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特許7542495ロボットティーチングデータ作成システム及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】ロボットティーチングデータ作成システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/127 20060101AFI20240823BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20240823BHJP
   G05B 19/4093 20060101ALI20240823BHJP
   B25J 9/22 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B23K9/127 509B
B23K31/00 F
G05B19/4093 D
G05B19/4093 E
B25J9/22 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021131378
(22)【出願日】2021-08-11
(65)【公開番号】P2023025924
(43)【公開日】2023-02-24
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】507228172
【氏名又は名称】株式会社JSOL
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】功刀 厚志
(72)【発明者】
【氏名】紺野 誉裕
(72)【発明者】
【氏名】広居 真也
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-117864(JP,A)
【文献】特開2002-239957(JP,A)
【文献】特開2006-190228(JP,A)
【文献】国際公開第2015/040980(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/127
B23K 31/00
G05B 19/4093
B25J 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ロボット用のティーチングデータ作成システムであって、
前記ティーチングデータは、
前記溶接ロボットが、所定の部材に設けられている複数の溶接線に対して溶接を行うときに通過する複数の溶接指示点と、
前記溶接ロボットが前記溶接指示点を通過するときに従う溶接順序と、
前記溶接ロボットが前記複数の溶接線の外部を移動するとき、前記部材及び前記部材の周辺物と干渉しないように通過する回避指示点と、
前記溶接ロボットが前記回避指示点を通過するときに従う回避順序とを含んでおり、
前記ティーチングデータ作成システムは、
前記溶接順序、前記回避指示点、及び前記回避順序を調整して、前記ティーチングデータを再構成するティーチングデータ再構成プロセスと、
前記ティーチングデータ再構成プロセスにおいて再構成された前記ティーチングデータを、前記溶接ロボットを動作させるためのソフトウェアが受付可能な形式に変換して、前記溶接ロボットまたは前記ソフトウェアに向けて出力するティーチングデータ出力プロセスとを備えており、
前記ティーチングデータ再構成プロセスは、
前記溶接指示点及び前記溶接順序が前記複数の溶接線ごとにまとめられている複数の溶接グループを参照する指示点グループ参照プロセスと、
前記部材の溶接変形を低減させる修正溶接順序に従って、前記複数の溶接グループの順序を入れ替えるグループ入れ替えプロセスを備えることを特徴とするティーチングデータ作成システム。
【請求項2】
前記ティーチングデータ再構成プロセスは、
前記溶接ロボットが前記部材及び前記周辺物と干渉しないように、前記回避指示点と前記回避順序を調整する干渉回避プロセスを備えることを特徴とする請求項1に記載のティーチングデータ作成システム。
【請求項3】
前記溶接ロボットは回転可能なジョイントを備えており、
前記溶接指示点と前記回避指示点は、それぞれ、前記溶接ロボットの前記ジョイントの目標値を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のティーチングデータ作成システム。
【請求項4】
前記ティーチングデータ作成システムは、前記複数の溶接グループが予め設定されていない場合、前記複数の溶接線ごとに前記複数の溶接指示点を自動的に振り分けることによって複数の仮の溶接グループを設定して、前記複数の仮の溶接グループの始点と終点の近傍に位置する前記回避指示点を前記複数の仮の溶接グループに追加することによって前記複数の溶接グループを設定する指示点グループ設定プロセスを備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のティーチングデータ作成システム。
【請求項5】
前記ティーチングデータ作成システムは、前記複数の溶接グループが予め設定されている場合、前記複数の溶接線の一部に対して前記複数の溶接指示点の一部を振り分けることによって複数の仮の追加溶接グループを設定して、前記複数の仮の追加溶接グループの始点と終点の近傍に位置する前記回避指示点を前記複数の仮の追加溶接グループに追加することによって前記複数の追加溶接グループを設定する指示点グループ設定プロセスを備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のティーチングデータ作成システム。
【請求項6】
前記ティーチングデータ作成システムは、前記修正溶接順序を出力する溶接変形低減プロセスを備えており、
前記溶接変形低減プロセスでは、前記複数の溶接グループの順序を入れ替えることによって得られる溶接グループ変更順序ごとに前記部材の前記溶接変形の予測結果を算出することを繰り返して、前記複数の溶接グループの初期順序よりも前記部材の前記溶接変形の予測結果が小さい前記溶接グループ変更順序が前記修正溶接順序として選ばれることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のティーチングデータ作成システム。
【請求項7】
前記溶接変形低減プロセスは、前記初期順序よりも溶接に必要なサイクルタイムが小さく、且つ前記初期順序よりも前記部材の前記溶接変形の予測結果が小さい前記溶接グループ変更順序を前記修正溶接順序として選ぶことを特徴とする請求項6に記載のティーチングデータ作成システム。
【請求項8】
前記周辺物は、前記部材を固定するための治具を含むことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のティーチングデータ作成システム。
【請求項9】
溶接ロボット用のティーチングデータ作成プログラムであって、
前記ティーチングデータは、
前記溶接ロボットが、所定の部材に設けられている複数の溶接線に対して溶接を行うときに通過する複数の溶接指示点と、
前記溶接ロボットが前記溶接指示点を通過するときに従う溶接順序と、
前記溶接ロボットが前記複数の溶接線の外部を移動するとき、前記部材及び前記部材の周辺物と干渉しないように通過する回避指示点と、
前記溶接ロボットが前記回避指示点を通過するときに従う回避順序とを含んでおり、
前記ティーチングデータ作成プログラムは、
前記溶接順序、前記回避指示点、及び前記回避順序を調整して、前記ティーチングデータを再構成するティーチングデータ再構成プロセスと、
前記ティーチングデータ再構成プロセスにおいて再構成された前記ティーチングデータを、前記溶接ロボットを動作させるためのソフトウェアが受付可能な形式に変換して、前記溶接ロボットまたは前記ソフトウェアに向けて出力するティーチングデータ出力プロセスとを備えており、
前記ティーチングデータ再構成プロセスは、
前記溶接指示点及び前記溶接順序が前記複数の溶接線ごとにまとめられている複数の溶接グループを参照する指示点グループ参照プロセスと、
前記部材の溶接変形を低減させる修正溶接順序に従って、前記複数の溶接グループの順序を入れ替えるグループ入れ替えプロセスを備えることを特徴とするティーチングデータ作成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットティーチングデータ作成システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の部材を溶接して構造体を製造する場合、回転可能なジョイントを備える溶接ロボットが用いられることがある。
【0003】
上述の溶接ロボットは、予め決められたティーチングデータに基づいてジョイントを駆動させることにより、所望の動作を行うように構成されている。このティーチングデータは、溶接ロボットを動作させるジョイントの回転角度を含んでおり、例えば溶接ロボットが構造体や構造体を固定するための治具と干渉することなく、且つ溶接に必要なサイクルタイムが最小となる動作ができるように決められる。
