(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】半導体製造装置及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240823BHJP
H01L 21/67 20060101ALI20240823BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
H01L21/78 N
H01L21/78 Y
H01L21/68 E
H01L21/68 N
(21)【出願番号】P 2021154480
(22)【出願日】2021-09-22
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】中川 啓治
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-272627(JP,A)
【文献】特開2020-096177(JP,A)
【文献】特開2009-277837(JP,A)
【文献】米国特許第04575229(US,A)
【文献】特開平11-054594(JP,A)
【文献】特開2011-228473(JP,A)
【文献】特開2018-056159(JP,A)
【文献】特開2021-136257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/67
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着部材により基板が固定された第1開口部を有する環状フレームが載置される上面を有する台であって、
前記台を上下方向に貫通し、前記上面に平行な第1方向に並んで設けられた複数の第1貫通孔と、
前記複数の第1貫通孔のそれぞれの間に設けられ、前記台を前記上下方向に貫通した複数の第2貫通孔と、
を有する前記台と、
前記台の上に設けられた容器であって、
前記容器の下部に設けられ、前記第1開口部の第1内径より大きな第2内径を有し、前記環状フレームと密着可能な第2開口部と、
前記容器の外部と前記容器の内部を連通可能な継手と、
を有する前記容器と、
を備える半導体製造装置。
【請求項2】
前記粘着部材により前記基板が前記第1開口部に固定された前記環状フレームが前記上面に載置された状態で、前記複数の第1貫通孔及び前記複数の第2貫通孔は減圧され、
前記粘着部材により前記基板が固定された前記環状フレームに、前記第2開口部が密着された状態で、前記継手を用いて前記容器の内部は加圧される、
請求項1記載の半導体製造装置。
【請求項3】
前記複数の第2貫通孔のそれぞれは、前記第1方向に交差し前記上面に平行な第2方向に延伸する溝である、
請求項1又は請求項2記載の半導体製造装置。
【請求項4】
前記複数の第2貫通孔のそれぞれは、
第1部分と、
前記第1部分の上に設けられ、前記第1方向の幅が前記第1部分より大きい第2部分と、
を有する請求項1乃至請求項3いずれか一項記載の半導体製造装置。
【請求項5】
粘着部材により基板が固定された第1開口部を有する環状フレームが載置される上面を有する台であって、
前記台を上下方向に貫通し、前記上面に平行な第1方向に並んで設けられた複数の第1貫通孔と、
前記複数の第1貫通孔の内2つの前記第1貫通孔間に設けられ、前記台を前記上下方向に貫通した第2貫通孔と、
を有する前記台と、
前記台の上に設けられた容器であって、
前記容器の下部に設けられ、前記第1開口部の第1内径より大きな第2内径を有し、前記環状フレームと密着可能な第2開口部と、
前記容器の外部と前記容器の内部を連通可能な継手と、
を有する前記容器と、
を備える半導体製造装置。
【請求項6】
前記第2貫通孔は、前記第1方向に交差し前記上面に平行な第2方向に延伸する溝である、
請求項5記載の半導体製造装置。
【請求項7】
前記第1方向における前記第1貫通孔の第1幅は、前記第1方向における前記第2貫通孔の第2幅より大きい、
請求項1乃至請求項6いずれか一項記載の半導体製造装置。
【請求項8】
前記第2貫通孔は、
第1部分と、
前記第1部分の上に設けられ、前記第1方向の幅が前記第1部分より大きい第2部分と、
を有する請求項7記載の半導体製造装置。
【請求項9】
バリが形成されたダイシング溝を有する基板が、粘着部材により第1開口部に固定された環状フレームを、台を上下方向に貫通し、前記台の上面に平行な第1方向に並んで設けられた複数の第1貫通孔と、前記複数の第1貫通孔のそれぞれの間に設けられ、前記台を前記上下方向に貫通した複数の第2貫通孔と、を有する前記台の上に、前記ダイシング溝が前記第2貫通孔の上に配置されるように載置し、
