(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】シートベルトリトラクタ
(51)【国際特許分類】
B60R 22/46 20060101AFI20240823BHJP
B60R 22/48 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B60R22/46 166
B60R22/48 102
(21)【出願番号】P 2022530852
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2020083283
(87)【国際公開番号】W WO2021105159
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】102019218307.7
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】ジャブッシュ、ロナルド
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-245950(JP,A)
【文献】特開2005-053422(JP,A)
【文献】特開2005-029014(JP,A)
【文献】特開2004-074860(JP,A)
【文献】特開2001-347922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00-22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトリトラクタ(1)であって、
車両に固定されて締結され得るハウジング(2)内に回転可能に取り付けられ、安全ベルト(3)が巻き付けられ得るベルトシャフト(4)と、
前記ベルトシャフト(4)を回転運動に駆動するための電気モータ(5)と、
前記電気モータ(5)から前記ベルトシャフト(4)に回転運動を伝達するギア機構(6)と、
を備え、
前記ギア機構(6)は、停止されると、前記ベルトシャフト(4)を駆動するためのアセンブリとして第1のトルクで駆動させることができ、
前記ベルトリトラクタ(1)は、前記安全ベルト(3)によって加えられる引張力を超えると、前記電気モータ(5)の回転方向と反対の回転方向の回転運動に駆動される第1の部分を有し、
前記第1の部分の回転運動を制動し、結果として、遮断装置(18)を作動させて、ギア機構(6)の第2の部分を遮断する制動装置(13)が提供され、
前記第2の部分を遮断することによって、前記遮断装置(18)が、前記ギア機構(6)を作動させて、前記電気モータ(5)の前記回転運動を減速比で前記ベルトシャフト(4)に伝達する、ベルトリトラクタ。
【請求項2】
前記ギア機構(6)が、前記電気モータ(5)の前記回転運動を、前記ベルトシャフト(4)のより低速の回転運動へ減速する減速ギア機構である、
請求項1に記載のベルトリトラクタ(1)。
【請求項3】
前記遮断装置(18)が、所定のベルト引き出し加速度及び/又は車両減速度を超えると、前記ベルトシャフト(4)を遮断するように構成されている、
請求項1又は2に記載のベルトリトラクタ(1)。
【請求項4】
前記第1の部分が、前記遮断装置(18)の運動を強制する制御ディスク(11)によって形成されている、
請求項3に記載のベルトリトラクタ(1)。
【請求項5】
前記制動装置(13)が信号制御される、
請求項1~4のいずれか一項に記載のベルトリトラクタ(1)。
【請求項6】
前記制御ディスクが歯(34)を有し、前記制動装置(13)が信号によって作動されて、前記制御ディスクの前記歯(34)に係合するように運動することができる遮断レバー(33)を有する、請求項
4に記載のベルトリトラクタ(1)。
【請求項7】
前記ギア機構(6)が、遊星ギア機構である、
請求項1~6のいずれか一項に記載のベルトリトラクタ(1)。
【請求項8】
前記遊星ギア機構が、前記ベルトシャフト(4)に回転可能に固定されて接続され、歯(26)を有する環状ハウジング(10)を有し、前記ギア機構(6)の前記第2の部分が、歯を有する2つ以上の遊星ギア(21)が回転可能に装着される遊星キャリア(12)によって形成され、前記遊星ギアが、前記環状ハウジング(10)の前記歯(26)のそれらの歯と噛合し、
前記電気モータ(5)によって駆動される歯付き太陽ギア(23)が提供され、前記遊星ギア(21)の前記歯に係合し、
前記ギア機構(6)が作動されると、前記太陽ギア(23)が、前記遊星ギア(21)と前記環状ハウジング(10)を介して