【0004】
上述のように決められたティーチングデータに基づいて溶接を行うことによって、溶接の品質が一定に保たれると共に、溶接に必要なサイクルタイムを削減できる。一方、溶接ロボットは溶接中の微調整を行うことが難しいため、溶接ロボットによる溶接は、手作業による溶接に比べて、溶接によって生じる構造体の変形、すなわち溶接変形が大きくなるという課題がある。
【0005】
例えば特許文献1には、固有変形データを用いて構造体全体の溶接変形をFEM解析によって予測する溶接変形予測システム及び溶接変形予測プログラムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-117927号公報
【0007】
また、溶接ロボットによる溶接を行う場合、溶接が行われる部材に設けられている複数の溶接線に対して溶接を行うときの順序、すなわち溶接順序に応じて、構造体全体の溶接変形が変化することが知られている。
【0008】
したがって、上述のティーチングデータは、溶接変形が大きくならないように、構造体全体の溶接変形を溶接順序ごとに予測して、溶接変形が最も小さい溶接順序を組み込まれる必要がある。
【0009】
また、ティーチングデータは、溶接順序だけではなく、例えば溶接ロボットのアームの先端に設けられている溶接トーチが複数の溶接線の外部を移動するときの順序を含む。溶接ロボットは、この順序に従って動作するとき、溶接が行われる部材、及び該部材を固定するための治具などの周辺物と干渉する虞がある。
【0010】
したがって、上述のティーチングデータは、溶接ロボットが部材及び周辺物と干渉しないように構成される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、溶接変形を低減すると共に、溶接ロボットが部材及び周辺物と干渉することを防ぐティーチングデータ作成システム及びプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0013】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、溶接ロボット用のティーチングデータ作成システムであって、
前記ティーチングデータは、
前記溶接ロボットが、所定の部材に設けられている複数の溶接線に対して溶接を行うときに通過する複数の溶接指示点と、
前記溶接ロボットが前記溶接指示点を通過するときに従う溶接順序と、
前記溶接ロボットが前記複数の溶接線の外部を移動するとき、前記部材及び前記部材の周辺物と干渉しないように通過する回避指示点と、
前記溶接ロボットが前記回避指示点を通過するときに従う回避順序とを含んでおり、
前記ティーチングデータ作成システムは、
前記溶接順序、前記回避指示点、及び前記回避順序を調整して、前記ティーチングデータを再構成するティーチングデータ再構成プロセスと、
前記ティーチングデータ再構成プロセスにおいて再構成された前記ティーチングデータを、前記溶接ロボットを動作させるためのソフトウェアが受付可能な形式に変換して、前記溶接ロボットまたは前記ソフトウェアに向けて出力するティーチングデータ出力プロセスとを備えており、
前記ティーチングデータ再構成プロセスは、
前記溶接指示点及び前記溶接順序が前記複数の溶接線ごとにまとめられている複数の溶接グループを参照する指示点グループ参照プロセスと、
前記部材の溶接変形を低減させる修正溶接順序に従って、前記複数の溶接グループの順序を入れ替えるグループ入れ替えプロセスを備えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1の発明において、前記ティーチングデータ再構成プロセスは、
前記溶接ロボットが前記部材及び前記周辺物と干渉しないように、前記回避指示点と前記回避順序を調整する干渉回避プロセスを備えることを特徴とする。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2の発明において、前記溶接ロボットは回転可能なジョイントを備えており、
前記溶接指示点と前記回避指示点は、それぞれ、前記溶接ロボットの前記ジョイントの目標値を含むことを特徴とする。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項の発明において、前記ティーチングデータ作成システムは、前記複数の溶接グループが予め設定されていない場合、前記複数の溶接線ごとに前記複数の溶接指示点を自動的に振り分けることによって複数の仮の溶接グループを設定して、前記複数の仮の溶接グループの始点と終点の近傍に位置する前記回避指示点を前記複数の仮の溶接グループに追加することによって前記複数の溶接グループを設定する指示点グループ設定プロセスを備えることを特徴とする。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項の発明において、前記ティーチングデータ作成システムは、前記複数の溶接グループが予め設定されている場合、前記複数の溶接線の一部に対して前記複数の溶接指示点の一部を振り分けることによって複数の仮の追加溶接グループを設定して、前記複数の仮の追加溶接グループの始点と終点の近傍に位置する前記回避指示点を前記複数の仮の追加溶接グループに追加することによって前記複数の追加溶接グループを設定する指示点グループ設定プロセスを備えることを特徴とする。
【0018】
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項1から請求項5のいずれか1項の発明において、前記ティーチングデータ作成システムは、前記修正溶接順序を出力する溶接変形低減プロセスを備えており、
前記溶接変形低減プロセスでは、前記複数の溶接グループの順序を入れ替えることによって得られる溶接グループ変更順序ごとに前記部材の前記溶接変形の予測結果を算出することを繰り返して、前記複数の溶接グループの初期順序よりも前記部材の前記溶接変形の予測結果が小さい前記溶接グループ変更順序が前記修正溶接順序として選ばれることを特徴とする。
【0019】
また、請求項7に記載の発明は、前記請求項6の発明において、前記溶接変形低減プロセスは、前記初期順序よりも溶接に必要なサイクルタイムが小さく、且つ前記初期順序よりも前記部材の前記溶接変形の予測結果が小さい前記溶接グループ変更順序を前記修正溶接順序として選ぶことを特徴とする。
【0020】
また、請求項8に記載の発明は、前記請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の発明において、前記周辺物は、前記部材を固定するための治具を含むことを特徴とする。
【0021】
さらに、請求項9に記載の発明は、溶接ロボット用のティーチングデータ作成プログラムであって、
前記ティーチングデータは、
前記溶接ロボットが、所定の部材に設けられている複数の溶接線に対して溶接を行うときに通過する複数の溶接指示点と、
前記溶接ロボットが前記溶接指示点を通過するときに従う溶接順序と、
前記溶接ロボットが前記複数の溶接線の外部を移動するとき、前記部材及び前記部材の周辺物と干渉しないように通過する回避指示点と、
前記溶接ロボットが前記回避指示点を通過するときに従う回避順序とを含んでおり、
前記ティーチングデータ作成プログラムは、
前記溶接順序、前記回避指示点、及び前記回避順序を調整して、前記ティーチングデータを再構成するティーチングデータ再構成プロセスと、
前記ティーチングデータ再構成プロセスにおいて再構成された前記ティーチングデータを、前記溶接ロボットを動作させるためのソフトウェアが受付可能な形式に変換して、前記溶接ロボットまたは前記ソフトウェアに向けて出力するティーチングデータ出力プロセスとを備えており、
前記ティーチングデータ再構成プロセスは、
前記溶接指示点及び前記溶接順序が前記複数の溶接線ごとにまとめられている複数の溶接グループを参照する指示点グループ参照プロセスと、
前記部材の溶接変形を低減させる修正溶接順序に従って、前記複数の溶接グループの順序を入れ替えるグループ入れ替えプロセスを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
以上の構成により、本願各請求項の発明によれば、次の効果が得られる。
【0023】
まず、本願の請求項1に記載の発明によれば、ティーチングデータ作成システムのティーチングデータ再構成プロセスは、部材の溶接変形を低減させる修正溶接順序に従って、所定の部材に設けられている複数の溶接線に対して溶接を行うときに通過する複数の溶接指示点と、溶接ロボットが溶接指示点を通過するときに従う溶接順序とが複数の溶接線ごとにまとめられている複数の溶接グループの順序を入れ替えるグループ入れ替えプロセスを備える。したがって、溶接変形を低減すると共に、溶接ロボットが部材及び周辺物と干渉することを防ぐティーチングデータ作成システムを提供できる。
