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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   F16D 66/00 20060101AFI20240823BHJP
   B60T 7/02 20060101ALI20240823BHJP
   B60T 7/00 20060101ALI20240823BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20240823BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20240823BHJP
   B60L 7/00 20060101ALI20240823BHJP
   A01D 34/64 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
F16D66/00 Z
B60T7/02 A
B60T7/00 A
B60T7/12 A
B60L3/00 N
B60L7/00 C
A01D34/64 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021142266
(22)【出願日】2021-09-01
(65)【公開番号】P2023035424
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】萬治 寧大
(72)【発明者】
【氏名】山田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】伊東 寛和
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-067117(JP,A)
【文献】特開2019-158047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 66/00
B60T 7/02
B60T 7/00
B60T 7/12
B60L 3/00
B60L 7/00
A01D 34/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体を支持する右及び左の走行装置と、前記走行装置を駆動する走行駆動部と、
前記走行装置を制動及び解除可能な右及び左のブレーキと、
前記ブレーキの制動状態及び解除状態への操作を許容する第1位置、及び、前記ブレーキを前記解除状態に保持可能な第2位置に、人為的に操作可能な右及び左の解除操作具と、
前記解除操作具が前記第2位置に操作されていることを検出する位置検出部と、
前記位置検出部の検出に基づいて、右及び左のうちの少なくとも一方の前記解除操作具が前記第2位置に操作されていると、前記解除操作具が前記第2位置に操作されていることを報知する報知部とが備えられている作業車。
【請求項2】
前記走行駆動部が停止すると前記ブレーキを前記制動状態に操作し、前記走行駆動部が作動すると前記ブレーキを前記解除状態に操作するブレーキ操作部が備えられ、
前記解除操作具の前記第2位置が前記ブレーキ操作部に優先する請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
機体を支持する走行装置と、前記走行装置を駆動する走行駆動部と、
前記走行装置を制動及び解除可能なブレーキと、
前記ブレーキの制動状態及び解除状態への操作を許容する第1位置、及び、前記ブレーキを前記解除状態に保持可能な第2位置に、人為的に操作可能な解除操作具と、
前記解除操作具が前記第2位置に操作されていることを検出する位置検出部と、
前記位置検出部の検出に基づいて、前記解除操作具が前記第2位置に操作されていることを報知する報知部と、
前記走行駆動部が停止すると前記ブレーキを前記制動状態に操作し、前記走行駆動部が作動すると前記ブレーキを前記解除状態に操作するブレーキ操作部とが備えられ、
前記解除操作具の前記第2位置が前記ブレーキ操作部に優先する作業車。
【請求項4】
前記ブレーキ操作部は、
前記ブレーキを前記制動状態に付勢する付勢部材と、
前記走行駆動部が停止すると前記付勢部材による前記ブレーキの前記制動状態への操作を許容し、且つ、前記走行駆動部が作動すると前記付勢部材に抗して前記ブレーキを前記解除状態に操作する電磁操作部とを有している請求項2又は3に記載の作業車。
