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特許7542541複合バイオテキスタイルの製造方法、及びそのような複合バイオテキスタイルを含む医療用インプラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】複合バイオテキスタイルの製造方法、及びそのような複合バイオテキスタイルを含む医療用インプラント
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/16 20060101AFI20240823BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20240823BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20240823BHJP
   A61L 33/06 20060101ALI20240823BHJP
   A61L 27/34 20060101ALI20240823BHJP
   D06M 101/20 20060101ALN20240823BHJP
   D06M 101/32 20060101ALN20240823BHJP
【FI】
A61L27/16
D06M15/564
A61L27/18
A61L33/06 200
A61L27/34
D06M101:20
D06M101:32
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021544192
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2020055417
(87)【国際公開番号】W WO2020178228
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】19160375.2
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】デ ボント, ニコラース フーベルトゥス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィソン, ノエル エル.
(72)【発明者】
【氏名】ウィアマンズ, マンディー マリア ジョゼフィーナ
【審査官】井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0087803(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00-33/18
D06M 13/00-15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用インプラントコンポーネント中での使用のための複合バイオテキスタイルの製造方法であって、
a.2~250dtexの力価を有し、及び生体適合性及び生体内安定性の合成ポリマーから製造される繊維を含む少なくとも1つのストランドを含むテキスタイルを提供するステップであり、前記合成ポリマーが超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)である、ステップと;
b.前記テキスタイルの意図された使用のために切断が可能である前記テキスタイル上の位置を決定するステップと
.ポリエーテル及びポリシロキサン又はポリカーボネート及びポリシロキサンの組合せを含有する、生体適合性及び生体内安定性の熱可塑性ポリウレタンエラストマーと、前記ポリウレタンエラストマーのための溶媒とを含むコーティング組成物によって前記テキスタイルの少なくとも片側上で少なくとも決定された位置で前記テキスタイルを溶液コーティングするステップと;
e.前記コーティングされたテキスタイルから前記溶媒を除去するステップと;
f.超短波パルスレーザーを使用して、少なくともコーティングされた位置で、得られる前記コーティングされたテキスタイルをレーザー切断するステップと
を含み、前記ポリウレタンエラストマーが複合バイオテキスタイルに基づき2.5~90質量%の量で存在し、及び前記ポリウレタンエラストマーが少なくともレーザー切断端部に存在する、複合バイオテキスタイルを得るための、複合バイオテキスタイルの製造方法。
【請求項2】
前記ステップbの後であり前記ステップdの前に、
c.表面を活性化するために高エネルギー源によって前記テキスタイルの少なくとも片側上で前記少なくとも決定された位置で前記テキスタイルを前処理するステップ、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップdが、
d.ポリエーテル及びポリシロキサン又はポリカーボネート及びポリシロキサンの組合せを含有する、生体適合性及び生体内安定性の熱可塑性ポリウレタンエラストマーと、前記ポリウレタンエラストマーのための溶媒とを含むコーティング組成物によって前記テキスタイルの少なくとも片側上で少なくとも決定され、及び前処理された位置で前記テキスタイルを溶液コーティングするステップ、
である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
レーザー切断が、10~26Wのエネルギーレベル設定及び1~12mm/秒の切断速度で実行される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記テキスタイルが、編布、又はブレイディング布を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記テキスタイルが、織布を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのストランドが、8~60dtexの力価を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記テキスタイルが、95質量%の前記少なくとも1つのストランドを含有するか、又は前記少なくとも1つのストランドから製造される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記テキスタイルが15~300μmの厚さを有する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記合成ポリマーが、UHMWPEである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ストランドが、15~40cN/dtexの引張強さを有するUHMWPE繊維を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記テキスタイルの前記ストランドが、少なくとも80質量%のUHMWPE繊維を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリウレタンエラストマーが、40~100ShAの硬度を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記コーティング組成物が、前記テキスタイルの両側の実質的に全ての表面領域上で、前記テキスタイルの両側の表面領域の一部分上で、前記テキスタイルの片側の表面の一部分の上で、前記テキスタイルの片側の実質的に全ての表面領域上で、又は前記テキスタイルの片側の表面の一部分上で、及び前記テキスタイルの反対側の実質的に全ての表面領域上で適用される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
・2~250dtexの力価を有し、及びUHMWPEから製造される繊維を含む少なくとも1つのストランドを含有するテキスタイルと、
・複合バイオテキスタイルに基づき、2.5~90質量%の量の、ポリエーテル及びポリシロキサン又はポリカーボネート及びポリシロキサンの組合せを含有する、生体適合性及び生体内安定性の熱可塑性ポリウレタンエラストマーと
を含む、複合バイオテキスタイルであって、前記ポリウレタンエラストマーが存在する少なくとも1つの切断端部を有し、及び以下に記載される方法で測定した場合、前記切断端部において少なくとも15Nの縫合保持強度を有する、複合バイオテキスタイル。
[縫合保持強度]
縫合保持強度は、その中に、布の中央で、且つ短辺の端部から2mmにおいて、ロープロファイルのテーパードニードルによって高強度縫合(FiberWire(登録商標)4.0)を挿入した30×10mmの布の断片上で測定される。その間に50mmのグリップ間距離及び0.05Nのプレロードでループ状縫合及び布の他端部が取り付けられた空気式Instron Grip(7バール)及びGrip G13Bを備えた、Zwick Universal試験機を使用する。次いで、試料が破損するまで、50mm/分の試験速度で縫合に張力をかける。縫合保持強度は、測定された引き抜き応力-歪み曲線の降伏点として報告される(平均+/-標準;3回の測定に関して)。
【請求項16】
請求項15に記載の複合バイオテキスタイルを含む医療用インプラント。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[分野]
開示される発明は、バイオテキスタイル、より特に織物のような変性ポリマーテキスタイルをベースとする医療用インプラントコンポーネントの製造方法、得られたそのようなコンポーネント、及び医療用インプラントの製造におけるそのようなコンポーネントの使用に関する。
【0002】
[背景]
医療用テキスタイルという用語は、一般に、バンデージ、ドレッシング、アイパッチ、失禁製品、ブレース、外科用ドレープ、フェースマスクのような、体外で、及び循環血液又は開放創と接触せずに使用される、繊維のネットワークから製造されるフレキシブルな材料に対して使用される。バイオテキスタイルは、怪我又は病気の予防、治療又は診断のための医療用デバイスとして、及び患者の健康、医療条件、快適さ及びウェルネスを改善する役割として、生物学的環境の内部(体内)又は外部(体外)のいずれかにおいて使用される、合成又は天然繊維から作成されるテキスタイルのような生育不能の永久的又は一時的な繊維構造物を指す。
【0003】
バイオテキスタイルを使用することができる医療用インプラントの例には、外科縫合、ヘルニアメッシュ、靭帯及び腱、並びにパッチ、グラフト及び人工心臓弁のような心臓血管用途が含まれる。インプラント中に使用することができる繊維及びテキスタイルの必要条件は、生体適合性、生体内安定性に対する生分解性、強度のような機械特性及び純度(例えば有害物質を含まない、潤滑油及びサイジング剤のような表面汚染物質がない)に関する。インプラントを配置することを含む多くの外科的処置は、開放又は経皮/内視鏡外科技術を使用して実行可能である。後者の微侵襲性アプローチは、患者のより急速な回復時間などの臨床的利益のため、ますます採用されている。この種の処置の普及率の増加によって、使用されるデバイスのより低いプロファイルの必要性が生じ、使用中のテキスタイル又は布の特性及び性能に悪影響を及ぼすことなく、より狭い送達システム中で適合させるためのコンパクティング及び圧縮のような柔軟性の必要条件も満たすバイオテキスタイル製品が必要とされる。布は、例えば編み、織り又はブレイディングによって、繊維の1つ又は複数のストランドを交絡させることによって製造されるフレキシブルなテキスタイルであり、及び一般に、このテキスタイルは、長さ及び幅のような他の寸法よりも非常に小さい厚さを有する。
【0004】
生体適合性及び生体内安定性の布の例には、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリ(l-乳酸)(PLLA)のようなポリエステルから製造される繊維から、又はポリオレフィンベースの繊維から;特に超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)から製造される、薄いが非常に強いモノフィラメント又はマルチフィラメントヤーンから製造されるものが含まれる。そのようなPET、PLLA及びUHMWPE繊維は、縫合、メッシュ、(ステント)グラフト及び人工弁のような医療用インプラント中で適用されるか、又はその中で使用するために提案されている。
【0005】
生医学的な使用のために、テキスタイル又は布は、所望のサイズ又は形状のより小さい断片に切断され、及び/又は例えばスティッチ若しくは縫合によって(インプラント又は体の)別のコンポーネントに連結される必要があることが多い。一般に、布のそのような断片の少なくとも切断端部は、そのほつれ又は解繊抵抗及び縫合保持強度を増加させるための安定化のいくつかの形態を必要とする。縫合保持は、通常、金属ステントなどの医療用デバイスのいくつかの他のコンポーネントに布を固定するために布を通過する縫合上に作用する張力による開裂又は解繊に対して抵抗する布の能力を表す。永久的な医療用インプラント、特に経皮的に送達され、且つ直接血液と接触する医療用インプラントのコンポーネントとして使用されるテキスタイルの切断端部を安定させるためには多くの課題がある。特に、典型的な安定化技術の不都合としては、(i)それによって、それを移植するためにより大きいカテーテルが必要とされる、コンポーネント及びデバイスの追加的なプロファイル、(ii)血栓形成などの最適血液接触特性を有し得ない追加的な材料、(iii)切断端部バイオテキスタイルモルフォロジーの歪み、(iv)血流中の外部微粒子の塞栓形成の危険性を増加させる安定化材料の不十分な結合強度、並びに(v)バイオテキスタイルの剛性化又はその柔軟性の減少が含まれ得る。
【0006】
布の表面テクスチャー、粗さ、多孔性及び細孔サイズのような物理的特性が体液及び組織との相互作用に影響を有すること、及びそのようなその特性は、例えば血液の凝固、先天的炎症反応又は組織内部成長を制御するために所与の用途に関して調整される必要があり得ることがさらに知られている。
【0007】
米国特許第5178630号明細書は、解繊抵抗合成織物血管グラフト、すなわち、ポリエチレンテレフタレートヤーンから製造される織布を製造すること、及び織物中に低溶融性の可融性ストランドを組み込むことを記載する。布の熱硬化後、可融性コンポーネントは隣接する他のヤーンと連結し、したがって、解繊抵抗が増加する。可融性ストランドは、PETコアと、より低溶融性のポリマーシースとを有する二成分フィラメントから形成されるヤーンであり得る。この文献は、平滑な薄い仮性内膜形成を促進するための微細ロープロファイル織物内部表面、及びそのテクスチャーが組織接着及び内部成長を強化するベロア表面のようなヤーンループを有する外部テクスチャード表面を有する布も記載する。
【0008】
米国特許第5741332号明細書は、合成繊維を織るか又はブレイディングすることによって形成される血管グラフトのような管状軟質組織人工器官に関する。この文献は、端部のほつれ抵抗、並びに内部及び外部表面の異なる多孔性の制御などの課題に取り組む。連結するヤーンが層を連結するか、又は別に形成された層が接着ラミネートされた状態の多層三次元のブレイディング構造が記載される。このアプローチは、漏洩及び血栓形成を防ぐ平滑表面及び低い多孔性を有する内部層と、組織内部成長を強化するテクスチャード表面を有する外側層とをもたらすであろう。ブレイディング構造は、解繊抵抗を強化し、及び体管腔への縫合のためにより適切なグラフトを提供するように周囲のヤーンを結合するために熱溶融される可融性材料をさらに含み得る。ブレイディング構造は、20~1000デニールのPETマルチフィラメントヤーン及びより低溶融性の可融性ヤーンから典型的に製造される。
【0009】
米国特許第4693720号明細書は、繊維製造を可能にするために存在していた全ての非生体適合性のサイジングを除去した後、ポリカプロラクトン(PCL)のような生分解性ポリマーの第1の薄コーティング(又はサイジング)が、布を(再)安定化するために溶液コーティングによって適用されるカーボン繊維から製造される織布を含む外科用メッシュを記載する。第2のコーティング層は、より高い濃度で生分解性ポリマー(例えばPCL)の溶液を使用して、布の端部に適用される。そのようにして形成された端部細片は、デバイスが外科的に挿入される時にスティッチ又は縫合を支持するために十分強いことが示される。或いは、ポリマーフィルム細片を端部に適用し、布端部を溶融コーティングするために加熱してもよい。
【0010】
米国特許出願公開第2014/0374002号明細書には、織布中のほつれのない融合端部を製造する方法であって、例えば熱空気を噴出するノズルによって布の一部分上に熱を向けることと、次いで、(部分的に)溶融した繊維を少なくとも部分的に融合するために、加熱された部分を圧縮することとを含む方法が記載される。その後、例えば回転ナイフで布を融合部分で切断し、安定した端部を形成する。
【0011】
日本特許第5111505号公報は、良好な取扱性を有し、且つ縫合抵抗及びほつれ抵抗のような改善された特性を示す人工血管の製造に関する。この文献は、特に、0.8dtex以下の超微細繊維、及び3~45質量%(繊維に基づく)のポリマーエラストマーから製造される人工血管を記載する。より詳しくは、管状構造は織り又は他の技術によって超微細繊維から製造され、及びエラストマーは、含浸又はコーティングによって、或いは好ましくは薄膜を熱ラミネートすることによって、液体として構造に適用される。エラストマーは管状構造の繊維を完全には被覆せず、及び管状構造の内部よりも外部においてエラストマーを適用することが教示される。適切なポリマーエラストマーとしては、ポリウレタン、ポリウレア、アクリル、スチレンコポリマー及び天然ゴムが含まれる。実験では、管状編物構造はPET/ポリスチレン海島繊維から製造され、次いでポリスチレン成分を除去するために、構造をトリクロロエチレンで処理した。その後、管状繊維構造をポリエーテルウレタンでコーティングした。得られた構造は、犬の大動脈に移植した場合、良好なほつれ抵抗、縫合性及び回復を示した。
【0012】
上記の文献での開示にもかかわらず、生体内安定性及び生体適合性を、高い柔軟性、切断性、ほつれ抵抗及び縫合保持強度のような特性と組み合わせる、生医学的な用途における使用に適切なテキスタイルを製造する方法に関する必要性がなお存在する。
【0013】
[概要]
