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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20240823BHJP
   F25B 1/10 20060101ALI20240823BHJP
   F25B 43/02 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
F25B1/00 387K
F25B1/10 G
F25B1/00 396D
F25B43/02 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022119535
(22)【出願日】2022-07-27
(65)【公開番号】P2024017109
(43)【公開日】2024-02-08
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 賢治
(72)【発明者】
【氏名】内藤 宏冶
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-261227(JP,A)
【文献】特開2008-202810(JP,A)
【文献】特開2018-200136(JP,A)
【文献】特開2006-275440(JP,A)
【文献】特開2020-094761(JP,A)
【文献】特開2015-068564(JP,A)
【文献】米国特許第05839886(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 1/10
F25B 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油が貯留される貯油タンクと、
冷媒を圧縮する低段側圧縮機及び高段側圧縮機と、
前記貯油タンクの油を前記低段側圧縮機に供給する供給部と、
前記低段側圧縮機の余剰な油をオーバーフローさせて前記高段側圧縮機に供給する第1配管と、
前記高段側圧縮機の余剰な油をオーバーフローさせて前記貯油タンクに戻す第2配管と、を備え、
前記第1配管は、前記低段側圧縮機の内部に配置される第1オーバーフロー管を備え、
前記第2配管は、前記高段側圧縮機の内部に配置される第2オーバーフロー管を備え、
前記第1オーバーフロー管の及び/又は前記第2オーバーフロー管は、上下方向に対して傾斜している、冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記第1オーバーフロー管及び/又は前記第2オーバーフロー管は、圧縮機の内部で屈曲している、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記貯油タンクは、低圧の冷媒が流れる冷媒配管と接続され、
前記供給部は、前記貯油タンク内の油と冷媒とを前記低段側圧縮機に供給する第3配管と、前記貯油タンクの内部に配置されるU字管と、を備え、
前記U字管は、一端が前記第3配管と接続され、他端が前記貯油タンク内で開口し、
前記U字管は、前記他端よりも下側に設けられた貫通孔を備える、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記高段側圧縮機で圧縮された冷媒が流れる冷媒配管と、
前記冷媒配管と接続される油分離器を備える、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記冷媒は、二酸化炭素冷媒である、請求項1~の何れか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、冷凍機や空気調和機などの性能を向上させるために2段圧縮の冷凍サイクルが採用されている。これに用いられる2つの圧縮機の内部には潤滑用の油が充填されているが、圧縮機のうち一方の油が少なくなるとその圧縮機が故障する恐れがある。そのため、2つの圧縮機の油量を一定に保つ必要がある。
【0003】
