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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】シール装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/44 20060101AFI20240823BHJP
   F16J 15/447 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
F16J15/44 Z
F16J15/447
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022565079
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2021033766
(87)【国際公開番号】W WO2022113483
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2020195479
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】武居 則久
(72)【発明者】
【氏名】上原 秀和
(72)【発明者】
【氏名】堀 匠
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 昂平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亜積
(72)【発明者】
【氏名】河野 将弥
(72)【発明者】
【氏名】西本 慎
(72)【発明者】
【氏名】古庄 達郎
(72)【発明者】
【氏名】奥村 晋太朗
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特表平07-504485(JP,A)
【文献】実開平04-093573(JP,U)
【文献】米国特許第06318728(US,B1)
【文献】特開2013-148152(JP,A)
【文献】特開2002-349209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 1/00-11/24
F02C 1/00-9/58
F16J 15/34-15/38
F23R 3/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転可能なロータの外周面に対向した状態で径方向に変位可能に配置された可動シールリングと、
前記可動シールリングの周方向における各端面に設けられた第一弾性部材と、
前記可動シールリングの周方向における中間位置に設けられ、該可動シールリングを径方向外側に付勢する第二弾性部材と、
を備え
前記可動シールリングの周方向における端部に設けられ、前記第一弾性部材を押圧可能な押圧部と、
前記押圧部によって前記第一弾性部材が圧縮方向に弾性変形した状態で、前記押圧部の前記圧縮方向とは反対側への変位を規制する規制部と、
をさらに備えるシール装置。
【請求項2】
前記可動シールリングの周方向における前記端面は、前記軸線方向から見て径方向に広がっており、
前記第一弾性部材は、前記可動シールリングを周方向両側から付勢している請求項1に記載のシール装置。
【請求項3】
前記可動シールリングと周方向に隣接して設けられた固定シールリングをさらに備え、
前記固定シールリングの周方向における端面には、前記可動シールリング側に向かって突出する突出部が形成され、
前記可動シールリングの周方向における端面には、前記突出部に摺動する摺動面が形成されている請求項1又は2に記載のシール装置。
【請求項4】
前記摺動面に設けられ、該摺動面と前記突出部との間の摩擦力を低減する低摩擦部をさらに有する請求項に記載のシール装置。
【請求項5】
軸線回りに回転可能なロータの外周面に対向した状態で径方向に変位可能に配置された可動シールリングと、
前記可動シールリングの周方向における各端面に設けられた第一弾性部材と、
前記可動シールリングの周方向における中間位置に設けられ、該可動シールリングを径方向外側に付勢する第二弾性部材と、
を備え、
前記可動シールリングと周方向に隣接して設けられた固定シールリングをさらに備え、
前記固定シールリングの周方向における端面には、前記可動シールリング側に向かって突出する突出部が形成され、
前記可動シールリングの周方向における端面には、前記突出部に摺動する摺動面が形成され、
