(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】積層体および食品包装材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/10 20060101AFI20240823BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240823BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240823BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20240823BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20240823BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B32B27/10
B32B27/40
B32B27/20 Z
C08G18/00 B
C08G18/08 019
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2022541586
(86)(22)【出願日】2021-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2021028919
(87)【国際公開番号】W WO2022030534
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2020134400
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本間 史朗
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-077780(JP,A)
【文献】特開2014-051327(JP,A)
【文献】特開2012-066868(JP,A)
【文献】特開2003-261130(JP,A)
【文献】特開2015-104831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08G 18/00-18/87、71/00-71/04
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、
前記紙基材の一方面側に配置されるアンカーコート層
(下記ガスバリア性ポリウレタン樹脂を含まない)と、
前記アンカーコート層の一方面側に配置されるバリアコート層と
を備え、
前記紙基材の密度が、0.72g/cm
3以上であり、
前記バリアコート層は、ガスバリア性ポリウレタン樹脂を含
み、
前記バリアコート層において、前記ガスバリア性ポリウレタン樹脂が、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分と、炭素数2~6の短鎖ジオール、および、親水性基を含有する活性水素化合物を含有する活性水素基含有成分との一次反応生成物であるイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤との二次反応生成物を含む
ことを特徴とする、積層体。
【請求項2】
JIS P 8117(2009)に準拠して測定される透気抵抗度が、30000s以上である
ことを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記バリアコート層が、さらに、層状無機化合物を含む
ことを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記バリアコート層の量が、0.5g/m
2以上20.0g/m
2以下である
ことを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記アンカーコート層の量が、0.3g/m
2以上20.0g/m
2以下である
ことを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
請求項1に記載の積層体を備える
ことを特徴とする、食品包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体および食品包装材に関し、詳しくは、紙基材を備える積層体、および、その積層体を含む食品包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙基材の表面にガスバリア性ポリウレタン樹脂をコーティングすることにより、紙基材にガスバリア性を付与することが知られている。
【0003】
例えば、坪量70g/m2の未塗工紙に、第1ポリウレタン樹脂および層状無機化合物を含むアンカーコート層と、第2ポリウレタン樹脂および層状無機化合物を含むバリアコート層とを積層し、40℃で3日養生させることにより、積層体を得ることが提案されている(例えば、特許文献1(実施例1)参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、積層体は、養生しないと十分なガスバリア性が発現されないという不具合がある。
【0006】
本発明は、優れたガスバリア性を有する積層体、および、その積層体を備える食品包装材である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、紙基材と、前記紙基材の一方面側に配置されるアンカーコート層と、前記アンカーコート層の一方面側に配置されるバリアコート層とを備え、前記紙基材の密度が、0.72g/cm3以上であり、前記バリアコート層は、ガスバリア性ポリウレタン樹脂を含む、積層体を、含んでいる。
【0008】
本発明[2]は、JIS P 8117(2009)に準拠して測定される透気抵抗度が、30000s以上である、上記[1]に記載の積層体を、含んでいる。
【0009】
本発明[3]は、前記バリアコート層において、前記ガスバリア性ポリウレタン樹脂が、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分と、炭素数2~6の短鎖ジオール、および、親水性基を含有する活性水素化合物を含有する活性水素基含有成分との一次反応生成物であるイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤との二次反応生成物を含む、上記[1]または[2]に記載の積層体を、含んでいる。
【0010】
本発明[4]は、前記バリアコート層が、さらに、層状無機化合物を含む、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の積層体を、含んでいる。
【0011】
本発明[5]は、前記バリアコート層の量が、0.5g/cm2以上20.0g/cm2以下である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の積層体を、含んでいる。
【0012】
本発明[6]は、前記アンカーコート層の量が、0.3g/cm2以上20.0g/cm2以下である、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の積層体を、含んでいる。
【0013】
本発明[7]は、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の積層体を備える、食品包装材を、含んでいる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の積層体および食品包装材では、紙基材の所定の密度を有するため、優れたガスバリア性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の積層体の一実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1において、積層体1は、紙基材2と、紙基材2の一方面側に配置されるアンカーコート層3と、アンカーコート層3の一方面側に配置されるバリアコート層4とを備えている。
【0017】
紙基材2は、紙からなる基材である。紙は、例えば、パルプを抄造することにより、形成される。パルプとしては、例えば、天然パルプおよび合成パルプが挙げられる。
【0018】
積層体1では、紙基材2として、所定の密度を有する紙が、選択される。
【0019】
紙基材2の密度は、0.72g/cm3以上、好ましくは、0.75g/cm3以上、より好ましくは、0.80g/cm3以上、さらに好ましくは、0.90g/cm3以上、さらに好ましくは、1.00g/cm3以上である。
【0020】
紙基材2の密度が上記下限を上回っていれば、紙基材2に対するアンカーコート層3(後述)およびバリアコート層4(後述)の浸透の度合いを適度に調整でき、未養生状態のガスバリア性に優れる積層体1が、得られる。
