(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】圧力検出を備えた電動歯ブラシシステム
(51)【国際特許分類】
A61C 17/22 20060101AFI20240823BHJP
A61C 17/34 20060101ALI20240823BHJP
A61C 17/20 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
A61C17/22 B
A61C17/34 K
A61C17/20
(21)【出願番号】P 2022514668
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(86)【国際出願番号】 GB2020052085
(87)【国際公開番号】W WO2021044129
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-08-17
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518054892
【氏名又は名称】プレイブラッシュ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141678
【氏名又は名称】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】オグンシナ, トールロープ
(72)【発明者】
【氏名】グラジェコウスキ, ヴィクトル
(72)【発明者】
【氏名】イットナー, マテーウス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルガ, ポール
(72)【発明者】
【氏名】ディエム, パトリック
【審査官】葛谷 光平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-156204(JP,A)
【文献】特開2005-152217(JP,A)
【文献】特開平11-213075(JP,A)
【文献】国際公開第2019/034854(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/094414(WO,A1)
【文献】特表2019-512276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 17/00-17/34
A46B 7/04
A46B 13/02
A46B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動歯磨き装置であって、
歯ブラシ頭部の振動を発生させる振動手段と、
前記振動手段に電力を供給するバッテリーと、
前記振動手段が前記バッテリーから引き出した電流を感知する電流センサーと、
計時信号を作成する時計と、
ブラッシングが行われているユーザの口腔の範囲を指示する向き信号を作成する手段と、
前記歯ブラシ頭部に加えられた圧力を指示する圧力信号を作成する手段と、
前記口腔の複数の異なる範囲のそれぞれに加えられたブラッシング圧力に関するフィードバックをユーザに提供するために、前記向き信号の値と前記圧力信号の値を連係させるように配設された処理手段とを備え、
前記圧力信号を作成する手段は、前記電流センサーで感知された電流に依存して前記圧力信号を作成し、
前記処理手段は、前記時計から計時信号を受信し、この計時信号に基づいて、前記圧力信号と前記向き信号の値を連係させるとともに、前記向き信号および前記圧力信号の連続する値を時刻の刻印と結び付け、前記連続する値をこれらの時刻の刻印と共にメモリに格納する、
ことを特徴とする電動歯磨き装置。
【請求項2】
前記装置は、前記圧力信号と前記向き信号の連係値をメモリに格納するように配設されたことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記処理手段は、前記圧力信号と前記向き信号の前記連係値に基づいたブラッシング圧力に関するフィードバックを提供するように配設されたことを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置は、複数のセクター光をさらに備え、前記処理手段は、前記セクター光を用いて、前記口腔の複数の異なる範囲に加えられたブラッシング圧力に関するフィードバック
をユーザに提供するように配設されたことを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記装置は、送信モジュールをさらに備え、前記送信モジュールは、前記圧力信号と前記向き信号の前記連係値を外部装置に送信するように配設されたことを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記処理手段は、同じ時間間隔で発生する前記圧力信号と前記向き信号の値を結合させるように配設されたことを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記時計は、外部装置と時刻を合せられるように配設されたことを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記処理手段は、前記圧力信号の値を少なくとも1つの閾値と比較するように配設されたことを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記処理手段は、所定の期間に亘って前記口腔の異なる範囲に加えられた平均圧力を指示する圧力マップを作成するように配設されたことを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記圧力信号を作成する手段は、感知された電流値を圧力値に写像するように配設されたことを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記圧力信号を作成する手段は、感知された電流値を1つまたは2つ以上の閾値と比較し、この比較の結果に基づいて前記圧力信号を作成するように配設されたことを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
バッテリー電圧を感知する電圧センサーをさらに備え、前記圧力信号を作成する手段は、この感知された電圧に依存して前記圧力信号を作成するように配設されたことを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記圧力信号を作成する手段は、感知された電流値を1つまたは2つ以上の閾値と比較するように配設され、これら1つまたは2つ以上の閾値は前記感知された電圧に基づいて調整されることを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記振動手段を制御する制御器をさらに備え、前記制御器は、前記圧力信号に依存して前記振動手段が発生させる振動を調整するように配設されたことを特徴とする先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
先行する請求項のいずれかに記載の装置であって、
前記歯磨き装置の動作を感知して動作データを作成する動作センサーと、
前記動作データを解析して前記向き信号を作成する信号解析ユニットをさらに備えることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置であって、前記信号解析ユニットは、
前記動作データから、ブラッシング動特性の推定値および平均加速度の推定値を作成する手段と、
前記ブラッシング動特性の推定値および前記平均加速度の推定値に基づいて、ブラッシングが行われている前記口腔の範囲の指示を作成する手段と、を備えることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置であって、前記信号解析ユニットは、
前記ブラッシング動特性の推定値および前記平均加速度の推定値に対してクラスタリング・プロセスを実行し、それぞれがブラッシング範囲を表す複数のクラスタを含むクラスタリング結果を作成する手段と、
前記クラスタリング結果を格納する手段と、
次のブラッシング動特性の推定値および平均加速度の推定値を前記格納されたクラスタリング結果と比較することにより、ブラッシングが行われている前記口腔の範囲の指示を算出する手段とをさらに備えることを特徴とする装置。
【請求項18】
先行する請求項のいずれかに記載の歯磨き装置と、外部処理装置とを備える歯ブラシシステムであって、前記外部処理装置は、前記歯磨き装置から前記圧力信号と前記向き信号の連係値を受信し、前記圧力信号と前記向き信号の連係値に基づいたブラッシング圧力に関するフィードバックをユーザに提供するように配設されたことを特徴とする装置。
【請求項19】
前記外部装置は、前記口腔の前記複数の異なる範囲のそれぞれに対する所定の期間に亘って平均圧力を指示する圧力マップを表示するように配設されたことを特徴とする請求項18に記載の歯ブラシシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動歯ブラシに関し、特にブラッシング圧力に関するフィードバックをユーザに提供することができる電動歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
電動歯ブラシは、歯を磨くために、ブラシの頭部における毛部の振動を与える歯ブラシである。その振動は、直線的または回転式、あるいはそれら2つの組合せであってもよい。これらの振動は典型的には、バッテリーによって電力を供給されるモータまたは圧電結晶である。そのバッテリーは充電可能であってもよいし、誘導充電を通じて充電されてもよい。ブラシの頭部は典型的には、取外し可能なので、摩損したときに取り替えることができる。
【0003】
使用の際に、ユーザはこのような歯ブラシを口腔を通して動かして、歯にブラシをかける。歯ブラシの型式およびユーザのブラッシング技術に依存して、その動きは歯から歯への移動、かつ/もしくは、手動歯ブラシに類似したブラッシング動作を伴ってもよい。
【0004】