本開示の目的は、生体内安定性及び生体適合性、高い柔軟性、並びに特にバイオテキスタイルを切断することによって製造される端部での適切なほつれ抵抗及び縫合保持強度のような特性を組み合わせる、バイオテキスタイル、すなわち生医学的な用途で使用するためのテキスタイルのそのような製造方法、並びにそのようにして得られるバイオテキスタイル、及び医療用インプラントコンポーネント中での又は医療用インプラントコンポーネントとしてのその使用を提供することを含む。
【0014】
以下の本明細書中に記載され、且つ請求の範囲において特徴づけられる実施形態は、医療用デバイス、特に整形外科及び心臓血管インプラントの製造におけるコンポーネントとしての使用に関してそれを適切にさせる、いくつかの特性を組み合わせるバイオテキスタイルの製造方法を提供する。本発明の態様に従って、本開示は、請求項1による医療用インプラントコンポーネント中で、又は請求項1による医療用インプラントコンポーネントとして使用するための複合テキスタイルの製造方法、より特に、
a.2~250dtexの力価を有し、且つ生体適合性及び生体内安定性の合成ポリマーから製造される繊維を含む少なくとも1つのストランドから製造されたテキスタイルを提供するステップと;
b.テキスタイルの意図された使用のために切断が可能であるテキスタイル上の位置を決定するステップと;
c.任意選択的に、表面を活性化するために高エネルギー源によってテキスタイルの少なくとも片側上で少なくとも決定された位置でテキスタイルを前処理するステップと;
d.生体適合性及び生体内安定性のポリウレタンエラストマーとポリウレタンのための溶媒とを含むコーティング組成物によってテキスタイルの少なくとも片側上で少なくとも決定され、及び任意選択的に前処理された位置でテキスタイルを溶液コーティングするステップと;
e.コーティングされたテキスタイルから溶媒を除去するステップと;
f.超短波パルスレーザーを使用して、コーティングされた位置で、得られるコーティングされたテキスタイルをレーザー切断するステップと
を含み、ポリウレタンが複合バイオテキスタイルに基づき2.5~90質量%の量で存在し、及びポリウレタンが少なくともレーザー切断端部に存在する複合バイオテキスタイルを得るための、複合バイオテキスタイルの製造方法を提供する。
【0015】
本発明のそのような方法によって、1つ又は複数のコーティングされた位置において、例えばグラフト材料又はバルブリーフレットなどの医療用インプラントのためのコンポーネントとしてのその意図された使用に関して所望のサイズ及び/又は形状にレーザー切断された複合バイオテキスタイルの断片が得られ、そのような複合バイオテキスタイルは、良好に画定され、且つ安定な切断端部を有し、相当する非コーティング及び(レーザー)切断テキスタイルと比較して、改善されたほつれ抵抗及び縫合保持を示すことが見出された。本発明者は、いずれかの理論に拘束されることを望まないが、ポリウレタンコーティングが適切に繊維を被覆して、繊維に接着すること、及び複合バイオテキスタイルをレーザー切断する際、パルスレーザーの適用エネルギーが、ポリウレタンコーティング及びポリマーの融点より高い温度まで、温度を短く且つ局所的に増加させ得;ポリウレタン、特にTPUが局所的に溶融し、さらに繊維周辺を流動し、繊維の連結をおそらく生じるが、切断端部は、繊維の溶融及び再固体化による局所的濃厚化及び/又は不規則性を示さないことを示唆する。インプラント中で使用され、且つ改善されたほつれ抵抗を必要とするテキスタイルにそのようなポリウレタンコーティングを適用することは、コーティングが布の他の特性、例えば柔軟性、生体内安定性及び重要なことに血液適合性を悪化させ得るため、明らかな選択肢ではなかった。加えて、人工心臓弁に関する米国特許出願公開第2014/0296962号明細書は、グラフト材料として使用するための、ポリエステルヤーンから製造され、並びに透過性を安定化及び減少するために、例えばポリウレタンでコーティングされたブレイディング構造物を記載する。しかしながら、この文献を読むと、当業者は、未コーティングのブレイドをレーザー切断することによって、ほつれを防ぐために密閉された切断端部が得られること、及び切断のためにレーザーが適用される場合、繊維構造物を安定させるための任意のコーティングの必要性が減少するか、又はさらには排除されることが教示される。
【0016】
複合バイオテキスタイルを製造する本方法の別の利点は、少なくとも選択された位置でコーティングを適用することによって、変性テキスタイルは、得られた複合バイオテキスタイルが医療用インプラントのコンポーネントとして使用される場合、強度及び柔軟性のような特性に加えて、優れた血液適合性及びカルシウム沈着及び/又は組織内部成長の減少のような改善された相互作用又は生体適合性をさらに示し得るということである。これは、コーティングの化学的性質のため、及び/又は(マルチフィラメント)繊維から構成されるテキスタイルの比較的粗く且つ多孔性の表面を部分的に被覆し、平滑化するコーティングのためであり得る。
【0017】
本方法によって得られる複合バイオテキスタイルのさらなる利点は、バイオテキスタイルのさらなる使用時にポリウレタンが接着剤としても機能することができるということであり得る。例えば、複合バイオテキスタイルは、2種以上の層を一緒に溶媒又は熱活性化結合することによって、多層のフラットな、又は管状の構造に形成され得る。同様に、1つ又は複数のコーティングされたテキスタイル層は、例えば特性を局所的に最適化するために、ケーブル、テープ又は布のような別の繊維構造物に、或いは、例えば(部分的に)被覆されたステントを形成して、クランプ又は縫合のような付着手段の必要性を減少させるためにステントフレームに付着される別の物品に、溶媒又は熱結合によってラミネートされ得る。そのようなコーティングを用いずに、例えば、レーザー溶接を使用することによって、PET又はUHMWPEなどの高度に結晶質の合成繊維から構成されるテキスタイルを熱的に結合することによって、一般にテキスタイルモルフォロジー及び/又はその柔軟性の歪みが生じる。
【0018】
実験結果によって、本方法によって製造される複合バイオテキスタイルの血液適合性、摩耗抵抗及び縫合保持の著しい改善が実証される。
【0019】
別の態様に従って、本開示は、本開示の方法によって得ることができるか、又はそれによって得られた、医療用インプラントコンポーネント中で、又は医療用インプラントコンポーネントとして使用するための複合バイオテキスタイルを提供する。
【0020】
さらなる態様は、特に組織強化処置又は心臓血管インプラントを含む整形外科用途などにおいて、医療用インプラントのコンポーネントが体組織又は体液と接触するであろう用途に関しての、移植可能な医療用デバイスの前記コンポーネントとしてのそのような医療用インプラントコンポーネントの使用、及び移植可能な医療用デバイスを製造する際のそのような医療用インプラントコンポーネントの使用に関する。軟組織強化のための材料の例には、ヘルニア修復、腹壁再建又は変性組織強化のためのメッシュが含まれる。心臓血管インプラントは、脈管グラフト、ステントカバー、メッシュ、又は静脈弁若しくは心臓弁のような人工弁のようなデバイスを含む。そのような用途の多くにおいて、縫合は、インプラントコンポーネントをデバイスの他の部分に、又は周囲の軟組織若しくは骨組織に連結するために使用される。
【0021】
他の態様としては、前記複合バイオテキスタイル又は医療用インプラントコンポーネントを含む、そのような医療用デバイス又はインプラントを含む。
【0022】
当業者は、本実験は主にUHMWPE繊維及びコーティングとしての特定の熱可塑性ポリウレタンをベースとする布に関するが、詳細説明でさらに示されるように、端部ほつれ、並びに縫合によって誘導される解繊及び開裂に影響を受けやすい他のポリマーの繊維から製造された薄いフレキシブルなテキスタイルに、並びに他のポリウレタンコーティング材料の使用に、本開示が同様に適用され得ることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】超短パルス(USP)レーザーによって製造されたUHMWPE織布のレーザー切断端部の顕微鏡写真を示す。
図2A】USPレーザーによって製造されたUHMWPEラミネート布(CE2)のレーザー切断端部を示す顕微鏡写真を表す。
図2B】CMレーザーによって製造されたUHMWPEラミネート布(CE2)のレーザー切断端部を示す顕微鏡写真を表す。
図3A】USPレーザーによって製造されたポリウレタンコーティングされたUHMWPE布(Ex4)のレーザー切断端部を示す。
図3B】CMレーザーによって製造されたポリウレタンコーティングされたUHMWPE布(Ex4)のレーザー切断端部を示す。
図4A】試料Ex5からUSPレーザーによって製造された他のポリウレタンでコーティングされたUHMWPE布のレーザー切断端部を示す。
図4B】1層及び2層コーティング布Ex5及びEx6からCMレーザーによって製造された他のポリウレタンでコーティングされたUHMWPE布のレーザー切断端部を示す。
図5A】未コーティングUHMWPE布(CE7)に関する、摩耗試験に暴露された試料のレーザー切断端部部分の顕微鏡写真を示す。
図5B】ポリウレタンコーティングされたUHMWPE布(Ex8)に関する、摩耗試験に暴露された試料のレーザー切断端部部分の顕微鏡写真を示す。
図5C】ポリウレタンコーティングされたUHMWPE布(Ex9)に関する、摩耗試験に暴露された試料のレーザー切断端部部分の顕微鏡写真を示す。
図5D】ポリウレタンコーティングされたUHMWPE布(Ex10)に関する、摩耗試験に暴露された試料のレーザー切断端部部分の顕微鏡写真を示す。
【0024】
[詳細な説明]
本開示に関連して、以下の定義が使用される。繊維構造物とは、例えば、交絡によって、接着剤若しくはバインダーを用いて、又は部分的な溶解によって、1つ又は複数の繊維のストランドを相互接続することによって製造される構造、ロープ、ケーブル、テープ又はテキスタイルなどを含むものとして理解される。ロープ、ケーブル及びテープは、ストランド又は繊維に基づく細長い構造物である。テキスタイルは、繊維のネットワークを含むフレキシブルな材料であり、典型的に、2つの側面又は表面を有するフラットなシートのようにその幅及び長さより非常に小さい厚さを有するか、又は内部及び外部表面を有する中空管状形態を有する。テキスタイルには、ランダムに配向された繊維のフェルト又は一方向性シートのような不織布、及び編み、クローシェ編み、織り又はブレイディングのような技術によって繊維のストランドから製造される構造のような布が含まれる。テキスタイルは、異なる方向で類似の物理又は機械特性を有する等方性であり得、繊維の種類、数及び/又は配向での差の結果として異方性であり得、及び実質的に一定の厚さを有し得るか、又は厚さに変動を示し得る。ストランドは、繊維の束を指す。繊維は、1つ又は複数の細長い(薄くて長い)糸のような構造を指す一般用語であり、連続繊維(フィラメントとも呼ばれる)及び/又は短繊維(ステープル繊維とも呼ばれる)を含み、並びに、単一繊維若しくはフィラメント及び/又はヤーンを指し得る。フィラメントは、一般に50μm未満の直径を有し、且つ典型的に(溶融又は溶液)紡糸プロセスによって製造される、一般に丸形又は長方形の断面を有する(単一の)薄い糸であるものとして理解される。ヤーンは、任意選択的にヤーンの整合性を強化するために一緒によられたフィラメント及び/又はステープル繊維の連続束である。マルチフィラメントヤーンは、任意選択的にヤーン束整合性を強化するために一緒によられた少なくとも5つのフィラメントのようなフィラメントの束である。紡績ヤーンは、ステープル繊維を一緒によることによって製造される糸である。
【0025】
複合テキスタイルなどの複合繊維構造物は、2種以上の構造要素、例えば織布及び別の繊維構造物(ケーブル、テープ又は別の布のような)及び/又はポリマー組成物(例えばラミネート又はコーティングされた層として)を組み合わせる構造物を指す。ラミネートされたテキスタイルは、層がポリマーフィルム又はシートを熱又は接着剤結合することによって適用され得る、1つ又は2つの側面に付着されたポリマーの層を有するテキスタイルであるが、それに対してコーティングされたテキスタイルは、コーティングが溶液、分散液又は溶融物として適用され得、及びテキスタイルの繊維の間で部分的に浸入し得るか、若しくはテキスタイルの繊維を被覆し得る、1つ若しくは2つの側面上又はその一部分上で(例えばポリマーの)コーティング層を有する。
【0026】
編まれたか又はクローシェ編みされた繊維構造物は、その周りに巻きつけることによって相互接続される少なくとも1つのストランドから製造される。織物繊維構造物は、構造物の長さに沿って走る-縦糸-ストランド、及び実質的にそれに垂直な別の-横糸又はフィル-ストランドによる、少なくとも2つのストランドから製造される。縦糸及び横糸ストランドは、特定の織りパターンで交絡する(互いの上下で交差する)。ブレイディング繊維構造物は、斜めに重なり合うパターンで互いに交絡する少なくとも3つのストランドから製造され、及び典型的に比較的狭い幅のフラット又は管状の構造物である。不織布繊維構造物は、化学的、機械的、溶媒及び/又は熱処理によって一緒に結合されるステープル又は連続繊維から製造可能であり、フェルト、又はスパンボンド若しくはニードルパンチ繊維ウェブなどである。繊維は、例えばフェルト中でランダムに配向され得るが、1つ(又は複数)の方向で実質的に配向されてもよい。最後の場合、及び特にポリマーのラミネート、コーティング又は含浸によって一緒に結合される場合、そのような構造物は一方向性(UD)複合物として記載されてもよい。
【0027】
生体親和性材料は、生体組織と接触する時に毒性の、有害な、又は免疫学的応答を生じないことによって生物学的に適合性を有する。生分解性とは、材料が、生物学的手段によって、例えば酵素作用によって、より単純な成分への化学的分解又は変質を受けることを意味する。生体内安定性又は生体不活性は、材料が、意図された使用の条件及び時間において実質的に生分解性ではないことを意味する。
【0028】
一態様に従って、本発明は、医療用インプラントコンポーネント中で、又は医療用インプラントコンポーネントとして使用するために適切な複合バイオテキスタイルの製造方法であって、
a.2~250dtexの力価を有し、且つ生体適合性及び生体内安定性の合成ポリマーから製造される繊維を含む少なくとも1つのストランドを含むテキスタイルを提供するステップと;
b.テキスタイルの意図された使用のために切断が可能であるテキスタイル上の位置を決定するステップと;
c.任意選択的に、表面を活性化するために高エネルギー源によってテキスタイルの少なくとも片側上で少なくとも決定された位置でテキスタイルを前処理するステップと;
d.生体適合性及び生体内安定性のポリウレタンエラストマーとポリウレタンのための溶媒とを含むコーティング組成物によってテキスタイルの少なくとも片側上で少なくとも決定され、且つ任意選択的に前処理された位置でテキスタイルを溶液コーティングするステップと;
e.コーティングされたテキスタイルから溶媒を除去するステップと;
f.超短波パルスレーザーを使用して、少なくともコーティングされた位置で、得られるコーティングされたテキスタイルをレーザー切断するステップと
を含み、ポリウレタンが複合バイオテキスタイルに基づき2.5~90質量%の量で存在し、且つポリウレタンが少なくともレーザー切断端部に存在する複合バイオテキスタイルを得るための複合バイオテキスタイルの製造方法を提供する。
【0029】
製造された複合バイオテキスタイルは、医療用インプラントコンポーネントの一部を形成することができるか、又は医療用インプラントコンポーネントを形成することが可能であり、バイオテキスタイルがそのようなコンポーネントの構造的な又は強度を提供する部分を形成するか、或いは複合バイオテキスタイルは医療用インプラントコンポーネントであることを意味する。インプラントコンポーネントの一部を形成し得る他の部材の例には、いくつかの心臓血管インプラントの場合には金属又はポリマーステントフレーム、又はいくつかの整形外科インプラントの場合には、高強度縫合、縫合アンカー、プレート及びスクリュー若しくは他の固定構造が含まれる。そのようなインプラントコンポーネントはパッケージングのために一時的な保護化合物又はフィルムで被覆され得るか、或いはカプセル中に圧縮及び織り込まれてもよく、その部分の全ては、インプラントコンポーネントを使用する前に除去することができる。そのようなインプラント又はコンポーネントは、経皮送達系、イントロダクターシース、縫合糸通しデバイスなどの実際の医療用インプラントデバイスを製造するためのインプラントコンポーネントの使用においてツールとして役立つことができる医療用デバイスの補助部分とも相互作用し得る。
【0030】
本発明の実施形態において、医療用インプラントコンポーネントは複合ポリウレタン/ポリマーバイオテキスタイルであり、さらなるコンポーネントを含まない。このことによって、インプラント又はデバイスを製造する際のインプラントコンポーネントの使用が単純化され、あまり望ましくない、又は望ましくない部分又は化合物を導入するリスクは減少される。
【0031】
本方法のステップa)において、2~250dtexの力価を有し、且つ生体適合性及び生体内安定性の合成ポリマーから製造される繊維を含む少なくとも1つのストランドを含むテキスタイルが提供される。実施形態において、テキスタイルは、編み、織り又はブレイディングのような異なる形成技術によって製造可能であった不織構造物又は布である。布は実質的に等方性であり得るか、又はいくらかの異方性を示し得る。当業者は、そのようなテキスタイル及び布の形成方法、並びにそのようなテキスタイルの種々の特徴を知っており、及びテキスタイルの特定の意図された用途及びその必要条件を考慮して適切な種類を選択することができる。編布は、例えば、典型的に織布より多くの開放構造を有し、及び変形及び延長がより容易であり得る。編布の特定の特性は、例えば、伸張性が、異なる方向で異なり得るということであり得る。例えばそのような異方性特性は、ステントのグラフト又は人工弁のリーフレットのような脈管デバイスのためのコンポーネントを設計する際に有用であり得る。織物構造は、種々の織物技術を適用することによって、又は縦糸及び横糸ストランドとして種々のヤーンを使用することによって、所望の非伸縮性若しくは低伸縮性特性、又は特定の形状、形態又は厚さ及びその変動を組み込むことができるという利点を有する。このように、例えば特定のパターン又は異方性特性を有する布を製造することができる。当業者は、所望の特性を得るために選択されたストランドと組み合わせて、任意選択的にいくつかの通常実験を用いて、適切な技術及び交絡パターンを選択することができる。