特許文献1には、低段側圧縮機及び高段側圧縮機の油を均等に保つ均油機構を備える二段圧縮の冷凍サイクル装置が開示されている。当該均油機構は、貯油タンクと、貯油タンクと低段側圧縮機とを繋ぐ第1均油配管と、貯油タンクと高段側圧縮機とを繋ぐ第2均油配管と、を備えており、各均油配管には弁が設けられている。当該弁の開閉によって、貯油タンクの油を各圧縮機に供給し、各圧縮機の余剰な油を貯油タンクに戻している。
【0004】
当該弁による油量の調整は、弁の開閉間隔が重要となる。時間で制御する場合、様々な条件により適切な時間を設定することは困難である。弁の開閉間隔が長い場合、各圧縮機への油の供給に時間がかかり、弁の開閉間隔が短い場合、各圧縮機への油の供給が途中で中断される恐れがある。
【0005】
油量を検知して弁の開閉を行えば上記問題を解決できるが、圧縮機の油量を検知するには特殊な装置が必要になる。油量を検知できたとしても、2つの圧縮機の油が同時に不足した場合、両方の弁を開にしても低段側圧縮機にのみ油が供給され、高段側圧縮機に油が供給されない。これらにより、当該冷凍サイクル装置は、各圧縮機の油量を一定に保てない恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-68565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、低段側圧縮機及び高段側圧縮機の各油量を一定に保つことが可能な冷凍サイクル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の冷凍サイクル装置は、油が貯留される貯油タンクと、冷媒を圧縮する低段側圧縮機及び高段側圧縮機と、前記貯油タンクの油を前記低段側圧縮機に供給する供給部と、前記低段側圧縮機の余剰な油をオーバーフローさせて前記高段側圧縮機に供給する第1配管と、前記高段側圧縮機の余剰な油をオーバーフローさせて前記貯油タンクに戻す第2配管と、を備える。
【0009】
斯かる構成によれば、各圧縮機の余剰な油をオーバーフローさせて貯油タンクに戻すことができる。また、低段側圧縮機は供給部によって貯油タンクから油が供給され、高段側圧縮機は低段側圧縮機からオーバーフローした油が供給される。これにより、低段側圧縮機及び高段側圧縮機の各油量を一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る空気調和機の構成図
図2】第1実施形態に係る空気調和機の油の流れを示す図
図3】第2実施形態に係る空気調和機の油の流れを示す図
図4】他の実施形態に係る空気調和機の構成図
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下、冷凍サイクル装置の一例である空気調和機1の第1実施形態について、図1及び図2を参照しながら説明する。なお、各図(図3も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面間での寸法比も、必ずしも一致していない。空気調和機1は、ルームエアコン、パッケージエアコン、ビル用マルチエアコンなどである。なお、冷凍サイクル装置は、冷凍機などに用いることもできる。
【0012】
図1は、第1実施形態に係る空気調和機1の冷凍サイクルを示す図である。図1の破線矢印は、油の流れを示し、実線矢印は、冷房運転時における冷媒の流れを示し、点線矢印は、暖房運転時における冷媒の流れを示している。
【0013】
図1に示すように、空気調和機1は、冷房運転や暖房運転等の空調を行う機器である。空気調和機1は、熱を供給する熱源ユニット2(例えば、室外機)と、当該熱を用いて冷暖房を行う利用ユニット3(例えば、室内機)と、を備えている。熱源ユニット2と利用ユニット3とは冷媒配管L8、L9を介して接続されている。熱源ユニット2及び利用ユニット3の台数はそれぞれ1台ずつには限定されず、複数台でもよい。
【0014】
熱源ユニット2(空気調和機1)は、貯油タンク4、低段側圧縮機5、中間冷却器6、高段側圧縮機7、四方弁8、熱源側熱交換器9、熱源側ファン10、熱源ユニット2側の減圧装置である熱源側膨張弁11、気液分離器12及び複数の逆止弁13を備える。利用ユニット3(空気調和機1)は、利用ユニット3側の減圧装置である利用側膨張弁14、利用側熱交換器15及び利用側ファン16を備える。図1に示す四方弁8は、冷房運転時の状態を示している。
