(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】ガスタービン翼
(51)【国際特許分類】
F01D 5/18 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
F01D5/18
(21)【出願番号】P 2022557305
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2021034568
(87)【国際公開番号】W WO2022080094
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2020174743
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼村 啓太
(72)【発明者】
【氏名】羽田 哲
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-144704(JP,A)
【文献】特開平02-011801(JP,A)
【文献】特開2016-011616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に冷却通路が形成されたプラットフォーム部と、
該プラットフォーム部の上面から突出する翼本体部と、
を備え、
前記上面は、前記翼本体部の前縁と後縁とを結ぶ翼弦よりも前記翼本体部側に位置する弦内領域と、前記翼弦を基準として前記弦内領域の反対側に位置する弦外領域と、を有し、
前記
冷却通路は、前記上面に向かって延びる腹面側通路と、前記弦外領域に向かって延びる前縁側通路と、前記前縁側通路から前記翼弦に沿う方向に延びる分岐通路と、を含み、
前記弦内領域には、前記腹面側通路から供給された気体を噴出する複数の第一噴出口が形成され、
前記弦外領域には、前記前縁側通路及び前記分岐通路から供給された気体を噴出する複数の第二噴出口が形成され、
前記弦外領域は、前記前縁側に位置する弦外前縁領域、及び前記後縁側に位置する弦外後縁領域を有し、
前記複数の第二噴出口は、前記弦外後縁領域よりも前記弦外前縁領域に多く形成されているガスタービン翼。
【請求項2】
前記第二噴出口の数は、前記第一噴出口の数よりも少ない請求項1に記載のガスタービン翼。
【請求項3】
前記第二噴出口の位置は、前記弦外前縁領域のうち、前記翼弦に沿う方向における前記前縁を基準として前記翼弦の長さの25%以下の範囲内とされている請求項1又は2に記載のガスタービン翼。
【請求項4】
前記複数の第二噴出口のうち、前記弦外前縁領域に形成されている前記第二噴出口は、前記弦外後縁領域に向かって前記気体を噴出するように構成されている請求項1から3のいずれか一項に記載のガスタービン翼。
【請求項5】
前記複数の第一噴出口は、前記弦外後縁領域に向かって前記気体を噴出するように構成されている請求項1から4のいずれか一項に記載のガスタービン翼。
【請求項6】
前記第一噴出口に比べて、前記第二噴出口の方が前記翼弦に沿う方向に開口している請求項1から5のいずれか一項に記載のガスタービン翼。
【請求項7】
前記複数の第一噴出口は、前記翼本体部の正圧面の形状に沿って配列されている請求項1から6のいずれか一項に記載のガスタービン翼。
【請求項8】
前記
冷却通路は、前記プラットフォーム部の側端面に向かって延びる側面通路をさらに有し、
前記プラットフォーム部の前記側端面には、前記側面通路から供給された前記気体を噴出する複数の第三噴出口が形成され、
該複数の第三噴出口に連通する前記側面通路は、前記弦外前縁領域側よりも前記弦外後縁領域側に多く形成されている請求項1から7のいずれか一項に記載のガスタービン翼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービン翼に関する。
本願は、2020年10月16日に日本に出願された特願2020-174743号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン翼は、板状のプラットフォーム部と、このプラットフォーム部の上面から延びる翼本体部とを有している。プラットフォーム部の内部には冷却媒体としての圧縮空気が流通する冷却通路が形成されている。冷却通路の端部は、プラットフォーム部の上面や側端面、翼本体部の表面に開口している。
【0003】
