(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】高温超電導(HTS)リードのクエンチ保護
(51)【国際特許分類】
H01F 6/00 20060101AFI20240823BHJP
H01F 6/02 20060101ALI20240823BHJP
H01F 5/00 20060101ALI20240823BHJP
H10N 60/81 20230101ALI20240823BHJP
【FI】
H01F6/00 180
H01F6/02
H01F5/00 C
H10N60/81
(21)【出願番号】P 2021575292
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(86)【国際出願番号】 EP2020066005
(87)【国際公開番号】W WO2020254158
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-06-08
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ラネン エズラ ペトルス アントニウス
(72)【発明者】
【氏名】ヴォス マシュー ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース ジョン
(72)【発明者】
【氏名】アーバン ジョン アーサー
(72)【発明者】
【氏名】パイン アレクサンダー ジェームス
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-140243(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0108933(US,A1)
【文献】特開平04-147680(JP,A)
【文献】特開平10-154616(JP,A)
【文献】特開2001-274014(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0187439(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 6/00
H01F 6/02
H01F 5/00
H10N 60/81
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温液体が含まれているクライオスタットと、
前記クライオスタット内に配設された1つ以上の電気超電導コイルであって、電流が通過するときに磁場を生成する、1つ以上の電気超電導コイルと、
前記クライオスタット内に恒久的に配設され、前記1つ以上の電気超電導コイルに結合されている1つ以上の高温超電導(HTS)電流リードと、
前記HTS電流リードの状態をモニタリングするために前記1つ以上のHTS電流リードに又はその付近に配置される1つ以上のセンサと、
前記1つ以上のHTS電流リードに選択的に結合され
、前記1つ以上のHTS電流リードを保護するためのHTS保護スイッチと、
前記HTS保護スイッチを制御するための磁石コントローラと、
前記クライオスタット内で前記1つ以上のHTS電流リードと外部電流端子との間に配設され、前記1つ以上のHTS電流リードを前記クライオスタットの外側に配設された1つ以上のデバイスに電気的に結合するラッチ式機械的スイッチと、
を含み、
前記センサを介して前記1つ以上のHTS電流リードのクエンチが検出されると、前記磁石コントローラが、前記HTS保護スイッチを制御して、前記1つ以上のHTS電流リードからの電流を迂回さ
せ、
前記ラッチ式機械的スイッチは、開状態及び閉状態を有し、電気パルスに応答して、前記開状態と前記閉状態とを切り替える、装置。
【請求項2】
前記1つ以上のHTS電流リードは、希土類バリウム銅酸化物(ReBCO)から形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記閉状態にある前記ラッチ式
機械的スイッチは、停電中閉じたままになる、請求項
1に記載の装置。
【請求項4】
前記ラッチ式
機械的スイッチが電流を搬送するとき、前記磁石コントローラは、
前記ラッチ式機械的スイッチを切り換えるための信号を生成しないことによって、前記ラッチ式
機械的スイッチ
が開くことを防ぐ、請求項
1から
3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記1つ以上のセンサは、電圧センサを含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記1つ以上のセンサは、温度センサを含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 以下は、概して超電導永久磁石に関し、特に、磁気共鳴イメージングのための超電導永久磁石内の高温超電導電流リードのダメージを防ぐためのシステム及び方法、並びに関連技術に関連する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 磁気共鳴イメージング(MRI)スキャナは、通常、超電導磁石を使用して静磁場(B0)を発生させる。超電導巻線は、典型的に銅マトリックスに埋め込まれた超電導ファイバとして構築され、液体ヘリウムに浸漬されて、動作電流における超電導のために臨界温度未満に巻線を維持する。液体ヘリウムは、ヘリウムを極低温(例えば4K以下)に維持するコンプレッサによって動作させられるコールドヘッドを有する真空被覆クライオスタットに収容されている。
【0003】
[0003] この設計の欠点は、通常、一部のヘリウムのボイルオフが発生し、場合によってはヘリウム供給を補充しなければならない場合があることである。さらに、メンテナンスを実行するために磁石を室温まで上げると、通常ヘリウム供給全体が失われ、補充しなければならない。