【0032】
本発明の実施形態において、複合バイオテキスタイル中のテキスタイルは、織布又は編布、好ましくは織布である。典型的に、平織、綾織、紗織又は斜子織パターンのような一般に使用されるパターンを有する織布が良好な性能を提供することが判明している。縦糸対横糸として異なるストランドを使用することによって、例えば心臓弁のリーフレットのようないくつかの天然組織材料の典型的な特性が反映される異方性特性を有する編物が形成され得る。織布は典型的にその縦端部でセルベッジ(又は織り端)を有し、構造の端部に対して垂直になる横糸ストランドは自由端として構造から延在していないが、織物構造に戻ることによって端部で連続になる。しかしながら、そのような安定なセルベッジが残留し、且つ端部として機能することができるかどうかは、又は特定の形状のテキスタイルの断片がより大きいテキスタイルから切断される必要があるかどうかは、インプラントの実際の使用及びその設計次第である。そのような後者の状況に関して、以下さらに議論されるように、本開示は、布のポリウレタンコーティングされた部分を通しての切断するための特定のレーザーを使用することによって、安定な切断端部を有する布のようなテキスタイル(の断片)を製造する方法を提供する。
【0033】
複合バイオテキスタイルは、2~250dtexの力価を有する少なくとも1つのストランドを含むか、又はそれから製造されたテキスタイルを含む。単位dtex又はデシテックスは、関連単位デニールと同様に典型的に繊維産業で使用されており、ストランド、繊維又はヤーンの線形密度を示す。1dtexはストランド10,000メートルあたり1グラムである。力価が低いほど、ストランドの厚さは低い。ストランドの種類及び繊維中のポリマーの種類、並びにテキスタイルの種類がいくらかの影響を有し得るが、薄いストランドから製造される布は、一般に厚いストランドから製造されるテキスタイルより薄く、よりフレキシブル又は柔軟である。本発明の実施形態において、ストランドは、最大で225、200、180、160、140、120、100、80、60又は50dtex、及び少なくとも4、5、6、8、10、15又は20dtexの力価を有する。実施形態において、少なくとも1つのストランドは、布の取扱性、柔軟性、ロープロファイル及び強度の間の良好なバランスのために、4~140、6~100又は8~60dtexの力価を有する。テキスタイルは、同一又は異なる線形密度であり得る2種以上のストランドを含み得る。異なる力価のストランドを使用することにより、布の厚さは、長さ及び/又は幅方向で変動し得、局所の厚さ若しくは剛性差、又は例えば布の種類次第で特定のパターンを有する特定のテクスチャーが作成され得る。当業者は、テキスタイルの所望の厚さ及びテクスチャー次第で適切な力価のストランドを選択することができる。
【0034】
複合バイオテキスタイルは、2~250dtexの力価を有し、且つ生体適合性及び生体内安定性の合成ポリマーから製造される繊維を含む少なくとも1つのストランドを含むテキスタイルを含む。実施形態において、テキスタイルは少なくとも50質量%の前記ストランドを含有し、及びテキスタイルが本明細書に記載される他の特徴に従う限り、他のストランドは異なる特徴を有し得る。好ましい実施形態において、テキスタイルは少なくとも60、70、80、90又は95質量%の前記ストランドを含有するか、或いはそのようなストランドから製造される。
【0035】
一実施形態において、提供されるテキスタイルは、約15~300μmの厚さを有する。テキスタイルの厚さは、ストランドの種類、テキスタイルを製造する際に使用される形成技術の種類及びテキスタイルの密度;布中のストランド間の距離に関連する。好ましくは、テキスタイルは、改善された可撓性及び柔軟性のために最大で275、250、225、200、175、150、125、100、90又は80μmの厚さ、並びに特定の強度及び耐久性特性のために少なくとも20、25、30、35、40 45又は50μmの厚さを有する。テキスタイルが均一な厚さを有さない場合、これらの値は最大及び最小厚さを表す。
【0036】
テキスタイル中のストランドは、種々の異なる構造であり得、且つ種々の生体適合性及び生体内安定性の合成ポリマーから製造され得る。実施形態において、テキスタイルの少なくとも1つのストランドは、少なくとも1つのモノフィラメント又はマルチフィラメントヤーンを含む。モノフィラメントの場合、ストランドは、好ましくは典型的に2~50dtexの力価を有する1つのモノフィラメントによって形成される。モノフィラメントがより厚い場合、テキスタイルの剛性は、意図された用途に関して高くなり過ぎる場合がある。好ましくは、モノフィラメントは、良好な柔軟性を有するテキスタイルのために、最大で45、40、35又は30dtexの力価を有する。
【0037】
他の実施形態において、テキスタイルの少なくとも1つのストランドは、1つ又は複数のマルチフィラメントヤーンからなる。ストランドの上記で議論された寸法を想定すれば、テキスタイル中のマルチフィラメントヤーンは約2~250dtexの力価を有する。ヤーンは、好ましくは最大で225、200、180、160、140、120、100、80、60又は50dtex、及び少なくとも4、5、6、8、10、15又は20dtexの力価を有する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのヤーンは、4~120、5~80又は6~60dtexの力価を有する。ストランドが2つ以上のヤーンを含む場合、力価は、ストランドに関して示された範囲に適合するように選択される。マルチフィラメントヤーンは撚糸であるか、又は不撚糸であることが可能である。撚ヤーンは一般に取り扱いが容易であり、テキスタイルに容易に変換されるが、不撚ヤーンは、フィラメントが互いに対してより容易に移動及びシフトし得、且つヤーンの断面がテキスタイル中でより長方形又は平面になり得るため、より柔軟なテキスタイルをもたらし得る。いくつかの実施形態において、テキスタイルは、不撚マルチフィラメントヤーンを含むストランドから製造される。これは、例えばフィラメントが好ましくは平行に配向するUD構造物を製造する場合には有利である。典型的に、マルチフィラメントヤーンに含有される個々のフィラメントは、広く異なるフィラメントあたりの力価、例えば、フィラメントあたり0.2~5dtex又は好ましくは0.3~3若しくは0.4~2dtexを有し得、及びフィラメントは、実質的に円形であるが、長方形又は他のいずれかの形状の断面を有することができる。
【0038】
テキスタイルは、生体適合性且つ生体内安定性の合成ポリマーから製造される(か、又はそれを含む)少なくとも1つのストランドを含む。適切な繊維は、一般に、化学組成が広く異なり得る熱可塑性ポリマーから製造された。テキスタイルの機械特性、特に強度及び弾性率は、好ましくは、靭帯、血管又は弁のような体組織と適合性のある範囲、又は調和する範囲である。繊維製造において使用される生体適合性の熱可塑性合成ポリマーとしては、そのコポリマー、コンパウンド及びブレンドを含む、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、ビニルポリマー、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリアクリル、ポリアセタール、ポリイミド、ポリカーボネート及びポリウレタンのような材料が含まれる。そのような合成ポリマーは、アミノ酸のような天然化合物及び/又は合成モノマーをベースとしていてよい。
【0039】
実施形態において、生体適合性及び生体内安定性の合成ポリマーは、ポリオレフィン、ポリケトン、ポリアミド及びポリエステルから選択される。適切なポリオレフィンには、ポリエチレン及びポリプロピレン、特に超高モル質量ポリエチレン(UHMWPE)のような高モル質量のそのようなポリマーが含まれる。適切なポリアミドには、脂肪族、半芳香族及び芳香族ポリアミド、例えば、ポリアミド6、ポリアミド66及びそれらのコポリマー、並びにポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)が含まれる。適切なポリエステルには、脂肪族、半芳香族及び芳香族ポリエステル、例えば、ポリ(l-乳酸)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンフラノエート(PEF)及び液晶質芳香族コポリエステルが含まれる。一実施形態において、テキスタイルは、PET又はそのコポリマーから製造される繊維のストランドを含む。ポリマー繊維は、ゲル紡糸又は電解紡糸のような特別な技術を含む、溶液紡糸及び溶融紡糸のような当該技術分野で既知の種々の繊維紡糸プロセスを使用して製造可能である。
【0040】
実施形態において、テキスタイル中のストランドは少なくとも8cN/dtexの引張強さを有する。ストランドの強度は、とりわけ、ストランド中の繊維の特性次第である。したがって、ポリマー繊維は、好ましくは少なくとも8cN/dtex、又は少なくとも9若しくは10cN/dtexの引張強さを有する。
【0041】
さらなる実施形態において、ストランド中の繊維は、モノマー単位としてエチレン及びプロピレンなどの1つ又は複数のオレフィンを含有する、ホモポリマー、及び例えばビポリマー、ターポリマーなどを含むコポリマーから選択される1つ又は複数のポリオレフィンから製造された。そのようなポリオレフィンは、好ましくは高いモル質量を有し、且つ当業者に既知のいずれかの方法によって形成され得る。高いモル質量とは、本明細書中、GPCによって決定されたか、又は溶液粘度測定から誘導された少なくとも350kDaの重量平均分子量(又はモル質量)を意味することが理解される。ポリオレフィンの適切な例には、ポリプロピレン、ポリエチレン及びそれらのコポリマー又はブレンド;ポリプロピレンホモポリマー、中密度ポリエチレン、線形若しくは高密度ポリエチレン、エチレンと比較的少量のブテン-1、ヘキセン-1及びオクテン-1などの1種又はそれ以上のアルファ-オレフィンとのコポリマー、線形低密度ポリエチレン、エチレン/プロピレンコポリマー、プロピレン/エチレンコポリマー、ポリイソプレンなどが含まれる。ポリプロピレン及びポリエチレンポリマーが好ましい。そのような高モル質量ポリオレフィン繊維の利点は、それらの良好な生体適合性及び生体内安定性に加えて、そのような繊維が有し得る比較的高い引張強さ、すなわち、少なくとも10cN/dtexの引張強さであり、これによって、薄いが強くて耐久性のあるテキスタイルを製造することが可能となる。
【0042】
さらなる実施形態において、テキスタイル中のストランドは、高分子量ポリエチレン(HMWPE)又は超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)などの線形ポリエチレンから製造される繊維を含む。分子量という古い用語は、当該技術分野において、まだモル質量と交換可能に使用されており、(超)高モル質量ポリエチレンの一般に使用される略語でも反映される。
【0043】
UHMWPEは、高い生体内安定性又は生体不活性と組み合わせて良好な生体適合性を示す合成ポリマーであり、すでに長い間、種々の生医学的デバイス及びインプラント中で使用されている。UHMWPEは、少なくとも4dL/g、例えば4~40dL/gの固有粘度(IV)を有するポリエチレンであることが本明細書中で理解される。固有粘度は、Mn及びMwのような実際のモル質量パラメーターよりも容易に決定することができるモル質量に関する基準である。IVは、デカリン中溶液上で135℃において方法ASTM D1601(2004)に従って、溶解時間16時間で、抗酸化体として2g/L溶液の量のブチルヒドロキシトルエンを用いて、種々の濃度から0濃度で測定される粘度を外挿することによって決定される。IV及びMwの間には種々の経験的な関係があり、そのような関係はモル質量分布のような因子に典型的に依存する。方程式Mw=5.37*10[IV]1.37に基づき、8dL/gのIVは約930kDaのMwに相当する。欧州特許出願公開第0504954A1号明細書を参照のこと。実施形態において、ポリオレフィンフィルム中のUHMWPEのIVは、高い機械特性とプロセシングの容易さとの間のバランスに到達するために、少なくとも5、6、7又は8dL/gであり、及びIVは最大で30、25、20、18、16又はさらには最大で14dL/gである。一般に、繊維又は布中のUHMWPEポリマー上で測定されるIVは、繊維の製造時に使用されるポリマーのIVよりいくらか低くなる可能性がある。さらに記載されるゲル押出成形法のような繊維製造プロセスの間、ポリオレフィンは熱、機械及び/又は化学分解を受け得、それによって連鎖切断、モル質量低下及び/又は異なるモル質量分布がもたらされ得る。
【0044】
本発明のさらなる実施形態において、繊維中のUHMWPEは、線形又はわずかに分枝したポリマーであり得、線形ポリエチレンが好ましい。線形ポリエチレンは、本明細書中、側鎖又は分枝鎖が少なくとも10個の炭素原子を含有する場合、100個の炭素原子あたり1個未満の側鎖、好ましくは300個の炭素原子あたり1個未満の側鎖を有するポリエチレンを意味するものとして理解されている。線形ポリエチレンは、エチレン、例えばプロペン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチルペンテン、1-ヘキセンや1-オクテンなどのC3~C12アルケンと共重合性である、最高5モル%までの1つ又は複数の他のアルケンをさらに含み得る。UHMWPE中の側鎖及びコモノマーは、例えば、厚さ2mmの圧縮成形フィルム上で、NMR測定に基づく校正曲線を使用して、1375cmで吸収を定量化することによって(例えば欧州特許第0269151号明細書)FTIRによって適切に測定され得る。
【0045】
繊維中のUHMWPEは、単一ポリマーグレードであり得るが、例えばモル質量(分布)並びに/或いは側鎖又はコモノマーの種類及び量において異なるポリエチレングレードの混合物であってもよい。繊維中のUHMWPEは、最高25質量%までの上記の別のポリオレフィンとのブレンドであってもよい。一般に、UHMWPE繊維は、医療用途のために適切であり、慣習的且つ生体適合性の添加剤及び残留紡糸溶媒の低量のみを含有する。実施形態において、繊維は最大で5、4、3 2又は1質量%の添加剤を含有する。さらなる実施形態において、繊維は最大で1000ppm、好ましくは最大で500、300、200、100又は60ppmの紡糸溶媒を含む。
【0046】
実施形態において、テキスタイルのストランドに含まれるUHMWPE繊維は、少なくとも15、20、25、28、30cN/dtex、及び典型的に最大で約40cN/dtex又は最大で37若しくは35cN/dtexの引張強さ又は粘着性、並びに好ましくは少なくとも300及び最高1500cN/dtexまでの引張弾性率を有する。UHMWPE繊維の引張強さ(又は強度若しくは粘着性)及び引張弾性率(又は弾性率)は、例えば、ASTM D885Mにおいて明記されるように、マルチフィラメントヤーンにおいて、500mmの繊維の公称ゲージ長さ、50%/分のクロスヘッド速度、及び「Fibre Grip D5618C」型のInstron 2714クランプを使用して、室温、すなわち、約20℃において定義及び決定される。測定された応力-歪み曲線に基づいて、弾性率は0.3及び1%の歪みの間の勾配として決定される。弾性率及び強度の計算に関して、測定された張力を、10メートルのヤーンの重量を測定することによって決された力価によって割った。cN/dtexの値は、0.97g/cmの密度を仮定して算出される。
【0047】
実施形態において、テキスタイルのストランドは、少なくとも80又は90質量%の、少なくとも15cN/dtexの粘着性を有するUHMWPE繊維又はフィラメントを含む。他の実施形態において、テキスタイルのストランド、例えば、織物構造の縦糸及び/又は横糸は、UHMWPE繊維又はマルチフィラメントヤーンから実質的になるか、又はそれからなる。別の実施形態において、縦糸ストランドは(実質的に)UHMWPEからなり、及び横糸ストランドは(実質的に)PETなどのポリエステルのような別の合成ポリマーからなるか、或いは横糸ストランドはUHMWPEからなり、縦糸ストランドはPETのような別のポリマーのストランドからなる。そのような布は、縦糸対横糸方向での異なる強度及び/又は伸びのような異方性特性を典型的に示す。
【0048】
実施形態において、テキスタイル中に含まれる高モル質量ポリオレフィン繊維は、いわゆるゲル紡糸プロセスによって製造され得る。典型的なゲル紡糸プロセスにおいて、任意選択的に溶解された及び/又は分散されたさらなる成分を含有する適切な紡糸溶媒中のポリマーの溶液は、ゲル繊維へと紡糸及び冷却され、これはその後、紡糸溶媒を部分的に又は実質的に除去する前、間及び/又は後に引き抜かれる。UHMWPEの溶液のゲル紡糸は当業者に周知であり、欧州特許出願公開第0205960A号明細書、欧州特許出願公開第0213208A1号明細書、米国特許第4413110号明細書、英国特許第2042414A号明細書、欧州特許第0200547B1号明細書、欧州特許第0472114B1号明細書、国際公開第2001/73173A1号パンフレット、国際公開第2015/066401A1号パンフレット、Advanced Fiber Spinning Technology, Ed.T.Nakajima,Woodhead Publ.Ltd(1994), ISBN 1-855-73182-7を含む多数の刊行物中、及びその中の引用文献中に記載される。適切なUHMWPEマルチフィラメントヤーンの例には、(例えば、DSM Biomedical BV,Sittard-Geleen NLからの)Dyneema Purity(登録商標)として入手可能なものが含まれる。
【0049】
