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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】発泡硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/32 20060101AFI20240823BHJP
   B62D 25/04 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
C08J9/32 CEQ
B62D25/04 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022078253
(22)【出願日】2022-05-11
(65)【公開番号】P2023167232
(43)【公開日】2023-11-24
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】305032254
【氏名又は名称】サンスター技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(74)【代理人】
【識別番号】100224605
【弁理士】
【氏名又は名称】畠中 省伍
(72)【発明者】
【氏名】花咲 和明
(72)【発明者】
【氏名】小西 秀平
(72)【発明者】
【氏名】宇野 淳之
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/068893(WO,A1)
【文献】特開2021-004323(JP,A)
【文献】特開2007-246578(JP,A)
【文献】特開2012-136135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/32
B62D 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡硬化性組成物であって、
熱硬化性エラストマー(A)、
化学発泡剤(B)、及び
シェル及び内包成分を有する膨張性粒子(C)
を含み、
前記化学発泡剤(B)がヒドラジン系発泡剤(B1)を含み、
[前記化学発泡剤(B)の発泡ピーク温度]-[前記膨張性粒子(C)の膨張ピーク温度]で定義されるピーク温度差が-10℃以上40℃以下であり、
前記発泡硬化性組成物の23℃せん断速度20sec-1における粘度が500Pa・s以上3000Pa・s以下である、発泡硬化性組成物。
【請求項2】
前記発泡硬化性組成物がアゾジカルボンアミドを含まないもしくは前記発泡硬化性組成物中1%未満である、請求項1に記載の発泡硬化性組成物。
【請求項3】
前記内包成分が炭化水素を含み、
前記炭化水素が50℃以上130℃以下の沸点を有する、請求項1に記載の発泡硬化性組成物。
【請求項4】
前記内包成分が炭化水素を含み、
前記炭化水素が80℃以上120℃以下の沸点を有し、かつ、炭素数7以上9以下である、請求項3に記載の発泡硬化性組成物。
【請求項5】
前記内包成分の平均沸点が50℃以上130℃以下である、請求項1に記載の発泡硬化性組成物。
【請求項6】
前記発泡硬化性組成物が架橋剤(D)を含む、請求項1に記載の発泡硬化性組成物。
【請求項7】
前記架橋剤(D)が過酸化物を含む、請求項1に記載の発泡硬化性組成物。
【請求項8】
前記熱硬化性エラストマー(A)がジエンポリマーである、請求項1に記載の発泡硬化性組成物。
【請求項9】
前記発泡硬化性組成物が熱可塑性樹脂(E)及び可塑剤(F)を含む、請求項1に記載の発泡硬化性組成物。
【請求項10】
前記発泡硬化性組成物の23℃せん断速度20sec-1における粘度が1500Pa・s以下である、請求項1に記載の発泡硬化性組成物。
【請求項11】
前記発泡硬化性組成物の発泡倍率が6.5倍以上15倍以下である、請求項1に記載の発泡硬化性組成物。
【請求項12】
遮音用に用いられる、請求項1に記載の発泡硬化性組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の発泡硬化性組成物が充填された部分を有する構造体。
【請求項14】
閉断面を有し、
前記閉断面に前記発泡硬化性組成物が充填されており、
前記構造体が車体部材又は自動車である、請求項13に記載の構造体。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載の発泡硬化性組成物の発泡硬化体が充填された部分を有する構造体の製造方法であって、
前記発泡硬化性組成物を発泡・硬化させる工程を含む、構造体の製造方法。
【請求項16】
前記構造体が閉断面を有し、
前記閉断面に前記発泡硬化体が充填されており、
前記構造体が車体部材又は自動車である、請求項15に記載の構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は発泡硬化性組成物、特に物品の遮音性を高めるために有用な発泡硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
各種物品における空隙は雑音が発生する原因となり得る。例えば、車両に関しては、走行時に車両部品における空洞ピラー内に空気が侵入して風切り音が発生し、運転部の静寂性を阻害し得る。このような雑音を遮断するために、発泡性の成形品を空隙内に貼着し、その後加熱発泡させることで空隙を充填する技術が知られている。しかし、成形品の製造コスト、貼着自動化の困難性といった問題があり、必ずしも経済的ではない。また、発泡性の成形品を用いる場合、発泡方向に制約が生じ、発泡充填剤を充分に充填させることができず遮音効果を充分に発揮できないという問題も生じ得る。このような事情に鑑み、近年、発泡性の成形品に代えて塗布型の発泡充填剤の使用が検討されている。
【0003】
特許文献1は未架橋ゴム、キノン系加硫剤及び発泡剤を含有することを特徴とするペースト状加熱発泡充填材が低い温度でも高い発泡性能を有することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-136135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の塗布型の発泡充填剤は必ずしも、未硬化放置後特性(例えば、高温条件下及び/又は湿潤条件下における未硬化放置後の発泡性)等が十分とはいえない。未硬化放置後特性が不十分な場合、作業性が悪化し不利となり得る。したがって、本開示は、発泡特性及び接着特性に加えて、未硬化放置後特性も良好に有する、新規な発泡硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は以下の態様を含む:
[項1]
発泡硬化性組成物であって、
熱硬化性エラストマー(A)、
化学発泡剤(B)、及び
シェル及び内包成分を有する膨張性粒子(C)
を含み、
前記化学発泡剤(B)がヒドラジン系発泡剤(B1)を含み、
[前記化学発泡剤(B)の発泡ピーク温度]-[前記膨張性粒子(C)の膨張ピーク温度]で定義されるピーク温度差が-10℃以上40℃以下である、発泡硬化性組成物。
[項2]
前記発泡硬化性組成物がアゾジカルボンアミドを含まないもしくは前記発泡硬化性組成物中1重量%未満である、項1に記載の発泡硬化性組成物。
[項3]
前記内包成分が炭化水素を含み、
前記炭化水素が50℃以上130℃以下の沸点を有する、項1又は2に記載の発泡硬化性組成物。
[項4]
前記内包成分が炭化水素を含み、
前記炭化水素が80℃以上120℃以下の沸点を有し、かつ、炭素数7以上9以下である、項3に記載の発泡硬化性組成物。
[項5]
前記内包成分の平均沸点が50℃以上130℃以下である、項1~4のいずれか一項に記載の発泡硬化性組成物。
[項6]
前記発泡硬化性組成物が架橋剤(D)を含む、項1~5のいずれか一項に記載の発泡硬化性組成物。
