁状の組織Tに穿孔孔H1が形成された後、穿孔部材3を壁状の組織Tから抜去する際、
図12および
図13に示されるように、ガイド部材5を本体2に対して第2方向D2に移動させることで、穿孔部材3も同時に第2方向D2に移動させることができる。そして、この際に、コネクタ4および挿通部材Iが壁状の組織Tの他方Tb側から一方Ta側に導出される。したがって、ガイド部材5の本体2からの取り外し、穿孔部材3の壁状の組織Tからの抜去、および、挿通部材Iの導出を同時に行うことができ、操作性が向上し、施術時間の短縮につながる。
【0056】
接続部Cは、コネクタ4に接続される部位である。接続部Cの位置は、穿孔部材3によって壁状の組織Tが穿孔された後、壁状の組織Tの他方Tb側において、コネクタ4と接続可能な位置に設けられていれば、特に限定されない。本実施形態では、接続部Cは、
図2~
図4に示されるように、先端部31に対して第2方向D2側に隣接した位置に設けられている。接続部Cの形状および構造は、挿通部材Iを壁状の組織Tから導出できるように、コネクタ4と接続することができれば、特に限定されない。本実施形態では、接続部Cは、コネクタ4の第1接続部41に設けられた雌ネジに係合する、穿孔軸部32の外周に設けられた雄ネジである。しかし、接続部Cは、コネクタ4の第1接続部41の構造に応じた構造を有し、第1接続部41と軸X方向に係合する、係合爪、係合凹部、係合凸部等であってもよい。
【0057】
コネクタ4は、穿孔部材3と挿通部材Iとを接続する。本実施形態では、コネクタ4は、
図11に示されるように、穿孔部材3が壁状の組織Tを穿孔した状態で、壁状の組織Tの他方Tb側において、穿孔部材3および挿通部材Iに接続される。後述するように、壁状の組織Tの他方Tb側においてコネクタ4を介して接続された穿孔部材3および挿通部材Iは、
図12および
図13に示されるように、穿孔部材3が第2方向D2に移動することによって一体となって、穿孔孔H1(挿通孔H2)を通って壁状の組織Tの一方Ta側へと移動する。これにより、挿通部材Iが壁状の組織Tの一方Ta側へと導出される。
【0058】
コネクタ4は、
図7および
図8に示されるように、一端4a側において穿孔部材3に接続可能な第1接続部41と、他端4b側において挿通部材Iに接続可能な第2接続部42とを備えている。コネクタの全体形状は、穿孔部材3と挿通部材Iとを接続できれば、特に限定されない。本実施形態では、コネクタ4は略円筒形状とされている。
【0059】
第1接続部41は、穿孔部材3に接続される部位である。第1接続部41は、
図7および
図8に示されるように、本実施形態では、雄ネジによって構成された穿孔部材3の接続部Cと螺合して接続される雌ネジを有している。より具体的には、第1接続部41は、コネクタ4の一端4a側において、コネクタ4の軸心に沿って設けられた筒状の中空部41aの内面に設けられた雌ネジを有している。第1接続部41の筒状の中空部41aは、
図8に示されるように、穿孔部材3の接続部Cだけでなく、穿孔部材3の先端部31を収容可能な大きさに形成されている。
【0060】
第1接続部41の構造は、穿孔部材3、コネクタ4および挿通部材Iが接続された状態で、穿孔部材3が第2方向D2に移動したときに、穿孔部材3とコネクタ4との間の接続が解除されないように構成されていれば、特に限定されない。例えば、第1接続部は、係合爪などの他の機械的な接続構造であってもよいし、磁力によって接続されるように構成されていてもよい。
【0061】