本方法のステップb)は、意図された使用のためにサイズ設定するか、又は形成するための切断が行われるであろうテキスタイル上での1つ又は複数の位置を決定することに関するが、切断は、典型的に、織布などの未変性テキスタイルで行われる場合、安定していない端部を生じ、及び切断端部は、使用間に、例えば、縫合が端部の付近で布を通して配置され、次いで張力をかけられる場合、ほつれ又は解繊を示す可能性がある。当業者は、例えば、医療用デバイスのコンポーネント中で、又は医療用デバイスのコンポーネントとしてのその意図された使用のためのテキスタイルの発達プロセスの一部として、テキスタイル上でのそのような位置を識別し得るが、その位置は、コンポーネント及び/又はデバイス、例えば、メッシュ、カテーテルバルーン、脈管グラフト、ステント-グラフト、閉塞デバイス又は人工心臓弁スカート若しくはリーフレットの設計次第である。
【0050】
本開示の方法は、表面を活性化するために高エネルギー源によって、テキスタイルの少なくとも片側上で少なくとも決定された位置でテキスタイルを前処理する任意選択的なステップc)を含む。そのような処理は、特にポリウレタンコーティングへの繊維の結合を改善することが目的とするが、同時に表面をクリーニングもし得る。多くの合成ポリマー繊維、特にポリオレフィン繊維は、無極性及び非反応性の表面を有し、それに対してポリウレタンのようなより極性のポリマーはほとんど接着を示し得ない。例えばプラズマ又はコロナ処理による表面活性化は既知であり、官能基、例えば酸素含有基を導入し得る。例えば、プラズマ表面処理の適切な例には、例えば酸素の存在下、大気庄及び減圧下で、テキスタイルのポリマー繊維に悪影響を及ぼさない温度で実行可能であるコールドプラズマ処理が含まれる。一実施形態において、前処理ステップは、大気プラズマ活性化を含む。一実施形態において、前処理ステップは、任意選択的に、粘着性コーティングによってテキスタイルの内部構造を含浸して、完全テキスタイル表面を提供することを可能にするために、テキスタイルの全ての表面を活性化するために実行される。ポリマー繊維が使用されるポリウレタンと十分に強い相互作用をすでに示す場合、前処理ステップは必要とされなくてもよい。当業者は、おそらくいくつかの実験によってこれを評価することができる。本発明者は、例えば、ポリオレフィンのような無極性ポリマーから製造されるテキスタイルの場合、表面前処理と、コーティングとして疎水性セグメント又は末端基を有するポリウレタンを適用することとの組合せは、製造される複合バイオテキスタイルの好ましい性能に寄与することを発見した。
【0051】
本開示の方法は、生体適合性及び生体内安定性のポリウレタンエラストマーと、ポリウレタンのための溶媒と、任意選択的に補助化合物とを含むコーティング組成物によって、少なくとも決定され、且つ任意選択的に前処理された位置でテキスタイルを溶液コーティングするステップd)も含む。エラストマーは、例えば繊維が製造される他の合成ポリマーと比較して、伸び又は変形後に比較的低いヤング率及びより良好な弾性回復を示すポリマー材料である。熱可塑性エラストマーは加熱によって繰り返し溶解可能であり、且つ冷却によって再び固体化することが可能であり;及び熱硬化性エラストマーの場合のような化学的架橋の代わりに、可逆的な物理的架橋結合からその弾性を誘導する。複合バイオテキスタイルを製造するために使用されるポリウレタンエラストマー成分は、熱可塑性物質であり得るか、又はコーティングステップの間若しくは後に熱硬化性物質を形成し得るが、ポリウレタンは適切な溶媒に可溶性である。溶融コーティングに対するその利点は、コーティングのために比較的低粘度のポリウレタン溶液を使用することができることであり、本明細書中、これには、繊維のポリマーの緩和、軟化又は溶融温度未満の温度でテキスタイルを任意選択的に含浸することが含まれる。低温でのコーティングは、部分的な溶融による繊維及びテキスタイル特性の悪化が防がれ、このことを考慮すると、ポリオレフィンのようなポリマーの融点は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)の融点より低くあり得る。テキスタイルをコーティングするためのポリウレタンエラストマー又はTPUの溶液の使用は、条件及び溶液粘度を選択することによって、テキスタイルの表面上にコーティング層が支配的に形成され得るが、溶液をストランドと繊維の間に浸透させ、並びに部分的又は完全に繊維を被覆させ、並びに布を含浸させ得るという利点も有する。ストランド又は繊維がポリウレタンによって局所的に、又は実質的に完全に被覆されるか、又は包埋されるコーティングされたテキスタイルは、含浸された布と記載することもできる。そのようなコーティングされた(又は含浸された)テキスタイルは、減少した気体及び/又は液体透過性のような出発テキスタイルとは別個のいくつかの特性を有し得、表面特性はポリウレタンの表面特性と非常に類似であろう。テキスタイルの片側のみが繊維間での侵入がない状態、又は侵入が制限された状態でポリウレタンによってコーティングされる場合、テキスタイルの片側のみの表面特性が変化し、及び例えばテキスタイルの透過性を除いて、非コーティング側は実質的に不変のままであり得る。例えばそのような複合バイオテキスタイルの側面は、生体物質との種々の相互作用を示し得、例えば、グラフト材料として使用される場合、コーティングされた側面は凝固を引き起こすことなく良好な血液親和性を示し得るが、より多くの表面テクスチャー及び/又は多孔性を有する非コーティング側面では、組織の内部成長が起こり得る。ポリウレタンのコーティングはテキスタイルの全表面積上で適用され得るが、表面の選択された部分で局所的にのみ、及びテキスタイルの片側又は両側で適用され得る。
【0052】
ポリウレタンエラストマーは、典型的にブロックコポリマーである(セグメント化コポリマーとも呼ばれる)。ブロックコポリマーは、化学的に別個であり、且つ異なる熱特性及び機械特性並びに異なる溶解度を示すポリマー(オリゴマーを含む)のブロック(セグメントとも呼ばれる)を含むポリマーである。しばしば、2つ(又はそれ以上)の種類のブロックを含むブロックコポリマー中のブロックは、「ハード」及び「ソフト」ポリマブロックと記載され、そのような異なるブロックは、ハード及びソフトブロックのミクロ相分離をもたらす。ブロックコポリマー中のハードブロックは、例えば約35℃の使用温度より高い溶融温度(T)又はガラス転移温度(T)を有する剛体又は高弾性率ポリマーを典型的に含む。ブロックコポリマー中のソフトブロックは、25℃未満、好ましくは0℃未満のTを有する可撓性の低弾性率の非晶質ポリマーをしばしば含む。ほとんどの機械特性に関しては、T及びTのような熱パラメーターは、DSC又はDMAのような周知の技術を使用して、乾燥試料上で一般に決定される。そのような相分離ブロックコポリマーにおいて、ハードセグメントは、可撓性のソフトセグメントのための物理的架橋として機能し、及びハードブロックとソフトブロックとの比率次第で、非常に剛性であるものから可撓性で弾性のものまでの範囲の特性を有する材料が生じる。ハードブロックの種類及び量次第で、ポリウレタンは、化学的架橋を必要とすることなく、所望の温度範囲において良好な安定性及び弾性を示し得、並びに熱可塑性物質として一般に処理されることができる。熱可塑性ポリウレタンエラストマーという用語は、基本的に、ジイソシアネート、ジオール連鎖延長剤及びポリマージオール又はマクログリコールである少なくとも3つの主成分の反応生成物を含む、実質的に線形の主鎖を有するポリマーの系統群を意味する。任意選択的に、連鎖停止剤として機能し、且つ無極性又は疎水性末端基のような末端基を形成するさらなる成分として単官能基化合物が使用されてもよい。実施形態において、本発明で適用されるポリウレタンエラストマー又はTPUの主鎖は線形であり、且つ平均1つ又は2つの疎水性末端基を有する。
【0053】
実施形態において、ポリウレタンエラストマーは、繰り返し単位中に、連鎖延長剤としてのジオール及び任意選択的にジアミンとのジイソシアネートの反応から得られたウレタン基及び任意選択的に尿素基を含むハードブロックを含む。
【0054】
適切なジイソシアネートは、1分子あたり平均1.9~2.1個のイソシアネート基を有する芳香族、脂肪族及び脂環式化合物を含む。一実施形態において、ジイソシアネートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)、1,4-フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、テトラメチレン-1,4-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)又はその混合物を含む。一実施形態において、ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート又はその混合物を含む。一実施形態において、ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート又はその混合物からなる。一実施形態において、ジイソシアネートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート又は1,4-フェニレンジイソシアネートを含む。一実施形態において、ジイソシアネートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート又はその混合物からなる。一実施形態において、ジイソシアネートのモル質量は100~500g/molである。一実施形態において、ジイソシアネートのモル質量は150~260g/molである。
【0055】
連鎖延長剤は、典型的に、2個以上のヒドロキシル基又はアミン基を有する低モル質量脂肪族化合物である。二官能基連鎖延長剤は、線形、一般に熱可塑性ポリマーをもたらすが、多官能基イソシアネート及び/又は連鎖延長剤は分枝状又は架橋生成物を導く。一実施形態において、二官能基連鎖延長剤は、少なくとも60g/mol、少なくとも70g/mol、少なくとも80g/mol、少なくとも90g/mol又は少なくとも100g/molのモル質量を有する。一実施形態において、連鎖延長剤は、最大で500g/mol、最大で400g/molから、最大で300g/mol、最大で200g/mol又は最大で150g/molのモル質量を有する。一実施形態において、連鎖延長剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール又は1,8-オクタンジオール、及び/又はそのような相当するジアミンを含む。実施形態において、ポリウレタンエラストマーはジオール連鎖延長剤のみを含み、熱可塑性挙動を示す。すなわち、ポリウレタンエラストマーは、熱可塑性ポリウレタンエラストマー又はTPUである。
【0056】
他の実施形態において、ポリウレタンエラストマーは、ウレタン及び尿素結合を有するハードブロックを含む。その利点はハードブロック間の強化された相互作用であり、ソフトブロックの含有量が高いほど、強化された可撓性及び弾性、並びに優れた曲げ強さ又は疲労抵抗を示すブロックコポリマーが得られる。ジオール/ジアミンの比率次第で、ポリウレタンエラストマーは強い相互作用を示し得るため、溶融加工温度において熱分解があり得、最適性能のために溶液加工が好しい。ウレタン及び尿素結合を含むそのようなポリウレタンエラストマーの商業的に入手可能な例には、Biospan(登録商標)製品(例えば、DSM Biomedical BV,Sittard-Geleen NLから入手可能)が含まれる。
【0057】
さらなる実施形態において、ポリウレタンエラストマーは、ヒドロキシ(又はアミン)末端基を有する二官能性である、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリオレフィン及びポリシロキサン(シリコーンとも呼ばれる)からなる群から選択される、少なくとも1つの脂肪族ポリマージオール又はポリオールから誘導されるソフトブロックを含む。ソフトブロックのためのそのようなポリマージオールは、本明細書中、オリゴマー、ホモポリマー及びコポリマーを含むように理解され、並びにポリエステルはポリカーボネートを含むと考えられる。これらのコポリマーを調製するために一般に既知のポリウレタンブロックコポリマー及び方法は、とりわけ、米国特許第4739013号明細書、米国特許第4810749号明細書、米国特許第5133742号明細書及び米国特許第5229431号明細書に記載される。
【0058】
本開示の実施形態において、ポリウレタンエラストマーは、脂肪族ポリエステルジオール、脂肪族ポリエーテルジオール、ポリ(イソブチレン)ジオール及びポリシロキサンジオールから選択される少なくとも1つのポリマージオールをソフトブロックとして含む。連鎖延長剤に関しては、追加的な尿素結合がもたらされるアミン感応性ソフトブロックを使用することができる。ヒトの体でのそのようなポリウレタンブロックコポリマーの生体適合性及び生体内安定性は証明されている。
【0059】
ポリウレタンブロックコポリマーの機械特性及び他の特性は、ブロックの化学的組成及び/又はモル質量を変化させることによって調整することができる。本発明で用いられるポリウレタンエラストマーのハードブロックは、約160~10,000Da、より好ましくは約200~2,000Daのモル質量を有し得る。ソフトセグメントのモル質量は、典型的に、200~100,000Da、好ましくは少なくとも約400、600、800又は1000Da、最大で約10,000、7500、5000、4000、3000又は2500Daであり得る。本開示の内容の範囲内で議論されるポリマー及びオリゴマーのモル質量は、例えばGPC測定から誘導される数平均モル質量(M)を指す。ソフト対ハードブロックの比率は、ポリマーの特定の剛性又は硬度をもたらすように選択されることができる。典型的に、A又はDスケールを使用するショアデュロメーター硬度試験によって測定されるポリウレタンの硬度は、40ShAから、少なくとも50又60ShA及び最高80、75、70、65又は60ShDまで、又は最高100、90又は85ShAまでであり得、一般に約10~2000のMPaの曲げ弾性率範囲を表す。実施形態において、ポリウレタンエラストマーは、40ShAから60ShDまで、好ましくは40~100ShA又は40~90ShAの硬度を有する。
【0060】
本発明のさらなる実施形態において、ポリウレタンエラストマーは、ソフトブロックとして脂肪族ポリエーテル又は脂肪族ポリエステル、より特に脂肪族ポリカーボネートを含む。適切な脂肪族ポリエーテルには、ポリ(プロピレンオキシド)ジオール、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール及びそれらのコポリマーが含まれる。適切な脂肪族ポリエステルは、一般に少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸及び少なくとも1つの脂肪族ジオールから製造され、その成分は、好ましくは、10、0又は-10℃未満のTを有する本質的に非晶質のオリゴマー又はポリマーが形成されるように選択される。脂肪族ポリカーボネートジオールは、ポリエステルジオールに関して使用される場合と類似の脂肪族ジオールに基づき、当該技術分野で既知のものとは異なる方法によって合成することができる。適切な例には、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール及びポリ(ポリテトラヒドロフランカーボネート)ジオールが含まれる。一実施形態において、ソフトブロックは、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、ポリ(ポリテトラヒドロフランカーボネート)ジオール又はその混合物に基づく。
【0061】
さらなる実施形態において、ソフトブロックは、ポリ(ジメチルシロキサン)ジオール、ポリカーボネートジオール又はポリ(テトラメチレンオキシド)ジオールなどのポリシロキサンジオールを含む。一実施形態において、ソフトブロックは、ポリシロキサンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール又はその混合物に基づく。一実施形態において、ソフトブロックは、ポリシロキサンジオール、ポリカーボネートジオール又はポリ(テトラメチレンオキシド)ジオールの2種以上の混合物を含む。一実施形態において、ソフトブロックは、ポリシロキサンジオール、ポリカーボネートジオール又はポリ(テトラメチレンオキシド)ジオールの2種以上の混合物に基づく。一実施形態において、ソフトブロックは、ポリシロキサンジオール、並びにポリカーボネートジオール及びポリ(テトラメチレンオキシド)ジオールの1つ以上を含む。一実施形態において、ソフトブロックは、ポリシロキサンジオール、並びにポリカーボネートジオール及びポリ(テトラメチレンオキシド)ジオールの1つ以上に基づく。
【0062】
一実施形態において、ソフトブロックは、C~C16フルオロアルキルジオール又はC~C16フルオロアルキルエーテルジオールをさらに含み得る。一実施形態において、ポリウレタン主鎖中のソフトブロックは、1H,1H,4H,4H-ペルフルオロ-1,4-ブタンジオール、1H,1H,5H,5H-ペルフルオロ-1,5-ペンタンジオール、1H,1H,6H,6H-ペルフルオロ-1,6-ヘキサンジオール、1H,1H,8H,8H-ペルフルオロ-1,8-オクタンジオール、1H,1H,9H,9H-ペルフルオロ-1,9-ノナンジオール、1H,1H,10H,10H-ペルフルオロ-1,10-デカンジオール、1H,1H,12H,12H-ペルフルオロ-1,12-ドデカンジオール、1H,1H,8H,8H-ペルフルオロ-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジオール、1H,1H,11H,11H-ペルフルオロ-3,6,9-トリオキサウンデカン-1,11-ジオール、フッ素化トリエチレングリコール又はフッ素化テトラエチレングリコールの残基を含む。
【0063】
一実施形態において、C~C16フルオロアルキルジオール又はC~C16フルオロアルキルエーテルジオールは、少なくとも150g/mol、少なくとも250g/mol又は少なくとも500g/molのMを有する。一実施形態において、フルオロアルキルジオール又はフルオロアルキルエーテルジオールは、最大で1500g/mol、最大で1000g/mol又は最大で850g/molのモル質量を有する。一実施形態において、C~C16フルオロアルキルジオール又はC~C16フルオロアルキルエーテルジオールは、ポリウレタンの全質量に基づき、少なくとも1質量%、少なくとも2質量%又は少なくとも5質量%の量で存在する。一実施形態において、C~C16フルオロアルキルジオール又はC~C16フルオロアルキルエーテルジオールは、ポリウレタンの全質量に基づき、最大で15質量%、最大で10質量%又は最大で8質量%の量で存在する。
