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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】携帯端末
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/24 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
H01Q1/24 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022507974
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2020012376
(87)【国際公開番号】W WO2021186687
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】524066085
【氏名又は名称】FCNT合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 泰亮
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-005198(JP,A)
【文献】特開2020-005056(JP,A)
【文献】特表2016-509783(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0110788(US,A1)
【文献】国際公開第2017/033573(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/168699(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107306307(CN,A)
【文献】Jan Hesselbarth,"Eight-Port Radiator Element for Millimeter-Wave Antenna Array",2019 European Microwave Conference in Central Europe,2019年10月17日,pp.411-414
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末の側面を囲む側面フレームと、
前記側面フレームの内側面に面する壁部を複数個所に立設させた内部板状金属構造体と、
前記内側面と前記複数個所に立設させた前記壁部との間において、前記複数個所に立設させた前記壁部に夫々固定された複数のパッチアンテナモジュールと、
前記複数のパッチアンテナモジュールの中から通信に用いるパッチアンテナモジュールを選択する制御部と、を備える、
携帯端末。
【請求項2】
前記内部板状金属構造体は矩形の板状に形成され、
前記壁部は、前記内部板状金属構造体の矩形を形成する各辺にそれぞれ配置される、
請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記パッチアンテナモジュールの前記内側面に向かう面には、パッチアンテナが設けられた第1領域と、パッチアンテナが設けられていない第2領域が存在し、
前記内側面と前記壁部との間の夫々に設けられた弾性部材によって、前記第2領域押圧されことで、前記パッチアンテナは前記壁部に押圧される
請求項1または2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記制御部は、通信に用いるパッチアンテナモジュールを所定間隔で切り替える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記複数のパッチアンテナモジュール夫々の温度を測定するセンサをさらに備え、
前記制御部は、前記センサが検出する前記複数のパッチアンテナモジュール夫々の温度を基に、通信に用いるパッチアンテナモジュールを選択する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の携帯端末。
【請求項6】
前記複数のパッチアンテナモジュールは、前記弾性部材によって押圧されることで前記壁部に夫々固定される、
請求項に記載の携帯端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやウェアラブルコンピュータ等の携帯端末において、限られた実装スペース内に各種電子部品を実装する工夫が行われている。例えば、特許文献1には、金属フレーム本体と補強板金との接合部の少なくとも一部を樹脂材料で覆うことで、軽量かつ剛性の高い筐体を備えた電子機器が記載されている。特許文献2には、筐体の外周部に設けた周辺導電性ハウジング部材をアンテナとして利用することで、限られた実装スペースを有効に活用した電子機器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2015/159518号