【0004】
[0004] より最近の超電導磁石設計の中には、高圧(例えばいくつかのシステムでは1000psi)でガスヘリウムが充填され、真空クライオスタットに配設される密閉型冷却システムを採用しているものもある。コールドヘッドは、密閉型冷却システムを極低温(例えば4K以下)に冷却するために動作し、ヘリウムチャージは、この低い動作温度で少なくとも部分的に液化されている。磁石巻線は、クライオスタットの内側の真空中にあり、密閉型冷却システムの外側にあるが、密閉型冷却システムと熱接触している。このような「密閉型」超電導磁石は、ヘリウム損失の傾向がなく、磁石巻線が液体ヘリウムに浸されている従来の超電導磁石設計と比較してはるかに小さいヘリウムチャージを使用する。
【0005】
[0005] 密閉型超電導磁石の潜在的な欠点の1つは、(例えば停電による)コールドヘッド機能の一時的な損失が原因でよりクエンチしやすいことである。しかしながら、最新の超電導磁石巻線は、超電導ファイバが正常状態に入るときに銅マトリックスが高い導電率を提供することによるダメージなしで、クエンチの相対的に均一な拡散及びクエンチが開始する時点からの熱放散を促進する巻線設計と共に、クエンチを受けることが可能である。
【0006】
[0006] 浸漬又は密閉型超電導磁石設計では、超電導巻線の端子とのガルバニック接触により磁石の通電又は通電解除が行われる。クライオスタットのポートは典型的にこのために提供されており、金属リードを挿入して磁石端子に接触できる。これにより、リードから超電導巻線の端子の周りの超電導体への熱伝達により、ガルバニック接点に近接する非超電導領域(すなわち、常導電領域)が生じることがある。この常導電領域の電流は、銅マトリックスによって搬送される。Urbahnらは、2017年10月19日に公開された国際特許公開WO2017/178560A1で、例えば、ビスマスストロンチウムカルシウム銅酸化物(BSCCO)、イットリウムバリウム銅酸化物(YBCO)、又はニホウ化マグネシウム(MgB2)などの高温超電導(HTS)材料で作られているHTSリードを用いる代替設計を開示している。HTSリードは、HTS材料及び電流の大きさに応じて、25K~90K以上の超電導率の臨界温度を有する。HTSリードは、クライオスタットの外側の室温から超電導磁石巻線の4K以下の温度への滑らかな遷移を有利に提供する。
【発明の概要】
【0007】
[0007] 以下に、これらの問題及び他の問題を解決するためのいくつかの改良点について開示する。
【0008】
[0008] 一態様では、装置は、ある量の極低温液体が含まれているクライオスタットを含む。1つ以上の電気超電導コイルがクライオスタット内に配設されている。1つ以上の電気超電導コイルは、電流が通過するときに磁場を生成する。1つ以上の高温超電導(HTS)電流リードが、クライオスタット内に恒久的に配設され、1つ以上の電気超電導コイルに結合されている。1つ以上のセンサが、1つ以上のHTS電流リードに又はその近くに配置され、HTS電流リードの状態をモニタリングする。HTS保護スイッチが、1つ以上のHTS電流リードに選択的に接続されている。1つ以上のHTS電流リードのクエンチがセンサを介して検出されると、磁石コントローラがHTS保護スイッチを制御して、1つ以上のHTS電流リードからの電流を迂回させる。
【0009】
[0009] 別の態様では、医用イメージングデバイス用の装置は、少なくとも1つの超電導電流リードを含む。少なくとも1つの電圧センサが、少なくとも1つの超電導リードの電圧を測定する。保護スイッチが、少なくとも1つの超電導電流リードからの電流を迂回させる。電圧センサが少なくとも1つの超電導リードの電圧が遮断閾値を超えたことを検出することを含む遮断条件に応答して、電子機器が、電力回路を遮断するように保護スイッチを制御する。
【0010】
[0010] 別の態様では、医用イメージングデバイス内の高温超電導体(HTS)リードをクエンチから保護する方法は、少なくとも1つのHTSリードの両端の電圧を測定するステップと、測定された電圧が、対応する定義済み閾値の範囲外であるかどうかを決定するステップと、測定された電圧が定義済み閾値の範囲外であるときに、少なくとも1つのHTSリードと医用イメージングデバイスの電子機器との間の接続を切断するステップとを含む。
【0011】
[0011] 本明細書に開示するいくつかの例示的な実施形態は、電源及び電流リードが恒久的に設置されていることで、超電導磁石の現場に専門担当者が出張することを必要とする問題を解決する。制御機器が、磁石内の極低温条件をモニタリングし、決定木を使用して磁石を自動的に通電解除するか又は公称磁場を支援するために磁石に自動的に通電するかを決定する。さらに、承認されたユーザ(例えばオペレータ)が、必要に応じて、磁石を自動的に通電解除したり、公称磁場を支援するために磁石に自動的に通電したりするためのユーザインターフェースも提供されている。
【0012】
[0012] 例えば従来の磁石に通電するには、サービス担当者や特殊な機器が必要である。磁気を帯びた異物(例えば患者のベッドや床の緩衝材)が磁石に貼り付いた場合、その物体を磁石から取り除く時間とコストは、ユーザ(例えば病院、診療所)にとって大きな負担となることがある。元のヘリウムインベントリのごく一部しかないより新しいタイプの「密閉型」磁石では、磁石の自動通電はより一層望ましい。ヘリウム槽タイプの磁石とは異なり、小さなヘリウムインベントリでは数時間の冷却障害しかサポートできない。その後、クライオスタットに移動した残留熱により、超電導が維持されなくなる点までコイル温度が上昇され、磁石は「クエンチ」する(熱暴走により磁場が急速に減衰し、コイル温度が上昇する)。サービス担当者が時間内に現場に到着し、磁石の通電解除を準備する可能性は低い。自動ランピング又はユーザが開始するランピング(例えば通電、通電解除)では、磁石のエネルギーを外部ダンプに放出することで、この状態を防止できる。MRIスキャナの設置場所での停電により、冷却障害が発生することがある。電力が回復すると、自動電源は人の介入なしに磁石に再び通電できる。同様に、異物が磁石に貼り付いたときや、他の任意の所望の目的で、ユーザは、磁石の通電解除を開始できる。異物が磁石から取り除かれたとき又はユーザが磁石の再通電が望ましいと判断したとき、ユーザは磁石の通電を開始できる。これにより、動作可能時間が最大化され、結果として顧客に対するシステムの価値が高くなる。