【0064】
実施形態において、ポリウレタンエラストマーは、1つ又は複数の疎水性末端基を含み得る。一般に、末端基は分子の末端に存在する非反応性の部分である。一実施形態において、ポリウレタンエラストマーは線形であり、且つ1つの末端又は終点において、好ましくは主鎖のそれぞれの終点において疎水性の末端基を含み、すなわち、それは平均約2つの末端基を有する。一実施形態において、疎水性末端基は線形化合物である。別の実施形態において、疎水性末端基は分岐する。末端基は、ポリマー主鎖の形成の間又は後に存在する末端イソシアネート基を、いわゆる、連鎖停止剤と呼ばれる単官能性化合物上の共反応性の基と反応させることによって形成され得る。例えば、ポリウレタンを形成するための配合物は、ジイソシアネート、ポリマー脂肪族ジオール、連鎖延長剤、及びCアルキル末端基を形成するための1-オクタノール又はオクチルアミンのような単官能性アルコール又はアミンを含み得る。
【0065】
一実施形態において、疎水性末端基は、C~C20アルキル、C~C16フルオロアルキル、C~C16フルオロアルキルエーテル、そのコポリマーを含めて疎水性ポリ(アルキレンオキシド)又はポリシロキサンを含む。一実施形態において、疎水性ポリ(アルキレンオキシド)は、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(テトラメチレンオキシド)又はそのコポリマーである。一実施形態において、疎水性末端基は、ポリ(ジメチルシロキサン)のようなポリシロキサンである。一実施形態において、末端基は、C~C20アルキル、C~C16フルオロアルキル、C~C16フルオロアルキルエーテル又は疎水性ポリ(アルキレンオキシド)を含む。そのような末端基は、カルビノールを含む上記の単官能性アルコール又はアミンによって形成され得る。疎水性末端基を有するそのようなポリウレタンエラストマーが、ポリウレタンの特性、並びにポリオレフィンなどの他のポリマーを含む他の材料並びに体組織及び血液のような体液とのその相互作用に肯定的に影響を及ぼすことが判明している。
【0066】
一実施形態において、疎水性末端基は、C~C16フルオロアルキル又はC~C16フルオロアルキルエーテルを含む。そのような末端基は、C~C16フルオロアルキル又はC~C16フルオロアルキルエーテルを含む単官能性アルコール又はアミンによって形成され得る。一実施形態において、末端基は、1H,1H-ペルフルオロ-3,6-ジオキサヘプタン-1-オール、1H,1H-ノナフルオロ-1-ペンタノール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ヘキシルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9-トリオキサデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ヘプチルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6-ジオキサデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-1-オクチルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ノニルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9-トリオキサトリデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-1-デシルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ウンデシルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ラウリルアルコール、1H,1H-ペルフルオロ-1-ミリスチルアルコール又は1H,1H-ペルフルオロ-1-パルミチルアルコールから形成される。
【0067】
一実施形態において、疎水性末端基はモノマー性であり、200g/mol以上、300g/mol以上又は500g/mol以上、及び1,000g/mol以下又は800g/mol以下のモル質量を有する。一実施形態において、末端基はポリマー性であり、10,000g/mol以下、8,000g/mol以下、6,000g/mol以下又は4,000g/mol以下のモル質量を有する。一実施形態において、末端基はポリマー性であり、500g/mol以上、1,000g/mol以上又は2,000g/mol以上のモル質量を有する。
【0068】
一実施形態において、疎水性末端基は、ポリウレタンの全質量に基づき、少なくとも0.1質量%、少なくとも0.2質量%、少なくとも0.3質量%又は少なくとも0.5質量%の量で存在する。一実施形態において、疎水性末端基は、ポリウレタンの全質量に基づき、最大で3質量%、最大で2質量%又は最大で1質量%の量で存在する。一実施形態において、疎水性末端基は、ポリウレタンの全質量に基づき、少なくとも0.1質量%、少なくとも0.2質量%、少なくとも0.3質量%又は少なくとも0.5質量%の量で、且つ最大で3質量%、最大で2質量%又は最大で1質量%の量で存在する。
【0069】
そのようなポリウレタン又はTPU中のハードブロックは、典型的に、トルエンジイソシアネート(TDI)又はメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)のような芳香族ジイソシアネート及び1,4-ブタンジオールのような低モル質量脂肪族ジオールに基づく。それらの可撓性、強度、生体内安定性、生体適合性及び耐摩耗性を考慮して、ポリエーテル及びポリカーボネートポリウレタンは生医学的用途に関して適切に使用され得る。例えばソフトブロック中にポリエーテル及びポリシロキサン又はポリカーボネート及びポリシロキサンの組合せを含有するTPUは、ユニークな特性の組合せを示し、且つコーティング組成物中でポリウレタンとして有利に使用され得る。そのようなポリマーの商業的に入手可能な例には、Carbosil(登録商標)TSPCU製品(SM Biomedical BV,Sittard-Geleen Nlから入手可能)が含まれる。
【0070】
さらなる実施形態において、ポリウレタン又はTPUは、2種以上のポリマーのブレンドであり得る。他の実施形態において、ポリウレタン又はTPUは、例えば触媒残渣に加えて、複合バイオテキスタイルの目標とされる使用に関して可能な1つ又は複数の慣習的な添加剤を含み得る。添加剤の例には、安定剤、抗酸化体、加工助剤、潤滑油、界面活性剤、帯電防止剤、着色剤及び充填剤が含まれる。添加剤は、ポリウレタンの量に基づき0.01~5質量%、好ましくは0.01~1質量%などの当該技術分野において既知の典型的に有効な量で存在し得る。別の実施形態において、ポリウレタン又はTPUは、実質的にポリマーからなり、且つ添加剤が実質的に存在しない。
【0071】
実施形態において、複合バイオテキスタイルは、ポリマー繊維を含むテキスタイルと、生体適合性であり且つ生体内安定のTPUを含むコーティングとを含み、TPUは、その融点より高い温度において、ポリマーのメルトフローより少なくとも10倍高いメルトフローを示し得る。TPUは、ポリマー、例えば130~190℃の範囲で溶融し得るポリオレフィンの融点より高い融点を有し得る(とりわけ、存在する配向した結晶の量次第であり、例えば、高強度UHMWPE繊維は130~155℃の範囲で複数の溶融を示す)。基本的に、このメルトフロー特徴は、ポリマー及びTPUの融点より高い特定の温度において、例えばレーザー切断の間に局所的に達し得る温度において、溶解ポリマーが実質的にメルトフローを示さないが、溶解TPUがテキスタイル中又はテキスタイルの繊維の周囲を流動し得るように、ポリマー、例えばポリオレフィンの溶融粘度がTPUの溶融粘度より有意に高いことを明示する。メルトフローは、典型的に、ASTM D1238規格に従ってメルトフローレート(MFR;いわゆる、メルトフローインデックス、MFI)として測定され、並びに規格中に種々のポリマーに関して明示されるように特定の重量下、及び特定の温度において特定の開口から一定期間の間に押出されたポリマーの量として(すなわちg/10分で)報告される。HMWPEのような高モル質量ポリオレフィンは、典型的に高い溶融粘度を有し、測定可能な結果(例えば190℃及び21.6kgにおいて0.2~1g/10分)を得るために試験において高い質量(ほとんどのポリマーに関して21.6kg対2.16kg)が使用される。UHMWPEグレードは、典型的に高い粘度を有し、そのような条件下で測定可能なメルトフローがない。実施形態において、TPUは、その融点より高い前記温度、例えば、210~240℃において、ポリマー、例えばUHMWPEのようなポリオレフィンの少なくとも10、20、40、60又は100倍のメルトフローレートを有する。250℃以上の温度まで溶融しないポリマーから製造された繊維の場合、TPUは、同様にレーザー切断の間に端部において繊維の周囲を流動し得る。レーザー切断そのものは、焦点を合わせたレーザーエネルギーによって材料が分解及び蒸発するような温度まで、テキスタイル繊維及びコーティングの非常に局所的な加熱から生じる。
【0072】
ポリウレタンは、典型的に数質量%までのような環境からの水分を吸収し得、及び好ましくは、例えば0.05質量%未満のレベルまで、任意選択的に高温で、不活性ガス流中又は減圧力下で、溶媒中に溶解する前に乾燥させる。そのような乾燥プロセスは、当業者に既知である。
【0073】
本方法において適用されるコーティング組成物は、ポリウレタンのための溶媒をさらに含む。ポリウレタンのための適切な溶媒は、ポリウレタンを実質的に、又は好ましくは均質に溶解することができるが、少なくとも本方法の実行条件下では繊維のポリマーは溶媒中に溶解されない。当業者は、任意選択的にいくつかの文献によって支持される当業者の一般的な知識に基づき、例えば、Brandrup及びImmergut編集による「Polymer Handbook」に記載されるような溶媒及びポリマーの溶解度パラメーターに基づいて、所与のポリウレタン及びポリマーの組合せのための適切な溶媒を選択することができる。当業者は、溶解度に及ぼすポリマーモル質量の影響についても知っている。TPUを含むポリウレタンのためのいわゆる良好な溶媒に関して、ポリマー鎖と溶媒分子との間の相互作用はエネルギー的に有利であり、並びにポリマー及び溶媒の溶解度パラメーターの間の差は小さい。ポリマーに対して非溶媒であるポリウレタンのための溶媒を見つける場合、当業者は、撹拌又は超音波処理を含み、且つ任意選択的にいくらかの加熱を適用することによる、いくつかの溶解実験を実行してもよい。
【0074】
本方法の実施形態において、溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、メチルテトラヒドロフラン(m-THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジクロロメタン、クロロホルム、ヘキサフルオロイソプロパノール、ジオキサン、ジオキソラン、その混合物、又は、そのような混合物がポリウレタンを溶解することができる場合に限るが、他のあまり良好ではない溶媒(若しくは共溶媒)とのその混合物であり得る。適用後にフィルムから溶媒を除去することを考えると、溶媒が蒸発によって、任意選択的にポリマー及びポリウレタンの融点より少なくとも10℃低い温度まで加熱することによって実質的に除去されることができるような揮発性を有する溶媒が好ましい。一実施形態において、THF又はm-THFが溶媒であり、好ましくはTHFが溶媒である。
【0075】
溶液コーティングステップにおいて適用される溶液中のポリウレタンの濃度は重要ではないが、一般に、0.1~20質量%の範囲の溶液中のポリウレタンであろう。しかしながら、実験中、テキスタイルのストランド又は繊維間の空隙又は細孔中の溶液の侵入、すなわち、テキスタイルの含浸が望ましい場合、比較的低粘度の溶液が好ましくは使用されることが観察された。他方、ポリウレタン濃度が高いほど、含浸を制限しながら効果的にコーティングするために、より少ない溶液が適用される必要がある。実施形態において、エラストマーの溶液は、約1~5000mPa.sのBrookfield粘度、又は少なくとも5、10、25又は50mPa.s及び最大で3000、2000、1000又は500mPa.sの粘度を有し得る。したがって、複合バイオテキスタイルの生物学的相互作用を最適化することは、テキスタイルを完全にコーティングして、任意選択的に含浸することに対して、様々なコーティング条件及び局所的又は部分的コーティングによって実行可能である。
【0076】
コーティング組成物は、抗生物質、グラフト(再)狭窄を抑制する薬剤(例えばパクリタキセル)、又は所望の生物学的応答を引き出す他の生物製剤及び小分子、或いは放射線遮断剤などの1つ又はそれ以上の補助化合物をさらに含有してもよい。そのような任意の補助化合物は、好ましくは、FDAのような調整体によって、目標とされる用途に関して承認され、及び典型的に複合バイオテキスタイル中のそれらの濃度が、複合バイオテキスタイルの他の性能特性を容認できないほど悪化させることなく、その目的のために、及び承認された範囲内で有効であるように、比較的少ない有効量で存在し得る。
【0077】
他の実施形態において、コーティング組成物は、X線又は他の放射線を使用する医療用画像化技術による複合テキスタイルの有効な視覚化のために、ポリウレタンに基づき15~80質量%のような典型的に比較的高い量で、添加剤として放射線遮断剤をさらに含む。一実施形態において、放射線遮断剤は、タンタル、金、白金、タングステン、イリジウム、白金タングステン、白金イリジウム、パラジウム、ロジウム、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、オキシ塩化ビスマス、三酸化ビスマス、イオン性又は非イオン性の造影剤、例えばジアトリゾアート、ヨージパミド(iodipamide)、ヨーヘキシル(iohexyl)、ヨーパミドール、ヨータラメート(iothalamate)、ヨーベルソル(ioversol)、ヨーキサグレート(ioxaglat)及びメトリザミド(metrizamide)、又はその組合せを含む。一実施形態において、放射線遮断剤は、タンタル、金、白金、タングステン又はその混合物若しくは合金を含む。一実施形態において、放射線遮断剤は、例えばポリウレタンの溶液中に粒子を分散させることによって製造される、コーティング組成物中に分散された粒子として存在する。一実施形態において、放射線遮断剤粒子は、少なくとも1nm、好ましくは少なくとも5、10、25、50、100又は200nmの平均粒子直径を有する。一実施形態において、放射線遮断剤粒子は、最大で3μm、好ましくは最大で2、1、0.5、又は0.2μmの平均粒子直径を有する。平均粒子直径は、ISO13321:1996に従って光子相関性分光学(PCS)を使用して測定される。一実施形態において、放射線遮断剤は、ポリウレタンへの接着を強化するために接着促進剤によって、例えばメタクリル酸グリシジル(GMA)変性ランダムエチレン/アクリレートコポリマー、又はGMA及び無水マレイン酸(MA)変性ランダムエチレン/アクリレートコポリマーによって表面処理される。一実施形態において、放射線遮断剤は、ポリウレタンに基づき、少なくとも20、30、40又は50質量%、及び最大で75、70、65、60又は55質量%の量でコーティング組成物中に存在する。
【0078】
そのような溶液コーティングは当業者に周知であり、ピペット又はシリンジの使用、ディップコーティング、スプレーコーティング、インクジェット適用のような種々の適用技術を使用して実行可能であり、それらの中から、当業者は、一般的な知識及びいくつかの通常試験に基づき、実際の状況に関して最も適切である方法を選択することができる。テキスタイルは、得られる複合バイオテキスタイル関して以下にさらに記載されているように、1つ若しくは複数のストライプ又は他の任意のパターンを形成するために部分的にコーティングされ得るか、或いは完全にコーティング及び含浸され得る。コーティング組成物は1ステップで適用され得るが、例えばより少ない量で、例えば溶液を少なくとも部分的に乾燥させるためにステップ間で特定の時間をあけて、複数ステップで適用されてもよい。
【0079】
本開示の方法は、コーティングされたテキスタイルから溶媒を除去するステップe)を含み、好ましくは溶媒は実質的に除去される。単純且つ好ましい様式は、溶媒(又は溶媒混合物)を蒸発させることである。これは周囲条件において実行され得るが、効率を強化するために減圧及び/又は高温を適用することによっても実行され得る。温度増加を使用する場合、例えばテキスタイル中のポリマー繊維の部分的な溶解及び/又は応力緩和によって引き起こされる複合バイオテキスタイルの特性の劣化を防止するように注意されなければならない。好ましくは、適用される温度は、ポリウレタン又はTPUの溶融温度、及びポリマーの溶融温度より例えば少なくとも10℃低い温度に十分に維持される。任意選択的に、或いは、実質的に溶媒を除去するために洗浄ステップが適用される。洗浄は、ポリウレタン及びポリマーの両方に対して非溶媒であるが、ポリウレタンのための溶媒と混和性である洗浄溶媒を含むか又はそれからなる液体によって実行可能である。そのような洗浄ステップは、周囲温度で実行可能であるが、上記で示されるものと類似の制限による高温でも実行可能である。溶媒除去は、典型的に、医療用インプラントにおける使用に関する仕様又は規定に従う複合バイオテキスタイルの残留溶媒レベルをもたらすように実行される。一実施形態において、複合バイオテキスタイルは50ppm未満の残留溶媒含有量を有し、例えば、24時間窒素下で乾燥させた後、1時間50℃において対流オーブン中で乾燥させる。
【0080】
