(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】金属、ガラス、およびプラスチックの基体のための装飾および保護コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 183/06 20060101AFI20240823BHJP
C09D 185/00 20060101ALI20240823BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20240823BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240823BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240823BHJP
B32B 27/26 20060101ALI20240823BHJP
B32B 15/095 20060101ALI20240823BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240823BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240823BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20240823BHJP
B32B 15/20 20060101ALN20240823BHJP
【FI】
C09D183/06
C09D185/00
C09D175/04
B32B27/00 101
B32B27/20 A
B32B27/26
B32B15/095
B32B27/18 Z
B05D7/24 302Y
B05D7/24 303Z
B05D7/24 302T
B05D3/02 Z
B32B15/20
(21)【出願番号】P 2022550216
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2021053958
(87)【国際公開番号】W WO2021165356
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2024-02-15
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522330706
【氏名又は名称】アーページェー-エフ エス.アー.エール.エル
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】シャックマン ビリー
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-213801(JP,A)
【文献】特開2008-303274(JP,A)
【文献】特開2015-4033(JP,A)
【文献】国際公開第2020/013129(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D、C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
I. A1. 1つまたは複数の、式(Ia):
(R
1O)
nSiR
2
3-nR
3 (Ia)
の部分加水分解されたアルコキシシランであって、
式中、記号および添え字は以下の定義:
R
1がC
1~C
6アルキルまたはC
1~C
10アリールであり、
R
2がC
1~C
4アルキル、C
2~C
4アルケニルもしくはC
2~C
4-アルキニル、C
6~C
10アリール、C
6~C
10アラルキル、またはC
6~C
10アルカリールであり、
R
3がエポキシ官能基であり、かつ
nが1、2、または3であ
り、
前記部分加水分解されたアルコキシシランとは、非加水分解基と加水分解基の比(ROR比)が0.33~0.8であることを意味する、
を有する、
前記アルコキシシラン;
A2. 任意で、1つまたは複数の、式(Ib):
(R
4O)
nSiR
5
4-n (Ib)
の部分加水分解されたアルコキシシランであって、
式中、記号および添え字は以下の定義:
R
4がC
1~C
6アルキルまたはC
6~C
10アリールであり、
R
5がC
1~C
10アルキル、C
2~C
4アルケニルもしくはC
2~C
4アルキニル、C
6~C
10アリール、C
6~C
10アラルキル、またはC
6~C
10アルカリールであり、前述のラジカルが、1つまたは複数のアミノ基で置換されていてもよく、かつ
nが1、2、3、または4であ
り、
前記部分加水分解されたアルコキシシランとは、非加水分解基と加水分解基の比(ROR比)が0.33~0.8であることを意味する、
を有する、
前記アルコキシシラン;
B1. 1つまたは複数の、式(IIa):
Ti(OR
6)
4 (IIa)
の金属アルコキシドであって、
式中、記号は以下の定義:
R
6がC
1~C
6アルキルまたはC
6~C
10アリールである、
を有する、
前記金属アルコキシド;
B2. 任意で、1つまたは複数の、式(IIb):
M
+(4-m)(OR
7)
4-m (IIb)
の金属アルコキシドであって、
式中、記号および添え字は以下の定義:
Mが、
Al、Zr、またはBであり、
R
7がC
1~C
6アルキル、またはC
6~C
10アリールであり、かつ
mが0または1である、
を有し、
ここで、構成要素A1およびA2中のSiと構成要素B1中のTiのモル比が1~20:1である、
前記金属アルコキシド;
C. 1つまたは複数のオリゴマーポリオールまたはポリマーポリオール;
D. 1つまたは複数のブロックされ任意で修飾されたポリイソシアネート;ならびに
E. 任意で、
1つまたは複数の遊離エポキシ基を有する、1つまたは複数のモノマー、オリゴマー、および/またはポリマー
から得られる無機-有機ハイブリッド材料と、
II. 任意で、1つまたは複数の着色剤と、
III. 任意で、1つまたは複数の補助剤と
を含む、コーティング組成物。
【請求項2】
式(Ia)中の記号および添え字が、以下の定義:
R
1がC
1~C
4アルキルであり、
R
3が3-グリシジルオキシプロピルであり、かつ
nが3である、
を有する、化合物(Ia)
を含む、請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項3】
1つまたは複数の、式(Ia)の部分加水分解されたアルコキシシランとして、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランおよび/または3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランを含む、請求項1または2記載のコーティング組成物。
【請求項4】
1つまたは複数の、式(Ib)の化合物を含む、請求項1~3のいずれか一項記載のコーティング組成物。
【請求項5】
1つまたは複数の式(Ib)の化合物が、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、および前述の化合物のうちの2つまたはそれ以上の混合物からなる群より選択される、請求項4記載のコーティング組成物。
【請求項6】
酸性媒質中で、式(I)の化合物の部分加水分解が行われた、請求項1~5のいずれか一項記載のコーティング組成物。
【請求項7】
化合物(IIa)がチタンテトラ-n-ブトキシドである、請求項1~6のいずれか一項記載のコーティング組成物。
【請求項8】
式(IIb)の記号および添え字が、以下の定義:
MがAl、Zr、またはBであり、
R
7がC
1~C
6アルキルであり、かつ
mが0または1である、
を有する、請求項1~7のいずれか一項記載のコーティング組成物。
【請求項9】
構成要素Eが、1つまたは複数のジグリシジルエーテルもしくはトリグリシジルエーテルまたはジトリグリシジルエステルもしくはトリグリシジルエステルを含む、請求項1~8のいずれか一項記載のコーティング組成物。
【請求項10】
使用する構成要素Cが分枝ポリエステルポリオールを含む、請求項1~9のいずれか一項記載のコーティング組成物。
【請求項11】
使用する構成要素Dが、1つまたは複数のイソホロンジイソシアネート系またはヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックされたポリイソシアネートを含む、請求項1~10のいずれか一項記載のコーティング組成物。
【請求項12】
コーティングされた基体を製造するための方法であって、
a)請求項1~11のいずれか一項記載のコーティング組成物を前記基体に湿式化学的に適用する段階、および
b)前記コーティング組成物を熱硬化させる段階
を含む、前記方法。
【請求項13】
硬化時間が2分間~2時間の範囲内である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
段階b)の熱硬化を80~240℃の範囲内の温度で行う、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
前記基体が、金属、ガラス、およびプラスチックの基体である、請求項12~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
前記基体が、アルミニウム基体である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