ユーザが良好な口腔の健康状態を保持するために、歯にブラシを適正にかけることは重要である。ユーザが歯にブラシをかけることを支援するために、ユーザが歯にブラシをどのようにかけているかを監視し、この情報をユーザに中継転送して戻す試みが行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブラッシング技術を監視する以前の試みでは、動作センサーを歯ブラシに取り付けて、ユーザが歯にブラシをどのようにかけているかを監視することを含んでいた。多くの場合、その動作センサーからのデータは、アプリケーション(アプリ)またはコンピュータ・プログラムに転送され、例えば、携帯電話または他の携帯式デバイスなどの外部装置上で作動される。次に、当該アプリまたはプログラムによって、ユーザが歯にブラシをどのようにかけたかに関して、そのユーザにフィードバックが提供される。
【0006】
しかしながら、現在のシステムでは、ユーザに提供されるフィードバックは制限を受けるかもしれない。例えば、フィードバックによって、歯にブラシを適正にかけていないことをユーザに警報を発し得るが、その欠点の矯正方法に関する情報をユーザに提供しないかもしれない。そういうものとして多くの場合、ブラッシング技術の改善方法を試行して解決することは、ユーザに委ねられる。その結果として、ユーザがどんな矯正を適用すべきか確信していない場合に、異なる欠点が生じてしまう。
【0007】
ブラッシングを行いながら、歯に過大な圧力が加えられると、歯のエナメル質が摩滅し得る、かつ、歯肉が損傷するかもしれない。それ故、いくらかの現存する電動歯ブラシは、圧力センサーを備えている。そのような圧力センサーは通常、歯ブラシ頭部に加えられた力が所定の値を超えた時に作動するスイッチである。当該歯ブラシが過大な圧力を検出すると、そのブラシの柄上にある警告灯のスイッチをオンにする、もしくは、当該ブラシの頭部に送られる電力量を減少させることができる。
【0008】
典型的には、歯および歯肉に対する過大なブラッシング圧力の影響は、即座には起こらず、時間の経過とともに大きくなり得る。さらに、ユーザの中には、いつも決まって、口腔の特定の範囲に過大な圧力を加える人がいるかもしれない。それ故、ユーザが歯にブラ
シをかけている間にどのくらい大きな圧力を加えたかに関して、当該ユーザに対して、より優れたフィードバックを提供できることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、電動歯磨き装置であって、
歯ブラシ頭部の振動を発生させる手段と、
ブラッシングが行われているユーザの口腔の範囲を指示する向き信号を作成する手段と、
前記歯ブラシ頭部に加えられた圧力を指示する圧力信号を作成する手段と、
前記口腔の複数の異なる範囲のそれぞれに加えられたブラッシング圧力に関するフィードバックをユーザに提供するために、前記向き信号の値と前記圧力信号の値を連係させるように配設された処理手段とを備える、ことを特徴とする電動歯磨き装置を提供する。
【0010】
本発明によれば、前記向き信号の値と前記圧力信号の値を連係させることより、ユーザが口腔のどの部位のブラッシングを過度に激しく行っているか、もしくは、行ったかに関して、より優れて当該ユーザに通知され得るという利点を提供できる。これにより、ユーザは、自身のブラッシング技術を矯正することができる。
【0011】
前記歯磨き装置は、取外し可能な歯ブラシの頭部に取付け可能な歯ブラシ本体の形態であってもよい。これにより、そのような歯ブラシの頭部が摩損したときに取り替えることができる。あるいは、恒久的に取り付けられた歯ブラシの頭部を備える前記歯磨き装置を提供することが可能である。
【0012】
前記振動手段は、例えば、モータまたは圧電結晶などの圧電デバイス、あるいは、前記歯ブラシ頭部の振動を発生させる任意の他の適した手段であってもよい。
【0013】
前記装置は、前記圧力信号と前記向き信号の連係値をメモリに格納するように配設されてもよい。これにより、前記装置は、圧力および結び付けられた向きの値を時間に亘って記録することが可能になり、それらを利用してフィードバックをユーザに提供できる。これにより、当該ユーザは自身のブラッシング技術を改善することができる。
【0014】
一例では、前記歯磨き装置自体は、ブラッシング圧力に関するフィードバックをユーザに提供するように配設されてもよい。それ故、前記処理手段は、前記圧力信号と前記向き信号の前記連係値に基づいたブラッシング圧力に関するフィードバックを提供するように配設されてもよい。例えば、前記歯磨き装置は複数のセクター光を備えてもよく、前記処理手段は、前記セクター光を用いて、前記口腔の複数の異なる範囲に加えられたブラッシング圧力に関するフィードバックをユーザに提供するように配設されてもよい。
【0015】
あるいは、または、加えて、前記歯磨き装置は、上記のような直接に関係するデータを携帯電話、タブレット型デバイス、ラップトップ型またはパーソナル・コンピュータなどの外部処理装置に送信するように配設されてもよい。この場合に、このような外部装置は、ブラッシング圧力に関するフィードバックをユーザに提供するように配設されてもよい。それ故、前記歯磨き装置は送信モジュールをさらに備え、前記送信モジュールは、前記圧力信号と前記向き信号の前記連係値を外部装置に送信するように配設されてもよい。
【0016】
前記歯磨き装置は計時信号を作成する時計をさらに備えてもよく、前記処理手段は、前記時計から計時信号を受信し、この計時信号に基づいて、前記圧力信号と前記向き信号の値を連係させるように配設されてもよい。例えば、前記処理手段は、同じ時間間隔で発生する前記圧力信号と前記向き信号の値を結合させるように配設されてもよい。
【0017】
一例では、前記圧力信号と前記向き信号の上記値を結合させて個別の単位にすることによって連係させてもよい。例えば、それらの値を結合させて、特定の時間間隔内の向きと圧力に対する「左高」、「左中」、「左低」を指示する”LH”,”LM”,”LL”などの単位にできる。このような単位は、複数の異なる時間間隔に亘って連続的に作成かつ格納されてもよい。このような単位を用いることにより、格納および/または送信する必要があるデータ量を最小限にでき、総処理量を減少できる。
【0018】
あるいは、または、加えて、前記圧力信号と前記向き信号の上記値は、それらの値のそれぞれに時刻の刻印を付与することによって連係させてもよい。それ故、前記処理手段は、前記向き信号および前記圧力信号の連続する値を時刻の刻印などの計時値と結び付けてもよい。これにより、異なる時間間隔に亘ってユーザの口腔の各範囲に対する平均圧力を指示するフィードバックの提供が可能になる。さらに、過大な圧力が加えられた時間の長さを判定し、かつ、ユーザにフィードバックできる。これにより、当該ユーザは自身のブラッシング技術を矯正することができる。
【0019】
前記処理手段は、前記向き信号および前記圧力信号の前記連続する値をこれらの計時値と共にメモリに格納するように配設されることが好ましい。これにより、ユーザに対して、歯磨き後のフィードバックの提供が可能になる。
【0020】
前記時計は、外部処理装置と時刻を合せられるように配設されることが好ましい。例えば、前記時計は、その時刻をオンラインの時に(例えば、スマートフォン/タブレットに接続されて)外部装置から合せられるように配設されてもよい。それ故、前記歯磨き装置上の前記時計を用いて、後の相対的な時計のずれを測定してもよい。これにより、前記歯磨き装置は、オフラインで使用されているときに前記圧力信号および前記向き信号の前記値の時刻を適正に刻印できる。
【0021】
前記処理手段は、前記圧力信号の値を少なくとも1つの閾値と比較するように配設されてもよい。この場合には、上記比較の結果に依存して、前記圧力信号の値を2つ以上の圧力カテゴリーの1つに類別してもよい。例えば、このような圧力は、「低」、「中」または「高」の1つとして類別してもよい。これにより、その処理を簡素化して格納する合計のデータ量を減少できる。上記のような圧力の閾値は、事前に格納された閾値でもよいし、もしくは、特定のユーザに応じてカスタマイズしてもよい。さらに、異なる閾値がユーザの口腔の異なる範囲に対して設定してもよい。使用する閾値の数量は、例えば、必要とされる上記圧力の検出精度および細分性レベルに依存して、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つ以上であってもよい。いくらかの状況において、例えば、ブラッシングの速さなどの前記歯磨き装置の過去のブラッシングの動きまたは特徴に依存して、上記圧力の閾値は動特性により変動可能であってもよい。
【0022】
上記圧力カテゴリーは、前記向き信号の値と共にメモリに格納されてもよい。フィードバックは、例えば、前記向き信号の値に対応するセクター光を上記圧力のカテゴリーに対応するカラーで照らすことによって提供されてもよい。あるいは、または、加えて、そのような圧力カテゴリーおよび向き信号の値が、フィードバックをユーザに与えるように配設できる外部処理装置に送信されてもよい。
【0023】
フィードバックは、ブラッシング・セッション、ブラッシング・セッションの一部または多数のブラッシング・セッションなどの所定の期間に、ユーザの口腔の異なる部位に加えられた平均圧力を指示する圧力マップを作成することによって、外部処理装置の画面上に提供されてもよい。あるいは、または、加えて、前記処理手段は、前記歯磨き装置自体上の表示または外部装置への送信のために、所定の期間に亘って前記口腔の異なる範囲に
加えられた平均圧力を指示する圧力マップを作成するように配設されてもよい。これらは例にすぎず、多数の異なる方法で、フィードバックをユーザに提供できる。
【0024】
前記圧力信号を作成する手段は、例えば、上記歯ブラシ頭部に加えられた圧力が所定の値を超えるときに作動するスイッチ、または、加わっている圧力量を測定するように配設された圧力センサーを備えてもよい。しかし、本発明の好ましい一実施の形態では、圧力センサーを用いて圧力信号を作成するよりむしろ、その圧力信号は、前記振動手段により引き出される電流量に基づいている。この実施の形態は、上記歯ブラシ頭部がユーザの歯に圧力を加えているときに前記振動手段にかかる負荷が変化することによって、前記振動手段により引き出される電流が変化するという認識に基づいている。
【0025】
それ故、前記歯磨き装置は、前記振動手段に電力を供給するバッテリーと、前記振動手段が前記バッテリーから引き出した電流を感知する電流センサーとをさらに備えてもよく、前記圧力信号を作成する手段が、この感知された電流に依存して前記圧力信号を作成するように配設されてもよい。前記振動手段が引き出した電流を感知することによって、歯ブラシに加わった圧力の示度を得ることができる。この配設により、より少ない構成要素を用いて、かつ/もしくは、より小さなコストで圧力の示度を得ることができるという利点を提供できる。さらに、圧力スイッチを設けた場合よりも高い細分性レベルが達成可能になり得る。