[項7]
前記架橋剤(D)が過酸化物を含む、項1~6のいずれか一項に記載の発泡硬化性組成物。
[項8]
前記熱硬化性エラストマー(A)がジエンポリマーである、項1~7のいずれか一項に記載の発泡硬化性組成物。
[項9]
前記発泡硬化性組成物が熱可塑性樹脂(E)及び可塑剤(F)を含む、項1~8のいずれか一項に記載の発泡硬化性組成物。
[項10]
前記発泡硬化性組成物の23℃せん断速度20sec-1における粘度が500Pa・s以上3000Pa・s以下である、項1~9のいずれか一項に記載の発泡硬化性組成物。
[項11]
前記発泡硬化性組成物の発泡倍率が6.5倍以上15倍以下である、項1~10のいずれか一項に記載の発泡硬化性組成物。
[項12]
遮音用に用いられる、項1~11のいずれか一項に記載の発泡硬化性組成物。
[項13]
項1~12のいずれか一項に記載の発泡硬化性組成物又はその発泡硬化体が充填された部分を有する構造体。
[項14]
閉断面を有し、
前記閉断面に前記発泡硬化性組成物又はその発泡硬化体が充填されており、
前記構造体が車体部材又は自動車である、項13に記載の構造体。
【発明の効果】
【0007】
本開示における発泡硬化性組成物は、発泡特性及び接着特性に加えて、未硬化放置後特性を良好に有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】耐シャワー性評価の試験片形状を示す模式的説明図。
図2】耐シャワー性評価装置の模式的説明図。
図3】ハット充填性評価における配置の模式的説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<発泡硬化性組成物>
本開示における発泡硬化性組成物は、
熱硬化性エラストマー(A)、
化学発泡剤(B)、及び
シェル及び内包成分を有する膨張性粒子(C)
を含む。
【0010】
[発泡硬化性組成物の粘度]
発泡硬化性組成物の23℃せん断速度20sec-1における粘度は300Pa・s以上、500Pa・s以上、700Pa・s以上、1000Pa・s以上、1200Pa・s以上、又は1500Pa・s以上であってよく、好ましくは500Pa・s以上、より好ましくは700Pa・s以上である。発泡硬化性組成物の23℃せん断速度20sec-1における粘度は3500Pa・s以下、3000Pa・s以下、2500Pa・s以下、2000Pa・s以下、1500Pa・s以下、又は1200Pa・s以下であってよく、好ましくは3000Pa・s以下、より好ましくは1500Pa・s以下である。上記範囲にあることで、自動塗布がより容易となり、作業性が向上し得る。発泡硬化性組成物の粘度は成分の量(例えば、熱硬化性エラストマー(A)の量、可塑剤(F)の量等)を変更することにより調整可能である。特に、上述した下限以上の粘度であることにより、発泡・膨張時における破泡による発泡倍率ロスを好適に抑制でき、発泡倍率を好適に制御し得る。
【0011】
[発泡硬化性組成物の発泡倍率]
発泡硬化性組成物の発泡倍率は4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、10倍以上、11倍以上、又は12倍以上であってよく、好ましくは5倍以上、より好ましくは6.5倍以上である。発泡硬化性組成物の発泡倍率は25倍以下、20倍以下、18倍以下、16倍以下、14倍以下、12倍以下、10倍以下、又は8倍以下であってよく、好ましくは15倍以下、より好ましくは12倍以下である。上記範囲にあることで、発泡性に良好な発泡性及び十分な発泡体の強度を実現し得る。ここで、硬化条件としては、130℃×20分、150℃×20分、160℃×20分、180℃×20分、又は215℃×20分のいずれか一を採用してもよい。これらの硬化条件のうち、少なくとも一つ、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上(例えば、130℃×20分、150℃×20分、及び180℃×20分の三条件、160℃×20分、180℃×20分、及び215℃×20分の三条件)の条件において、上記範囲の発泡倍率であってよい。未硬化放置前においても未硬化放置後においても、上記範囲の発泡倍率であることが好ましい。
【0012】
[(A)熱硬化性エラストマー]
発泡硬化性組成物は反応性二重結合を有する熱硬化性エラストマー(A)を含む。「熱硬化性エラストマー」とは加熱することにより三次元的に網目構造が形成され、弾性が増大又は弾性が発現するポリマーのことである。熱硬化性エラストマー(A)の例としては、シリコーン系エラストマー、アクリル系エラストマー、エポキシ系エラストマー、フッ素系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ジエンポリマー(天然ゴム又は合成ゴム)が挙げられる。
【0013】
熱硬化性エラストマー(A)は反応性二重結合、特に炭素炭素二重結合を有することが好ましく、熱硬化性エラストマー(A)はジエンポリマーであることが好ましい。ジエンポリマーは天然ゴム又は合成ゴムであってよく、ブタジエン又はイソプレンから誘導される繰り返し単位を有してよい。ジエンポリマーの具体例としては、アクリロニトリル-イソプレン共重合ゴム(NIR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、スチレン-ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)等が挙げられる。ジエンポリマーは未架橋ゴム又は部分架橋ゴムであってよい。部分架橋ゴムは未架橋ゴムを予めジビニルベンゼンやイオウ等の架橋剤を用いて部分的に架橋したポリマーである。熱硬化性エラストマー(A)は常温で固形状であることが好ましく、組成物中の他の液成分に溶解混合され使用されてよい。常温で固形の熱硬化性エラストマー(A)を選択することにより、硬化後の物性確保とともに発泡時にガスを組成物中に留めることができ、硬化後物性及び発泡特性を良好に発現し得る。
【0014】
(熱硬化性エラストマー(A)の量)
熱硬化性エラストマー(A)の量は、発泡硬化性組成物中、0.5重量%以上、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、8重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、又は25重量%以上であってよく、好ましくは3重量%以上である。熱硬化性エラストマー(A)の量は、発泡硬化性組成物中、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、又は10重量%以下であってよく、好ましくは40重量%以下である。熱硬化性エラストマー(A)の量が上述した下限以上の場合、ガス抜け抑制効果が良好に奏され得る。熱硬化性エラストマー(A)の量が上述した上限以下の場合、良好な粘性が発現し得る。
【0015】
[(B)化学発泡剤]
本開示における発泡硬化性組成物は化学発泡剤(B)を含む。「化学発泡剤」とは熱分解によりガスを生じ、組成物中に泡を生じさせる薬剤である。
【0016】
本開示における化学発泡剤(B)はヒドラジン系発泡剤(B1)を含む。ヒドラジン系発泡剤(B1)はヒドラジド基を有する化合物である。ヒドラジン系発泡剤(B1)は芳香族化合物又は脂肪族化合物であってよい。ヒドラジン系発泡剤(B1)の具体例としては、4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド、アリルビス(スルホニルヒドラジド)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等が挙げられる。
【0017】