容器であって、前記容器の下部に設けられ、前記第1開口部の第1内径より大きな第2内径を有し、前記環状フレームと密着可能な第2開口部と、前記容器の外部と前記容器の内部を連通可能な継手と、を有する前記容器を、前記環状フレームの上に、前記環状フレームに前記第2開口部が密着されるように載置し、
前記複数の第1貫通孔を減圧し、
前記複数の第2貫通孔を減圧し、
前記継手を用いて前記容器の内部を加圧する、
半導体製造装置の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体製造装置及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造においては、半導体ウェハ等の基板について、所定の半導体装置の形成工程を行った後に、かかる基板を、粘着部材を用いて、基板の径よりも大きな径の開口部を有する環状フレーム(ダイシングフレーム)の開口部に固定する。環状フレームに固定された基板は、所定のダイシング工程により、個片化される。その後、かかる個片化された基板は、粘着部材から剥離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、ダイシング条件の最適化及びピックアップ条件の最適化を容易にする半導体製造装置及びその使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体製造装置は、粘着部材により基板が固定された第1開口部を有する環状フレームが載置される上面を有する台であって、台を上下方向に貫通し、上面に平行な第1方向に並んで設けられた複数の第1貫通孔と、複数の第1貫通孔のそれぞれの間に設けられ、台を上下方向に貫通した複数の第2貫通孔と、を有する台と、台の上に設けられた容器であって、容器の下部に設けられ、第1開口部の第1内径より大きな第2内径を有し、環状フレームと密着可能な第2開口部と、容器の外部と容器の内部を連通可能な継手と、を有する容器と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態の半導体製造装置の模式断面図である。
【
図3】実施形態の、ダイシング前の基板及び環状フレームの模式上面図である。
【
図4】実施形態の半導体製造装置の使用方法のフローチャートである。
【
図5】実施形態の半導体製造装置及びその使用方法の作用効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一の部材等には同一の符号を付し、一度説明した部材等については適宜その説明を省略する。
【0008】
本明細書中、部品等の位置関係を示すために、図面の上方向を「上」、図面の下方向を「下」と記述する。本明細書中、「上」、「下」の概念は、必ずしも重力の向きとの関係を示す用語ではない。
【0009】
(実施形態)
実施形態の半導体製造装置は、粘着部材により基板が固定された第1開口部を有する環状フレームが載置される上面を有する台であって、台を上下方向に貫通し、上面に平行な第1方向に並んで設けられた複数の第1貫通孔と、複数の第1貫通孔のそれぞれの間に設けられ、台を上下方向に貫通した複数の第2貫通孔と、を有する台と、台の上に設けられた容器であって、容器の下部に設けられ、第1開口部の第1内径より大きな第2内径を有し、環状フレームと密着可能な第2開口部と、容器の外部と容器の内部を連通可能な継手と、を有する容器と、を備える。
【0010】
実施形態の半導体装置の製造方法は、バリが形成されたダイシング溝を有する基板が、粘着部材により第1開口部に固定された環状フレームを、台を上下方向に貫通し、台の上面に平行な第1方向に並んで設けられた複数の第1貫通孔と、複数の第1貫通孔のそれぞれの間に設けられ、台を上下方向に貫通した複数の第2貫通孔と、を有する台の上に、ダイシング溝が第2貫通孔の上に配置されるように載置し、容器であって、容器の下部に設けられ、第1開口部の第1内径より大きな第2内径を有し、環状フレームと密着可能な第2開口部と、容器の外部と容器の内部を連通可能な継手と、を有する容器を、環状フレームの上に、環状フレームに第2開口部が密着されるように載置し、複数の第1貫通孔を減圧し、複数の第2貫通孔を減圧し、継手を用いて容器の内部を加圧する。
【0011】
図1は、実施形態の半導体製造装置100の模式図である。
図2は、実施形態の、ダイシング前の基板W及び環状フレーム70の模式上面図である。
図2(a)は、実施形態の、ダイシング前の基板Wの模式上面図である。
図2(b)は、実施形態の環状フレーム70の模式上面図である。
図3は、実施形態の台の模式斜視図である。
【0012】
図1、
図2及び
図3を用いて、実施形態の半導体製造装置100について説明をする。