【請求項5】
前記位置検出部の検出に基づいて、前記解除操作具が前記第2位置に操作されていると、前記走行駆動部の作動を禁止する走行禁止部が備えられている請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車において、走行装置を制動及び解除可能なブレーキの操作の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車の一例である乗用型の電動草刈り機では、特許文献1に開示されているように、走行用の車輪(走行装置に相当)を制動可能で、ブレーキペダルにより操作されるブレーキが備えられている。
この場合、ロック部材等によりブレーキペダルを踏み状態に保持することによって、ブレーキを制動状態に保持することができるのであり、ブレーキを駐車ブレーキとして機能させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-65469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば作業車が故障した際に、別の車両により作業車を牽引する場合、ブレーキを解除状態に保持する必要があり、ブレーキを解除状態に保持可能に人為的に操作可能な解除操作具を設けることが考えられている。
【0005】
本発明は、作業車において、解除操作具によりブレーキを解除状態に保持して、作業車の牽引を行った後、通常の作業状態に無理なく移行することができるように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の作業車は、機体を支持する右及び左の走行装置と、前記走行装置を駆動する走行駆動部と、前記走行装置を制動及び解除可能な右及び左のブレーキと、前記ブレーキの制動状態及び解除状態への操作を許容する第1位置、及び、前記ブレーキを前記解除状態に保持可能な第2位置に、人為的に操作可能な右及び左の解除操作具と、前記解除操作具が前記第2位置に操作されていることを検出する位置検出部と、前記位置検出部の検出に基づいて、右及び左のうちの少なくとも一方の前記解除操作具が前記第2位置に操作されていると、前記解除操作具が前記第2位置に操作されていることを報知する報知部とが備えられている。
【0007】
本発明によると、解除操作具を第1位置に操作すれば、通常の作業状態において、ブレーキを制動状態及び解除状態に操作することができる。
作業車の故障等により作業車を牽引する必要がある場合、解除操作具を第2位置に操作することにより、ブレーキを解除状態に保持することができるので、解除操作具によりブレーキを解除状態に保持して、作業車の牽引を行えばよい。
【0008】
本発明によると、前述のように解除操作具を第2位置に操作して、ブレーキを解除状態に保持した場合、位置検出部により解除操作具が第2位置に操作されていることが検出されるのであり、報知部により解除操作具が第2位置に操作されていることが報知される。
これにより、作業車の牽引を行った後に通常の作業状態に戻る場合、作業者は、報知部による報知に基づいて、解除操作具を忘れることなく第1位置に操作することができるのであり、解除操作具が第2位置に操作された状態(ブレーキが解除状態に保持された状態)で、通常の作業状態に移行してしまうことが少なくなる。
【0009】
本発明において、前記走行駆動部が停止すると前記ブレーキを前記制動状態に操作し、前記走行駆動部が作動すると前記ブレーキを前記解除状態に操作するブレーキ操作部が備えられ、前記解除操作具の前記第2位置が前記ブレーキ操作部に優先すると好適である。
【0010】
本発明によると、解除操作具が第1位置に操作された状態において、走行駆動部の停止及び作動に基づいて、ブレーキ操作部によりブレーキが自動的に制動状態及び解除状態に操作され、走行駆動部の停止によりブレーキが駐車ブレーキとして機能するので、ブレーキの操作性が良いものとなる。
【0011】
本発明によると、解除操作具が第2位置に操作されると、解除操作具の第2位置がブレーキ操作部に優先するので、ブレーキ操作部によりブレーキが制動状態に操作されることなく、ブレーキが解除状態に保持される。これにより、ブレーキ操作部の影響を受けることなく、ブレーキを解除状態に保持して作業車の牽引を行うことができる。