このような冷却通路の具体例として、下記特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に係るガスタービン翼では、冷却通路の開口端部が、翼本体部の正圧面(腹面)側に一様に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、プラットフォーム上面のうち、翼本体部から離れたプラットフォームの一部領域(具体的には、翼本体部の前縁と後縁とを結んだ翼弦の外側の領域の一部)では、翼本体部付近の領域と比較して薄肉であることから、高温の燃焼ガスによる熱応力が生じやすい。このような領域に冷却通路の開口端部を多く形成することは、プラットフォームの疲労強度低下につながる虞がある。つまり、上記特許文献1に記載された技術には依然として改善の余地がある。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、さらに疲労強度が向上したガスタービン翼を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係るガスタービン翼は、内部に冷却通路が形成されたプラットフォーム部と、該プラットフォーム部の上面から突出する翼本体部と、を備え、前記上面は、前記翼本体部の前縁と後縁とを結ぶ翼弦よりも前記翼本体部側に位置する弦内領域と、前記翼弦を基準として前記弦内領域の反対側に位置する弦外領域と、を有し、前記冷却通路は、前記上面に向かって延びる腹面側通路と、前記弦外領域に向かって延びる前縁側通路と、前記前縁側通路から前記翼弦に沿う方向に延びる分岐通路と、を含み、前記弦内領域には、前記腹面側通路から供給された気体を噴出する複数の第一噴出口が形成され、前記弦外領域には、前記前縁側通路及び前記分岐通路から供給された気体を噴出する複数の第二噴出口が形成され、前記弦外領域は、前記前縁側に位置する弦外前縁領域、及び前記後縁側に位置する弦外後縁領域を有し、前記複数の第二噴出口は、前記弦外後縁領域よりも前記弦外前縁領域に多く形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、さらに疲労強度が向上したガスタービン翼を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係るガスタービンの構成を示す模式図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る動翼段の展開図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る動翼(ガスタービン翼)の構成を示す斜視図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る動翼の平面図である。
【
図6】本開示の実施形態に係るプラットフォーム部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(ガスタービンの構成)
以下、本開示の実施形態に係るガスタービン10、及びガスタービン翼(動翼50)について、
図1から
図6を参照して説明する。
本実施形態のガスタービン10は、空気を圧縮する圧縮機20と、圧縮機20で圧縮された空気中で燃料Fを燃焼させて燃焼ガスGを生成する燃焼器30と、燃焼ガスGにより駆動するタービン40と、を備えている。
【0011】
圧縮機20は、軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ21と、圧縮機ロータ21を回転可能に覆う圧縮機車室25と、複数の静翼段26と、を有する。タービン40は、軸線Arを中心として回転するタービンロータ41と、タービンロータ41を回転可能に覆うタービン車室45と、複数の静翼段46と、を有する。
【0012】
圧縮機ロータ21とタービンロータ41とは、同一の軸線Ar上に位置し、互いに接続されてガスタービンロータ11を形成している。このガスタービンロータ11には、例えば、発電機のロータが接続されている。また、圧縮機車室25とタービン車室45とは、中間車室16を挟んで互いに接続されてガスタービン車室15を形成している。燃焼器30は中間車室16に配置されている。なお、以下では、軸線Arが延びる方向を軸方向Da、この軸線Arを中心とした周方向を単に周方向Dcとし、軸線Arに対して垂直な方向を径方向Drとする。また、軸方向Daでタービン40を基準にして圧縮機20側を上流側とし、その反対側を下流側とする。
【0013】
圧縮機ロータ21は、軸線Arに沿って軸方向Daに延びるロータ軸22と、このロータ軸22に取り付けられている複数の動翼段23と、を有する。複数の動翼段23は、軸方向Daに並んでいる。各動翼段23は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼24で構成されている。複数の動翼段23の各下流側には、静翼段26が配置されている。各静翼段26は、圧縮機車室25の内側に設けられている。各静翼段26は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼27で構成されている。