【0013】
基板Wは、例えば、Si(シリコン)ウェハ、SiC(炭化珪素)ウェハ、GaAs(ヒ化ガリウム)ウェハ、又はGaN(窒化ガリウム)ウェハ等である。基板Wには、結晶方位を示すオリエンテーションフラットOが設けられていてもかまわない。
【0014】
図1には、ダイシング後の基板Wが図示されている。ダイシング後の、個片化された基板Wの端部には、バリZを有するダイシング溝Yが形成されている。ダイシング溝Yの幅はL6である。
図3(a)及び
図3(b)には、ダイシング前の基板Wが図示されている。
【0015】
実施形態の半導体製造装置及びその使用方法は、基板Wの厚みtが75μm以下の場合に、好ましく適用される。
【0016】
環状フレーム70は、第1開口部72を有する。第1開口部72の内部には、粘着部材60を用いて、基板Wが固定されている。そして、この状態で、基板Wのダイシングが行われる。
【0017】
粘着部材60は、基板Wの固定、及びダイシングにより個片化された後の基板Wの固定のために用いられる。粘着部材60は、例えば、ダイシングテープである。
【0018】
本実施形態の半導体製造装置100は、例えば、ダイシング装置(ダイサー)によりダイシングされ、個片化された後の基板Wを、ピックアップ装置にて粘着部材60から剥離する前に用いられる。なお、半導体製造装置100は、例えば、ダイシング装置(ダイサー)と組み合わせて用いられてもかまわない。また、半導体製造装置100は、例えば、ピックアップ装置と組み合わせて用いられてもかまわない。また、半導体製造装置100は例えば、ダイシング装置(ダイサー)やピックアップ装置とは別に設けられていてもかまわない。
【0019】
ここで、X方向と、X方向に対して垂直に交差するY方向と、X方向及びY方向に垂直に交差するZ方向を定義する。
図3(a)及び
図3(b)においては、基板Wの基板面がXY平面に平行に、また、オリエンテーションフラットOがX方向に平行に配置されているものとして、基板Wの図示を行っている。また、
図3(b)においては、環状フレームFの平面がXY平面に平行に配置されているものとして、環状フレーム70及び基板Wの図示を行っている。なお、例えば、X方向は第1方向の一例であり、Y方向は第2方向の一例である。
【0020】
半導体製造装置100は、台10と、容器80と、を備える。
【0021】
台10、複数の第1貫通孔2と、複数の第2貫通孔4と、上面6と、を有する。
【0022】
上面6の上に、基板Wが固定された環状フレーム70が載置される。上面6は、例えば、XY平面に平行に配置されている。
図2において、XY平面に平行な面内における上面6の形状は、正方形である。しかし、XY平面に平行な面内における上面6の形状は、勿論正方形に限定されるものではない。
【0023】
複数の第1貫通孔2は、それぞれ、台10をZ方向(上下方向)に貫通している。また、複数の第1貫通孔2は、上面6に平行なX方向及びY方向に並んで設けられている。複数の第1貫通孔2は、粘着部材60を介して、個片化された基板Wを吸着するために設けられている。複数の第1貫通孔2の個数は、少なくとも2個以上である。
【0024】
複数の第2貫通孔4は、複数の第1貫通孔2のそれぞれの間に設けられている。複数の第2貫通孔4は、複数の第1貫通孔の内2つの第1貫通孔2間に設けられている。そして、複数の第2貫通孔4は、台10をZ方向(上下方向)に貫通している。複数の第2貫通孔4は、減圧により粘着部材60をバリZから剥離するために設けられている。
【0025】
なお、
図1においては、断面図による図示を容易にするため、複数の第1貫通孔2の個数及び複数の第2貫通孔4の個数を、
図2に示した複数の第1貫通孔2の個数及び複数の第2貫通孔4の個数よりも、それぞれ減らして図示している。複数の第1貫通孔2の個数及び複数の第2貫通孔4の個数は、
図1及び
図2に図示したものに限定されるものではない。
図1には、複数の第1貫通孔2としての、第1貫通孔2a、第1貫通孔2b及び第1貫通孔2cが図示されている。また、
図1には、複数の第2貫通孔4としての、第2貫通孔4a、第2貫通孔4b、第2貫通孔4c及び第2貫通孔4dが図示されている。
【0026】
XY平面に平行な面内における複数の第1貫通孔2の形状は、例えば、円である。しかし、XY平面に平行な面内における複数の第1貫通孔2の形状は、円に限定されるものではない。
【0027】
複数の第2貫通孔4の形状は、Y方向に延伸する溝であることが好ましい。なお、
図2に示されるように、X方向に延伸する複数の第2貫通孔4が設けられていてもかまわない。
【0028】