【0024】
また、請求項2に記載の発明によれば、ティーチングデータ作成システムのティーチングデータ再構成プロセスは、溶接ロボットが複数の溶接線の外部を移動するとき、部材及び周辺物と干渉しないように通過する回避指示点と、溶接ロボットが回避指示点を通過するときに従う回避順序とを調整する干渉回避プロセスを備える。したがって、溶接変形を低減すると共に、溶接ロボットが部材及び周辺物と干渉することをより防ぐティーチングデータ作成システムを提供できる。
【0025】
また、請求項3に記載の発明によれば、溶接ロボットは回転可能なジョイントを備える。また、溶接指示点と回避指示点は、それぞれ、溶接ロボットのジョイントの目標値を含む。したがって、溶接ロボットのジョイントは、溶接順序と回避順序に従って、ティーチングデータに含まれる溶接指示点と回避指示点に定められている回転角度や3次元座標などの目標値に達するように駆動するため、溶接ロボットは、溶接変形を低減すると共に、部材及び周辺物と干渉することを防ぐような位置と姿勢で動作できる。
【0026】
また、請求項4に記載の発明によれば、ティーチングデータ作成システムは、複数の溶接グループが予め設定されていない場合、複数の溶接線ごとに複数の溶接指示点を自動的に振り分けることによって複数の仮の溶接グループを設定して、複数の仮の溶接グループの始点と終点の近傍に位置する回避指示点を複数の仮の溶接グループに追加することによって複数の溶接グループを設定する指示点グループ設定プロセスを備える。したがって、溶接グループを予め設定することなく、ティーチングデータを作成することができる。
【0027】
また、請求項5に記載の発明によれば、ティーチングデータ作成システムは、複数の溶接グループが予め設定されている場合、複数の溶接線の一部に対して複数の溶接指示点の一部を振り分けることによって複数の仮の追加溶接グループを設定して、複数の仮の追加溶接グループの始点と終点の近傍に位置する回避指示点を複数の仮の追加溶接グループに追加することによって複数の追加溶接グループを設定する指示点グループ設定プロセスを備える。したがって、予め設定されている溶接グループと、新たに設定される追加溶接グループとにより、ティーチングデータを作成することができる。
【0028】
また、請求項6に記載の発明によれば、複数の溶接グループの順序を入れ替えることによって得られる溶接グループ変更順序ごとに部材の溶接変形の予測結果を算出することを繰り返して、複数の溶接グループの初期順序よりも部材の溶接変形の予測結果が小さい溶接グループ変更順序が修正溶接順序として選ばれる。この修正溶接順序に従って、複数の溶接指示点と溶接順序とが複数の溶接線ごとにまとめられている複数の溶接グループの順序を入れ替えることにより、部材の溶接変形を低減できる。
【0029】
また、請求項7に記載の発明によれば、複数の溶接グループの初期順序よりも溶接に必要なサイクルタイムが小さく、且つ初期順序よりも部材の溶接変形の予測結果が小さい溶接グループ変更順序が修正溶接順序として選ばれる。この修正溶接順序に従って、複数の溶接指示点と溶接順序とが複数の溶接線ごとにまとめられている複数の溶接グループの順序を入れ替えることにより、部材の溶接変形を低減すると共に、溶接に必要なサイクルタイムも低減できる。
【0030】
また、請求項8に記載の発明によれば、ティーチングデータ作成システムにおいて、ティーチングデータ再構成プロセスの干渉回避プロセスは、溶接ロボットが複数の溶接線の外部を移動するとき、部材及び治具と干渉しないように通過する回避指示点と、溶接ロボットが回避指示点を通過するときに従う回避順序とを調整する。したがって、溶接ロボットが部材及び治具と干渉することを防ぐティーチングデータ作成システムを提供できる。
【0031】
さらに、請求項9に記載の発明によれば、ティーチングデータ作成プログラムのティーチングデータ再構成プロセスは、部材の溶接変形を低減させる修正溶接順序に従って、所定の部材に設けられている複数の溶接線に対して溶接を行うときに通過する複数の溶接指示点と、溶接ロボットが溶接指示点を通過するときに従う溶接順序とが複数の溶接線ごとにまとめられている複数の溶接グループの順序を入れ替えるグループ入れ替えプロセスを備える。したがって、溶接変形を低減すると共に、溶接ロボットが部材及び周辺物と干渉することを防ぐティーチングデータ作成プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施形態に係る溶接ロボット、及び溶接が行われる部材の概略構成を示す図である。
図2図1の溶接ロボット用のティーチングデータ作成システムのフローチャートである。
図3図2のティーチングデータ取り込みプロセスを示すフローチャートである。
図4図3のティーチングデータ取り込みプロセスの入力画面を示す図である。
図5図2の溶接変形低減プロセスを示すフローチャートである。
図6図5の固有変形予測システムを示すフローチャートである。
図7図5の溶接変形低減プロセスにおいて予測される溶接変形のデータである。
図8図2のティーチングデータ再構成プロセスを示すフローチャートである。
図9図2の初期ティーチングデータを示す説明図である。
図10図9の初期ティーチングデータから修正されたティーチングデータを示す説明図である。
図11】本発明の別の実施形態に係るティーチングデータ再構成プロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0034】
図1は、本発明の実施形態に係る溶接ロボット、及び溶接が行われる部材の概略構成を示す図である。以下の説明では、図1における左右方向をX方向、上下方向をZ方向、X方向とZ方向に直交する方向(紙面の表裏方向)をY方向という。
【0035】
図1に示す溶接が行われる部材100は、図1におけるX方向の左右両側に延びる板状部材であり、X方向における略中央においてZ方向の上方に向けて突出する凸部102を有する。また、部材100は、平坦な直方体形状の台座110の上部に配置されていると共に、X方向の左右両端が、例えばバイスなどの治具112a,112bによってそれぞれ挟まれて固定されている。さらに、部材100の上面には、Z方向の上方に向けて延びる円柱部材104a,104bが凸部102に対するX方向の左右両側に配置されている。この円柱部材104a,104bと部材100は、例えばバイスなどの治具114a,114bによってそれぞれ挟まれて固定されている。この部材100と円柱部材104a,104bは、部材100と円柱部材104aとの間に設けられている略円弧状の溶接線L1で溶接されて、且つ部材100と円柱部材104bとの間に設けられている略円弧状の溶接線L2で溶接されることにより、溶接された構造体120として製造されるように構成されている。
【0036】
上述の部材100と円柱部材104a,104bは、隣接して配置されている溶接ロボット200によって溶接される。溶接ロボット200は、平坦な直方体形状の台座210の上面に配置されていると共に、回転可能な複数のジョイントを備える。台座210の上面には、Z方向に延びる第1軸212a周りに回転する溶接ロボット200の第1ジョイント212bが取り付けられている。第1ジョイント212bには、Z方向に延びる溶接ロボット200の第1リンク212cの一端が取り付けられている。第1リンク212cの他端には、Y方向に延びる第2軸214a周りに回転する溶接ロボット200の第2ジョイント214bが取り付けられている。第2ジョイント214bには、梁状に延びる溶接ロボット200の第2リンク214cの一端が取り付けられている。第2リンク214cの他端には、Y方向に延びる第3軸216a周りに回転する溶接ロボット200の第3ジョイント216bが取り付けられている。第3ジョイント216bには、梁状に延びる溶接ロボット200の第3リンク216cの一端が取り付けられている。第3リンク216cの他端には、Y方向に延びる第4軸218a周りに回転する溶接ロボット200の第4ジョイント218bが取り付けられている。第4ジョイント218bには、棒状に延びる溶接ロボット200の溶接トーチ220が取り付けられている。
【0037】
上述の溶接ロボット200は、外部に配置されているコンピュータ300によって制御されるように構成されている。特に、溶接ロボット200の動作、例えば第1ジョイント212bと第2ジョイント214bと第3ジョイント216bと第4ジョイント218bの回転、及び溶接トーチ220の起動などは、コンピュータ300から入力されるロボット用CAMソフト320に従って行われる。
【0038】
コンピュータ300は、中央演算装置311と、後述するティーチングデータ作成システムの実行に必要なデータ、及び溶接ロボット200の起動指示などを入力するためのキーボートなどの入力装置312と、ティーチングデータ作成システムの結果などを表示するためのディスプレイなどの表示装置313と、ティーチングデータ作成システムを実行するためのプログラムなどを記憶するメモリなどの記憶装置314と、ティーチングデータ作成システムによって作成されるロボット用CAMソフト320の固有書式ファイルに変換して、ロボット用CAMソフト320に向けて出力するための出力装置315を有している。