第2接続部42は、挿通部材Iに接続される部位である。第2接続部42は、本実施形態では、挿通部材Iの端部に設けられた連結部Iaに接続可能となっている。より具体的には、挿通部材Iであるドライブラインの端部には、ドライブラインの駆動部(電源)に差し込んで接続される雄プラグ(連結部Ia)が設けられており、第2接続部42は、その雄プラグ(連結部Ia)と嵌合接続するように構成されている。例えば、連結部Iaである雄プラグの外周に係合突起(図示せず)が設けられ、第2接続部42は、内面に連結部Iaの係合突起が係合する係合凹部(図示せず)が設けられた筒状の中空部42aによって構成することができる。
【0062】
第2接続部42の構造は、穿孔部材3、コネクタ4および挿通部材Iが接続された状態で、穿孔部材3が第2方向D2に移動したときに、コネクタ4と挿通部材Iとの間の接続が解除されないように構成されていれば、特に限定されない。例えば、第2接続部は、ネジや係合爪などの他の機械的な接続構造であってもよいし、磁力によって接続されるように構成されていてもよい。また、第2接続部42は、本実施形態では、挿通部材Iと分離された状態のコネクタ4を挿通部材Iの端部に接続するように構成されているが、コネクタは予め挿通部材Iに接続されていてもよい。
【0063】
なお、本実施形態では、コネクタ4は、一端4a側に拡幅部43を有しているが、拡幅部43については後述する。
【0064】
上述したように、本実施形態の挿通部材導出装置1において、穿孔部材3は、
図3および
図4に示されるように、導出孔24の内部で、導出孔24の軸心と同軸上(軸X上)に、第1方向D1および第2方向D2に案内されるように構成されている。また、導出孔24は、穿孔部材3が、壁状の組織Tの他方Tb側で、挿通部材Iに接続された状態のコネクタ4に接続された状態で穿孔部材3を第2方向D2に移動させるときに、コネクタ4および挿通部材Iが挿通可能な大きさを有している。これにより、挿通部材Iのうち、壁状の組織Tを貫通した挿通孔H2を通る部分と、挿通部材Iのうち、本体2の導出孔24を通る部分とが同軸上に配置される。したがって、本体2が、挿通部材Iのうち、導出孔24に挿通されている部分から力を受けて、本体2の所望の位置に対して浮き上がりや沈み込みが生じることが抑制される。
【0065】
また、穿孔部材3によって壁状の組織Tの穿孔が完了し、穿孔部材3とコネクタ4および挿通部材Iとが接続された後(
図11参照)、穿孔部材3は、
図12および
図13に示されるように、導出孔24の軸心(軸X)に沿って第2方向D2に移動するように、導出孔24に案内される。これにより、コネクタ4および挿通部材Iが、壁状の組織Tの他方Tb側から一方Ta側へと挿通される際に、導出孔24の第1開口部24aに向かって正確に軸Xに沿って案内され、挿通部材Iが所望の角度で壁状の組織Tを貫通して導出孔24に挿入される。以上のように、本実施形態の挿通部材導出装置1は、正確かつ容易に挿通部材Iを壁状の組織Tから導出することができる。
【0066】
以下、上記作用効果についてより詳細に説明する。
【0067】
穿孔部材3が上述したように、導出孔24の内部で、導出孔24の軸心と同軸上に案内されることによって、穿孔部材3によって形成される穿孔孔H1は、
図4に示されるように、導出孔24の軸心と同軸の貫通孔として形成される。したがって、壁状の組織Tを貫通して形成された穿孔孔H1が延びる角度と、壁状の組織Tの一方Ta側の導出孔24の軸心の角度との間にズレが生じにくい。したがって、挿通部材Iが、
図13に示されるように、壁状の組織Tの他方Tb側から一方Ta側に導出されたときに、挿通部材Iのうち、壁状の組織Tを貫通した挿通孔H2(