【0026】
前記圧力信号を作成する手段は、例えば、ルックアップ・テーブルまたはファンクションを用いて、感知された電流値を圧力値に写像するように配設されてもよい。あるいは、または、加えて、前記圧力信号を作成する手段は、感知された電流値を1つまたは2つ以上の閾値と比較するように配設されてもよく、かつ、前記圧力信号がこの比較の結果に基づいてもよい。
【0027】
前記歯磨き装置は、バッテリー電圧を感知する電圧センサーをさらに備えてもよく、前記圧力信号を作成する手段は、この感知された(電流のみならず)電圧に依存して前記圧力信号を作成するように配設されてもよい。例えば、前記圧力信号を作成する手段は、感知された電流値を1つまたは2つ以上の閾値と比較するように配設されてもよく、これら1つまたは2つ以上の閾値は前記感知された電圧に基づいて調整されてもよい。この場合に、前記装置は閾値を格納するメモリを備えてもよく、例えば、前記感知された電圧の値に基づいて、適切な閾値を選択してもよい。これにより、前記バッテリーの異なる充電状態に対応する異なる電圧に対して、異なる閾値を設定できるので、その閾値がより高い精度で前記歯ブラシ頭部に加わった実際の圧力に対応するようになる。
【0028】
この多様な閾値は、すべての装置に対して設定される一般的な閾値でよく、もしくは、較正プロセスの一部として、前記歯ブラシ装置のメモリに前もって格納されてもよい。どちらの場合でも、ユーザがそれら閾値の1つまたは2つ以上を調整できようにしてもよい。上記閾値は、メモリに格納したモータ電流、バッテリー電圧および/または較正データの値に基づいて、所定の目標(要求)圧力および/またはモータ速度に対して、動特性により算出してもよい。
【0029】
前記歯磨き装置は、前記振動手段を制御する制御器をさらに備えてもよく、前記制御器は、前記圧力信号に依存して前記振動手段が発生させる振動を調整するように配設されてもよい。例えば、前記制御器は、上記圧力信号が事前に設定された圧力値(何らかの他の値)以上であるときに、上記振動を一時的に停止する、もしくは、緩めるように配設されてもよい。これは、例えば、前記振動手段の電源を短時間オフにすることにより達成できる。これにより、ユーザに対して、ブラッシングを過度に激しく行っているという実体感のある、または、触覚に基づく指示を提供できるので、当該ユーザの歯に過大な圧力でブ
ラシをかけられることを防止できる。
【0030】
上記向き信号は、例えば、加速度計などの動作センサーの出力に基づいて作成されてもよい。それ故、前記装置は、前記歯磨き装置の動作を感知して動作データを作成する動作センサーと、前記動作データを解析して前記向き信号を作成する信号解析ユニットとをさらに備えてもよい。上記動作データは、ユーザによる歯ブラシの手動の動きによって作成されるデータを含んでもよい。上記動作センサーは、加速度計であってもよく、上記動作データは、動作データを作成するための任意の他の適した手段を代わりに用いることができるが、加速度計のデータであってもよい。
【0031】
前記信号解析ユニットは、前記動作データから、ブラッシング動特性の推定値および平均加速度の推定値を作成する手段と、前記ブラッシング動特性の推定値および前記平均加速度の推定値に基づいて、ブラッシングが行われている前記口腔の範囲の指示を作成する手段とを備えてもよい。
この場合に、前記信号解析ユニットは、
前記ブラッシング動特性の推定値および前記平均加速度の推定値に対してクラスタリング・プロセスを実行し、それぞれがブラッシング範囲を表す複数のクラスタを含むクラスタリング結果を作成する手段と、
前記クラスタリング結果を格納する手段と、
次のブラッシング動特性の推定値および平均加速度の推定値を前記格納されたクラスタリング結果と比較することにより、ブラッシングが行われている前記口腔の範囲の指示を算出する手段とをさらに備えてもよい。
【0032】
上述の配設により、ユーザがブラッシングを行っている自身の口腔の範囲の高精度の指示を提供できる。
【0033】
上述の配設のいずれにおいても、前記装置はブラッシング・パラメータを格納するメモリを備えてもよい。前記制御器は、上記メモリに格納したブラッシング・パラメータに従って前記振動手段を制御するように配設されてもよい。上記格納したブラッシング・パラメータは、ブラッシングが行われる口腔の各範囲に対する計時、口腔の各範囲に対するブラッシングの速さ、口腔の各範囲に対するブラッシングの最大限の圧力、口腔の各範囲に対する最大限のブラッシング動特性、およびブラッシング・セッションに対する合計のブラッシング時間の少なくとも1つを含んでもよい。これらのブラッシング・パラメータの少なくとも1つは、ユーザにより設定可能にしてもよい。
【0034】
本発明の別の一態様によれば、上述の形態のいずれかにおける歯磨き装置を備える歯ブラシシステムを提供する。前記外部処理装置は、前記歯磨き装置から前記圧力信号と前記向き信号の連係値を受信し、前記圧力信号と前記向き信号の連係値に基づいたブラッシング圧力に関するフィードバックをユーザに提供するように配設されてもよい。例えば、前記外部装置は、前記口腔の前記複数の異なる範囲のそれぞれに対しする所定の期間に亘って平均圧力を指示する圧力マップを表示するように配設されてもよい。
【0035】
さらに、対応する方法が提供されてもよい。それ故、本発明の別の一態様によれば、電動歯磨き装置を作動させる方法を提供する。前記方法は、
歯ブラシ頭部の振動を発生させ、
ブラッシングが行われているユーザの口腔の範囲を指示する向き信号を作成し、
前記歯ブラシ頭部に加えられた圧力を指示する圧力信号を作成し、
前記向き信号の値と前記圧力信号の値を連係させ、
前記向き信号と前記圧力信号の連係値に基づいて、前記口腔の複数の異なる範囲のそれぞれに加えられたブラッシング圧力に関するフィードバックをユーザに提供する。
【0036】
本発明の一態様の特徴は、任意の他の態様も用いることができる。それらの装置の特徴のいずれも、方法の特徴として提供することができ、逆もまた同様である。
【0037】
この開示では、上記用語「圧力」は、その一般的な意味で好ましく用いられており、歯ブラシ頭部に働く力を指示する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態における電動歯ブラシの一部を示す。
【
図2】本発明の一実施の形態における歯ブラシシステムの重要な構成要素を示すブロック図である。
【
図3】フィードバックおよび制御のために用いる歯ブラシ装置の一部をさらに詳細に示す。
【
図4】
図3のフィルタリング・モジュールが実行するフィルタリング・プロセスを例示する。
【
図5】クラスタリング・プロセスの前のデータを示す。
【
図6】上記クラスタリング・プロセスの後のデータを示す。
【
図8】本発明の一実施の形態における歯ブラシ装置の一部を示す。
【
図9】本発明の一実施の形態における圧力検出プロセスで行われる行程を示す。
【
図10】ブラッシング・パラメータを設定するためのプロセスを示す。
【
図11】本発明の一実施の形態における歯ブラシシステムの一部を示す。
【
図12】圧力フィードバック・データを取得するために、圧力フィードバック・モジュールが実行する行程を示す。
【
図13】圧力データを表示するために、移動式デバイスが実行する行程を示す。
【
図14】移動式デバイスの画面上のブラッシング圧力マップの一例を示す。
【
図15】複数のセクター光を備える電動歯ブラシの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
概観
発明の実施の形態は、動作検出、ブラッシング予測、およびBluetooth Low Energy (BLE) による相互通信能力を備えるスマート電動歯ブラシ装置に関する。この装置は、歯磨きに加えて、ブラッシングの動作、速さ、方向および圧力を検出し、手引きおよびフィードバック(管理指導)をユーザに提供することができる。
【0040】
本発明の好ましい一実施の形態では、上記装置は、マイクロ制御器、加速度センサー、ブラッシング用モータおよび充電可能なバッテリー電源を特徴として有する。このような組み込み式加速度センサーを用いて、ブラシの向きを検出することにより、ユーザが自身の歯のどの部位にブラシをかけているかを推定できる。上記加速度センサーにおいて、ディジタル方式の低域フィルタを実行して、モータの振動による加速度をフィルタで取り除くことができる。
【0041】
上記装置は、2つの異なる別個のモード、すなわち、オンライン・モード(Bluetoothによって接続されているとき)と、オフライン・モードで作動する。オンライン・モードで、加速度データを解析して移動式デバイスに転送する。その移動式デバイス上で作動するアプリケーションによって、このデータが多様な種類のゲームまたは教示/管理指導プログラム用の制御入力として利用される。ユーザは、上述のブラッシング用モータを始動/停止することができ、上記装置はさらに、力のフィードバック制御器としても機能するので、上記アプリケーションがモータの始動を制御することが可能になる。
【0042】
他方、オフライン・モードでは、移動式デバイスに能動的な接続をすることなく、歯ブラシを使用できる。その代わりに、ブラッシング動作が絶えず監視されて解析される。次に、ブラッシングの統計値およびセンサー・データが本体搭載の不揮発性メモリに保存され、上述の移動式デバイスのアプリケーションによって、その後の検索および解析が行われることになる。
【0043】
図1は、本発明の一実施の形態における電動歯ブラシの一部を示す。この装置は、例えば、音波領域内で、またはそれを超えて振動を発生させるように設計された音波歯ブラシであってもよい。その歯ブラシは、共に出願係属中の国際特許出願番号PCT/GB2019/051438に記載されているようであってもよく、その特定事項は、参照により本明細書に組み入れられている。
【0044】
図1を参照して、歯ブラシ10は、歯ブラシ本体12と、取外し可能な歯ブラシ頭部14を備える。本体12は、モータ16と、充電可能なバッテリー18と、回路基板20とを収納するウジングを備える。上記回路基板上には、マイクロ制御器/Bluetoothのモジュール22と、加速度センサー24と、RGB(赤色/緑色/青色)のLED(発光ダイオード)26とが設けられている。マイクロ制御器モジュール22は、モータ16を制御して歯ブラシ頭部14の振動を発生させるために用いられ、ユーザの歯にブラシをかけることができる本装置には、この電源をオンおよびオフにする、かつ/もしくは、その設定を調整するために、1つまたは2つ以上のボタン25が設けられている。
【0045】