、第2の力伝達経路(II)において、前記遮断装置(18)によって遮断された前記遊星キャリア上に支持されながら回転運動に前記ベルトシャフト(4)を駆動する、
請求項7に記載のベルトリトラクタ(1)。
【請求項9】
前記環状ハウジング(10)が、内側歯付きリングギアによって形成され、
前記遊星ギア(21)を有する前記遊星キャリア(12)と前記遊星ギア(21)を駆動する前記太陽ギア(23)とが、前記リングギアに配置されている、
請求項8に記載のベルトリトラクタ(1)。
【請求項10】
前記ベルトシャフト(4)、前記ギア機構(6)、及び前記電気モータ(5)が、互いに同軸及び直列に配置されている、
請求項1~9のいずれか一項に記載のベルトリトラクタ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルの特徴を有する、シートベルトリトラクタに関する。
【0002】
ベルトリトラクタは、基本的構成要素として、耐荷重フレームと、ベルトリールとを有し、ベルトリールは、フレーム内で回転可能に装着されており、安全ベルトが、ベルトリール上に巻き付けられ得る。フレームは、ベルトリールの装着のために機能するだけでなく、座席構造体又は車両構造体への締結のためにも機能し、このために、フレームは、U字形状フレームに屈曲した対応する厚さの鋼板から作製されている。
【0003】
安全ベルト装置を有する車両座席は、例えば、コンバーチブル内の前座席としての使用において既知であり、少なくとも、安全ベルト装置のベルトリトラクタは、車両座席の背もたれ内で締結されている。この場合、耐荷重Bピラーの欠如に起因して、及び後座席へのアクセスに関する理由から、又は後部車両構造体からの距離に関する理由から、ベルトリトラクタは、好ましくは、車両座席の背もたれ内に組み込まれており、したがって、これはまた、拘束の場合に作用する引張力を吸収するように設計されなければならない。このベルトリトラクタ自体は、標準的なベルトリトラクタの全ての基本的構成要素を有しており、自己整合慣性センサなどの、特に背もたれ内に設置するために提供されている、様々な追加的サブアセンブリのみを装備している。
【0004】
車両座席の基本的設計において、車両座席は、いくつかの耐荷重構造部品から成る座席構造体を有し、耐荷重構造部品は、車両座席を車両構造体に締結するように機能する。座席構造体は、座り心地を改善するためにばね及び緩衝材を装備し、座席構造体はまた、関連する電気モータを含む様々な座席調節機構などの更なる構成要素、並びに加熱装置、センサ、ディスプレイ、及びヘッドレストなどの更なる構成要素の締結のために使用される。
【0005】
自律運転システムを有する現代の車両では、車両の乗員が、例えば、他の乗員とのより有意義なコミュニケーション、長時間のより集中的な休息期間、又は更には仕事のために、自律運転によって得られる自由を使用することができ、これに応じて車両座席を配向することができるように、様々な向き及び位置における車両座席のより大きい調節性の要求が高まっている。結果として、安全ベルト装置、及び、特にベルトリトラクタは、以前のように車両構造体に締結されるのではなく、むしろ、例えばコンバーチブルの前座席の場合に既にあるように車両座席に締結される必要がある。
【0006】
更に、現代の安全ベルト装置では、ベルトリトラクタに電気モータが設けられており、電気モータは、例えば、巻き上げ方向の可逆的なベルト締め付けへの作動時にベルトシャフトを駆動する。電気モータは、同様にフレームに締結され、ベルトシャフトの横方向に配置され、駆動シャフトがベルトシャフトの回転軸に平行に配向される。更に、ベルトシャフトと電気モータとの間にギア機構を提供することが既知であり、そのギア機構を用いて、電気モータの回転速度がベルトシャフトの所定の回転速度に変換される。また、ギア機構の使用により、高い回転速度で可能な限りコンパクトな電気モータを使用することが可能になる。したがって、ギア機構によって可能になったコンパクトな電気モータの使用にもかかわらず、設置空間要件が増加したベルトリトラクタが全般に製造されている。そのようなベルトリトラクタは、例えば、公開WO 03/0 99 619 A2から既知である。
【0007】
ベルトシャフトが様々な回転速度及びトルクで駆動される場合、更なるギア段が提供されなければならず、このため、設置スペース要件が更に増加する。そのようなベルトリトラクタは、例えば、公開DE 199 27 731 C2から既知である。