【0021】
また、紙基材2の密度は、例えば、1.50g/cm3以下、好ましくは、1.45g/cm3以下、より好ましくは、1.40g/cm3以下、さらに好ましくは、1.35g/cm3以下、さらに好ましくは、1.30g/cm3以下、とりわけ好ましくは、1.25g/cm3以下である。
【0022】
紙基材2の密度が上限を下回っていれば、紙基材2に対して、アンカーコート層3(後述)およびバリアコート層4(後述)を、配向性よく配置でき、未養生状態のガスバリア性に優れる積層体1が、得られる。
【0023】
なお、紙の密度は、例えば、パルプの種類および抄紙方法によって、調整される。
【0024】
紙基材2の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上、より好ましくは、5μm以上である。また、紙基材2の厚みは、例えば、500μm以下、好ましくは、200μm以下である。
【0025】
紙基材2の厚みが上記範囲であれば、ガスバリア性に優れる積層体1が、得られる。
【0026】
紙基材2の坪量は、例えば、20g/m2以上、好ましくは、30g/m2以上である。また、紙基材2の坪量は、例えば、400g/m2以下、好ましくは、300g/m2以下である。
【0027】
なお、未養生状態の積層体のガスバリア性(後述)は、紙基材2の坪量には相関せず、紙基材2の密度に相関する。
【0028】
このような紙基材2として、より具体的には、例えば、グラシン紙、塗工紙および片ツヤクラフト紙が挙げられる。
【0029】
これら紙基材2は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0030】
紙基材2は、単層であってもよく、多層であってもよい。紙基材2が多層の場合、各層は、同種の紙であってもよく、2種以上の紙であってもよい。
【0031】
また、紙基材2の形状は、特に制限されない。紙基材2の形状は、例えば、シート状、ボトル状およびカップ状が挙げられる。紙基材2の形状として、好ましくは、シート状が挙げられる。
【0032】
また、紙基材2は、表面処理されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理および蒸着処理が挙げられる。
【0033】
アンカーコート層3は、紙基材2の少なくとも一方側の表面に配置される。アンカーコート層3は、紙基材2の両面に配置されていてもよい。アンカーコート層3は、好ましくは、紙基材2の一方側の表面にのみ、配置される。
【0034】
アンカーコート層3は、アンカーコート樹脂を含んでいる。
【0035】
アンカーコート樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、オレフィン・ビニルアルコール共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、カルボキシ変性スチレン・ブタジエン共重合体、ポリエステル樹脂およびキトサンが挙げられる。
【0036】
これらアンカーコート樹脂は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0037】
アンカーコート樹脂として、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂およびスチレン・ブタジエン共重合体が挙げられ、より好ましくは、ポリウレタン樹脂が挙げられる。
【0038】
なお、ポリウレタン樹脂としては、後述のガスバリア性ポリウレタン樹脂も含まれる。
【0039】
アンカーコート層3は、例えば、アンカーコート剤に紙基材2に塗布し、アンカーコート剤を乾燥させることによって、形成される。
【0040】
アンカーコート剤は、上記のアンカーコート樹脂と、公知の溶剤とを含んでいる。
【0041】
溶剤としては、アンカーコート樹脂に不活性な溶剤が、適宜選択される。
【0042】
溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフランおよびアセトニトリルが挙げられる。これら溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0043】
なお、アンカーコート樹脂と溶剤との配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0044】
アンカーコート剤の塗布方法は、特に制限されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法およびエアナイフコート法が挙げられる。
【0045】
アンカーコート剤の乾燥条件は、特に制限されない。例えば、乾燥温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上である。また、乾燥温度は、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、0.1分以上、好ましくは、0.2分以上である。また、乾燥時間は、例えば、10分以下、好ましくは、5分以下である。
【0046】
これにより、アンカーコート層3が形成される。
【0047】
また、アンカーコート層3は、添加剤を含むことができる。
【0048】
添加剤としては、例えば、フィラー、シランカップリング剤、アルコキシシラン化合物、増粘剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、分散安定剤、着色剤、顔料、染料、コロイダルシリカ、無機粒子、無機酸化物粒子、結晶核剤、架橋剤および硬化剤が挙げられる。これら添加剤は、単独使用または2種類以上併用できる。なお、添加剤の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0049】
添加剤として、好ましくは、フィラーが挙げられる。フィラーとしては、例えば、有機ナノファイバーおよび層状無機化合物が挙げられ、より好ましくは、層状無機化合物が挙げられる。なお、層状無機化合物の詳細は、後述する。
【0050】
添加剤は、例えば、アンカーコート剤に添加され、アンカーコート樹脂とともに紙基材2に塗布および乾燥される。
【0051】
アンカーコート層3の量は、例えば、0.1g/m2以上、好ましくは、0.3g/m2以上、より好ましくは、0.5g/m2以上、さらに好ましくは、1.0g/m2以上、とりわけ好ましくは、1.5g/m2以上である。また、アンカーコート層3の量は、例えば、30.0g/m2以下、好ましくは、20.0g/m2以下、より好ましくは、10.0g/m2以下、さらに好ましくは、5.0g/m2以下、とりわけ好ましくは、3.0g/m2以下である。
【0052】
アンカーコート層3の量が上記範囲であれば、ガスバリア性に優れる積層体1が、得られる。
【0053】
バリアコート層4は、ガスバリア性を有する樹脂層である。
【0054】
なお、ガスバリア性とは、酸素の透過率を低下させる性質である。より具体的には、ガスバリア性とは、所定値以上の透気抵抗度を有し、かつ、所定値以上の酸素透過度を有する性質である。
【0055】
バリアコート層4は、ガスバリア性ポリウレタン樹脂を含んでいる。
【0056】
より具体的には、バリアコート層4は、ガスバリア性ポリウレタン樹脂を含むバリアコート剤を調製し、次いで、バリアコート剤をアンカーコート層3の一方面に塗布し、その後、バリアコート剤を乾燥させることによって、形成される。
【0057】
バリアコート剤としては、例えば、ガスバリア性ポリウレタン樹脂の水分散体が挙げられる。
【0058】
以下において、ガスバリア性ポリウレタン樹脂の水分散体を、ポリウレタンディスパージョンと称する場合がある。
【0059】
ポリウレタンディスパージョンにおいて、ガスバリア性ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分とを少なくとも反応させた反応生成物を含んでいる。
【0060】
より具体的には、ガスバリア性ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤との反応により得られる。イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分と、活性水素基含有成分との反応により得られる。
【0061】
つまり、イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分と、活性水素基含有成分との一次反応生成物である。ガスバリア性ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤との二次反応生成物である。
【0062】