【0039】
中央演算装置311は、入力装置312、表示装置313、出力装置315、及び溶接ロボット200を制御するとともに、記憶装置314にアクセス可能に構成され、入力装置312を介して入力された情報と記憶装置314に記録されているプログラムやデータを用いて、ティーチングデータ作成システムを実行できるように構成されている。
【0040】
図2は、図1の溶接ロボット200用のティーチングデータ作成システムのフローチャートである。
【0041】
ティーチングデータ作成システム400は、ティーチングデータ作成システム400を実行する前に溶接ロボット200に予め設定されている初期ロボット用CAMソフト320aをティーチングデータ取り込みプロセスS1に入力する。このティーチングデータ取り込みプロセスS1は、コンピュータ300の入力装置312を介して、溶接が行われる部材100と円柱部材104a,104bの3次元データ、該部材100と該円柱部材104a,104bを固定する治具112a,112b,114a,114bの3次元データ、溶接ロボット200の3次元データが入力されるように構成されている。
【0042】
また、ティーチングデータ取り込みプロセスS1は、溶接ロボット200の溶接トーチ220が、部材100と円柱部材104a,104bとの間に設けられている複数の溶接線L1,L2に対して溶接を行うときに通過する複数の溶接指示点と、溶接ロボット200が該溶接指示点を通過するときに従う初期溶接順序と、溶接ロボット200が該複数の溶接線L1,L2の外部を移動するとき、部材100と円柱部材104a,104b及び治具112a,112b,114a,114bと干渉しないように通過する回避指示点と、溶接ロボット200が該回避指示点を通過するときに従う初期回避順序と、該溶接指示点及び該初期溶接順序が該複数の溶接線L1,L2ごとにまとめられている複数の溶接グループとが入力されるように構成されている。
【0043】
上述のティーチングデータ取り込みプロセスS1は、上述の入力された情報に応じて、初期溶接順序を含む初期溶接順序情報D1、溶接指示点と初期溶接順序と回避指示点と初期回避順序と溶接グループとを含む初期ティーチングデータD2、部材100と円柱部材104a,104bと治具112a,112b,114a,114bの3次元データに応じて決まる周辺物情報D3、及び溶接線L1,L2の位置と形状と該初期溶接順序情報D1に応じて決まる溶接位置D4、溶接条件D5、溶接順序情報D6を出力するように構成されている。
【0044】
次に、ティーチングデータ作成システム400は、上述の初期溶接順序情報D1を溶接変形低減プロセスS2に入力する。この溶接変形低減プロセスS2は、例えば特許文献1に記載の固有変形データを用いて構造体全体の溶接変形をFEM解析によって予測する固有変形予測システムS5と接続するように構成されている。この固有変形予測システムS5は、上述の溶接位置D4、溶接条件D5、溶接順序情報D6が入力されることにより、部材100と円柱部材104a,104bの溶接変形の予測結果D7を算出するように構成されている。算出された溶接変形の予測結果D7は、変形量評価プロセスS6に入力されて、溶接順序情報D6に対する溶接変形の予測結果D7としてコンピュータ300の記憶装置314に記録される。
【0045】
上述の変形量評価プロセスS6は、溶接変形の予測結果D7を記録した後、溶接変形低減プロセスS2に対して、溶接順序を初期溶接順序から変更する指示を送る。溶接変形低減プロセスS2は、溶接順序を初期溶接順序から変更する指示を受け取った後、溶接指示点及び初期溶接順序が複数の溶接線L1,L2ごとにまとめられている複数の溶接グループの順序を入れ替えることによって、溶接グループ変更順序D8を得る。溶接変形低減プロセスS2は、上述の溶接グループ変更順序D8を固有変形予測システムS5に入力して、溶接変形の予測結果D7を算出する。上述のように、溶接変形低減プロセスS2と固有変形予測システムS5は、溶接グループ変更順序D8ごとに溶接変形の予測結果D7を算出することを繰り返して、記憶装置314に記録された複数の溶接変形の予測結果D7の中から、初期溶接順序よりも溶接変形の予測結果D7が小さい溶接グループ変更順序D8を修正溶接順序D9として選ぶように構成されている。
【0046】
次に、ティーチングデータ作成システム400は、上述の初期ティーチングデータD2、周辺物情報D3、修正溶接順序D9をティーチングデータ再構成プロセスS3に入力する。このティーチングデータ再構成プロセスS3は、修正溶接順序D9に従って、溶接指示点及び初期溶接順序が複数の溶接線L1,L2ごとにまとめられている複数の溶接グループの順序を入れ替えて、部材100と円柱部材104a,104bの溶接変形が小さくなるティーチングデータを再構成するように構成されている。また、ティーチングデータ再構成プロセスS3は、ティーチングデータを再構成するとき、周辺物情報D3に基づいて、溶接ロボット200が部材100と円柱部材104a,104bと治具112a,112b,114a,114bと干渉しないように、回避指示点と初期回避順序を調整する。
【0047】
次に、ティーチングデータ作成システム400は、ティーチングデータ再構成プロセスS3において再構成されたティーチングデータをティーチングデータ出力プロセスS4に入力する。このティーチングデータ出力プロセスS4は、上述のティーチングデータを溶接ロボット200の第1ジョイント212bと第2ジョイント214bと第3ジョイント216bと第4ジョイント218bと溶接トーチ220を駆動させるためのロボット用CAMソフト320の固有書式ファイルに変換して、該固有書式ファイルをロボット用CAMソフト320に向けて出力するように構成されている。
【0048】
図3は、図2のティーチングデータ取り込みプロセスS1を示すフローチャートである。
【0049】
上述のように、ティーチングデータ作成システム400は、初期ロボット用CAMソフト320aがティーチングデータ取り込みプロセスS1に入力されると、溶接が行われる部材100の周辺の情報を取り込むよう構成されている形状取り込みプロセスS11、及び溶接ロボット200の溶接トーチ220が、部材100と円柱部材104a,104bとの間に設けられている複数の溶接線L1,L2に対して溶接を行うときに通過する複数の溶接指示点と、溶接ロボット200が溶接指示点を通過するときに従う初期溶接順序と、溶接ロボット200が該複数の溶接線L1,L2の外部を移動するとき、部材100と円柱部材104a,104b及び治具112a,112b,114a,114bと干渉しないように通過する回避指示点と、溶接ロボット200が回避指示点を通過するときに従う初期回避順序と、溶接指示点及び初期溶接順序D1が複数の溶接線L1,L2ごとにまとめられている複数の溶接グループとを取り込むように構成されている溶接順序取り込みプロセスS12を動作させる。その後、ティーチングデータ作成システム400は、溶接が行われる部材100の周辺の情報、溶接指示点、初期溶接順序、回避指示点、初期回避順序、及び溶接グループを取り込むための入力画面をコンピュータ300の表示装置313に表示する。
【0050】
図4は、図3のティーチングデータ取り込みプロセスS1の入力画面を示す図である。
【0051】
図4の入力画面W1において、入力画面W1の左側には、溶接が行われる部材100の周辺の情報を示すように構成されている形状取り込み画面W11が表示され、入力画面W1の右側には、溶接指示点、初期溶接順序、回避指示点、初期回避順序、及び溶接グループを示すように構成されている溶接順序取り込み画面W12が表示されている。
【0052】
実施形態において、コンピュータ300の記憶装置314には、溶接が行われる部材100と円柱部材104a,104bの3次元データ、部材100と円柱部材104a,104bを固定する治具112a,112b,114a,114bの3次元データ、溶接ロボット200の3次元データ、溶接ロボット200の溶接トーチ220が、部材100と円柱部材104a,104bとの間に設けられている複数の溶接線L1,L2に対して溶接を行うときに通過する複数の溶接指示点、溶接ロボット200が溶接指示点を通過するときに従う初期溶接順序、溶接ロボット200が複数の溶接線L1,L2の外部を移動するとき、部材100と円柱部材104a,104b及び治具112a,112b,114a,114bと干渉しないように通過する回避指示点、溶接ロボット200が回避指示点を通過するときに従う初期回避順序、及び溶接指示点と初期溶接順序が複数の溶接線L1,L2ごとにまとめられている複数の溶接グループが予め記録されている。
【0053】