前記摺動面に設けられ、該摺動面と前記突出部との間の摩擦力を低減する低摩擦部をさらに有するシール装置。
【請求項6】
軸線回りに回転可能なロータの外周面に対向した状態で径方向に変位可能に配置された可動シールリングと、
前記可動シールリングの周方向における各端面に設けられた第一弾性部材と、
前記可動シールリングの周方向における端部に設けられ、前記第一弾性部材を押圧可能な押圧部と、
前記押圧部によって前記第一弾性部材が圧縮方向に弾性変形した状態で、前記押圧部の前記圧縮方向とは反対側への変位を規制する規制部と、
を備えるシール装置。
【請求項7】
軸線回りに回転可能なロータの外周面に対向した状態で径方向に変位可能に配置された可動シールリングと、
前記可動シールリングの周方向における各端面に設けられた第一弾性部材と、
前記可動シールリングと周方向に隣接して設けられた固定シールリングと、
を備え、
前記固定シールリングの周方向における端面には、前記可動シールリング側に向かって突出する突出部が形成され、
前記可動シールリングの周方向における端面には、前記突出部に摺動する摺動面が形成されているシール装置。
【請求項8】
前記摺動面に設けられ、該摺動面と前記突出部との間の摩擦力を低減する低摩擦部をさらに有する請求項に記載のシール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シール装置に関する。
本願は、2020年11月25日に日本に出願された特願2020-195479号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
例えば蒸気タービンのような回転機械では、ロータの外周面とケーシングとの間の蒸気の漏れを防ぐためにシール装置が設けられている(下記特許文献1参照)。この種のシール装置は、ロータの外周面に対向するシールリングと、このシールリングを径方向に変位可能に支持するホルダーと、ホルダーとシールリングとの間に設けられた弾性部材と、を主に備えている。シールリングは、ロータの外周形状に合わせて半円弧状の断面を有していることが一般的である。蒸気タービンの運転中には、シールリングの内周側を流れる蒸気の圧力と、シールリングの外周側に供給される圧縮空気の圧力(背圧)とがバランスすることでシールリングの径方向位置が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2009/150905号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなシール装置では、シールリングが自重と背圧とによって撓む場合がある。より具体的には、半円弧状をなすシールリングが外側に広がるように変形する場合がある。このような変形が生じると、シールリングの径方向の変位量が制限され、所期のシール性能を発揮できない虞がある。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、撓みが抑制されることでシール性能がさらに向上したシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係るシール装置は、軸線回りに回転可能なロータの外周面に対向した状態で径方向に変位可能に配置された可動シールリングと、前記可動シールリングの周方向における各端面に設けられた第一弾性部材と、前記可動シールリングの周方向における中間位置に設けられ、該可動シールリングを径方向外側に付勢する第二弾性部材と、を備え、前記可動シールリングの周方向における端部に設けられ、前記第一弾性部材を押圧可能な押圧部と、前記押圧部によって前記第一弾性部材が圧縮方向に弾性変形した状態で、前記押圧部の前記圧縮方向とは反対側への変位を規制する規制部と、をさらに備える。
本開示に係るシール装置は、軸線回りに回転可能なロータの外周面に対向した状態で径方向に変位可能に配置された可動シールリングと、前記可動シールリングの周方向における各端面に設けられた第一弾性部材と、前記可動シールリングの周方向における中間位置に設けられ、該可動シールリングを径方向外側に付勢する第二弾性部材と、を備え、前記可動シールリングと周方向に隣接して設けられた固定シールリングをさらに備え前記固定シールリングの周方向における端面には、前記可動シールリング側に向かって突出する突出部が形成され、前記可動シールリングの周方向における端面には、前記突出部に摺動する摺動面が形成され、前記摺動面に設けられ、該摺動面と前記突出部との間の摩擦力を低減する低摩擦部をさらに有する。
【0008】