このようなガスバリア性ポリウレタン樹脂を用いることにより、ガスバリア性に優れる積層体1が、得られる。
【0063】
ポリウレタンディスパージョンの調製では、例えば、まず、イソシアネート基末端プレポリマーを合成する。
【0064】
イソシアネート基末端プレポリマーは、分子末端に、2つ以上の遊離のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーである。
【0065】
イソシアネート基末端プレポリマーは、上記の通り、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分との反応によって、得られる。
【0066】
ポリイソシアネート成分は、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)および/または水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)を含んでいる。
【0067】
キシリレンジイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート単量体(XDI単量体)およびキシリレンジイソシアネート誘導体(XDI誘導体)が挙げられる。
【0068】
キシリレンジイソシアネート単量体としては、例えば、1,2-キシリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネートおよび1,4-キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0069】
これらキシリレンジイソシアネート単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0070】
キシリレンジイソシアネート単量体として、好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0071】
キシリレンジイソシアネート誘導体としては、上記したキシリレンジイソシアネート単量体を公知の方法で変性した変性体が挙げられる。
【0072】
キシリレンジイソシアネート誘導体として、より具体的には、例えば、多量体、アロファネート変性体、ポリオール変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、オキサジアジントリオン変性体およびカルボジイミド変性体が挙げられる。
【0073】
これらキシリレンジイソシアネート誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0074】
これらキシリレンジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0075】
キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、キシリレンジイソシアネート単量体が挙げられる。
【0076】
水添キシリレンジイソシアネートとしては、例えば、水添キシリレンジイソシアネート単量体(H6XDI単量体)および水添キシリレンジイソシアネート誘導体(H6XDI誘導体)が挙げられる。
【0077】
水添キシリレンジイソシアネート単量体は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンである。
【0078】
水添キシリレンジイソシアネート単量体としては、例えば、1,2-水添キシリレンジイソシアネート、1,3-水添キシリレンジイソシアネートおよび1,4-水添キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0079】
これら水添キシリレンジイソシアネート単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0080】
水添キシリレンジイソシアネート単量体として、好ましくは、1,3-水添キシリレンジイソシアネート、1,4-水添キシリレンジイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、1,3-水添キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0081】
水添キシリレンジイソシアネート誘導体としては、上記と同種の誘導体が挙げられる。
【0082】
これら水添キシリレンジイソシアネート誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0083】
これら水添キシリレンジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0084】
水添キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、水添キシリレンジイソシアネート単量体が挙げられる。
【0085】
キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、キシリレンジイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、キシリレンジイソシアネート単量体が挙げられる。
【0086】
また、ポリイソシアネート成分は、必要に応じて、その他のポリイソシアネートを含有できる。
【0087】
その他のポリイソシアネートは、キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートを除くポリイソシアネートである。
【0088】
その他のポリイソシアネートとしては、工業的に汎用されるポリイソシアネートが挙げられる。より具体的には、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートを除く。)、脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネート(水添キシリレンジイソシアネートを除く。)が挙げられる。
【0089】
また、その他のポリイソシアネートには、上記と同種の誘導体が含まれる。
【0090】
その他のポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0091】
その他のポリイソシアネートとして、好ましくは、脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)が挙げられる。
【0092】
なお、ポリイソシアネート成分が、その他のポリイソシアネートを含有する場合、キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートと、その他のポリイソシアネートとの割合は、本発明の優れた効果を損なわない範囲で、適宜設定される。
【0093】
例えば、キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートの含有割合(併用される場合にはそれらの総量)が、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上、より好ましくは、80質量%以上であり、例えば、99質量%以下である。
【0094】
また、ポリイソシアネート成分として、好ましくは、キシリレンジイソシアネートと水添キシリレンジイソシアネートとの併用が挙げられ、より好ましくは、キシリレンジイソシアネート単量体と水添キシリレンジイソシアネート単量体との併用が挙げられる。
【0095】
キシリレンジイソシアネートと水添キシリレンジイソシアネートとが併用される場合、それらの総量100質量部に対して、キシリレンジイソシアネートが、例えば、60質量部以上、好ましくは、70質量部以上、より好ましくは、80質量部以上であり、例えば、95質量部以下、好ましくは、93質量部以下、より好ましくは、90質量部以下である。
【0096】
また、それらの総量100質量部に対して、水添キシリレンジイソシアネートが、例えば、5質量部以上、好ましくは、7質量部以上、より好ましくは、10質量部以上であり、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下、より好ましくは、20質量部以下である。
【0097】
活性水素基含有成分としては、ポリオール成分が挙げられる。
【0098】
ポリオール成分は、例えば、炭素数2~6の短鎖ジオールを含んでいる。
【0099】
炭素数2~6の短鎖ジオールは、水酸基を2つ有し、炭素数2~6の有機化合物である。
【0100】
なお、短鎖ジオールの分子量は、50以上650以下である。短鎖ジオールが分子量分布を有する場合、分子量は、GPC測定によるポリスチレン換算の数平均分子量を示す。
【0101】