本開示における発泡硬化性組成物はヒドラジン系発泡剤(B1)以外の化学発泡剤(B)を含んでもよい。ヒドラジン系発泡剤(B1)以外の化学発泡剤(B)は有機系発泡剤又は無機系発泡剤であってよい。有機系発泡剤の例としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系発泡剤;トリクロロモノフルオロメタン等のフッ化アルカン系発泡剤;p-トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド系発泡剤;5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾール等のトリアゾール系発泡剤;N,N-ジニトロソテレフタルアミド等のN-ニトロソ系発泡剤等が挙げられる。無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素アンモニウム、アジド類が挙げられる。化学発泡剤(B)発泡剤は発泡助剤(例えば尿素)と組合せて用いてもよい。
【0018】
発泡硬化性組成物には、良好な発泡特性を示すことから、一般的にアゾジカルボンアミド(ADCA)等のアゾ系発泡剤が使用されることが多い。しかし、欧州化学品規制であるREACH規則のSVHC(高懸念物質)リストにADCAが含まれているように、ADCA等のアゾ系発泡剤が使用できない可能性もあるため、ADCA又はアゾ系発泡剤を含まない処方が求められている。本開示の発泡硬化性組成物において、ADCAの量が少量(例えば、前記発泡硬化性組成物中1重量%未満、0.7重量%未満、0.5重量%未満、0.3重量%未満、0.1重量%未満、0.05重量%未満、又は0.01重量%未満)であってよく、アゾ系発泡剤の量が少量(例えば、前記発泡硬化性組成物中1重量%未満、0.7重量%未満、0.5重量%未満、0.3重量%未満、0.1重量%未満、0.05重量%未満、又は0.01重量%未満)であってもよい。本開示の発泡硬化性組成物はADCAを含まなくてもよく、又はアゾ系発泡剤を含まなくてもよい。本開示における発泡硬化性組成物はADCA又はアゾ系発泡剤を用いない処方であっても、発泡特性、接着特性、及び未硬化放置後特性等を良好に兼ね備え得る。
【0019】
(化学発泡剤(B)の発泡ピーク温度)
「化学発泡剤(B)の発泡ピーク温度」とは化学発泡剤(B)を含む発泡硬化性組成物のDSC測定(昇温速度20℃/分)により得られる横軸を温度とするDSC曲線における発泡に伴う発熱ピーク温度のことをいう。詳細な測定方法は実施例に記載のとおりであってよい。
【0020】
化学発泡剤(B)の発泡ピーク温度は後述する膨張性粒子(C)の膨張ピーク温度と一定の温度差を有しており、[化学発泡剤(B)の発泡ピーク温度]-[膨張性粒子(C)の膨張ピーク温度]で定義されるピーク温度差が-10℃以上40℃以下である。ピーク温度差は-10℃以上、-5℃以上、0℃以上、1℃以上、3℃以上、5℃以上、10℃以上、15℃以上、20℃以上、25℃以上、又は30℃以上であってよく、好ましくは0℃以上又は5℃以上である。ピーク温度差は40℃以下、30℃以下、20℃以下、10℃以下、又は0℃以下であってよく、好ましくは20℃以下である。上記範囲にあることで、発泡特性、接着特性、及び未硬化放置後特性等を良好に兼ね備え得る。
【0021】
化学発泡剤(B)が複数種の組み合わせの場合のようにDSC曲線において発泡に伴うピークが複数個存在する場合、少なくとも一つの発泡ピーク温度についての温度差が上記範囲であればよい。最大発泡ピーク温度について、及び/又は平均発泡ピーク温度についてのピーク温度差が上記範囲にあってもよい。平均発泡ピーク温度は、複数の発泡に伴うピークの各ピーク温度をそのピーク面積分率で乗じた和のことを指してよい。例えば、ピークa(ピーク面積Sa、ピーク温度Ta)とピークb(ピーク面積Sb、ピーク温度Tb)とを含むDSC曲線のピーク温度は、T=Ta×Sa/(Sa+Sb)+Tb×Sb/(Sa+Sb)の式から求められる。なお、ショルダーピークもピークとみなすが、メインピークよりも顕著に小さい場合は無視してもよい。
【0022】
化学発泡剤(B)の発泡ピーク温度は100℃以上、120℃以上、140℃以上、160℃以上、180℃以上、200℃以上、又は220℃以上であってよい。化学発泡剤(B)の発泡ピーク温度は300℃以下、280℃以下、260℃以下、240℃以下、220℃以下、200℃以下、180℃以下、又は160℃以下であってよい。
【0023】
(化学発泡剤(B)の量)
化学発泡剤(B)の量は、発泡硬化性組成物中、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、8重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、又は20重量%以上、又は25重量%以上であってよく、好ましくは1重量%以上である。化学発泡剤(B)の量は、発泡硬化性組成物中、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、又は10重量%以下であってよく、好ましくは30重量%以下である。
【0024】
(ヒドラジン系発泡剤(B1)の量)
ヒドラジン系発泡剤(B1)の量は、化学発泡剤(B)中、10重量%以上、20重量%以上、40重量%以上、60重量%以上、80重量%以上、又は95重量%以上であってよく、好ましくは40重量%以上である。ヒドラジン系発泡剤(B1)の量は、化学発泡剤(B)中、100重量%以下、98重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、又は60重量%以下であってよい。
【0025】
[(C)膨張性粒子]
本開示における発泡硬化性組成物は膨張性粒子(C)を含んでよい。膨張性粒子(C)はシェル及び内包成分を有する。膨張性粒子(C)は、加熱されることにより、シェルが軟化すると同時に内包成分が気化し、熱膨張し、中空粒子(バルーン)を形成する。
【0026】
膨張性粒子は通常、球状(略球状、楕円球状)である。
【0027】
膨張性粒子(C)の平均粒子径は、1μm以上、5μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、35μm以上、40μm以上、又は50μm以上であってよく、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上である。膨張性粒子(C)の平均粒子径は、200μm以下、150μm以下、100μm以下、75μm以下、50μm以下、40μm以下、又は30μm以下であってよく、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下である。平均粒子径の測定方法は
平均粒径とは、レーザー回折・散乱式粒度分布測定器において測定された体積累積粒度分布の50%径のことであってよい。
【0028】
膨張性粒子(C)の市販品の例としては、アドバンセルEMシリーズ(積水化学工業社)、Expancell DU, WU, MB, SL, FGシリーズ(AkzoNovel社)、マツモトマイクロスフェアーF, FNシリーズ(松本油脂製薬社)、クレハマイクロスフェアー(クレハ社)等が挙げられる。
【0029】
(膨張性粒子(C)の膨張ピーク温度)
「膨張性粒子(C)の膨張ピーク温度」とは膨張性粒子(C)のDSC測定(昇温速度20℃/分)により得られる横軸を温度とするDSC曲線における膨張に伴うピーク温度のことをいう。詳細な測定方法は実施例に記載のとおりであってよい。
【0030】
膨張性粒子(C)の膨張ピーク温度は化学発泡剤(B)の発泡ピーク温度未満であり、上述の(化学系発泡剤(B)の発泡ピーク温度)において説明したように化学系発泡剤(B)の発泡ピーク温度と一定の温度差を有していてよい。
【0031】