請求項1~11のいずれか一項記載のコーティング組成物でコーティングされた基体。
【請求項18】
金属、ガラス、またはプラスチックの基体である、請求項17記載の基体。
【請求項19】
アルミニウム基体である、請求項18記載の基体。
【請求項20】
基体をコーティングするための、請求項1~11のいずれか一項記載のコーティング組成物。
【請求項21】
基体が金属、ガラス、およびプラスチックの基体である、請求項20記載の基体をコーティングするためのコーティング組成物。
【請求項22】
基体がアルミニウム基体である、請求項21記載の基体をコーティングするためのコーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に金属、ガラス、およびプラスチックの基体のための無機-有機コーティング組成物、本発明のコーティング組成物による基体のコーティング法、ならびに本発明のコーティング組成物でコーティングされた基体に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術に従って、今日では、金属、ガラス、およびプラスチックの基体のための装飾および/または保護表面、例えば粉体コーティングや、特にアルミニウム材料のための陽極層を製造するために様々な方法が使用されている。
【0003】
粉体コーティングは、一般には、複数の前処理段階を必要とする。表面残留物(塗料、グリース)の除去に加えて、これらの段階は、洗浄および複数の変換コートの塗布も含む。これらのコートの目的は、表面と塗料との間のより良好な適合性を達成することである。室温で蒸発し、表面に残留物を残さないエタノールまたはアセトン系の洗浄製品が洗浄に使用される。特定の塩基性材料は、腐食制御のために前処理を必要とする。不十分な表面処理は、密着性の低下、または自然剥離もしくは塗膜のクレーターにすらつながる可能性がある。粉体コーティング分野の典型的なプロセスは、鋼のリン酸塩処理、亜鉛メッキ鋼の着色、クロム酸塩処理および陽極酸化、またはアルミニウムの陽極酸化である。生成した粉体コーティング層は、一般には、60~120μmの間の層厚を有する。適用および表面特性に応じて、層厚はこの範囲より高くてもまたは低くてもよい。
【0004】
場合によっては複雑な前処理段階は、費用がかかり、したがって避けるべきである。しかし、前処理が適切に行われず、その結果として欠陥品が出ると、密着性の欠損が発生するリスクがある。機能的装飾分野における粉体コーティングの他の欠点は比較的厚い層厚であり、これはプラスチック様の外観をもたらし得、触覚品質に影響を及ぼし得る。さらに、特定の適用領域の粉体コーティングは、耐薬品性および耐食性が不十分で、耐傷性および耐摩耗性も不十分である。
【0005】
アルミニウムおよびその合金の着色表面を得るために頻繁に使用されるプロセスは、陽極酸化プロセスである。製造条件およびアルミニウム合金に応じて、様々な種類の陽極酸化層が公知である。技術的陽極酸化コーティングは、硫酸電解質中1.5A/dm2の電流密度で室温で製造する。陽極酸化表面は透明であり、未処理の表面と比較して、アルミニウムを腐食および傷からある程度保護する。硬質陽極酸化層は、混合硫酸電解質中2~5A/dm2のより高い電流密度でおよそ0℃の温度で製造する。技術的陽極酸化と比較して、それらは特に強化された耐摩耗性および耐傷性によって区別される。第3の技術は、Glossel陽極酸化技術である。この場合、金属を、技術的陽極酸化の前に電解研磨によって研磨し、次いで硫酸電解質中で陽極酸化する。陽極酸化層は多孔質構造を有し;染料または他の物質を、これらの細孔内に任意で埋め込んでもよい。細孔の開口部は、熱水中で圧縮することにより閉じることができる。ここで、酸化アルミニウム水和物(ベーマイト)が細孔内で形成される。陽極酸化は、光輝アルミニウムと比較して耐食性を改善するが、陽極酸化層の欠点はpH安定性の欠如(pH4~9の間)である。当然のことながら、この範囲外のpH値では、光輝アルミニウムまたは陽極酸化層のいずれであっても、上層によって保護しなければならない。着色陽極酸化アルミニウムを得るために使用される様々な方法がある。
【0006】
有機染料で着色する場合、陽極酸化後のアルミニウムを高温染料溶液に浸漬し、次いで洗浄する。この技術での着色により、染料分子は主に陽極酸化層の細孔の上部領域に蓄積し、酸化物層と結合を形成する。溶液中の染料の量が多いほど、それらが酸化物層に蓄積する程度が大きくなる。無機染料の場合、陽極酸化後、アルミニウムを中和し、洗浄して、塗料浴中、金属塩溶液で染色する。溶液のイオンは陽極酸化層の細孔中に蓄積し、固体となる。
【0007】
電解着色は交流電圧で行う。電解質は、着色金属塩を含む。電気分解の持続時間は、所望の色の深さに依存する。金属イオンは層の細孔中に深く浸透する。次いで、金属が部分的に充填された細孔は、吸収および散乱効果の結果として光の影響を受けた発色を生じる。
【0008】
装飾着色アルミニウム元素の場合、陽極酸化プロセスは一定数の色に限定され、大きな欠点は、すべてのタイプのアルミニウムがこの方法で着色できるわけではなく、前述の方法では通常均一な着色が得られないことである。さらに、すべてのアルミニウム合金および半製品が、これらの高価かつ不便な方法を用いて着色できるわけではない。
【0009】
公知の方法、すなわち今日でもなお主に使用されている同じ方法によるこれらの問題を回避するために、ハイブリッド、すなわち無機-有機ゾルゲル材料の使用について既に提案がなされている。
【0010】
ドイツ公開明細書DE 10 2007 003761 A1(特許文献1)は、エポキシド官能化またはイソシアネート官能化アルコキシシランを使用して、不均一な表面特性を有する基体をコーティングするための材料および方法を開示している。
【0011】
DE 43 38 361 A1(特許文献2)は、エポキシド基を含むシラン系の組成物の製造方法を開示している。開示されるコーティング組成物は必然的にナノ粒子を含む。
【0012】
DE 10 2012 022731(特許文献3)は、高い耐薬品性を有する耐摩耗性が高い抗石灰層を開示している。
【0013】
DE 10 2013 017217 A1(特許文献4)は、コーティングされた光学成形品を開示している。
【0014】
WO 2017/067666(特許文献5)は、a)コーティング組成物を軽金属基体に湿式化学的に適用する段階、およびb)コーティング材料を熱硬化させる段階を含む、コーティングされた軽金属基体、特にアルミニウム基体を製造するための方法であって、コーティング組成物は、1,3-ジカルボニル化合物の群からの錯化剤を必須添加したゾルゲル材料を含む、方法を開示している。
【0015】
公知のシステムですでに良好な結果が達成されているにもかかわらず、そのようなコーティングシステムによる多様な要件の点では、改善の余地が残っている。
【0016】
使用可能なコーティングを製造するためのコーティングシステムおよび方法は、粉体コーティングと、特にアルミニウムおよびその合金の場合、陽極層を置き換えるために、装飾表面を作製するのに適していなければならない。それらは、前処理層または地膚塗なしで適用を行うのを可能にするべきであり、研磨または「トロバライズ(trovalizing)」などの前処理操作の痕跡をマスキングするのに適しているべきである。特定の適用のために、材料は手の汗および紫外線に関して安定であるべきで、高い傷および摩耗安定性を有するべきである。また、高い耐食性もあるべきであり;前述の特性が保持され、高い色の均質性が必ず保証された、広範囲の色が使用可能であるべきである。
【0017】
今や驚くことに、少なくとも1つのチタンアルコキシドを含む特定の無機-有機ハイブリッド材料を含むコーティング組成物によって、前述の要件が高度に満たされることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】DE 10 2007 003761 A1
【文献】DE 43 38 361 A1
【文献】DE 10 2012 022731
【文献】DE 10 2013 017217 A1
【文献】WO 2017/067666
【発明の概要】
【0019】
本発明の対象はしたがって、
I. A1. 1つまたは複数の、式(Ia):
(R1O)nSiR2
3-nR3 (Ia)
の部分加水分解されたアルコキシシランであって、
式中、記号および添え字は以下の定義:
R1がC1~C6アルキルまたはC1~C10アリールであり、
R2がC1~C4アルキル、C2~C4アルケニルもしくはC2~C4~アルキニル、C6~C10アリール、C6~C10アラルキル、またはC6~C10アルカリールであり、
R3がエポキシ官能基であり、かつ
nが1、2、または3である、
を有する、
アルコキシシラン;
A2. 任意で、1つまたは複数の、式(Ib):
(R4O)nSiR5
4-n (Ib)
の部分加水分解されたアルコキシシランであって、
式中、記号および添え字は以下の定義:
R4がC1~C6アルキルまたはC6~C10アリールであり、
R5がC1~C10アルキル、C2~C4アルケニルもしくはC2~C4アルキニル、C6~C10アリール、C6~C10アラルキル、またはC6~C10アルカリールであり、前述のラジカルが、1つまたは複数、好ましくは1つのアミノ基で置換されていてもよく、かつ
nが1、2、3、または4である、
を有する、
アルコキシシラン;
B1. 1つまたは複数の、式(IIa):
Ti(OR6)4 (IIa)
の金属アルコキシドであって、
式中、記号は以下の定義:
R6がC1~C6アルキルまたはC6~C10アリールである、
を有する、
金属アルコキシド;
B2. 任意で、1つまたは複数の、式(IIb):
M+(4-m)(OR7)4-m (IIb)
の金属アルコキシドであって、
式中、記号および添え字は以下の定義:
Mが、Ti以外のEN<1.5の主族または第3もしくは第4遷移族からの金属であり、
R7がC1~C6アルキル、またはC6~C10アリールであり、かつ
mが0または1、好ましくは1である、
を有し、
ここで、構成要素A1およびA2中のSiと構成要素B1中のTiのモル比が1~20:1である、
金属アルコキシド;
C. 1つまたは複数のオリゴマーポリオールまたはポリマーポリオール;
D. 1つまたは複数のブロックされ任意で修飾されたポリイソシアネート;ならびに
E. 任意で、
1つまたは複数の遊離エポキシ基、好ましくは少なくとも2つの遊離エポキシ基を有する、1つまたは複数のモノマー、オリゴマー、および/またはポリマー
から得られる無機-有機ハイブリッド材料と、
II. 任意で、1つまたは複数の着色剤と、
III. 任意で、1つまたは複数の補助剤と
を含む、コーティング組成物である。
【0020】
本発明のさらなる対象は、コーティングされた基体を製造するための方法であって、
a)本発明のコーティング組成物を基体に湿式化学的に適用する段階、および
b)コーティング組成物を熱硬化させる段階
を含む、方法である。
【0021】
本発明のさらなる対象は、基体、好ましくは金属、ガラス、およびプラスチックの基体、より好ましくは軽金属基体、特にアルミニウム基体をコーティングするための、本発明のコーティング組成物の使用である。
【0022】
同様に、本発明の対象は、本発明のコーティング組成物でコーティングされた基体、好ましくは金属、ガラス、およびプラスチックの基体、より好ましくは軽金属基体、特にアルミニウム基体である。
[本発明1001]
I. A1. 1つまたは複数の、式(Ia):
(R
1
O)
n
SiR
2
3-n
R
3
(Ia)
の部分加水分解されたアルコキシシランであって、
式中、記号および添え字は以下の定義:
R
1
がC
1
~C
6
アルキルまたはC
1
~C
10
アリールであり、
R
2
がC
1
~C
4
アルキル、C
2
~C
4
アルケニルもしくはC
2
~C
4
-アルキニル、C
6
~C
10
アリール、C
6
~C
10
アラルキル、またはC
6
~C
10
アルカリールであり、
R
3
がエポキシ官能基であり、かつ
nが1、2、または3である、
を有する、
前記アルコキシシラン;
A2. 任意で、1つまたは複数の、式(Ib):
(R
4
O)
n
SiR
5
4-n
(Ib)
の部分加水分解されたアルコキシシランであって、
式中、記号および添え字は以下の定義:
R
4
がC
1
~C
6
アルキルまたはC
6
~C
10
アリールであり、
R
5
がC
1
~C
10
アルキル、C
2
~C
4
アルケニルもしくはC
2
~C
4
アルキニル、C
6
~C
10
アリール、C
6
~C
10
アラルキル、またはC
6
~C
10
アルカリールであり、前述のラジカルが、1つまたは複数、好ましくは1つのアミノ基で置換されていてもよく、かつ
nが1、2、3、または4である、
を有する、
前記アルコキシシラン;
B1. 1つまたは複数の、式(IIa):
Ti(OR
6
)
4
(IIa)
の金属アルコキシドであって、
式中、記号は以下の定義:
R
6
がC
1
~C
6
アルキルまたはC
6
~C
10
アリールである、
を有する、
前記金属アルコキシド;
B2. 任意で、1つまたは複数の、式(IIb):
M
+(4-m)
(OR
7
)
4-m
(IIb)
の金属アルコキシドであって、
式中、記号および添え字は以下の定義:
Mが、Ti以外のEN<1.5の主族または第3もしくは第4遷移族からの金属であり、
R
7
がC
1
~C
6
アルキル、またはC
6
~C
10
アリールであり、かつ
mが0または1、好ましくは1である、
を有し、
ここで、構成要素A1およびA2中のSiと構成要素B1中のTiのモル比が1~20:1である、
前記金属アルコキシド;
C. 1つまたは複数のオリゴマーポリオールまたはポリマーポリオール;
D. 1つまたは複数のブロックされ任意で修飾されたポリイソシアネート;ならびに
E. 任意で、
1つまたは複数の遊離エポキシ基、好ましくは少なくとも2つの遊離エポキシ基を有する、1つまたは複数のモノマー、オリゴマー、および/またはポリマー
から得られる無機-有機ハイブリッド材料と、
II. 任意で、1つまたは複数の着色剤と、
III. 任意で、1つまたは複数の補助剤と
を含む、コーティング組成物。
[本発明1002]
式(Ia)中の記号および添え字が、以下の定義:
R
1
がC
1
~C
4
アルキルであり、
R
3
が3-グリシジルオキシプロピルであり、かつ
nが3である、
を有する、化合物(Ia)、好ましくは3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランおよび/または3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン
を含む、本発明1001のコーティング組成物。
[本発明1003]
1つまたは複数の、式(Ib)の化合物を含み、前記化合物が好ましくは、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、および前述の化合物のうちの2つまたはそれ以上の混合物からなる群より選択される、本発明1001または1002のコーティング組成物。
[本発明1004]
酸性媒質中で、好ましくはリン酸の添加により、式(I)の化合物の部分加水分解が行われた、本発明1001~1003のいずれかのコーティング組成物。
[本発明1005]
化合物(IIa)がチタンテトラ-n-ブトキシドである、本発明1001~1004のいずれかのコーティング組成物。
[本発明1006]
式(IIb)の記号および添え字が、以下の定義:
MがAl、Zr、またはBであり、
R
7
がC
1
~C
6
アルキルであり、かつ
mが0または1である、
を有する、本発明1001~1005のいずれかのコーティング組成物。
[本発明1007]
構成要素Eが、1つまたは複数のジグリシジルエーテルもしくはトリグリシジルエーテルまたはジトリグリシジルエステルもしくはトリグリシジルエステル、好ましくは4,4'-イソプロピリデンジフェノールジグリシジルエーテルを含む、本発明1001~1006のいずれかのコーティング組成物。
[本発明1008]
使用する構成要素Cが分枝ポリエステルポリオールを含む、本発明1001~1007のいずれかのコーティング組成物。
[本発明1009]
使用する構成要素Dが、1つまたは複数のイソホロンジイソシアネート系またはヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックされたポリイソシアネートを含む、本発明1001~1008のいずれかのコーティング組成物。
[本発明1010]
コーティングされた基体を製造するための方法であって、
a)本発明1001~1009のいずれかのコーティング組成物を前記基体に湿式化学的に適用する段階、および
b)前記コーティング組成物を熱硬化させる段階
を含む、前記方法。
[本発明1011]
硬化時間が2分間~2時間の範囲内である、本発明1010の方法。
[本発明1012]
段階b)の熱硬化を80~240℃の範囲内の温度で行う、本発明1010または1011の方法。
[本発明1013]
前記基体が、金属、ガラス、およびプラスチックの基体、特にアルミニウム基体である、本発明1010~1012のいずれかの方法。
[本発明1014]
本発明1001~1009のいずれかのコーティング組成物でコーティングされた基体、好ましくは金属、ガラス、およびプラスチックの基体、特にアルミニウム基体。
[本発明1015]
基体、好ましくは金属、ガラス、およびプラスチックの基体、特にアルミニウム基体をコーティングするための、本発明1001~1009のいずれかのコーティング組成物の使用。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のコーティング組成物を用いて製造したコーティングされた基体、特に装飾金属、プラスチック、およびガラス基体は、傑出した外観を非常に良好な耐食性、UV安定性、および耐傷性と組み合わせる。
【0024】
チタン構成要素の使用を通じて、アルコキシシランの高い加水分解速度を達成することが可能である(例えば、Alアルコキシドの使用と比較して)。アルミニウムの三価性に比べてチタンの四価性により、最終生成物における高い密度増加を達成することができる。チタン化合物の使用の別の効果は、反応後の低い水分含有量およびコーティングの低い濁りである。
【0025】
本発明は、したがって、高価な陽極酸化プロセスの回避または置き換え、代替合金の使用、および粉砕、鋳物、ダイカストおよびシート材料の使用の可能性を拡げる。本発明のコーティング材料は、さらに、プロセス安定性の改善について顕著である。
【0026】
本発明において、特に以下の特性プロファイルによって識別されるコーティングを得ることが可能である:
- 密着性:クロスカット(DIN EN ISO 2409)GT:0;
- 煮沸試験後の密着性:(沸騰DIN水中の滞在時間2h)GT:1;
- 耐食性:NSS-Test(DIN EN ISO 9227)240h;
- UV風化;