図13参照)を通る部分P1と、導出孔24(または固定装置Fの連通路F21)を通る部分P2とは、共に軸Xに沿って直線状となる。したがって、挿通部材Iのうち、壁状の組織Tを貫通した挿通孔H2を通る部分P1と、導出孔24を通る部分P2とが異なる角度で延びることによって生じる、本体2や固定装置Fが壁状の組織Tの表面に対して浮き上がったり、沈み込んだりすることが抑制される。特に、人体の壁状の組織に対して所定の角度で穿孔孔H1を穿孔する際、所定の角度が人体の壁状の組織に対して傾斜した角度である場合、特に傾斜角度が30~60度の場合、従来用いられていたトンネラーのような先端が円弧状の導入部材により切開部位を広げながら壁状組織Tを挿通させるものでは、導入部材が皮膚表面上を滑ったりするため、穿孔作業が難しい。本実施形態の挿通部材導出装置1を用いることで、穿孔部材3が皮膚上面上で滑ることが無く、また、上述した効果により穿孔作業が容易となる。従って、固定装備Fを皮膚ボタンとして用いた場合、ドライブラインを斜めに導出することができ、皮膚に対して垂直に導出した場合と比べて衣服下でドライブラインが邪魔になることがない。
【0068】
以下、この点についてより詳細に説明する。本実施形態の挿通部材導出装置1とは異なり、トンネラーなどの穿孔部材で挿通部材Iを通すための穿孔孔を形成する場合、壁状の組織Tの一方側から他方側へ、または他方側から一方側へと穿孔部材を押し込む必要がある。しかし、穿孔孔の理想の位置および角度に対してズレが生じやすい。穿孔孔の角度が理想の角度からズレが生じてしまった状態が、
図15の参考例に示されている。
図15において、理想の角度の穿孔孔をH10で示し、実際に形成された角度が理想の角度に対してズレが生じた穿孔孔をH20で示している。なお、理想の角度の穿孔孔H10は、穿孔孔の軸が固定装置Fの連通路F21の軸Xと同軸上となっている穿孔孔である。
【0069】
図15に示されるように、理想の角度に対してズレが生じた角度で形成された穿孔孔H20に挿入された挿通部材Iは、穿孔孔H20を通る部分P10と、固定装置Fの連通路F21を通る部分P20とで、延びる角度が異なるため、挿通部材Iは曲げ変形を受ける。曲げ変形を受けた挿通部材Iには直線状になろうとする復元力が加わる。したがって、固定装置Fには、挿通部材Iから、
図16において矢印Aで示す力が加わり、固定装置Fの一方側(
図16において左側の部分)が、壁状の組織Tに対して浮き上がってしまう。このように、壁状の組織Tと固定装置Fとの間に浮き上がり(または沈み込み)が生じると、壁状の組織Tへの引っ張りや圧縮荷重が加わり、壁状の組織Tの細胞の成長の促進が阻害されてしまい、治療が遅れる可能性がある。これに対して、本実施形態の挿通部材導出装置1では、
図13および
図14に示されるように、挿通部材Iのうち、壁状の組織Tを貫通した挿通孔H2を通る部分P1と、導出孔24(固定装置Fの連通路F21)を通る部分P2とは、共に軸Xに沿って直線状となる。したがって、壁状の組織Tと本体2(固定装置F)との間に、壁状の組織Tに対する浮き上がりや沈み込みが生じることが抑制され、壁状の組織Tの細胞の成長の促進が阻害されることが抑制される。
【0070】
また、本実施形態では、穿孔部材3の穿孔軸部32の最大寸法は、挿通部材Iの外径よりも小さくなっている。したがって、壁状の組織Tに穿孔孔H1を容易に形成することができる。挿通部材Iを導出するために、挿通部材Iと同じ外径を有する太いトンネラーなどの穿孔部材を用いた場合、壁状の組織Tを穿孔する際に大きな力が必要となる。これに対して、本実施形態では、穿孔部材3の穿孔軸部32が挿通部材Iの外径よりも細いので、小さな力で壁状の組織Tに穿孔孔H1を形成することができる。
【0071】
また、ガイド部材5は、
図12および
図13に示されるように、穿孔部材3と共に、導出孔24から引き出し可能に構成されている。この場合、ガイド部材5が導出孔24から引き出されたときに、穿孔部材3もガイド部材5と共に導出孔24から引き出される。したがって、ガイド部材5のガイド部52によって塞がれた導出孔24からガイド部52が抜去される操作時に、穿孔部材3の第2方向D2の移動と、コネクタ4および挿通部材Iの導出操作とが同時に行われる。したがって、複雑な操作を行うことなく、挿通部材Iの導出を行うことができ、作業性が向上する。
