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特許7542597映像合成装置、無人移動体、および映像合成表示システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】映像合成装置、無人移動体、および映像合成表示システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20240823BHJP
   H04N 23/63 20230101ALI20240823BHJP
   B64U 10/13 20230101ALI20240823BHJP
   B64U 20/87 20230101ALI20240823BHJP
   G08G 5/00 20060101ALI20240823BHJP
   B64U 101/30 20230101ALN20240823BHJP
【FI】
H04N7/18 U
H04N23/63 300
B64U10/13
B64U20/87
G08G5/00 A
B64U101:30
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022209131
(22)【出願日】2022-12-27
(65)【公開番号】P2024093034
(43)【公開日】2024-07-09
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】397036309
【氏名又は名称】株式会社インターネットイニシアティブ
(73)【特許権者】
【識別番号】521092351
【氏名又は名称】吉野 裕仁
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末永 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】新 麗
(72)【発明者】
【氏名】島津 佳裕
(72)【発明者】
【氏名】吉野 裕仁
【審査官】塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-32958(JP,A)
【文献】特開2016-119627(JP,A)
【文献】国際公開第2019/012817(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0130830(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109656319(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111373743(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
H04N 23/63
B64U 10/13
B64U 20/87
G08G 5/00
B64U 101/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影する撮影方向が固定された固定カメラを備える操縦者システムから、前記固定カメラにより撮影される第1の映像および前記固定カメラの画角を取得する操縦者システム情報取得部と、
撮影する撮影方向が可変である可動カメラを備える利用者システムから、前記可動カメラが指向する指向方向を取得する利用者システム情報取得部と、
その取得された可動カメラの指向方向がその取得された固定カメラの画角の範囲内か否かを判定して画角判定結果を出力する画角判定部と、
その出力された画角判定結果に応じて、その取得された第1の映像と前記可動カメラが撮影するオブジェクトに関するオブジェクト情報とを重畳して合成映像を生成する重畳部と、
を備える映像合成装置。
【請求項2】
前記重畳部は、前記可動カメラの指向方向が前記固定カメラの画角の範囲内であることを前記画角判定結果が示す場合、前記オブジェクト情報として、前記可動カメラにより撮影される映像を重畳する、
請求項1に記載された映像合成装置。
【請求項3】
前記利用者システム情報取得部は、前記利用者システムから、前記可動カメラにより撮影される映像が表示される画面上の位置を示す位置情報を更に取得し、
前記重畳部は、前記オブジェクト情報として、前記位置情報により示される位置に相当する表示領域上の位置に、ポインタを更に重畳する、
請求項2に記載された映像合成装置。
【請求項4】
前記利用者システム情報取得部は、特定の時刻を指定するタイミング信号を前記利用者システムから更に取得し、