【文献】特表2014-508440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Third Generation Partnership Project(3GPP)において次の通信規格として規定される第5世代移動通信システム(以下、5Gとも記載)では、通信に用いるパッチアンテナモジュールの発熱量が従来よりも極めて大きくなる。そのため、5Gの規格に適合する携帯端末が通信を行うと、限られた実装スペース内でパッチアンテナモジュールが発熱することで、パッチアンテナモジュール近傍において局所的な発熱が生じやすい。また、5Gの規格に適合するパッチアンテナモジュールは指向性が高いため、パッチアンテナモジュールを一か所に設けてしまうと、携帯端末と基地局との位置関係により通信品質が低下しやすい。
【0005】
開示の技術の1つの側面は、基地局との位置関係による通信品質の低下を抑制しつつ局所的な発熱を抑制することができる携帯端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の1つの側面は、次のような携帯端末によって例示される。本携帯端末は、携帯端末の側面を囲む側面フレームと、前記側面フレームの内側面に面する壁部を複数個所に立設させた内部板状金属構造体と、前記内側面と前記壁部との間の夫々において弾性部材により前記壁部に押圧されるように配置され、通信時に発熱する複数のパッチアンテナモジュールと、前記複数のパッチアンテナモジュールの中から通信に用いるパッチアンテナモジュールを選択する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術は、基地局との位置関係による通信品質の低下を抑制しつつ局所的な発熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るスマートフォンの一例を示す第1の図である。
図2図2は、実施形態に係るスマートフォンの一例を示す第2の図である。
図3図3は、実施形態に係るスマートフォンで用いる内部板状金属構造体の一例を示す斜視図である。
図4図4は、実施形態に係るスマートフォンで用いるパッチアンテナモジュールの斜視図である。
図5図5は、図1のA-A線端面図の一例である。
図6図6は、実施形態においてパッチアンテナと弾性部材との位置関係の一例を示す図である。
図7図7は、実施形態におけるパッチアンテナ及び弾性部材の位置関係を模式的に示す図である。
図8図8は、実施形態における制御基板のハードウェア構成の一例を示す図である。
図9図9は、実施形態において、パッチアンテナモジュールから内部板状金属構造体への熱の伝導を模式的に示す第1の図である。
図10図10は、実施形態において、パッチアンテナモジュールから内部板状金属構造体への熱の伝導を模式的に示す第2の図である。
図11図11は、実施形態において、パッチアンテナモジュールから内部板状金属構造体への熱の伝導を模式的に示す第3の図である。
図12図12は、第1変形例に係るスマートフォンの一例を示す図である。
図13図13は、壁部のバリエーションを例示する第1の図である。
図14図14は、壁部のバリエーションを例示する第2の図である。
図15図15は、壁部のバリエーションを例示する第3の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
以下に示す実施形態の構成は例示であり、開示の技術は実施形態の構成に限定されない。実施形態に係る携帯端末は、例えば、以下の構成を備える。
本実施形態に係る携帯端末は、
携帯端末の側面を囲む側面フレームと、
前記側面フレームの内側面に面する壁部を複数個所に立設させた内部板状金属構造体と、
前記内側面と前記壁部との間の夫々において弾性部材により前記壁部に押圧されるように配置され、通信時に発熱する複数のパッチアンテナモジュールと、
前記複数のパッチアンテナモジュールの中から通信に用いるパッチアンテナモジュールを選択する制御部と、を備える。
【0010】
実施形態に係る携帯端末は、使用者が携帯可能な可搬型の無線通信装置である。可搬型の無線通信装置としては、フィーチャーフォン、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、ウェアラブルコンピュータ、ノートブック型コンピュータ等を挙げることができる。
【0011】