【0008】
車両座席の座席構造体、又は概して超小型車両上で利用可能な設置空間は、サイズが非常に限られており、設計上の理由で所望に拡張させることができず、車両座席上又は更には小型車両におけるそのようなベルトリトラクタの配置は基本的に問題をはらむ。
【0009】
これを背景に、本発明の目的は、設置空間要件が低減された、ギア機構と電気モータとを備えた改良ベルトリトラクタを提供することである。
【0010】
目的を達成するために、請求項1の特徴を有するベルトリトラクタが提案されている。更に、本発明の好ましい実施形態は、従属請求項、図、及び関連する説明から得られる。
【0011】
本発明の基本的な考え方によれば、停止状態では、ギア機構は、ベルトシャフトを第1のトルクで駆動するためにアセンブリとして駆動することができ、ベルトリトラクタは、安全ベルトによって加えられる引張力を超えると、電気モータの回転方向の反対の回転方向に駆動される第1の部分を有し、第1の部分の回転運動を制動することによって、ギア機構の第2の部分を遮断するように遮断装置を作動する制動装置が提供され、第2の部分を遮断することによって、遮断装置は、減速比で電気モータの回転運動を伝達するようにギア機構を作動する。
【0012】
停止状態では、ギア機構はアセンブリとして、第1の力伝達経路を形成し、ここで、電気モータの回転運動は、1:1で、すなわち、伝達比又は減速比なしでベルトシャフトに伝達される。このアセンブリは、電気モータとベルトシャフトとの間に配置され、回転可能に固定されて両方の部品に接続されるブロックを形成する。第1の力伝達経路では、すなわち、ギア機構が1:1で回転運動を伝達するとき、安全ベルトは、バックルを外した後に留置位置に能動的に引き戻すことができる(巻き補助)。したがって、ベルトリトラクタで以前に使用されていた駆動ばねが支持され得るか、又は極端な場合、省略され得る。この場合、電気モータの回転速度は100~200rpmであり、安全ベルトは約10~50Nの引張力で引き込まれる。
【0013】
第2の力伝達経路では、ギア機構が作動されると、電気モータのシャフトは、それに応じてより高い電流供給によってより高速の回転速度まで駆動され、次いで、ギア機構によってより低速の回転速度まで減速され、その結果、例えば、約150~800Nのより高い引き込み力で、相当の短時間、60~10000rpmの回転速度で、可逆的な予締めのために安全ベルトが引き込まれる。ギア機構の作動と第2の力伝達経路の開放は、ギア機構の設計によって予め決定された、安全ベルトによって加えられる引張力を超えると自動的に行われる。例えば、電気モータが約5000~30000rpmの相当高速の回転速度で動作し、ベルトの弛みが急速に引き出されて、この所定の引張力を超過することによって、安全ベルト内の引張力が急激に上昇し、ギア機構が作動される。この場合、ギア機構の作動の前に、ベルトリトラクタの第1の部分が、電気モータのシャフトの回転方向と同じ方向に回転する。安全ベルトにおける反力の上昇後、安全ベルトをそれ以上巻き上げることができなくなるため、第1の部分はまず、第1のステップで電気モータの回転方向に逆らって回転し、電気モータの駆動回転運動が、この段では回転方向反転ギア機構として動作するギア機構を介して、逆の回転方向で第1の部分に伝達される。次いで、第1の部分のこの逆回転運動は、本発明に従って提供される制動装置によって制動され、その結果、遮断装置が作動されてギア機構の第2の部分を遮断する。次に、ギア機構のこの第2の部分の遮断は、ギア機構を作動させ、ギア機構を通る第2の力伝達経路が開放される。
【0014】
結果として、2つの異なる機能、すなわち、安全ベルトを留置位置まで巻き上げるためのコンフォート機能と、事故前の段階での可逆的なベルト締め付けとが、結果として必要な設置空間を増大させることなく、単一の電気モータ及び単一のギア機構で実現され得る。したがって、非常にコンパクトな多機能ベルトリトラクタを作製することができ、そのコンパクトな設計により、ベルトリトラクタは好ましくは、背もたれに、特に好ましくは自動車の背もたれの上縁部に配置され得る。短時間の回転方向反転によってのみ引き起こされる第2の部分の遮断は、第1の力伝達経路における回転方向を反転させずに第2の部分が通常の駆動回転運動中に遮断され、それによって、ギア機構が誤って作動されることを防止することができるため、本発明による解決策にとって特に重要である。回転方向の反転は、克服されるべきベルト力が急激に増加することによって引き起こされ、これは、電気モータの回転速度が可逆的予締めのために急激に上昇するが、電気モータがギア機構にトルクを加え続ける場合である。この場合、ギア機構はそれ自体、もはやベルトシャフトに伝達することはできないが、ベルトシャフトの第1の部分の回転方向を反転させるトルクと、それによってギア機構の第2の部分によって引き起こされる遮断とによって、実際に作動する。遮断後、遮断装置又はギア機構の遮断された第2の部分は、第2の力伝達経路内のギア機構のための車両に固定された支持体を形成する。