溶接順序取り込み画面W12の下方には、上述の記憶装置314に記録されている情報を選択できるように構成されている選択ボタンW13が表示されている。
【0054】
形状取り込み画面W11には、上述の選択ボタンW13を押すことによって選択された部材100と円柱部材104a,104bの3次元データ、部材100と円柱部材104a,104bを固定する治具112a,112b,114a,114bの3次元データ、及び図示しない溶接ロボット200の3次元データの平面図と正面図が表示されている。
【0055】
一方、溶接順序取り込み画面W12には、上述の選択ボタンW13を押すことによって選択された複数の溶接指示点、初期溶接順序、回避指示点、初期回避順序、及び複数の溶接グループを含む初期ティーチングデータD2が表示されている。
【0056】
図9は、図2の初期ティーチングデータD2を示す説明図である。
【0057】
初期ティーチングデータD2において、溶接ロボット200が溶接を開始するとき、溶接トーチ220の先端は、回避指示点P0に配置されている。この回避指示点P0は、部材100と円柱部材104a,104bと治具112a,112b,114a,114bに干渉しないように、部材100と円柱部材104a,104bからY方向奥側に離れた位置に設定されている。
【0058】
次に、溶接トーチ220の先端は、回避指示点P0から回避指示点P1に移動する。この回避指示点P1は、部材100と円柱部材104a,104bと治具112a,112b,114a,114bに干渉しないように部材100と円柱部材104a,104bからY方向奥側に離れていると共に、Y方向において、回避指示点P0よりも部材100と円柱部材104a,104bに近い位置に設定されている。
【0059】
次に、溶接トーチ220の先端は、回避指示点P1から、溶接指示点P2~P5を順番に通過する。この溶接指示点P2~P5は、部材100と円柱部材104aとの間に設けられている略円弧状の溶接線L1上の位置に設定されている。したがって、溶接トーチ220の先端は、溶接指示点P2~P5を順番に通過するとき、略円弧状の溶接線L1に沿って移動する。溶接トーチ220の先端が溶接指示点P2~P5を順番に通過するとき、溶接線L1における溶接が行われる。
【0060】
次に、溶接トーチ220の先端は、溶接指示点P5から溶接指示点P6に移動する。この溶接指示点P6は、溶接線L1における溶接の終端として、溶接指示点P5からX方向右側の位置に設定されている。
【0061】
次に、溶接トーチ220の先端は、溶接指示点P6から回避指示点P7に移動する。この回避指示点P7は、部材100と円柱部材104a,104bと治具112a,112b,114a,114bに干渉しないように、部材100と円柱部材104a,104bからY方向奥側に離れた位置に設定されている。
【0062】
次に、溶接トーチ220の先端は、回避指示点P7から回避指示点P8に移動する。この回避指示点P8は、部材100と円柱部材104a,104bと治具112a,112b,114a,114bに干渉しないように回避指示点P7よりも部材100と円柱部材104a,104bからY方向奥側に離れていると共に、回避指示点P7よりもX方向右側の位置に設定されている。
【0063】
次に、溶接トーチ220の先端は、回避指示点P8から回避指示点P9に移動する。この回避指示点P9は、部材100と円柱部材104a,104bと治具112a,112b,114a,114bに干渉しないように部材100と円柱部材104a,104bからY方向奥側に離れていると共に、Y方向において、回避指示点P8よりも部材100と円柱部材104a,104bに近い位置、且つ回避指示点P8よりもX方向右側の位置に設定されている。
【0064】
次に、溶接トーチ220の先端は、回避指示点P9から、溶接指示点P10~P13を順番に通過する。この溶接指示点P10~P13は、部材100と円柱部材104bとの間に設けられている略円弧状の溶接線L2上の位置に設定されている。したがって、溶接トーチ220の先端は、溶接指示点P10~P13を順番に通過するとき、略円弧状の溶接線L2に沿って移動する。溶接トーチ220の先端が溶接指示点P10~P13を順番に通過するとき、溶接線L2における溶接が行われる。
【0065】
次に、溶接トーチ220の先端は、溶接指示点P13から溶接指示点P14に移動する。この溶接指示点P6は、溶接線L2における溶接の終端として、溶接指示点P13からX方向右側の位置に設定されている。
【0066】
次に、溶接トーチ220の先端は、溶接指示点P14から回避指示点P15に移動する。この回避指示点P15は、部材100と円柱部材104a,104bと治具112a,112b,114a,114bに干渉しないように、部材100と円柱部材104a,104bからY方向奥側に離れた位置に設定されている。
【0067】
次に、溶接トーチ220の先端は、回避指示点P15から回避指示点P16に移動する。この回避指示点P16は、部材100と円柱部材104a,104bと治具112a,112b,114a,114bに干渉しないように、回避指示点P15よりもX方向右側の位置に設定されている。
【0068】
したがって、初期溶接順序は、溶接トーチ220の先端が、回避指示点P1から溶接線L1上の位置に設定されている溶接指示点P2~P5を順番に通過した後、溶接指示点P6から回避指示点P7に移動する第1の溶接順序と、回避指示点P9から溶接線L2上の位置に設定されている溶接指示点P10~P13を順番に通過した後、溶接指示点P14から回避指示点P15に移動する第2の溶接順序とを含む。一方、初期回避順序は、溶接トーチ220の先端が、回避指示点P0から回避指示点P1に移動する第1の回避順序と、回避指示点P7から回避指示点P9に移動する第2の回避順序と、回避指示点P15から回避指示点P16に移動する第3の回避順序とを含む。
【0069】
また、溶接線L1における溶接に関する溶接指示点P2~P6と、回避指示点P1から溶接指示点P2~P6を順番に通過して回避指示点P7に移動する第1の溶接順序は、第1の溶接グループにまとめられる。さらに、溶接線L2における溶接に関する溶接指示点P10~P14と、回避指示点P9から溶接指示点P10~P14を順番に通過して回避指示点P15に移動する第2の溶接順序は、第2の溶接グループにまとめられる。
【0070】
上述のように、初期ティーチングデータD2は、溶接指示点P2~P6,P10~14と、第1の溶接順序及び第2の溶接順序を含む初期溶接順序と、回避指示点P0,P1,P7~P9,P15,P16と、第1の回避順序、第2の回避順序、及び第3の回避順序を含む初期回避順序と、第1の溶接グループと、第2の溶接グループとを含む。図4に示す溶接順序取り込み画面W12には、この初期ティーチングデータD2が表示されている。
【0071】
また、溶接順序取り込み画面W12と選択ボタンW13との間には、溶接トーチ220の先端が溶接指示点P2~P6,P10~14と回避指示点P0,P1,P7~P9,P15,P16にそれぞれ達するために入力される第1ジョイント212bの第1回転角度θ1、第2ジョイント214bの第2回転角度θ2、第3ジョイント216bの第3回転角度θ3、及び第4ジョイント218bの第4回転角度θ4を含む回転角度データ画面W14が表示されている。この第1ジョイント212bの第1回転角度θ1、第2ジョイント214bの第2回転角度θ2、第3ジョイント216bの第3回転角度θ3、及び第4ジョイント218bの第4回転角度θ4は、例えば、溶接指示点P2~P6,P10~14と回避指示点P0,P1,P7~P9,P15,P16の3次元座標に基づく逆運動学計算により予め計算されて、コンピュータ300の記憶装置314に記録されている。
【0072】
図4の入力画面W1には、選択ボタンW13に隣接するように入力ボタンW15が表示されている。この入力ボタンW15を押すことにより、形状取り込み画面W11に表示されている部材100と円柱部材104a,104bの3次元データ、部材100と円柱部材104a,104bを固定する治具112a,112b,114a,114bの3次元データ、及び溶接ロボット200の3次元データが形状取り込みプロセスS11に入力されると共に、溶接順序取り込み画面W12に表示されている溶接指示点P2~P6,P10~14、回避指示点P1から溶接指示点P2~P6を順番に通過して回避指示点P7に移動する第1の溶接順序と回避指示点P9から溶接指示点P10~P14を順番に通過して回避指示点P15に移動する第2の溶接順序とを含む初期溶接順序、回避指示点P0,P1,P7~P9,P15,P16、回避指示点P0から回避指示点P1に移動する第1の回避順序と回避指示点P7から回避指示点P9に移動する第2の回避順序と回避指示点P15から回避指示点P16に移動する第3の回避順序とを含む初期回避順序、及び第1の溶接グループと第2の溶接グループが溶接順序取り込みプロセスS12に入力される。
【0073】