膨張性粒子(C)が複数種の組み合わせの場合のようにDSC曲線において膨張に伴うピークが複数個存在する場合、少なくとも一つの膨張ピーク温度についての温度差が上記範囲であればよい。最大膨張ピーク温度について及び/又は平均膨張ピーク温度についてのピーク温度差が上記範囲にあってもよい。平均膨張ピーク温度は、複数の膨張に伴うピークの各ピーク温度をそのピーク面積分率で乗じた和のことを指してよい。例えば、ピークa(ピーク面積Sa、ピーク温度Ta)とピークb(ピーク面積Sb、ピーク温度Tb)とを含むDSC曲線のピーク温度は、T=Ta×Sa/(Sa+Sb)+Tb×Sb/(Sa+Sb)の式から求められる。なお、ショルダーピークもピークとみなすが、メインピークよりも顕著に小さい場合は無視してもよい。
【0032】
膨張性粒子(C)の膨張ピーク温度は80℃以上、100℃以上、120℃以上、140℃以上、160℃以上、180℃以上、又は200℃以上であってよい。膨張性粒子(C)の膨張ピーク温度は280℃以下、260℃以下、240℃以下、220℃以下、200℃以下、180℃以下、160℃以下、又は140℃以下であってよい。
【0033】
(シェル)
シェルは膨張性粒子(C)の外殻を構成する。シェルは加熱により軟化する材料であって、特に熱可塑性樹脂である。
【0034】
シェルは単量体から誘導される繰り返し単位を有してよい。なお、単に単量体という場合は重合性二重結合を1個有する(ラジカル)重合性単量体を意図しており、下記にて説明される架橋性単量体とは区別される。
【0035】
シェルはニトリル系単量体から誘導される繰り返し単位を有してよい。ニトリル系単量体はニトリル基を1分子当たり1個以上有する単量体である。ニトリル系単量体の例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-エチルアクリロニトリル、α-イソプロピルアクリロニトリル等が挙げられる。ニトリル系単量体を含むことによって、外殻を構成する熱可塑性樹脂のガスバリア性が向上し得る。
【0036】
ニトリル系単量体から誘導される繰り返し単位の量は、シェル中、5重量%以上、15重量%以上、30重量%以上、45重量%以上、又は60重量%以上であってよい。ニトリル系単量体から誘導される繰り返し単位の量は、シェル中、98重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、又は50重量%以下であってよい。アクリロニトリル(AN)およびメタクリロニトリル(MAN)の重量割合(AN/MAN)については、3/97~90/10、4/96~70/30、又は4/96~60/40であってよい。
【0037】
シェルはカルボキシル基含有単量体から誘導される繰り返し単位を有してよい。カルボキシル基含有単量体は遊離カルボキシル基を1分子当たり1個以上有する単量体である。カルボキシル基含有単量体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等の不飽和ジカルボン酸;不飽和ジカルボン酸の無水物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル等の不飽和ジカルボン酸モノエステル等、好ましい例としてはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸及びイタコン酸が挙げられる。カルボキシル基含有単量体のより好ましい例としてはアクリル酸及びメタクリル酸が、特に好ましい例としてはガスバリア性が高いためメタクリル酸が特に挙げられる。カルボキシル基含有単量体は、一部または全部のカルボキシル基が重合時や重合後に中和されていてもよい。
【0038】
カルボキシル基含有単量体から誘導される繰り返し単位の量は、シェル中、5重量%以上、15重量%以上、30重量%以上、45重量%以上、又は60重量%以上であってよい。カルボキシル基含有単量体から誘導される繰り返し単位の量は、シェル中、98重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、又は50重量%以下であってよい。
【0039】
シェルは、その他の単量体から誘導される繰り返し単位を有してもよい。その他の単量体の例としては、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフイン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン等のビニルケトン系単量体;N-ビニルカルバゾール、N-ビニルピロリドン等のN-ビニル系単量体;ビニルナフタリン塩等を挙げることができる。
【0040】
その他の単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体、ビニルエステル系単量体、アクリルアミド系単量体及びハロゲン化ビニリデン系単量体(特に塩化ビニリデン)から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。シェルは塩化ビニリデン系単量体から誘導される繰り返し単位を含むとガスバリア性が向上し得る。シェルが(メタ)アクリル酸エステル系単量体及び/又はスチレン系単量体から誘導される繰り返し単位を含むと熱膨張特性をコントロールし易くなる。シェルが単量体成分としての(メタ)アクリルアミド系単量体を含むと耐熱性が向上し得る。
【0041】
ハロゲン化ビニリデン系単量体(特に塩化ビニリデン)、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体及びスチレン系単量体から選ばれる少なくとも1種から誘導される単量体の各量又は合計量は、シェル中、5重量%以上、15重量%以上、30重量%以上、45重量%以上、又は60重量%以上であってよい。ハロゲン化ビニリデン系単量体(特に塩化ビニリデン)、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体及びスチレン系単量体から選ばれる少なくとも1種から誘導される単量体の各量又は合計量は、シェル中、98重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、又は50重量%以下であってよい。
【0042】
シェルがカルボキシル基含有単量体から誘導された繰り返し単位を有する場合、シェルはカルボキシル基含有単量体のカルボキシル基と反応する単量体から誘導された繰り返し単位を有してもよい。カルボキシル基と反応する単量体をさらに含む場合は、耐熱性がさらに向上し、高温における膨張性能が向上する。カルボキシル基と反応する単量体としては、たとえば、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ビニルグリシジルエーテル、プロペニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。カルボキシル基と反応する単量体から誘導された繰り返し単位の量は、シェル中、0.1~10重量%、例えば3~5重量%であってよい。
【0043】
シェルは、上記単量体以外に、重合性二重結合を2個以上有する架橋性単量体から誘導された繰り返し単位を有してもよい。
【0044】
架橋性単量体の例としては、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビスアクリルアミド類;ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジまたはトリ(メタ)アクリル酸エステル類;トリレンジイソシアネートやヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネートと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル類;アリル化澱粉;アリル化セルロース;ジアリルフタレート;N,N’,N”-トリアリルイソシアヌレート;等を挙げることができる。これらの架橋剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0045】