【0014】
タービンロータ41は、軸線Arに沿って軸方向Daに延びるロータ軸42と、このロータ軸42に取り付けられている複数の動翼段43と、を有する。複数の動翼段43は、軸方向Daに並んでいる。各動翼段43は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼50で構成されている。複数の動翼段43の各上流側には、静翼段46が配置されている。各静翼段46は、タービン車室45の内側に設けられている。各静翼段46は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼47で構成されている。ロータ軸42の外周側とタービン車室45の内周側との間であって、軸方向Daで静翼47及び動翼50が配置されている領域の環状の空間は、燃焼器30からの燃焼ガスGが流れる燃焼ガス流路を形成している。
【0015】
(動翼の構成)
動翼50は、
図2及び
図3に示すように、径方向Drに延びる翼体51(翼本体)と、翼体51の径方向内側に形成されているプラットフォーム61(プラットフォーム部)と、プラットフォーム61の径方向内側に形成されているシャンク58と、シャンク58の径方向内側に設けられている翼根59と、を有している。プラットフォーム61よりも径方向外側、つまり翼体51が存在する領域は、燃焼器30からの燃焼ガスGが通過する燃焼ガス流路を形成する。
【0016】
翼体51は、軸方向上流側の端部が前縁52とされ、軸方向下流側の端部が後縁53とされている。この翼体51は、周方向Dcの一方側に向かって滑らかに凸状をなしている。この翼体51の表面で、周方向Dcを向く面のうち、凸状の面が背側面(=負圧面)55を成し、凹状の面が腹側面(=正圧面)54を成す。なお、以下の説明の都合上、周方向Dcで翼体51の腹側(=正圧面側)を周方向腹側、翼体51の背側(=負圧面側)を周方向背側とする。また、軸方向Daの上流側を前側、軸方向Daの下流側を後側ということもある。
【0017】
翼根59は、翼体51の翼弦に対して垂直な断面形状が径方向内側に向って拡幅部と縮幅部とが交互に繰り返されるクリスマスツリー形状を成している。前述のロータ軸42には、この翼根59が嵌まり込む翼根溝が形成されている。
【0018】
プラットフォーム61は、軸方向上流側の端面である前端面62と、軸方向下流側の端面である後端面63と、周方向腹側の端面である腹側端面64と、周方向背側の端面である背側端面65とが形成されている。プラットフォーム61は、径方向Drから見た場合、
図2に示すように、平行四辺形状を成している。周方向Dcで隣り合っている動翼50のプラットフォーム61は、一方のプラットフォーム61の腹側端面64と、他方のプラットフォーム61の背側端面65とが対向する。また、プラットフォーム61には、径方向外側の面であるガスパス面66(上面)と、径方向内側の面である内側面67とが形成されている。ガスパス面66は、燃焼ガス流路を画定する面の径方向内側の一部を成しており、高温の燃焼ガスに接する。
【0019】
(翼空気通路の構成)
動翼50には、
図4に示すように、径方向Drに延びる複数の翼空気通路71(冷却通路)が形成されている。一例として、本実施形態の動翼50には、7つの翼空気通路71が形成されている。なお、翼空気通路71の数として、7つの例を示しているが、本発明はこれに限定されない。各翼空気通路71は、いずれも、翼体51、プラットフォーム61、シャンク58、翼根59のうち、少なくとも翼体51からプラットフォーム61にかけて連なって形成されている。複数の翼空気通路71は、翼体51の翼弦に沿って並んでいる。隣接する翼空気通路71の一部は、翼体51内の径方向外側の部分、又はプラットフォーム61の径方向内側の部分で互いに連通している。また、複数の翼空気通路71のうち、いずれかは、翼体51、プラットフォーム61、シャンク58、翼根59にかけて連なって形成されて、翼根59の径方向内側の端で開口している。この翼空気通路71には、圧縮機20で生成された圧縮空気が冷却媒体として流入する。
【0020】
翼体51には、複数の翼空気通路71のうち、最も上流側の第一翼空気通路71aから上流側に延びて、翼体51の前縁52で開口する翼前端通路56が形成されている。第一翼空気通路71aに流入した冷却空気の一部は、翼体51の複数の翼前端通路56から燃焼ガス流路に流れ出る。また、当該冷却空気の他の一部は、翼空気通路71のうち、最下流側の第七翼空気通路71bから燃焼ガス流路に流れ出る。翼体51の前縁52及び後縁53は、これらの冷却空気により冷却される。
【0021】
(腹面側通路、第一噴出口の構成)