【0015】
貯油タンク4は、油(冷凍機油や潤滑油ともいう)が貯留されるタンクである。貯油タンク4の油は、後述する供給部20(図2参照)によって低段側圧縮機5に供給される。低段側圧縮機5の油は、高段側圧縮機7を介して貯油タンク4に戻る。貯油タンク4で貯留可能な油量は、圧縮機5,7の各最大油量よりも大きいことが好ましい。
【0016】
本実施形態において、貯油タンク4は、低圧の冷媒が流れる冷媒配管L1と接続され、気液二相状態の冷媒から液冷媒を分離して一時的に蓄える。これにより、液冷媒が低段側圧縮機5に流れることを抑制できる。貯油タンク4に一時的に蓄えられた液冷媒は、貯油タンク4内でガス冷媒となり、低段側圧縮機5に吸入される。低圧の冷媒とは、熱源側熱交換器9又は利用側熱交換器15を通過した後で、且つ、低段側圧縮機5に吸入される前の冷媒を意味する。なお、冷媒配管L1は、貯油タンク4を介さず低段側圧縮機5に直接接続されていてもよい。
【0017】
圧縮機は、低段側圧縮機5と高段側圧縮機7とで二段階に冷媒を圧縮する二段圧縮機である。圧縮機5,7は、例えば、レシプロ圧縮機、ロータリ圧縮機、スクリュー圧縮機やスクロール圧縮機などである。各圧縮機5,7の内部には、油が充填されている。本実施形態において、各圧縮機5,7の内部には、油が均等に充填されているが、これに限られない。
【0018】
中間冷却器6は、低段側圧縮機5と高段側圧縮機7との間に配置されている。低段側圧縮機5で圧縮された中間圧のガス冷媒が中間冷却器6で冷却され、高段側圧縮機7でさらに圧縮される。中間冷却器6の近傍には、冷却ファン6aが配置されている。中間冷却器6は、その内部を流れる冷媒と、冷却ファン6aから送り込まれる熱源側(例えば、室外)の空気と、を熱交換させている。なお、空気調和機1は、中間冷却器6を備えない、という構成であってもよい。
【0019】
四方弁8は、空気調和機1の運転モードに応じて冷媒の流路を切り替える弁である。四方弁8は、冷媒配管L4の流路を切り替えている。冷媒配管L4は、高段側圧縮機7で圧縮された冷媒が流れている。四方弁8は、冷媒配管L4の流路を、冷房運転時(図1の実線矢印)に熱源側熱交換器9側に切り替え、暖房運転時(図1の点線矢印)に利用側熱交換器15側に切り替えている。
【0020】
熱源側熱交換器9は、その内部を流れる冷媒と、熱源側ファン10から送り込まれる熱源側の空気と、を熱交換させている。熱源側ファン10は、熱源側熱交換器9に熱源側の空気を送り込むファンであり、熱源側熱交換器9の近傍に配置されている。
【0021】
熱源側膨張弁11は、凝縮器(熱源側熱交換器9及び利用側熱交換器15の一方)で凝縮した冷媒を減圧する弁である。熱源側膨張弁11で減圧された液冷媒が、蒸発器(熱源側熱交換器9及び利用側熱交換器15の他方)に向かうようになっている。利用側膨張弁14も熱源側膨張弁11と同様の機能を有している。
【0022】
気液分離器12では、気液二相状態の冷媒を気液分離している。気液分離器12で分離された液冷媒は、暖房運転時に熱源側膨張弁11を経由して熱源側熱交換器9に流れ、冷房運転時に利用側膨張弁14を経由して利用側熱交換器15に流れる。気液分離器12で分離されたガス冷媒は、冷媒配管L3を通って高段側圧縮機7に吸入される。これにより、低段側圧縮機5で圧縮するガス冷媒の量を減らすことができ、低段側圧縮機5の消費電力を抑えることができる。
【0023】
気液分離器12と熱源側膨張弁11とを接続する冷媒配管L6には、複数(2つ)の逆止弁13が配置されている。また、気液分離器12と利用側膨張弁14とを接続する冷媒配管L7には、複数(2つ)の逆止弁13が配置されている。複数(4つ)の逆止弁13をそれぞれ第1~第4逆止弁13a~13dとする。
【0024】
第1逆止弁13aは、熱源側膨張弁11側から気液分離器12に向かう冷媒配管L6aに気液分離器12側が流出側となるように配置されている。第2逆止弁13bは、気液分離器12から利用側膨張弁14側に向かう冷媒配管L7aに利用側膨張弁14側が流出側となるように配置されている。第3逆止弁13cは、利用側膨張弁14側から気液分離器12に向かう冷媒配管L7bに気液分離器12側が流出側となるように配置されている。第4逆止弁13dは、気液分離器12から熱源側膨張弁11側に向かう冷媒配管L6bに熱源側膨張弁11側が流出側となるように配置されている。