前記重畳部は、前記可動カメラの指向方向が前記固定カメラの画角の範囲内であることを前記画角判定結果が示す場合、前記オブジェクト情報として、前記可動カメラにより撮影される映像の前記特定の時刻におけるフレーム画像を重畳する、
請求項1に記載された映像合成装置。
【請求項5】
前記利用者システム情報取得部は、前記利用者システムから、前記第1の映像と重畳するための重畳用資料を更に取得し、
前記重畳部は、前記可動カメラの指向方向が前記固定カメラの画角の範囲内であることを前記画角判定結果が示す場合、前記オブジェクト情報として、その取得された重畳用資料を重畳する、
請求項1に記載された映像合成装置。
【請求項6】
前記重畳部は、前記可動カメラの指向方向が前記固定カメラの画角の範囲内であることを前記画角判定結果が示す場合、前記オブジェクト情報として、前記可動カメラの指向方向を示す第1のインジケータを重畳する、
請求項1に記載された映像合成装置。
【請求項7】
前記重畳部は、前記可動カメラの指向方向が前記固定カメラの画角の範囲内でないことを前記画角判定結果が示す場合、前記オブジェクト情報として、前記可動カメラの指向方向を示す第2のインジケータを重畳する、
請求項1に記載された映像合成装置。
【請求項8】
前記操縦者システム情報取得部は、映像の合成を行うか否かを示す合成肯否情報を前記操縦者システムから更に取得し、
前記重畳部は、
その取得された合成肯否情報が映像の合成を行うことを示す場合、前記合成を行い、
前記取得された合成肯否情報が映像の合成を行わないことを示す場合、前記取得された第1の映像と前記オブジェクト情報とを重畳せずに、前記取得された第1の映像を出力する、
請求項1から7のいずれか1項に記載された映像合成装置。
【請求項9】
前記固定カメラと、
前記可動カメラと、
請求項1から7のいずれか1項に記載された映像合成装置と、
を備える無人移動体。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか1項に記載された映像合成装置と、
前記映像合成装置により生成された合成映像を表示する表示装置と、
を備える映像合成表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、映像合成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
地震や洪水により被災した場所における救助や復興のため、ドローンやローバ等の無人移動体を活用した活動への期待が寄せられている。このような活動に利用しうる技術として、例えば特許文献1に開示されている無人航空機を活用することが考えられる。特許文献1には、無人航空機の進行方向の映像を撮影可能な固定カメラと、固定カメラとは異なる映像を撮影可能な可動カメラと、を備える無人航空機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6721098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の無人航空機を活用する場合、操縦者が無人航空機を操縦し、指示者が操縦者に対して無人航空機を飛行させたい方向や高度等に関する飛行指示を与えるという利用形態が考えられる。このような利用形態は、2人以上の者により運用されるシステムであるので、以下では2オペレーションシステムと称する場合がある。
【0005】
このような2オペレーションシステムによる場合、固定カメラにより撮影された映像を操縦者用のディスプレイに表示するとともに、可動カメラにより撮影された映像を指示者用のディスプレイに表示することが考えられる。
【0006】
しかしながら、固定カメラと可動カメラにより撮影される対象が異なるので、指示者が操縦者に対して飛行指示を適切に与えることが困難である。
【0007】
このような困難性を解消するために、可動カメラが固定カメラと同一の方向を向くようにすることが考えられる。具体的には、可動カメラに対してリセット信号を送信して可動カメラが正面を向くようにさせることが考えられるが、飛行指示を与える度にいちいちリセット信号を送信することは煩雑であるという課題がある。