短鎖ジオールとしては、例えば、炭素数2~6のアルカンジオール、炭素数2~6のエーテルジオールおよび炭素数2~6のアルケンジオールが挙げられる。
【0102】
炭素数2~6のアルカンジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-シクロヘキサンジオールおよび1,4-シクロヘキサンジオールが挙げられる。
【0103】
炭素数2~6のエーテルジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびジプロピレングリコールが挙げられる。
【0104】
炭素数2~6のアルケンジオールとしては、例えば、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテンが挙げられる。
【0105】
これら短鎖ジオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0106】
短鎖ジオールとして、ガスバリア性の観点から、好ましくは、炭素数2~6のアルカンジオールが挙げられ、より好ましくは、エチレングリコールが挙げられる。
【0107】
炭素数2~6の短鎖ジオールの含有割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、30質量部以上、より好ましくは、50質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、70質量部以下である。
【0108】
また、ガスバリア性ポリウレタン樹脂がポリウレタンディスパージョンとして調製される場合、ポリオール成分は、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を、含んでいる。
【0109】
親水性基を含有する活性水素基含有化合物は、親水性基と、活性水素基とを含有する化合物である。
【0110】
なお、活性水素基としては、例えば、水酸基およびアミノ基が挙げられる。
【0111】
また、親水性基としては、例えば、ノニオン性基およびイオン性基が挙げられる。
【0112】
親水性基を含有する活性水素基含有化合物として、より具体的には、例えば、ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物、イオン性基を含有する活性水素基含有化合物が挙げられる。
【0113】
ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、1つ以上のノニオン性基と、2つ以上の活性水素基とを併有する化合物である。ノニオン性基としては、例えば、ポリオキシエチレン基が挙げられる。
【0114】
ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール、および、ポリオキシエチレン側鎖を含有するポリオールが挙げられる。
【0115】
イオン性基を含有する活性水素基含有化合物としては、例えば、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物、および、カチオン性基を含有する活性水素基含有化合物が挙げられる。
【0116】
アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、1つ以上のアニオン性基と、2つ以上の活性水素基とを併有する化合物である。アニオン性基としては、例えば、カルボキシ基(カルボン酸基)、および、スルホ基(スルホン酸基)が挙げられる。
【0117】
カチオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、1つ以上のカチオン性基と、2つ以上の活性水素基とを併有する化合物である。カチオン性基としては、例えば、4級アンモニウム基が挙げられる。
【0118】
これら親水性基を含有する活性水素基含有化合物は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0119】
親水性基を含有する活性水素基含有化合物として、好ましくは、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物が挙げられる。
【0120】
アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物において、アニオン性基としては、例えば、カルボキシ基(カルボン酸基)、および、スルホ基(スルホン酸基)が挙げられる。
【0121】
ガスバリア性および耐水性の観点から、アニオン性基として、好ましくは、カルボキシ基が挙げられる。
【0122】
アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物において、活性水素基としては、例えば、水酸基およびアミノ基が挙げられ、好ましくは、水酸基が挙げられる。
【0123】
すなわち、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物として、好ましくは、カルボキシ基と2つの水酸基とを併有する有機化合物が挙げられる。
【0124】
カルボキシ基と2つの水酸基とを併有する有機化合物としては、例えば、カルボキシ基含有ポリオールが挙げられる。
【0125】
カルボキシ基含有ポリオールとしては、例えば、ポリヒドロキシアルカン酸が挙げられる。
【0126】
ポリヒドロキシアルカン酸としては、例えば、2,2-ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール乳酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸(別名:ジメチロールプロピオン酸)、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸および2,2-ジメチロール吉草酸が挙げられる。
【0127】
これらカルボキシ基と2つの水酸基とを併有する有機化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0128】
カルボキシ基と2つの水酸基とを併有する有機化合物として、好ましくは、2,2-ジメチロールプロピオン酸が挙げられる。
【0129】
親水性基を含有する活性水素基含有化合物の含有割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下である。
【0130】
また、ポリオール成分は、さらに、任意成分として、その他の低分子量ポリオールを含有できる。
【0131】
その他の低分子量ポリオールは、炭素数2~6の短鎖ジオールと、親水性基を含有する活性水素基含有化合物とを除く低分子量ポリオールである。
【0132】
低分子量ポリオールは、分子中に水酸基を2つ以上有する、比較的低分子量の有機化合物である。
【0133】
なお、低分子量ポリオールの分子量は、50以上、650以下、好ましくは、500以下である。
【0134】
その他の低分子量ポリオールとしては、例えば、炭素数7以上のジオール、および、3価以上の低分子量ポリオールが挙げられる。
【0135】
炭素数7以上のジオールとしては、例えば、アルカン(炭素数7~20)-1,2-ジオール、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAおよびビスフェノールAが挙げられる。
【0136】
これら炭素数7以上のジオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0137】
3価以上の低分子量ポリオールとしては、例えば、3価アルコールおよび4価アルコールが挙げられる。
【0138】
3価アルコールとしては、例えば、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジヒドロキシ-3-ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパンおよび2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-3-ブタノールが挙げられる。
【0139】
4価アルコールとしては、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)およびジグリセリンが挙げられる。
【0140】
これら3価以上の低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0141】
さらに、その他の低分子量ポリオールとしては、数平均分子量が650以下のポリエーテルポリオール、数平均分子量が650以下のポリエステルポリオール、および、数平均分子量が650以下のポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0142】