【0015】
この場合、ギア機構は、好ましくは減速ギア機構であり得、電気モータの回転運動をベルトシャフトのより低速の回転運動に減速する。そのようなギア機構を使用することによって、電気モータは、好ましくは、より大きな引き込み力を実現するために更により高速の回転速度で動作できることが好ましく、その回転速度は、第2の力伝達経路において減速される。このため、非常に高速の回転速度で可能な限りコンパクトな電気モータを使用して、ベルトリトラクタのコンパクトな設計を実現することが可能になる。
【0016】
所定のベルト引き出し加速度及び/又は車両減速度を超えると、遮断装置がベルトシャフトを遮断するように更に構成されることが提案されている。法的要件によると、ベルトリトラクタは、ベルトの引き出し加速度及び車両減速度の所定限度値を超えると、ベルトシャフトを引き出し方向に遮断する遮断装置を有していなければならない。本発明による解決策を通じて、ギア機構の切り換えのために使用される本発明による遮断装置は、同時に法定要件を満たすためにも使用され得る。言い換えれば、既存の遮断装置は、ギア機構を切り換えるためにも使用され得る。この場合、遮断装置の作動運動は、遮断装置を使用してごく簡単にベルトシャフトのベルトストラップ感知遮断を実現することができるため、電気モータの駆動回転運動の反転によってのみトリガされることが特に有益であり、これは同様に、引き出し方向のベルトリトラクタの一部(制御ディスク)の運動と後者の停止とによって引き起こされる。
【0017】
更に、第1の部分が、遮断爪の運動を強制する制御ディスクによって形成されることが提案されている。制御ディスクは、遮断爪がもたれかかる制御輪郭を有し、その結果、遮断爪の運動は、制御ディスクの運動によって制御される。このようにして、遮断装置及び遮断プロセス自体の運動がトリガされ得るだけでなく、その過程で定義及び制御することもできる。
【0018】
この場合、制動装置は、好ましくは信号制御することができ、それにより、第1の部分の制動プロセスは、外部信号によって意図的にトリガされ得る。この場合、制動装置は、電気モータの作動と同時に、又は電気モータの回転速度の上昇から所定時間後に作動させることができ、これにより、増大したベルト力によって引き起こされる第1の部分の回転方向の逆方向の運動が直ちに再度制動され、遮断装置の作動は、可能な限り最短で引き起こされ得る。全体として、ギア機構を切り換えるために必要な期間が、それによって短縮され得る。更に、電気モータを作動させるための信号も、当然ながら同様に、制動装置を作動させるために使用することができるため、両方のプロセスが同時にトリガされる。
【0019】
更に、この場合、制御ディスクが歯を有し、制動装置が、制御ディスクの歯に係合するように移動する信号によって作動され得る遮断レバーによって形成されることが提案されている。制御ディスクは、この場合、車両に固定されて支持される遮断レバーの制御ディスクの歯への偏向によって停止又は制動され、それにより、その後、制御ディスクが回転運動を実行しなくなり得、遮断爪は、遮断運動を実行するように強制される。
【0020】
更に、ギア機構が遊星ギア機構であることが提案されている。遊星ギア機構は、好ましい力比を有するコンパクトな設計を特徴とし、それによってギア機構の外部寸法を増加させることなく高い減速を可能にする。遊星ギア機構を設計するためには、遊星ギア、太陽ギア、及び遊星ギアが転動する歯の直径比のみが選択されなければならない。
【0021】
この場合、遊星ギア機構は、好ましくは、回転可能に固定されてベルトシャフトに接続され、歯を有する環状ハウジングを有するように設計することができ、ギア機構の第2の部分は、歯を有する2つ以上の遊星ギアが回転可能に装着される遊星キャリアによって形成することができ、遊星ギアは、環状ハウジングの歯と噛合しており、電気モータによって駆動され、遊星ギアの歯と係合する歯付き太陽ギアを提供することができ、太陽ギアは、ギア機構が始動されると、遊星ギアと環状ハウジングを介して、第2の力伝達経路において、遊星キャリアを遮断することによって回転運動にベルトシャフトを駆動する。提案された設計の結果として、特にコンパクトな遊星ギア機構、したがって、コンパクトなベルトリトラクタを、同時に電気モータの駆動回転運動を大きく減速させながら実現することができる。更に、遊星キャリアの遮断によって、電気モータの駆動回転運動を非常に容易に反転させることができる。