歯ブラシシステム
図2は、本発明の一実施の形態における歯ブラシシステムの重要な構成要素を示すブロック図である。
図2を参照して、本システムは、歯ブラシ10と移動式デバイス38を備える。歯ブラシ10は、モータ16と、バッテリー18と、加速度センサー24と、LED26と、電力および充電制御ユニット28と、マイクロ制御器30と、メモリ32と、信号解析モジュール34と、タイマー35と、Bluetoothのモジュール36とを備える。マイクロ制御器30、メモリ32、信号解析モジュール34は、例えば、
図1で示すマイクロ制御器/Bluetoothのモジュール22の一部であってもよい。Bluetoothのモジュール36は、移動式デバイス38と通信する。移動式デバイス38は、例えば、携帯電話、タブレット型コンピュータ、ラップトップ型コンピュータ、スマート・ウォッチ、または任意の他の適した処理装置であってもよい。このような移動式デバイス上で作動するアプリケーションを用いることにより、上述の歯ブラシがオンラインの時に、フィードバックをユーザに提供する、かつ/もしくは、当該歯ブラシを制御できる。
図2では、Bluetooth low energyのモジュールを示しているが、その代わりに、ZigBee, LoRaまたはWiFiなどの任意の他の低出力の無線送信プロトコルを利用することもできる。
【0046】
作動する際には、電力および充電制御モジュール28とマイクロ制御器30の制御下で、バッテリー18がブラッシング・モータ16に電力を供給する。マイクロ制御器30は、上記歯ブラシの作動を制御するために、プログラム・コードを実行する。メモリ32は、上記マイクロ制御器が適切なブラッシングの作動を実行するために利用するブラッシング・パラメータ、および、ブラッシングの統計値およびセンサー・データなどの他のデータを格納する。
【0047】
ユーザが自身の歯にブラシをかけると、加速度センサー24が、その歯ブラシの動きにより発生する加速度データを収集する。信号解析モジュール34は、その加速度データに対する信号処理を実行することにより、当該ユーザに対して、そのユーザが自身の歯にどのようにブラシをかけているかに関するフィードバックを提供し、その歯ブラシ頭部の振動を制御することができる。タイマー35は、そのブラッシング・セッションを計時するために用いる。
【0048】
図3は、フィードバックおよび制御のために用いる本歯ブラシ装置の一部をさらに詳細に示す。
図3を参照して、本装置は、加速度センサー24と、フィルタリング・モジュール40と、クラスタリング・モジュール42と、メモリ32と、比較モジュール44と、制御モジュール46と、電流センサー47と圧力検出器48、および、Bluetoothのモジュール36と、LED26と、モータ16とバッテリー18を備える。
【0049】
作動する際には、加速度センサー24が、その歯ブラシの動きにより発生する加速度データを収集する。その加速度データは、フィルタリング・モジュール40に渡される。フィルタリング・モジュール40は、後述するように、当該加速度データのフィルタリングを行い、ブラッシング動特性Dの推定値、および加速度Gの移動平均値を提供する。フィルタリング・モジュール40の出力は、クラスタリング・モジュール42に供給される。クラスタリング・モジュール42は、フィルタリング・モジュール40から受け取ったデータに関するクラスタリング・プロセスを実行する。クラスタリング・モジュール42は、クラスタリング結果を作成して、格納するためにメモリ32に渡す。
【0050】
フィルタリング・モジュール40とメモリ32は両方とも、比較モジュール44に接続されている。比較モジュール44は、フィルタリング・モジュール40からブラッシング動特性Dと加速度Gの移動平均値、および、メモリ32から格納されたクラスタリング結果を受け取る。比較モジュール44は、フィルタリング・モジュール40からのデータと、メモリ32からのクラスタリング結果を比較する。その比較の結果が向き信号Oであり、ユーザが自身の口腔のどの範囲にブラシをかけているかの指示を提供する。比較モジュール44は、その向き信号を制御モジュール46に渡す。制御モジュール46は、向き信号Oに基づいて、モータ16の速度を制御できる。制御モジュール46は、さらに向き信号Oに基づいて、フィードバックを当該ユーザに提供する。これは、モータ16の速度を制御し、LED26を制御し、かつ/もしくは、Bluetoothのモジュール36を介して、信号を移動式デバイス38に送る。
【0051】
制御モジュール46はさらに、フィルタリング・モジュール40からブラッシング動特性Dの推定値を受け取る。制御モジュール46はさらに、ブラッシング動特性Dの値に基づいて、フィードバックを提供して制御できる。
【0052】
バッテリー18は、歯ブラシ頭部に振動を発生させるために、モータ16に電流を供給する。モータ16がバッテリー18から引き出す電流量は、電流センサー47によって測定される。感知された電流は、圧力検出器48に渡される。圧力検出器48は、この感知された電流に基づいて、圧力信号Pを作成する。圧力信号Pはさらに、制御モジュール46によって利用され、当該歯ブラシの振動を制御、かつ/もしくは、フィードバックを当該ユーザに提供してもよい。
【0053】
図3に示す多様なモジュールの作動については、さらに詳細な説明を後述する。
【0054】
フィルタリング・モジュール
フィルタリング・モジュール40では、加速度センサー24からのデータは最初に、低域フィルタを通して渡され、(より高い周波数にある)振動の動きが取り除かれる。それ故、このように作成されたセンサー・データは、振幅を矯正するように調整される。次に、このセンサー・データは、3つのフィルタを通して渡される。1つの信号ブランチはブラッシング動特性Dの推定値を作成し、第2の信号ブランチは加速度Gの移動平均値を作成する。最初の測定値(x,yおよびz軸)の各成分のフィルタリングを別個に行う。この動特性推定の最終スカラー値は、動特性推定のベクトルの長さを算出することによって作成される。その後、これらの信号は、クラスタリング・モジュール42が実行する次のクラ
スタリング・プロセスに提供される。
【0055】
図4は、フィルタリング・モジュール40が実行するフィルタリング・プロセスを例示する。
図4を参照して、上述の加速度センサーからの生の加速度データ50は、低域フィルタ51を通過する。フィルタ51の遮断周波数は、歯ブラシの手動の動きによって与えられる加速度データの成分が通過する一方で、当該歯ブラシの振動によって与えられる加速度データの高周波数成分は取り除かれる。従って、低域フィルタ51の出力は、上記歯ブラシの手動の動きによる加速度と重力による加速度を含む生のセンサー・データ52である。生のセンサー・データ52は次に、増幅器53によって適正な振幅に調整される。この調整されたセンサー・データはその後、2つのブランチに分割される。
【0056】
第1のブランチで、上記センサー・データは低域フィルタ54を通過する。低域フィルタ54の遮断周波数は、重力による加速度が通過する一方で、上記歯ブラシの手動の動きによる加速度は通過しないようになっている。次に、このようにフィルタリングが行われたデータは、減算器55において上記センサー・データから減算される。従って、この作動により、当該センサー・データから重力による加速度が取り除かれて、直線加速度成分が残ることになる。生のセンサー・データ52のx,yおよびz成分のフィルタリングが別個に行われる。
【0057】
これらのフィルタリングが行われたx,yおよびz成分は次に、絶対値計算モジュール56に渡される。絶対値計算モジュール56は、上記x、yおよびz成分の二乗の合計の平方根から、その直線加速度の絶対値を算出する。
【0058】
この直線加速度の絶対値は次に、低域フィルタ57に渡される。低域フィルタ57の遮断周波数は、その直線加速度データが通過するが、より高い周波数データは取り除かれるように設定される。このようにすれば、低域フィルタ57を用いて、そのデータ内に存在するノイズを減少させることができる。上記直線加速度データのフィルタリングが行われた絶対値は、動特性推定モジュール58に渡される。動特性推定モジュール58は、上記直線加速度データの平均化した大きさ(ベクトルの長さ)を算出して、ブラッシング動特性Dの推定値を作成する。ブラッシング動特性Dの推定値は、ユーザがどれほど力強く、速くまたは激しく、自身の歯にブラシをかけていたかの指示を提供する。
【0059】
上述のフィルタリング・プロセスの第2のブランチで、上記センサー・データは低域フィルタ59を通過する。低域フィルタ59の遮断周波数は、生のセンサー・データ52の重力成分が通過するが、上述の手動の動きによる加速度成分は通過しないようになっている。生のセンサー・データ52のx,yおよびz成分のフィルタリングが別個に行われて、別個のx、yおよびzの重力成分を算出する。この重力のフィルタリングが行われたデータを用いて、上述の加速度Gの平均値を提供する。この加速度Gの平均値は、平均化モジュール60において、上述のx、yおよびz方向でフィルタリングが行われた重力加速度データを平均化することにより算出される。
【0060】
それ故、フィルタリング・モジュール40が実行するフィルタリング・プロセスは、上記センサー・データをフィルタに通過させ、ブラッシング動特性Dと平均加速度Gを算出するプロセスを含む。その上側の経路は、(重力を減算して直線加速度のみを取得し、その絶対値を採用し、平均化してその不ぞろいをならすことによって)上述のブラッシング動特性の推定値を作成する。その下側の経路は、生の加速度データの低域フィルタリングを行うことによって重力データを作成する。上記フィルタリングが行われた重力データと上記動特性の推定値は、さらに別の処理のためにクラスタリング・モジュール42上に渡される。
【0061】
クラスタリング・モジュール
クラスタリング・モジュール42は、フィルタリング・モジュール40から受け取った上記フィルタリングが行われた重力データGと上記動特性の推定値Dに対して、クラスタリング・プロセスを実行する。クラスタリング・プロセスでは、次の加速度データと比較し得るクラスタリング結果を作成することにより、ユーザが任意の所定の時刻に自身の口腔のどの範囲にブラッシングを行っているかを指示できる。
【0062】
クラスタリング・モジュール42は、ユークリッド距離の代わりに、クラスタ類似性を測定するためにコサイン距離を用いるクラスタリング・アルゴリズムを実行する。その角度方向の座標は、上記フィルタリングが行われた重力データGの平均値のxおよびy投射から算出される一方で、その半径方向の成分は、上記動特性の推定値Dのスカラー値である。5つのクラスタが、極座標系で表される修正された空間において特定できる。1個の中心クラスタは、ブラッシングの無活動状態を指示し、4個のクラスタがその周りのリング上にある。これらの4個のクラスタは、4つのブラッシングの側部(上部、左部、右部および底部)を表す。