形状取り込みプロセスS11は、部材100と円柱部材104a,104bの3次元データ、部材100と円柱部材104a,104bを固定する治具112a,112b,114a,114bの3次元データ、及び溶接ロボット200の3次元データが入力されると、周辺物情報D3として出力するように構成されている。
【0074】
溶接順序取り込みプロセスS12は、溶接指示点P2~P6,P10~14、回避指示点P1から溶接指示点P2~P6を順番に通過して回避指示点P7に移動する第1の溶接順序と回避指示点P9から溶接指示点P10~P14を順番に通過して回避指示点P15に移動する第2の溶接順序とを含む初期溶接順序、回避指示点P0,P1,P7~P9,P15,P16、回避指示点P0から回避指示点P1に移動する第1の回避順序と回避指示点P7から回避指示点P9に移動する第2の回避順序と回避指示点P15から回避指示点P16に移動する第3の回避順序とを含む初期回避順序、及び第1の溶接グループと第2の溶接グループが入力されると、初期ティーチングデータD2として出力するように構成されている。このとき、溶接順序取り込みプロセスS12は、初期溶接順序、第1の溶接グループ、第2の溶接グループ、及び第1の溶接グループと第2の溶接グループの順序を含む初期溶接順序情報D1も出力するように構成されている。
【0075】
一方、ティーチングデータ作成システム400は、溶接軌跡計算プロセスS13を動作させる。この溶接軌跡計算プロセスS13は、コンピュータ300の記憶装置314に記録されている部材100と円柱部材104a,104bの3次元データを参照して、部材100と円柱部材104a,104bとの間に設けられる溶接線L1,L2の軌跡を計算するように構成されている。
【0076】
次に、ティーチングデータ作成システム400は、溶接位置探索プロセスS14を動作させる。この溶接位置探索プロセスS14は、溶接軌跡計算プロセスS13において計算された溶接線L1,L2の軌跡と、溶接指示点P2~P6,P10~14と、形状取り込みプロセスS11から出力される部材100と円柱部材104a,104bの3次元データとに応じて、溶接トーチ220によって溶接を行うときの溶接位置を探索するように構成されている。
【0077】
次に、ティーチングデータ作成システム400は、溶接条件割当プロセスS15を動作させる。この溶接条件割当プロセスS15は、溶接位置探索プロセスS14において探索された溶接位置と、溶接順序取り込みプロセスS12から出力される初期溶接順序情報D1に応じて、溶接位置D4、溶接条件D5、及び溶接順序情報D6を出力するように構成されている。
【0078】
図5は、図2の溶接変形低減プロセスS2を示すフローチャートである。
【0079】
上述のように、ティーチングデータ作成システム400は、初期溶接順序情報D1がティーチングデータ取り込みプロセスS1の溶接順序取り込みプロセスS12から出力されると、初期溶接順序情報D1を溶接変形低減プロセスS2に入力して、溶接変形低減プロセスS2を動作させる。このとき、溶接変形低減プロセスS2と接続している固有変形予測システムS5は、ティーチングデータ取り込みプロセスS1の溶接条件割当プロセスS15から出力される溶接位置D4、溶接条件D5、及び溶接順序情報D6を受け取り、部材100と円柱部材104a,104bの溶接変形の予測結果D7を算出するように構成されている。
【0080】
図6は、図5の固有変形予測システムS5を示すフローチャートである。
【0081】
固有変形予測システムS5では、上述の溶接位置D4、溶接条件D5、及び溶接順序情報D6に応じて、部材100と円柱部材104a,104bとの間に設けられる溶接線L1,L2が抽出される(ステップS51)。
【0082】
次に、部材100と円柱部材104a,104bとを溶接することにより得られる構造体120の溶接変形を予測するためのFEM解析で用いる構造体120の溶接線L1,L2についての固有変形データが計算される(ステップS52)。構造体120の溶接線L1,L2について固有変形データが算出されると、溶接線L1,L2についての固有変形データが固有変形計算結果ファイルとしてコンピュータ300の記憶装置314に記録される。
【0083】
そして、構造体120の図形データから構造体120が有限要素分割されて解析モデルが作成され、該解析モデルに、固有変形計算結果ファイルに記録されている構造体120の溶接線L1,L2における固有変形データが適用され、弾性FEM解析によって構造体120の溶接変形が算出される(ステップS53)。構造体120の溶接変形が算出されると、解析結果である構造体120の溶接変形の予測結果D7が変形量評価プロセスS6に出力される(ステップS54)。
【0084】
図5に戻り、変形量評価プロセスS6は、溶接変形の予測結果D7を入力されると、該予測結果D7をコンピュータ300の記憶装置314に記録する。また、変形量評価プロセスS6は、溶接変形の予測結果D7を記録した後、溶接変形低減プロセスS2に対して、溶接順序を初期溶接順序から変更する指示を送る。
【0085】
上述の溶接順序を初期溶接順序から変更する指示は、溶接変形低減プロセスS2のGAアルゴリズムソルバーS21に送られる。GAアルゴリズムソルバーS21は、溶接順序を変更する指示を受け取ると、遺伝的アルゴリズムを用いて、溶接順序情報D6に含まれる溶接順序を変更する、すなわち初期溶接順序情報D1に含まれる溶接グループの順序を入れ替えるように構成されている。例えば、回避指示点P1から溶接指示点P2~P6を順番に通過して回避指示点P7に移動する第1の溶接順序を含む第1の溶接グループにおける溶接の後に、回避指示点P9から溶接指示点P10~P14を順番に通過して回避指示点P15に移動する第2の溶接順序を含む第2の溶接グループにおける溶接を行う初期溶接順序が、第2の溶接グループにおける溶接の後に第1の溶接グループにおける溶接を行う順序に入れ替えられる。
【0086】
次に、ティーチングデータ作成システム400は、溶接変形低減プロセスS2の試行ケース作成プロセスS22を動作させる。この試行ケース作成プロセスS22は、GAアルゴリズムソルバーS21において変更された溶接順序に従って、溶接順序を初期溶接順序から変更する、すなわち初期溶接順序情報D1に含まれる溶接グループの順序が入れ替えられた溶接グループ変更順序D8を出力するように構成されている。
【0087】
固有変形予測システムS5は、試行ケース作成プロセスS22から出力された溶接グループ変更順序D8を受け取り、構造体120の溶接変形の予測結果D7を再計算して変形量評価プロセスS6に再び出力するように構成されている。
【0088】
上述のように、溶接変形低減プロセスS2、固有変形予測システムS5、及び変形量評価プロセスS6は、溶接グループ変更順序D8ごとに溶接変形の予測結果D7を算出することを繰り返すと共に、算出された予測結果D7をコンピュータ300の記憶装置314に記録して、溶接変形のデータファイルを作成する。
【0089】
図7は、図5の溶接変形低減プロセスS2において予測される溶接変形のデータである。図7のデータの横軸は、溶接変形低減プロセスS2の試行ケース作成プロセスS22から出力された溶接グループ変更順序D8の試行回数を示す。図7のデータの縦軸は、溶接グループ変更順序D8ごとの溶接変形の予測結果D7の大きさを示す。したがって、図7は、溶接グループ変更順序D8に対する予測結果D7の大きさをまとめたデータを示す。
【0090】
記憶装置314に記録された予測結果D7の総数が所定の量に達すると、変形量評価プロセスS6は、記憶装置314に記録された複数の溶接変形の予測結果D7の中から、初期溶接順序よりも溶接変形の予測結果D7が小さい溶接グループ変更順序D8を修正溶接順序D9として選ぶように構成されている。
【0091】
図5に戻り、ティーチングデータ作成システム400は、変形量評価プロセスS6が修正溶接順序D9を選ぶとき、溶接変形低減プロセスS2のサイクルタイム計算プロセスS23を動作させる。このサイクルタイム計算プロセスS23は、変形量評価プロセスS6に介入して、それぞれの溶接グループ変更順序D8のサイクルタイムを計算する。
【0092】
実施形態における変形量評価プロセスS6は、初期溶接順序よりも溶接に必要なサイクルタイムが小さく、且つ初期溶接順序よりも溶接変形の予測結果D7が小さい溶接グループ変更順序D8を修正溶接順序D9として選ぶように構成されている。
【0093】
図8は、図2のティーチングデータ再構成プロセスS3を示すフローチャートである。
【0094】
上述のように、ティーチングデータ作成システム400は、ティーチングデータ取り込みプロセスS1から出力された初期ティーチングデータD2と周辺物情報D3、及び変形量評価プロセスS6において選ばれた修正溶接順序D9をティーチングデータ再構成プロセスS3に入力して、ティーチングデータ再構成プロセスS3を動作させる。
【0095】