【0025】
冷房運転時には、熱源側膨張弁11から流れてきた気液二相状態の冷媒が第1逆止弁13aを通って気液分離器12に流入する。そして、気液分離器12で分離された液冷媒が低圧側の第2逆止弁13bを通って利用側膨張弁14に流れる。暖房運転時には、利用側膨張弁14から流れてきた気液二相状態の冷媒が第3逆止弁13cを通って気液分離器12に流入する。そして、気液分離器12で分離された液冷媒が低圧側の第4逆止弁13dを通って熱源側膨張弁11に流れる。これにより、冷房運転及び暖房運転のどちらでも気液分離器12によって気液二相状態の冷媒を気液分離することができる。
【0026】
利用側熱交換器15は、その内部を流れる冷媒と、利用側ファン16から送り込まれる利用側(例えば、室内)の空気と、を熱交換させている。利用側ファン16は、利用側熱交換器15に利用側の空気を送り込むファンであり、利用側熱交換器15の近傍に配置されている。
【0027】
冷媒は、二酸化炭素冷媒であるが、これに限られない。例えば、冷媒は、フロン系冷媒や炭化水素系冷媒など他の種類の冷媒であってもよい。二酸化炭素冷媒は、二酸化炭素と他の物質とを混合した混合冷媒も含む。
【0028】
図1の実線矢印が冷房運転時における冷媒の流れを示している。空気調和機1の冷房運転では、高段側圧縮機7から吐出された冷媒は、四方弁8を通って熱源側熱交換器9へ流入し、熱交換により空気又は水へ放熱して凝縮される。高段側圧縮機7から吐出された高圧のガス冷媒は、熱源側熱交換器9での熱交換により高圧の液冷媒となる。高圧の液冷媒は、熱源側膨張弁11を通過する際に、熱源側膨張弁11の開度に応じて減圧される。
【0029】
熱源側膨張弁11の開度が大きければ少なく減圧され、熱源側膨張弁11の開度が小さければ大きく減圧される。冷房運転時には、熱源側膨張弁11は全開状態とされる場合もある。熱源側膨張弁11により減圧された液冷媒は、気液分離器12及び冷媒配管L8を経由し、利用ユニット3に流れる。
【0030】
利用ユニット3に流れた低圧の液冷媒(又は気液二相状態の冷媒)は、さらに利用側膨張弁14を通過する際に減圧され、利用側熱交換器15に流入する。利用側熱交換器15に流入した低圧の気液二相状態の冷媒は、室内空気と熱交換を行うことによって吸熱し冷房が行われ、蒸発して低圧のガス冷媒となる。低圧のガス冷媒は、冷媒配管L9を経由して熱源ユニット2に流れ、四方弁8及び貯油タンク4を経由して、低段側圧縮機5に流入する。低段側圧縮機5から吐出されたガス冷媒は、中間冷却器6を経由して高段側圧縮機7に流入する。
【0031】
図1の点線矢印が暖房運転時における冷媒の流れを示している。空気調和機1の暖房運転では、高段側圧縮機7から吐出された冷媒は、四方弁8及び冷媒配管L9を経由して利用ユニット3に流れる。利用ユニット3に流れた高圧のガス冷媒は、利用側熱交換器15において、外部の室内空気と熱交換し放熱し、暖房が行われる。利用側熱交換器15での熱交換により、高圧のガス冷媒は放熱して凝縮して高圧の液冷媒となる。高圧の液冷媒は、利用側膨張弁14を通過する際に、利用側膨張弁14の開度に応じて減圧される。なお、利用側膨張弁14は全開状態とされる場合もある。
【0032】
利用側膨張弁14を通過した冷媒は、冷媒配管L8を経由して熱源ユニット2に流れる。熱源ユニット2に流れた液冷媒は、気液分離器12を経由して熱源側膨張弁11を通過する際に開度に応じてさらに減圧され、熱源側熱交換器9に流入する。熱源側熱交換器9に流入した低圧の気液二相状態の冷媒は、外部の空気又は水から吸熱して蒸発する。これにより、低圧の気液二相状態の冷媒は低圧のガス冷媒となる。低圧のガス冷媒は、四方弁8及び貯油タンク4を経由して、低段側圧縮機5に流入する。低段側圧縮機5から吐出されたガス冷媒は、中間冷却器6を経由して高段側圧縮機7に流入する。
【0033】
次に、貯油タンク4、低段側圧縮機5及び高段側圧縮機7の油配管について図2を参照しながら説明する。図2は、第1実施形態に係る空気調和機1の油の流れを示す図である。図2において、破線矢印は油の流れを示し、実線矢印は冷媒の流れを示している。