図5に示すように、プラットフォーム61には、翼空気通路71からガスパス面66に向かって延びる複数の腹面側通路75が形成されている。これら腹面側通路75は、冷却通路の一部を形成している。腹面側通路75は、翼体51の周方向腹側に向かって互いに平行となるように延びている。なお、ここで言う平行とは実質的な平行を指すものであり、設計上の公差や製造上の誤差は許容される。各腹面側通路75の一端は、ガスパス面66上に開口する第一噴出口75aである。これら第一噴出口75aは、翼体51の腹面の形状に沿うように曲線状に配列されている。本実施形態では一例として7つの第一噴出口75aが形成されている。なお、第一噴出口75aの数は設計や仕様に応じて適宜変更することが可能である。
【0022】
ここで、ガスパス面66のうち、翼体51の前縁52と後縁53を結ぶ線(翼弦Ch)を基準として、当該翼弦Chよりも翼体51側の領域を弦内領域Aとする。さらに、ガスパス面66のうち、翼弦Chを基準として弦内領域Aの反対側に位置する領域を弦外領域Bとする。このとき、上述の第一噴出口75aは、いずれも弦内領域A内に位置している。つまり、全ての第一噴出口75aは、翼弦Chよりも翼体51側に配置されている。
【0023】
さらに、弦外領域Bは、翼弦Chに直交する分割線Dによって、当該分割線Dよりも前縁52側に位置する弦外前縁領域B1と、後縁53側に位置する弦外後縁領域B2とに区画されている。分割線Dの位置は、翼弦Chの長さを100%とした場合に、前縁52から50%以下の範囲内で適宜設定される。上述の第一噴出口75aは、弦内領域Aから弦外後縁領域B2に向かって気体を噴出するようにその開口方向が定められている。
【0024】
(前縁側通路、分岐通路、第二噴出口の構成)
翼空気通路71のうち、最も前縁52側に位置する第一翼空気通路71aには、前縁側通路76が接続されている。前縁側通路76は、第一翼空気通路71aから上述の弦外前縁領域B1に向かって延びている。さらに、この前縁側通路76の中途には、複数(一例として3つ)の分岐通路77が接続されている。これら前縁側通路76、及び分岐通路77は冷却通路の一部である。
【0025】
各分岐通路77は、前縁側通路76から翼弦Chに沿う方向に延びている。分岐通路77の一端は、弦外前縁領域B1上で開口する第二噴出口77aである。一例としてこれら第二噴出口77aの翼弦Ch方向における位置は互いに同一であり、翼弦Chにおいて、前縁52から翼弦Chの長さの25%以下の範囲内とされている。各第二噴出口77aは、弦外後縁領域B2に向かって気体を噴出するようにその開口方向が定められている。言い換えれば、第一噴出口75aに比べて、第二噴出口77aの方が翼弦Chに沿う方向に開口している。
【0026】
なお、第二噴出口77aが弦外後縁領域B2にも形成されている構成を採ることが可能である。ただし、この場合、弦外前縁領域B1に形成される第二噴出口77aの数が、弦外後縁領域B2に形成される第二噴出口77aの数よりも多くなるように構成される。つまり、第二噴出口77aは、弦外前縁領域B1側に局在化して配置されることが望ましい。また、第二噴出口77aの数は、第一噴出口75aの数よりも少ない。
【0027】
(側面通路、第三噴出口の構成)
図6に示すように、プラットフォーム61の内部には、一部の翼空気通路71から延びる複数の側面通路72が形成されている。より具体的には、側面通路72は、前縁52側に位置する翼空気通路71の一部と、後縁53側に位置する翼空気通路71に形成されている。また、側面通路72は、弦外前縁領域B1側よりも弦外後縁領域B2側に多く形成されている。なお、弦外後縁領域B2のみに側面通路72を形成することも可能である。本実施形態では、一例として1つの翼空気通路71に2つずつの側面通路72が接続されている。側面通路72は、翼空気通路71から腹側端面64に向かって延びている。各側面通路72の端部は第三噴出口72aである。
【0028】
(作用効果)
ここで、ガスパス面66のうち、翼体51から離れたプラットフォーム61の一部領域(具体的には、翼本体部の前縁と後縁とを結んだ翼弦の外側の一部)では、翼体51に近い領域と比較して薄肉であることから、高温の燃焼ガスによる熱応力が生じやすい。このような領域に冷却通路の開口端部を多く形成することは、プラットフォーム61の疲労強度低下につながる虞がある。
【0029】
なお、隣接するプラットフォーム61の背側端面65と接する腹側端面64付近において、プラットフォーム61間のシール性能を高めるため、端面付近を部分的に厚肉とする場合もあるが、翼弦Chの外側領域の一部は翼体51付近の領域と比較して薄肉であるため、冷却通路の開口端部を弦外領域に多く形成すると、プラットフォーム61の疲労強度低下につながってしまう。