ティーチングデータ作成システム400は、上述の初期ティーチングデータD2と周辺物情報D3と修正溶接順序D9がティーチングデータ再構成プロセスS3に入力されると、指示点グループ参照プロセスS31を動作させる。この指示点グループ参照プロセスS31は、初期ティーチングデータD2に基づいて、図9に示す回避指示点P1から溶接指示点P2~P6を順番に通過して回避指示点P7に移動する第1の溶接順序を含む第1の溶接グループ、回避指示点P9から溶接指示点P10~P14を順番に通過して回避指示点P15に移動する第2の溶接順序を含む第2の溶接グループ、及び第1の溶接グループと第2の溶接グループの順序を参照するように構成されている。
【0096】
次に、ティーチングデータ作成システム400は、指示点グループ参照プロセスS31において、第1の溶接グループ、第2の溶接グループ、及び第1の溶接グループと第2の溶接グループの順序が参照されると、グループ入れ替えプロセスS32を動作させる。このグループ入れ替えプロセスS32は、部材100と円柱部材104a,104bが溶接されることによって得られる構造体120の溶接変形を低減させる修正溶接順序D9に従って、上述の複数の溶接グループの順序を入れ替える。
【0097】
実施形態において、第2の溶接グループにおける溶接の後に第1の溶接グループにおける溶接を行う順序が修正溶接順序D9であるとする。この場合、溶接グループの順序は、第2の溶接グループにおける溶接の後に第1の溶接グループにおける溶接を行う順序に入れ替えられる。すなわち、溶接の順序は、回避指示点P9から溶接指示点P10~P14を順番に通過して回避指示点P15に移動する第2の溶接順序に従う溶接の後に、回避指示点P1から溶接指示点P2~P6を順番に通過して回避指示点P7に移動する第1の溶接順序に従う溶接を行う順序に入れ替えられる。
【0098】
次に、ティーチングデータ作成システム400は、グループ入れ替えプロセスS32において、複数の溶接グループの入れ替えが行われると、干渉回避プロセスS33を動作させる。この干渉回避プロセスS33は、溶接ロボット200が周辺物、すなわち部材100、円柱部材104a,104b、及び治具112a,112b,114a,114bと干渉しないように、回避指示点P0,P8,P16、及び回避指示点P0から回避指示点P1に移動する第1の回避順序と回避指示点P7から回避指示点P9に移動する第2の回避順序と回避指示点P15から回避指示点P16に移動する第3の回避順序とを含む初期回避順序を調整するように構成されている。
【0099】
図10は、図9の初期ティーチングデータから修正されたティーチングデータを示す説明図である。
【0100】
上述のグループ入れ替えプロセスS32における複数の溶接グループの入れ替えと、干渉回避プロセスS33における回避指示点P0,P8,P16及び初期回避順序の調整により、図10に示す修正されたティーチングデータが得られる。この修正されたティーチングデータは、溶接トーチ220の先端が、回避指示点P0から回避指示点P9に移動する第1の調整回避順序に従って移動して、回避指示点P9から溶接指示点P10~P14を順番に通過して回避指示点P15に移動する第2の溶接順序に従って移動して、回避指示点P15から回避指示点P8を経由して回避指示点P1に移動する第2の調整回避順序に従って移動して、回避指示点P1から溶接指示点P2~P6を順番に通過して回避指示点P7に移動する第1の溶接順序に従って移動して、回避指示点P7から回避指示点P16に移動する第3の調整回避順序に従って移動することを含む。この郵政されたティーチングデータにより、部材100と円柱部材104a,104bが溶接されることにより得られる構造体120の溶接変形は小さくなると共に、周辺物、すなわち部材100、円柱部材104a,104b、及び治具112a,112b,114a,114bとの干渉が回避される。
【0101】
次に、ティーチングデータ作成システム400は、干渉回避プロセスS33において、回避指示点P0,P8,P16及び初期回避順序が調整されると、ティーチングデータ再構成プロセスS34を動作させる。このティーチングデータ再構成プロセスS34は、上述の修正されたティーチングデータを再構成して、ティーチングデータ出力プロセスS4に出力するように構成されている。このティーチングデータ出力プロセスS4は、上述のように、修正されたティーチングデータを溶接ロボット200の第1ジョイント212bと第2ジョイント214bと第3ジョイント216bと第4ジョイント218bと溶接トーチ220を駆動させるためのロボット用CAMソフト320の固有書式ファイルに変換して、該固有書式ファイルをロボット用CAMソフト320に向けて出力する。
【0102】
このように、本実施形態に係るティーチングデータ作成システム400は、第1の溶接グループと第2の溶接グループの順序、回避指示点P0,P8,P16、及び初期回避順序を調整して、ティーチングデータを再構成するティーチングデータ再構成プロセスS3と、ティーチングデータ再構成プロセスS3において再構成されたティーチングデータを、溶接ロボット200の第1ジョイント212bと第2ジョイント214bと第3ジョイント216bと第4ジョイント218bと溶接トーチ220を駆動させるためのロボット用CAMソフト320の固有書式ファイルに変換して、該固有書式ファイルをロボット用CAMソフト320に向けて出力するティーチングデータ出力プロセスS4とを備える。また、ティーチングデータ再構成プロセスS3は、部材100と円柱部材104a,104bの溶接変形を低減させる修正溶接順序D9に従って、第1の溶接グループと第2の溶接グループの順序を入れ替えるグループ入れ替えプロセスS32と、溶接ロボット200が部材100と円柱部材104a,104b及び治具112a,112b,114a,114bと干渉しないように、回避指示点P0,P8,P16及び初期回避順序を調整する干渉回避プロセスS33とを備えることを特徴とする。
【0103】
上述のグループ入れ替えプロセスS32によって、部材100と円柱部材104a,104bの溶接変形を低減させるように第1の溶接グループと第2の溶接グループの順序を入れ替えると共に、干渉回避プロセスS33によって、溶接ロボット200が部材100と円柱部材104a,104b及び治具112a,112b,114a,114bと干渉することを防ぐように回避指示点P0,P8,P16及び回避順序を調整できる。したがって、溶接変形を低減すると共に、溶接ロボット200が部材100と円柱部材104a,104b及び治具112a,112b,114a,114bと干渉することを防ぐティーチングデータ作成システム400、及びティーチングデータ作成システム400を実行するためのプログラムを提供できる。
【0104】
また、溶接ロボット200の第1ジョイント212bと第2ジョイント214bと第3ジョイント216bと第4ジョイント218bと溶接トーチ220は、ティーチングデータに含まれる溶接順序と移動順序に従って、溶接指示点P2~P6,P10~P14と回避指示点P0,P1,P7~P9,P15,P16において定められる第1回転角度θ1、第2回転角度θ2、第3回転角度θ3、及び第4回転角度θ4にそれぞれ達するように駆動する。したがって、溶接ロボット200は、溶接変形を低減すると共に、部材100と円柱部材104a,104b及び治具112a,112b,114a,114bと干渉することを防ぐような位置と姿勢で動作できる。
【0105】
また、第1の溶接グループと第2の溶接グループの順序を入れ替えることによって得られる溶接グループ変更順序D8ごとに部材100と円柱部材104a,104bの溶接変形の予測結果D7を算出することを繰り返して、第1の溶接グループと第2の溶接グループの初期順序よりも部材100と円柱部材104a,104bの溶接変形の予測結果D7が小さい溶接グループ変更順序D8が、部材100と円柱部材104a,104bの溶接変形を低減させる修正溶接順序D9として選ばれる。この修正溶接順序D9に従って、複数の溶接指示点P2~P6,P10~P14と第1及び第2の溶接順序とが複数の溶接線L1,L2ごとにまとめられている第1の溶接グループと第2の溶接グループの順序を入れ替えることにより、部材100と円柱部材104a,104bの溶接変形を低減できる。
【0106】
また、第1の溶接グループと第2の溶接グループの初期順序よりも溶接に必要なサイクルタイムが小さく、且つ初期順序よりも部材100と円柱部材104a,104bの溶接変形の予測結果D7が小さい溶接グループ変更順序D8が修正溶接順序D9として選ばれる。この修正溶接順序D9に従って、複数の溶接指示点P2~P6,P10~P14と第1及び第2の溶接順序とが複数の溶接線L1,L2ごとにまとめられている第1の溶接グループと第2の溶接グループの順序を入れ替えることにより、部材100と円柱部材104a,104bの溶接変形を低減すると共に、溶接に必要なサイクルタイムも低減できる。
【0107】