【0022】
この場合、環状ハウジングは、好ましくは内側歯付きリングギアによって形成され得、遊星ギアを有する遊星キャリアと遊星ギアを駆動する太陽ギアは好ましくは、リングギア内に配置され得る。したがって、リングギアは、遊星ギアがその上を転動する歯だけでなく、遊星ギア、遊星キャリア、及び太陽ホイールを収容するハウジングも形成し、これらの部品を外側から保護する。
【0023】
可能な限り最小の断面及び細長形状を有する特にコンパクトな設計は、ベルトシャフト、ギア機構、及び電気モータが互いに同軸及び直列に配置されているという点で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明について、添付の図を参照して、好ましい実施形態を使用して以下で説明する。図は以下を示す。
【
図1】開放ハウジングを有する本発明によるベルトリトラクタを示す図である。
【
図2】第1の斜視図におけるハウジングを備えた本発明によるベルトリトラクタの分解図である。
【
図3】第2の斜視図におけるハウジングのない本発明によるベルトリトラクタの分解図である。
【
図4】本発明によるベルトリトラクタの断面図である。
【0025】
図1は、ハウジング2を有する本発明によるベルトリトラクタ1を示す。ハウジング2は、2つの部分に形成され、第2の部分なしで開放されて示されているため、その中に配置された部品がより良く見える。ベルトリトラクタ1は、ベルトシャフト4、ギア機構6、及び電気モータ5を有し、これらは、互いに同軸及び直列に配置され、したがってハウジング2内に薄い細長構造ユニットを形成する。ベルトリトラクタ1の構成要素は、ハウジング2上に支持された複数のウェブ24によって装着され、センサ、可逆的なベルト締め具の構成要素、電線などの更なる装置のためのレセプタクルを追加で有することができる。更に、駆動ばねアセンブリ8が面側ウェブ24の外側に保持され、駆動ばねを備え、駆動ばねは、ばね心を介してベルトシャフト4に接続され、安全ベルト3の引き込み方向にベルトシャフト4に荷重を加える。更に、不可逆的な締め付け装置7が提供され、この締め付け装置は、駆動ホイール及びギア機構6を介した作動時に、切迫した事故がもはや回避できないとき、巻き上げ方向に高い締め付け力でベルトシャフト4を直ちに駆動する。
【0026】
図2及び
図3は、ハウジング2のある場合とない場合の同じベルトリトラクタ1の2つの異なる分解図である。ギア機構6は、内側歯26を有するポット形状の第1のリングギアとして設計され、安全ベルト3の巻き上げ方向に回転可能に固定されてベルトシャフト4へのバヨネット接続を介して接続された環状ハウジング10を備える。したがって、環状ハウジング10は、ベルトシャフト4の環状の内側歯付き拡張部とみなすこともできる。更に、3つの第1の外側歯付き遊星ギア31が回転可能に装着された3つの軸方向突出ジャーナル32が、ベルトシャフト4に設けられている。第1の遊星ギア31は、電気モータ5のシャフト14に回転可能に固定されて接続された中央の第1の太陽ギア15の歯の径方向内側に係合する。更に、第1の遊星ギア31は、別の軸方向に突出する第2の太陽ギア29が設けられる第2のリングギア28の内側歯30の径方向外側に係合する。したがって、ベルトシャフト4は、第1の遊星ギア31を保持するための第1の遊星キャリアを形成する。第2の太陽ギア29は、同様に追加の第3の太陽ギア23を有する第2の追加の遊星キャリア22の3つの追加の第2の遊星ギア27と歯合係合している。第3の太陽ギア23は、第3の遊星キャリア12の3つの追加の第3の遊星ギア21のセットと歯合係合しており、第3の遊星キャリアは、外側歯付き拡張部19を介してプロファイルヘッド17に回転可能に固定されて接続されている。プロファイルヘッド17はまた、不可逆的な締め付け装置の駆動装置の駆動運動を伝達するための係合輪郭が径方向外側に設けられることによって、不可逆的な締め付け装置7の締め付け駆動ホイールを形成する。第3の遊星キャリア12と共に、プロファイルヘッド17は、回転可能な固定接続を形成する。更に、プロファイルヘッド17は、突出ピン35を有する旋回可能に装着された遮断爪の形態の遮断装置18のキャリアであり、この遮断爪は、外側にプロファイルヘッド17から離れるように旋回すると、ウェブ24のうちの1つのハウジングに固定された歯25内へと回転するように配置及び配向される。ウェブ24において、ハウジングに固定された遮断爪の歯と歯25は、遮断爪が歯25に係合すると、安全ベルト3の引き出し方向にプロファイルヘッド17と第3の遊星キャリア12を遮断するように配向される。