【0013】
[0013] 1つの利点は、HTSリードがクエンチした場合に超電導磁石のHTSリードが保護される点にある。
【0014】
[0014] 別の利点は、超電導磁石のHTSリードのクエンチが防止される点にある。
【0015】
[0015] 別の利点は、HTSリードのダメージを防ぐことで、メンテナンス時間及びコストが削減される点にある。
【0016】
[0016] 別の利点は、HTSリードからの電流を迂回させることによってリードのクエンチが防止される点、又は、HTSクエンチが発生した場合に、HTSリードへのダメージが防止される点にある。
【0017】
[0017] 別の利点は、上記の利点のうちの1つ以上を備えた超電導磁石を用いるMRIデバイスが提供される点にある。
【0018】
[0018] 所与の実施形態は、上記の利点のいずれも提供しない、上記の利点のうちの1つ、2つ以上、又はすべてを提供することができ、及び/又は、本開示を読んで理解した上で、当業者には明らかになる他の利点を提供することもある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
[0019] 本開示は、さまざまな構成要素及び構成要素の配置、並びに、さまざまなステップ及びステップの配置の形態をとることができる。図面は、好ましい実施形態を説明することのみを目的とし、本開示を限定していると解釈されるべきではない。
【0020】
【
図1】[0020]
図1は、磁気共鳴イメージング(MRI)装置の例示的な実施形態を示す。
【
図2】[0021]
図2は、本発明の態様によるMRI装置に用いられ得る超電導磁石システムの例示的な実施形態を示す。
【
図3】[0022]
図3は、
図2のシステムの別の実施形態を示す。
【
図4】[0023]
図4は、
図2及び
図3のシステムの例示的なフローチャート動作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[0024] HTSリードは、極低温であるが異なる温度で動作する磁石の部分間の電気的接続として、他のスキームよりも優れている。HTSを組み込んだアセンブリの低~ゼロの電気抵抗は、磁石部分間に電流を搬送するために使用されると、オーム加熱を大幅に低減し、また、高い熱抵抗は、これらの部分間の熱伝達を低減する。
【0022】
[0025] 一方、超電導磁石巻線に使用されるような低温超電導体(LTS)リードは、銅マトリックス内に超電導金属フィラメントを用いている。これらのフィラメントの臨界温度を超えると(例えばフィラメントが「クエンチ」すると)、周囲の銅マトリックスが電気を伝導し始め、今度は抵抗性である(正常の)フィラメント部分の周りの電流を短絡する。これにより、フィラメント内のオーム加熱が低減され、発生した熱がすぐに銅を介して正常領域から離れて伝導するため、繊細なフィラメントへの恒久的なダメージが防止される。
【0023】
[0026] 対照的に、HTS構成要素は、典型的に比較的最小の金属量に接合された超電導セラミック材料である。したがって、クエンチ中に正常領域の周りで短絡された電流及び正常領域から離れて搬送される熱は、繊細なセラミックへの恒久的なダメージを防ぐには不十分な場合が多い。このクエンチ中にHTSが保持する電流によって、数百ミリ秒以内にHTSへの恒久的なダメージが発生する可能性がある。
【0024】
[0027] この状況は、超電導ファイバが正常状態に入った場合に、銅マトリックスが低い(有限ではあるが)電気抵抗を提供する超電導磁石巻線の場合と区別されるべきである。対照的に、HTS材料は典型的には高い電気抵抗を示すセラミックであり、HTSリードがクエンチした場合は電流負荷を受けることができない。したがって、HTSリードは、クエンチ開始から1秒以内、実際には、これよりもはるかに速く、例えば100ミリ秒又は数百ミリ秒で、すぐに修理不能なダメージを受ける可能性がある。
【0025】
[0028] 本明細書では、恒久的に設置され、電源に接続された通電電流リードを有する永久超電導磁石を開示する。超電導を維持するためには、コイルの磁石の温度を極低温未満のままにする必要がある。超電導コイルと外界との間の恒久的な電気的接続により、外側から超電導コイルへの熱漏れが最小限に抑えられる。また、電流を搬送する間にジュール加熱(オーム加熱)が過剰に生成されるべきではなく、さもなければ、熱によってコイルが超電導状態から外れる。
【0026】
[0029] 本明細書では、超電導コイルと磁石の真空空間外の機器との電気的接続の一部としてHTSリードアセンブリを用いる永久超電導磁石を開示する。具体的には、HTSは、LTSコイルと磁石の高温(すなわち、LTSを禁止するが、HTSに対応する)部分との間に高い(数百アンプの)電流を搬送するために使用される。
【0027】