実施形態に係る携帯端末は、筐体内に内部板状金属構造体を収容する。内部板状金属構造体は、例えば、金属のように熱伝導率の高い素材を板状に形成した部材である。筐体内に収容された内部板状金属構造体が筐体を内側から支持することで、筐体の剛性を高めることもできる。また、内部板状金属構造体は筐体内に収容される電子回路の支持部材として用いることもできる。本実施形態で用いる内部板状金属構造体は、側面フレームの内側面に面する壁部を複数個所に立設させる。内部板状金属構造体は矩形の板状に形成されていてもよく、前記壁部は、前記内部板状金属構造体の矩形を形成する各辺にそれぞれ配置されてもよい。
【0012】
パッチアンテナモジュールは、パッチアンテナと、パッチアンテナを用いた電波の送受信を制御する制御モジュールと、を含む。パッチアンテナモジュールは、例えば、5Gに適合した通信を実行可能である。本携帯端末では、例えば、パッチアンテナを前記内側面に向けた状態で、パッチアンテナモジュールが内側面と壁部との間に配置される。
【0013】
壁部と筐体の前記内側面との間に配置されるパッチアンテナモジュールは、弾性部材によって壁部に押圧される。本携帯端末は、このような構成を採用することで、通信時においてパッチアンテナモジュールで生じた熱を、壁部を介して効率よく内部板状金属構造体に伝導させることができる。ここで、弾性部材は、パッチアンテナモジュールのうち、パッチアンテナが設けられていない部分と接触することが好ましい。すなわち、パッチアンテナと前記内側面との間には、弾性部材が介在しないことが好ましい。パッチアンテナと前記内側面との間に弾性部材が介在しないことで、パッチアンテナの通信性能が低下することが抑制される。
【0014】
本携帯端末では、複数のパッチアンテナモジュールの中から通信に用いるパッチアンテナモジュールを選択することで、携帯端末と基地局との位置関係による通信品質の低下や局所的な発熱を抑制することができる。制御部は、例えば、通信に用いるパッチアンテナモジュールを所定間隔で切り替えてもよい。また、複数のパッチアンテナモジュール夫々の温度を測定するセンサを携帯端末がさらに備え、制御部はセンサが検出する複数のパッチアンテナモジュール夫々の温度を基に、通信に用いるパッチアンテナモジュールを選択してもよい。
【0015】
以下、図面を参照して上記携帯端末をスマートフォンに適用した実施形態についてさらに説明する。図1及び図2は、実施形態に係るスマートフォンの一例を示す図である。図1は、スマートフォン1のリアカバー16を外した状態を例示する平面図である。図2は、スマートフォン1の分解斜視図である。スマートフォン1は、フロントカバー11、内部板状金属構造体12、3つのパッチアンテナモジュール13a、13b、13c、弾性部材14、制御基板15及びリアカバー16を備える。本明細書において、パッチアンテナモジュール13a、13b、13cを区別しないときは、パッチアンテナモジュール13と称する。
【0016】
スマートフォン1は、全体として板状に形成された筐体を有する無線通信装置である。フロントカバー11及びリアカバー16は、スマートフォン1の筐体である。フロントカバー11は、スマートフォン1の側面を覆う側面カバー111を含む。フロントカバー11には、例えば、ディスプレイ、スピーカー及びマイクロフォンが配置される。側面カバー111は、「側面フレーム」の一例である。
【0017】
内部板状金属構造体12は、熱伝導性の高い金属を板状に形成した部材である。内部板状金属構造体12は、フロントカバー11とリアカバー16が形成する筐体内に収容される。すなわち、内部板状金属構造体12は、スマートフォン1の厚み方向において、フロントカバー11とリアカバー16との間に配置される。図3は、実施形態に係るスマートフォンで用いる内部板状金属構造体の一例を示す斜視図である。図1図2及び図3では、内部板状金属構造体12は、長方形の板状に形成される。内部板状金属構造体12の長方形を形成する4辺のうち3辺において、壁部121が側面カバー111の内壁面112と面するように立設する。このように立設される壁部121は、壁部121が形成する面の法線方向が互いに異なる。壁部121は、内部板状金属構造体12の一部を折り曲げることで形成してもよい。なお、内部板状金属構造体12は、図1では長方形に形成されているが、正方形や五角形等の他の形状に形成されてもよい。内部板状金属構造体12は、「内部板状金属構造体」の一例である。内壁面112は、「前記側面フレームの内側面」の一例である。壁部121は、「壁部」の一例である。
【0018】