本発明の作業車は、機体を支持する走行装置と、前記走行装置を駆動する走行駆動部と、前記走行装置を制動及び解除可能なブレーキと、前記ブレーキの制動状態及び解除状態への操作を許容する第1位置、及び、前記ブレーキを前記解除状態に保持可能な第2位置に、人為的に操作可能な解除操作具と、前記解除操作具が前記第2位置に操作されていることを検出する位置検出部と、前記位置検出部の検出に基づいて、前記解除操作具が前記第2位置に操作されていることを報知する報知部と、前記走行駆動部が停止すると前記ブレーキを前記制動状態に操作し、前記走行駆動部が作動すると前記ブレーキを前記解除状態に操作するブレーキ操作部とが備えられ、前記解除操作具の前記第2位置が前記ブレーキ操作部に優先する。
本発明によると、解除操作具を第1位置に操作すれば、通常の作業状態において、ブレーキを制動状態及び解除状態に操作することができる。
作業車の故障等により作業車を牽引する必要がある場合、解除操作具を第2位置に操作することにより、ブレーキを解除状態に保持することができるので、解除操作具によりブレーキを解除状態に保持して、作業車の牽引を行えばよい。
本発明によると、前述のように解除操作具を第2位置に操作して、ブレーキを解除状態に保持した場合、位置検出部により解除操作具が第2位置に操作されていることが検出されるのであり、報知部により解除操作具が第2位置に操作されていることが報知される。
これにより、作業車の牽引を行った後に通常の作業状態に戻る場合、作業者は、報知部による報知に基づいて、解除操作具を忘れることなく第1位置に操作することができるのであり、解除操作具が第2位置に操作された状態(ブレーキが解除状態に保持された状態)で、通常の作業状態に移行してしまうことが少なくなる。
本発明によると、解除操作具が第1位置に操作された状態において、走行駆動部の停止及び作動に基づいて、ブレーキ操作部によりブレーキが自動的に制動状態及び解除状態に操作され、走行駆動部の停止によりブレーキが駐車ブレーキとして機能するので、ブレーキの操作性が良いものとなる。
本発明によると、解除操作具が第2位置に操作されると、解除操作具の第2位置がブレーキ操作部に優先するので、ブレーキ操作部によりブレーキが制動状態に操作されることなく、ブレーキが解除状態に保持される。これにより、ブレーキ操作部の影響を受けることなく、ブレーキを解除状態に保持して作業車の牽引を行うことができる。
【0012】
本発明において、前記ブレーキ操作部は、前記ブレーキを前記制動状態に付勢する付勢部材と、前記走行駆動部が停止すると前記付勢部材による前記ブレーキの前記制動状態への操作を許容し、且つ、前記走行駆動部が作動すると前記付勢部材に抗して前記ブレーキを前記解除状態に操作する電磁操作部とを有していると好適である。
【0013】
本発明によると、付勢部材と電磁操作部とを備えることにより、ブレーキ操作部を簡素に構成することができるので、構造の簡素化の面で有利である。
本発明によると、ブレーキ操作部の付勢部材により、ブレーキが制動状態に付勢されることによって、ブレーキをネガティブブレーキとして機能させることができるのであり、ブレーキの機能性が高いものとなる。
【0014】
本発明において、前記位置検出部の検出に基づいて、前記解除操作具が前記第2位置に操作されていると、前記走行駆動部の作動を禁止する走行禁止部が備えられていると好適である。
【0015】
本発明によると、解除操作具を第2位置に操作して、ブレーキを解除状態に保持した場合に、報知部により解除操作具が第2位置に操作されていることが報知されることに加えて、走行駆動部の作動が禁止されるので、解除操作具を第2位置に操作した状態では、作業車を走行させることができない。
これにより、解除操作具が第2位置に操作された状態(ブレーキが解除状態に保持された状態)で、通常の作業状態に移行してしまうことは無い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】乗用型草刈り機の左側面図である。
図2】電動モータ、ブレーキ及びブレーキ操作部、減速ケースの付近の横断平面図である。
図3】制御構成を示す概略図である。
図4】解除レバー及び位置センサーの付近の正面図である。
図5】電動モータ、ブレーキ及びブレーキ操作部、減速ケース、解除レバー及び位置センサーの付近の縦断側面図である。