本方法の実施形態において、テキスタイルのストランドに特に張力をかけることなく、テキスタイルをその形態、例えば均一且つ平らに保持するためのホルダー又はフレームにテキスタイルを取り付けられ、次いで、テキスタイルに前処理、溶液コーティング及び溶媒除去のステップの1つ又はそれ以上を受けさせてよい。この利点は、テキスタイルをより均一に前処理し、コーティングすること、並びに例えばコーティング及び溶媒除去ステップの間の縮み又はしわのような変形を防ぐことを含み得る。当業者は、所望の位置での例えば有効なコーティングを妨害することなく、テキスタイルが変形することを防ぐための適切なフレーム又は別の方法を選択することができる。
【0081】
本方法のこれらの上記ステップは、下記でさらに説明されるように、ポリウレタンが、複合バイオテキスタイルに基づき、2.5~90質量%の量で存在する複合バイオテキスタイルをもたらす。
【0082】
本開示の方法は、超短波パルスレーザーを使用して、1つ又はそれ以上のコーティングされた位置で、得られる複合テキスタイルを切断するステップf)をさらに含み、これによって、切断端部の過熱及び変形が防がれるが、ポリウレタンの融点より高い局所的温度が誘導され得、所望のサイズ及び/又は形状であり、且つポリウレタンコーティングが存在する場所での少なくとも1つのレーザー切断された端部を有する、すなわち、少なくとも1つの安定化された切断端部を有する、複合バイオテキスタイルの断片が形成される。当業者は、局所的過熱によって引き起こされる損傷又は他の不規則性を防ぎながら、テキスタイル中に良好に画定された明確な切断を製造するために、コーティングされたか、又は複合バイオテキスタイルの切断に関する適切なレーザー及び設定を選択することができる。超短波パルス(USP)レーザーは当該技術分野で既知であり、そしナノ-、ピコ-又はフェムト秒パルスレーザーが含まれる。実施形態において、切断は、約10~26W、好ましくは12~24、14~22又は16~20Wのエネルギー準位設定を適用するUSPレーザーによって実行される。実施形態において、切断は、1~12mm/秒、好ましくは2~10又は3~8mm/秒の切断速度を適用して実行される。とりわけ、その厚さに依存して、複合バイオテキスタイルを完全に切断するために、USPレーザーによる2回以上の走査が必要とされ得る。バイオテキスタイルへの損傷を防ぐために、より高いエネルギー設定を使用することよりも、複数ステップ切断が好ましい。
【0083】
本発明の他の態様は、上記の種々の特徴及び実施形態を含み、且つ当業者がそのような組合せが技術的に不可能であることを見出さない限り、いずれかの組合せで上記特徴が存在し得る、医療用インプラントコンポーネント中で、又は医療用インプラントコンポーネントとして使用するための複合バイオテキスタイル、及び上記の方法によって得られる複合バイオテキスタイルを含む医療用インプラントコンポーネントに関する。
【0084】
基本的に、本発明は、製造方法に関して上記された、ポリウレタンエラストマーによってコーティングされた(及び/又は含浸された)少なくとも1つの切断端部を有する、すなわち、(織物)織り端ではない安定な又は安定化された切断端部を有する複合バイオテキスタイルの断片を提供する。そのような切断端部は、典型的に、ポリウレタンコーティングが上記の通りに適用された位置において、パルスレーザーによってコーティングされたテキスタイルを切断した結果である。
【0085】
好ましい実施形態において、複合バイオテキスタイルは、2~250dtexの力価を有する少なくとも1つのストランドから製造され、且つUHMWPEから製造される繊維を含むテキスタイルと、生体適合性であり、且つ生体内安定性であるポリウレタンエラストマーを含むコーティングとを含み、ポリウレタンは、複合バイオテキスタイルに基づき2.5~90質量%の量で、少なくとも切断端部に存在し、複合バイオテキスタイルは、実験項に記載される方法で測定されるように、切断端部において少なくとも15Nの切断端部で縫合保持強度を有する。さらなる実施形態において、複合バイオテキスタイルは、少なくとも20、22又は24Nの縫合保持強度を示すが、そのような強度は、最大で約50、45又は40Nであり得る。
【0086】
複合バイオテキスタイルは、テキスタイルと、複合バイオテキスタイルに基づき2.5~90質量%の量の生体適合性であり且つ生体内安定性のポリウレタンエラストマーを含むコーティングとを含み、ポリウレタンコーティングは、バイオテキスタイルの少なくとも片側の表面の少なくとも一部分上に存在する。実施形態において、ポリウレタンコーティングは、テキスタイルの両側の実質的に全ての表面積上に存在する。そのような複合バイオテキスタイルは、例えばポリウレタンの溶液中に浸漬することによってテキスタイルをディップコーティングして、その後、溶媒を除去することによって製造可能である。コーティング層の厚さは、溶液中のポリウレタンの濃度を変えることによって、又は溶液からテキスタイルを除去する収集速度を変えることによって調整可能である。前記条件次第で、並びにテキスタイルのストランドの厚さ及び充填密度次第で、すなわち、例えばテキスタイル中のストランドと個々の繊維との間の細孔のように、どの程度の空間が利用可能ということ次第で、ポリウレタンは単に表面コーティングとしてのみ複合バイオテキスタイル中に存在することが可能であるが、ポリウレタンは、テキスタイル中でストランド及び繊維を含浸又は包埋もし得る。そのような後者の場合、複合バイオテキスタイルは、テキスタイル強化又は繊維強化ポリウレタンとして記載されることも可能である。とにかく、そのような完全にコーティングされた複合バイオテキスタイルは、ポリウレタンコーティングの種類及び量次第で、未コーティングのテキスタイルと比較して、いくつかの異なる特性を示す。そのような複合バイオテキスタイルの利点は、未コーティングのテキスタイルに対して、改善されたほつれ抵抗及び縫合保持強度対を示す、所望の形状の、安定化された切断端部を有するテキスタイルの断片を製造するために、複合バイオテキスタイル上のいずれの位置においてもレーザーを使用して切断可能であるということである。そのような目的のために適切なレーザーは、複合テキスタイルを通して切断する位置で十分なエネルギーが提供され、それによって、任意選択的に、作成された切断に隣接する局所的温度がポリウレタン、特にTPUの融点より高い温度まで達し得、TPUが局所的に溶融物を形成し、それは流動して切断繊維末端を互いに及び/又はテキスタイル中の他の繊維と連結し得るような設定で選択及び適用される。他方、レーザーの設定は、そのような場合に不規則で変形したか又は分裂した切断端部がテキスタイル中に生じ得るため、過度の加熱が起こらないように選択される。そのような過熱端部は、端部ゾーンにおいて望ましくない剛性化も示し得、及びテキスタイル柔軟性を悪化させ得る。当業者は、CO、Nd又はNd-YAGレーザーのような前記目的のために適切なレーザーを選択すること、並びに例えばパルス周波数及び切断速度によってビームのエネルギーを制御することを含む、適当な設定を選択することができるであろう。一般に、COレーザーは、複合バイオテキスタイルを切断するために適切に使用されることができる。しかしながら、連続モード(又はウェーブ)レーザーを使用する場合、複合バイオテキスタイルへの過度の熱移動が起こり得、それによって切断端部が歪められるか、又は例えば繊維中の配向した結晶の熱緩和効果のために、ポリマー(UHMWPEのような)テキスタイルの部分的な溶融又は縮みを引き起こすことが判明した。したがって、パルスレーザー、すなわち、連続モードではなく、光パルスの形態で光を放射するレーザーが適用される。より詳しくは、ポリウレタンが切断端部を確保するようになお溶融し得る間、それらは切断に隣接して形態的な歪みを引き起こすように複合バイオテキスタイルを過度に加熱しないため、ナノ-、ピコ-又はフェムト秒パルスレーザーのような短波パルス又は超短波パルスレーザーが本方法において適用される。
【0087】
他の実施形態において、ポリウレタンエラストマーコーティングは、テキスタイルの両側の表面領域の一部分上に存在する。ポリウレタンは、例えば、1つ又は複数のストライプとして、すなわち、最大で10mmの幅を有するテキスタイルの細長いコーティングされた、且つ/又は含浸された領域若しくは区域として存在し得る。そのようなストライプは、例えば、(ミクロ-)ピペット、スプレーコーティング又はインクジェット印刷装置を使用することなどにより、多数の隣接した又は部分的に重なり合った適用されたポリウレタン溶液液滴から形成され得る。ポリウレタンを含むコーティング組成物は、基本的にテキスタイルを表面コーティングするために、又は適用された溶液がその厚さを横切ってテキスタイル中に侵入する場合、部分的にテキスタイルを含浸するために、対立して相当する場所でテキスタイルの両側に、又は片側面のみで適用され得る。ストライプは、特に単にテキスタイルの端部ゾーンのコーティングのみが所望である場合、テキスタイルが1つ又はそれ以上のその端部においてポリウレタン溶液中に部分的にのみ浸漬されるディップコーティングプロセスからも得ることができる。実施形態において、ポリウレタンコーティングのストライプは、最大で8、6、5又は4mmの幅を有する。ストライプの最小幅は、有効に縫合保持及び/又はほつれ抵抗を増加させるために、1mm程度の小ささ、又は少なくとも2若しくは3mmであり得る。ストライプは、テキスタイルのそれらの場所又は領域に少なくとも配置され、そこでテキスタイルの意図された使用のために、さらにテキスタイルのサイズ及び形状を決定するため、レーザー切断が実行される。ポリウレタンコーティングは、テキスタイルの他の特性を変化させるために、テキスタイルの他の位置で適用されてもよい。当業者は、例えば、文献を調査することによって、コンピュータ補助設計及びモデル化によって、又は既存のデバイス上及び/若しくはプロトタイプ上での破損分析を含む試験を実行することによって、テキスタイルの意図された使用の性能必要条件を調査しながら、そのような位置を識別することができる。
【0088】
さらなる実施形態において、ポリウレタンコーティングは、テキスタイルの片側の表面の一部分上に存在する。上記と同様に、スプレーコーティング又はインクジェットコーティングを使用することによって、ポリウレタンのストライプを適用することができる。他の実施形態において、ポリウレタンコーティングは、テキスタイルの片側の実質的に全ての表面領域上に存在する。片側ポリウレタンコーティングの複合バイオテキスタイル、例えばキャスティング、スプレー又はインクジェットコーティングを使用することによってコーティングされた織布のような比較的高密度のテキスタイルは、テキスタイルの比較的平滑なコーティングされた表面が血液と接触し、及び未コーティングのテキスタイル表面が組織と接触する生医学的用途において、例えば、グラフト材料が内側での良好な血液適合性と外側での組織内部成長とを組み合わせ、ステントフレームに対する付着に関して適切な縫合保持強度を示すステント-グラフトにおいて、有利に使用され得る。
【0089】
なおさらなる実施形態において、ポリウレタンコーティングは、テキスタイルの片側の表面領域の一部分において、及び反対側の実質的に全ての表面領域において存在する。
【0090】
複合バイオテキスタイルは、テキスタイルと、生体適合性であり且つ生体内安定性のポリウレタンエラストマーを含むコーティングとを含み、ポリウレタンは複合バイオテキスタイルの2.5~90質量%の量で存在する。そのような量は、とりわけコーティングされた(及び任意選択的に含浸された)テキスタイル相対的な表面積、及びテキスタイルの多孔性次第であろう。実施形態において、ポリウレタンは、少なくとも5、10、15、20又は25質量%、及び最大で80、70、60、50、40又は30質量%の量で存在する。低量のポリウレタンコーティングは、典型的に片側上で部分的にコーティングされた複合バイオテキスタイルに関するものであるが、より高い範囲は、テキスタイル強化ポリウレタンとしても記載され得る、実質的に完全に、及び2つの側面でコーティングされた複合バイオテキスタイルに関し得る。
【0091】
他の実施形態において、複合テキスタイル中のポリウレタンの量は、上記された要因次第で、複合テキスタイルに基づき0.2~10mg/cmの量、又は少なくとも0.5、1.0、1.5、2.0若しくは2.5mg/cm及び最大で9、8、7、6若しくは5mg/cmなどの表面積あたりの量、又は面密度で表され得る。
【0092】
一実施形態において、複合バイオテキスタイルは約15~350μmの厚さを有する。複合バイオテキスタイルの厚さは、ストランドの種類、テキスタイルを製造する際に使用される形成技術の種類及びテキスタイルの密度に関連し、且つテキスタイルの表面上及び/又はテキスタイル中のストランド間にあるポリウレタンの量に関連する。実施形態において、複合バイオテキスタイルは、可撓性及び柔軟性の改善のために最大で325、300、275、250、225、200、175、150、125、100、90又は80μmの厚さを有し、且つ特定の強度及び耐久性特性のために少なくとも20、25、30、35、40 45又は50μmの厚さを有する。
【0093】
なおさらなる態様において、本発明は、医療用インプラントコンポーネントにおける、又は医療用インプラントコンポーネントとして、特に、メッシュ、脈管グラフト、閉塞デバイス、ステントカバー又は心臓弁のスカート若しくはリーフレットのような人工弁の部分のような整形外科又は心臓血管用途などのテキスタイルが体組織又は体液と接触する用途のための、安定化されたレーザー-切断端部を有する前記複合バイオテキスタイルの使用に関する。
【0094】
本発明は、テキスタイルが、ポリウレタンエラストマーでコーティングされた(及び/又は含浸された)切断端部を有し、すなわち、テキスタイルが、(織物)織り端ではない安定な又は安定化された切断端部を有する、上記の複合バイオテキスタイルの断片を含む医療用インプラントコンポーネントにも関する。
【0095】
他の態様は、本明細書中に記載される前記医療用インプラントコンポーネント又は前記複合テキスタイルを含む、医療用インプラント又は医療用デバイス、例えば前記整形外科又は心臓血管デバイスを含む。
【0096】
本発明の記載に関連する(特に以下の例示的実施形態及び請求の範囲に関連する)「a」及び「an」及び「the」及び類似の対象の使用は、本明細書中に他に示されない限り、又は明らかに文脈上相反しない限り、単数及び複数の両方を含むものとして解釈される。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」という用語は、特に明記されない限り、無制限の用語として解釈される(すなわち、「含むが、これに限定されるものではない」ことを意味する)。本明細書中の値の範囲の詳述は、単に、範囲内に含まれるそれぞれの別個の値を個々に参照する簡単な方法として役立つように意図され、及びそれぞれの別個の値は、それが本明細書中に個々に記載されるように、明細書中に組み込まれる。他に請求されない限り、本明細書に提供される任意の、及び全ての実施例、又は例示的な言語(例えば、「など」又は「のような」))の使用は、単に本発明をより良好に説明するためにのみ意図されて、本発明の範囲に対する制限を課すものではない。明細書中の言語は、本発明を実行するために本質的な任意の請求されない要素を示すものとして解釈されてはならない。
【0097】
本発明を実行するための本発明者に既知の最良のモードを含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書中に記載される。それらの好ましい実施形態の変形は、上記の記載を読めば、当業者にとって明らかになり得る。本発明者は、当業者がそのような変形を適切に利用することを期待し、及び本発明者は、本発明が特に本明細書中に記載される様式以外でも実行されることを意図する。したがって、本発明は、適用法によって容認される本明細書に添付された請求の範囲に記載される対象の全ての修正及び同等物を含む。特定の任意の特徴が本発明の実施形態として記載されるが、この記載は、特に別途示されるか、又は物理的に不可能でない限り、これらの実施形態の全ての組合せを含み、特に開示するように意味される。
【0098】
上記の本発明の態様を実行する種々の態様及び様式を、ここで一連の例示的な実施形態によって、さらにまとめる。
【0099】
1)医療用インプラントコンポーネント中で、又は医療用インプラントコンポーネントとしての使用のために適切な複合バイオテキスタイルの製造方法であって、
・2~250dtexの力価を有し、及び生体適合性及び生体内安定性の合成ポリマーから製造される繊維を含む少なくとも1つのストランドを含むテキスタイルを提供するステップと;
・テキスタイルの意図された使用のために切断が可能であるテキスタイル上の位置を決定するステップと;
・任意選択的に、表面を活性化するために高エネルギー源によってテキスタイルの少なくとも片側上で少なくとも決定された位置でテキスタイルを前処理するステップと;
・生体適合性及び生体内安定性のポリウレタンエラストマーとポリウレタンのための溶媒とを含むコーティング組成物によってテキスタイルの少なくとも片側上で少なくとも決定され、及び任意選択的に前処理された位置でテキスタイルを溶液コーティングするステップと;
・コーティングされたテキスタイルから溶媒を除去するステップと;
・超短波パルスレーザーを使用して、少なくともコーティングされた位置で、得られるコーティングされたテキスタイルをレーザー切断するステップと
を含み、ポリウレタンが複合バイオテキスタイルに基づき2.5~90質量%の量で存在し、及びポリウレタンが少なくともレーザー切断端部に存在する複合バイオテキスタイルを得るための、複合バイオテキスタイルの製造方法。
【0100】
2)テキスタイルが不織構造物又は布であり、布が編み、織り、又はブレイディング技術によって製造された、実施形態1に記載の方法。
【0101】
3)テキスタイルが、織布又は編布、好ましくは平織、綾織、斜子織又は紗織パターンを有する織布のような織布である、実施形態1又は2に記載の方法。
【0102】
4)テキスタイルが、異なる縦糸及び横糸ストランドを含有する織布であり、異方性特性を有する、実施形態1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0103】
5)ストランドが、最大で225、200、180、160、140、120、100、80、60又は50dtexの、及び少なくとも4、5、6、8、10、15又は20dtexの力価、例えば4~140、6~100又は8~60dtexの力価を有する、実施形態1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0104】