架橋性単量体から誘導された繰り返し単位の量は、シェル中、0.1重量%以上、0.3重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、又は3重量%以上であってよい。架橋性単量体から誘導された繰り返し単位の量は、シェル中、10重量%以下、7.5重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、又は1重量%以下であってよい。膨張性粒子(C)の膨張性及び耐熱性等の観点から上記範囲が好適である。
【0046】
・シェルの量
シェルの量は、膨張性粒子(C)中、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、又は80重量%以上であってよい。シェルの量は、膨張性粒子(C)中、95重量%以下、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、又は60重量%以下であってよい。膨張性粒子(C)の膨張性及び耐熱性等の観点から上記範囲が好適である。
【0047】
(内包成分)
内包成分は加熱により気化する物質であって、膨張性粒子(C)における膨張剤として機能する。
【0048】
膨張性粒子(C)を構成する内包成分は、加熱することによって気化する物質であればよい。内包成分の例としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン又はこれらの構造異性体等の炭素数3~13の炭化水素;ヘキサデカン、エイコサン又はこれらの構造異性体等の炭素数13超で20以下の炭化水素;プソイドクメン、石油エーテル、初留点150~260℃および/または蒸留範囲70~360℃であるノルマルパラフィンやイソパラフィン等の石油分留物等の炭化水素;それらのハロゲン化物;ハイドロフルオロエーテル等の含弗素化合物;テトラアルキルシラン;加熱により熱分解してガスを生成する化合物等が挙げられる。これらの内包成分は、1種または2種以上を併用してもよい。上記内包成分は、直鎖状、分岐状、又は脂環状であってよく、脂肪族であるものが好ましい。
【0049】
内包成分の平均沸点は、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、又は90℃以上であってよく、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは80℃以上である。内包成分の平均沸点は、150℃以下、140℃以下、130℃以下、120℃以下、110℃以下、又は100℃以下であってよく、好ましくは130℃以下であり、より好ましくは120℃以下である。なお、「平均沸点」とは、内包成分中の各成分の沸点を質量分率で乗じた値の和のことをいう。例えば、溶剤a(質量Ma、沸点Ta)と、溶剤b(質量Mb、沸点Tb)とからなる混合溶剤の平均沸点Tは、T=Ta×Ma/(Ma+Mb)+Tb×Mb/(Ma+Mb)の式から求められる。本明細書において、沸点とは常圧における沸点のことをいう。
【0050】
内包成分は炭化水素を含むことが好ましい。内包成分に含まれる炭化水素は、下記(1)及び(2)のいずれかまたは両方を満たしてよい。
(1)50℃以上130℃以下の沸点を有する
(2)炭素数7以上9以下である
【0051】
・(1)50℃以上130℃以下の沸点を有する炭化水素
内包成分は50℃以上130℃以下の沸点を有する炭化水素を含むことが好ましい。50℃以上130℃以下の沸点を有する炭化水素は脂肪族炭化水素、特に飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。50℃以上130℃以下の沸点を有する炭化水素の沸点は、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、85℃以上、又は90℃以上、又は95℃以上であってよく、好ましくは90℃以上である。50℃以上130℃以下の沸点を有する炭化水素の沸点は、130℃以下、120℃以下、115℃以下、110℃以下、105℃以下、又は100℃以下であってよく、好ましくは110℃以下である。50℃以上130℃以下の沸点を有する炭化水素は直鎖状、分岐鎖状、又は環状であってもよい。内包成分が上記範囲の沸点を有する炭化水素を含むことで、膨張特性、接着特性、及び未硬化放置後特性等が良好に発現し得る。
【0052】
50℃以上130℃以下の沸点を有する炭化水素の量は、内包成分中、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、40重量%以上、60重量%以上であってよい。50℃以上130℃以下の沸点を有する炭化水素の量は、95重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、65重量%、50重量%以下、又は30重量%以下であってよい。
【0053】
・(2)炭素数7以上9以下の炭化水素
内包成分は炭素数7以上9以下であってよく、好ましくは炭素数8の炭化水素を含んでよい。炭素数7以上9以下の炭化水素は脂肪族炭化水素、特に飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。炭素数6以上10以下の炭化水素は直鎖状、分岐鎖状、又は環状であってもよい。炭素数7以上9以下の炭化水素の好ましい具体例としては、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、3-エチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、2,2,3-トリメチルブタン等のへプタンの直鎖又は分岐鎖の構造異性体、n-オクタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、4-メチルヘプタン、2,2-ジメチルヘキサン、2,3-ジメチルヘキサン、2,4-ジメチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、3,3-ジメチルヘキサン、3,4-ジメチルヘキサン、3-エチルヘキサン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン(イソオクタン)等のオクタンの直鎖又は分岐鎖の構造異性体、2,3,3-トリメチルペンタン、2,3,4-トリメチルペンタン、2-メチル-3-エチルペンタン、3-メチル-3-エチルペンタン、2,2,3,3-テトラメチルブタン、n-ノナン、メチルオクタン、ジメチルヘプタン、エチルヘプタン、トリメチルヘキサン、エチルメチルヘキサン、テトラメチルペンタン、エチルジメチルペンタン、ジエチルペンタン等のノナンの直鎖又は分岐鎖の構造異性体等が挙げられる。炭素数7以上9以下(好ましくは、炭素数8)の炭化水素を含むことで、膨張特性、接着特性、及び未硬化放置後特性等が良好に発現し得る。
【0054】
好ましくは炭素数7以上9以下の炭化水素の量は、内包成分中、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、40重量%以上、60重量%以上であってよい。炭素数6以上10以下(好ましくは炭素数7以上9以下の炭化水素)の炭化水素の量は、95重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、65重量%、50重量%以下、又は30重量%以下であってよい。
【0055】
・内包成分の量
内包成分の量は、膨張性粒子(C)中、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、又は30重量%以上であってよい。内包成分の量は、膨張性粒子(C)中、65重量%以下、55重量%以下、45重量%以下、35重量%以下、又は25重量%以下であってよい。膨張性粒子(C)の膨張性及び耐熱性等の観点から上記範囲が好適である。