【0063】
クラスタリング・モジュール42は、その動作データが任意の他の動作の形態よりもむしろ、ブラッシングに関連すると判定した場合にのみ、上記クラスタリング・プロセスを実行する。この判定は、ブラッシング動特性Dの値と最大限および最小限の加速度の閾値を比較することによって行われる。ブラッシング動特性Dの値が上記最小限の加速度の閾値より小さくなった場合には、本装置はブラッシングのために使用されていないと判定するので、上記クラスタリング・プロセスは実行されない。ブラッシング動特性Dの値が上記最大限の加速度の閾値を超えた場合には、その動作は有効でないと判定されて、その場合も同様に、上記クラスタリング・プロセスは実行されない。
【0064】
クラスタリング・モジュール42において、ブラッシング動作に関連している上記フィルタリングが行われた加速度データが最初に、円筒座標基準系上に投射される。これを行うために、その角度方向の座標が最初に、低域フィルタ59から出力された上記平均加速度Gのxおよびy成分から算出される。上記半径方向の成分は、上記動特性の推定値Dの値である。次に、上記クラスタリング・アルゴリズムがデータ点上で作動される。
【0065】
上記クラスタリング・アルゴリズムは、類似したデータ点を系統立ててクラスタを作成する。それ故、各クラスタは、何らかの点で相互に類似したデータ点を含み、他のクラスタに属するデータ点と異なる。この場合では、上記クラスタリング・アルゴリズムは、距離に基づいたクラスタリングを用いる。これは、2つ、または3つ以上のデータ点が距離の点で共に近接している場合には、それらは類似していると判定することを意味する。上記クラスタリング・アルゴリズムは、このようなクラスタの類似性をユークリッド距離の代わりに測定するために、コサイン距離を用いる。
【0066】
各クラスタは、ユーザの口腔の特定の部位を表している。従って、それらのクラスタは、ユーザの口腔の表示上に上記加速度データのマッピングを行うための便利な方法を表している。
【0067】
上述のクラスタリング・プロセスを作動させるために、上記クラスタを設定し、ユーザの口腔の特定の部位と結び付ける必要がある。これは、最初にクラスタリング・モジュール42に実験室試験からの標準加速度データを事前にロードすることにより行われる。次に、本装置がフィードバックを提供することになっている上記口腔の部位の一覧表を認定する。その後、本歯ブラシ装置を上記口腔の特定の部位に配置し、上記事前にロードした加速度データが上記口腔のどの範囲に対応するかを確かめることにより、上記クラスタを設定する。
【0068】
上記クラスタリング・アルゴリズムは、距離の閾値を用いて、データがその距離の閾値よりも大きく、特定のデータ点と異なると判定し、かつ、データが当該距離の閾値よりも小さく、特定のデータ点と類似するために同一のクラスタにあると判定する。これらの閾値は、本装置を最初にセットアップするときに上記クラスタリング・モジュールに事前にプログラムされるので、ユーザが本装置を初めて使用する場合であっても、上記クラスタリング・アルゴリズムが作動できる。
【0069】
ユーザが本歯ブラシを使用するときに、自身の歯にブラシをかけて、当該ユーザ自身の加速度データを生成する。次に、そのユーザの加速度データ(上述の重力データGと動特性の推定値D)を上記事前に設定したクラスタと比較して、当該ユーザの加速度データがそのユーザの口腔のどの範囲に対応するかを確かめる。その比較の結果が、当該ユーザがブラッシングを行っていると本装置が判定した口腔の範囲になる。
【0070】
特定のブラッシング・セッションからの上記ユーザの加速度データを、本装置上に既に格納されている上記事前に格納された加速度データと組み合わせる。ユーザが本装置を使用すると、上記事前に格納されたデータと組み合わせる、より多量の加速度データを生成することになっている。十分なユーザ特有の加速度データが一度存在すれば、上記事前に設定されたクラスタに頼る代わりに、上記クラスタリング・アルゴリズムが当該ユーザ特有のデータに対して作動し、ユーザ特有のクラスタリング結果が生成される。従って、時間を経て、上記ユーザの加速度データが事前に格納された加速度データに取って代わり、上記ユーザのクラスタリング結果が上述の事前に判定された結果に取って代わる。これにより、上記ユーザ特有の加速度データを用いて生成した上記クラスタリング結果によって、上記加速度データと当該ユーザの口腔との間のより高精度のマッピングが提供される。これにより、そのユーザに対して、より高精度のフィードバックを提供できる。
【0071】
時間を経て、上記クラスタリング・プロセスで用いられたクラスタリングのパラメータは更新され、個別のユーザにとって、より特有なものになる。これは、本歯ブラシ装置が外部装置に対してオンラインのときに起こる。Bluetoothのモジュール36は、Bluetoothの接続を利用して、そのクラスタリングのデータを上記外部装置に転送する。更新される上記主要なパラメータは、上記加速度データがどのクラスタに属するか、その結果として、ユーザの口腔のどの部位にブラッシングを行っているかを判定するために用いるクラスタの閾値である。ユーザが本装置を利用すればするほど、本装置は、より多数のブラッシング・セッションに対応する、より多量のデータを収集し、格納できる。このデータは上記外部装置に送信され、その外部装置は、当該データの履歴を分析し、上記クラスタリングの閾値が特定のユーザにとって不適切(例えば、過度に厳格または寛大)であると判明した場合には、上記クラスタリングの閾値を更新する。
【0072】
例えば、ユーザが自身のブラッシング技術で極めて首尾一貫し、自身の口腔の各範囲に対して明確なブラッシング動作を行っている場合には、ユーザの口腔の各部位に対する当該ユーザの最大限と最小限の動作の間の相違は小さい。このことは、ユーザのブラッシング・データは、そのデータ点が共に近接している小さい、明確なクラスタを形成するということを意味する。この場合には、各クラスタに対する上述のクラスタリング・アルゴリズムおよび管理指導機能によって用いられる上記距離の閾値をより小さくしてもよい。すなわち、いくらかの点が共に近接して群をなしている場合には、それらの点は単に、同一のクラスタの一部とみなされる。データ点が同一のクラスタの一部とみなされない制限値は、小さくなっている。
【0073】
その一方で、より一貫性のないブラッシング様式を有するユーザは、自身の口腔の各部位に対する最大限と最小限のブラッシング動作間に大きな相違を持つ。このことは、ユー
ザのブラッシング・データは、境界が曖昧な縁部を有する大きなクラスタを形成するということを意味する。すなわち、各クラスタの制限値が明確になっていない。各クラスタ内のデータ点は広がっている。このことは、各クラスタに対する上記クラスタリング・アルゴリズムおよび管理指導機能によって用いられる上記距離の閾値は、そのようなデータ点の変動を考慮するために、より大きい必要があることを意味する。データ点が同一のクラスタの一部とみなされない制限値が大きくなっているので、隣接するクラスタの境界は共にかなり近接している。
【0074】
従って、上記クラスタリングの閾値は、異なるブラッシング様式を考慮する。上記クラスタリングの閾値を更新することによって、本装置は、各個別のユーザに合わせて調整したクラスタリング・プロセスを提供できる。
【0075】
図5は上記クラスタリング・プロセスの前の生のデータを示し、
図6は上記クラスタリング・プロセスの後のデータを示す。
図6を参照して、上記クラスタリング・プロセスは5個のクラスタという結果になる。中心クラスタ61は、ブラッシング活動が無いことを表す。4個の他のクラスタ62、63、64および65は、中心クラスタ61の周囲に配置されている。これらの4個のクラスタ62、63、64および65は、ユーザがブラッシングを行う自身の口腔の4つの主要な範囲を表す。これらの4つの範囲は、内側の上部、内側の底部、外側の左部および外側の右部を表す。
【0076】
比較モジュール
比較モジュール44は、フィルタリング・モジュール40からの上述のデータをメモリ32からの上述のクラスタリング結果と比較する。その比較の結果は向き信号Oであり、ユーザが自身の口腔のどの範囲にブラッシングを行っているかの指示を提供する。
【0077】
上述の比較プロセスでは、動特性のクラスタリングを用いて、ユーザがブラッシングを行っている自身の口腔の部位を指示する。このことは、上記比較プロセスでは、現在の加速度データに加えて、その比較プロセスの以前の結果も用いて、口腔のどの範囲にブラッシングを行っているかを判定するということを意味する。従って、本装置は、2個のクラスタから等距離のデータを受信すると、ユーザが自身の口腔のどの範囲にブラッシングを行っているかを予測できる。これは効果がある。なぜなら、ユーザは典型的に、一貫性を欠いた、無原則な仕方で歯ブラシを自身の口腔の周囲に動かすというよりはむしろ、自身の歯にブラシをかけているときに口腔の隣接した範囲にブラッシングを行うためである。例えば、現在の加速度データがユーザの口腔における外側の左部と内側の上部を表す2個のクラスタの間で等距離にあるが、上記以前の比較の結果がそのユーザは当該外側の左部にブラッシングを行っていると指示した場合には、上記現在のデータが口腔の外側の左部のブラッシングに該当する可能性が極めて高い。これは、ユーザが口腔の外側の左部から口腔の外側の右部に歯ブラシを動かした可能性が、外側の左部から内側の上部に動かした可能性よりも高いためである。他方、そのデータが2個のクラスタ(例えば、外側の左部と外側の右部)から等距離にあり、かつ、それ以前の比較がこれらの2個のクラスタのうちの1個(例えば、外側の左部)を指示した場合には、当該ユーザがその向きを変えなかった、かつ、その適正なクラスタはなお、その以前のクラスタ(この例では、外側の左部)であると想定される。
【0078】
他の一配設では、上記比較プロセスの各段階で、上記以前のクラスタは、そのコサイン距離を一定のパラメータ(例えば、0.3,0.4,0.5または何らかの他の値)だけ短くすることによる少しの「ボーナス」または優遇を取得する。それ故、配設では、そのデータ点は、上記クラスタが変化するように、当該クラスタの「主要な塊」により近接することになる。
【0079】