【0008】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、無人移動体の2オペレーションシステムにおいて、指示者が操縦者に対して無人移動体の移動方向に関する指示を容易に与えることが可能となるような映像合成技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の実施形態による映像合成装置の一側面は、撮影する撮影方向が固定された固定カメラを備える操縦者システムから、前記固定カメラにより撮影される第1の映像および前記固定カメラの画角を取得する操縦者システム情報取得部と、撮影する撮影方向が可変である可動カメラを備える利用者システムから、前記可動カメラが指向する指向方向を取得する利用者システム情報取得部と、その取得された可動カメラの指向方向がその取得された固定カメラの画角の範囲内か否かを判定して画角判定結果を出力する画角判定部と、その出力された画角判定結果に応じて、その取得された第1の映像と前記可動カメラが撮影するオブジェクトに関するオブジェクト情報とを重畳して合成映像を生成する重畳部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の実施形態による映像合成装置によれば、操縦者に提示するための映像として、固定カメラにより撮影される映像と可動カメラが撮影するオブジェクトに関するオブジェクト情報とを重畳して合成映像を生成する。したがって、操縦者は、固定カメラの映像だけでなく、可動カメラが撮影するオブジェクトに関するオブジェクト情報をも確認できるので、指示者が操縦者に対して無人移動体の移動方向に関する指示を容易に与えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】無人移動体を含むシステムの構成例を示す図である。
図2】映像合成装置を備える無人移動体のシステムの構成例を示す図である。
図3】映像合成装置のハードウェアの構成例を示す図である。
図4】映像合成装置の動作例を示す図である。図4Aは、指示者用画面に表示される映像の例を示す図である。図4Bは、操縦者用画面に表示される映像の例を示す図である。
図5】映像合成装置の動作例を示す図である。図5Aは、指示者用画面に表示される重畳用資料の例を示す図である。図5Bは、操縦者用画面に表示される映像の例を示す図である。
図6】映像合成装置の動作例を示す図である。操縦者用画面に表示される映像の例を示す図である。
図7】映像合成装置の動作例を示す図である。操縦者用画面に表示される映像の例を示す図である。
図8】映像合成方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して、本開示における種々の実施形態について詳細に説明する。なお、図面において同一または類似の符号を付された構成要素は、同一または類似の構成または機能を有するものであり、そのような構成要素についての重複する説明は省略する。
【0013】
<システム構成>
図1および図2を参照して、本開示の実施形態による無人移動体を含むシステムの全体的構成、および無人移動体に係るシステムの概略について説明をする。図1は、無人移動体が空中を飛行するドローン2である場合のシステムの構成例を示す図である。無人移動体は、ドローン2以外にも、例えば地上を走行する不図示のローバや、水中を移動する不図示の水中ドローンであってもよい。ドローン2には、操縦者P1の用に供される固定カメラ215が搭載されている。また、ドローン2には、主に指示者P2の用に供され、操縦者P1の用にも供される可動カメラ222が搭載されている。
【0014】
また、図2に示されているように、ドローン2には、固定カメラ215を備える操縦者システム21、可動カメラ222を備える利用者システム22、映像合成装置23、および送信機24が搭載されている。映像合成装置23により生成された合成映像は、一例として、送信機24により送信される。
【0015】
リモートコントローラ1は、操縦者P1により操作され、ドローン2の飛行に関する操作信号を無線ネットワークN1を介して送信する。
【0016】
また、リモートコントローラ1は、固定カメラ215により撮影される映像と、可動カメラ222が撮影するオブジェクトに関するオブジェクト情報とを重畳するかどうかを示す合成肯否情報をユーザ操作に基づいて受け付け、受け付けた重畳肯否情報を無線ネットワークN1を介して送信する。操縦者P1による重畳肯否情報の入力は、例えば、リモートコントローラ1に設けられるメカニカルスイッチにより行われるが、ソフトウェアキーまたは音声入力により行われてもよい。
【0017】
また、図1に示されているように、リモートコントローラ1は、一例として、映像合成装置23により生成された合成映像を表示するための表示装置を備える。表示装置は、リモートコントローラ1と一体である必要はなく、例えば、操縦者P1が装着して用いる不図示のヘッドマウンとして実現されていてもよい。