【0072】
本実施形態では、コネクタ4は、
図4、
図11および
図12に示されるように、穿孔部材3が、壁状の組織Tの他方Tb側において、挿通部材Iに接続されたコネクタ4に接続された状態で、穿孔部材3を第2方向D2に移動させる際に、穿孔部材3によって穿孔された穿孔孔H1を広げるために、径方向での幅が拡幅された拡幅部43を有している。拡幅部43は、
図11および
図12に示されるように、コネクタ4が穿孔孔H1を通って第2方向D2に移動するときに、穿孔部材3によって形成された穿孔孔H1を広げるように作用する。これにより、穿孔部材3によって穿孔孔H1が形成された後、穿孔部材3が第2方向D2へ移動する際に、同様に第2方向D2に移動するコネクタ4の拡幅部43によって穿孔孔H1が広げられる。したがって、コネクタ4に対して第1方向D1側に接続された挿通部材Iは、穿孔孔H1が広げられた挿通孔H2(
図13参照)を通ることができる。したがって、細い穿孔部材3によって壁状の組織Tの穿孔を容易にしつつ、穿孔部材3を第2方向D2に引き出すことで、コネクタ4によって穿孔孔H1が広げられながら、挿通部材Iが導出される。したがって、壁状の組織Tへの穿孔から挿通部材Iの導出までの一連の動作が非常に容易となる。
【0073】
拡幅部43の形状は、コネクタ4が第2方向D2に移動したときに穿孔孔H1を広げることができれば、特に限定されない。本実施形態では、拡幅部43は、
図4、
図11および
図12に示されるように、コネクタ4の一端4a側から他端4b側に向かうにつれて拡幅する円錐台状に形成されたテーパー部43aを有している。テーパー部43aの最大の外径は、挿通部材Iの外径と同等であるかまたは大きくなるように構成されている。これにより、コネクタ4の拡幅部43が通った後の穿孔孔H1をより容易に広げることができ、穿孔孔H1が広げられて形成された挿通孔H2は、挿通部材Iの外径と同等かそれ以上となる。このように、コネクタ4が第2方向D2で挿通部材Iに先導することによって挿通孔H2が形成される。これにより、挿通部材Iを抵抗無く壁状の組織Tから導出することができる。なお、テーパー部43aは、本実施形態では、滑らかな斜面によって構成されているが、テーパー部は、段差状に拡幅することで円錐台状となるように構成されていてもよい。
【0074】
次に、挿通部材導出装置1の作用効果について、
図9~
図13を参照して、人工補助心臓の挿通部材(ドライブライン。以下、ドライブラインIと呼ぶ)を体内から体外へと導出する場合を例に挙げてより具体的に説明する。なお、以下の説明はあくまで一例であり、以下の説明によって本発明が限定されるものではない。
【0075】
まず、ドライブラインIと接続された人工補助心臓(図示せず)が患者の体内に埋め込まれる。次に、ドライブラインIを体内から体外へと導出するために、
図9に示されるように、挿通部材導出装置1が壁状の組織Tの所定の位置、具体的には患者の腹部の所定の位置に設置される。なお、挿通部材導出装置1は、ドライブラインIが導出された後、最終的に固定装置Fと取り替えられる。
【0076】
挿通部材導出装置1の腹部への設置は、壁状の組織Tの一部である皮膚を切開して、本体2のフランジ部22を皮膚の下側に潜り込ませることによって行われる。本体2の本体部21およびフランジ部22は、固定装置Fの固定部F1および連通部F2(
図1参照)に対応した形状および大きさを有しており、この設置作業によって、後に固定装置Fが確実に取り付けることが確認される。
【0077】