X方向における第1貫通孔2の第1幅L1は、X方向における第2貫通孔4の第2幅L2より大きいことが好ましい。また、第2貫通孔4aは、第1部分4a1と、第1部分4a1の上に設けられ、X方向における幅が第1部分4a1の幅より大きい第2部分4a2と、を有することが好ましい。例えば、第1部分4a1の幅は第2幅L2であり、第2部分4a2の幅はL3である。なお同様に、第2貫通孔4bは、第1部分4b1と、第2部分4b2と、を有することが好ましい。第2貫通孔4cは、第1部分4c1と、第2部分4c2と、を有することが好ましい。第2貫通孔4dは、第1部分4d1と、第2部分4d2と、を有することが好ましい。
【0029】
X方向における第2貫通孔4の第2幅L2は、ダイシング溝Yの幅L6より大きいことが好ましい。
【0030】
なお、台10には、粘着部材60を軟化させて、基板Wから粘着部材60を剥離しやすくするために、図示しないヒーターが設けられていても良い。
【0031】
容器80は、台10の上に設けられている。容器80は、第2開口部82と、継手88と、を有する。
【0032】
第2開口部82は、容器80の下部に設けられている。第2開口部82は、第1開口部72の第1内径d1より大きな第2内径d2を有する。そして、環状フレーム70と、密着可能となっている。密着可能とするために、例えば、容器80の下面90には、ガスケット用溝84が設けられている。そして、ガスケット用溝84に、ガスケット86が配置されている。そして、かかるガスケット86が環状フレーム70と密着することにより、容器80は、環状フレーム70と密着可能となっている。ここでガスケット86としては、特に限定されるものではないが、例えばゴム製のガスケット、ポリテトラフルオロエチレン製のガスケット、又は金属製のガスケット等を好ましく用いることができる。
【0033】
なお、容器80が環状フレーム70に密着可能となる構成は、上記のものに限定されない。
【0034】
継手88は、容器80に設けられている。継手88は、容器80の外部と容器80の内部を連通可能とする。
図1においては、継手88は、容器80の上部に設けられている。しかし、継手88は、容器80の上部に設けられていなくても良い。
【0035】
例えば、容器80は、環状フレーム70と密着可能であり、環状フレーム70の上にかぶせられる蓋のようなものである。そして、例えば、かかる蓋の上部に、継手88が設けられている。
【0036】
容器80は、例えば、アルミニウムやSUS(Steel Use Stainless:ステンレス鋼)等の金属で形成されている。
【0037】
粘着部材60により基板Wが第1開口部72に固定された環状フレーム70が、上面6に載置された状態で、複数の第1貫通孔2は、例えば図示しないドライポンプを用いて、減圧される(A1)。同様に、複数の第2貫通孔4は、例えば図示しないドライポンプを用いて、減圧される(A2)。
【0038】
また、粘着部材60により基板Wが固定された環状フレーム70に、容器80の第2開口部82が密着された状態で、例えば、継手88に接続された図示しないガス配管及び図示しないレギュレーターを用いて、容器80の内部に不活性ガス等のガスを供給する。これにより、容器80の内部は加圧される(A3)。このため、個片化された基板Wのそれぞれが、例えば、下方に加圧されることになる。
【0039】
次に、実施形態の半導体製造装置100の使用方法について記載する。
【0040】
図4は、実施形態の半導体製造装置100の使用方法を示すフローチャートである。
【0041】
まず、ダイシングされる前の基板Wを、粘着部材60により、環状フレーム70の第1開口部72に固定する(S2)。次に、基板Wをダイシングする(S4)。
【0042】
次に、環状フレーム70を、台10の上に載置する。ここで、ダイシングにより形成されたダイシング溝Yが、第2貫通孔4の上に配置されるように、環状フレーム70を載置する(S6)。なお、さらに、ダイシングにより個片化された基板Wが、第1貫通孔2の上に配置されるように、環状フレーム70を載置する。
【0043】
次に、容器80を、環状フレーム70の上に載置する。ここで、容器80は、環状フレーム70の上に、環状フレーム70に第2開口部82が密着されるように載置する(S8)。
【0044】
次に、例えば台10に設けられたヒーターにより、粘着部材60を加熱する(S10)。なお、例えば、環状フレーム70を台10の上に載置する前からヒーターの電源が入っていて、粘着部材60を加熱する準備がされていてもかまわない。
【0045】
次に、複数の第1貫通孔2を減圧する(S12)。
【0046】
次に、複数の第2貫通孔4を減圧する(S14)。
【0047】