本開示に係るシール装置は、軸線回りに回転可能なロータの外周面に対向した状態で径方向に変位可能に配置された可動シールリングと、前記可動シールリングの周方向における各端面に設けられた第一弾性部材と、前記可動シールリングの周方向における端部に設けられ、前記第一弾性部材を押圧可能な押圧部と、前記押圧部によって前記第一弾性部材が圧縮方向に弾性変形した状態で、前記押圧部の前記圧縮方向とは反対側への変位を規制する規制部と、を備える。
【0009】
本開示に係るシール装置は、軸線回りに回転可能なロータの外周面に対向した状態で径方向に変位可能に配置された可動シールリングと、前記可動シールリングの周方向における各端面に設けられた第一弾性部材と、前記可動シールリングと周方向に隣接して設けられた固定シールリングと、を備え、前記固定シールリングの周方向における端面には、前記可動シールリング側に向かって突出する突出部が形成され、前記可動シールリングの周方向における端面には、前記突出部に摺動する摺動面が形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、撓みが抑制されることでシール性能がさらに向上したシール装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の第一実施形態に係るシール装置の軸線方向における断面図である。
図2】本開示の第一実施形態に係るシール装置に加わる荷重の分布を示す説明図である。
図3図1のX-X線における断面図である。
図4】本開示の第二実施形態に係るシール装置の軸線方向における断面図である。
図5】本開示の第三実施形態に係る可動シールリングの端部の構成を示す断面図である。
図6】本開示の第四実施形態に係るシール装置の要部拡大断面図である。
図7】本開示の第四実施形態に係るシール装置の変形例を示す要部拡大断面図である。
図8】本開示の第四実施形態に係るシール装置のさらなる変形例を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第一実施形態]
(シール装置の構成)
以下、本開示の第一実施形態に係るシール装置100について、図1から図3を参照して説明する。シール装置100は、例えば蒸気タービンのロータ90の周囲における蒸気の漏れを防止するために設けられている。ロータ90は軸線Oに沿って延びる柱状をなし、当該軸線O回りに回転可能である。
【0013】
図1又は図2に示すように、シール装置100は、2つの固定シールリング1と、2つの可動シールリング2と、2つの第一弾性部材K1(図2参照)と、2つの第二弾性部材K2(図2参照)と、を備えている。
【0014】
固定シールリング1は、ロータ外周面90Aに対して径方向から対向している。固定シールリング1は、蒸気タービンのケーシングに支持固定されている。固定シールリング1は、ロータ外周面90Aに設けられた複数のシールフィン(不図示)と対向する複数の溝を有するシール体を有する。固定シールリング1は、複数の溝内にシールフィンが挿入されることで、ラビリンス効果を発現させる。
【0015】
固定シールリング1は、背面から板ばね等でロータ90の径方向内側に付勢された状態で支持されている。固定シールリング1は、ロータ90と接触して径方向外側に押圧されたときに変位可能ではあるが、実質的に不動のシール部材である。
【0016】
2つの可動シールリング2は、ロータ90を挟んで対向して配置されている。可動シールリング2は、周方向に延びる円弧形状とされている。可動シールリング2は、固定シールリング1に対して、周方向に隣接している。可動シールリング2の周方向の端部2tは、可動シールリング2の移動に伴って、固定シールリング1の周方向の端部1tに接触可能である。
【0017】
周方向における可動シールリング2の長さは、周方向における固定シールリング1の長さよりも大きい。可動シールリング2の周方向の両端と軸線Oとを結ぶ2本の直線が成す角度は、例えば120°とされる。固定シールリング1の周方向の両端と軸線Oとを結ぶ2本の直線が成す角度は、例えば30°とされる。
【0018】
図2に示すように、可動シールリング2の周方向の端部2tと、固定シールリング1の周方向の端部1tとの間には、それぞれ第一弾性部材K1が設けられている。第一弾性部材K1は例えば皿ばねである。なお、本実施形態では端部1t、及び端部2tは、それぞれ水平面内に広がっている。したがって、第一弾性部材K1としての皿ばねは上下方向に延びている。
【0019】