図6】解除レバーが第2位置に操作された状態において、図5のVI-VI方向での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図6に、作業車の一例である電動型の乗用型草刈り機が示されており、図1図6において、Fは前方向を示し、Bは後方向を示し、Uは上方向を示し、Dは下方向を示し、Rは右方向を示し、Lは左方向を示している。
【0018】
(乗用型草刈り機の全体構成)
図1に示すように、乗用型草刈機は、機体7の前部に支持された右及び左の前輪1、機体7の後部に支持された右及び左の後輪2(走行装置に相当)により、機体7が支持されている。モーア3が機体7の下部で前輪1及び後輪2の間に支持され、バッテリ4が機体7の後部で右及び左の後輪2の間に支持されており、運転座席5及びロプスフレーム6が機体7の上部に設けられている。
【0019】
(前輪及び後輪に関する構成)
図1に示すように、右及び左の前輪1は、上下方向に沿った軸芯周りに自由回転可能なキャスター車輪に構成されており、機体7の右部及び左部の前部に支持されている。
【0020】
図1,2,3に示すように、右の電動モータ8(走行駆動部に相当)、右のブレーキ9(ブレーキケース23)及び右の減速ケース10が、機体7の右部の後部に支持されており、右の後輪2が右の減速ケース10に支持されている。左の電動モータ8(走行駆動部に相当)、左のブレーキ9(ブレーキケース23)及び左の減速ケース10が、機体7の左部の後部に支持されており、左の後輪2が左の減速ケース10に支持されている。
【0021】
図2及び図3に示すように、電動モータ8と減速ケース10とが、ブレーキ9及びブレーキ操作部30を収容するブレーキケース23を間に挟んで連結されている。電動モータ8の出力軸8a及び減速ケース10の入力軸15が、ブレーキケース23に挿入されており、円筒状の連結部材32により、電動モータ8の出力軸8aと入力軸15とがスプライン構造により連結されている。
【0022】
減速ケース10の内部に、伝動軸16,17及び車軸18が支持されている。入力軸15に取り付けられた伝動ギヤ19と、伝動軸16に取り付けられた伝動ギヤ20とが咬合しており、伝動軸16に設けられた伝動ギヤ16aと、伝動軸17に取り付けられた伝動ギヤ21とが咬合している。伝動軸17に設けられた伝動ギヤ17aと、車軸18に取り付けられた伝動ギヤ22とが咬合しており、後輪2が車軸18に取り付けられている。
【0023】
以上の構成により、電動モータ8の動力が、減速ケース10の入力軸15、伝動ギヤ20、伝動軸16、伝動ギヤ21、伝動軸17、伝動ギヤ22及び車軸18を介して、後輪2に伝達されて、後輪2が回転駆動されるのであり、右及び左の電動モータ8により、右及び左の後輪2が各々独立に回転駆動される。
【0024】
(電動モータの操作に関する構成)
図1及び図3に示すように、右及び左のフェンダ11が後輪2の上方に設けられ、右及び左の変速レバー12がフェンダ11の前部に設けられている。右及び左の変速レバー12は、中立位置Nから前側の前進側F1、及び後側の後進側R1に、各々独立に操作可能である。
【0025】
右及び左の変速レバー12の操作位置が、位置センサー13により検出されて、機体7に設けられた制御装置14に入力されている。走行制御部41がソフトウェアとして制御装置14に設けられており、右及び左の変速レバー12の操作位置に基づいて、制御装置14(走行制御部41)により、右及び左の電動モータ8が以下の説明のように各々独立に操作される。
【0026】
右の変速レバー12が中立位置Nに操作されると、右の電動モータ8が停止する。右の変速レバー12が前進側F1に操作されると、右の電動モータ8が前進作動し、右の変速レバー12が前進側F1に大きく操作されるほど、右の電動モータ8が高速で前進作動する。右の変速レバー12が後進側R1に操作されると、右の電動モータ8が後進作動し、右の変速レバー12が後進側R1に大きく操作されるほど、右の電動モータ8が高速で後進作動する。
【0027】
左の変速レバー12が中立位置N、前進側F1及び後進側R1に操作されると、前述と同様に左の電動モータ8が作動する。
以上のように、右及び左の変速レバー12が操作されることにより、右及び左の後輪2が互いに独立に回転駆動されて、機体7の前進及び後進、右旋回及び左旋回が行われる。
【0028】
(ブレーキ及びブレーキ操作部の構成)
図2に示すように、右のブレーキケース23の内部に、右のブレーキ9と右のブレーキ操作部30とが収容されており、左のブレーキケース23の内部に、左のブレーキ9と左のブレーキ操作部30とが収容されている。