【0030】
本実施形態では、翼体51に近い領域に第一噴出口75aを形成することで、強度に与える影響を最小限に抑えることができる。さらに、弦外領域Bのうち、弦外後縁領域B2よりも弦外前縁領域B1の方が、第二噴出口77aの数が多い。言い換えると、弦外領域Bでは、弦内領域Aの第一噴出口75aに比べて、第二噴出口77aが前縁52側に局在化して配置されている。これにより、例えば弦外領域Bにまんべんなく第二噴出口77aを形成した場合に比べて、構造強度に与える影響を最小限に抑えることが可能となる。
【0031】
さらに、上記構成によれば、弦外領域Bの第二噴出口77aの数は、弦内領域Aの第一噴出口75aの数よりも少ない。弦外領域Bは翼体51に近い領域よりも薄肉であることから、第二噴出口77aの数を少なくすることによって、構造強度に与える影響をさらに小さく抑えることができる。
【0032】
加えて、上記構成によれば、弦外前縁領域B1に形成されている第二噴出口77aは、弦外後縁領域B2に向かって気体を噴出する。これにより、第二噴出口77aの数が少ない弦外後縁領域B2の表面を効率的に冷却することができる。
【0033】
また、上記構成によれば、第一噴出口75aは、弦外後縁領域B2に向かって気体を噴出する。これにより、第二噴出口77aの数が少ない弦外後縁領域B2の表面を効率的に冷却することができる。
【0034】
さらに、上記構成によれば、第一噴出口75aに比べて、第二噴出口77aの方が翼弦Chに沿う方向に開口している。そのため、第二噴出口77aから供給される気体によって、弦外後縁領域B2に対するフィルム冷却を積極的に行うことができる。
【0035】
さらに加えて、上記構成によれば、複数の第一噴出口75aが翼本体部の腹側面54の形状に沿って配列されている。つまり、これら第一噴出口75aは、プラットフォーム61と翼体51とが接する部分の形状に沿って配列されている。このような部分は翼弦に近い領域と比べて強度が高いことから、第一噴出口75aを形成したことによる強度への影響をさらに小さく抑えることができる。
【0036】
また、上記構成によれば、第三噴出口72aに連通する側面通路72は、弦外前縁領域B1側よりも弦外後縁領域B2側に多く形成されている。このため、第二噴出口77aの数が少なく冷却効果の及びにくい弦外後縁領域B2に対して、内部を通る側面通路72による対流冷却効果を与えることができる。その結果、弦外後縁領域B2をさらに効率的に冷却することが可能となる。
【0037】
以上、本開示の実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記実施形態で説明した翼空気通路71の数や形状は一例であり、設計や仕様に応じて適宜変更することが可能である。また、翼空気通路71に連通する他の冷却通路を形成することも可能である。
【0038】
[付記]
各実施形態に記載のガスタービン翼(動翼50)は、例えば以下のように把握される。
【0039】
(1)第1の態様に係るガスタービン翼(動翼50)は、内部に冷却通路(翼空気通路71)が形成されたプラットフォーム部(プラットフォーム61)と、該プラットフォーム部の上面(ガスパス面66)から突出する翼本体部(翼体51)と、を備え、前記上面のうち、前記翼本体部の前縁52と後縁53とを結ぶ翼弦Chよりも前記翼本体部側に位置する弦内領域Aには、前記冷却通路から供給された気体を噴出する複数の第一噴出口75aが形成され、前記上面のうち、前記翼弦Chを基準として前記弦内領域Aの反対側に位置する弦外領域Bには、前記冷却通路から供給された気体を噴出する複数の第二噴出口77aが形成され、前記弦外領域Bは、前記前縁52側に位置する弦外前縁領域B1、及び前記後縁53側に位置する弦外後縁領域B2を有し、前記複数の第二噴出口77aは、前記弦外後縁領域B2よりも前記弦外前縁領域B1に多く形成されている。
【0040】
ここで、翼弦Chよりも翼本体側に位置する弦内領域Aは、弦外領域Bよりも厚肉であることから相対的に強度が高く、熱応力による影響が小さい。第一噴出口75aをこのような領域に形成することで、強度に与える影響を最小限に抑えることができる。さらに、弦外領域Bのうち、弦外後縁領域B2よりも弦外前縁領域B1の方が、第二噴出口77aの数が多い。言い換えると、弦外領域Bでは、弦内領域Aの第一噴出口75aに比べて、第二噴出口77aが前縁52側に局在化して配置されている。これにより、例えば弦外領域Bにまんべんなく第二噴出口77aを形成した場合に比べて、構造強度に与える影響を最小限に抑えることが可能となる。
【0041】
(2)第2の態様に係るガスタービン翼では、前記第二噴出口77aの数は、前記第一噴出口75aの数よりも少なくてもよい。
【0042】