なお、複数の第1貫通孔2の減圧に用いるドライポンプと、複数の第2貫通孔4の減圧に用いるドライポンプは、それぞれ別に準備してもかまわない。また、図示しない配管とバルブを、適宜複数の第1貫通孔2及び複数の第2貫通孔4と1台のドライポンプの間に接続し、かかるバルブの開閉を制御することにより、1台のドライポンプで複数の第1貫通孔2と複数の第2貫通孔4を減圧することが可能である。
【0048】
次に、容器80の内部を加圧する(S16)。ここで、これにより、粘着部材60をバリZから剥離する(S18)。
【0049】
次に、実施形態の半導体製造装置100及びその使用方法の作用効果を記載する。
【0050】
ダイシング装置を用いて、基板Wをダイシングする際には、チッピングと呼ばれる基板Wの端部が欠ける現象、ダイシングにより基板Wに亀裂(クラック)が入る現象、基板Wの端部にバリが発生する現象、及び粘着部材60の屑が発生する現象等が発生し得る。
【0051】
また、ピックアップ装置を用いて、ダイシングにより個片化された基板Wをピックアップする際には、ピックアップに失敗する現象(収得率又はピックアップ率が低下する現象)、ピックアップにより基板Wに亀裂(クラック)が入る現象、及び基板Wの端部が欠ける現象等が発生し得る。
【0052】
さらに、ダイシングにより発生する現象と、ピックアップにより発生する現象は、いずれも粘着部材60の選定により変化し得る。
【0053】
そのため、ダイシングにより発生し得る上記の現象と、ピックアップにより発生し得る上記の現象のすべてをバランス良く抑制しながら、ダイシングするための条件及びピックアップするための条件を探すことが求められていた。しかし、ダイシングの際に発生する現象が抑制される条件が見つかっても、かかる条件がピックアップの際に発生する現象を抑制できるとは限らない。また、ピックアップの際に発生する現象が抑制される条件が見つかっても、かかる条件がダイシングの際に発生する現象を抑制できるとは限らない。そのため、ダイシング条件の最適化とピックアップ条件の最適化が困難であるという問題があった。
【0054】
図5は、実施形態の半導体製造装置100及びその使用方法の作用効果を説明するための模式図である。
図5(a)は、基板Wの厚みがより薄い場合の模式図であり、
図5(b)は基板Wの厚みがより厚い場合の模式図である。
【0055】
ダイシングは基板Wの上側から下側へとおこなわれる。従って、バリZは、特に、基板Wの下面に形成される。従って、バリZが粘着部材60に食い込みやすいため、粘着部材60から基板Wを剥離するのは困難であるという問題があった。
【0056】
特に、半導体装置として縦型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor)が基板Wに形成されている場合には、基板Wの下面に金属電極が形成されている場合が多い。すると、ダイシングの際に、バリZが金属電極に含まれる金属を含むことになる。かかる場合に、金属を含むバリZが粘着部材60により食い込みやすくなるため、粘着部材60から基板Wを剥離するのは困難であるという問題があった。
【0057】
また、
図5(a)に図示したように、基板Wの厚みがより薄い場合には、コレットCを用いて基板Wをピックアップしようとしても、弾性変形率がより高いため、粘着部材60が上に凸に変形すると共に、基板Wも粘着部材60の変形にあわせて変形してしまう。一方、
図5(b)に図示したように、基板Wの厚みがより厚い場合には、弾性変形率がより低いため、粘着部材60が上に凸に変形しても、基板Wは粘着部材60の変形にあわせて変形しづらい。そのため、粘着部材60の剥離はより容易である。
【0058】
そのため、基板Wの厚みがより薄い場合には、粘着部材60から基板Wを剥離するのがより困難になるという問題があった。特に、半導体装置として縦型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor)が基板Wに形成されている場合には、オン抵抗低減のために基板Wが薄膜化されることが好ましい。そのため、さらに粘着部材60から基板Wを剥離するのは困難であるという問題があった。
【0059】
そこで、実施形態の半導体製造装置100は、粘着部材60により基板Wが固定された第1開口部72を有する環状フレーム70が載置される上面6を有する台10であって、台10を上下方向に貫通し、上面6に平行な第1方向に並んで設けられた複数の第1貫通孔2と、複数の第1貫通孔2のそれぞれの間に設けられ、台を上下方向に貫通した複数の第2貫通孔4と、を有する台10と、台10の上に設けられた容器80であって、容器80の下部に設けられ、第1開口部72の第1内径d1より大きな第2内径d2を有し、環状フレーム70と密着可能な第2開口部82と、容器80の外部と容器80の内部を連通可能な継手88と、を有する容器と、を備える。