- 日光試験、屋内(DIN EN ISO 4892-2 Method B6)250h;
- 日光試験、屋外(DIN EN ISO 4892-2 Method A2)500h;
- 耐摩耗性;
- 摩耗試験(DIN EN ISO 60068-2-70)50000サイクル<20mm2;
- 手の汗試験40000サイクル;
- クロックメーター試験、綿布による20000および50000サイクルで成功(光沢消失または色変化なし);
- 表面硬度;
- 耐傷性(DIN EN ISO 1518):8~10N。
【0027】
本発明のコーティング組成物、ならびにI. 無機-有機ハイブリッド材料、II. 任意で、1つまたは複数の着色剤、およびIII. 任意で、1つまたは複数の補助剤は、合成から得られ、部分加水分解に起因する少量のアルコール、および任意で、1つまたは複数のさらなる希釈剤からなる希釈剤をさらに含む。本発明のコーティング組成物は、好ましくは、I~IIIの構成要素および、合成から得られ、部分加水分解に起因する少量のアルコールと同様、任意で、1つまたは複数のさらなる希釈剤を含む希釈剤からなる。
【0028】
無機-有機ハイブリッド材料は、インサイチューで生成され、加水分解可能なアルコキシシランの縮合から形成される、ブロックプレポリマーである。これは、構成要素A1. 1つまたは複数の、式(Ia)の部分加水分解されたアルコキシシラン、A2. 任意で、1つまたは複数の、式(Ib)の部分加水分解されたアルコキシシラン、B1. 1つまたは複数の、式(IIa)の金属アルコキシド、B2. 任意で、1つまたは複数の、式(IIb)の金属アルコキシド、C. 1つまたは複数のオリゴマーポリオールまたはポリマーポリオール、D. 1つまたは複数のブロックされ任意で修飾されたポリイソシアネート、およびE. 任意で、1つまたは複数の遊離エポキシ基、好ましくは少なくとも2つの遊離エポキシ基を有する1つまたは複数のモノマー、オリゴマー、および/またはポリマーから得られる。
【0029】
構成要素A1
部分加水分解されたアルコキシシランの式(Ia)において、記号および添え字は好ましくは以下の定義を有する。
R1は好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはブチルであり、後者の2つの基は非分枝または分枝、好ましくは非分枝であり、より好ましくはメチルまたはエチルである。
nは好ましくは2または3、好ましくは3である。
R2は好ましくはC1~C4アルキル、特にメチルまたはエチルである。
R3は好ましくはエポキシアルキル基であり、そのアルキル基は1つまたは複数のヘテロ原子、例えば酸素または窒素が挿入されていてもよい。アルキル基は、例えば、ヒドロキシル、アミノ、カルボキシル またはアリールなどの、1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。アルキル基は直鎖、分枝、および/または環状であってもよい。好ましいアルキル基は、オキシラン環外に1~20、特に1~10個の炭素原子を含む。より好ましくは、アルキル基は酸素原子が挿入されている。特に好ましいエポキシ官能基はグリシジルオキシプロピル基である。
【0030】
適切なエポキシ修飾アルコキシシランの例には、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3,4-エポキシブチルトリメトキシシラン、3,4-エポキシブチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシランおよび3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシランが含まれる。
【0031】
本発明の文脈における「部分加水分解された」とは、非加水分解基と加水分解基の比(ROR比)が0.33~0.8であることを意味する。
【0032】
部分加水分解の好ましいモル比は以下のとおりである:一般式(Ia)のシランと水の比は一般には7.5:1~1:1.5、好ましくは5:1~1:1、より好ましくは比は1:1である。
【0033】
部分加水分解は、酸性または塩基性触媒作用により、または中性媒質中で実施してもよい。酸性触媒作用が好ましく、この場合、1つまたは複数の酸を使用し、例は塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、および酢酸などの有機酸である。1つの好ましい態様において、部分加水分解は少なくとも部分的にはリン酸により実施する。それによって製造したコーティングは、高い耐食性ならびに変色およびふくれのない材料に関して注目に値する。
【0034】
エポキシ官能基は、官能基化アルコキシシランの部分加水分解の条件下では加水分解されない。
【0035】
構成要素A1は、1つまたは複数、好ましくは1、2、もしくは3つ、または1もしくは2つ、特に1つの、式(Ia)のアルコキシシランを含む。
【0036】
構成要素A2
ハイブリッド材料は、構成要素A2として、任意で、1つまたは複数の、式(Ib)のアルコキシシランを含む。1つの好ましい態様において、ハイブリッド材料は、1、2、3、4、または5つ、より好ましくは1~4つの、式(Ib)のアルコキシシランを含む。別の好ましい態様において、ハイブリッド材料は、式(Ib)のアルコキシシランを含まない(0)。
【0037】
式(Ib)における記号および添え字は好ましくは以下の定義を有する。
R4は好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはブチルであり、後者の2つの基は非分枝または分枝、好ましくは非分枝であり、より好ましくはメチルまたはエチルである。
R5はC1~C8アルキル、C6~C10アリール、C6~C10アラルキル、またはC6~C10アルカリールであり、前述の基は1つまたは複数、好ましくは1つのアミノ基で置換されていてもよい。
nは好ましくは3または4である。
R4はより好ましくはメチルまたはエチルである。
R5はより好ましくはメチル、ヘキシル、フェニル、または3-アミノプロピルである。
nはより好ましくは3または4である。
【0038】
特に好ましい式(Ib)のアルコキシシランは、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、および3-アミノプロピルトリエトキシシランである。
【0039】
式(Ib)のアルコキシシランを使用する場合、それらは式(Ia)のアルコキシシランとの混合物中に存在し、したがって、部分加水分解の点で、構成要素A1に関してなされる記載は有効である。この場合、前述のモル比は式(Ia)および(Ib)のアルコキシシランの合計を指す。
【0040】
構成要素A2のアルコキシシランを加えることにより、本発明のコーティング組成物中の無機画分を都合よく高めることが可能である。ヘキシルトリエトキシシランおよびフェニルトリエトキシシランなどの化合物の使用は、疎水性の増大、腐食制御の改善、および後者の場合はUV安定性の強化につながる。
【0041】
構成要素B1
本発明のハイブリッド材料の構成要素B1は、1つまたは複数の、式(IIa):
Ti(OR6)4 (IIa)
のチタンアルコキシドを含み、式中、R6は、C1~C6アルキルまたはC6~C10アリールである。
【0042】
R6は好ましくはC1~C6アルキル、より好ましくはn-ブチルである。
【0043】
構成要素A1およびA2中のSiと構成要素B1中のTiのモル比は、1~20:1、好ましくは3~10:1、より好ましくは4~8:1、非常に好ましくは4.5~5.5:1である。
【0044】
構成要素B1中のチタンアルコキシドの使用は、例えば、アルコキシドをさらなる安定化リガンドなしで系に加えうるという明確な効果を有する。金属アルコキシドに対する安定化効果を有するリガンドは公知であり;ここでは、一般には、キレート形成リガンドを用いる。しかし、本発明の特定の利点は、いかなる安定化剤も、特にキレート化剤をまったく、コーティング組成物に加える必要がないことである。
【0045】
したがって、1つの好ましい態様において、本発明のコーティング組成物は、式(IIa)および(IIb)の金属アルコキシドを安定化させるための錯化剤を含まず、より好ましくはキレート化剤を含まず、特に好ましくは1,3-ジカルボニル化合物を含まない。
【0046】
それにもかかわらず、金属アルコキシドに対する安定化効果を有する錯化剤を加える場合、特に1,3-ジカルボニル化合物、例えばβ-ジケトン、およびβ-ケトエステルが適切である。例はアセト酢酸エチル、アセト酢酸アリル、アセト酢酸メタクリロイルオキシエチル、3-アセチル-6-トリメトキシシリルヘキサン-2-オン、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオン、ブチロイル酢酸メチル、ベンゾイル酢酸エチルである。好ましい錯化剤はβ-ジケトンおよびβ-ケトエステル、より好ましくはアセチルアセトン(ペンタン-2,4-ジオン)およびアセト酢酸エチル(3-オキソ酪酸エチル)、特にアセト酢酸エチルである。
【0047】
式(IIa)および任意で(IIb)の金属アルコキシドと錯化剤のモル比として好ましいと証明されたのは、0.9:1.1、非常に好ましくは1:1の比である。望まれる場合、金属アルコキシド錯体を好ましくは-10℃~0℃の間の低温、より好ましくは氷浴中0℃の温度で調製してもよい。錯化剤は、好ましくは空気非存在下、金属アルコキシドを最初に充填したところに加える。この後、好ましくは8~48時間の間撹拌し、24時間の撹拌が特に好ましい。