上記構成によれば、弦外領域Bの第二噴出口77aの数は、弦内領域Aの第一噴出口75aの数よりも少ない。弦外領域Bは翼体51に近い領域よりも薄肉であることから、第二噴出口77aの数を少なくすることによって、構造強度に与える影響をさらに小さく抑えることができる。
【0043】
(3)第3の態様に係るガスタービン翼では、前記第二噴出口77aの位置は、前記弦外前縁領域B1のうち、前記翼弦Chに沿う方向における前記前縁52を基準として前記翼弦Chの長さの25%以下の範囲内とされていてもよい。
【0044】
上記構成によれば、第二噴出口77aの位置は、弦外前縁領域B1のうち、翼弦Chの方向について、前縁52を基準として翼弦の長さの25%以下の範囲内に設けられる。これにより、構造強度に与える影響をさらに小さく抑えることができる。
【0045】
(4)第4の態様に係るガスタービン翼では、前記複数の第二噴出口77aのうち、前記弦外前縁領域B1に形成されている前記第二噴出口77aは、前記弦外後縁領域B2に向かって前記気体を噴出するように構成されていてもよい。
【0046】
上記構成によれば、弦外前縁領域B1に形成されている第二噴出口77aは、弦外後縁領域B2に向かって気体を噴出する。これにより、第二噴出口77aの数が少ない弦外後縁領域B2の表面を効率的に冷却することができる。
【0047】
(5)第5の態様に係るガスタービン翼では、前記複数の第一噴出口75aは、前記弦外後縁領域B2に向かって前記気体を噴出するように構成されていてもよい。
【0048】
上記構成によれば、第一噴出口75aは、弦外後縁領域B2に向かって気体を噴出する。これにより、第二噴出口77aの数が少ない弦外後縁領域B2の表面を効率的に冷却することができる。
【0049】
(6)第6の態様に係るガスタービン翼では、前記第一噴出口75aに比べて、前記第二噴出口77aの方が前記翼弦Chに沿う方向に開口していてもよい。
【0050】
上記構成によれば、第一噴出口75aに比べて、第二噴出口77aの方が翼弦Chに沿う方向に開口している。そのため、第二噴出口77aから供給される気体によって、弦外後縁領域B2に対するフィルム冷却を積極的に行うことができる。
【0051】
(7)第7の態様に係るガスタービン翼では、前記複数の第一噴出口75aは、前記翼本体部の正圧面(腹側面54)の形状に沿って配列されていてもよい。
【0052】
上記構成によれば、複数の第一噴出口75aが翼本体部の正圧面の形状に沿って配列されている。つまり、これら第一噴出口75aは、プラットフォーム部と翼本体部とが接する部分の形状に沿って配列されている。このような部分では強度が高いことから、第一噴出口75aを形成したことによる強度への影響をさらに小さく抑えることができる。
【0053】
(8)第8の態様に係るガスタービン翼では、前記プラットフォーム部の側端面(腹側端面64)には、前記冷却通路から供給された前記気体を噴出する複数の第三噴出口72aが形成され、該複数の第三噴出口72aに連通する前記冷却通路(側面通路72)は、前記弦外前縁領域B1側よりも前記弦外後縁領域B2側に多く形成されていてもよい。
【0054】
上記構成によれば、第三噴出口72aに連通する冷却通路は、弦外前縁領域B1側よりも弦外後縁領域B2側に多く形成されている。このため、第二噴出口77aの数が少なく冷却効果の及びにくい弦外後縁領域B2に対して、内部を通る冷却通路(側面通路72)による対流冷却効果を与えることができる。その結果、弦外後縁領域B2をさらに効率的に冷却することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本開示によれば、さらに疲労強度が向上したガスタービン翼を提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
10:ガスタービン
11:ガスタービンロータ
15:ガスタービン車室
16:中間車室
20:圧縮機
21:圧縮機ロータ
23:動翼段
24:動翼
25:圧縮機車室
26:静翼段
27:静翼
30:燃焼器
40:タービン
41:タービンロータ
42:ロータ軸
43:動翼段
45:タービン車室
46:静翼段
47:静翼
50:動翼
51:翼体
52:前縁
53:後縁
54:腹側面
55:背側面
58:シャンク
59:翼根
61:プラットフォーム
62:前端面
63:後端面
64:腹側端面
65:背側端面
66:ガスパス面
67:内側面
71:翼空気通路
71a:第一翼空気通路
71b:第七翼空気通路
72:側面通路
72a:第三噴出口
75:腹面側通路
75a:第一噴出口
76:前縁側通路
77:分岐通路
77a:第二噴出口
A:弦内領域
B:弦外領域
B1:弦外前縁領域
B2:弦外後縁領域
Ch:翼弦
D:分割線