【0027】
更に、それぞれの制御輪郭の形態の複数の凹部36を有する制御ディスク11が、電気モータ5のシャフト14に設けられる。遮断爪は、凹部36のうちの1つでピン35と係合し、それによって遮断爪を制御ディスク11に結合する。
【0028】
更に、ばね(図示せず)の一端は、遮断爪のピン35上に保持され、他端は、プロファイルヘッド17上に保持される。ばね(図示せず)は、ばねに回転可能に固定されて接続されたプロファイルヘッド17及び第3の遊星キャリア12が、ばねが弛緩したときに、安全ベルト3の引き出し方向及び引き込み方向の両方において、ウェブ24又は歯25及びハウジング2に対して自由に回転することができるように、歯25に係合しない位置の方向に遮断爪に予め張力を加える。更に、ばねは、凹部36のうちの1つに係合するピン35により、安全ベルト3の引き出し方向の方向に制御ディスク11に荷重を加えるように設計されている。
【0029】
制御ディスク11は、内側歯34を有する第3のリングギアとして設計され、制動装置13が配置される空洞37を有する。制動装置13は、電磁石と遮断レバー33とを備えた信号制御アクチュエータの形態で設計されており、遮断レバー33は、電磁石が通電されたときに旋回させられ、その結果、制御ディスク11の歯34へと回転し、そこでプロファイルヘッド17及び遮断爪に対して制御ディスクを制動又は停止させるように配置及び配向される。プロファイルヘッド17及び遮断爪に対する制御ディスク11のこの相対運動の結果として、遮断爪は、ウェブ24の歯25へと内側に回転運動させられ、その結果、プロファイルヘッド17とそれに回転可能に固定されて接続された第3の遊星キャリア12が安全ベルト3の引き出し方向に遮断される。遮断爪の外側への回転移動は、制御ディスク11内の制御輪郭の形状によって画定され、ここで、遮断爪はピン35と係合する。
【0030】
したがって、ギア機構6は、第1の太陽ギア15を介して駆動される、電気モータ5のシャフト14から始まる3段階の遊星ギア機構として設計される。ここで、環状ハウジング10は、好ましくは、内側歯26を有するリングギアとして設計され、したがって、外側から、及び第2の遊星ギア27及び第3の遊星ギア21が転動する内側歯26において遊星ギア機構を保護するハウジングとして機能する。更に、環状ハウジング10はまた、第1の遊星ギア31が転動する歯30内に第2のリングギア28を受容するように機能する。環状ハウジング10は、安全ベルト3の巻き上げ方向に回転可能に固定されて、ベルトシャフト4へのバヨネット接続を介して接続されている。ギア機構6全体は、軽量で寸法安定性のプラスチック材料、又は金属若しくは別の寸法安定性の材料若しくは複合材料で製造することができる。
【0031】
図4は、ベルトリトラクタ1の断面図である。バックルを外した後に安全ベルト3を留置位置に巻き取ると、電気モータ5は、100~200rpmの回転速度の低パワー、及び数ニュートンの安全ベルト3の引き込み力で動作する。遮断爪の形態の遮断装置18は停止されている、すなわち、遮断爪が歯25に係合しておらず、ギア機構6全体を含め、プロファイルヘッド17及び第3の遊星キャリア12の両方ともハウジング2に対して自由に回転することができる。ギア機構6は、低い自己係止を有するように設計され、シャフト14の駆動回転運動が、この場合にはギア機構6が作動されることなく、第1の太陽ギア15を介してベルトシャフト4に伝達されるように寸法決めされている。ギア機構6が停止される場合、遊星ギア機構9の遊星段における連動ギアホイール間の相対運動は存在しない。シャフト14の回転運動は、1:1でベルトシャフト4に伝達される。これは、この場合、留置位置への巻き上げ中に安全ベルト3によって加えられる反力が非常に小さいか又は無視できるほどであるために可能になる。この場合、巻き上げプロセスは、駆動ばねアセンブリ8内の駆動ばねによって更にサポートされ、安全ベルト3の留置位置への引き込みのために加えられる総巻き上げ力は、電気モータ5によって加えられる引張力と駆動ばねの引張力との合計から成る。逆に、電気モータ5を介した巻き上げの結果として、留置位置への巻き上げプロセスの機能的信頼性を弱めることなく、はるかに弱い駆動ばねを使用することができる。弱い駆動ばねを用いる結果、乗員は安全ベルト3の存在をあまり感じなくなるか、又は気づかなくなるため、適用状態における安全ベルト3の着用の快適さが大幅に改善され得る。