その他の低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0143】
その他の低分子量ポリオールとして、耐水性および水分散安定性の観点から、好ましくは、3価以上の低分子量ポリオールが挙げられ、より好ましくは、3価アルコールが挙げられ、とりわけ好ましくは、トリメチロールプロパンが挙げられる。
【0144】
その他の低分子量ポリオールが含有される場合、その他の低分子量ポリオールの含有割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、0.2質量部以上、好ましくは、1質量部以上、より好ましくは、2質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下、より好ましくは、8質量部以下である。
【0145】
また、炭素数2~6の短鎖ジオールとその他の低分子量ポリオールとの併用割合は、それらの総量100質量部に対して、その他の低分子量ポリオールが、例えば、2質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下、より好ましくは、10質量部以下である。
【0146】
また、炭素数2~6の短鎖ジオールとその他の低分子量ポリオールとの総量100質量部に対して、親水性基を含有する活性水素基含有化合物が、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、40質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、70質量部以下である。
【0147】
その他の低分子量ポリオールの含有割合が上記範囲であれば、優れた分散性を確保することができる。そのため、ガスバリア性に優れるバリアコート層を良好に形成することができる。
【0148】
また、ポリオール成分は、さらに、任意成分として、高分子量ポリオールを含有できる。
【0149】
高分子量ポリオールは、分子中に水酸基を2つ以上有し、比較的高分子量の有機化合物(重合物)である。なお、高分子量ポリオールの数平均分子量は、例えば、650を超過し、例えば、20000以下である。
【0150】
高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオールおよびビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。
【0151】
これら高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0152】
しかし、高分子量ポリオールは、ポリウレタン樹脂(後述)のガスバリア性を低下させる場合がある。そのため、ポリオール成分は、好ましくは、高分子量ポリオールを含有しない。
【0153】
すなわち、ポリオール成分は、好ましくは、炭素数2~6の短鎖ジオール、3価以上の低分子量ポリオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物からなるか、炭素数2~6の短鎖ジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物からなる。
【0154】
ポリオール成分は、より好ましくは、炭素数2~6の短鎖ジオール、3価以上の低分子量ポリオール、および、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物からなるか、炭素数2~6の短鎖ジオール、および、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物からなる。
【0155】
イソシアネート基末端プレポリマーは、上記各成分を所定の当量比で反応させることによって、得られる。
【0156】
イソシアネート基末端プレポリマーの合成において、当量比とは、活性水素基(水酸基)に対するイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)である。
【0157】
当量比(イソシアネート基/活性水素基)は、例えば、1を超過し、好ましくは、1.1以上である。また、当量比(イソシアネート基/活性水素基)は、例えば、20以下、好ましくは、10以下である。
【0158】
また、イソシアネート基末端プレポリマーの合成では、公知の重合方法が採用される。
【0159】
重合方法としては、例えば、バルク重合および溶液重合が挙げられる。
【0160】
重合方法として、反応性を調整する観点から、好ましくは、溶液重合が採用される。
【0161】
バルク重合では、例えば、窒素雰囲気下、上記成分を配合して反応させる。反応温度は、例えば、75~85℃である。反応時間は、例えば、1~20時間である。
【0162】
溶液重合では、例えば、窒素雰囲気下、上記成分を、有機溶媒中で配合して反応させる。反応温度は、例えば、20~80℃である。反応時間は、例えば、1~20時間である。
【0163】
有機溶媒としては、イソシアネート基に対して不活性な溶剤が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフランおよびアセトニトリルが挙げられる。これら有機溶媒は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0164】
また、上記重合では、必要に応じて、触媒を添加できる。触媒としては、例えば、アミン系触媒および有機金属触媒が挙げられる。これら、触媒は、単独使用または2種類以上併用できる。なお、触媒の添加量は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0165】
また、この方法では、上記重合を、例えば、反応生成物中のイソシアネート基濃度が後述の範囲に到達したときに、終了させる。また、この方法では、公知の除去方法で、未反応のポリイソシアネート成分を除去することができる。除去方法としては、例えば、蒸留および抽出が挙げられる。
【0166】
これにより、イソシアネート基末端プレポリマーが得られる。
【0167】
イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基濃度は、例えば、4質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、6質量%以上である。また、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基濃度は、例えば、25質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、17質量%以下、さらに好ましくは、15質量%以下である。
【0168】
また、イソシアネート基の平均官能基数は、例えば、1.5以上、好ましくは、1.9以上、より好ましくは、2.0以上である。また、イソシアネート基の平均官能基数は、例えば、3.0以下、好ましくは、2.5以下である。
【0169】
また、イソシアネート基末端プレポリマーにアニオン性基が含まれている場合には、例えば、イソシアネート基末端プレポリマーに中和剤を添加して中和し、アニオン性基の塩を形成させる。
【0170】
中和剤としては、慣用の塩基が挙げられる。塩基として、具体的には、有機塩基、無機塩基が挙げられる。
【0171】
有機塩基としては、例えば、3級アミンおよび2級アミンが挙げられる。
【0172】
3級アミンとしては、例えば、トリアルキルアミンおよびアルカノールアミンが挙げられる。トリアルキルアミンとしては、例えば、炭素数1~4のトリアルキルアミンが挙げられる。そのようなトリアルキルアミンとしては、例えば、トリメチルアミンおよびトリエチルアミンが挙げられる。アルカノールアミンとしては、例えば、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびトリイソプロパノールアミンが挙げられる。
【0173】
2級アミンとしては、例えば、複素環式アミンが挙げられる。複素環式アミンとしては、例えば、モルホリンが挙げられる。
【0174】
これら有機塩基は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0175】
無機塩基としては、例えば、アンモニア、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物およびアルカリ金属炭酸塩が挙げられる。アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リウムが挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウムが挙げられる。アルカリ金属炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムが挙げられる。