【0034】
図2に示すように、空気調和機1は、貯油タンク4の油OLを低段側圧縮機5に供給する(流入させる)供給部20と、低段側圧縮機5の余剰な油OLをオーバーフローさせて高段側圧縮機7に供給する(流入させる)第1配管21と、高段側圧縮機7の余剰な油OLをオーバーフローさせて貯油タンク4に戻す第2配管22と、を備えている。斯かる構成によれば、低段側圧縮機5及び高段側圧縮機7の余剰な油OLをオーバーフローさせて貯油タンク4に戻すことができる。また、低段側圧縮機5は貯油タンク4から油OLが供給され、高段側圧縮機7は低段側圧縮機5からオーバーフローした油OLが供給される。これにより、圧縮機5,7の各油量を一定に保つことができる。その結果、圧縮機5,7の一方に油OLが偏り、他方の油OLが不足することを抑制できる。
【0035】
供給部20は、貯油タンク4内の油OLとガス冷媒とを低段側圧縮機5に供給する(流入させる)第3配管201と、貯油タンク4の内部に配置されるU字管202と、を備える。U字管202は、一端202aが第3配管201と接続され、他端202bが貯油タンク4内で開口している。U字管202は、U字状に形成された管のみならず、V字状や一部が角張った略U字状の管も含む。
【0036】
U字管202は、他端202bよりも下側に設けられた貫通孔202cを備える。斯かる構成によれば、貯油タンク4に貯まった油OLの油面が貫通孔202cよりも上に位置する場合、油OLがU字管202の内部に浸入する。その際、U字管202の他端202bから低段側圧縮機5に向かって流れるガス冷媒によってU字管202の内部に浸入した油OLが低段側圧縮機5に供給される。貫通孔202cは、U字管202の下端側に設けられていることが好ましい。貫通孔202cの位置、大きさ、配置数などによって、低段側圧縮機5に供給される油の流量を調整することができる。
【0037】
第1配管21は、第1オーバーフロー管211を備えている。第1オーバーフロー管211は、低段側圧縮機5の内部に配置されている。本実施形態において、第1オーバーフロー管211は、低段側圧縮機5の側部から挿通され、低段側圧縮機5の内部において上下方向に対して傾斜して配置されている。第1オーバーフロー管211は、低段側圧縮機5の内部で屈曲している。なお、第1オーバーフロー管211は、これに限られず、例えば、低段側圧縮機5の底部から挿通される直管であり、低段側圧縮機5の内部において上下方向に沿って配置されている、という構成であってもよい。
【0038】
第1配管21は、低段側圧縮機5で圧縮されたガス冷媒が流れる(吐出される)冷媒配管L2及び気液分離器12(図1参照)で分離されたガス冷媒が流れる冷媒配管L3のうち少なくとも一方と接続されていることが好ましい。これにより、第1オーバーフロー管211から排出された油がガス冷媒の流れによって高段側圧縮機7に供給される(流入する)。本実施形態においては、第1配管21は、冷媒配管L2及び冷媒配管L3の両方と接続されている。なお、第1配管21は、冷媒配管L2及び冷媒配管L3と接続されていなくてもよい。この場合、第1配管21内の油を高段側圧縮機7に輸送する輸送手段(例えば、ポンプなど)が必要となる。
【0039】
冷媒配管L2は、一端が低段側圧縮機5の上部に接続され、他端が第1配管21又は冷媒配管L3と接続されている。冷媒配管L2の途中には、中間冷却器6が設けられている。冷媒配管L3は、一端が気液分離器12に接続され、他端が第1配管21又は冷媒配管L2と接続されている。
【0040】
第2配管22は、貯油タンク4と接続されている。本実施形態において、第2配管22は、冷媒配管L1を介して貯油タンク4と接続されているが、これに限られない。例えば、第2配管22は、貯油タンク4に直接接続されていてもよい。
【0041】
第2配管22は、第2オーバーフロー管221を備えている。第2オーバーフロー管221は、高段側圧縮機7の内部に配置されている。本実施形態において、第2オーバーフロー管221は、高段側圧縮機7の側部から挿通され、高段側圧縮機7の内部において上下方向に対して傾斜して配置されている。第2オーバーフロー管221は、高段側圧縮機7の内部で屈曲している。なお、第2オーバーフロー管221は、これに限られず、例えば、高段側圧縮機7の底部から挿通される直管であり、高段側圧縮機7の内部において上下方向に沿って配置されている、という構成であってもよい。第2オーバーフロー管221から排出された油は、圧力差によって低圧側の貯油タンク4に流れる(戻る)。