【0032】
電気モータ5が、起こり得る事故の前段階での可逆的なベルトへの予張力のための締め付けを行う場合、安全ベルト3は、60~10000rpmの回転速度で約150~800Nのかなり高い締め付け力で引き戻されなければならない。これは、電気モータ5のパワーがより高い電流供給によって大幅に引き上げられることで達成され、その結果、電気モータ5は、非常に短い急上昇段において、約5000~30000rpmの回転速度でシャフト14を駆動する。次いで、シャフト14の高い回転速度は、ギア機構6を介して同じ力伝達経路を通ってベルトシャフト4に伝達され、比較的小さな引張力で、既存のベルトの弛みを非常に迅速に引き出す。安全ベルト3は、この状況では乗員にもたれかかっているため、低い引張力が安全ベルト3から更なるベルトの弛みを引っ張るのに十分ではない場合、ベルトの弛みを直ちに引き出すことは、安全ベルト3によって加えられる反力の非常に大きな上昇をもたらす。したがって、ベルトシャフト4の駆動運動は、安全ベルト3自体の反力によって抑制又は遮断され、ベルトシャフト4に回転可能に固定されて接続された環状ハウジング10は、回転運動をもはや実行できなくなる。しかしながら、同時に、第1の太陽ギア15を介してシャフト14によって加えられる駆動トルクは、作用し続ける。環状ハウジング10が遮断されたことにより、シャフト14の更なる回転運動は、第1の太陽ギア15の駆動回転運動を、ギア機構6を介して、第3の遊星キャリア12、プロファイルヘッド17、及び制御ディスク11への反対の回転運動へ逆に伝達することによってのみ可能である。この段では、ギア機構6は、回転方向反転ギア機構として動作する。
【0033】
第1の遊星ギア31は、ベルトシャフト4のジャーナル32上で回転することができるが、ベルトシャフト4に対する軌道運動を実行することができないため、第1の太陽ギア15の回転運動は、3段遊星ギア機構の第1段において、第2のリングギア28の回転方向に既に反転されている。したがって、電気モータ5の回転方向が安全ベルト3の引き込み方向であるとき、第2のリングギア28は、その代わりに、この段で安全ベルト3の引き出し方向に回転する。第2のリングギア28のこの逆回転運動はまた、最終的に、遮断された環状ハウジング10の歯26上を転動する追加の第2の遊星ギア27及び第3の遊星ギア21、第2の遊星キャリア22及び第3の遊星キャリア12、及びプロファイルヘッド17を介して制御ディスク11に伝達される。
【0034】
制動装置13は、回転方向の反転と同時に又はその直前に作動され、その結果、遮断レバー33が旋回し、制御ディスク11の歯34に係合する。その結果、引き出し方向に開始していた制御ディスク11の回転が停止又は制動され、制御ディスク11は、連続的に回転するプロファイルヘッド17及び遮断爪に対してばね(図示せず)の張力がかかっている間停止する。この相対運動の結果、凹部36に係合するピン35により、遮断爪は外方回転運動を実行させられて、それによりウェブ24の歯25内の歯と係合し、プロファイルヘッド17とそれに回転可能に固定されて接続された第3の遊星キャリア12の、安全ベルト3の引き出し方向の更なる回転運動を遮断する。その後、第3の遊星キャリア12は、ベルトリトラクタ1のハウジング2上の遮断装置を介して車両に固定されて支持される。したがって、第3の遊星キャリア12上の第3の遊星ギア21は、回転軸を中心とした回転運動は依然として実行することができるが、遊星ギア21の軌道運動はもはや実行できない。これは回転方向の更なる反転をもたらし、その結果、環状ハウジング10及びそれに回転可能に固定されて接続されたベルトシャフト4は、連続回転する第3の遊星ギア21を介して、安全ベルト3の引き込み方向への回転運動に駆動される。したがって、ギア機構6が作動され、約5000~30000rpmの電気モータ5のシャフト14の回転運動が、i=30~80の減速率で60~10000rpmの回転速度まで減速される。回転運動の減速により、安全ベルト3に作用するトルク及び引き込み力は、同時に150~800Nに増加する。
【0035】