【0029】
円板状のブレーキ板24が、連結部材32に連結されている。ブレーキ板24は、電動モータ8の出力軸8a及び入力軸15と一体で回転し、連結部材32のスプライン構造により、電動モータ8の出力軸8a及び入力軸15の軸芯方向に僅かに移動可能である。
【0030】
円板状のブレーキ板25が、電動モータ8とブレーキ板24との間に配置されて、リング状の操作ケース26が、減速ケース10とブレーキ板24との間に配置されている。
操作ケース26は、減速ケース10及びブレーキケース23に連結されており、電動モータ8の出力軸8aの軸芯方向に移動せず、回転もしない。ブレーキ板25と操作ケース26とに亘って連結ピン(図示せす)が連結されており、ブレーキ板25は、電動モータ8の出力軸8aの軸芯方向に移動せず、回転もしない。
【0031】
円板状の金属製のブレーキ板27が、ブレーキ板24と操作ケース26との間に配置されている。操作ケース26に設けられたガイドピン28がブレーキ板27に挿入されており、ブレーキ板27は、ガイドピン28により回転しないが、電動モータ8の出力軸8aの軸芯方向に移動可能である。
以上の構成により、ブレーキ9は、ブレーキ板24、ブレーキ板25、ブレーキ板27等を有して構成されている。
【0032】
ブレーキ板27をブレーキ板24に向けて付勢するバネ29(付勢部材に相当)が、操作ケース26とブレーキ板27とに亘って設けられている。複数個の電磁コイル31(電磁操作部に相当)が、操作ケース26に設けられている。
以上の構成により、ブレーキ操作部30は、操作ケース26、バネ29、電磁コイル31等を有して構成されている。
【0033】
(ブレーキ及びブレーキ操作部の作動状態)
図3に示すように、ブレーキ制御部42がソフトウェアとして制御装置14に設けられており、右及び左の変速レバー12の操作位置に基づいて、制御装置14(ブレーキ制御部42)により、右及び左のブレーキ9と右及び左のブレーキ操作部30とが、以下の説明のように各々独立に操作される。
【0034】
前述の(電動モータの操作に関する構成)に記載のように、右の変速レバー12が中立位置Nに操作されると(右の電動モータ8が停止すると)、右のブレーキ操作部30(電磁コイル31)への電力の供給が停止される。
【0035】
これによって、図2に示すように、バネ29によりブレーキ板27がブレーキ板24に押圧され、ブレーキ板24がブレーキ板25に押圧されて、ブレーキ板24がブレーキ板25,27に挟まれた状態となって、ブレーキ9が制動状態となるのであり、右の電動モータ8の出力軸8a及び右の後輪2に制動が掛かる。
【0036】
以上の状態が、バネ29(付勢部材)によって、ブレーキ9が制動状態に付勢された状態である。電動モータ8(走行駆動部)が停止すると、電磁コイル31(電磁操作部)によって、バネ29(付勢部材)によるブレーキ9の制動状態への操作が許容された状態であり、ブレーキ操作部30によりブレーキ9が制動状態に操作された状態である。
【0037】
右の変速レバー12が前進側F1に操作されると(右の電動モータ8が前進作動すると)、右のブレーキ操作部30(電磁コイル31)に電力が供給される。電磁コイル31によりブレーキ板27が、バネ29に抗してブレーキ板24から電磁コイル31に向けて離し操作されて、ブレーキ9が解除状態となるのであり、右の電動モータ8の出力軸8a及び右の後輪2の制動が解除される。右の変速レバー12が後進側R1に操作されても、前述と同様な操作が行われる。
【0038】
以上の状態が、電動モータ8(走行駆動部)が作動すると、電磁コイル31(電磁操作部)によって、バネ29(付勢部材)に抗してブレーキ9が解除状態に操作された状態であり、ブレーキ操作部30によりブレーキ9が解除状態に操作された状態である。
左の変速レバー12が中立位置N、前進側F1及び後進側R1に操作されると、前述と同様に左のブレーキ9及び左のブレーキ操作部30が操作される。
【0039】
(解除レバーに関する構成)
図2,4,5に示すように、半円状に形成された操作部材33が、ブレーキ板25とブレーキ板27との間に配置されている。操作部材33に2個の取付部33aが設けられ、操作部材33の取付部33aの開口部にガイドピン28が挿入されて、操作部材33が回転しないようにガイドピン28に支持されている。
【0040】