【0048】
構成要素B2
ハイブリッド材料は、構成要素B2として、1つまたは複数の、式(IIb)の金属アルコキシドを任意で含む。
【0049】
1つの好ましい態様において、ハイブリッド材料は、1つまたは複数、好ましくは1、2、または3つ、より好ましくは1または2つの式(IIb)の金属アルコキシドを含む。別の好ましい態様において、ハイブリッド材料は、式(IIb)の金属アルコキシドを含まない(0)。
【0050】
式(IIb)中の適切な金属Mは、Ti以外の、化学元素の周期表の主族ならびに第3および第4遷移族からの、電気陰性度<1.5(ポーリングに従い)を有する金属;好ましくはAl、ZrおよびBである。特にAlが好ましい。
【0051】
式(IIb)中、nは0または1、好ましくは1である。Xは好ましくは基OR7である。OR7は好ましくはC1~6アルコキシまたはC6~10アリールオキシである。好ましい基OR7はメトキシ、エトキシ、プロポキシおよびブトキシである。特にエトキシおよびsec-ブトキシが好ましい。
【0052】
特に好ましい式(IIb)の化合物はアルミニウムアルコキシド、特にアルミニウムトリ-sec-ブトキシド(アルミニウムトリ-sec-ブチレート、アルミニウムトリ-sec-ブタノレート)である。
【0053】
ハイブリッド材料が式(IIb)の金属アルコキシドを含む場合、構成要素B1中のTiと金属アルコキシドB2のモル比は少なくとも1:1である。
【0054】
構成要素B2中の金属アルコキシドへの錯化剤の添加について、構成要素B1に関してなされる記載は同様に有効であり、本発明のコーティング組成物は好ましくは安定化錯化剤を含まず、より好ましくはキレート化剤を含まず、特に好ましくは1,3-ジカルボニル化合物を含まないことを意味する。
【0055】
構成要素C
構成要素Cとしてはオリゴマーポリオールまたはポリマーポリオールが適切であり、例はポリビニルアルコール(例えば、Mowiol(登録商標)の商標で市販されている)またはOH基を有するポリエステルもしくはポリエーテルなどの、遊離OH基を有する他のオリゴマーもしくはポリマー、あるいはアルコール要素としてジオールまたはポリオールを有するポリアクリレートである。
【0056】
構成要素Cとして、ポリウレタンの調製から部分的に公知の種類の、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルカーボネートポリオール、ポリブタジエン誘導体、ポリシロキサン系誘導体、およびその混合物を優先して使用することが可能である。
【0057】
適切なポリエステルポリオールは、ジオールと、同様に任意でトリオールおよびテトラオールの重縮合物、ならびにジカルボン酸と、同様に任意でトリカルボン酸およびテトラカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸もしくはラクトンの重縮合物であってもよい。ポリエステルを調製するために、遊離ポリカルボン酸の代わりに、対応するポリカルボン酸無水物または対応する低級アルコールのポリカルボン酸エステルを使用することも可能である。
【0058】
ポリエステルポリオールは、4~16個の炭素原子を有する脂肪族および/または芳香族ポリカルボン酸から、任意でそれらの無水物から、ならびに任意で環エステルを含むそれらの低分子量エステルから重縮合によって通常の方法で調製し、2~12個の炭素原子を有する低分子量ポリオールを反応構成要素として主に使用する。この文脈における適切なアルコールの例は、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ならびに1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブタン-1,3ジオール、ブタン-1,4ジオール、ヘキサン-1,6ジオールおよび異性体、ネオペンチルグリコールもしくはネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートまたはその混合物であり、ヘキサン-1,6ジオールおよび異性体、ブタン-1,4ジオール、ネオペンチルグリコールおよびネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートが好ましい。加えて、トリメチロールプロパン、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロイルベンゼンもしくはトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートまたはその混合物などのポリオールを使用することも可能である。ジオール、非常に好ましくはブタン-1,4ジオールおよびヘキサン-1,6ジオール、非常に好ましくはヘキサン-1,6ジオールを使用することが特に好ましい。
【0059】
この文脈におけるジカルボン酸として、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、テトラクロロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マロン酸、スベリン酸、2-メチルコハク酸、3,3-ジエチルグルタル酸および/または2,2-ジメチルコハク酸を使用することが可能である。対応する無水物も酸供給源として使用してもよい。
【0060】
加えて、安息香酸およびヘキサンカルボン酸などのモノカルボン酸を同様に使用することも可能である。
【0061】
適切な化合物は、例えば、CovestroによりDesmophen(登録商標)の商標で市販されている。特にCovestroの分枝ポリエステルポリオールであるDesmophen(登録商標) D651 MDA/Xが好ましい。さらにCovestroの三官能性ポリプロピレンエーテルポリオールであるDesmophen(登録商標) 1380 BTが好ましい。
【0062】
全コーティング組成物に基づく構成要素Cの量は一般には5~25重量%である。
【0063】
本発明のコーティング組成物の調製において、オリゴマーまたはポリマーを一般には希釈剤中で使用し、希釈剤の例はアルコール、グリコール、エステルおよび/または芳香族溶媒などの1つまたは複数の溶媒である。好ましい例は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、1-メトキシ-2-プロピルアセテート)などのグリコールモノエーテルアセテートである。
【0064】
構成要素D
本発明の構成要素Dとして適しているのは、例えば、ブチレン1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4および/または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4'-イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12-MDI)または任意の所望の異性体含有量のその混合物、シクロヘキシレン1,4-ジイソシアネート、4-イソシアナトメチルオクタン-1,8-ジイソシアネート(ノナントリイソシアネート)、フェニレン1,4-ジイソシアネート、トルエン2.4-および/または2,6-ジイソシアネート(TDI)、ナフチレン1,5-ジイソシアネート、ジフェニルメタン2.2'-および/または2,4'-および/または4,4'-ジイソシアネート(MDI)、1,3-および/または1,4-ビス(2-イソシアナトプロパ-2-イル)ベンゼン(TMXDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)、アルキル基が1~8個の炭素原子を有するアルキル2,6-ジイソシアナトヘキサノエート(リジンジイソシアネート)、ならびにその混合物系のブロックされたポリイソシアネートである。構成要素Dの適切な構築ブロックには、例えば、アロファネート、ウレトジオン、ウレタン、イソシアヌレート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンまたはオキサジアジントリオン構造を含み、かつ前述のジイソシアネート系の化合物、および、例えば、ポリマーMDI(pMDI)などの多環式化合物、ならびにこれらすべての組み合わせなどの改変をさらに含む。
【0065】
HDIおよびIPDI系のブロックされたジイソシアネートを使用することが特に好ましい。
【0066】
イソシアネート基は部分的または完全にブロックされており、したがってイソシアネート反応性基と直接反応することはできない。これにより、反応は確実に特定の温度(ブロッキング温度)でのみ起こる。典型的ブロッキング剤は先行技術にあり、化合物に応じて、60~220℃の間の温度でイソシアネート基から再度切断され、その後にのみイソシアネート反応性基と反応するように選択する。典型的ブロッキング剤の例はカプロラクタム、メチルエチルケトキシム、ピラゾール、例えば、3,5-ジメチル-2-ピラゾールもしくは1-ピラゾール、トリアゾール、例えば、1,2,4-トリアゾール、ジイソプロピルアミン、ジエチルマロネート、ジエチルアミン、フェノールもしくはその誘導体、またはイミダゾールである。
【0067】
対応するブロックされたイソシアネートは、例えば、CovestroのDesmodur(登録商標)の商標の間で市販されている。特に、CovestroのDesmodur(登録商標) PL 340および350の名称で市販されているイソホロンジイソシアネー系トおよびヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックされたポリイソシアネートが好ましい。