【0042】
本実施形態において、第2オーバーフロー管221の形状や大きさは、第1オーバーフロー管211の形状や大きさと実質的に同じであるが、これに限られない。
【0043】
第2配管22には、油の流量を減じる固定抵抗222が設けられていることが好ましい。これにより、第2配管22の圧力を下げることができ、第2オーバーフロー管221にガス冷媒が浸入することを抑制できる。固定抵抗222は、例えば、キャピラリチューブである。
【0044】
高段側圧縮機7で圧縮されたガス冷媒が流れる(吐出される)冷媒配管L4は、一端が高段側圧縮機7の上部に接続され、他端が四方弁8(図1参照)に接続されている。
【0045】
[第2実施形態]
次に、図3を参照して、冷凍サイクル装置の一例である空気調和機1の第2実施形態について説明する。第1実施形態と同様の構成については、説明を省略し、主に相違点を説明する。第1実施形態で既に説明した構成には、同一の符号を付している。図3は、第2実施形態に係る空気調和機1の油の流れを示す図である。図3において、破線矢印は油の流れを示し、実線矢印は冷媒の流れを示している。
【0046】
図3に示すように、空気調和機1は、高段側圧縮機7で圧縮された冷媒が流れる(吐出される)冷媒配管L5と、冷媒配管L5と接続される油分離器23と、を備える。油分離器23は、冷媒配管L5を流れるガス冷媒から油を、例えば、重力で分離している。本実施形態において、冷媒配管L5は、第2配管22を介して油分離器23と接続している。油分離器23は、高段側圧縮機7と貯油タンク4との間に配置されている。なお、冷媒配管L5及び第2配管22は、例えば、油分離器23と別々に接続されていてもよい。また、第2配管22は、例えば、油分離器23と非接続であってもよい。
【0047】
油分離器23は、内部の油が空の状態であることが好ましい。これにより、ガス冷媒によって油分離器23内の油が巻き上げられ、ガス冷媒と共に油が熱源側熱交換器9(利用側熱交換器15)に流入することを抑制できる。固定抵抗222は、油分離器23よりも貯油タンク4側に配置されている。固定抵抗222における油の戻し量を供給部20における低段側圧縮機5への油の供給量よりも大きくすると、油分離器23内の油が常に空の状態となる。
【0048】
冷媒配管L5は、一端が高段側圧縮機7の上部に接続され、他端が油分離器23より高段側圧縮機7側で第2配管22と接続されている。これにより、第2オーバーフロー管221から排出された油を冷媒の流れによって油分離器23に流入させることができる。本実施形態において、冷媒配管L4は、一端が油分離器23の上部に接続され、他端が四方弁8と接続されている。
【0049】
[1]
以上のように、本開示の冷凍サイクル装置は、油が貯留される貯油タンク4と、冷媒を圧縮する低段側圧縮機5及び高段側圧縮機7と、貯油タンク4の油を低段側圧縮機5に供給する供給部20と、低段側圧縮機5の余剰な油をオーバーフローさせて高段側圧縮機7に供給する第1配管21と、高段側圧縮機7の余剰な油をオーバーフローさせて貯油タンク4に戻す第2配管22と、を備える。
【0050】
斯かる構成によれば、低段側圧縮機5及び高段側圧縮機7の余剰な油をオーバーフローさせて貯油タンク4に戻すことができる。また、低段側圧縮機5は貯油タンク4から油が供給され、高段側圧縮機7は低段側圧縮機5からオーバーフローした油が供給される。これにより、圧縮機5,7の各油量を一定に保つことができる。
【0051】
[2]
上記[1]の冷凍サイクル装置において、貯油タンク4は、低圧の冷媒が流れる冷媒配管L1と接続され、供給部20は、貯油タンク4内の油と冷媒(ガス冷媒)とを低段側圧縮機5に供給する第3配管201と、貯油タンク4内に配置されるU字管202と、を備え、U字管202は、一端202aが第3配管201と接続され、他端202bが貯油タンク4内で開口し、U字管202は、他端202bよりも下側に設けられた貫通孔202cを備える、という構成が好ましい。