操作部材33の取付部33aの開口部が、ガイドピン28の外径よりも少し大きなものに構成されており、操作部材33の取付部33aをガイドピン28の頭部28aに押圧するバネ34が設けられている。これにより、操作部材33(取付部33a)は、ガイドピン28を支点として左右方向に沿って揺動可能である。
【0041】
図4及び図5に示すうように、右及び左の操作軸35が、前後方向に沿った軸芯P1周りに回転可能に、ブレーキケース23の前部に支持されており、ブレーキケース23の内部において、操作軸35に連結されたカム部35aが操作部材33に対向している。
【0042】
ブレーキケース23の外部(前部)において、操作軸35に支持板35bが連結されており、右及び左の解除レバー36(解除操作具に相当)が、操作軸35の支持板35bに連結されている。作業者は、解除レバー36を手で持つことにより、解除レバー36及び操作軸35を人為的に軸芯P1周りに操作することができる。
【0043】
図4及び図5の二点鎖線で示す状態は、解除レバー36(操作軸35のカム部35a)が第1位置A1に操作された状態であり、操作軸35のカム部35aが操作部材33から離れて、操作部材33がバネ34により操作ケース26に沿った状態(電動モータ8の出力軸8a及び入力軸15と直交する状態)である。
【0044】
解除レバー36が第1位置A1に操作された状態において、前述の(ブレーキ及びブレーキ操作部の作動状態)に記載のように、変速レバー12の操作位置に基づいて、ブレーキ操作部30によりブレーキ9が制動状態及び解除状態に操作される。
【0045】
図4及び図5の実線に示すように、解除レバー36が第2位置A2に操作されると、操作軸35が軸芯P1周りに回転操作され、操作軸35のカム部35aにより操作部材33が押し操作され、操作部材33がガイドピン28を支点として操作ケース26から電動モータ8に向けて離れる方向に揺動操作される。
【0046】
図6に示すように、操作部材33が揺動操作されることにより、操作部材33の取付部33aが、ガイドピン28の頭部28aに受け止められながら傾斜して、操作部材33の取付部33aにより、ブレーキ板27が操作ケース26にむけて押し操作される。これにより、ブレーキ板27が、バネ29に抗してブレーキ板24から操作ケース26に向けて強制的に離し操作されるのであり、ブレーキ板27はブレーキ板24から離し操作された位置に保持される。
【0047】
解除レバー36が第2位置A2に操作された状態において、前述の(ブレーキ及びブレーキ操作部の作動状態)に記載のように、変速レバー12が中立位置Nに操作されて(電動モータ8が停止して)、ブレーキ操作部30(電磁コイル31)への電力の供給が停止されても、ブレーキ板27は、バネ29によりブレーキ板24に向けて押し操作されることはなく、ブレーキ板24から離し操作された位置に保持され、ブレーキ9は解除状態に保持される。
【0048】
以上の状態が、解除レバー36(解除操作具)の第2位置A2において、ブレーキ9が解除状態に保持された状態であり、解除レバー36(解除操作具)の第2位置A2がブレーキ操作部30に優先する状態である。
【0049】
(解除レバーが第2位置に操作されていることを報知する構成)
図4及び図5に示すように、板材を箱状に折り曲げて構成された右及び左のブラケット37が、解除レバー36の上方に位置するように機体7に連結されており、リミットスイッチ型式の右及び左の位置センサー38(位置検出部に相当)が、ブラケット37に取り付けられている。板バネ39が、ブラケット37に取り付けられて、位置センサー38の下部の検出部の下方にまで延出されている。
【0050】
解除レバー36が第1位置A1に操作されていると、解除レバー36は位置センサー38及び板バネ39から離れている。解除レバー36が第2位置A2に操作されると、解除レバー36が板バネ39を上方に向けて押し上げるのであり、板バネ39により位置センサー38の検出部が上方に押し操作されて、解除レバー36が第2位置A2に操作されていることが位置センサー38により検出される。
【0051】
図3に示すように、右又は左のフェンダ11における変速レバー12の近傍に、報知ランプ40(報知部に相当)が設けられており。運転座席5の近くに、報知ブザー45(報知部に相当)が設けられている。報知制御部43及び走行禁止部44が、ソフトウェアとして制御装置14に設けられている。
【0052】