【0018】
操作端末3は、例えばタッチセンサを備えた表示装置である。指示者P2は、操作端末3を操作して、ドローン2に搭載された可動カメラ222の向きに関する指示(操作信号とも称する。)を与える。操作端末3は、可動カメラ222の向きに関する指示を受け付けて、受け付けた指示に従った信号を無線ネットワークN2を介して送信するとともに、可動カメラ222により撮影された映像を無線ネットワークN2を介して受信して、受信した映像を操作端末3の表示部に表示する。なお、操作端末3から送信された信号はドローン2に搭載された送受信器223により受信され、操作端末3が受信する信号は送受信器223から送信される。
【0019】
また、操作端末3は、ユーザ操作に基づいて、指示者P2の表示画面上のタッチ位置を取得して、取得したタッチ位置をドローン2に向けて送信してもよい。
【0020】
また、操作端末3は、ユーザ操作に基づいて、操縦者P1に提示したいテキストファイルまたは画像ファイルなどの重畳用資料をドローン2に向けて送信してもよい。以下、操作端末3からドローン2に送信される重畳用資料を、「送信資料」と称する場合がある。なお、重畳用資料は、ドローン2が離陸する前に、メモリ200へアップロードしておいてもよい。
【0021】
また、操作端末3は、ユーザ操作に基づいて、操作端末3に表示される映像の特定のフレーム画像を指定するタイミング信号を受け付け、受け付けたタイミング信号をドローン2に向けて送信してもよい。
【0022】
また、指示者P2は、操縦者P1に対して、ドローン2に関する飛行指示を与える。飛行指示には、例えば、どの方向へ飛行させるかという方向に関する指示や、どれくらいの高さで飛行させるかという高度に関する指示が含まれる。指示者P2と操縦者P1が互いに近い距離に存在する場合、指示者P2は操縦者P1に対して飛行指示を直接口頭で与えてよい。指示者P2と操縦者P1が互いに離れた距離に存在する場合、指示者P2は操縦者P1に対して飛行指示を通信回線を介して与えてよい。
【0023】
操作端末3がドローン2から遠距離にあり電波が届かない場合、ドローン4およびドローン5のような中継機を介して通信を行ってもよい。また、地上設備として中継車6を備えてもよい。中継車6を安定した電源および通信路を確保できる場所に配置することにより、ドローン2に搭載されたカメラにより撮影された映像をクラウド7へ中継して、クラウド7上で中継された画像を録画してもよい。
【0024】
<ドローンの構成>
次に、図2を参照して、無人移動体としてのドローン2の構成について説明をする。図2に示されているように、ドローン2は、一例として、操縦者システム21、利用者システム22、映像合成装置23、および送信機24を備える。操縦者システム21は、ドローン2の操縦、即ちドローン2自体の移動を司るシステムである。利用者システム22は、ドローン2に搭載される特別の装置に関する処理を司るシステムであり、本実施形態では可動カメラ222により撮影される映像に関する処理を行う。利用者システム22が操縦者システム21と干渉してドローン2の飛行に影響を与えないようにするため、操縦者システム21と利用者システム22は独立したシステムとして構成されている。
【0025】
(操縦者システム)
操縦者システム21は、一例として、フライトコントローラ211、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機212、コンパス213、高度計214、固定カメラ215、受信機216、およびESC(Electronic Speed Controller)217を備える。なお、ESC217は、モータ等の不図示のアクチュエータの数だけ備えられる。フライトコントローラ211は、制御部2111および入出力部2112を備える。
【0026】
受信機216は、リモートコントローラ1から送信されたドローン2の操作信号を受信する。操作信号の例には、ドローン2の飛行姿勢に関する信号および飛行速度に関する信号が含まれる。操作信号には、受信機216は、受信した操作信号をフライトコントローラ211へ出力する。
【0027】