【0176】
これら無機塩基は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0177】
これらの中和剤は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0178】
中和剤として、好ましくは、有機塩基が挙げられ、より好ましくは、3級アミンが挙げられ、さらに好ましくは、トリアルキルアミンが挙げられ、とりわけ好ましくは、トリエチルアミンが挙げられる。
【0179】
中和剤の添加量は、アニオン性基1当量に対して、例えば、0.4当量以上、好ましくは、0.6当量以上である。また、中和剤の添加量は、アニオン性基1当量に対して、例えば、1.2当量以下、好ましくは、1.0当量以下である。
【0180】
次いで、この方法では、イソシアネート基末端プレポリマー(一次反応生成物)と、鎖伸長剤とを反応させて、ガスバリア性ポリウレタン樹脂(二次反応生成物)を得る。
【0181】
例えば、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを、水中で反応させることにより、ポリウレタンディスパージョンが得られる。
【0182】
鎖伸長剤は、複数の活性水素基を有しており、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長反応させる有機化合物である。
【0183】
鎖伸長剤としては、例えば、ポリアミンおよびアミノアルコールが挙げられる。
【0184】
ポリアミンとしては、例えば、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、および、ポリオキシエチレン基含有ポリアミンが挙げられる。
【0185】
芳香族ポリアミンとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジアミンおよびトリレンジアミンが挙げられる。
【0186】
芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、1,3-キシリレンジアミンおよび1,4-キシリレンジアミンが挙げられる。
【0187】
脂環族ポリアミンとしては、例えば、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよび1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0188】
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパンおよび1,3-ジアミノペンタンが挙げられる。
【0189】
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンとしては、例えば、ポリオキシアルキレンエーテルジアミンが挙げられる。ポリオキシアルキレンエーテルジアミンとしては、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンが挙げられる。より具体的には、例えば、PEG#1000ジアミン(日本油脂製)、ジェファーミンED-2003(ハンツマン社製)、ジェファーミンEDR-148(ハンツマン社製)、および、ジェファーミンXTJ-512(ハンツマン社製)が挙げられる。
【0190】
アミノアルコールとしては、例えば、2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノール(別名:N-(2-アミノエチル)エタノールアミン)および2-((2-アミノエチル)アミノ)-1-メチルプロパノール(別名:N-(2-アミノエチル)イソプロパノールアミン)が挙げられる。
【0191】
また、鎖伸長剤としては、さらに、第1級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物なども挙げられる。
【0192】
第1級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシランおよびN-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0193】
第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物としては、例えば、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン)およびN-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン)が挙げられる。
【0194】
これら鎖伸長剤は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0195】
鎖伸長剤として、好ましくは、アミノアルコールが挙げられ、より好ましくは、2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノールが挙げられる。
【0196】
イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させる方法は、特に制限されない。
【0197】
例えば、まず、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させる。次いで、イソシアネート基末端プレポリマーの水分散液に、鎖伸長剤を添加し、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤によって鎖伸長させる。
【0198】
イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させる方法は、特に制限されない。
【0199】
例えば、水を撹拌しながら、水にイソシアネート基末端プレポリマーを添加する。この場合、イソシアネート基末端プレポリマー100質量部に対して、水が、100~1000質量部である。
【0200】
その後、イソシアネート基末端プレポリマーが水分散された水を撹拌しながら、その水中に、鎖伸長剤を滴下する。この場合、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基に対する鎖伸長剤の活性水素基の当量比(活性水素基/イソシアネート基)が、例えば、0.6~1.2である。
【0201】
鎖伸長反応は、例えば、常温にて完結する。反応完結までの時間は、例えば、0.1~10時間である。
【0202】
また、この方法では、固形分濃度を調整するために、反応完結後、有機溶媒および/または水を除去できる。また、この方法では、固形分濃度を調整するために、反応完結後、水を添加できる。
【0203】
これにより、バリアコート剤として、ポリウレタンディスパージョン(PUD)が得られる。
【0204】
ポリウレタンディスパージョンの固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上である。また、ポリウレタンディスパージョンの固形分濃度は、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、40質量%以下である。
【0205】
ポリウレタンディスパージョンのpHは、例えば、5以上、好ましくは、6以上である。また、ポリウレタンディスパージョンのpHは、例えば、11以下、好ましくは、10以下である。
【0206】
ポリウレタンディスパージョンの平均粒子径は、例えば、10nm以上、好ましくは、20nm以上、より好ましくは、50nm以上である。また、ポリウレタンディスパージョンの平均粒子径は、例えば、500nm以下、好ましくは、300nm以下、より好ましくは、200nm以下である。
【0207】
また、ポリウレタンディスパージョンにおいて、ウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は、比較的高い。ウレタン基濃度およびウレア基濃度を高くすることにより、ガスバリア性の向上を図ることができる。
【0208】
ウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は、例えば、30質量%以上、好ましくは、34質量%以上、より好ましくは、38質量%以上である。また、ウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は、例えば、50質量%以下、好ましくは、46質量%以下、より好ましくは、42質量%以下である。なお、ウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は、原料成分の仕込み比から算出できる。
【0209】