[0030] HTS希土類バリウム銅酸化物(ReBCO)リードが代わりに使用される。これは、ReBCOリードは両方のエリアをカバーするからである。ジュール損失なしではるかに高い温度まで高電流を搬送でき、また、特に低い熱伝導率で製造できる。磁石への熱漏れをさらに低減するために、HTS電流リードと外部電流端子との間に機械的スイッチ(熱スイッチ)が磁石内に設置されている。これらのスイッチは、HTSリードを流れる電流が必要な場合にのみ閉じ、そうでなければ開いている。HTSはこの用途によく適している。より高い温度の磁石領域から及びHTS内のオーム加熱からLTSに伝達される熱は、さまざまな磁石動作モード中にLTSを超電導温度に保つことができるほど十分に小さい。
【0028】
[0031] 本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、初期HTSリードクエンチの場合に、突然電流を遮断するための自動電流シャットオフシステムが提供されている。このシステムには、HTSリードの両端にある電圧センサが含まれている。センサは、高コモンモード除去機能を有する差動電圧計を含む、ラックに取り付けられた電子機器と電気的に接続されている。HTSリードの両端で測定された差動電圧が何らかの閾値(例えば、一実施形態では50mV。なお、理論的には、この電圧は超電導状態のHTSリードに対しては同様にゼロである)を超えた場合、作動(例えばソレノイド駆動された)カットオフスイッチが開いて電流が遮断される。変形実施形態では、電流シャットオフロジックにノイズ遅延、ローパスフィルタなどが含まれて、ノイズによる不要な電流シャットオフが回避される。いくつかの実施形態では、コンピュータグリッチに対して反応しないように、電子機器はすべてアナログ(例えばアナログオペアンプ回路を使用する)である。1つのHTSリードについて上述したが、好ましくは両方のHTSリードが同様にモニタリングされ、いずれかのHTSリードがトリガ閾値を超える電圧を示している、したがって、HTSリードの初期クエンチを示す場合は、電流シャットオフスイッチが切り替えられる。本明細書に使用される「初期クエンチ」という用語は、HTSリード若しくはその一部が超電導状態から正常状態に移行しているか又は正常状態に移行したばかりであるが、結果として生じるジュール熱がHTSリードをダメージするのに十分なレベルに達する前であることを示すように意図している。
【0029】
[0032] 本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、HTSのクエンチによる電流の流れを中断する自動化システムが提供されている。超電導材料は、非常に低い(理論的にはゼロの)抵抗を示す。このため、電流を搬送しているHTSの両端に発生する注目すべき電圧は、HTSの一部がクエンチしたことを示す。このシステムは、HTSが含まれているすべてのアセンブリの電圧をモニタリングし、閾値を上回る電圧を発生する任意のHTSが含まれている電流ループを電気的に開く。これにより、そのHTS内でのさらなる加熱及びダメージが防止される。これらの測定値の低差動モード(数十ミリボルト)及び高コモンモード電圧(数百ボルト)は、注目すべきである。いくつかの変形例では、このモニタリングされた電圧はノイズフィルタ(例えばローパスフィルタ又は時間遅延)を通過して、不快なトリップを防ぐ。いくつかの変形例では、この保護システムは、コンピューティンググリッチに対するイミュニティのために、アナログ(すなわち、ソフトウェアなし)回路に完全に実装される。
【0030】
[0033] 本明細書に開示される他の実施形態では、温度センサ(例えばサーミスタ又は温度感知ダイオード)が提供される。温度は、差動電圧と比較して遅れ指標であり得、電流カットオフスイッチをトリガするためにHTSリードの温度上昇の検出に依存することは、HTSリードのダメージを防ぐには遅すぎる場合がある。HTSリードの高温端にある(つまり、ガルバニックリードとの接続部に近い)温度センサは、高温端でのHTS温度が臨界温度(Tc)に近づくことに応答して、電流の大きさを下げるなど、あまり積極的ではない修復を実施するのに有益である。電流を下げると、Tcが上昇し(Tcは電流の大きさに依存するため)、また、HTSリードに接続された金属導体のジュール加熱によるものである場合に温度上昇(率)も低下させる場合がある。
【0031】
[0034] 本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、HTSが温度に起因してクエンチすることを防ぐ自動化システムが提供されている。このシステムは、HTSが含まれているすべてのアセンブリの温度をモニタリングし、測定温度に対応する臨界電流内のレベルにシステム電流を安全に調整する。なお、セラミック内でのオーム加熱によるHTSアセンブリの温度上昇はクエンチの遅れ指標であり、クエンチするHTSに対するダメージを防ぐために十分な応答時間を提供する可能性は低い。
【0032】
[0035] 本明細書では、HTS電流リードが電流を搬送するときの熱暴走の場合にHTS電流リードへのダメージを積極的に防ぐためのシステムを開示する。これらの電流リードは、磁石のクライオスタットの内側に恒久的に設置されており、設置場所から磁石を取り外し、磁石を製造場所又は同様の施設に返送することによってのみ交換できる。
【0033】
[0036] これらのシステムは、磁石のHTS部分のダメージを防ぐために実装される。磁石内のHTSを使用するアセンブリを修理又は交換するには、磁石を工場又は同様の施設に返送し、専門的な作業を行い、かなりの時間を必要とするため、かなり望ましくない。
【0034】
[0037]
図1は、磁気共鳴イメージング(MRI)装置100の1つの例示的な実施形態を示している。MRI装置100は、例えば磁石102、患者10を保持する患者テーブル104、MRI装置100が画像を生成する患者10の少なくとも一部を囲む傾斜磁場コイル106、イメージングされている患者10の少なくとも一部に無線周波数信号を適用し、磁場の配列を変更する無線周波数コイル108、及び無線周波数信号によってもたらされる磁場の変化を検出するスキャナを含む。MRI装置の一般的な操作はよく知られているため、ここでは繰り返さない。