パッチアンテナモジュール13は、パッチアンテナによる電波の送受信を行う。図4は、実施形態に係るスマートフォンで用いるパッチアンテナモジュールの斜視図である。パッチアンテナモジュール13は、アンテナモジュール131と制御モジュール133とを積層したモジュールである。制御モジュール133は、パッチアンテナ132を用いた電波の送受信を制御する集積回路である。アンテナモジュール131のアンテナ実装面131aには、複数のパッチアンテナ132が設けられる。複数のパッチアンテナ132は、アンテナ実装面131aにおいて、互いに離れて設けられる。パッチアンテナモジュール13は、アンテナ実装面131aを側面カバー111の内壁面112に向けた状態で、壁部121と内壁面112の間に配置される。パッチアンテナモジュール13は、「パッチアンテナモジュール」の一例である。アンテナ実装面131aにおいてパッチアンテナ132を実装した領域は、「第1領域」の一例である。アンテナ実装面131aにおいてパッチアンテナ132を実装していない領域は、「第2領域」の一例である。
【0019】
弾性部材14は、パッチアンテナモジュール13を壁部121に押圧する弾性力を有する部材である。弾性部材14は、電波透過性を有するものであることが好ましい。このような弾性部材14としては、例えば、株式会社ロジャースイノアック製PORON(登録商標)のグレードMS-40Pを採用することができる。弾性部材14は、「弾性部材」の一例である。
【0020】
図5は、図1のA-A線端面図の一例である。弾性部材14は、内壁面112とパッチアンテナモジュール13との間に、押しつぶされた状態で設けられる。その結果、弾性部材14は、弾性力によってパッチアンテナモジュール13を壁部121に向けて押圧することができる。パッチアンテナモジュール13が壁部121に押圧されることで、パッチアンテナモジュール13で生じた熱を効率よく、壁部121を介して内部板状金属構造体12に伝導させることができる。
【0021】
図6は、実施形態においてパッチアンテナと弾性部材との位置関係の一例を示す図である。図6は、パッチアンテナモジュール13のパッチアンテナ132を設けた側面から見た図となっている。図6に例示するように、弾性部材14は、パッチアンテナモジュール13のパッチアンテナ132が設けられていない部分を押圧するように設けられることが好ましい。
【0022】
図7は、実施形態におけるパッチアンテナ及び弾性部材の位置関係を模式的に示す図である。図7では、平面視では目視で困難なパッチアンテナ132の位置も点線で示している。図7に例示するように、弾性部材14は、パッチアンテナ132が設けられていない部分を押圧するように設けられる。このように弾性部材14設けられることで、パッチアンテナ132による電波の送受信が弾性部材14によって妨げられることが抑制される。そのため、例えば、パッチアンテナ132が発信する電波は、強い状態を維持してスマートフォン1外に送信される。
【0023】
制御基板15は、Central Processing Unit(CPU)や各種メモリが設けられた基板である。図8は、実施形態における制御基板のハードウェア構成の一例を示す図である。制御基板15は、CPU101、主記憶部102、補助記憶部103、通信部104および接続バスB1を含む。CPU101、主記憶部102、補助記憶部103および通信部104は、接続バスB1によって相互に接続されている。
【0024】
CPU101は、マイクロプロセッサユニット(MPU)、プロセッサとも呼ばれる。CPU101が実行する処理のうち少なくとも一部は、CPU101以外のプロセッサで行われてもよい。また、CPU101が実行する処理のうち少なくとも一部は、集積回路(IC)、その他のデジタル回路によって実行されてもよい。集積回路は、Large Scale Integrated circuit(LSI)、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)を含む。PLDは、例えば、Field-Programmable Gate Array(FPGA)を含む。CPU101は、プロセッサと集積回路との組み合わせであってもよい。組み合わせは、例えば、マイクロコントローラユニット(MCU)、System-on-a-chip(SoC)、システムLSI、チップセットなどと呼ばれる。スマートフォン1では、CPU101が補助記憶部103に記憶されたプログラムを主記憶部102の作業領域に展開し、プログラムの実行を通じて周辺装置の制御を行う。これにより、スマートフォン1は、所定の目的に合致した処理を実行することができる。主記憶部102および補助記憶部103は、スマートフォン1が読み取り可能な記録媒体である。CPU101は、「制御部」の一例である。
【0025】
主記憶部102は、CPU101から直接アクセスされる記憶部として例示される。主記憶部102は、Random Access Memory(RAM)およびRead Only Memory(ROM)を含む。
【0026】
補助記憶部103は、各種のプログラムおよび各種のデータを読み書き自在に記録媒体に格納する。補助記憶部103は外部記憶装置とも呼ばれる。補助記憶部103には、オペレーティングシステム(Operating System、OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。OSは、通信部104を介して接続される外部装置等とのデータの受け渡しを行う通信インターフェースプログラムを含む。