図9に示されるように、本体2が壁状の組織Tに設置された状態において、ガイド部材5のガイド部52は、本体2の導出孔24内に挿入されており、雄ネジであるガイド部材5の係合部Eが雌ネジである本体2の被係合部24cに螺合しているので、ガイド部材5は本体2に対して軸X方向の移動が規制された状態で固定されている。また、穿孔部材3は、ガイド部材5のガイド孔51内に挿入されており、穿孔部材3の先端部31は導出孔24の第1開口部24aから第1方向D1に突出していない。
【0078】
本体2の壁状の組織Tへの設置が完了すると、
図10に示されるように、穿孔部材3によって壁状の組織Tに穿孔孔H1が形成される。具体的には、本体2の把持部23を持って本体2が傾かないようにした状態で、穿孔部材3が第1方向D1に押し込まれる。穿孔部材3はガイド孔51によって導出孔24と同軸上に移動するように案内されているので、壁状の組織Tに導出孔24と同軸上に延びる穿孔孔H1が形成される。
【0079】
この際、ガイド部材5の張り出し部53の第1方向D1側の面に施術者の指が掛けられ、同じ手の別の指によって穿孔部材3が第1方向D1に押し込まれる。これによって、注射器のプランジャの操作のように簡単な操作で穿孔部材3を壁状の組織Tに押し込むことができる。穿孔部材3はドライブラインIよりも細くなっており、皮膚および筋層を容易に貫通させることができる。
【0080】
また、穿孔部材3が第1方向D1に所定量移動すると、穿孔部材3のストッパ部33が、張り出し部53の第2方向D2側の面に設けられた当接部53aに当接して、穿孔部材3は停止する。したがって、穿孔部材3が壁状の組織Tに誤って深く穿孔されることが抑制される。これにより、体内にある他の臓器などの組織ORが穿孔部材3の先端部31によって傷つけられることが抑制される。
【0081】
穿孔部材3が壁状の組織Tの他方(体内)Tb側まで到達すると、
図11に示されるように、施術者によって、患者の体内で穿孔部材3とドライブラインIとがコネクタ4によって接続される。具体的には、雄ネジである穿孔部材3の接続部Cに、雌ネジであるコネクタ4の第1接続部41が螺合されることで、穿孔部材3とコネクタ4とが接続される。また、コネクタ4とドライブラインIとは、ドライブラインIの端部に設けられた雄プラグである連結部Iaが、コネクタ4の他端4bに設けられた雌プラグである第2接続部42に差し込まれて接続される。これにより、穿孔部材3、コネクタ4およびドライブラインIが軸X方向で一体的に接続される。
【0082】
穿孔部材3とドライブラインIとがコネクタ4を介して接続されると、
図12に示されるように、ガイド部材5が本体2から取り外される。具体的には、ガイド部材5を軸X周りに回転させることで、ガイド部材5の係合部Eと本体2の被係合部24cとの螺合が解除されて、ガイド部材5のガイド部52を導出孔24から抜去することが可能となる。ガイド部材5のガイド部52が導出孔24から抜去され、ガイド部材5がさらに第2方向D2に移動すると、ガイド部材5とストッパ部33の部位で軸X方向に係合している穿孔部材3も第2方向D2に移動する。これにより、穿孔部材3によってコネクタ4および挿通部材Iも第2方向D2に移動する。
【0083】
コネクタ4が第2方向D2に移動する際、
図12に示されるように、コネクタ4の一端4a側に設けられたテーパー部43aが穿孔孔H1を径方向に押し広げる。さらにコネクタ4が第2方向D2に移動すると、穿孔孔H1は、コネクタ4のテーパー部43aによってドライブラインIが通ることができる大きさに広げられて、挿通孔H2が形成される(
図13参照)。コネクタ4およびドライブラインIが挿通孔H2を通過すると、
図13に示されるように、ドライブラインIは、本体2の導出孔24を通過して体外に導出される。
【0084】
ドライブラインIが体外に導出されると、コネクタ4とドライブラインIの接続が解除され、本体2が壁状の組織Tから取り外され、