バリアコート層4は、例えば、アンカーコート層3に対するバリアコート剤の塗布および乾燥によって、形成される。
【0210】
バリアコート剤の塗布方法は、特に制限されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法およびエアナイフコート法が挙げられる。
【0211】
バリアコート剤の乾燥条件は、特に制限されない。例えば、乾燥温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上である。また、乾燥温度は、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、0.1分以上、好ましくは、0.2分以上である。また、乾燥時間は、例えば、10分以下、好ましくは、5分以下である。
【0212】
これにより、バリアコート層4が形成される。
【0213】
また、バリアコート層4は、必要に応じて、養生することができる。
【0214】
バリアコート層4の養生条件は、特に制限されない。例えば、養生温度が、例えば、20℃以上、好ましくは、30℃以上である。また、養生温度は、例えば、100℃以下、好ましくは、80℃以下である。また、養生時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、10時間以上である。また、養生時間は、例えば、10日間以下、好ましくは、7日間以下である。
【0215】
なお、バリアコート層4は、生産効率を向上させリードタイムの短縮を図る観点から、好ましくは、養生されない。
【0216】
また、バリアコート層4は、添加剤を含むことができる。
【0217】
添加剤としては、例えば、フィラー、シランカップリング剤、アルコキシシラン化合物、増粘剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、分散安定剤、着色剤、顔料、染料、コロイダルシリカ、無機粒子、無機酸化物粒子、結晶核剤、架橋剤および硬化剤が挙げられる。これら添加剤は、単独使用または2種類以上併用できる。なお、添加剤の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0218】
添加剤として、好ましくは、フィラーが挙げられる。フィラーとしては、例えば、有機ナノファイバーおよび層状無機化合物が挙げられ、より好ましくは、層状無機化合物が挙げられる。
【0219】
バリアコート層4が、層状無機化合物を含んでいれば、ガスバリア性に優れる積層体1が、得られる。
【0220】
フィラーとしては、例えば、有機ナノファイバーおよび層状無機化合物が挙げられる。
【0221】
フィラーとして、ガスバリア性の観点から、好ましくは、層状無機化合物が挙げられる。
【0222】
層状無機化合物としては、例えば、膨潤性の層状無機化合物、および、非膨潤性の層状無機化合物が挙げられる。
【0223】
層状無機化合物として、ガスバリア性の観点から、好ましくは、膨潤性の層状無機化合物が挙げられる。
【0224】
膨潤性の層状無機化合物は、極薄の単位結晶からなる粘土鉱物である。膨潤性の層状無機化合物は、単位結晶層間に溶媒が配位および/または吸収して、膨潤する性質を有する。
【0225】
膨潤性の層状無機化合物としては、例えば、含水ケイ酸塩、カオリナイト族粘土鉱物、アンチゴライト族粘土鉱物、スメクタイト族粘土鉱物、バーミキュライト族粘土鉱物およびマイカ族粘土鉱物が挙げられる。
【0226】
含水ケイ酸塩としては、例えば、フィロケイ酸塩鉱物が挙げられる。
【0227】
カオリナイト族粘土鉱物としては、例えば、ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイトおよびナクライトが挙げられる。
【0228】
アンチゴライト族粘土鉱物としては、例えば、アンチゴライトおよびクリソタイルが挙げられる。
【0229】
スメクタイト族粘土鉱物としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトおよびスチブンサイトが挙げられる。
【0230】
バーミキュライト族粘土鉱物としては、例えば、バーミキュライトが挙げられる。
【0231】
マイカ族粘土鉱物としては、例えば、雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライトおよび合成マイカが挙げられる。
【0232】
膨潤性の層状無機化合物は、天然粘土鉱物であってもよく、また、合成粘土鉱物であってもよい。
【0233】
また、膨潤性の層状無機化合物は、単独または2種以上併用することができる。
【0234】
膨潤性の層状無機化合物として、好ましくは、スメクタイト族粘土鉱物、マイカ族粘土鉱物および合成マイカが挙げられ、より好ましくは、合成マイカが挙げられる。
【0235】
フィラーの平均粒径は、例えば、50nm以上、好ましくは、100nm以上である。
【0236】
また、フィラーの平均粒径は、例えば、10μm以下、好ましくは、5μm以下、より好ましくは、3μm以下である。
【0237】
フィラーのアスペクト比は、例えば、50以上、好ましくは、100以上、より好ましくは、200以上である。
【0238】
また、フィラーのアスペクト比は、例えば、5000以下、好ましくは、3000以下、より好ましくは、2000以下である。
【0239】
フィラーは、固形分100%として配合されてもよく、また、フィラーを溶剤に分散させた分散液として配合されてもよい。
【0240】
フィラーの配合割合は、特に制限されない。
【0241】
例えば、ガスバリア性ポリウレタン樹脂100質量部に対して、フィラーが、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、30質量部以上である。
【0242】
また、ガスバリア性ポリウレタン樹脂100質量部に対して、フィラーが、例えば、70質量部以下、好ましくは、60質量部以下である。
【0243】
添加剤は、例えば、バリアコート剤に添加され、ガスバリア性ポリウレタン樹脂とともに紙基材2に塗布および乾燥される。
【0244】
なお、添加剤の添加のタイミングは、特に制限されない。例えば、ガスバリア性ポリウレタン樹脂の合成時に、添加剤が添加されてもよい。また、例えば、ガスバリア性ポリウレタン樹脂を含むポリウレタンディスパージョンに、添加剤が添加されてもよい。
【0245】
ポリウレタンディスパージョンにおいて、ガスバリア性ポリウレタン樹脂および添加剤の合計濃度(固形分濃度)は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上である。
【0246】
また、ポリウレタンディスパージョンにおいて、ガスバリア性ポリウレタン樹脂および添加剤の合計濃度(固形分濃度)は、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、40質量%以下である。
【0247】
そして、ガスバリア性ポリウレタン樹脂および添加剤を含むポリウレタンディスパージョンを、アンカーコート層3に対して、上記の条件で塗布および乾燥させることにより、ガスバリア性ポリウレタン樹脂および添加剤を含むバリアコート層4が形成される。
【0248】
バリアコート層4の量は、例えば、0.1g/m2以上、好ましくは、0.3g/m2以上、より好ましくは、0.5g/m2以上、さらに好ましくは、1.0g/m2以上、とりわけ好ましくは、1.5g/m2以上である。また、バリアコート層4の量は、例えば、30.0g/m2以下、好ましくは、20.0g/m2以下、より好ましくは、10.0g/m2以下、さらに好ましくは、5.0g/m2以下、とりわけ好ましくは、3.0g/m2以下である。
【0249】
バリアコート層4の量が上記範囲であれば、ガスバリア性に優れる積層体1が、得られる。
【0250】
また、積層体1は、図示しない機能層を備えることができる。機能層は、例えば、積層体1に、所望の機能性を付与するための樹脂層である。
【0251】
機能層は、バリアコート層4の一方面側、および/または、紙基材2の他方面側に、公知の方法で配置される。例えば、機能層は、アイオノマーの塗布および乾燥により、形成される。
【0252】
機能層により付与される機能性としては、例えば、耐水性、耐油性およびヒートシール性が挙げられる。
【0253】
そして、積層体1では、紙基材2の密度が所定の下限を上回っている。そのため、紙基材2に対するアンカーコート層3およびバリアコート層4の浸透の度合いを適度に調整できる。
【0254】
また、積層体1では、紙基材2の密度が所定の上限を下回っている。そのため、紙基材2に対して、アンカーコート層3およびバリアコート層4を、配向性よく配置できる。
【0255】
その結果、積層体1は、優れたガスバリア性を有し、とりわけ、未養生状態で優れたガスバリア性を有する。