【0027】
補助記憶部103は、例えば、Erasable Programmable ROM(EPROM)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive、SSD)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive、HDD)等である。
【0028】
通信部104は、例えば、パッチアンテナモジュール13を用いて基地局や他の携帯端末との通信を行う。
【0029】
(パッチアンテナモジュール13の選択)
スマートフォン1では、CPU101が、複数のパッチアンテナモジュール13の中から通信に用いるパッチアンテナモジュール13を選択する。通信部104は、CPU101が選択したパッチアンテナモジュール13を用いて通信を行う。ここで、CPU101は、例えば、複数のパッチアンテナモジュール13を所定時間毎に切り替えてもよい。所定時間を示す情報は、例えば、補助記憶部103に記憶させればよい。
【0030】
図9から図11は、実施形態において、パッチアンテナモジュールから内部板状金属構造体への熱の伝導を模式的に示す図である。図9から図11では、スマートフォン1の制御基板15及びリアカバー16を外した状態を例示する。図9から図11では、パッチアンテナモジュール13から内部板状金属構造体12への熱の伝導を矢印によって模式的に示す。図11は、通信に用いるパッチアンテナモジュール13としてパッチアンテナモジュール13cをCPU101が選択した場合を例示する。ここでは、CPU101は、パッチアンテナモジュール13a、パッチアンテナモジュール13b、パッチアンテナモジュール13cの順番で、通信に用いるパッチアンテナモジュール13を選択したものとする。
【0031】
図9は、通信に用いるパッチアンテナモジュール13としてパッチアンテナモジュール13aをCPU101が選択した場合を例示する。パッチアンテナモジュール13aは通信実行によって発熱し、その熱が内部板状金属構造体12に伝導する。
【0032】
図10は、通信に用いるパッチアンテナモジュール13としてパッチアンテナモジュール13bをCPU101が選択した場合を例示する。CPU101は、パッチアンテナモジュール13aによる通信を開始してから補助記憶部103に記憶させた所定時間が経過すると、次に通信に用いるパッチアンテナモジュール13としてパッチアンテナモジュール13bを選択する。CPU101は、パッチアンテナモジュール13bによる通信を開始するとともに、パッチアンテナモジュール13aによる通信を停止する。パッチアンテナモジュール13bは通信実行によって発熱し、その熱が内部板状金属構造体12に伝導する。一方で、通信を停止したパッチアンテナモジュール13aでは発熱が収まり、パッチアンテナモジュール13a近傍の内部板状金属構造体12の温度が低下する。図10では、温度の低下が点線の矢印で模式的に示される。
【0033】
図11は、通信に用いるパッチアンテナモジュール13としてパッチアンテナモジュール13cをCPU101が選択した場合を例示する。CPU101は、パッチアンテナモジュール13bによる通信を開始してから補助記憶部103に記憶させた所定時間が経過すると、次に通信に用いるパッチアンテナモジュール13としてパッチアンテナモジュール13cを選択する。CPU101は、パッチアンテナモジュール13cによる通信を開始するとともに、パッチアンテナモジュール13bによる通信を停止する。パッチアンテナモジュール13cは通信実行によって発熱し、その熱が内部板状金属構造体12に伝導する。一方で、通信を停止したパッチアンテナモジュール13bでは発熱が収まり、パッチアンテナモジュール13b近傍の内部板状金属構造体12の温度が低下する。図11では、図10と同様に、低下した温度が点線の矢印で模式的に示される。
【0034】
5Gの規格に適合するパッチアンテナモジュール13は、第4世代移動通信システム(4G)以前の規格に適合するアンテナモジュールよりも通信時における発熱量が大きい。そのため、ひとつのパッチアンテナモジュール13を継続的に用いて通信を長時間行うと、当該パッチアンテナモジュール13の近傍の温度が局所的に高くなる。その結果、スマートフォン1を利用するユーザに不快感を与える虞がある。本実施形態では、複数のパッチアンテナモジュール13の中から通信に用いるパッチアンテナモジュール13を選択することで、局所的な発熱を抑制することができる。
【0035】
<第1変形例>