さらに、可動シールリング2の周方向における中間位置(つまり、周方向の端部2t,2t同士の間の領域)には、複数(一例として2つ)の第二弾性部材K2が設けられている。より具体的には、第二弾性部材K2は、可動シールリング2の頂部(つまり、最も上方の位置)を含む部分に設けられている。第二弾性部材K2も、第一弾性部材K1と同様に、例えば皿ばねである。第二弾性部材K2は、径方向外側に向かって可動シールリング2を付勢している。図2中では、第二弾性部材K2による付勢力を矢印Fとして示している。なお、第二弾性部材K2の選定方法は以下の通りである。まず、可動シールリング2に等分布荷重(自重および差圧による力)が作用した場合の各支持点における支持力を求める。次いで、第二弾性部材K2のばね定数を、各支持点に作用する支持力に比例した値に設定する。このとき、自重及び差圧による力が等分布荷重とみなせるため、各ばねにかかる力の割合は、差圧によらず変化しないとみなせる。これにより、それぞれの弾性部材(第一弾性部材K1及び第二弾性部材K2)による予圧の大きさが均等となる。
【0020】
より詳細には図3に示すように、可動シールリング2は、蒸気タービンのケーシング70に設けられたホルダー80によって径方向外側から支持されている。ホルダー80は、周方向から見てC字状の断面形状を有している。ホルダー80は、ケーシング70に接する板状の基部83と、この基部83の軸線O方向両端から径方向内側に向かって延びる一対の側部82と、これら側部82の径方向内側の端部から互いに近接する方向に突出する一対の係合部81と、を有している。
【0021】
可動シールリング2は、ホルダー80の側部82同士の間に挿入されているヘッド部30と、ヘッド部30から径方向内側に延びる接続部31と、接続部31の内周側に一体に設けられた可動シールリング本体32と、を有する。ヘッド部30は、ホルダー80の内側で、基部83から係合部81との間で径方向に変位可能である。このヘッド部30の内周側の端面と係合部81との間には上述した第二弾性部材K2が設けられている。また、ヘッド部30の外周側には例えば圧縮空気が供給される。この圧力(背圧)によって可動シールリング2は径方向の位置が変化する。
【0022】
接続部31は、係合部81同士の間に挿通されている。つまり、接続部31の軸線O方向における寸法は、ヘッド部30の軸線O方向における寸法よりも小さい。可動シールリング本体32は、係合部81よりも径方向内側に突出している。可動シールリング本体32の内周面は、ロータ外周面90A上に配列されたシールフィン40との間に一定のクリアランスを形成する。
【0023】
(作用効果)
ここで、上記のようなシール装置100では、特に上側に位置する可動シールリング2が自重と背圧とによって撓む場合がある。より具体的には、半円弧状をなす可動シールリング2が外側に広がるように変形する場合がある。このような変形が生じると、可動シールリング2の径方向の変位量が制限され、所期のシール性能を発揮できない虞がある。
【0024】
しかしながら、上記構成によれば、可動シールリング2は、第一弾性部材K1に加えて、第二弾性部材K2によって支持されている。第二弾性部材K2は、可動シールリング2を周方向における中央位置で径方向外側に向かって付勢している。これにより、可動シールリング2が自重や、外周側から供給される流体の圧力(背圧)によって撓むことを抑制することができる。より具体的には、可動シールリング2が外側に広がるように変形してしまうことを抑制することができる。これにより、シール装置100のシール性能をさらに向上させることが可能となる。
【0025】
[第二実施形態]
次に、本開示の第二実施形態について、図4を参照して説明する。なお、上記の第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。同図に示すように、本実施形態では、固定シールリング1の周方向における端部1t(端面)と、可動シールリング2の周方向における端部2t(端面)とが、軸線O方向から見てそれぞれ軸線Oに対する径方向に広がっている。さらに、これら端部1tと端部2tとの間には、第一弾性部材K1としての圧縮コイルばねが配置されている。端部1tと端部2tとが径方向に広がっていることから、第一弾性部材K1は、固定シールリング1と可動シールリング2を軸線Oに対する周方向に接続していることになる。つまり、第一弾性部材K1は、可動シールリング2を周方向の両側から付勢している。
【0026】
上記構成によれば、可動シールリング2の周方向における端面(端部2t)が径方向に広がっているとともに、第一弾性部材K1によって周方向両側から付勢されている。これにより、可動シールリング2には周方向の中央に向かって圧縮力が加わった状態となる。その結果、可動シールリング2に撓みが生じることをさらに抑制することができる。