【0035】
[0038]
図2を参照して、例示的なシステム又は装置200が示されている。システム200は、超電導コイル(巻線とも呼ぶ)204、少量の極低温液体(例えばヘリウム)を有する閉鎖型冷却システム(図示せず)、及び磁石を動作させる他の構成要素が含まれている真空容器であるクライオスタット202を含む。1つ以上の電気超電導コイル204がクライオスタット202内に配設される。電気超電導コイル204は、電流が通過するときに磁場を生成する。
【0036】
[0039] クライオスタット202はさらに、1つ以上の高温超電導電流リード(すなわち、1つ以上のHTSリード)206を収容する。高温超電導電流リード206は、クライオスタット内で恒久的に配設され、1つ以上の電気超電導コイル204に結合されている。1つ以上の高温超電導電流リード206は、希土類バリウム銅酸化物(ReBCO)から形成される。高温超電導(HTS)ReBCOリードは、ジュール損失なしではるかに高い温度まで高電流を搬送でき、特に低い熱伝導率で製造できることから大気の周囲から温度感知超電導コイルへの熱伝達を最小限に抑えることができるため、従来のリードの代わりに使用される。
【0037】
[0040] 高温超電導保護スイッチ(すなわち、HTS保護スイッチ)208が、1つ以上の高温超電導電流リード及び外部デバイス(例えば、通電デバイス212、通電解除デバイス214)に選択的に結合する。高温超電導保護スイッチ208は、好ましくは、クライオスタット202の外側に配設される。高温超電導保護スイッチ208が第1の状態(開状態)にあるとき、1つ以上の電気超電導コイル204は永久状態にある。高温超電導保護スイッチ208が第2の状態(閉状態)にあるとき、高温超電導電流リード206は、1つ以上の電気超電導コイル204に通電又は通電解除する。一実施形態では、熱スイッチ210が、1つ以上の高温超電導電流リード206をクライオスタットの外側に配設されたデバイス(例えば通電デバイス212、通電解除デバイス214)に電気的に結合する。
図2に見られるように、通電デバイス212/通電解除デバイス214を高温超電導電流リード206に電気的に結合するには、高温超電導保護スイッチ208も閉じる必要がある。言い換えれば、保護スイッチ208又は熱スイッチ210のいずれかが開いている場合、通電デバイス212/通電解除デバイス214は高温超電導電流リード206から電気的に結合解除されている。熱スイッチ210は、ラッチ式熱スイッチ又は他の任意の望ましいスイッチであってよい。一実施形態では、第1の状態は開状態であり、第2の状態は閉状態である。
【0038】
[0041] システム200は、磁石コントローラ220を含む。磁石コントローラ220は、一般にシステムのさまざまな構成要素を制御及び/又はモニタリングし、これには、高温超電導保護スイッチ208の状態の制御が含まれる。例えば磁石コントローラ220は、高温超電導電流リード206、通電デバイス212、及び通電解除デバイス214のうちの1つ以上に又はその近くに配設される電圧及び温度センサ222に結合される。このような電圧及び温度センサは、高温超電導電流リード206の状態をモニタリングする。
【0039】
[0042] 磁石コントローラ220は、システム200の1つ以上のセンサ222からの信号をモニタリングする。磁石コントローラ220は、例えば1つ以上のセンサ222からの信号を分析することで、障害又は誤作動が検出されたかどうかを決定できる。特に、磁石コントローラ220は、クエンチが発生しているか若しくは差し迫っていることを、障害又は誤作動が示しているかどうかを決定できる。磁石コントローラ220がシステム200の障害又は誤作動を検出した場合、特に、超電導コイル204のクエンチが差し迫っているか又は差し迫っている可能性を示す障害又は誤作動を検出した場合、磁石コントローラ220は、高温超電導保護スイッチ208を永久状態から第2の状態に接続して、高温超電導リード206からの電流を、クライオスタットの外側又は外部にあり、高温超電導リード206のペアを介して超電導磁石の導電コイルの反対側の端を挟んで位置するエネルギーダンプユニット(通電解除ユニット)214に迂回させる。
【0040】
[0043] 磁石コントローラ220は、1つ以上の障害状態をモニタリングする。動作中、磁石コントローラ220は、例えば1つ以上のセンサ信号222を分析することで、障害又は誤作動状態が補正されたかどうかを決定する。障害が補正され、その結果、超電導コイル204がクエンチのリスクにはもはやなくなった場合、磁石リードはエネルギーダンプユニット212から結合解除され、通電デバイス212に結合されて、電気超電導コイルを永久状態に戻す。電気超電導コイル204が永久状態にある又はその近くになると、高温超電導保護スイッチ及び1つ以上の高温超電導電流リードが永久状態に切り替わる。システム200の動作は、前述のように、磁石コントローラ220が磁石システムの障害又は誤動作を検出するまで永久状態で進む。
【0041】
[0044] このプロセスにより、クライオスタット202内のクエンチ及び高温超電導電流リード206へのダメージが防止され、極低温材料及び/又は電気超電導コイル204へのダメージが回避される。
【0042】
[0045] 本発明の1つの態様は、通電電流リードが恒久的に設置され、電源に接続されている永久超電導磁石に適用される。超電導を維持するためには、コイルの磁石の温度を極低温未満のままにする必要がある。フィールドサービス担当者の介入なしに磁石の通電及び通電解除を自動的に行うには、超電導コイルと外界との間の恒久的な電気的接続が必要である。また、電流を搬送する間にジュール加熱(オーム加熱)が過剰に生成されるべきではなく、さもなければ、熱によってコイルが超電導状態から外れる。磁石への熱漏れをさらに低減するために、HTS電流リードと外部電流端子との間に機械的スイッチ(熱スイッチ)が磁石内に設置されている。これらのスイッチは、HTSリードを流れる電流が必要な場合にのみ閉じ、そうでなければ開いている。