【0068】
使用する改変ポリイソシアネートは好ましくはウレトジオンであり、例はEvonikから市販のVestagon(登録商標)製品である。
【0069】
全コーティング組成物に基づく構成要素Dの量は一般には5~20重量%である。
【0070】
構成要素E
構成要素Eとして、ハイブリッド材料は任意で、1つまたは複数の遊離エポキシ基、好ましくは少なくとも2つの遊離エポキシ基を有する、1つまたは複数、好ましくは1つのモノマー、オリゴマー、および/またはポリマーを含む。
【0071】
構成要素Eとして、ジおよびトリグリシジルエーテルおよびエステルが好ましい。特に、4,4'-イソプロピリデンジフェノールジグリシジル エーテル(ビスフェノールAジグリシジルエーテルBPADGE)、ジグリシジル-1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルおよびトリス(4-ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、特に4,4'-イソプロピリデンジフェノールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0072】
1つの好ましい態様において、ハイブリッド材料は、少なくとも2つの遊離エポキシ基を有する、1つまたは複数、好ましくは1つのモノマー、オリゴマー、および/またはポリマーを含む。この場合、構成要素A1に基づく構成要素Eの量は一般には5~25、好ましくは10~20mol%である。
【0073】
さらなる好ましい態様において、ハイブリッド材料、好ましくは全コーティング組成物は、1つまたは複数の遊離エポキシ基を有するモノマー、オリゴマー、またはポリマーを含まない(0)。
【0074】
好ましい態様において、本発明のハイブリッド材料は以下から得る:
A1. 1つまたは複数(好ましくは1つ)の、式(Ia)の部分加水分解されたアルコキシシラン、好ましくは3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン;
A2. 1つまたは複数(好ましくは2~5つ)の、式(Ib)の部分加水分解されたアルコキシシラン;
B1. 式(IIa)の金属アルコキシド、好ましくはチタン酸テトラ-n-ブチル;
C. 1つまたは複数(好ましくは1つ)のオリゴマーポリオールまたはポリマーポリオール、好ましくはヒドロキシル基を含む分枝ポリエステルおよび/またはポリエーテル、より好ましくはヒドロキシル基を含む分枝ポリエステル;
D. 1つまたは複数(好ましくは1つ)のブロックされ任意で修飾されたポリイソシアネート、好ましくはイソホロンイソシアネート系のブロックされた脂肪族ポリイソシアネート;および
E. 任意で、
1つまたは複数の遊離エポキシ基、好ましくは少なくとも2つの遊離エポキシ基を有する、1つまたは複数(好ましくは1つ)のモノマー、オリゴマー、および/またはポリマー、好ましくはジおよび/またはトリグリシジルエーテルおよび/またはエステル、より好ましくは4,4'-イソプロピリデンジフェノールジグリシジルエーテル。
【0075】
ここで、構成要素Eが、1つまたは複数の遊離エポキシ基、好ましくは少なくとも2つの遊離エポキシ基を有する、1つまたは複数(好ましくは1つ)のモノマー、オリゴマー、および/またはポリマー、好ましくはジおよび/またはトリグリシジルエーテルおよび/またはエステル、より好ましくは4,4'-イソプロピリデンジフェノールジグリシジルエーテルからなる態様が好ましい。
【0076】
加えて、構成要素Eを含まない前述の態様のものが好ましい。
【0077】
前述の態様において、構成要素A2は、好ましくは少なくとも1つのトリアルコキシシラン(n=3)、好ましくはR5がC1~C8アルキル、好ましくはメチルもしくはヘキシル、フェニルまたは3-アミノプロピルである、少なくとも1つのトリアルコキシシラン、より好ましくはR5がそれぞれの場合にC1~C8アルキル、好ましくはメチルもしくはヘキシル、フェニルまたは3-アミノプロピルである、少なくとも3つの異なるトリアルコキシシランを含む。
【0078】
別の好ましい態様において、構成要素A2は、少なくとも1つのテトラアルコキシシラン(n=4)、好ましくはテトラエトキシシラン、および少なくとも1つのトリアルコキシシラン(n=3)、好ましくはR5がC1~C8アルキル、好ましくはメチルもしくはヘキシル、フェニル、または3-アミノプロピルである、少なくとも1つのトリアルコキシシラン、より好ましくはR5がそれぞれの場合にC1~C8アルキル、好ましくはメチルもしくはヘキシル、フェニル、または3-アミノプロピルである、少なくとも3つの異なるトリアルコキシシランを含む。
【0079】
II. 着色剤
ハイブリッド材料と同様に、本発明のコーティング組成物は任意で、1つまたは複数の着色剤を含む。
【0080】
1つの好ましい態様において、本発明のコーティング組成物は1つまたは複数、好ましくは1~3つの着色剤を含む。
【0081】
別の好ましい態様において、本発明のコーティング組成物は着色剤を含まない(0)。
【0082】
本発明のコーティング組成物において異なる色効果を達成するために添加する着色剤は、顔料(有機および無機、着色無機イオンまたは着色錯体、効果顔料)または可溶性染料である。市場で見られる多数の顔料の代表例には、BASF SEの範囲から、効果顔料Black Olive(商標)、雲母系効果顔料、Dynacolor(登録商標)真珠光沢顔料、ホウケイ酸系のFiremist(登録商標)顔料、Glacier(商標) Frost White、Graphitan(登録商標)黒鉛顔料、Lumina(登録商標)雲母系効果顔料、Lumina(登録商標) Royal雲母系効果顔料、MagnaPearl(登録商標)真珠光沢顔料、Mearlin(登録商標)真珠光沢顔料、Mearlite(登録商標)光沢顔料、Metasheen(登録商標)真空金属化アルミニウム顔料、アルミニウム顔料ペースト、例えばHydrolan、Paliocrom(登録商標)効果顔料、Paliocrom(登録商標) Brilliant効果顔料、Santa Fe(商標)色効果顔料、またはその他、例えば、Chromaflow white、着色および金顔料、Timrex KS4、Aerosil(登録商標) 200およびIriodin(登録商標) 299など、もしくはTimrex(登録商標) KS4、Aerosil(登録商標) 200、雲母効果顔料、例えばRoyal Gold 323、カーボンブラック顔料、例えば200 PWD、カーボンブラック顔料ペーストおよび光沢銅、例えばIriodin(登録商標) 532を含むものが含まれる。金属錯体染料は、例えば、アゾ染料のアニオンクロムおよびコバルト錯体である。カチオンは、例えば、ナトリウムイオンまたは置換アンモニウムイオンのいずれかである。置換可溶性フタロシアニンも同様にこの範疇に属する。
【0083】
有機アゾ顔料の例は、モノアゾ黄色およびモノアゾ橙色、ナフトール、ナフトールAS、アゾレーキ顔料、ベンズイミダゾロンおよび有機金属錯体である。
【0084】
有機多環式顔料の例は、フタロシアニン、キナクリドン、ペリレンおよびペリノン、チオインディゴ、アントラキノン、ジオキサジン、イソインドリノンおよびイソインドリン、ジケト-ピロロピロール(DPP)、トリアリールカルボニウムおよびキノフタロンである。
【0085】
無機顔料の例は、酸化鉄、緑色酸化クロム、群青、紺青、フタロクロームグリーン、様々な混合金属酸化物Biバナデート、酸化マンガン(MnO)である。染料の例には、アントラキノン染料、アゾ染料、ジオキサジン染料、インディゴ染料、ニトロおよびニトロソ染料、フタロシアニン染料、硫黄染料およびトリフェニルメタン染料が含まれる。具体例はコンゴーレッド、メチルオレンジ、ローダミンBまたはメチルレッドである。
【0086】
コーティング溶液50mlに必要な着色剤は、所望の色の強度に依存し、0.1~20gの範囲、好ましくは1~15g、より好ましくは2~12gである。
【0087】
全コーティング組成物に基づく着色剤IIの量は一般には0.1~40重量%である。
【0088】
III. 補助剤
本発明のコーティング組成物は任意で、1つまたは複数の補助剤を含む。
【0089】
1つの好ましい態様において、本発明のコーティング組成物は、1つまたは複数、好ましくは1~10の補助剤を含む。この場合、全コーティング組成物に基づく補助剤の量は一般には0.1~10重量%、好ましくは1~5重量%である。
【0090】
別の好ましい態様において、本発明のコーティング組成物は補助剤を含まない(0)。
【0091】
好ましい補助剤は、例えば、Bykにより多様な異なる形状で販売されている種類の、着色剤の分散剤およびレオロジーを適合させるための市販の添加剤、特に湿潤助剤および流動制御助剤である。分散剤の例はTego Dispers 670であり;レオロジーを適合させるための添加剤の例はTego Glide 100である。さらに、UV安定性を改善するために、UV安定化剤、例えば、Eversorb 40、Eversorb 81および/またはEversorb 95を加えることもできる。
【0092】
さらなる可能な補助剤はナノ粒子(例えばSiO2、TiO2、Al2O3、AlOOH、ZnO、B2O3、ZrO2、タルク、雲母)であり、これらは、機械的および光学的特性を確立するために、全コーティング組成物に基づき、例えば、0.1~40重量%の量で加えてもよい。