この場合、遮断装置18は、好適なセンサ装置が所定のベルト引き出し加速度又は車両減速度を超えたと判定したときにベルトシャフト4を引き出し方向に遮断するために更に使用され得る遮断爪である。
【0036】
例示的な本実施形態では、制動装置13は、制御ディスク11の歯34へと回転し、プロファイルヘッド17に対して制御ディスクを停止させる遮断レバー33を有する。本実施形態は、制御ディスク11の回転運動を停止する、すなわち、非常に迅速にゼロに制動することができるという点で有利である。しかしながら、他の制動装置13を提供することも考えられ、こうした制動装置は、安全ベルト3の引き出し方向に開始された制御ディスク11の回転運動と、それによるプロファイルヘッド17に対する制御ディスク11の相対運動を停止又は制動することができるだけでよい。そのような制動装置13はまた、例えば、摩擦ブレーキ又は同様の装置によって形成され得る。
【0037】
本発明による解決策の利点は、電気モータ5を有するベルトリトラクタ1が、2つの機能、すなわち、必要な設置空間を増加させることなく、安全ベルト3を留置位置に巻き上げるためのコンフォート機能と、低い力レベル及び高い力レベルでの互いに大きく異なる2つの引き込み力を用いた可逆的なベルト締め付けと、を実行し得ることである。この場合、ギア機構6の使用は、車両5の駆動回転速度を減速させることを可能にするだけではない。それに加えて、ギア機構6はそれ自体、遮断を引き起こす又はトリガすることによって、コンフォート機能から可逆的なベルト締め付け機能への切り換え、したがって、回転方向の意図的な反転による遮断装置18の切り換えのために使用される。次いで、遮断装置18のこの切り換えは、回転方向の反転の結果として、ベルトシャフト4を所望の巻き上げ方向に再び駆動させる。ギア機構6は実際には、制動装置13が作動されるときに自身を切り換える。この場合、ギア機構6の自己係止は、コンフォート機能中、及び数ニュートンの非常に低い力での安全ベルト3の引き込み中、ギア機構6全体をブロックとして駆動するために意図的に利用される。次に、ギア機構6の移行は、ギア機構6の自己係止によって予め決定された反力を超えたときにのみ開始及びトリガされ、電気モータ5によって印加されるトルクは、ベルトシャフト4を巻き上げ方向に駆動するのにもはや十分ではないが、その代わりに、上述したように、回転運動が逆方向にギア機構6に戻って伝達される。
【0038】
この場合、既存の遮断爪を遮断装置18として使用することができるため、追加の機能の実現から生じる追加コストを削減することができる。更に、所定のベルト引き出し加速度又は車両減速度を超えるときに遮断装置18を更に作動させる制御可能なアクチュエータを制動装置13として使用することもできる。
【0039】
ここで、制御ディスク11は、安全ベルト3によって加えられる引張力が上昇すると、上記のシーケンスに従って、電気モータ5の駆動回転運動と反対の回転方向の回転運動へと駆動される第1の部分を形成する。この場合、制御ディスク11は、安全ベルトの引張力の上昇前のばね荷重の結果として、依然として電気モータ5の回転の駆動方向の方向に沿っている。次いで、この回転方向の反転だけで、制動装置13の作動、及びそれによって引き起こされる制御ディスク11の制動及び停止の結果として、遮断装置18の遮断運動のトリガが可能になる。これはまず、留置位置まで巻き上げるための、安全ベルト3の巻き上げ方向への制御ディスク11の回転中、遮断装置18が誤って作動されないことを確実にする。次いで、巻き戻し方向に遮断装置18によって遮断される第2の部分は、第3の遊星キャリア12であり、第3の遊星キャリアは、その後、遮断位置において、第3の遊星ギア21の巻き上げ方向の回転によって環状ハウジング10及びベルトシャフトを駆動する。したがって、バックルを外した後の巻き補助としての電気モータ5の機能から、可逆的なベルト締め付け具としての機能への機能変更は、まず回転方向の二重反転、すなわち、安全ベルト3の巻き上げ方向から安全ベルト3の引き出し方向への制御ディスク11又は第2のリングギア28の回転方向の第1の反転に基づく。回転方向のこの第1の反転は、第2の部分、この場合、第3の遊星キャリア12を遮断する。続いて、遮断された第3の遊星キャリア12上の回転方向の、安全ベルト3の引き込み方向への第2の反転が行われる。このようにして、ギア機構6内の電気モータ5の駆動回転運動は、回転方向に2回反転され、更に、遊星段によってベルトシャフト4のかなり低い回転速度まで減速されるが、引き込み力は増加している。