また、ティーチングデータ再構成プロセスS3の干渉回避プロセスS33は、溶接ロボット200が複数の溶接線L1,L2の外部を移動するとき、部材100と円柱部材104a,104b及び治具112a,112b,114a,114bと干渉しないように通過する回避指示点P0,P8,P16と、溶接ロボット200が回避指示点P0,P8,P16を通過するときに従う回避順序とを調整する。したがって、溶接ロボット200が部材100と円柱部材104a,104b及び治具112a,112b,114a,114bと干渉することを防ぐティーチングデータ作成システム400を提供できる。
【0108】
本実施形態において、ティーチングデータ取り込みプロセスS1の形状取り込みプロセスS11及び溶接順序取り込みプロセスS12は、コンピュータ300の記憶装置314に記録されている部材100と円柱部材104a,104bの3次元データ、部材100と円柱部材104a,104bを固定する治具112a,112b,114a,114bの3次元データ、溶接ロボット200の3次元データ、溶接ロボット200の溶接トーチ220が、部材100と円柱部材104a,104bとの間に設けられている複数の溶接線L1,L2に対して溶接を行うときに通過する複数の溶接指示点P2~P6,P10~P14、溶接ロボット200が溶接指示点P2~P6,P10~P14を通過するときに従う初期溶接順序、溶接ロボット200が複数の溶接線L1,L2の外部を移動するとき、部材100と円柱部材104a,104b及び治具112a,112b,114a,114bと干渉しないように通過する回避指示点P0,P1,P7~P9,P15,P16、溶接ロボット200が回避指示点P0,P1,P7~P9,P15,P16を通過するときに従う初期回避順序、及び溶接指示点P2~P6,P10~P14と初期溶接順序が複数の溶接線L1,L2ごとにまとめられている第1と第2の溶接グループを取り込むが、他の方法によって取り込んでもよい。
【0109】
例えば、複数のカメラを入力装置312としてコンピュータ300に接続して、部材100と円柱部材104a,104b、及び部材100と円柱部材104a,104bを固定する治具112a,112b,114a,114bを撮影することにより、形状取り込みプロセスS11及び溶接順序取り込みプロセスS12によって取り込まれる3次元データを入力してもよい。また、溶接トーチ220を模したVR機器を入力装置312としてコンピュータ300に接続して、使用者がVR機器を移動させることにより、複数の溶接指示点P2~P6,P10~P14、初期溶接順序、回避指示点P0,P1,P7~P9,P15,P16、初期回避順序、及び第1と第2の溶接グループを取り込んでもよい。
【0110】
本実施形態において、ティーチングデータ再構成プロセスS3の干渉回避プロセスS33は、回避指示点P0から回避指示点P1に移動する第1の回避順序を、回避指示点P0から回避指示点P9に移動する第1の調整回避順序に変更して、回避指示点P7から回避指示点P9に移動する第2の回避順序を、回避指示点P15から回避指示点P8を経由して回避指示点P1に移動する第2の調整回避順序に変更して、回避指示点P15から回避指示点P16に移動する第3の回避順序を、回避指示点P7から回避指示点P16に移動する第3の調整回避順序に変更することによって、回避指示点P0,P8,P16及び回避順序を調整しているが、他の方法で回避指示点P0,P8,P16及び回避順序を調整してもよい。
【0111】
例えば、回避指示点P0,P8,P16の3次元座標を変更することにより、回避指示点P0,P8,P16及び回避順序を調整してもよい。または、新たな回避指示点を追加することにより、回避指示点及び回避順序を調整してもよい。この場合、ティーチングデータ取り込みプロセスS1の溶接順序取り込みプロセスS12から出力される初期ティーチングデータD2において、回避指示点は、それぞれ、溶接トーチ220の先端の座標軌跡として構成されていることが好ましい。
【0112】
本実施形態において、ティーチングデータ出力プロセスS4は、ティーチングデータをロボット用CAMソフト320の固有書式ファイルに変換して、該固有書式ファイルをロボット用CAMソフト320に向けて出力するように構成されているが、該固有書式ファイルを溶接ロボット200に向けて直接出力するように構成されていてもよい。または、ティーチングデータ出力プロセスS4は、ティーチングデータを、ロボット用CAMソフト320が受付可能な他の形式に変換して、ロボット用CAMソフト320若しくは溶接ロボット200に向けて出力するように構成されていてもよい。
【0113】
本実施形態において、溶接ロボット200の第1ジョイント212bと第2ジョイント214bと第3ジョイント216bと第4ジョイント218bと溶接トーチ220は、溶接指示点P2~P6,P10~P14と回避指示点P0,P1,P7~P9,P15,P16において定められる第1回転角度θ1、第2回転角度θ2、第3回転角度θ3、及び第4回転角度θ4にそれぞれ達するように駆動するが、溶接指示点P2~P6,P10~P14と回避指示点P0,P1,P7~P9,P15,P16においてそれぞれのジョイントの3次元座標が定められている場合、該3次元座標に達するように駆動してもよい。
【0114】
本実施形態において、ティーチングデータ取り込みプロセスS1の溶接順序取り込みプロセスS12は、溶接指示点及び初期溶接順序D1が複数の溶接線L1,L2ごとにまとめられている複数の溶接グループを取り込むように構成されているが、この溶接グループを取り込まないように構成されていてもよい。
【0115】
図11は、本発明の別の実施形態に係るティーチングデータ再構成プロセスS3を示すフローチャートである。
【0116】
図11に示すように、別の実施形態において、ティーチングデータ作成システム400は、指示点グループ参照プロセスS31を動作させた後、グループ入れ替えプロセスS32を動作させる前に、指示点グループ設定プロセスS31aを動作させてもよい。この指示点グループ設定プロセスS31aは、例えば、溶接順序取り込みプロセスS12において、溶接指示点P2~P6,P10~P14のそれぞれに対して第1の溶接グループと第2の溶接グループが設定されていない場合、溶接線L1上に設定されている溶接指示点P2~P6を仮の第1の溶接グループに、溶接線L2上に設定されている溶接指示点P10~P14を仮の第2の溶接グループにそれぞれ自動的に振り分けて設定するように構成されている。一方、溶接順序取り込みプロセスS12において、第1の溶接グループと第2の溶接グループが設定されている場合、図8と同様に、ティーチングデータ作成システム400は、指示点グループ参照プロセスS31を動作した後、グループ入れ替えプロセスS32を動作させる。
【0117】
指示点グループ設定プロセスS31aは、上述のように自動的に設定された仮の第1の溶接グループと仮の第2の溶接グループの前後にいずれかの回避指示点を追加するように構成されていてもよい。例えば、指示点グループ設定プロセスS31aは、第1の溶接順序において、溶接指示点P2~P6の前後に設定されている回避指示点P1,P7を仮の第1の溶接グループに加えることにより第1の溶接グループにすると共に、第2の溶接順序において、溶接指示点P10~P14の前後に設定されている回避指示点P9,P15を仮の第2の溶接グループに加えることにより第2の溶接グループにするように構成されていてもよい。または、指示点グループ設定プロセスS31aは、仮の第1の溶接グループの始点と終点である溶接指示点P2,P6から所定距離内の隣接する回避指示点を抽出して仮の第1の溶接グループに加えることにより第1の溶接グループにすると共に、仮の第2の溶接グループの始点と終点である溶接指示点P10,P14から指定距離内の回避指示点を抽出して仮の第2の溶接グループに加えることにより第2の溶接グループにするように構成されていてもよい。
【0118】
上述の指示点グループ設定プロセスS31aは、溶接順序取り込みプロセスS12において、第1の溶接グループと第2の溶接グループが設定されている場合であっても、入力装置312を介した使用者の操作によって動作するように構成されていてもよい。この指示点グループ設定プロセスS31aにより、溶接順序取り込みプロセスS12において、予め設定されている溶接グループに対して、別の追加溶接グループを設定して、ティーチングデータの再構成を行うことができる。
【符号の説明】
【0119】
100 部材
104a,104b 円柱部材
112a,112b,114a,114b 周辺物(治具)
200 溶接ロボット
320 ソフト(ロボット用CAMソフト)
400 ティーチングデータ作成システム
D9 修正溶接順序
L1,L2 溶接部位(溶接線)
S3 ティーチングデータ再構成プロセス
S32 グループ入れ替えプロセス
S33 干渉回避プロセス
S4 ティーチングデータ出力プロセス
P2~P6,P10~P14 溶接指示点
P0,P1,P7~P9,P15,P16 回避指示点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11