フライトコントローラ211は、GNSS受信機212、コンパス213、および高度計214等のセンサ機器から出力されるセンシングデータに基づいて、ドローン2の位置および姿勢を安定させる。このような機能を実現するために、フライトコントローラ211は、制御部2111および入出力部2112を備える。入出力部2112がセンサ機器から出力されるセンシングデータを取得して、制御部2111が取得したセンシングデータに基づいて公知の演算を行ってESC217を制御する制御信号を算出し、入出力部2112が算出された制御信号を出力する。また、フライトコントローラ211は、操作信号に従った飛行をするように、ESC217へ制御信号を出力する。ESC217は不図示のアクチュエータに電気的に接続されており、入出力部2112から出力された制御信号に応じてアクチュエータの回転数を制御する。なお、位置の特定は、GNSS受信機212を用いて行うことに代えて、またはGNSS受信機212を用いて行うとともに、ミリ波レーダ、LIDAR(Light Detection and Ranging)等の他の位置特定法を用いて行ってもよい。
【0028】
また、入出力部2112は、固定カメラ215が撮影した映像を取得して、取得した映像を映像合成装置23へ出力する。
【0029】
(利用者システム)
利用者システム22は、制御装置221、可動カメラ222、および送受信機223を備える。制御装置221は、制御部2211および入出力部2212を備える。
【0030】
送受信機223は、操作端末3から送信される可動カメラ222に関する操作信号を受信して、受信した操作信号を出力する。入出力部2212は出力された操作信号を受け付け、制御部2211は受け付けられた操作信号に従って可動カメラ222の方向を制御する。
【0031】
また、送受信機223は、操作端末3から送信された画像ファイル等の送信資料を受信した場合、受信した送信資料を制御装置221へ出力する。
【0032】
また、送受信機223は、操作端末3から送信されたタイミング信号を受信した場合、受信したタイミング信号を制御装置221へ出力する。
【0033】
また、制御装置221は、可動カメラ222により撮影された映像を可動カメラ222から取得して、取得した映像を送受信機223および映像合成装置23へ出力する。送受信機223へ出力された映像は、無線ネットワークN2を介して操作端末3へ送信され、操作端末3上に表示される。
【0034】
また、制御装置221は、送受信機223から画像ファイル等の送信資料を受信した場合、受信した送信資料を映像合成装置23へ出力する。
【0035】
また、制御装置221は、送受信機223からタイミング信号を受信した場合、受信したタイミング信号を映像合成装置23へ出力する。
【0036】
(映像合成装置)
映像合成装置23は、操縦者システム21から操縦者システム情報を取得するとともに、利用者システム22から利用者システム情報を取得して、取得した操縦者システム情報および利用者システム情報に基づいて、固定カメラ215により撮影される映像(第1の映像)と、可動カメラ222により撮影されるオブジェクトに関するオブジェクト情報とを重畳して合成映像を生成する装置である。このような目的を達成するために、映像合成装置23は、図2に示されているように、操縦者システム情報取得部231、利用者システム情報取得部232、および合成部233を備える。また、合成部233は、画角判定部2331および重畳部2332を備える。以下、映像合成装置23が備える各機能部について説明をする。
【0037】
(操縦者システム情報取得部)
操縦者システム情報取得部231は、操縦者システム21から、操縦者システム情報を取得する。操縦者システム情報の例には、合成肯否情報、固定カメラ215の画角、および固定カメラ215により撮影された映像が含まれる。操縦者システム情報取得部231は、取得したこれらの情報を合成部233へ伝送する。
【0038】
(利用者システム情報取得部)
利用者システム情報取得部232は、利用者システム22から、利用者システム情報を取得する。利用者システム情報の例には、可動カメラ222が指向する指向方向、可動カメラ222により撮影された映像、送信資料(重畳用資料)、タイミング信号が含まれる。利用者システム情報取得部232は、取得したこれらの情報を合成部233へ伝送する。
【0039】
(画角判定部)
画角判定部2331は、可動カメラ222の指向方向が、固定カメラ215により撮影される映像の画角の範囲内であるか否かを判定し、判定の結果を画角判定結果として出力する。
【0040】
(重畳部)
重畳部2332は、合成肯否情報が示す内容および画角判定部2331の判定結果に応じて、固定カメラ215により撮影される映像とオブジェクト情報とを公知技術に従って重畳して、重畳した映像を合成映像として出力する。オブジェクト情報には、例えば、可動カメラ222により撮影される映像、タッチ位置を示すポインタ、送信資料(重畳用資料)、可動カメラ222が向いている方向を示すインジケータ(I1、I2)が含まれる。