【0043】
[0046] 本明細書で対処する別の問題(すなわち、故障モード)は、高温超電導電流リード206が電流を搬送する間に何らかの理由で正常状態(クエンチ)にされる場合、ジュール加熱によるダメージによって動作不能になる可能性があることである。別の障害モードは、熱スイッチ210のいずれかが電流を搬送する間に開く場合、アークが接点をダメージし、交換が必要になることである。問題は、高温超電導リード206及び熱接触器の両方が、密閉クライオスタット202の真空内にあることである。そのため、修理作業はそれらの元の工場又は同様の施設などの専用の場所でのみ行うことができる。これにより、MRIスキャナのダウンタイムだけでなく磁石の交換に必要な改修作業により、ユーザに多大なコスト及び不便が生じる。
【0044】
[0047] 前述のように、
図2の実施形態は、高温超電導リード206の状態をモニタリングするための追加ハードウェア222及び制御ソフトウェアを含み、HTSのクエンチが検出されるとすぐにHTS保護スイッチ208を開いて、HTSリード206から電流を迂回させる。これは、磁石自体(つまり、超電導コイル204)のクエンチにつながる可能性があるが、磁石内の受動クエンチ保護回路(図示せず)によって、ジュール加熱が磁石の内部構成要素をダメージしないことが保証される。高温超電導クエンチ検出の場合は、通電制御部もまたすぐに電源をオフにし、磁石と電源との間の高温超電導電流リード206の電流は、HTS保護スイッチ208を介してほぼ即座に除去される。
【0045】
[0048] 一実施形態では、熱スイッチ210はラッチ式である。例えば開状態と閉状態とを切り替えるには電気パルスのみが必要である。これは、磁石が通電又は通電解除されたときにMRIサイトで停電を経験する場合、スイッチは閉じたままであることを意味する。制御ソフトウェアはさらに、電流を搬送するときにこれらの接触器を開くことができないことを確実にする。スイッチ210のラッチ動作は、スイッチ210が停電に反応して状態(開状態又は閉状態に関わらず)を変更しないことを確実にする。したがって、停電時にスイッチ210が閉じていて電流を搬送している場合、スイッチ210は閉じたままになる。これに対して、非ラッチ式の常開ソレノイド駆動スイッチが使用される場合、停電中の電力の損失によって、ソレノイドへの電流が失われて、スイッチを常開状態に戻し、HTSリード206及び/又は電気回路内の他の構成要素をダメージする可能性のある電気アークにつながる可能性がある。
【0046】
[0049] 逆に、非ラッチ式の常閉ソレノイド駆動スイッチが使用される場合、停電中の電力の損失によってスイッチが閉じて望ましくない短絡がもたらされる可能性がある。一方、ラッチ式スイッチ210は、磁石制御電子機器220によってラッチ式スイッチ210に、ラッチ式スイッチ210の状態を切り替える(開状態から閉状態へ又は閉状態から開状態へのいずれか)電気パルスが送られない限り及び送られるまでそれらの現在の状態(開状態又は閉状態のいずれか)を保持する。制御ソフトウェアは、ラッチ式スイッチ210が電流を搬送しているときに開くことができないことを適切に確実にする。例えば磁石制御電子機器220は、ラッチ式スイッチ210に/から流れる回路内の電流を測定する電流計を含んでもよく、測定された電流がゼロである場合にのみ、ラッチ式スイッチ210のラッチ状態を切り替えるための電気パルスを送る。
【0047】
[0050] 本発明の別の実施形態では、信号を処理し、HTS保護回路を開閉するためのコマンドを送信するためのソフトウェアが提供されている。さらに、磁石コントローラの制御は、MRスキャナのオンサイトで、又はネットワーク(例えばインターネット、クラウド、リモートサーバー、サービスプロバイダなど)を介して1つのMRスキャナに通信可能に結合されたコンピュータからリモートで行うことができる。
【0048】
[0051]
図3は、別の態様による医用イメージングデバイス(例えば
図1のMRI装置100)の超電導磁石300のより詳細な実施形態を示している。
図2と
図3との両方に共通する構成要素は、図間で「類似」の参照文字を含み、したがって、これらの共通の構成要素の説明は簡潔さのために繰り返さないことが理解されるであろう。
図3に示すように、超電導磁石300は、超電導コイル204と、少量の極低温液体(例えばヘリウム)が含まれている閉鎖型冷却システム302とが含まれている真空容器であるクライオスタット202を含む。コンプレッサ(図示せず)によって駆動されるコールドヘッド304は、閉鎖型冷却システム302内のヘリウムを約4K以下に冷却するように動作する。例示するコールドヘッド304は、第1のコールドステーションCS
1と第2のコールドステーションCS
2とを有する2段コールドヘッドであり、第2のコールドステーションCS
2(例えば約4K以下)は、第1のコールドステーションCS
1(例えば通常数十ケルビン)よりも低温である。少なくとも1つの電気超電導コイル204は、クライオスタット202内に配設され、約4K以下の極低温に冷却されるように閉鎖型冷却システム302との熱接触し、電流が通過するときに磁場を生成する。
【0049】
[0052]
図3はまた、MRI装置100内のリードのクエンチを防ぐための装置も示している。この装置は、少なくとも1つのHTSリード206、206’(例えば第1のHTSリード206、第2のHTSリード206’)と、