【0052】
斯かる構成によれば、貯油タンク4に貯まった油の油面が貫通孔202cよりも上に位置する場合、油がU字管202の内部に浸入する。その際、U字管202の他端202bから低段側圧縮機5に向かって流れるガス冷媒によってU字管202の油が低段側圧縮機5に供給される。これにより、各圧縮機5,7に充填された油が不足している場合、即ち、貯油タンク4に油が溜まっている場合、各圧縮機5,7に油を供給することができ、各圧縮機5,7の油が不足することを抑制できる。
【0053】
[3]
上記[1]又は[2]の冷凍サイクル装置は、高段側圧縮機7で圧縮された冷媒が流れる冷媒配管L5と、冷媒配管L5と接続される油分離器23と、を備える、という構成が好ましい。
【0054】
斯かる構成によれば、ガス冷媒によって巻き上げられた油を油分離器23で分離することができる。これにより、熱源側熱交換器9又は利用側熱交換器15に油が浸入することを抑制できる。
【0055】
[4]
上記[1]~[3]の何れか1つの冷凍サイクル装置において、冷媒は、二酸化炭素冷媒である、という構成が好ましい。
【0056】
斯かる構成によれば、地球温暖化係数(GWP)の小さい二酸化炭素冷媒とすることによって、環境負荷を小さくすることができる。また、複数の圧縮機5,7を用いることで、フロン系冷媒(例えば、R32)と比べ必要エネルギー量の多い二酸化炭素冷媒の性能を確保することができる。
【0057】
なお、冷凍サイクル装置は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、冷凍サイクル装置は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0058】
(A)本実施形態において、供給部20は、U字管202を備える、という構成であるが、これに限られない。例えば、供給部20は、U字管202を備えず、低段側圧縮機5に油を供給する供給ポンプを備える、という構成であってもよい。斯かる構成においては、低段側圧縮機5に冷媒を供給する冷媒配管と油を供給する油配管とが別々に設けられている。
【0059】
(B)本実施形態において、空気調和機1は、気液分離器12を備える、という構成であるが、これに限られない。例えば、図4に示すように、空気調和機1は、エコノマイザ17(過冷却器17ともいう)を備える、という構成であってもよい。斯かる構成において、空気調和機1は、気液分離器12及び逆止弁13を備えていない。
【0060】
エコノマイザ17は、図1の気液分離器12と同等の位置に配置されている。即ち、エコノマイザ17は、熱源側膨張弁11と利用側膨張弁14とを接続する冷媒配管の途中に配置され、冷媒配管L3と接続されている。熱源側膨張弁11とエコノマイザ17とを接続する冷媒配管L10には、エコノマイザ17と接続される冷媒配管L11が接続されている。冷媒配管L11には、冷媒配管L11を流れる冷媒を減圧するバイパス膨張弁18が設けられている。
【0061】
冷媒配管L8,L10のうち一方から流入した冷媒がエコノマイザ17によって過冷却され、他方に流れる。そして、冷媒配管L10から冷媒配管L11に流れた冷媒がバイパス膨張弁18により減圧され、エコノマイザ17に流入する。これにより、冷媒配管L8,L10のうち一方から流入した冷媒とバイパス膨張弁18により減圧された冷媒との間で熱交換され、バイパス膨張弁18により減圧された冷媒がガス冷媒となり、冷媒配管L3を通って高段側圧縮機7に流入する。
【符号の説明】
【0062】
1…空気調和機(冷凍サイクル装置)、2…熱源ユニット、3…利用ユニット、4…貯油タンク、5…低段側圧縮機、6…中間冷却器、6a…冷却ファン、7…高段側圧縮機、8…四方弁、9…熱源側熱交換器、10…熱源側ファン、11…熱源側膨張弁、12…気液分離器、13…逆止弁、14…利用側膨張弁、15…利用側熱交換器、16…利用側ファン、17…エコノマイザ、18…バイパス膨張弁、20…供給部、201…第3配管、202…U字管、202c…貫通孔、21…第1配管、211…第1オーバーフロー管、22…第2配管、221…第2オーバーフロー管、222…固定抵抗、23…油分離器
図1
図2
図3
図4