上述のフィルタリング・モジュール、クラスタリング・モジュールおよび/または比較モジュールは、
図2に示す信号解析モジュール34の一部であってもよく、かつ、例えば、本願の名において国際特許出願番号WO2019/034854に記載されているようであってもよく、その特定事項は、参照により本明細書に組み入れられている。
【0080】
圧力検出
本装置は、ユーザがブラッシングを行っているときに、上述のモータにより引き出された電流を検出することによって、ユーザが加えた圧力を測定できる。そのモータ電流は、間接的な圧力指標として役立つ。ユーザが自身の歯に対して歯ブラシ頭部を押圧することによる圧力を変化させたとき、上記モータにかかる負荷が変化する。これにより、それが引き出す電流量が変化する。その引き出されているモータ電流が、閾値に対して比較されて、当該ユーザが加えている圧力を判定する。そのユーザに対して、(スマートフォンのような)外部装置を介して、あるいは、LEDまたは振動の動きを介して本装置上に直接に、フィードバックが付与される。
【0081】
このような圧力検出プロセスの一例が、
図7に例示されているが、さらに詳細に以下に説明する。
【0082】
戻って
図3を参照して、本発明の好ましい一実施の形態では、本歯ブラシ装置は、電流センサー47と圧力検出器48が備える。作動する際には、ユーザが自身の歯にブラシをかけている間に、モータ16がバッテリー18から引き出す電流量は、電流センサー47により検出される。その感知された電流は、圧力検出器48に供給される。圧力検出器48は、そのモータ電流を事前に設定された閾値に対して比較して、当該ユーザが加えている圧力を判定する。圧力を指示する信号Pが、制御モジュール46に供給される。制御モジュール46は、圧力信号Pを用いて、歯ブラシ頭部の振動を制御することができる。
【0083】
圧力検出器48は、その電流信号と閾値を比較する。この場合には、圧力信号Pは、その圧力が所定の値より高いという指示である。その閾値は、最初に本装置において事前に設定された値である。しかし、ユーザが、例えば自身の移動式デバイス上のアプリケーションを用いて、そのような閾値を変更してもよい。さらに、異なる閾値が、例えば異なるユーザ、および/または、口腔の異なる部位に対して設定されてもよい。所望されるなら、複数の異なる閾値を設定してもよく、その場合には、圧力信号Pは、例えば低位、中位または高位の圧力などの複数の異なる圧力を指示できる。
【0084】
上述の引き出された電流量は、モータ速度に依存するので、モータ速度に対して異なる閾値を用いてもよい。さらに、上記閾値が、上述のバッテリーが部分的に消費されるので満状態の電力を供給できないという事実を考慮して、上述のバッテリーの充電状態に依存して変更されてもよい。これは、時間に亘る平均電流、ブラッシングが行われていないと判定したときに引き出された電流、上記バッテリーの電圧、または、これらのいくらかの組合せを監視することによって検出してもよい。
【0085】
あるいは、または加えて、圧力検出器48は、例えばルックアップ・テーブルまたは事前に設定されたファンクションを用いることにより、上記電流値を圧力値に写像してもよい。この場合には、圧力信号Pは、どれほど高い圧力が加えられているかを指示する値であってもよい。このようなファンクションまたはルックアップ・テーブルは、モータ速度および/または上記バッテリーの充電状態に依存して変更されてもよい。
【0086】
上記圧力を判定するために電流を用いることの利点は、従来の圧力感知装置と比較して、高価にならずに、かつ、構成部品の個数を少なくするということにある。さらに、より高い度合いの細分性が可能になり、ユーザに提供するフィードバックを改善できる。
【0087】
上述のように、圧力検出器48は、上記電流信号と閾値を比較し、その閾値を超えた場合に圧力信号Pを出力する。この閾値は、本装置に事前に設定された値でよい。例えば、一実施の形態では、そのような事前に設定された閾値は、全ての歯ブラシ装置に対して同一であってもよい。しかし、電流と圧力の間の関係は、個別の歯ブラシ装置の間で多様であることが判明している。従って、別の一実施の形態では、各歯ブラシは、その閾値がこれに該当する特定の歯ブラシに対する電流と圧力の間の関係を反映するように較正される。この場合には、その較正プロセスは、本歯ブラシ装置上のメモリに、その適切な1つの閾値または複数の閾値を格納してもよい。これにより、各歯ブラシは、加えられているおおよそ同一の圧力に応答して圧力信号Pを作成できる。
【0088】
上記引き出された電流量はさらに、上記バッテリーの充電状態にも依存するので、上記較正プロセスで、上記バッテリーの異なる充電状態に対して異なる閾値をさらに設定してもよく、それは、例えば当該バッテリーの電圧により判定できる。そのような多様な閾値は、本歯ブラシ装置上のメモリに格納されてもよい。この場合には、上述の圧力検出器は、上記バッテリーの充電状態に基づいて、その適切な閾値を調べ、これに該当する閾値と上記電流信号を比較し、その閾値を超えた場合に圧力信号Pを出力する。所望されるなら、異なる圧力値を表す複数の閾値を設定してもよい。
【0089】
図8は、本発明の一実施の形態における歯ブラシ装置の一部を示す。
図8を参照して、この実施の形態では、本歯ブラシ装置はモータ16とバッテリー18を備えるが、これは上述の対応する部品と同一である。本装置はさらに、電流センサー47と電圧センサー49、および、圧力検出器48の一部である比較モジュール43とメモリ45を備える。
【0090】
作動する際には、電圧センサー49を用いて、バッテリー18の電圧を測定する。その測定した電圧は、比較モジュール43に供給される。モータ16がバッテリー18から引き出す電流量は、電流センサー47によって検出されて比較モジュール43に供給される。比較モジュール43は、上記バッテリー電圧の測定値に基づいて、メモリ45から1つの閾値(または複数の閾値)を読み出す。比較モジュール43は次に、メモリ45から読み出した上記1つの閾値(または複数の閾値)と、電流センサー47からの電流の上記感知された値を比較する。上記閾値を超えた場合に、上記比較モジュールは圧力信号Pを出力する。圧力信号Pは、
図3に示す制御モジュール46および/または本装置の他の部分に供給される。
【0091】
本発明の別の一実施の形態では、上述のモータ電流の閾値は、モータ電流とバッテリー電圧の電流値およびメモリに格納された較正データに基づいて、所定の目標とされる(要求される)圧力(力)およびモータ速度に対して、(状態に基づいてメモリ/ルックアップ・テーブルから取り出されるのとは反対に)動特性により再算出される。試験により、全ての関係が直線関数により近似され得るので、較正データがモータ速度、目標とされる閾値圧力(力)とバッテリー電圧に応じて調整され得ることが示された。
【0092】
図9は、本発明の一実施の形態における圧力検出プロセスで行われる行程を示す。これらの行程は、
図2のマイクロ制御器30などのプロセッサー上のソフトウェアとして作動する圧力検出モジュールによって実行される。
【0093】
図9を参照して、ステップ150では、ゼロ負荷電流値と負荷電流値がメモリに格納された較正データから読み出される。これらの値は、較正プロセスの一部として本装置に前もって格納される値である。上記ゼロ負荷電流値は、上述の歯ブラシ頭部に圧力が加えられていないときの電流値であり、上記負荷電流値は、上記歯ブラシ頭部に所定の圧力が加えられているときの電流値である。両方の場合において、それらの電流値は上記モータが
最高速度(100%のデューティ・サイクル)にある場合に対応する。
【0094】
ステップ152では、上記ゼロ負荷電流値と負荷電流値が、メモリに格納された所定の関係(例えば、直線関数)を用いて、上記モータのデューティ・サイクル(速度)に応じて調整される。このモータのデューティ・サイクルは、例えば、
図3に示す制御モジュール46から取得される。ステップ154では、本装置が較正された圧力(力)がメモリから読み出される。ステップ156では、その所望の閾値圧力が、例えば、
図3に示す制御モジュール46から、もしくは、圧力フィードバック・モジュール(以下、参照)から取得される。上記所望の閾値圧力は、その実際の圧力と比較することが所望される圧力であるが、これは、例えば、そのユーザ、およびブラッシングを行っている自身の口腔の範囲に依存して多様である。ステップ158では、その閾値の電流値は、上記所望の圧力閾値と較正圧力に基づいて、上記ゼロ負荷および負荷電流値を調整することにより設定される。これは、メモリに格納された所定の関係(例えば、直線関数)を用いて行われる。ステップ160では、メモリに格納された所定の関係(例えば、直線関数)を用いて、上記閾値電流は、(上述の電圧センサーによって測定される)バッテリー電圧に応じて調整される。ステップ162では、追加の調整が、メモリに格納された所定の関係を用いて、モータの特徴(モータ速度および較正データ)に依存して付与される。これにより、モータの特徴の多様性を考慮に入れることができる。ステップ164では、上記コンピュータで算出した電流閾値が、上記実際のモータ電流値と比較される。ステップ166では、その比較の結果が、例えば、
図3の制御モジュール46に、圧力信号Pとして出力される。
【0095】
上述の配設により、上記閾値が、各歯ブラシに対して較正でき、上記バッテリーの充電状態に依存して変更可能になる。これにより、上記閾値を、その加えられている実際の圧力に対してより近接して対応させることができる。各比較は、単独の閾値に対して、もしくは、複数の異なる閾値に対して行われる。
【0096】
セットアップ
本歯ブラシ装置を初めて使用するとき、本歯ブラシ装置は典型的には、事前にインストールされたデフォルトのブラッシング・パラメータを備える。これらのパラメータは、ブラッシング速度およびブラッシング計時を含む。例えば、デフォルトの設定は、ユーザの歯の各四分円弧部分に標準的な速度で30秒間ブラシをかけることになっている。これらのパラメータは、メモリ32に格納されており、制御ユニット46がモータ16を制御するためにアクセスする。
【0097】
ユーザは、如何なる段階でも、移動式デバイス、またはコンピュータなどの任意の他の適した処理装置上にインストールされたアプリケーションを用いて、上記ブラッシング・パラメータを設定してもよい。このようなブラッシング・パラメータを設定するプロセスを、
図10に例示する。
【0098】