【0256】
未養生状態の積層体1の透気抵抗度が、例えば、30000s以上、好ましくは、50000s以上、より好ましくは、70000s以上、さらに好ましくは、100000以上である。
【0257】
なお、透気抵抗度は、JIS P 8117(2009)に準拠して測定される。
【0258】
また、未養生状態の積層体1の透気抵抗度は、所定密度の紙基材2を選択することにより、調整できる。すなわち、所定の密度の紙基材2を用いることにより、未養生状態の透気抵抗度に優れた積層体1が、得られる。
【0259】
また、未養生状態の積層体1の酸素透過度(OTR)は、20℃かつ相対湿度70%において、例えば、800cc/m2・day・atm以下、好ましくは、500cc/m2・day・atm以下、より好ましくは、100cc/m2・day・atm以下、さらに好ましくは、50cc/m2・day・atm以下、さらに好ましくは、10cc/m2・day・atm以下、さらに好ましくは、5cc/m2・day・atm以下、さらに好ましくは、3cc/m2・day・atm以下、とりわけ好ましくは、2cc/m2・day・atm以下である。また、積層体1の酸素透過度(OTR)は、例えば、0.001cc/m2・day・atm以上である。
【0260】
なお、酸素透過度は、JIS K 7126-2(2006)に準拠して測定される。
【0261】
そして、積層体1は、優れたガスバリア性を有するため、各種産業分野において、好適に使用される。好ましくは、積層体1は、食品包装材として、好適に使用される。
【0262】
換言すると、食品包装材は、好ましくは、上記積層体1を備えている。
【0263】
そのため、食品包装材は、優れたガスバリア性を有し、とりわけ、未養生状態で優れたガスバリア性を有する。
【実施例】
【0264】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0265】
合成例1(PUD)
下記原料成分を、窒素雰囲気下、65~70℃で、イソシアネート基濃度(NCO%)が6.79質量%以下になるまで反応させた。これにより、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応液を得た。
【0266】
原料成分
1,3-キシリレンジイソシアネート
(タケネート500、1,3-XDI、三井化学社製)169.9質量部
1,3-水添キシリレンジイソシアネート
(タケネート600、1,3-H6XDI、三井化学社製)29.2質量部
エチレングリコール35.9質量部
トリメチロールプロパン3.4質量部
ジメチロールプロピオン酸18.2質量部
メチルエチルケトン(溶剤)115.8質量部
【0267】
次いで、反応液を、40℃まで冷却した。
【0268】
次いで、反応液に、トリエチルアミン13.6を添加し、イソシアネート基末端プレポリマーを中和させた。
【0269】
次いで、反応液を、751.5質量部のイオン交換水に、ホモディスパーで分散させた。次いで、得られた分散液に、アミン水溶液を添加し、鎖伸長反応させ、その後、1時間熟成させた。なお、アミン水溶液は、イオン交換水59.6質量部と、2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノール29.8質量部との混合液であった。
【0270】
その後、メチルエチルケトンおよびイオン交換水を、エバポレーターにて留去した。これにより、固形分濃度を30質量%に調整した。
【0271】
これにより、ガスバリア性ポリウレタン樹脂を含むポリウレタンディスパージョンを得た。
【0272】
製造例1(バリアコート剤)
合成例1で得られたポリウレタンディスパージョン(固形分濃度30%)28.3質量部と、合成マイカの水分散液(NTS-5、トピー工業社製、固形分濃度6質量%)25.0質量部と、水46.7質量部とを混合した。これにより、バリアコート剤を得た。
【0273】
製造例2(バリアコート剤)
合成例1で得られたポリウレタンディスパージョン(固形分濃度30%)33.3質量部と、溶剤としてのイソプロパノール10質量部と、水56.7質量部とを混合した。これにより、バリアコート剤を得た。
【0274】
調製例1~10(アンカーコート剤)
表1に記載の処方で、アンカーコート剤を調製した。
【0275】
なお、調製例1では、アクリルポリオールと、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体とを、酢酸エチル中で反応させることにより、ポリウレタン樹脂を含むアンカーコート剤を得た。
【0276】
また、調製例2~3では、合成例1で得られたポリウレタンディスパージョンの固形分濃度を、水および/またはアルコールにより調整し、アンカーコート剤を得た。
【0277】
また、調製例4~11では、市販のアンカーコート樹脂の固形分濃度を、水または酢酸エチルにより調整し、アンカーコート剤を得た。
【0278】
【0279】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
【0280】
PUD:合成例1のポリウレタンディスパージョン
NTS-5:トピー工業社製、合成マイカの水分散液、固形分濃度6質量%
XMU-18:三井化学製、アクリルポリオールの酢酸エチル溶液、固形分濃度50質量%
D-110N:三井化学社製、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体の酢酸エチル溶液、固形分濃度75質量%
W-6061:三井化学社製、水分散ポリウレタン樹脂の水分散液、固形分濃度30質量%
OHP-51b:三井化学社製、水分散アクリル樹脂の水分散液、固形分濃度25質量%
EP501H:三井化学社製、水分散ポリオレフィン樹脂の水分散液、固形分濃度45質量%
キトサン酢酸中和物水溶液:キトサン(東京化成工業社)10gを酢酸10gに添加し、純水で固形分濃度20%に希釈した水溶液
水分散ポリエチレンイミン:MICA社製、商品名A-131-X、ポリエチレンイミンの水分散液、固形分濃度5質量%
PVA210:クラレ社製、ポリビニルアルコール
SR116:日本エイアンドエル社製、カルボキシ変性スチレン・ブタジエン共重合体の水分散液、固形分濃度50.5質量%
IPA:東京化成工業社製、イソプロパノール、溶剤
酢酸エチル:東京化成工業社製、溶剤
【0281】
実施例1~4,7~14、比較例1~3、および、参考例2,3
表2~表4に記載の紙基材を準備した。
【0282】
次いで、表2~表4の記載に従って、紙基材の表面に、アンカーコート剤をバーコーターで塗布し、120℃で90秒乾燥させた。これにより、アンカーコート層を形成した。
【0283】
その後、表2~表4の記載に従って、アンカーコート層の表面に、バリアコート剤をバーコーターで塗布し、120℃で90秒乾燥させた。これにより、バリアコート層を形成した。
【0284】
これにより、積層体を得た。
【0285】
なお、各実施例、各比較例、および、参考例2,3では、バリアコート層を養生しなかった。
【0286】
参考例1
バリアコート層を40℃で3日間養生させた以外は、比較例3と同じ方法で、積層体を得た。
【0287】
<評価>
(1)透気抵抗度
王研式透気度平滑度試験機(旭精工社製)を使用して、積層体の透気抵抗度を測定した。
【0288】
なお、測定は、JIS P 8117(2009)に準拠した。
【0289】
(2)外観
積層体の外観を観察し、下記の基準で評価した。
○:問題なかった。
△:積層体の白化が、わずかに観察された。
×:積層体の白化、および/または、バリアコート層の剥離が観察された。
【0290】
(3)酸素透過度(OTR)
酸素透過度測定装置(MOCON社、OX-TRAN2/20)を使用して、積層体の酸素透過度を測定した。
【0291】
なお、測定条件を、20℃、相対湿度70%(70%RH)に設定した。
【0292】
また、測定は、JIS K 7126-2(2006)に準拠した。
【0293】
また、1m2、1日および1気圧当たりの酸素透過量(cc/m2・day・atm)を測定した。
【0294】
【0295】
【0296】
【0297】
なお、紙基材の詳細を下記する。
グラシン紙A:密度1.24g/cm3、坪量30.8g/m2
グラシン紙B:密度1.15g/cm3、坪量32.1g/m2
塗工紙:密度1.17g/cm3、坪量68.0g/m2
片ツヤクラフト紙:密度0.73g/cm3、坪量73.1g/m2
晒中性紙:密度0.71g/cm3、坪量71.3g/m2
【0298】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0299】
本発明の積層体および食品包装材は、食品包装分野において、好適に使用される。
【符号の説明】
【0300】
1 積層体
2 紙基材
3 アンカーコート層
4 バリアコート層