図3では第1のHTSリード206をモニタリングする少なくとも1つの電圧センサ322、第2のHTSリード206’をモニタリングする少なくとも1つの電圧センサ322’、第1のHTSリード206をモニタリングする少なくとも1つの温度センサ324、及び第2のHTSリード206’をモニタリングする少なくとも1つの温度センサ324’として別々に示されている
図2の電圧及び温度センサ222と、HTS保護スイッチ208と、磁石制御電子機器220とを含む。さまざまなセンサ322、322’、324、324’の電子機器220への信号接続は、
図3では破線で示されている。これらの信号接続は、有線又は無線接続として物理的に実装されてもよい。少なくとも1つのHTSリード206、206’はクライオスタット202内に配設され、少なくとも1つの電気超電導コイル204に結合されている。
図3に示すように、第1のHTSリード206は、少なくとも1つの電気超電導コイル204の第1の「上部」端に配設され、第2のHTSリード206’は、少なくとも1つの電気超電導コイルの第2の「下部」端に配設されている。
【0050】
[0053] 各HTSリード206、206’には、金属導体(例えば銅、アルミニウム、その合金など)とガルバニック接続している、E
1と示される第1の端と、超電導巻線204の端子とガルバニック接続している、E
2と示される反対側の第2の端とを有する。一般的に、第2の端E
2は、超電導巻線204の動作温度にある又はその付近、つまり、約4K以下の温度にある。これに対して、第1の端E
1は、大幅に高い温度、例えば詳細な設定に応じて数十ケルビン~約70K~80Kにある。適切なアプローチでは、コールドヘッド304の第1のコールドステーションCS
1は、第1の端E
1又は対応するガルバニック接続された金属導体と熱的に接続され、第1の端E
1を所望の温度に維持するのを助ける。なお、
図3では、コールドステーションCS
1との熱接続は示されていない。国際特許公開WO2017/178560に説明されているような一般的な配置では、熱シールド(図示せず)が冷たい閉鎖型冷却システム302及び超電導巻線204を囲み、第1のコールドステーションCS
1と接触して、熱シールドを約100K以下の温度に維持する。また、熱シールドは、第1の端E
1とコールドステーションCS
1との間の熱経路(の少なくとも一部)を提供する。
図3に示すように、第1のHTSリード206の第1の端が保護スイッチ208に動作可能に接続され、第1のHTSリード206の第2の端が少なくとも1つの超電導コイル304の1つの端子に動作可能に接続されている。第2のHTSリード206’の第1の端E
1が通電デバイス212/通電解除デバイス214に動作可能に接続され、第2のHTSリード206’の第2の端E
2が、少なくとも1つの超電導コイル304の別の端子に動作可能に接続されている。
【0051】
[0054] 少なくとも1つの電圧センサ322、322’は、少なくとも1つのHTSリード306、306’の電圧を測定する。
図3では、各電圧センサ322、322’は、それぞれのHTSリード206、206’の両端の差動電圧を測定する差動電圧センサである。
図3にさらに示すように、少なくとも1つの電圧センサ322、322’は、第1のHTSリード206の両端の差動電圧を測定する第1の差動電圧センサ322と、第2のHTSリード206’の両端の差動電圧を測定する第2の差動電圧センサ322’とを含む。例示的な各温度センサ324、324’は、それぞれのHTSリード206、206’の第1の端E
1の温度を測定する。上で説明したように、温度センサのこの位置は、各HTSリードの第1の端E
1がHTSリードの第2の端E
2よりも高温になることが予想されるため選択されている。したがって、第1の端E
1が超電導の臨界温度T
c未満である限り、HTSリード全体が臨界温度T
c未満であるということになる。
【0052】
[0055]
図3に示すように、保護スイッチ208はクライオスタット202の外側に配設されている。保護スイッチ208は、少なくとも1つのHTSリード206、206’から電流を迂回させる。つまり、保護スイッチ208を開くと、通電デバイス212/通電解除デバイス214から少なくとも1つの超電導コイル204への電流経路が遮断される。
【0053】
[0056] 電子機器220は、遮断条件に応答して保護スイッチ208を制御して、電力回路を遮断する。切断条件には、少なくとも1つのHTSリード206、206’の電圧が遮断閾値を超えていることを少なくとも電圧センサ322、322’が検出することが含まれ得る。これを行うためには、少なくとも1つの差動電圧センサ322、322’が少なくとも1つのHTSリード206、206’の両端の差動電圧を測定するときに、電子機器220は、測定された差動電圧の大きさが所定の電圧閾値(例えば50mV)を上回って増加しているかどうかを検出する。この状態が発生すると、電子機器220は、保護スイッチ208を開いて、少なくとも1つのHTSリード206、206’からの電流を迂回させる。一例では、電子機器220は、ローパスフィルタによるフィルタリング後の差動電圧の大きさが所定の電圧閾値を上回る場合に、差動電圧の大きさが所定の電圧閾値を上回って増加したものとして検出する。別の例では、電子機器220は、差動電圧の大きさが所定の時間間隔の間、所定の電圧閾値を上回る場合に、差動電圧の大きさが所定の電圧閾値を上回って増加したものとして検出する。
【0054】
[0057] このようなアプローチにより、ノイズによってHTS保護スイッチ208がスローされ、超電導巻線204のクエンチにつながる可能性のある電力回路の不要な遮断の可能性が低減される。所定の時間間隔が使用される場合、HTSリード206、206’がジュール加熱によってダメージを受ける前に電流が確実に切断されるように十分に短い間隔を選択する必要がある。一般に、所定の時間間隔は1秒以下であることが考えられ、より好ましくは、100ミリ秒以下である。HTS保護スイッチ208を開く際の待ち時間や、HTSのタイプ、長さ、形状などの他の要因を考慮して所定の時間間隔を選択する必要がある。同様の考慮事項は、ノイズを除去するために使用されるローパスフィルタの時定数又は遷移挙動を選択する際にも適切であり、その応答時間は、ジュール加熱によるHTSリードへのダメージを回避するのに十分な時間である必要がある。