【0056】
(膨張性粒子(C)の製造方法)
膨張性粒子(C)の製造方法は限定されず、公知の方法を用いることができる。熱膨張性粒子(C)の製造方法としては、典型的には、in situ重合法により、膨張剤である内包成分存在下、上述した単量体を必要により架橋剤とともに重合し、内包成分を重合体でマイクロカプセル化する方法が挙げられる。例えば、特開2015-3951、特開2015-021066等を参考にできる。
【0057】
(膨張性粒子(C)の量)
膨張性粒子(C)の量は、発泡硬化性組成物中、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、8重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、又は20重量%以上、又は25重量%以上であってよく、好ましくは1重量%以上である。膨張性粒子(C)の量は、発泡硬化性組成物中、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、又は10重量%以下であってよく、好ましくは30重量%以下である。
【0058】
[(D)架橋剤]
本開示における発泡硬化性組成物は架橋剤(D)を含んでもよい。架橋剤(D)は加熱により活性となり、熱硬化性エラストマー(特にジエンポリマー)を架橋し得る。架橋剤(D)の例としては、硫黄、硫黄化合物、オキシム類、ニトロソ化合物、キノン系化合物、ポリアミン、過酸化物(特に有機過酸化物)等が挙げられる。架橋剤(D)は架橋助剤(酸化亜鉛等)と組み合わせて用いてもよい。
【0059】
架橋剤(D)は有機過酸化物を含むことが好ましい。有機過酸化物の例としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ファシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等が挙げられ、具体例としては、tert-ブチルヒドロパーオキサイド、p-メンタンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキサイド、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。
【0060】
(架橋剤(D)の量)
架橋剤(D)の量は、発泡硬化性組成物中、0.01重量%以上、0.1重量%以上、0.3重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、8重量%以上、又は10重量%以上であってよく、好ましくは0.1重量%以上である。架橋剤(D)の量は、発泡硬化性組成物中、25重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、2.5重量%以下、1重量%以下であってよく、好ましくは5重量%以下である。
【0061】
[(E)熱可塑性樹脂]
本開示における発泡硬化性組成物は熱可塑性樹脂(E)を含んでよい。熱可塑性樹脂(E)は、常温では粒子状で存在し、加熱により上記可塑剤に対し膨潤溶解しうる樹脂である。具体例には、アクリル酸アルキルエステル(アルキルとしてメチル、エチル、ブチル、2-エチルヘキシル等)もしくはメタクリル酸アルキルエステル(アルキルとしてメチル、エチル、ブチル、ラウリル、ステアリル等)の重合体もしくは他のアクリル系モノマーとの共重合体を含むアクリル樹脂;MBS樹脂(メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン);アイオノマー樹脂;AAS樹脂(アクリロニトリル/スチレン/特殊ゴム);AES樹脂(アクリロニトリル/EPDM/スチレン);AS樹脂(アクリロニトリル/スチレン);ABS樹脂(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン);ポリウレタン樹脂;ポリエステル樹脂;塩化ビニル樹脂又は塩化ビニリデン樹脂(ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体等);酢酸ビニル樹脂(エチレン酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体)等の樹脂粒子等が挙げられる。
【0062】
熱可塑性樹脂(E)はコアシェル構造を有してもよく、例えば、コアシェル構造を有するアクリル樹脂であってもよい。コアシェル構造は、ガラス転移温度(Tg)が比較的高いシェルと、当該シェルよりガラス転移温度(Tg)が比較的低いコアで構成されるものであってもよい。例えば、シェルのガラス転移温度(Tg)が75~115℃であり、コアのガラス転移温度(Tg)が50~95℃となるものが挙げられる。コアをメチルメタクリレートと炭素数2~8(C2~C8)のアルキルアクリレートの共重合体や各種エステル、シェルをメチルメタクリレート単独、メチルメタクリレートとアクリル酸の共重合体またはメチルメタクリレートとC2~C8アルキルアクリレートとアクリル酸の共重合体などとしてもよい。コアシェル構造を有する熱可塑性樹脂(E)の製品の例としては、ダイヤナールLP-3106(コアシェル構造、コアTg75℃、シェルTg85℃、一次粒径70μm)、ダイヤナールLP-3202(コアシェル構造、コアTg85℃、シェルTg95℃、一次粒径60μm)等を挙げることができる。
【0063】
(熱可塑性樹脂(E)の量)
熱可塑性樹脂(E)の量は、発泡硬化性組成物中、0.1重量%以上、0.3重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、8重量%以上、又は10重量%以上であってよく、好ましくは0.5重量%以上である。熱可塑性樹脂(E)の量は、発泡硬化性組成物中、25重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、2.5重量%以下、1重量%以下であってよく、好ましくは10重量%以下である。添加物の量が上記範囲にあることで、発泡時における組成物の凝集力が適度となり、発泡倍率が良好となりやすい。
【0064】
[(F)可塑剤]
本開示における発泡硬化性組成物は可塑剤(F)を含んでもよい。本開示における発泡硬化性組成物は熱可塑性樹脂(E)と可塑剤(F)の両方を含んでもよい。これにより、発泡特性、接着特性、及び未硬化放置後特性等を良好に兼ね備え得る。本開示における可塑剤としては、上記の熱硬化性エラストマー(A)や熱可塑性樹脂(E)を膨潤又は溶解できるものであってよい。可塑剤の例には、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレート、ジノニルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジヘプチルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等のフタル酸エステル;ジオクチルアジペート、ジデシルアジペート、ジオクチルセバケート等の脂肪族二塩基酸エステル;ポリオキシエチレングリコールジベンゾエート、ポリオキシプロピレングリコールジベンゾエート等のポリグリコール安息香酸エステル;トリブチルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル;アルキル置換ジフェニル、アルキル置換ターフェニル、部分水添アルキルターフェニル、芳香族系プロセスオイル、パインオイル等の炭化水素類が挙げられる。
【0065】
(可塑剤(F)の量)