【0027】
[第三実施形態]
続いて、本開示の第三実施形態について、図5を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。同図に示すように、本実施形態では、可動シールリング2の周方向における端部2tに押圧部5が取り付けられている。押圧部5は、端部2tから周方向に突出する棒状の延長部51と、延長部51の端部に設けられた板状の押圧部本体52と、を有している。
【0028】
この押圧部5は、固定シールリング1(図5では不図示)に固定されているケース6によって囲まれている。ケース6は箱状をなすケース本体61と、ケース本体61の周方向の一方側の端面である規制部62と、を有している。規制部62には、上記の延長部51が挿通される開口が形成されている。押圧部本体52は、この規制部62よりも内側に位置した状態で、ケース6内に設けられた第一弾性部材K1によって周方向(圧縮方向)に付勢されている。この第一弾性部材K1は、予め圧縮されて弾性変形した状態とされている。つまり、第一弾性部材K1にはプリロードが付加されている。このとき、可動シールリング2の変位(つまり、上記の圧縮方向と反対側への変位)は、押圧部5と規制部62との当接によって規制されている。一方で、可動シールリング2に対する荷重がプリロードの値を上回った場合には、当該可動シールリング2は圧縮方向へ変位することが可能である。
【0029】
上記構成によれば、押圧部5によって押圧されることで第一弾性部材K1が圧縮方向に弾性変形した状態となっている。この状態で、規制部62は、押圧部5の圧縮方向とは反対側への変位を規制している。つまり、第一弾性部材K1には予め圧縮荷重が付加された状態となっている。これにより、可動シールリング2は、この圧縮荷重を相殺する大きさの荷重が加わるまで径方向への変位が制限される。その結果、圧縮荷重の大きさを変えることのみによって、可動シールリング2が変位を始めるタイミングを精緻にコントロールすることが可能となる。
【0030】
[第四実施形態]
次に、本開示の第四実施形態について、図6を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。同図に示すように、本実施形態では、固定シールリング1と可動シールリング2との接続部の構成が上記の各実施形態とは異なっている。本実施形態では、固定シールリング1の端部に、可動シールリング2側に向かって突出する突出部Pが設けられている。突出部Pの内部には上述の第一弾性部材K1を収容する収容凹部Prが形成されている。突出部Pの外面のうち、径方向内側(内周側)を向く面は、対向面Paとされている。
【0031】
一方で、可動シールリング2の端部には、固定シールリング1から離間する側に凹む凹部Rが形成されている。凹部Rは、突出部Pに対応した形状、寸法を有している。つまり、これら突出部Pと凹部Rを介して固定シールリング1と可動シールリング2は互いに係合することが可能である。凹部Rの各面のうち、径方向外側を向く面は摺動面Raとされている。この摺動面Raは、可動シールリング2が固定シールリング1に対して変位するとき、上記の対向面Paと摺動する。摺動面Raには、対向面Paとの間の摩擦力を低減するための低摩擦部としてのコーティングCが施されている。
【0032】
上記構成によれば、可動シールリング2の摺動面Raが、固定シールリング1の突出部Pの内周側を向く面(対向面Pa)と摺動可能に接触している。つまり、可動シールリング2は、周方向両側の突出部Pによって外側から挟まれている。これにより、可動シールリング2に自重や背圧による撓み(外側に広がるような変形を伴う撓み)が生じることをさらに抑制することができる。
【0033】
さらに、上記構成によれば、低摩擦部としてのコーティングCが設けられていることによって、可動シールリング2に変位を生じさせるような荷重が加わった場合であっても、摩擦力が低減されていることから、その変位が妨げられることを抑制することができる。
【0034】
[その他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0035】