実施形態に係るスマートフォン1では、通信に用いるパッチアンテナモジュール13を所定時間毎に切り替えた。第1変形例では、パッチアンテナモジュール13の温度を測定し、温度の低いパッチアンテナモジュール13を通信に用いるパッチアンテナモジュール13として選択する構成について説明する。実施形態と共通の構成要素については同一の符号を付し、その説明は省略する。以下、図面を参照して、第1変形例について説明する。
【0036】
図12は、第1変形例に係るスマートフォンの一例を示す図である。図12は、スマートフォン1aのリアカバー16を外した状態を例示する。スマートフォン1aでは、パッチアンテナモジュール13夫々の近傍に温度センサ17a、17b、17cが設けられる。温度センサ17aは、パッチアンテナモジュール13aの温度を測定し、測定した温度をCPU101に通知する。温度センサ17bは、パッチアンテナモジュール13bの温度を測定し、測定した温度をCPU101に通知する。温度センサ17cは、パッチアンテナモジュール13cの温度を測定し、測定した温度をCPU101に通知する。以下、本明細書において、温度センサ17a、17b、17cを区別しないときは、温度センサ17とも称する。温度センサ17は、「センサ」の一例である。
【0037】
CPU101は、温度センサ17からパッチアンテナモジュール13の温度を通知されると、パッチアンテナモジュール13の中で最も温度の低いパッチアンテナモジュール13を通信に使用するパッチアンテナモジュール13として選択すればよい。そして、CPU101は、選択したパッチアンテナモジュール13の温度が閾値よりも高くなったことを検出した場合、他のパッチアンテナモジュール13を通信に用いるパッチアンテナモジュール13として選択すればよい。閾値は、例えば、発熱によるパッチアンテナモジュール13の動作安定性やユーザにあたえる不快感等を基に、設計時に決定すればよい。決定した閾値は、例えば、補助記憶部103に記憶させておけばよい。このような第1変形例に係るスマートフォン1によっても、局所的な発熱を抑制することができる。
【0038】
<その他の変形>
以上説明した実施形態及び第1変形例では、壁部121は、内部板状金属構造体12から直角に立設する。しかしながら、壁部121は、内部板状金属構造体12から斜めに立設してもよい。壁部121が内部板状金属構造体12から立設する角度は、例えば、パッチアンテナモジュール13が放射する電波の方向を考慮して決定されてもよい。
【0039】
以上説明した実施形態及び第1変形例では、長方形の板状に形成された内部板状金属構造体12を形成する4辺のうちの3辺にひとつずつパッチアンテナモジュール13が設けられた。しかしながら、パッチアンテナモジュール13は、内部板状金属構造体12を形成する各辺に2つ以上設けられてもよいし、4辺すべてに設けられてもよい。また、内部板状金属構造体12は、長方形以外の形状であってもよい。内部板状金属構造体12の形状は、スマートフォン1の内部構造に応じて適宜決定すればよい。
【0040】
以上説明した実施形態及び第1変形例では、壁部121は、長方形の板状に形成される。しかしながら、壁部121は、長方形の板状に限定されるわけではなく、他の形状であってもよい。図13から図15は、壁部のバリエーションを例示する図である。図13から図15は、法線方向から壁部121を見た図である。壁部121は、図13に例示するように、上端部が凹形状に形成されていてもよい。壁部121は、図14に例示するように、複数の突起1211を有する形状であってもよい。壁部121は、図15に例示するように、壁部121を厚さ方向に貫通する貫通孔1212を複数有してもよい。なお、図14における突起1211と突起1211の間の位置や、図15における貫通孔1212の位置を、パッチアンテナモジュール13が有するパッチアンテナ132の位置と壁部121の平面視において略一致させることで、パッチアンテナ132の電波の放射方向を壁部121に向けることも可能である。
【0041】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0042】
1、1a・・・スマートフォン
11・・・フロントカバー
111・・・側面カバー
112・・・内壁面
12・・・内部板状金属構造体
121・・・壁部
1211・・・突起
1212・・・貫通孔
13、13a、13b、13c・・・パッチアンテナモジュール
131・・・アンテナモジュール
131a・・・アンテナ実装面
132・・・パッチアンテナ
133・・・制御モジュール
14・・・弾性部材
15・・・制御基板
16・・・リアカバー
17、17a、17b、17c・・・温度センサ
13・・・
101・・・CPU
102・・・主記憶部
103・・・補助記憶部
104・・・通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15