【0041】
重畳部2332は、合成肯否情報が合成の肯定を示す場合において、可動カメラ222の指向方向が固定カメラ215により撮影される映像の画角の範囲内であるとき、一例として、可動カメラ222により撮影される映像と固定カメラ215により撮影される映像とを重畳する。重畳により固定カメラ215により撮影される映像の視認性が害されないように、可動カメラ222の映像を重畳する位置は、固定カメラ215の映像11内における周辺、例えば表示領域12に配置するのが適切であると考えられる。具体的な配置箇所は、操縦者P1等の操縦者システム21を運用する者が最も適切であると考える位置を事前に決定した位置である。重畳により表示する位置の決定は、操縦者P1等の運用者が決定すべきことであるので、指示者P2は関わらない。
【0042】
このように、映像の合成をドローン2に搭載された映像合成装置23により行うことにより、操縦者P1向けの映像の遅延を最小限に抑えることが可能となる。なお、機体設計の制約がある場合、複数の映像を地上設備で集約して、合成結果を操縦者P1に提供してもよいが、地上設備を経由することによる追加の遅延に配慮することが重要となる。
【0043】
なお、指示者P2の操作端末3に表示するための可動カメラ222の映像31は、送受信機223から送信されて、操作端末3の表示画面に表示される。
【0044】
重畳する際、図4Aおよび図4Bに示されているように、ポインタPを更に重畳してもよい。ポインタPは、指示者P2がドローン2に近づいてもらいたいと考えるターゲットを示す情報である。このようにポインタPを重畳するために、利用者システム情報取得部232は、利用者システム22から、可動カメラ222により撮影される映像が表示される画面(例えば、操作端末3の表示画面)上において指示者P2が指定する位置を示す位置情報を取得する。このような位置情報は、例えば、指示者P2がタッチセンサを備える操作端末3の表示画面をタッチすることにより取得され、無線ネットワークN2を介して取得する。重畳部2332は、その位置情報により示される位置に相当する表示領域上の位置にポインタPを重畳する。すなわち、重畳部2332は、可動カメラ222により撮影される映像内において前記位置情報により示される位置にポインタPを重畳し、重畳した可動カメラ222の映像を固定カメラ215の映像内の所定の表示領域12に重畳する。
【0045】
なお、可動カメラ222により撮影される映像をリアルタイムで重畳するのでなく、タイミング信号で指定された時刻におけるフレーム画像を重畳してもよい。
【0046】
重畳部2332は、図5Aおよび図5Bに示されているように、可動カメラ222により撮影される映像に代えて、送信資料(重畳用資料)32を重畳してもよい。すなわち、重畳部2332は、合成肯否情報が合成の肯定を示す場合において、可動カメラ222の指向方向が固定カメラ215により撮影される映像の画角の範囲内であるとき、送信資料32を固定カメラ215により撮影される映像11内における所定の表示領域12に重畳してもよい。
【0047】
また、重畳部2332は、図6に示されているように、可動カメラ222が向いている方向(指向方向)を示すインジケータI1(第1のインジケータ)を重畳してもよい。すなわち、重畳部2332は、合成肯否情報が合成の肯定を示す場合において、可動カメラ222の指向方向が固定カメラ215により撮影される映像の画角の範囲内であるとき、インジケータI1と固定カメラ215により撮影される映像11とを重畳してもよい。インジケータI1の画像は、重畳部2332が、例えばメモリ200から取得する。
【0048】
固定カメラ215の搭載位置・画角・方向と、可動カメラ222の搭載位置・(サーボ位置がニュートラルの場合の)画角・方向の関係はドローン2の組立て時に物理形状の一部として定まる。この情報を予め登録しておき、登録した情報と、現在の可動カメラ222の方向(サーボモータの位置)の情報と組み合わせることで、固定カメラ215の画角内で可動カメラ222の方向がどこに位置するかを算出できる。
【0049】
また、可動カメラ222の指向方向が固定カメラ215により撮影される映像の画角の範囲内でないとき、重畳部2332は、図7に示されているように、可動カメラ222が向いている方向を示すインジケータであって、インジケータI1と異なるインジケータI2(第2のインジケータ)を重畳してもよい。すなわち、重畳部2332は、合成肯否情報が合成の肯定を示す場合において、可動カメラ222の指向方向が固定カメラ215により撮影される映像の画角の範囲内でないとき、インジケータI2と固定カメラ215により撮影される映像とを重畳してもよい。インジケータI2の画像は、重畳部2332が、例えばメモリ200から取得する。