右及左の位置センサー38の検出信号が制御装置14に入力されており、位置センサー38の検出信号に基づいて、制御装置14(報知制御部43及び走行禁止部44)によって、報知ランプ40及び報知ブザー45、右及び左の電動モータ8が以下の説明のように操作される。
【0053】
解除レバー36が第2位置A2に操作されていることが、右及び左の位置センサー38により検出されていないと(右及び左の解除レバー36が第1位置A1に操作されていると)、報知ランプ40が消灯し、報知ブザー45が停止している。走行禁止部44が停止しており、前述の(電動モータの操作に関する構成)に記載のように、右及び左の電動モータ8の操作が行われる。
【0054】
右及び左のうちの少なくとも一方の解除レバー36が第2位置A2に操作されていることが、位置センサー38により検出されていると、報知ランプ40が点滅作動し、報知ブザー45が間欠的に作動する。走行禁止部44は、走行制御部41に優先して右及び左の電動モータ8の作動を禁止するのであり、前述の(電動モータの操作に関する構成)に記載のように変速レバー12が操作されても、右及び左の電動モータ8は停止している。
【0055】
(発明の実施の第1別形態)
バネ29及び電磁コイル31を有するブレーキ操作部30に代えて、ブレーキ操作部30を以下の説明のように構成してもよい。
【0056】
人為的に踏み操作されるブレーキペダル(図示せず)を設け、ブレーキペダルと右及び左のブレーキ9とに亘ってワイヤ(図示せず)を接続して、ブレーキペダルが踏み操作されると、ブレーキ9が制動状態に操作され、ブレーキペダルが戻し操作されると、ブレーキ9が解除状態に操作されるように構成する。
ブレーキペダルが踏み操作された状態に保持可能なロック部材(図示せず)を設けて、ブレーキ9を駐車ブレーキとして使用できるように構成する。
【0057】
解除レバー36が第1位置A1に操作されていると、前述のようにブレーキペダルが踏み操作及び戻し操作されることによって、ブレーキ9が制動状態及び解除状態に操作される。解除レバー36が第2位置A2に操作されていると、ブレーキペダルが踏み操作されても、ブレーキ9は解除状態に保持される。
【0058】
(発明の実施の第2別形態)
前述の(発明の実施の第1別形態)において、ロック具を廃止し、ブレーキペダルに加えて、駐車ブレーキレバー(図示せず)を設けもよい。
この場合、駐車ブレーキレバーと右及び左のブレーキ9とに亘ってワイヤ(図示せず)を接続して、駐車ブレーキレバーを操作してブレーキ9を制動状態に操作した状態において、駐車ブレーキレバーを保持できるように構成すればよい。
【0059】
(発明の実施の第3別形態)
報知ランプ40を設けて、報知ブザー45を廃止してもよい。逆に報知ランプ40を廃止して、報知ブザー45を設けてもよい。
後輪2に代えて、クローラ型式の右及び左の走行装置(図示せず)を備えてもよい。
【0060】
(発明の実施の第4別形態)
右及び左の電動モータ8を廃止して、エンジン(図示せず)を走行駆動部として装備してもよい。
この構成によると、エンジンの動力を分岐させて右及び左の後輪2(クローラ型式の走行装置)に伝達するように構成すればよい。エンジンからの伝動系において、動力が右及び左の走行装置に分岐する分岐点とエンジンとの間の伝動系の部分に、1個のブレーキ9を設け、エンジンとブレーキ9との間の伝動系の部分に、クラッチ(図示せず)を設ければよい。
【0061】
エンジンの作動状態でもクラッチが遮断状態に操作されると、エンジンの動力が走行装置に伝達されないので、この状態が走行駆動部が停止した状態である。エンジンの作動状態でクラッチが伝動状態に操作されると、エンジンの動力が走行装置に伝達されるので、この状態が走行駆動部が作動した状態である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、乗用型草刈り機ばかりではなく、建設用のホイルローダやバックホウ、トラクタやコンバイン等の作業車にも適用できる。
【符号の説明】
【0063】
2 後輪(走行装置)
8 電動モータ(走行駆動部)
9 ブレーキ
29 バネ(付勢部材)
30 ブレーキ操作部
31 電磁コイル(電磁操作部)
36 解除レバー(解除操作具)
38 位置センサー(位置検出部)
40 報知ランプ(報知部)
44 走行禁止部
45 報知ブザー(報知部)
A1 第1位置
A2 第2位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6