可塑剤(F)の量は、発泡硬化性組成物中、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、又は50重量%以上であってよく、好ましくは20重量%以上である。可塑剤(F)の量は、発泡硬化性組成物中、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、又は10重量%以下であってよく、好ましくは50重量%以下である。
【0066】
[(G)フィラー]
本開示における発泡硬化性組成物はフィラー(G)を含んでよい。フィラーの添加により、接着性、たれ性、及び比重等の調整が可能である。フィラー(G)の例としては、重質炭酸カルシウム、表面未処理炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム(例えば脂肪酸処理炭酸カルシウム等)、ヒュームシリカ、疎水性シリカ、沈降性シリカ、カーボンブラック、タルク、マイカ(雲母)、クレーや、ガラスビーズ、マイクロバルーン、シラスバルーン、ガラスバルーン、シリカバルーン、プラスチックバルーン、有機粉体コーティングプラスチックバルーン等のバルーン類、プラスチック粒子、ガラス繊維、金属繊維等の無機繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等の有機繊維、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、グラファイト、針状結晶性炭酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、二ホウ化チタン、クリソタイル、ワラストナイト等の針状結晶性フィラー、アルミフレーク、アルミ粉、鉄粉等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、又は二種類以上を併用してもよい。フィラー(G)を含むことにより、保形性及び破泡抑制性の両方が良好に発現し得る。
【0067】
(フィラー(G)の量)
フィラー(G)の量は、接着剤中、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、又は60重量%以上であってよく、好ましくは10重量%以上である。フィラー(G)の量は、接着剤中、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、又は30重量%以下であってよく、好ましくは60重量%以下である。上記範囲にあることで、保形性及び破泡抑制性の両方が良好に発現し得る。
【0068】
[(H)その他成分]
本開示における発泡硬化性組成物は上記以外にもその他成分(F)を含んでよい。その他成分(F)の例としては、着色剤;有機溶剤(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、リグロイン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、n-ヘキサン、ヘプタンや、イソパラフィン系高沸点溶剤等);発泡助剤(サリチル酸、尿素等);密着剤(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アミノシラン、メルカプトシラン、エポキシシラン等のシランカップリング剤、ポリオキシアルキレン骨格を有するグリシジルエーテル等のエポキシ化合物等);加硫促進剤(グアニジン類、アルデヒド-アミン類、アルデヒド-アンモニア類、チアゾール類、スルフェンアミド類、チオ尿素類、チウラム類、ジチオカルバメート類、ザンテート類等);加硫助剤(ステアリン酸、オレイン酸、およびパルミチン酸等の炭素数12以上の長鎖脂肪酸、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、および酸化鉛等の金属酸化物);老化防止剤(ヒンダードフェノール類、メルカプタン類、スルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、チオアルデヒド類等);水分保給剤(水、無機塩類の水和物等);紫外線吸収剤・光安定剤(ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類等);酸化防止剤(ヒンダードフェノール類等);揺変剤(コロイダルシリカ、有機ベントナイト、脂肪酸アマイド、水添ひまし油等);上記以外のポリマー成分(熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等)が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、又は二種類以上を併用してもよい。
【0069】
((H)その他成分の量)
その他成分(F)の量は、各成分に応じて適宜選択されればよい。例えば、その他成分(F)の総量又は各量は、発泡硬化性組成物中、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、又は10重量%以上であってよい。また、その他成分(H)の総量又は各量は、発泡硬化性組成物に対して、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、2.5重量%以下、又は1重量%以下であってよい。
【0070】
[発泡硬化性組成物の調整方法]
発泡硬化性組成物の調製方法は、各種成分を均一に分散混合できる方法であればよく、例えば、プラネタリーミキサー等のミキサーを用いて成分を混練する方法を用いることができる。調製に際して必要に応じて脱泡を行ってもよい。
【0071】
[発泡硬化性組成物の用途]
本開示における発泡硬化性組成物は、好適には物品の遮音性を高めるために物品における遮音壁の製造のために用いられる塗布型の遮音材として利用できる。例えば、本開示における発泡硬化性組成物は車体部材の製造において、走行中に風切り音等の騒音が生じる閉断面における遮音壁の形成に好適に用いられる。本開示における発泡硬化性組成物は塗布可能であるため、成形品と比較して、自動塗布が可能である点、多様な形の空隙部に対応できる点、離形紙等の廃棄物を削減できる点等において優位性を有する。
【0072】
<構造体及び構造体の製造方法>
本開示における構造体は、上述した発泡硬化性組成物又はその発泡硬化体が充填された部分を有する。空隙内面に発泡硬化性組成物を塗布後、硬化温度まで加熱し、発泡・硬化させることで、当該空隙が充填され、遮音壁が形成される。発泡硬化性組成物の発泡後において、空隙がより隙間なく充填されることが遮音効果の観点から好ましい。
【0073】
塗布はロボット等により自動塗布で行われてもよい。例えば、ロボットは、アーム、ポンプ、ノズル、バルブ、材料収容室等を備えていてよい。本開示における発泡硬化性組成物は、自動塗布時のノズルにおける加熱発泡充填材とノズルとの分離性(糸切れ性)に優れ得る。
【0074】
硬化温度は100℃以上、120℃以上、140℃以上、160℃以上、又は170℃以上であってよく、250℃以下、200℃以下、170℃以下、150℃以下、又は130℃以上であってよい。硬化時間(加熱時間)は発泡倍率や硬化性が最適となるように適宜設定されてよいが、通常1分以上、3分以上、5分以上、10分以上、又は15分以上であってよく、120分以下、60分以下、30分以下、又は15分以下であってよい。これらの条件は製造工程の設定や基材によって異なるものであり、適宜調整できる。本開示の発泡硬化性組成物を発泡硬化させるための硬化温度は通常180℃程度であるが近年のエネルギー節減の流れにより160℃など低温で行われることがあり、例えば、車体に適用する場合、車体構造上温度が上がらず硬化温度が150℃や130℃のような比較的低温となることもあり、そのような低温を硬化温度として採用してもよい。本開示の発泡硬化性組成物は低温硬化でも良好な発泡特性及び硬化特性を示す。
【0075】