6)テキスタイルが、同一又は異なる線形密度を有する2種以上のストランドを含む、実施形態1~5のいずれか一項に記載の方法。
【0105】
7)テキスタイルが、少なくとも50質量%の前記少なくとも1つのストランドを含有し、且つ異なる特性を有する他のストランドをさらに含有し、好ましくはテキスタイルが、少なくとも60、70、80、90又は95質量%の前記少なくとも1つのストランドを含有するか、或いはそのような少なくとも1つのストランドから製造される、実施形態1~6のいずれか一項に記載の方法。
【0106】
8)テキスタイルが、最大で275、250、225、200、175、150、125、100、90又は80μmの厚さ、及び少なくとも20、25、30、35、40 45又は50μmの厚さを有する、実施形態1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0107】
9)少なくとも1つのストランドが、好ましくは少なくとも2及び最大で50、45、40、35又は30dtexの力価を有する少なくとも1つのモノフィラメントを含む、実施形態1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0108】
10)少なくとも1つのストランドが、少なくとも4、5、6、8、10、15又は20dtex及び最大で250、225、200、180、160、140、120、100、80、60又は50dtexの力価、例えば4~120、5~80又は6~60dtexの力価を有する1つ又は複数のマルチフィラメントヤーンからなり、且つヤーンのフィラメントが、フィラメントあたり少なくとも0.2、0.3又は0.4dtex及び最大で5、4、3又は2dtexの力価を有する、実施形態1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0109】
11)テキスタイルが、繊維及びフィラメントが好ましくは平行に配向するUD構造物などの不撚マルチフィラメントヤーンを含むストランドから製造される、実施形態1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0110】
12)繊維が、そのコポリマー、コンパウンド及びブレンドを含む、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、ビニルポリマー、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリアクリル、ポリアセタール、ポリイミド、ポリカーボネート又はポリウレタンから製造される、実施形態1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0111】
13)繊維が、好ましくは超高モル質量ポリエチレン(UHMWPE)のような高モル質量のポリエチレン及びポリプロピレンのようなポリオレフィンから;ポリケトンから;ポリアミド6、ポリアミド66及びそれらのコポリマー並びにポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)のような脂肪族、半芳香族及び芳香族ポリアミドのようなポリアミドから;又はポリ(l-乳酸)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンフラノエート(PEF)及び液晶質芳香族コポリエステルのような脂肪族、半芳香族及び芳香族ポリエステルのようなポリエステルから製造される、実施形態1~12のいずれか一項に記載の方法。
【0112】
14)少なくとも1つのストランドが、少なくとも8cN/dtexの引張強さを有し、及びポリマー繊維が、好ましくは少なくとも8、9又は10cN/dtexの引張強さを有する、実施形態1~13のいずれか一項に記載の方法。
【0113】
15)繊維が、エチレン及びプロピレンなどの1つ又は複数のオレフィンを含有し、且つ少なくとも350kDaのモル質量Mwを有するホモポリマー及びコポリマーから選択される1つ又は複数のポリオレフィンから製造される、実施形態1~14のいずれか一項に記載の方法。
【0114】
16)繊維が、高分子量ポリエチレン(HMWPE)又は超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)などの線形ポリエチレンから製造される、実施形態1~15のいずれか一項に記載の方法。
【0115】
17)繊維が、4~40dL/gの固有粘度(IV)を有するUHMWPEから製造され、好ましくはIVが少なくとも5、6、7又は8dL/g及び最大で30、25、20、18、16又は14dL/gである、実施形態1~16のいずれか一項に記載の方法。
【0116】
18)UHMWPEが、線形又はわずかに分枝したポリマー、好ましくは100個の炭素原子あたり1個未満の側鎖を有する線形ポリエチレンであり、側鎖又は分枝鎖が少なくとも10個の炭素原子を含有する、実施形態16又は17に記載の方法。
【0117】
19)UHMWPEが、単一ポリマーグレード、或いは例えばモル質量(分布)及び/又は側鎖若しくはコモノマーの種類及び量が異なるポリエチレングレードの混合物である、実施形態16~18のいずれか一項に記載の方法。
【0118】
20)UHMWPEが、最高25質量%までの別のポリオレフィンとのブレンドである、実施形態16~19のいずれか一項に記載の方法。
【0119】
21)UHMWPE繊維が、少なくとも15、20、25、28、30cN/dtex、及び典型的に最大で約40、37又は35cN/dtexの引張強さ;並びに300~1500cN/dtexの引張弾性率を有する、実施形態16~20のいずれか一項に記載の方法。
【0120】
22)少なくとも1つのストランドが、少なくとも15cN/dtexの粘着性を有する、少なくとも80又は90質量%のUHMWPE繊維を含み、好ましくはストランドがUHMWPE繊維から実質的になるか又はUHMWPE繊維からなる、実施形態1~21のいずれか一項に記載の方法。
【0121】
23)UHMWPE繊維のような高モル質量ポリオレフィン繊維が、いわゆるゲル紡糸プロセスによって製造される、実施形態15~22のいずれか一項に記載の方法。
【0122】
24)繊維が、最大で5、4、3、2又は1質量%の添加剤を含む、実施形態1~23のいずれか一項に記載の方法。
【0123】
25)繊維が、最大で1000ppm、好ましくは最大で500、300、200、100又は60ppmの紡糸溶媒を含む、実施形態1~24のいずれか一項に記載の方法。
【0124】
26)テキスタイルが、UHMWPEから(実質的に)なる縦糸ストランド、及びPETなどのポリエステルのような別の合成ポリマーから(実質的に)なる横糸ストランドを有する織布であるか;或いは横糸ストランドがUHMWPEからなり、縦糸ストランドがPETのような別の合成ポリマーからなる、実施形態1~25のいずれか一項に記載の方法。
【0125】
27)少なくとも決定された位置でテキスタイルを前処理する任意選択的なステップが、プラズマ又はコロナ処理、例えば、大気庄及び減圧下で、ポリマー繊維構造物に悪影響を及ぼさない温度で実行されるコールドプラズマ処理を含む、実施形態1~26のいずれか一項に記載の方法。
【0126】
28)テキスタイルが2つの対立表面を有し、且つ前処理が、テキスタイルの少なくとも1つの側面上の少なくとも決定された位置において、好ましくはテキスタイルの両側面上で対立し且つ相当する位置において実行される、実施形態27に記載の方法。
【0127】
29)前処理が、実質的に繊維構造物の全表面を活性化するために実行される、実施形態27又は28に記載の方法。
【0128】
30)コーティング組成物が、ポリウレタンエラストマー、ポリウレタンのための溶媒及び任意選択的に補助化合物を含み;ポリウレタンエラストマーが熱可塑性又は熱硬化性ポリウレタンであり、且つ適切な溶媒中で可溶性であり;好ましくはポリウレタンエラストマーは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)である、実施形態1~29のいずれか一項に記載の方法。
【0129】
31)ポリウレタンエラストマーが、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリオレフィン及びポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも1つの脂肪族ポリマージオールから誘導されるソフトブロックを含む、実施形態1~30のいずれか一項に記載の方法。
【0130】
32)ポリウレタンエラストマーが、ポリシロキサンジオール、例えばポリ(ジメチルシロキサン)ジオール、脂肪族ポリエーテル、例えばポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール、脂肪族ポリエステル、例えば脂肪族ポリカーボネート、例えばポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール若しくはポリ(ポリテトラヒドロフランカーボネート)ジオール又はその組合せから誘導されるソフトブロックを含む、実施形態1~31のいずれか一項に記載の方法。
【0131】
33)ポリウレタンエラストマーが、ポリシロキサンジオール、並びにポリカーボネートジオール及びポリ(テトラメチレンオキシド)ジオールの1つ又は複数から誘導されるソフトブロックを含む、実施形態1~32のいずれか一項に記載の方法。
【0132】
34)ポリウレタンエラストマーが、200~100000Da、好ましくは少なくとも400、600、800又は1000Da及び最大で10000、7500、5000、4000、3000又は2500Daのモル質量(Mn)を有するソフトブロックを含む、実施形態1~33のいずれか一項に記載の方法。
【0133】
35)ポリウレタンエラストマーが、少なくとも40、50又は60ShA及び最大で80、70又は60ShD、或いは最大で100、90又は85ShAのショア硬度を有する、実施形態1~34のいずれか一項に記載の方法。
【0134】
36)ポリウレタンエラストマーが線形であり、且つ1つの鎖末端において疎水性末端基を含み、好ましくは平均2つの疎水性末端基を有する、実施形態1~35のいずれか一項に記載の方法。
【0135】
37)ポリウレタンエラストマーが、C~C20アルキル、C~C16フルオロアルキル、C~C16フルオロアルキルエーテル、疎水性ポリ(アルキレンオキシド)又はポリシロキサン、例えばポリ(ジメチルシロキサン)を含む少なくとも1つの疎水性末端基を有し、好ましくは少なくとも1つの疎水性末端基が、ポリシロキサン、例えばポリ(ジメチルシロキサン)を含む、実施形態1~36のいずれか一項に記載の方法。
【0136】
38)疎水性末端基がモノマー性であり、少なくとも200、300又は500Da、及び最大で1,000又は800Daのモル質量を有する、実施形態1~37のいずれか一項に記載の方法。
【0137】
39)疎水性末端基はポリマー性であり、少なくとも500、1000又は2000Da、及び最大で10000、8000、6000又は4000Daのモル質量を有する、実施形態1~37のいずれか一項に記載の方法。
【0138】
40)疎水性末端基が、ポリウレタンの全質量に基づき、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4又は0.5質量%、及び最大で3、2、1質量%の量で存在する、実施形態1~39のいずれか一項に記載の方法。
【0139】
41)ポリウレタン又はTPUが、安定剤、抗酸化体、加工助剤、潤滑油、界面活性剤、帯電防止剤、着色剤及び充填剤から選択される1つ又は複数の慣習的な添加剤を含む、実施形態1~40のいずれか一項に記載の方法。
【0140】
42)添加剤の量が、ポリウレタンの量に基づき、0.01~5、又は好ましくは0.01~1質量%である、実施形態41に記載の方法。
【0141】
43)ポリウレタン又はTPUが添加剤を実質的に含まない、実施形態41に記載の方法。
【0142】
44)コーティング組成物が、溶媒中に溶解する前に、0.05質量%未満の水分レベルまで乾燥させたポリウレタンを含む、実施形態1~43のいずれか一項に記載の方法。
【0143】
45)コーティング組成物は、その融点より高い温度、例えば210~240℃において、前記温度における合成ポリマーのメルトフローの少なくとも10倍より高いメルトフローを示すTPUを含み、TPUが、ポリマーのメルトフローインデックスの少なくとも10、20、40、60又は100倍であるメルトフローインデックスを有する、実施形態30に記載の方法。
【0144】
46)コーティング組成物が、ポリウレタンを溶解することができるが、ポリオレフィンを溶解しない溶媒を含み、好ましくは、溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)、メチルテトラヒドロフラン(m-THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジクロロメタン、クロロホルム、ヘキサフルオロイソプロパノール、ジオキサン、ジオキソラン、その混合物、又は他のあまり良好ではない溶媒とのその混合物から選択される、実施形態1~45のいずれか一項に記載の方法。
【0145】
47)コーティング組成物が、抗生剤、薬剤、所望の生物学的応答を引き出す他の生物製剤及び小分子、又は放射線遮断剤のような1つ又は複数の補助化合物をさらに含有する、実施形態1~46のいずれか一項に記載の方法。
【0146】
48)コーティング組成物が、少なくとも1、5、10、25又は50mPa.s及び最大で5000、3000、2000、1000又は500mPa.s、約1~5000mPa.sのBrookfield粘度を有する、実施形態1~47のいずれか一項に記載の方法。
【0147】
49)溶液コーティングが、ピペット又はシリンジを使用することによって、ディップコーティングによって、スプレーコーティングによって、インクジェット適用によって、又はその組合せによって実行される、実施形態1~48のいずれか一項に記載の方法。
【0148】
50)溶液コーティングが、1ステップで、又は好ましくはステップの間に特定の乾燥時間がある複数のステップで実行される、実施形態1~49のいずれか一項に記載の方法。
【0149】
51)コーティング組成物が、局所的にテキスタイルの片側又は両側上の表面の選択された位置において、或いはテキスタイルの片側又は両側上の全ての表面領域において適用される、実施形態1~50のいずれか一項に記載の方法。
【0150】
52)コーティングが、テキスタイルの表面上で支配的に形成されるか、或いはストランドと繊維との間に侵入して、繊維を部分的に又は完全に被覆し、部分的に又は完全に含浸されたテキスタイルが得られるように、コーティング組成物のコーティング条件及び溶液粘度が選択される、実施形態1~51のいずれか一項に記載の方法。
【0151】
53)コーティング組成物が、テキスタイル上に、好ましくは少なくとも1、2又は3mm及び最大で10、8、6、5又は4mmの幅を有する1つ又は複数のコーティングストライプを形成するように適用される、実施形態1~52のいずれか一項に記載の方法。
【0152】
54)溶媒の除去が蒸発又は洗浄によってされ、好ましくは溶媒が、周囲条件において、又はポリウレタン及び合成ポリマーの溶融温度より少なくとも10℃低い温度において実質的に除去される、実施形態1~53のいずれか一項に記載の方法。
【0153】
55)溶媒の除去によって、50ppm未満の残留溶媒含有量を有するコーティングされたテキスタイル又は複合バイオテキスタイルが得られる、実施形態1~54のいずれか一項に記載の方法。
【0154】
56)少なくとも1つの良好に画定され、規則的、且つ安定な切断端部を有する複合バイオテキスタイルが得られるように、コーティングされたテキスタイルの過熱が起こらないようにレーザーの設定が選択される、実施形態1~55のいずれか一項に記載の方法。
【0155】
57)レーザー切断が、パルスレーザーによって、好ましくはナノ-、ピコ-又はフェムト秒パルスレーザーのような短波パルス又は超短波パルスレーザーによって実行される、実施形態1~56のいずれか一項に記載の方法。
【0156】
58)レーザー切断が、10~26W、好ましくは12~24、14~22又は16~20Wのエネルギーレベル設定及び1~12mm/秒、好ましくは2~10又は3~8mm/秒の切断速度を有するパルスレーザーによって実行される、実施形態1~57のいずれか一項に記載の方法。
【0157】
59)コーティングされた位置におけるレーザー切断が複数のステップで実行される、実施形態1~58のいずれか一項に記載の方法。
【0158】
60)ポリウレタンエラストマーが存在する少なくとも1つの切断端部を有する、実施形態1~59のいずれか一項に記載の方法によって得られる、医療用インプラントコンポーネント中で、又は医療用インプラントコンポーネントとして使用するための複合バイオテキスタイル。
【0159】
61)ポリウレタンは、少なくとも5、10、15、20又は25質量%、及び最大で80、70、60、50、40又は30質量%の量で存在する、実施形態60に記載の複合バイオテキスタイル。
【0160】
62)ポリウレタンが、複合テキスタイルに基づき、0.2~10mg/cmの量で、好ましくは少なくとも0.5、1.0、1.5、2.0又は2.5mg/cmの量、及び最大で9、8、7、6又は5mg/cmの量で存在する、実施形態60又は61に記載の複合バイオテキスタイル。
【0161】
63)15~350μmの厚さ、好ましくは少なくとも20、25、30、35、40 45又は50μmの厚さ、及び最大で325、300、275、250、225、200、175、150、125、100、90又は80μmの厚さを有する、実施形態60~62のいずれか一項に記載の複合バイオテキスタイル。
【0162】
64)少なくとも15N、好ましくは少なくとも20、22又は24N、及び最大で約50、45又は40Nの、少なくとも1つの切断端部における縫合保持強度を有する、実施形態60~63のいずれか一項に記載の複合バイオテキスタイル。
【0163】