【0093】
合成から生じ、部分加水分解に由来する、アルコールの分画の他に、本発明のコーティング組成物は任意で、1つまたは複数のさらなる希釈剤を含む。全コーティング組成物に基づく希釈剤(アルコールおよび任意のさらなる希釈剤)の量は一般には20~80重量%である。
【0094】
本発明のコーティング組成物の個々の構成要素は、すでに希釈剤中で一般に使用されている。例えば、本発明のコーティング組成物の製造中、希釈剤、例えばアルコール、グリコール、エステルおよび/または芳香族溶媒などの1つまたは複数の溶媒中で、オリゴマーまたはポリマーを一般に用いる。好ましい例はグリコールモノエーテルアセテート、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、1-メトキシ-2-プロピルアセテート)である。
【0095】
コーティング溶液を生成するために、さらに、市販の溶媒も一般に構成要素I~IIIからなる基礎溶液に加えて、適切な粘性を確立し;これらの市販の溶媒は、例えば、コーティング材料の技術ハンドブックに記載のとおりである。そのような溶媒の例は、置換代替物を含む、脂肪族アルコール、脂肪族エステル、アルコキシ基を含むアルコール、例えば1-メトキシ-2-プロパノール、ケトン、例えば、酢酸ブチルもしくはキシレンまたは他のこれらの混合物である。
【0096】
コーティング組成物50mlあたりに加える量は、5~200mlの間、好ましくは10~100mlの間、より好ましくは10~20mlの間である。
【0097】
本発明のコーティング組成物は、複数の段階で都合よく製造する。
【0098】
まず最初に、部分加水分解物(出発構成要素A1および任意でA2)を調製する。部分加水分解を酸性もしくは塩基性触媒作用下または中性媒質中で実施してもよい。酸性触媒作用が好ましく、この場合、1つまたは複数の酸、例えば塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、または酢酸などの有機酸を使用する。1つの好ましい態様において、部分加水分解は少なくとも部分的にはリン酸により実施する。
【0099】
1つの好ましい態様において、部分加水分解物は、アルコキシシラン(Iaおよび任意でIb)を水と7.5:1~1:1.5のモル比で、好ましくは5:1~1:1の比で、より好ましくは1:1の比で混合し、それらを好ましくは室温で激しく撹拌することによって調製する。8~16時間の間、より好ましくは12時間が好都合と判明した。
【0100】
出発構成要素A1および任意でA2と構成要素B1および任意でB2との反応による基礎溶液の調製は、一般には好ましくは-10℃~0℃の間の温度で混合することにより行い、0℃の氷浴が特に好ましい。
【0101】
混合は好ましくは、構成要素B1および任意でB2の金属アルコキシド溶液を撹拌しながらまずアルコキシシラン(A1および任意でA2)の加水分解物に、0.1:1~1:1、好ましくは0.2:1~0.7:1、特に0.3:1~0.6:1のモル比で加えることによって達成される。
【0102】
撹拌時間と、したがって均質混合の持続時間は一般には1~3時間の間、好ましくは1~2時間の間、より好ましくは90分間である。
【0103】
反応を完了するために、反応溶液50mlあたり3~100ml、好ましくは3~50、より好ましくは4~4.5mlの間の蒸留水を滴加し、さらに1~5、好ましくは2時間撹拌する(基礎溶液)。
【0104】
構成要素A1および任意でA2の構成要素B1および任意でB2との得られた混合物に、構成要素Cとして加えるのは、オリゴマーポリオールまたはポリマーポリオール、例えばポリビニルアルコールまたはポリエステルアルコールである。アルコキシシラン(Iaおよび任意でIb)とポリオールのモル比は一般には2:1~1:2である。
【0105】
コーティング組成物は、構成要素Dとしてブロックされ任意で修飾されたイソシアネートを含む。構成要素Dは典型的には撹拌しながら構成要素A、BおよびCの溶液に加える。
【0106】
ここで、ポリオール中の遊離ヒドロキシル基とNCO基の比は一般には5:1~1:1、好ましくは2.5:1~1:1、特に1.2:1~1:1である。
【0107】
任意で、前述の混合物について、構成要素Eとして、少なくとも2つの遊離エポキシ基を有する1つまたは複数のモノマー、オリゴマー、および/またはポリマーと混合することができる。
【0108】
反応は、典型的には1~3時間の間の、その後の撹拌によって完了する。
【0109】
コーティング溶液を生成するために、市販の溶媒も一般に基礎溶液に希釈剤として加えて、適切な粘性を確立し;これらの市販の溶媒は、例えば、コーティング材料の技術ハンドブックに記載のとおりである。そのような溶媒の例は、置換代替物を含む、脂肪族アルコール、脂肪族エステル、アルコキシ基を含むアルコール、例えば1-メトキシ-2-プロパノール、ケトン、例えば、酢酸ブチルもしくはキシレンまたは他のこれらの混合物である。
【0110】
コーティング組成物50mlあたりに加える量は、5~200mlの間、好ましくは10~100mlの間、より好ましくは10~20mlの間である。
【0111】
基礎溶液をさらに、任意で補助剤IIIと混合し、その例はレオロジーを適合させるための市販の添加剤、特に湿潤助剤および流動制御助剤である。
【0112】
さらに、様々な色効果を達成するために基礎溶液を任意で着色剤IIと混合し、その例は顔料(有機および無機、着色無機イオンまたは着色錯体、効果顔料)または可溶性染料である。
【0113】
コーティングされた基体を製造するための本発明の方法は、
a)本発明のコーティング組成物を基体に湿式化学的に適用する段階、および
b)コーティング組成物を熱硬化させる段階
を含む。
【0114】
コーティング組成物の湿式化学的適用(段階a)は、当業者には公知の通常の湿式化学的コーティング技術、例えば、噴霧、静電噴霧、浸漬、鋳込み、回転塗布、ロール塗布、塗り、ナイフコーティングまたはカーテンコーティングを介して行ってもよい。例えば、スクリーン印刷などの印刷法も使用することができる。例えば、光輝陽極酸化トリムストリップへの噴霧による塗布が好ましい。
【0115】
基体に適用したコーティング組成物は、通常は80~240℃、好ましくは120~230℃、より好ましくは150~220℃、非常に好ましくは180~210℃、特に170~190℃の温度で硬化させる(段階b))。硬化が最初の乾燥段階を含む場合、この段階は一般には80~120℃の温度で行い、続いて一般には160~240℃の温度でさらに硬化させる。
【0116】
硬化は任意の所望の様式の熱供給(周囲温度、赤外線照射、マイクロ波照射)によって達成してもよい。例えば、乾燥機内での通常の熱供給の場合、硬化時間は2~120分、より好ましくは5~15分、特に12分(180~210℃の温度で)である。
【0117】
マイクロ波硬化は、標準の市販の装置で行い、硬化時間は一般に5~20分の間、より好ましくは5~15分の間である。
【0118】
陽極酸化表面の場合、約160℃までの温度および約1時間の硬化時間を一般に用いる。熱硬化は、任意でIRまたはNIR照射によって行ってもよい。
【0119】
本発明の方法によって得たフィルム厚は一般には3~15μmの範囲内である。
【0120】
基体
本発明のコーティング組成物および本発明の方法は、表面および基体上の装飾および保護コーティングの製造に役立ち、基体なる用語は、本発明に従い、表面を含む。好ましくは金属、ガラス、およびプラスチックの基体である。特に好ましい基体材料は、アルミニウムおよびその合金、陽極酸化アルミニウム、炭素鋼、鋼およびその合金、ステンレス鋼、銅合金、黄銅合金および青銅を含む。さらなる態様において、基体はガラスまたはプラスチック製であってもよい。
【0121】
好ましい基体には軽金属基体がある。本発明の意味における軽金属は、5g/cm3未満の密度を有する金属および合金である。Al、MgおよびTiならびにそれらの合金が好ましく;Alおよびその合金、特に元素Mn、Mg、Cu、Si、Ni、ZnおよびBeとのものが特に好ましい。アルミニウム合金の名称はEN 573-3/4に従う。
【0122】
別の好ましい態様において、基体は非陽極酸化アルミニウム基体である。
【0123】
別の態様において、基体は陽極酸化アルミニウム基体である。
【0124】
本発明のコーティング組成物でコーティングした基体は、プレート、シート、チューブ、ロッドまたはワイアなどの半製品、構造的構成要素または完成品であってもよい。これは、例えば、施設、道具、アイロンなどの家庭用器具、電気部品、スイッチ、機械、乗物および航空機部品、特に自動車部品、スーツケースなどの手荷物品、住宅、製造施設、建築表面、熱交換器またはその部品のために使用してもよい。
【0125】
コーティングは、金属基体に特に適しており、その例は一般には電子機器の金属筐体、光学機器の構成要素、内部および外部両方の乗物の部品、機械工学および施設建設における構成要素、エンジン、医用器具の構成要素、家庭用器具の構成要素、他の電気器具およびタービン、家電器具、建築表面構成要素、リフトの構成要素、搬送設置の部品、家具の部品、ハンドル、特に乗物および航空機のシート部品、園芸器具、農業機械、取付部品、エンジン構成要素および製造設備などのアルミニウム基体である。加えて、それらは、例えばファッションジュエリーのための装飾分野において適用され得る。
【0126】