塗布される基材の例としては、ガラス、ガラスセラミック、コンクリート、モルタル、れんが、タイル、石膏及び天然石(例えば花崗岩又は大理石)等の無機基材;鉄鋼、アルミニウム、鉄、銅、チタン、マグネシウム、めっきを施した金属等の金属又は合金;木材、各種樹脂(PVC、ポリカーボネート、PMMA、ポリエステル、エポキシ樹脂等)、ガラス繊維強化プラスチック(GFP)、炭素繊維強化プラスチック(CFP)等の有機基材;パウダーコーティングされた金属又は樹脂等のコーティング基材が挙げられる。
【0076】
構造体の例は、空隙部分を有する物品であってよく、特に閉断面構造の空隙部分を有する物品であってよい。構造体の具体例としては、車体部材、産業用機械、家電機器、建築部材等が挙げられ、好適には、フロントピラー(Aピラー)、センターピラー(Bピラー)、リヤピラー(Cピラー)、ホイルアーチ(タイヤハウス)、サイドシル等の車体部材又は自動車が挙げられる。
【0077】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例
【0078】
以下、実施例を挙げて本開示を詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0079】
[評価試験]
評価試験の手順は次のとおりである。
(化学発泡剤の発泡ピーク温度)
実施例及び比較例の組成物を試料として、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製Q2000を使用して、25℃から250℃まで、20℃/minの割合で加熱して、分解発熱ピーク温度を化学発泡剤の発泡ピーク温度とした。
【0080】
(膨張性粒子の膨張ピーク温度)
各膨張性粒子を試料として、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製Q2000を使用して、25℃から250℃まで、20℃/minの割合で加熱して、吸熱ピーク温度を膨張性粒子の膨張ピーク温度とした。
【0081】
(ピーク温度差)
ピーク温度差は[化学発泡剤の発泡ピーク温度]-[膨張性粒子の膨張ピーク温度]で求められる。
【0082】
(粘度)
押出型粘度測定装置(ASTM D1092)を用いて、23℃50%RHの環境下で、せん断速度20sec-1の粘度を求める。
【0083】
(発泡倍率(初期))
300×300×0.8mmtの鋼板の真ん中に100×100×1.5mmtのシート状に組成物を塗布する。表2に記載の硬化温度で20分間発泡硬化させ、常温放置後1時間後の最大発泡厚さを測定し発泡前の厚さから発泡倍率を求める。
塗布時の厚さ:t1
硬化・冷却後の厚さ:t2
発泡倍率=t2÷t1
【0084】
(未硬化放置試験50℃×湿度95%×30日)
上記と同様に塗布した材料を50℃×湿度95%×30日放置後、表2に記載の硬化温度で20分間発泡硬化させ、発泡倍率を求める。
【0085】
(接着性)
25×100x1mmtの鋼板を用い、スペーサー厚み3mm、ラップ代25x25mm、材料塗布厚み1.5mm、表2に記載の硬化温度で20分間硬化させる。JASO M 323-77の9.20せん断接着試験法に準じてせん断強度を測定した。
【0086】
(耐熱老化性試験)
前記接着性評価用に作製・硬化した試験片を80℃×30日放置後取り出し、23℃×湿度50%にて24時間放置後、せん断強度を測定した。
【0087】
(耐シャワー性)
試験材料を、図1に示すように約20mmφで塗布した試験片について、図2に示す試験装置により、以下の条件で耐シャワー性を評価した。
シャワー温度:50℃
シャワー角度:45°
シャワー圧力:3kgf/cm2
シャワー時間:1分
ノズル:有限会社蚊取り組製作所 K9S型 PT1/4x5.0
〇:材料定着率95%以上
×:材料定着率95%未満
【0088】
(ハット充填性)
200×200x0.8mmtの鋼板上に45x100mmの形状に材料を塗布し、図3のように配置する。三角形状は高さが40mmの正三角形となるように設定する。表2に記載の硬化温度で20分間硬化させ、三角形の先端部の充填性を確認する。尚、塗布形状の厚みは、標準発泡倍率が7.5以上の物は5mmtとし、7.5未満の物は6mmtにて評価した。
◎:100%完全充填
○:三角角部含めてほぼ充填(98%以上充填)
△:角部の一部に隙発生(90%以上充填)
×:未充填部位発生(充填が90%以下)
【0089】
[原材料]
用いた原材料の詳細は次のとおりである。
【0090】
特開2015-003951の製造方法にしたがって、膨張性粒子2~6及び8は以下の方法により製造したが、膨張性粒子の製造方法は下記方法に限定されない。
【0091】
(膨張性微粒子2の製造方法)
下記重合性モノマー、下記重合触媒、及び下記内包成分を混合して、油性混合物を得た。
重合性モノマー:アクリロニトリル96部、メタクリロニトリル141部、メチルメタクリレート15部、イソボルニルメタクリレート5部、トリメチロールプロパントリアクリレート0.9部、1,9-ノナンジオールジメタクリレート0.2部
重合触媒(開始剤):1,1’-アゾビス(シクロヘキサンー1-カルボニトリル)1.5部、ジラウリルペルオキシド1.5部
内包成分:イソオクタン40部
【0092】
pH9.8に調整された微粒子状の水酸化マグネシウムを約1%含有するコロイド状の水性分散媒1000gと上記油性混合物をホモミキサーで拡販して懸濁液を調整し、反応初期圧力0.3MPa、重合温度65℃x18時間+80℃x2時間の反応により熱膨張性微小球を含む水性分散媒を得た。pH調整処理、水洗、ろ過、乾燥を経て不純物を取り除いた熱膨張性微小球(熱膨張性粒子2)を得た。
【0093】
(膨張性微粒子3の製造方法)
重合性モノマー、重合触媒、内包成分を下記のとおりに変更した以外は膨張性粒子2との製造方法と同様にして熱膨張性微小球を得た。
重合性モノマー:アクリロニトリル96部、メタクリロニトリル141部、メチルメタクリレート15部、イソボルニルメタクリレート5部、トリメチロールプロパントリアクリレート0.9部、1,9-ノナンジオールジメタクリレート0.2部
内包成分:イソオクタン30部、イソペンタン10部
【0094】
(膨張性微粒子4の製造方法)
重合性モノマー、重合触媒、内包成分を下記のとおりに変更した以外は膨張性粒子2との製造方法と同様にして熱膨張性微小球を得た。
重合性モノマー:アクリロニトリル116部、メタクリロニトリル121部、メチルメタクリレート20部、トリメチロールプロパントリアクリレート1部
内包成分:ヘプタン30部
PH9.8に調整された微粒子状の水酸化マグネシウムが約1%含有するコロイド状の水性分散媒1000g
【0095】
(膨張性微粒子5の製造方法)
重合性モノマー、重合触媒、内包成分を下記のとおりに変更した以外は膨張性粒子2との製造方法と同様にして熱膨張性微小球を得た。
重合性モノマー:アクリロニトリル96部、メタクリロニトリル141部、メチルメタクリレート15部、イソボルニルメタクリレート5部、トリメチロールプロパントリアクリレート0.9部、1,9-ノナンジオールジメタクリレート0.2部
内包成分:オクタン50部
【0096】
(膨張性微粒子6の製造方法)
重合性モノマー:アクリロニトリル116部、メタクリロニトリル121部、メチルメタクリレート20部、トリメチロールプロパントリアクリレート1部
内包成分:2,2’-ジメチルオクタン20部、イソペンタン5部
【0097】
(膨張性微粒子8の製造方法)
重合性モノマー、重合触媒、内包成分を下記のとおりに変更した以外は膨張性粒子2との製造方法と同様にして熱膨張性微小球を得た。
重合性モノマー:アクリロニトリル170部、メタクリロニトリル67部、メチルメタクリレート20部、エチレングリコールジメタアクリレート1部
内包成分:イソブタン20部
【0098】
[実施例1~11および比較例1~5]
下記表1に示す配合で各成分を混合し、発泡硬化性組成物を得た。得られた発泡硬化性組成物を用いて上記評価試験を行った。結果を下記表2に示す。
【表1】
【表2】
図1
図2
図3