図10を参照して、ステップ100では、本歯ブラシ装置は、移動式デバイスまたは他の処理装置に接続される。ステップ102では、この移動式デバイス上で作動するアプリケーションは、セットアップ・モードに入力される。ステップ104では、そのユーザが事前に設定されたブラッシング・プロフィールを利用すること、または、当該ユーザ自身のブラッシング・プロフィールを設定することを望むかどうかが判定される。多数の事前に設定されたブラッシング・プロフィールは、例えば、そのユーザの年齢、ユーザの歯の履歴、またはユーザの好み(例えば、標準的なまたは軽いブラッシング)に基づいて設定される。これらのプロフィールはそれぞれ、事前に設定されたブラッシング・パラメータを有する。
【0099】
ユーザが事前に設定されたブラッシング・プロフィールを利用することを所望する場合
には、ステップ106で、その事前に設定されたプロフィールを選択する。一方で、そのユーザが自身のブラッシング・パラメータを入力することを所望する場合には、ステップ108で、当該ユーザがそのような自身のブラッシング・パラメータを入力する。上記ブラッシング・パラメータは、以下の項目を含むことができる。それらは、ユーザの口腔の各範囲のブラッシングを行うべき計時Ti、上記口腔の各範囲のブラッシングを行うべき速度Si、上記口腔の各範囲のブラッシングを行うべき最大限の圧力Pi、および、上記口腔の各範囲に対する最大限のブラッシング動特性Diである(4つの四分円弧部分に対して、i=1 … 4)。これらのパラメータは、各範囲に対して同一または異なってもよい。さらに、合計のブラッシング時間Ttを設定してもよい。Ttの値は、各範囲に対する個別の計時Tiの合計または何らかの他の値であってもよい。
【0100】
ステップ110では、上述の移動式デバイス上で作動するアプリケーションは、Bluetoothを介して本歯ブラシ装置に上記ブラッシング・パラメータを送る。ステップ112では、それらのブラッシング・パラメータをメモリ32に格納する。これらのブラッシング・パラメータはその後、制御ユニット46が利用できる。
【0101】
上述のプロセスは、異なるユーザのために繰り返されてもよい。それにより、異なるブラッシング・プロフィールは、本歯ブラシの異なるユーザが利用できる。
【0102】
制御モジュール
制御モジュール46は、メモリ32に格納されたブラッシング・パラメータに基づいて、モータ16の作動を制御するために作動できる。さらに、ユーザが、本歯ブラシ上のボタン25を用いて、最初のブラッシング速度などのいくらかのブラッシング・パラメータを設定してもよい。
【0103】
本発明の好ましい一実施の形態では、制御モジュール46はさらに、信号O、ブラッシング動特性Dおよび圧力信号Pの1つ、または2つ以上に依存して、モータ16の振動を制御するように配設される。概して、そのようなモータの振動の制御は、2つの目的のためである。第1に、ユーザにフィードバックを提供して当該ユーザのブラッシングを手引きする。第2に、当該ユーザのブラッシング技術、個人的好み、または歯の履歴に適合するように振動の速度を変更する。
【0104】
例えば、ユーザがどれほど長くブラッシングを行っただけでなく、ユーザが正確にどの部位のブラッシングを行ったかを判定する実力により、本装置は振動の計時をより利口に調整することができる。例えば、ユーザが無原則に自身の歯の複数の側部にブラシをかけても、それでもなお、本装置は、当該ユーザに対して、そのブラシの開始以来、如何なる時点で30秒に到達したとしても、1つの側部が必要とされる30秒間ブラシをかけられたということを通知することができる。
【0105】
さらに、本装置を用いれば、ユーザは自身の個人的なブラッシングの傾向を設定できる。例えば、各四分円弧部分に一度に15秒間ブラシをかけて、その手順を2回繰り返す、もしくは、各四分円弧部分に一度に10秒間ブラシをかけて、その手順を3回繰り返す。これらの異なる設定は、ただブラシをかけた時間だけを用いて測定されるとき、ブラシの振動は異なる時間に発生するということを意味する。
【0106】
本装置はさらに、ユーザがどの部位にブラシをかけているかに依存して、振動の速度を調整できる。口腔の特定の範囲に対して、他の範囲とは異なる速度でブラッシングを行うことは望ましい。例えば、歯肉は標準的には、歯より激しくない程度にブラシをかけるべきである。それ故、本装置は、過敏な歯肉を有する口腔の範囲、または、ユーザが過度にブラシをかける傾向がある範囲に対しては、他の範囲より低い速度でブラシをかけるよう
にプログラムされる。
【0107】
上記制御モジュールはさらに、ユーザが1つの範囲に過度に長くブラシをかけている場合には振動を停止または緩めるように、および/または、ユーザが1つの範囲を完了しないで別の範囲にブラシをかけ始める場合には振動を停止する、もしくは、緩めるようにプログラムされてもよい。
【0108】
制御モジュール46はさらに、フィルタリング・モジュール40から受け取ったブラッシング動特性Dに基づいて、上記モータの速度を制御してもよい。例えば、上記制御モジュールは、ユーザが過度に速くブラッシングを行っている(口腔を通して歯ブラシを過度に速く動かしている)と判定した場合には、振動を緩める、もしくは、停止してもよい。
【0109】
さらに、制御モジュール46は、圧力検出器48から受け取った圧力信号Pに基づいて、上記モータの速度を制御してもよい。例えば、上記制御モジュールは、ユーザが過度に激しくブラッシングを行っていると判定した場合には、振動を緩める、もしくは、停止してもよい。あるいは、その振動の速度は、どれほど高い圧力が加えられているかを指示する値に基づいて設定されてもよい。例えば、増加する圧力が加えられると、上記振動の速度を低下させてもよい。これにより、ユーザが自身の歯に対して過度にブラシをかけないことを確実にするので、そのユーザのブラッシング技術の欠点の埋合せをすることができる。
【0110】
圧力のフィードバック
本発明の好ましい一実施の形態では、本歯ブラシシステムは、ユーザが自身の口腔の異なる部位のブラッシングを行っている間にどれほど高い圧力が加えられたかに関して、当該ユーザに対して、フィードバックを提供するように配設される。これは、その向きデータを圧力データと連係させることによって達成できる。圧力のフィードバックは、(ブラッシングの間)リアルタイムで、および/または、ブラッシングの後に提供される。本歯ブラシは、スマートフォン(オンライン)などの外部装置に接続されている間に、または独立して(オフライン)作動する。
【0111】
図11は、本発明の一実施の形態における歯ブラシシステムの一部を示す。
図11を参照して、本システムは、歯ブラシ装置10と移動式デバイス38を備える。本歯ブラシ装置は、加速度センサー24と、フィルタリング・モジュール40と、クラスタリング・モジュール42と、メモリ32と、比較モジュール44と、制御モジュール46と、電流センサー47と、電圧センサー49と圧力検出器48、および、モータ16とバッテリー18を備える。これらの構成部品は、
図2、
図3および
図8を参照して、上述の対応する構成部品と同一または類似であってもよく、それ故、さらに説明はされない。
【0112】
図11の本歯ブラシ装置はさらに、圧力フィードバック・モジュール70と、時計モジュール72とセクター光74を備える。圧力フィードバック・モジュール70は、比較モジュール44から向き信号Oおよび圧力検出器48から圧力信号Pを受け取る。圧力フィードバック・モジュール70はさらに、時計モジュール72から計時信号を受け取る。圧力フィードバック・モジュール70は、制御モジュール46とメモリ32に、および(上述と同一または類似する)Bluetoothのモジュール36に接続される。圧力フィードバック・モジュール70は、セクター光74上の圧力データを表示し、および/または、Bluetoothのモジュール36を介して移動式デバイス38に圧力データを送信するように配設される。圧力フィードバック・モジュール70は、例えば、
図2のマイクロ制御器30上で実行するソフトウェア・モジュールであってもよい。
【0113】
作動する際には、圧力フィードバック・モジュール70は、向き信号Oおよび圧力信号
Pの連続する値を受け取り、ユーザに対して、自身の口腔の異なる部位に加えられたブラッシング圧力に関するフィードバックを提供するために、それらの値を処理する。このフィードバックは、リアルタイムで、あるいは、ブラッシングの後のどちらか、または両方で提供できる。
【0114】
リアルタイムの圧力フィードバックを提供するために、圧力フィードバック・モジュール70は、向き信号Oおよび圧力信号Pの連続する値を(例えば、20Hzの速度で)同時にかつ連続する時間間隔で受け取る。各時間間隔に対して、それらの圧力値と1つまたは2つ以上の圧力閾値を比較する。これは、上述の圧力検出プロセスの一部として、および/または、圧力検出器が実行する別個のプロセスの一部として行うことができる。上記圧力閾値は、事前に格納された標準の閾値でもよいし、もしくは、特定のユーザに応じてカスタマイズされてもよい。所望されるなら、それらの閾値は、例えば、歯ブラシの向き、またはブラッシングの履歴に依存して、動特性により変動可能であってもよい。
【0115】
一実施の形態では、圧力フィードバック・モジュール70は、所望の閾値圧力を圧力検出器48に出力する(
図9のステップ156を参照)。圧力検出器48は次に、
図9を参照して上述のステップを用いて圧力信号Pを算出する。しかし、圧力信号Pを取得するための上述の他の技術のいずれを代わりに用いてもよい。そのような圧力信号が変動可能な場合には、圧力フィードバック・モジュール自体によって、各時間間隔に対して、上記圧力信号の値と1つまたは2つ以上の圧力閾値を比較してもよい。
【0116】
上記圧力信号の値は、その比較の結果に依存して、圧力帯域に類別されてもよい。単独の閾値の場合には、その圧力信号は、2つの圧力帯域(例えば、「低」または「高」)のうちの1つを指示するバイナリー値である。しかし、所望されるなら、その圧力を複数の異なる閾値と比較することにより、複数の異なる圧力帯域(例えば、「低」、「中」または「高」)に分類することができる。各時間間隔に対する上記圧力帯域は次に、上述の向き信号の値と共に、メモリ32に格納される。次に、ユーザに対して、該当する口腔の区分に加えられた圧力に関するフィードバックが映像で付与される。
【0117】
移動式デバイスに接続されているときは、このフィードバックは、本装置の画面を用いて行われる。この場合には、Bluetoothのモジュール36を用いて、上記圧力帯域と上記向き信号(ブラッシングが行われている口腔の範囲)を移動式デバイス38に送信する。上記移動式デバイスは次に、そのデータを処理して所望のフィードバックを提供する。例えば、ユーザの口腔の映像表現を用いて、例えば、異なる圧力を異なるカラーとして示すことにより、特定の範囲に加えられている圧力を示してもよい。あるいは、そのような圧力の数値による表現を表示することができ、もしくは、テキストまたはアイコンを用いて上記圧力を指示することができる。そのようなデータの特色を示す的確な仕方は、適切であれば多様であってもよい。