65)実施形態60~64のいずれか一項に記載の複合バイオテキスタイルを含むか、又は実施形態1~59のいずれか一項に記載の方法によって得られる、医療用インプラントコンポーネント。
【0164】
66)組織強化処置のためのメッシュを含む整形外科用途、或いは脈管グラフト、ステントカバー、又は静脈弁若しくは心臓弁のような人工弁のような心臓血管デバイスなどにおける、好ましくはバイオテキスタイルが体組織又は体液と接触する用途のための医療用インプラントの製造における、実施形態60~64のいずれか一項に記載の複合バイオテキスタイル、又は実施形態65に記載の医療用インプラントコンポーネントの使用。
【0165】
67)実施形態60~64のいずれか一項に記載の複合バイオテキスタイル、又は実施形態65に記載の医療用インプラントコンポーネントを含む、例えば整形外科又は心臓血管用途で使用するための医療用インプラント又は医療用のデバイス。
【0166】
以下の実験及び試料は、本発明の実施形態をさらに説明するが、もちろん、いずれかの様式において請求の範囲を制限するように解釈されてはならない。
【0167】
[実施例及び比較実験]
[材料]
本実験中、出発材料として使用されるポリオレフィンテキスタイルは、縦糸及び横糸ストランドとして医療用グレードの低デニールUHMWPEマルチフィラメントヤーンから製造される、45mmのフラット幅及び約70μmの厚さの2×2綾織りパターンを有する織布であった(Dyneema Purity(登録商標)TG 10 dtex;DSM Biomedical BV,Sittard-Geleen NLから入手可能)。
【0168】
ポリウレタンエラストマーとして以下のグレードが使用された(DSM Biomedical BV,Sittard-Geleen NLから入手可能):
- CarboSil(登録商標)TSPCU 20-80A;シリコーン末端基、硬度80ShA及びMFR52g/10分(1.20kg/224℃)を有する、熱可塑性シリコーンポリカーボネートポリウレタン;
- Biospan(登録商標)S SPU、尿素基を含み、シリコーン末端基、74ShAの硬度を有するセグメント化ポリエーテルウレタン。
【0169】
15μmの厚さ及び83体積%の多孔性を有する、医療用グレードの微小孔性UHMWPEフィルム(Dyneema Purity(登録商標)膜、DSM Biomedical BV,Sittard-Geleen NLから入手可能)を使用して、織布とラミネートさせた。
【0170】
[方法]
[溶液粘度]
25℃における溶液粘度は、UL-アダプター及びULA-49EAYスピンドルを有するBrookfield DV-E粘度計で決定され、シリコーンベースの粘度標準(Benelux Scientific)を使用して較正される。
【0171】
[ディップコーティング]
長さ約10~20cmの布試料を(上記)幅約45mmの連続UHMWPE織布から切断し、1分間ヘプタンで洗浄し、40℃で乾燥させ、次いで、試料ホルダーとしてのフレーム中の短辺に長手方向で取り付ける。
【0172】
フレーム試料を、200mTorr及び450Wで15%酸素雰囲気中、60秒間、プラズマ活性化によって前処理する。
【0173】
ポリマー溶液中にフレーム試料を含浸させ、0.1m/秒の取り出し速度で試料を取り出すことによって、周囲条件下でディップコーティングを実行し、続いて、40℃で20分間乾燥させる。
【0174】
[布の厚さ]
布の厚さは、測定範囲0~25mm(±0.001mm)で、Helios Preisser Electronic Outside Micrometerを使用して測定される。
【0175】
[縫合保持強度]
縫合保持強度は、その中に、布の中央で、且つ短辺の端部から2mmにおいて、ロープロファイルのテーパードニードルによって高強度縫合(FiberWire(登録商標)4.0)を挿入した約30×10mmの布の断片上で測定される。その間に50mmのグリップ間距離及び0.05Nのプレロードでループ状縫合及び布の他端部が取り付けられた空気式Instron Grip(7バール)及びGrip G13Bを備えた、Zwick Universal試験機を使用する。次いで、試料が破損するまで、50mm/分の試験速度で縫合に張力をかける。縫合保持強度は、測定された引き抜き応力-歪み曲線の降伏点として報告される(平均+/-標準;3回の測定に関して)。これは、布の端部領域を通してループ状縫合を引き抜くために必要な力である。
【0176】
[摩耗抵抗]
試料の摩耗抵抗は、ガイダンスとしてISO 12947-2及びASTM D4966を適用して、Martindale 900シリーズ摩耗及びピリングテスター(James H Heal & Co.Ltd)を使用して試験する。試験装置の円形試料ホルダーのサイズに適合する半月型試料を、長端部を縦糸方向にして、布の断片からレーザー切断した。試料を試験片ホルダーに取り付け、及び9kPaの荷重重量下で研摩剤として標準布(研磨布SM25、直径140mmの円形パッチ)に対して(56サイクル/分で半月型試料の線形切断端部に沿って)前方及び後方への並進運動又はサイクルで摩擦する。500、1000、2000、3000、4000、8000、10000及び15000サイクル(前方及び後方)の後、試料(及び約100倍の倍率でTagarnoデジタル顕微鏡を用いて撮影されたその顕微鏡写真)を摩耗、ピリング、又は他の損傷に関して視覚的に調査する。
【0177】
[血液適合性]
Chandler Blood Loop生体外モデルを用いて、試料の血液接触特性を評価する。この閉鎖システムモデルは文献(DOI:doi:10.1007/s10856-011-4335-2.)に報告されており、及びヒト血液器官に固有の反応の、異なり、且つ複雑なカスケード(例えば、凝固、細胞変化、補体及び炎症)を開始するための人工表面の効果を調査するように設計される。モデルは、ISO 10993-4:2002と同調する。Chandler Loopモデルは、血栓形成、凝固、血小板数及び活性化、溶血、白血球活性化及び補体活性化を含む血液適合性基準のパネル全体での材料特徴を提供する。健康な提供者からの全血液を慎重に採血し、最小限にヘパリン化し、次いで、37℃に維持された温度調節浴中で90分間、試験試料を含有する回転しているヘパリン化PVC管中で穏やかに循環させた。材料接触のない血液を内部モデル対照として使用するが、ヘパリン化PVC管のみと接触する血液は、対照として使用される。血液は提供者間で一緒に貯蔵されることなく、むしろ別々の実験を表し、及び研究の最終時に平均化される。90分間のインキュベーション後、試験試料及び循環血液を回収し、以下の分析を受けさせてよい。
【0178】
・血栓形成は、試験試料表面上で電子顕微鏡検査法を走査することによって分析される。表面へのフィブリン、血小板及び白血球接着を観察し、グループ間で比較する。
・凝固は、全てプロトロンビン変換及び凝固を変調する、凝固因子XII、XI及びXを標的として免疫化学的に(例えばELISA)測定される。トロンビン-アンチトロンビン-III錯体も凝固活性化の高感度マーカーとして測定される。
・血小板数は、細胞計数装置を使用して、循環血液中で測定される。
・材料表面への曝露による循環血液中の血小板の欠損を定量化することは、低い血液適合性による血小板挙動の摂動を示す。血小板活性化マーカー、β-トロンボグロブリンはELISAで測定される。
・赤血球数及び白血球数を細胞計数装置を使用して測定する。これは血液学的影響の概要である。
・溶血は、比色生化学分析を使用して、血液中の遊離モグロビン含有量を測定することによって定量化される。
・白血球活性化は、酵素マーカーPMN-エラスターゼを定量化することによって分析される。及び/又は
・補体活性化は、補体複合体形成のSC5b-9マーカーを定量化することによって分析される。
【0179】
このパネルの表示はそれぞれの材料の血液接触特性を象徴し、及び複合材料の血液適合性の指標を作成することができる。
【0180】
[試料調製及び縫合保持(比較実験1~3及び実施例4~6)]
未変性UHMWPE布からレーザー切断された100×30mmの試料断片の縫合保持強度を、長さ(縦糸)及び幅(横糸)方向で測定した。比較実験1(CE1)として表1にまとめられた結果は、横糸方向での試験に関するものであり、縦糸方向で得られた結果はそれに匹敵した。
【0181】
超短波パルスレーザー(USPレーザー;800kHz、18W及び5mm/秒の切断速度で運転された)によって切断された布の断片は、直線であり、良好に画定された鋭い切断端部を有する。そのような切断端部の例を図1Aに示す。これは、約150倍の倍率でTagarnoデジタル顕微鏡によって撮影された顕微鏡写真である。しかしながら、挿入された縫合は、解繊する布を通って容易に引き抜かれる。低(100Wの最大出力の10%、切断速度35mm/秒;CMレーザー-低)及び高設定(出力の20%、切断速度35mm/秒;CMレーザー-高)で連続モードで運転されたCOレーザーによるレーザー切断において、より高いエネルギーを使用することは、より高い縫合保持強度をもたらしたが、布の切断端部が、部分的に溶融及び再固体化された繊維の局所的濃厚化によって容認できないほど不規則であることがわかる。切断端部も、指で触ると粗く、布自体よりも硬く感じられる。
【0182】
比較実験2において、2枚の微小孔性UHMWPEフィルム(Dyneema Purity(登録商標)膜)の間に挟むことによって、UHMWPE布を両側で熱ラミネートした。このサンドイッチ構造をホットプラテンプレス中でテフロンシートの間に配置し、140℃及び50kNの圧力で10分間加熱し、圧力下で15分間、室温まで冷却した。このようなCE2布に関する縫合保持試験データ(表1を参照のこと)は、超短波パルスレーザーを用いて切断した場合、いくらかの強度増加があること、及び連続モードで運転された、より高エネルギーのCOレーザーを用いて切断された試料に関して、強度の改善があることを示す。切断端部の顕微鏡写真は、溶融し、再固体化した材料のかたまりを有する不規則な端部を示し、これはパルスから高強度連続モードレーザー切断へと増加する(図2中の例を参照のこと)。複合バイオテキスタイルの厚さは、材料の密度が高められたことを示しており、及び変性布は、開始ポリオレフィン布より顕著によりフレキシブルでなく、柔軟でない。
【0183】
実験CE3において、表面を部分的に溶融し、接触させ、及び再び固体化することによって、布中のストランドを一緒に溶接するために、UHMWPE布をCO CMレーザーによって処理した。布の断片をレーザー処理し、ヒューズド領域を作成した。それによって、その後、USPレーザーを使用して所望のサイズの、少なくとも約3mmのヒューズド端部領域を有する試料を作成することができる。縫合保持強度は、未変性布によるものよりも高いことがわかったが、CE2試料に関して判明したレベルではなかった(表1を参照のこと)。
【0184】
実施例4において、最初にポリウレタンペレットを70℃で一晩乾燥させ、次いでTHF及びペレットを室温で一晩撹拌することによって調製された、THF(Lichrosolve)中のCarboSil(登録商標)TSPCU 20-80Aの10質量%溶液を用いて、UHMWPE布を1ステップでディップコーティングした。この溶液は、約180mPa.sのBrookfield粘度を有することがわかった。縫合保持試験のための試料は、上記とは異なるレーザー(設定)を用いて作成され、及び横糸方向の試験に関する結果を表1に示す(Ex4)。このポリウレタンコーティングされたUHMWPE布は、レーザー切断された時、適用されるレーザーエネルギーから外観上独立して、解繊に対する抵抗の顕著な増加を示す。しかしながら、得られた端部は、レーザー切断の種類に依存し、USPレーザーによる制御されたエネルギー切断から得られる端部は、種々の設定において、良好に画定され、規則的であるが、CMレーザー切断は、不規則な端部及び剛性化を生じる。図3中、これはいくつかの顕微鏡写真に示される。図3Aは、2つの異なるエネルギー準位を適用するUSPレーザーで製造される端部を示し、図3Bは、低(左)及び高設定(右)のCMレーザーによる切断から生じる布端部から製造される。例えば、不規則な端部が移植後の炎症を引き起こし得ないのみならず、曲げた状態での長期使用時に複合バイオテキスタイルのさらなる損傷又は破損を開始する可能性もあるため、医療用インプラント用途に関して、USPレーザー切断によって製造される試料Ex4が好ましいことは明らかであろう。
【0185】
したがって、これらの実験は、布に特定のポリウレタンコーティングを提供することと、パルスレーザーによって切断することとの組合せが、適切な縫合保持強度を有するインプラントコンポーネントとして使用するために適切である改善された複合バイオテキスタイルを製造することを可能にすることを実証する。
【0186】
実験5及び6において、あらかじめ乾燥させたBiospan(登録商標)S SPUポリウレタンのDMAc中8質量%の溶液(約220mPa.sのBrookfield粘度)を用いて、1層(Ex5)を適用することによって、及び中間乾燥後にポリウレタンの第2の層(Ex6)を適用することによって、UHMWPE布をディップコーティングした。Ex4に関する観察と類似して、コーティングされた布のUSPレーザー切断によって、安定な、良好に画定された平滑な端部を有し、連続モードレーザーによるレーザー切断時に生じる不規則性及び濃厚化を示さない複合布が得られる。
【0187】
【表1】
【0188】
[摩耗抵抗(CE7及びEx8~10)]
表2に列挙した試料で、上記に示される通り、摩耗抵抗を決定した。この試料は、CE2及びEx4~6で使用されたものに相当し、サイズ調整のためにUSPレーザーを使用して切断され、直線の明確な切断端部が得られた。
【0189】
表2にまとめられるように、未変性の織物試料CE7は、500サイクル後に切断端部において、すでに有意なほつれと、結合していない縦糸ストランドを示し、布の表面上に崩壊したフィラメントを示した。さらなる研磨サイクルの間、損傷はフィラメントの遊離を進め、ほつれ及び解繊が増加し、端部で「解放された」縦糸ヤーンが崩壊し、分離した。(約100倍の倍率での)端部の顕微鏡写真の3つの例を図5Aに示す。それとは対照的に、コーティングされた布は、摩耗試験を受ける時、ほつれに対する顕著により良好な抵抗を示した。(Carbosil(登録商標)コーティングによる)実施例8の試験の間、ほつれの初期の段階を示す、いくつかの崩壊したフィラメントが8000サイクル後で観察されたが、15000サイクルの後も、端部でほんのわずかのみの損傷を受けたフィラメントが見られた。同様に、1層又は2層のBiospan(登録商標)コーティングによる実施例9及び10は、15000サイクルの後、いくつかのみの崩壊したフィラメントを示し、ほつれはほとんど見られなかった。表2及び図5C~Dも参照のこと。
【0190】
【表2】
【0191】
[血液適合性(CE11~12及びEx13~15)]
これらの実験において、上記の材料、及びポリエチレンテレフタレートヤーン(PET)に基づく参照の編物材料を、上記の通り、ヒト血液を使用して、Chandler Blood Loop生体外モデルで、それらの血液適合性に関して試験した。試験された材料及び結果の概要を表3に提供される。
【0192】
商業的に入手可能なPET編物(例えば、大動脈ステントグラフトカバーとして使用されるDacron(登録商標)として入手可能)を手で試料サイズへと切断し、参照材料としてCE11で使用した。CE12では、未コーティングのUHMWPE布(上記と同一)を使用した。実施例13~15は、上記実施例と類似のコーティングされたUHMWPE布に関する。より大きい断片から5×80mmの試験片をレーザー切断した。全ての試料は、Chandler Loop試験の前にエチレンオキシドで2回殺菌された。ヘパリン化PVC管中を循環し、試験材料を含有しない血液は、モデル自体の内部対照として作用した。
【0193】
全ての試料は、5人の健康なヒト提供者から得られた血液中で個々に試験された。赤血球数及び白血球数、並びに遊離プラズマヘモグロビン、ヘモグロビン、ヘマトクリット及びSC5b-9補体活性化のレベルは、全ての材料内で類似であり、安定であることがわかった。試験された材料の間で顕著な差異は観察された、それぞれの分析からの結果を表3に列挙した。示される数値は平均値+/-標準偏差(n=6)を表す。
【0194】
コーティングされたUHMWPEと未コーティングのUHMWPEとの間の血液適合性における生物学的に関連した改善は、トロンビン-アンチトロンビン錯体(TAT)濃度で観察された。これは、両ポリウレタンコーティングが、この特定の凝固マーカーによって、UHMWPE布の血栓形成、すなわち、血液凝固活性化を減少させたことを実証する。全ての材料は、対照に対して高いTATレベルを示したが、未コーティング及びコーティングされたUHMWPE布はPET編物よりも85~97%低いレベルを引き起こした。
【0195】
PETに対してコーティングされたUHMWPE及び未コーティングのUHMWPEを比較すると、他の重要な差異が観察された。特に、全ての試料に関して血小板数が減少したが、(コーティングされた)UHMWPE材料に関しては、PET編物よりも有意により高いレベルであった。血小板活性化マーカーβ-トロンボグロブリン(β-TG)のレベルは、未コーティング及びコーティングされたUHMWPE材料に関するよりも、PETに関して2倍以上高かった。Biospan(登録商標)ポリウレタンで2回コーティングされたUHMWPE布は、この分析において最良の性能を示した。最終的に、顆粒白血球活性化の病理学的指標であるPMN-エラスターゼは、(未コーティング及びコーティングされた)UHMWPE布に関するよりも、PETに関してほぼ2倍高かった。
【0196】
【表3】
【0197】
これらの生体外血液適合性の結果は、いくつかの分析で測定されたレベルが、(コーティングされた)UHMWPE布試料及び試験材料を含有しないヘパリン化PVC管(内部参照)(本複合バイオテキスタイルは良い血液適合性を示す)に関して匹敵し、本複合バイオテキスタイルが良好な血液適合性を示すことを実証する。コーティングされたUHMWPE布及び未コーティングのUHMWPE布は、ステント-グラフトのような血液接触用途で多用されるPET布以上に優れた血液適合性を示すと結論付けることができる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5