【0050】
また、重畳部2332は、合成肯否情報が合成の否定を示す場合、固定カメラ215の映像とオブジェクト情報とを重畳せずに、固定カメラ215の映像を出力する。このようにオブジェクト情報を重畳しない機能が備えられることにより、オブジェクト情報の表示位置が操縦者P1の操縦を阻害しているような場合に、操縦者P1は合成しないことを選択することによりドローン2の操縦に専念することが可能となる。
【0051】
映像合成装置23は、一例として、合成された後の映像である合成映像を送信機24へ出力し、送信機24は出力された合成映像を送信する。他の例として、受信機216が送信機能も有する場合には、受信機216を介して合成映像を送信してもよい。リモートコントローラ1は、送信された合成映像を受信して、例えば、リモートコントローラ1の表示画面に表示する。
【0052】
次に、図3を参照して、映像合成装置23のハードウェアの構成例について説明をする。図3に示されているように、映像合成装置23は、プロセッサ100とメモリ200により実現される。メモリ200に格納されたプログラムがプロセッサ100に読み出されて実行されることにより、映像合成装置23が備える機能部が実現される。プログラムは、ソフトウェア、ファームウェアまたはソフトウェアとファームウェアとの組合せとして実現される。メモリ200の例には、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically-EPROM)などの不揮発性又は揮発性の半導体メモリが含まれる。
【0053】
<動作>
次に、図8を参照して、映像合成装置23の動作について説明する。ステップST1において、操縦者システム情報取得部231は、撮影する撮影方向が固定された固定カメラ215を備える操縦者システム21から、固定カメラ215により撮影される映像および固定カメラ215の画角を取得する。
【0054】
ステップST2において、利用者システム情報取得部232は、撮影する撮影方向が可変である可動カメラ222を備える利用者システム22から、可動カメラ222が指向する指向方向を取得する。なお、ステップST1とステップST2は順不同である。
【0055】
ステップST3において、画角判定部2331は、利用者システム情報取得部232により取得された可動カメラ222の指向方向が操縦者システム情報取得部231により取得された固定カメラ215の画角の範囲内か否かを判定し、判定の結果である画角判定結果を出力する。
【0056】
ステップST4において、重畳部2332は、出力された画角判定結果に応じて、取得された固定カメラ215の映像と可動カメラ222が撮影するオブジェクトに関するオブジェクト情報とを重畳して合成映像を生成する。生成された合成映像は送信機24により送信され、操縦者P1用の表示装置に表示される。
【0057】
以上のように、映像合成装置23は、固定カメラ215の映像と、可動カメラ222が撮影するオブジェクトに関するオブジェクト情報とを重畳して合成映像を生成する。生成された合成映像は、操縦者P1に対して提示される。オブジェクト情報が重畳されることにより、指示者P2が視認するシーンまたは方向を操縦者P1に対して的確に提示することができる。したがって、指示者P2は、操縦者P1に対する飛行指示を、可動カメラ222の指向方向を正面を向くようにリセットすることなく容易に与えることができる。
【0058】
<付記>
以上で説明した種々の実施形態のいくつかの側面について、以下のとおりまとめる。
【0059】
(付記1)
付記1の映像合成装置(23)は、撮影する撮影方向が固定された固定カメラを備える操縦者システムから、前記固定カメラにより撮影される第1の映像および前記固定カメラの画角を取得する操縦者システム情報取得部(231)と、撮影する撮影方向が可変である可動カメラを備える利用者システムから、前記可動カメラが指向する指向方向を取得する利用者システム情報取得部(232)と、その取得された可動カメラの指向方向がその取得された固定カメラの画角の範囲内か否かを判定して画角判定結果を出力する画角判定部(2331)と、その出力された画角判定結果に応じて、その取得された第1の映像と前記可動カメラが撮影するオブジェクトに関するオブジェクト情報とを重畳して合成映像を生成する重畳部(2332)と、を備える。