【0060】
また、粘着部材60により基板Wが第1開口部72に固定された環状フレーム70が上面6に載置された状態で、複数の第1貫通孔2及び複数の第2貫通孔4は減圧され、粘着部材60により基板Wが固定された環状フレームに、第2開口部82が密着された状態で、継手88を用いて容器80の内部は加圧される。
【0061】
複数の第1貫通孔2を減圧することにより、複数の第1貫通孔2の上の粘着部材60を吸着する。これにより、複数の第1貫通孔2の上の、個片化された基板Wを吸着する。そのため、個片化された基板Wが上面6の上でひっくり返ってピックアップ出来なくなるような問題が発生しづらくなる。また、複数の第2貫通孔4を減圧することにより、第2貫通孔4の上に配置された粘着部材60が下方に引っ張られる。そのため、個片化された基板Wの、特にバリZから、粘着部材60が剥離されやすくなる。さらに、容器80の内部を加圧することにより、ダイシング溝Yを経由して、粘着部材60が下方に押される。そのため、個片化された基板Wの、特にバリZから、粘着部材60がさらに剥離されやすくなる。このようにして、粘着部材60の剥離が促進される。そのため、ピックアップ条件を考慮せずにダイシング条件を最適化すること、及びダイシング条件を考慮せずにピックアップ条件を最適化することが、より容易になる。よって、ダイシング条件の最適化及びピックアップ条件の最適化を容易にする半導体製造装置の提供が可能となる。
【0062】
複数の第2貫通孔4のそれぞれは、Y方向に延伸する溝であることが好ましい。バリZはダイシング溝Yに沿って形成されている。そのため、複数の第2貫通孔4の形状も、ダイシング溝Y及びバリZの形状に沿うように、Y方向に延伸する溝であったほうが、複数の第2貫通孔4の減圧による粘着部材60の剥離がより促進されるためである。
【0063】
X方向における第1貫通孔2の第1幅L1は、X方向における第2貫通孔4の第2幅L2より大きいことが好ましい。これは、個片化された基板Wをよりしっかり吸着した上で、粘着部材60の剥離を行うために、第1貫通孔2の第1幅L1が大きい方が、好ましいからである。言い換えると、例えば第1貫通孔2の第1幅L1が小さく個片化された基板Wがしっかり吸着されていない状態で、第2貫通孔4を用いて粘着部材60の剥離を行おうとすると、粘着部材60の剥離に伴い個片化された基板Wが台10の上でひっくり返り、ピックアップ装置によるピックアップがうまく行われなくなることが起こりえるためである。
【0064】
第2貫通孔4aは、第1部分4a1と、第1部分4a1の上に設けられ、X方向の幅が第1部分4a1より大きい第2部分4a2と、を有することが好ましい。より幅の小さい第1部分4a1を設けることにより、第2貫通孔4aを速く減圧し、粘着部材60の剥離を速く行うことが出来るためである。また、剥離した粘着部材60が第2部分4a2の内部におさまりやすくなるためである。言い換えると、第1部分4a1が設けられていない場合、減圧により、剥離した粘着部材60が台10の下方にまで引っ張られてしまうことがある。この場合、個片化された基板Wが共に引っ張られ、個片化された基板Wが上面6の上でひっくり返ってしまうことがある。第1部分4a1と第2部分4a2を設けることにより、これを抑制できる。なお。他の第2貫通孔4b、第2貫通孔4c及び第2貫通孔4dについても同様である。
【0065】
X方向における第2貫通孔4の第2幅L2は、ダイシング溝Yの幅L6より大きいことが好ましい。第2幅L2がL6以下である場合、減圧するための体積が小さすぎて、うまく粘着部材60を剥離することが困難であるためである。
【0066】
実施形態の半導体製造装置及びその使用方法は、基板Wの厚みtが75μm以下の場合に、さらに好ましく適用される。基板Wの厚みがより薄い場合、弾性変形率がより大きいため、粘着部材60の剥離がより困難になるためである。
【0067】
実施形態の半導体製造装置及びその使用方法によれば、ダイシング条件の最適化及びピックアップ条件の最適化を容易にする半導体製造装置及びその使用方法の提供が可能となる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態及び実施例を説明したが、これらの実施形態及び実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
2 :第1貫通孔
4 :第2貫通孔
4a1 :第1部分
4a2 :第2部分
6 :上面
10 :台
60 :粘着部材
70 :環状フレーム
72 :第1開口部
80 :容器
82 :第2開口部
84 :ガスケット用溝
86 :ガスケット
88 :継手
100 :半導体製造装置