【0055】
[0058] いくつかの例では、少なくとも1つの温度センサ324、324’が少なくとも1つのHTSリード306、306’の温度を検出する。温度が閾値を超えた場合、電子機器322は保護スイッチ308を開いて、少なくとも1つのHTSリード306、306’からの電流を迂回させることができる。しかしながら、前述のように、温度は、差動電圧と比較してクエンチの遅れ指標である傾向があるため、温度センサは、HTS保護スイッチ208を開くためには使用しないこと(又は、少なくともこれの主なトリガとして依拠しないこと)がより好ましい。むしろ、いくつかの好ましい実施形態では、温度センサ324、324’は、一方又は両方の第1の端E1の温度がHTS超電導温度Tcに近づき始めたときに、あまり積極的ではない修復処置をトリガするために使用される。例えば修復処置は、動作している通電デバイス212又は通電解除デバイス214の制御によって、HTSリード206、206’を流れる電流の大きさを低減することである。これにより、第1の端E1にガルバニック接続された金属導体のジュール加熱が低減し、また、通常は電流の振幅が増加すると低下するHTS超電導臨界温度Tcが上昇する。
【0056】
[0059]
図4を参照して、磁石保護方法の例示的な実施形態が示されている。400において、さまざまな保護センサ(例えばセンサ222、232、232’、234、234’)及び超電導巻線204の電流がモニタリングされる。402において、(例えば磁石巻線204の端子の両端に非ゼロの電圧が検出されることによって)磁石巻線204のクエンチが検出された場合、404において、電子機器220は、スイッチ208、210を閉じて(まだ閉じていない場合)、通電解除デバイス214を接続して、巻線204の永久電流を通電解除デバイス214に迂回させて、制御された磁石の遮断を実行する(クエンチがすでに進行中であるため、可能な限りの範囲まで。ただし、巻線204の銅マトリックスを含む巻線204の受動クエンチ保護回路が巻線のクエンチ中のコイルへのダメージに対する保護を提供する)。なお、この障害パスウェイは、巻線204が約4Kを上回って上昇することによってトリガされることに留意されたい。したがって、T
cが数十ケルビンほどであるため、HTSリード206、206’のクエンチがトリガされる可能性はほとんどない。さらに、HTS保護モニタリングではまた、任意選択で、温度センサ324、324’を用いて第1の端E
1の上昇温度を検出し、前述のように、あまり積極的ではない修復を行うこともできる。これは
図4には図示していない。
【0057】
[0060] 別の可能性のある障害状態(412に示される)では、一方又は両方のHTSリード206、206’の初期クエンチが、例えば少なくとも1つ電圧センサ222、222’によって測定される少なくとも1つのHTSリード206、206’の両端の電圧に基づいて検出される。この場合、412において、電子機器220は、測定された電圧(前述の差動電圧であってもよい)が対応する定義済み閾値の範囲外であるかどうかを決定する。そうである場合、414において、電子機器220は、測定された電圧が定義済み閾値の範囲外であるときにHTS保護スイッチ208を開くことによって少なくとも1つのHTSリード206、206’を流れる電流を中断する。これは、前述のように、磁石巻線204のクエンチをもたらすが、本明細書では、巻線のクエンチは通常巻線のダメージをもたらさず、また、HTSリードの高価なダメージにつながる可能性が非常に高いHTSリードの無制御ジュール加熱よりも好ましいことが認識されている。
【0058】
[0061] 別の可能性のある障害状態(422に示される)では、ラッチ式熱スイッチ210を切り替えるための呼び出しが生成される。このような呼び出しは、電子機器220によって自動的に生成されるか、ユーザによって手動で生成される。この場合、424において、ラッチ式熱スイッチ210を切り替えるための呼び出しが実行されるのは、HTSリード206、206’の電流の振幅がゼロの場合(又は、実装を簡素化するために、何らかの閾値を下回っている場合)だけである。これにより、電流を搬送しているときにスイッチ210が開いて、ダメージを与える電気アークが生成されないことが保証される。この障害修復パス422、424は、次の理由から、巻線クエンチ修復パス402、404、又はHTSリードクエンチ修復パス412、414のいずれも干渉しないことに留意されたい。まず、ラッチ式スイッチ210が開状態にある場合、電流はゼロになり、したがって、修復パス422、424は、ラッチ式スイッチ210が開状態から閉状態に切り替わることを防ぐことはできない。次に、ラッチ式スイッチ210が閉状態にあり、402において巻線クエンチが検出された場合、動作404では、ラッチ式スイッチ210はすでに閉じているため、ラッチ式スイッチ210の切り替えを呼び出ししない。最後に、ラッチ式スイッチ210が閉状態にあり、412においてHTSリードクエンチが検出された場合、修復動作は、HTS保護スイッチ208を開くことであり、これはラッチ式スイッチ210を切り替えるための呼び出しを生成しない。
【0059】
[0062] 本開示は、好ましい実施形態を参照して説明されている。前の詳細な記述を読み、理解した者は、修正及び変更を想到するであろう。模範的な実施形態は、添付の特許請求の範囲又はその等価物の範囲内である限り、そのようなすべての修正及び変更を含むものと解釈されることを意図している。