【0060】
(付記2)
付記2の映像合成装置は、付記1に記載された映像合成装置であって、前記重畳部は、前記可動カメラの指向方向が前記固定カメラの画角の範囲内であることを前記画角判定結果が示す場合、前記オブジェクト情報として、前記可動カメラにより撮影される映像を重畳する。
【0061】
(付記3)
付記3の映像合成装置は、付記2に記載された映像合成装置であって、前記利用者システム情報取得部は、前記利用者システムから、前記可動カメラにより撮影される映像が表示される画面上の位置を示す位置情報を更に取得し、前記重畳部は、前記オブジェクト情報として、前記位置情報により示される位置に相当する表示領域上の位置に、ポインタを更に重畳する。
【0062】
(付記4)
付記4の映像合成装置は、付記1に記載された映像合成装置であって、前記利用者システム情報取得部は、特定の時刻を指定するタイミング信号を前記利用者システムから更に取得し、前記重畳部は、前記可動カメラの指向方向が前記固定カメラの画角の範囲内であることを前記画角判定結果が示す場合、前記オブジェクト情報として、前記可動カメラにより撮影される映像の前記特定の時刻におけるフレーム画像を重畳する。
【0063】
(付記5)
付記5の映像合成装置は、付記1に記載された映像合成装置であって、前記利用者システム情報取得部は、前記利用者システムから、前記第1の映像と重畳するための重畳用資料を更に取得し、前記重畳部は、前記可動カメラの指向方向が前記固定カメラの画角の範囲内であることを前記画角判定結果が示す場合、前記オブジェクト情報として、その取得された重畳用資料を重畳する。
【0064】
(付記6)
付記6の映像合成装置は、付記1に記載された映像合成装置であって、前記重畳部は、前記可動カメラの指向方向が前記固定カメラの画角の範囲内であることを前記画角判定結果が示す場合、前記オブジェクト情報として、前記可動カメラの指向方向を示す第1のインジケータを重畳する。
【0065】
(付記7)
付記7の映像合成装置は、付記1に記載された映像合成装置であって、前記重畳部は、前記可動カメラの指向方向が前記固定カメラの画角の範囲内でないことを前記画角判定結果が示す場合、前記オブジェクト情報として、前記可動カメラの指向方向を示す第2のインジケータを重畳する。
【0066】
(付記8)
付記8の映像合成装置は、付記1から7のいずれか1つに記載された映像合成装置であって、前記操縦者システム情報取得部は、映像の合成を行うか否かを示す合成肯否情報を前記操縦者システムから更に取得し、前記重畳部は、その取得された合成肯否情報が映像の合成を行うことを示す場合、前記合成を行い、前記取得された合成肯否情報が映像の合成を行わないことを示す場合、前記取得された第1の映像と前記オブジェクト情報とを重畳せずに、前記取得された第1の映像を出力する。
【0067】
(付記9)
付記9の無人移動体(2)は、前記固定カメラ(215)と、前記可動カメラ(222)と、付記1から7のいずれか1つに記載された映像合成装置(23)と、を備える。
【0068】
(付記10)
付記10の映像合成表示システムは、付記1から7のいずれか1つに記載された映像合成装置(23)と、前記映像合成装置により生成された合成映像を表示する表示装置(1)と、を備える。
【0069】
なお、実施形態を組み合わせたり、各実施形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本開示の映像合成技術は、2オペレーションシステムにより運用されるドローン等の無人移動体システムにおいて、例えば、無人移動体システムに搭載された複数のカメラにより撮影された映像を合成する技術として用いることができる。
【符号の説明】
【0071】
1:リモートコントローラ(表示装置)
2:ドローン(無人移動体の例)
3:操作端末
4:ドローン
5:ドローン
6:中継車
7:クラウド
21:操縦者システム
22:利用者システム
23:映像合成装置
24:送信機
100:プロセッサ
200:メモリ
211:フライトコントローラ
212:GNSS受信機
213:コンパス
214:高度計
215:固定カメラ
216:受信機
221:制御装置
222:可動カメラ
223:送受信機
231:操縦者システム情報取得部
232:利用者システム情報取得部
233:合成部
2111:制御部
2112:入出力部
2211:制御部
2212:入出力部
2331:画角判定部
2332:重畳部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8