図14に示されるように、本体2が設けられた場所に固定装置Fが固定される。固定装置Fの連通路F21は、本体2の導出孔24と同じ角度で傾斜しており、固定装置Fの連通路F21と挿通孔H2とは同軸上に延びている。具体的には、ドライブラインIは、
図13に示されるように、連通路F21と挿通孔H2に沿って直線状に延びる。したがって、ドライブラインIのうち、挿通孔H2を通る部分P1と、連通路F21を通る部分P2とが異なる角度で延びることによって生じる、固定装置Fの壁状の組織Tからの浮き上がりや、沈み込みが抑制される。
【0085】
<第2実施形態>
第2実施形態は、第1実施形態と異なり、ガイド部材5が設けられておらず、穿孔部材5が本体2の導出孔24に直接的に案内されている。なお、ガイド部材5が設けられていない点以外は、基本的には第1実施形態と同様の構成とすることができ、同様の構成についての説明は省略する。第1実施形態で説明した事項は、第2実施形態において適用することができる。
【0086】
本実施形態では、
図17に示されるように、穿孔部材3に導出孔24に案内されるガイド部34が設けられている。導出孔24は、ガイド部34の外径に対応した内径(例えば、ガイド部34の最大の外径の100~110%、好ましくは100~105%、より好ましくは、100~103%の内径)を有している。ガイド部34は、穿孔部材3によって壁状の組織Tが穿孔されたときに、導出孔24の第1開口部24aに対して第1方向D1に突出しない位置に設けられている。本実施形態では、穿孔部材3のガイド部34が、第1実施形態のガイド部材5のガイド部52と同様の機能を有する。
【0087】
また、本実施形態では、本体2が、穿孔部材3のストッパ部33と当接する当接部26を有している。当接部26は、導出孔24の第2方向D2側の開口の周縁部によって構成されている。本体2の当接部26は、第1実施形態のガイド部材3の当接部53aと同様の機能を有する。なお、第2実施形態において、本体2はフランジ部27を有しており、フランジ部27の第2方向D2側の端面に当接部26が設けられている。
【0088】
上記以外の構成は、基本的に第1実施形態と同様であり、第2実施形態の挿通部材導出装置1は、第1実施形態の挿通部材導出装置1と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 挿通部材導出装置
2 本体
21 本体部
22 フランジ部
23 把持部
24 導出孔
24a 第1開口部
24b 第2開口部
24c 被係合部
25 本体側当接面
26 当接部
27 フランジ部
3 穿孔部材
31 穿孔部材の先端部
32 穿孔軸部
33 ストッパ部
34 ガイド部
4 コネクタ
4a 一端
4b 他端
41 第1接続部
41a 筒状の中空部
42 第2接続部
42a 筒状の中空部
43 拡幅部
43a テーパー部
5 ガイド部材
51 ガイド孔
52 ガイド部
53 張り出し部
53a 当接部
54 ストッパ面
55 筒状部
C 接続部
D1 第1方向
D2 第2方向
E ガイド部材の係合部
F 固定装置
F1 固定部
F2 連通部
F21 連通路
F3 チャック部材
H1 穿孔孔
H10 理想の角度の穿孔孔
H2 挿通孔
H20 理想の角度に対してズレが生じた穿孔孔
I 挿通部材(ドライブライン)
Ia 連結部
Ib 挿通部材本体
Ic 冷却水循環通路
Id 電源ケーブル
OR 他の組織
P1 挿通部材のうち挿通孔を通る部分
P10 穿孔孔を通る部分
P2 導出孔(または連通路)を通る部分
P20 連通路を通る部分
T 壁状の組織
Ta 壁状の組織の一方
Tb 壁状の組織の他方
TD 壁状の組織の壁厚方向
X 穿孔部材の軸
θ 第1方向と、壁状の組織の一方側の面とが為す角