本発明は、以下の実施例によってさらに明らかになり、それらはいかなる限定効果も有することはない。
【実施例】
【0127】
実施例1
ベースコート:
244mmolの3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランを6.60gの1Mリン酸と共に撹拌し、10℃まで冷却した。その後、50mmolのオルトチタン酸ブチル(チタンテトラ-n-ブトキシド)を加え、その後撹拌し、さらに10℃まで冷却した。220mmolの水を滴加した後、さらに撹拌した。
【0128】
続いて、500mmolのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、191mmolのヒドロキシル基含有分枝ポリエステル(Desmophen D651 MPA/X)および51mmolのイソホロンジイソシアネート系のブロックされた脂肪族ポリイソシアネート(Desmodur PL340 BA/SN)を加えた後、撹拌した。
【0129】
銀色塗料の製造:
244mmolの3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランを6.60gの1Mリン酸と共に撹拌し、10℃まで冷却した。その後、50mmolのオルトチタン酸ブチルを加え、その後撹拌し、さらに10℃まで冷却した。220mmolの水を滴加した後、さらに撹拌した。
【0130】
続いて、500mmolのPGMEA、191mmolのヒドロキシル基含有分枝ポリエステル(Desmophen D651 MPA/X)および51mmolのイソホロンジイソシアネート系のブロックされた脂肪族ポリイソシアネート(Desmodur PL340 BA/SN)を加えた後、撹拌した。この後、100.0gのPGMEA、5.0gの表面添加剤およびレオロジー添加剤(Tego Dispers 6700およびGlide 100)、8.3gのアルミニウム顔料ペースト(Hydrolan STAPA S2100)、20.8gの真珠層顔料(Magnapearl 3100)ならびに8.0gの黄色および白色顔料ペーストを加えた後、撹拌した。
【0131】
実施例1からのコーティング組成物を、予備洗浄した非陽極酸化アルミニウム構成要素に、ロボットによる噴霧コーティングで適用した。フィルム厚は12μmで立証した。コーティングを予備乾燥なしで、通風乾燥機内、160℃の温度で60分間硬化した。得られた銀色フィルムは所望の条件に合致している。
【0132】
実施例2
ベースコートの製造:
132mmolの3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランに101mmolのメチルトリメトキシシラン、31mmolのテトラエトキシシラン、39mmolのフェニルトリエトキシシランおよび13mmolのヘキシルトリメトキシシランを導入し、5.79gの1Mリン酸を加え、混合物を撹拌し、10℃まで冷却した。
【0133】
その後、63mmolのオルトチタン酸ブチルを加え、続いてさらに撹拌し、さらに10℃まで冷却した。463mmolの水をこの混合物に滴加し、さらに撹拌した。続いて、624mmolのPGMEA、104mmolのヒドロキシル基含有分枝ポリエステル(Desmophen D651 MPA/X)、28mmolのイソホロンジイソシアネート系のブロックされた脂肪族ポリイソシアネート(Desmodur PL340 BA/SN)、18mmolの4,4'-イソプロピリデンジフェノールジグリシジルエーテル、10mmolの3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランおよび5mmolの3-アミノプロピルトリエトキシシランを加え、その後混合物を撹拌した。
【0134】
青銅色塗料の製造:
132mmolの3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランに101mmolのメチルトリメトキシシラン、31mmolのテトラエトキシシラン、39mmolのフェニルトリエトキシシランおよび13mmolのヘキシルトリメトキシシランを導入し、5.79gの1Mリン酸を加え、混合物を撹拌し、10℃まで冷却した。
【0135】
その後、63mmolのオルトチタン酸ブチルを加え、続いてさらに撹拌し、さらに10℃まで冷却した。463mmolの水をこの混合物に滴加し、さらに撹拌した。続いて、624mmolのPGMEA、104mmolのヒドロキシル基含有分枝ポリエステル(Desmophen D651 MPA/X)、28mmolのイソホロンジイソシアネート系のブロックされた脂肪族ポリイソシアネート(Desmodur PL340 BA/SN)、18mmolの4,4'-イソプロピリデンジフェノールジグリシジルエーテル、10mmolの3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランおよび5mmolの3-アミノプロピルトリエトキシシランを加え、その後混合物を撹拌した。
【0136】
続いて、38.0gのPGMEA、5.5gの表面添加剤およびレオロジー添加剤(Tego Dispers 6700およびGlide 100)、22.63gの雲母効果顔料(Royal Gold 323)、1.13gのカーボンブラック顔料(200 PWD)を加え、混合物を続いて撹拌した。
【0137】
実施例3
103mmolの3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランに79mmolのメチルトリメトキシシラン、24mmolのテトラエトキシシラン、31mmolのフェニルトリエトキシシランおよび11mmolのヘキシルトリメトキシシランを導入し、4.53gの1Mリン酸を加え、続いて混合物を撹拌し、10℃まで冷却した。
【0138】
その後、49mmolのオルトチタン酸ブチルを加え、続いて撹拌し、さらに10℃まで冷却した。363mmolの水をこの混合物に滴加し、続いて撹拌した。続いて、470mlのアセトン、282mmolのイソプロピリデングリセロール、54.2gのヒドロキシル基含有分枝ポリエステル(Plusodur V730S)、66mmolのイソホロンジイソシアネート系のブロックされた脂肪族ポリイソシアネート(Desmodur PL340 BA/SN)、14mmolの4,4'-イソプロピリデンジフェノールジグリシジルエーテル、8mmolの3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランおよび4mmolの3-アミノプロピルトリエトキシシランを加え、続いて混合物を撹拌した。
【0139】
高光沢黒色塗料の製造:
103mmolの3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランに79mmolのメチルトリメトキシシラン、24mmolのテトラエトキシシラン、31mmolのフェニルトリエトキシシランおよび11mmolのヘキシルトリメトキシシランを導入し、4.53gの1Mリン酸を加え、続いて混合物を撹拌し、10℃まで冷却した。
【0140】
その後、49mmolのオルトチタン酸ブチルを加え、続いて撹拌し、さらに10℃まで冷却した。363mmolの水をこの混合物に滴加し、続いて撹拌した。
【0141】
続いて、470mlのアセトン、282mmolのイソプロピリデングリセロール、54.2gのヒドロキシル基含有分枝ポリエステル(Plusodur V730S)、66mmolのイソホロンジイソシアネート系のブロックされた脂肪族ポリイソシアネート(Desmodur PL340 BA/SN)、14mmolの4,4'-イソプロピリデンジフェノールジグリシジルエーテル、8mmolの3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランおよび4mmolの3-アミノプロピルトリエトキシシランを加え、続いて混合物を撹拌した。
【0142】
続いて、50.0gのアセトン、69.0gのイソプロピリデングリセロール、4.0gの表面添加剤およびレオロジー添加剤(Tego Dispers 6700およびGlide 100)、ならびに30.0gのカーボンブラック顔料ペーストを加え、混合物を続いて撹拌した。
【0143】
実施例4
173mmolの3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランに133mmolのメチルトリメトキシシラン、40mmolのテトラエトキシシラン、51mmolのフェニルトリエトキシシランおよび18mmolのヘキシルトリメトキシシランを導入した。これに7.59gの1Mリン酸を加え、続いて撹拌し、10℃まで冷却した。その後、82mmolのオルトチタン酸ブチルを加え、続いて撹拌し、さらに10℃まで冷却した。606mmolの水をこの混合物に滴加し、さらに撹拌した。
【0144】
続いて、434mmolのPGMEA、19.33gの3官能性ポリプロピレンエーテルポリオール(Desmophen D1380BT)、28mmolのイソホロンジイソシアネート系のブロックされた脂肪族ポリイソシアネート(Desmodur PL340 BA/SN)、24mmolの4,4'-イソプロピリデンジフェノールジグリシジルエーテル、14mmolの3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランおよび7mmolの3-アミノプロピルトリエトキシシランを加え、その後撹拌した。