【0118】
ユーザが外部装置に接続せずにブラッシングが行っているときは、本歯ブラシ上のセクター光74を用いて、圧力フィードバックを達成できる。セクター光74のそれぞれは、そのユーザの口腔の異なる部位に対応している。例えば、(上述の向き信号の値に基づいて選択される)直接に関係するセクター光は、該当するセクターに対応する圧力が閾値を超えると点灯する。あるいは、「交通信号灯」システムを用いて、特定のセクター光を、例えば、該当するセクターに対応する圧力に依存して、赤色、黄色または緑色などの特定のカラーで表示することができる。
【0119】
ブラッシングの後のフィードバックの場合には、全ブラッシング・セッションのために、上述の向き信号Oおよび圧力信号Pの値が受け取られて格納されるそのブラッシング・セッションには、時計モジュール72によって、時刻の刻印(日付および時間)が付与さ
れる。上記ブラッシング・セッションは次に、複数のブラッシング時間単位(例えば、50ミリセカンド、500ミリセカンド、1秒など)に分割される。各時間単位は、該当する時点における向き信号Oおよび圧力信号Pの値でラベルにより分類される。そのラベルにより分類された時間単位は、メモリ32に格納される。この取組み方法では、その圧力と向きの時間単位は、(より容易な処理に対して)同一であるか、もしくは、異なってもよい。それらが異なる場合には、上記圧力と向きの単位はその後、標準化されるので、当該ユーザは自身のブラッシングに関する正確なフィードバックを受け取ることができる。
【0120】
フィードバックは、例えば、ブラッシングの間にユーザの口腔の異なる部位に加えられた平均圧力を指示する「圧力マップ」を作成することにより、移動式デバイス38の画面上に提供される。あるいは、フィードバックは、本歯ブラシ上のセクター光74を用いて提供することができる。この場合には、そのようなセクター光上異なるカラーを用いて、異なる圧力閾値を示すことができる。数値による表示などの直接に関係するデータの特色を示す他の方法が、代わりに用いられてもよい。
【0121】
所望されるなら、1つの全ブラシ・セッションまたは多数のブラシ・セッションに亘って、多数のブラッシング・セッションを集めて1つにすることができる。これにより、ユーザの口腔の圧力マップをブラシ・セッションの後に、または、1日、1週間、1カ月などの特有の期間に亘って提供できる。
【0122】
図12は、圧力フィードバック・データを取得するために、一実施の形態における圧力フィードバック・モジュール70が実行する行程を示す。
図12を参照して、ステップ200で、この圧力フィードバック・モジュールは、ブラッシング・セッションの開始を検出する。これは、モータ16を始動するために制御モジュール46からの信号に基づいて、および/または、フィルタリング・モジュール40からのブラッシング動特性Dに基づいて行われる。ステップ202で、上記圧力フィードバック・モジュールは、時計モジュール72から受け取った計時信号Tに基づいて、上記ブラッシング・セッションの時刻を日付と時間で刻印する。ステップ204で、上記圧力フィードバック・モジュールは、比較モジュール44から向き信号Oの電流値、および圧力検出器48から圧力信号Pの電流値を受け取る。ステップ206で、圧力フィードバック・モジュール70は、上記向きおよび圧力信号の電流値の時刻を時計モジュール72から受け取った計時で刻印する。この時刻の刻印は、絶対値あるいは上記ブラッシング・セッションの開始からのずれのどちらかでよい。ステップ208で、上記圧力フィードバック・モジュールは、上記向きおよび圧力信号の時刻が刻印された値をメモリ32に格納する。ステップ210で、上記圧力フィードバック・モジュールは、上記ブラッシング・セッションが終了したかどうかを判定する。これは、制御モジュール46からのセッション信号の終了に基づいて、および/または、フィルタリング・モジュール40からのブラッシング動特性Dに基づいて行われる。上記ブラッシング・セッションが終了していない場合は、この処理はステップ204に戻り、上記圧力フィードバック・モジュールが、向き信号Oおよび圧力信号Pの次の値を受け取る。上記ブラッシング・セッションが終了している場合は、ステップ212で、上記圧力フィードバック・モジュールは、向き値、圧力値および時刻の刻印の全セットをメモリ32のブラッシング・データのファイルに格納する。ステップ214で、上記圧力フィードバック・モジュールは、そのブラッシング・データのファイルを移動式デバイス38にBluetoothのモジュール36を介して送信する。
【0123】
図13は、圧力データを表示するために、移動式デバイス38が実行する行程を示す。この実施の形態では、上記移動式デバイスは、これらの適切なステップを実行するために、本装置上で作動するアプリケーションを含む。ステップ220で、この移動式デバイスは、Bluetoothのモジュール36を介して送信された、ブラッシング・データのファイルを本歯ブラシ装置から受け取る。ステップ222で、上記移動式デバイスは、ブラッシン
グ圧力マップが作成されるべき期間TPを取得する。その期間TPは、例えば、ブラッシング・セッションの一部、全ブラッシング・セッションまたは多数のブラッシング・セッションに対応する。期間TPは、ユーザが入力する、本装置に事前に格納されている、もしくは、本装置上で作動するアプリケーションによって自動的に作成される。ステップ224で、上記移動式デバイスは、ユーザの口腔の各範囲に対する圧力値を、各圧力範囲と結び付けられた向き信号Oと計時信号Tの値に基づいて、期間TP以内で特定する。ステップ226で、上記移動式デバイスは、期間TPに亘る上記口腔の各範囲に対する圧力の平均値を作成する。ステップ228で、上記移動式デバイスは、期間TPに亘る上記口腔の各範囲に対する圧力の平均値を、ブラッシング圧力マップとしてメモリに格納する。ステップ230で、上記移動式デバイスは、そのブラッシング圧力マップを本装置の画面上に表示する。
【0124】
図14は、上記移動式デバイスの画面上に示すブラッシング圧力マップの一例を示す。
図14を参照して、その画面を用いて、ユーザの口腔内の歯の表現を示す。これらの歯のそれぞれを特定のカラーで表示し、そのカラーは、ブラッシング圧力の特定の範囲を表現している。この画面をさらに用いて、ブラッシング・セッションの間の上記平均ブラッシング圧力、上記マップを作成した期間TP、および任意の他の直接に関係するデータを表示してもよい。
【0125】
あるいは、上記画面を用いて、時間の経過とともに、上記口腔の各範囲に対するブラッシング圧力の進展を、動画表示を用いて示すことができる。
【0126】
本歯ブラシ装置上の圧力フィードバック・モジュール70はさらに、
図13を参照した上述と類似した仕方で、圧力マップを作成するように配設されてもよい。この場合には、上記ブラッシング圧力マップは、本歯ブラシ装置自体上にあるセクター光74上に表示される。例えば、各セクター光は、ブラッシング・セッションの間などの特定の期間に亘って、該当するセクターに対する上記ブラッシング圧力の平均値に依存するカラーを表示してもよい。
【0127】
図15は、複数のセクター光を備える電動歯ブラシの一例を示す。
図15を参照して、この実施の形態では、本歯ブラシ装置は、ボタン75の周囲に一定の間隔で配置された4つのセクター光を備える。このボタンを用いて、本装置の電源をオンまたはオフにする、および/または、設定を調整できる。これらのセクター光はLEDであり、それらはそれぞれ、ユーザの口腔の異なるセクターを表す。これらのセクター光は、異なるカラーを表示して異なる圧力を表現することができる。
【0128】
上述の配設では、上記ブラッシングの向きと圧力値は、時計モジュール72からの計時信号Tを用いて、それらの値を測定した時刻とともに格納される。この場合には、それらの処理された位置と圧力の値を格納することができ、もしくは、それらの生の値を格納することができる。
【0129】
向きと圧力を高精度で格納して上記圧力マップを提供するために、ブラッシングが外部装置から独立して行われているとき、時刻の刻印を外部時計と高い信頼性で時刻を合せ、かつ、オフセットされなければならない。本歯ブラシ装置の時計72は、オンラインの時に(例えば、スマートフォン/タブレットに接続されて)その時刻を基準線源から時刻を合せることができる。それ故、本装置上の上記時計を用いて、その後の相対的な時計のずれを測定する。これにより、本歯ブラシ装置は、この装置がオフラインで使用されているときに、このブラッシング時刻を適正に刻印できる。
【0130】
本歯ブラシ装置のバッテリーの電力が完全に消費された場合に、上記時計と時刻が合わ
なくなる。この場合には、本歯ブラシ装置は、最後のブートから(バックアップして充電してから)時間の長さを記録し、本装置がオンラインに戻ったときに合わなくなった時間を矯正できる。
【0131】
上述の配設では、向き信号Oと圧力信号Pの値はともに、それらの値の時刻を刻印することによって連係される。これにより、ブラッシング・セッションの一部、全ブラッシング・セッションまたは多数のブラッシング・セッションなどの多様な異なる期間に亘って、ユーザの口腔の各範囲に対する平均圧力を示す圧力マップを作成できる。さらに、過度に大きな圧力が加えられた時間の長さを判定し、ユーザにフィードバックできるので、当該ユーザが自身のブラッシング技術を矯正するのに役立つ。さらに、時間の経過とともにブラッシング圧力の進展を表示することができる。
【0132】
他の一配設では、上記ブラッシングの向きと圧力の値を時刻の刻印に連係させずに、それらの値を結合させることにより、方向と圧力に対する「左高」、「左中」、「左低」を指示する”LH”,”LM”,”LL”などの個別の単位にする。これにより、何らかの機能性を失うという犠牲を払って、格納および/または送信する必要があるデータ量を減少させ、および/または、その処理を簡素化できる。
【0133】
上述では、本発明の好ましい特徴を、多様な実施の形態を参照して説明している。しかし、本発明はこれらの実施の形態に限定されず、細部の変更が添付した請求の範囲内でなされてもよい。例えば、上記圧力信号を作成するためにモータ電流を用いるよりむしろ、圧力スイッチまたは圧力センサーを代わりに用いることができる。当業者にとって、他の細部の修正は明白である。