例えば上記第四実施形態では、低摩擦部として摺動面RaにコーティングCが設けられている構成について説明した。しかしながら、低摩擦部の態様はこれに限定されず、図7図8に示す構成を採ることも可能である。図7に示す変形例では、低摩擦部として複数のころC1が摺動面Raに配置されている。可動シールリング2が変位する際にころC1が転動することで、摺動面Raと対向面Paとの間の摩擦力を低減することができる。また、図8に示す変形例では、対向面Pa側に低摩擦部としての板ばねC2が設けられている。板ばねC2の先端は摺動面Raに当接している。可動シールリング2が変位する際に板ばねC2が弾性変形しながら摺動面Raに摺動することで、摺動面Raと対向面Paとの間の摩擦力を低減することができる。
【0036】
[付記]
各実施形態に記載のシール装置100は、例えば以下のように把握される。
【0037】
(1)第1の態様に係るシール装置100は、軸線O回りに回転可能なロータ90の外周面90Aに対向した状態で径方向に変位可能に配置された可動シールリング2と、前記可動シールリング2の周方向における各端面に設けられた第一弾性部材K1と、前記可動シールリング2の周方向における中間位置に設けられ、該可動シールリング2を径方向外側に付勢する第二弾性部材K2と、を備える。
【0038】
上記構成によれば、可動シールリング2は、第一弾性部材K1に加えて、第二弾性部材K2によって支持されている。第二弾性部材K2は、可動シールリング2を周方向における中間位置で径方向外側に向かって付勢している。これにより、可動シールリング2が自重や、外周側から供給される流体の圧力(背圧)によって撓むことを抑制することができる。より具体的には、可動シールリング2が外側に広がるように変形してしまうことを抑制することができる。
【0039】
(2)第2の態様に係るシール装置100では、前記可動シールリング2の周方向における前記端面は、前記軸線O方向から見て径方向に広がっており、前記第一弾性部材K1は、前記可動シールリング2を周方向両側から付勢していてもよい。
【0040】
上記構成によれば、可動シールリング2の周方向における端面が径方向に広がっているとともに、第一弾性部材K1によって周方向両側から付勢されている。これにより、可動シールリング2には周方向の中央に向かって圧縮力が加わった状態となる。その結果、可動シールリング2が撓むことをさらに抑制することができる。
【0041】
(3)第3の態様に係るシール装置100は、前記可動シールリング2の周方向における端部に設けられ、前記第一弾性部材K1を押圧可能な押圧部5と、前記押圧部5によって前記第一弾性部材K1が圧縮方向に弾性変形した状態で、前記押圧部5の前記圧縮方向とは反対側への変位を規制する規制部62と、をさらに備えてもよい。
【0042】
上記構成によれば、押圧部5によって押圧されることで第一弾性部材K1が圧縮方向に弾性変形した状態となっている。この状態で、規制部62は、押圧部5の圧縮方向とは反対側への変位を規制している。つまり、第一弾性部材K1には予め圧縮荷重が付加された状態となっている。これにより、可動シールリング2は、この圧縮荷重を相殺する大きさの荷重が加わるまで径方向への変位が制限される。その結果、圧縮荷重の大きさを変えることのみによって、可動シールリング2が変位を始めるタイミングを精緻にコントロールすることが可能となる。
【0043】
(4)第4の態様に係るシール装置100は、前記可動シールリング2と周方向に隣接して設けられた固定シールリング1をさらに備え、前記固定シールリング1の周方向における端面には、前記可動シールリング2側に向かって突出する突出部Pが形成され、前記可動シールリング2の周方向における端面には、前記突出部Pの内周側を向く面に摺動する摺動面Raが形成されていてもよい。
【0044】
上記構成によれば、可動シールリング2の摺動面Raが、固定シールリング1の突出部Pの内周側を向く面と摺動可能に接触している。つまり、可動シールリング2は、周方向両側の突出部Pによって外側から挟まれている。これにより、可動シールリング2に自重や背圧による撓み(外側に広がるような変形を伴う撓み)が生じることをさらに抑制することができる。
【0045】
(5)第5の態様に係るシール装置100は、前記摺動面Raに設けられ、該摺動面Raと前記突出部Pとの間の摩擦力を低減する低摩擦部をさらに有してもよい。
【0046】
上記構成によれば、低摩擦部が設けられていることによって、可動シールリング2に変位を生じさせるような荷重が加わった場合であっても、摩擦力が低減されていることから、その変位が妨げられることを抑制することができる。
【0047】
(6)第6の態様に係るシール装置100は、軸線O回りに回転可能なロータ90の外周面90Aに対向した状態で径方向に変位可能に配置された可動シールリング2と、前記可動シールリング2の周方向における各端面に設けられた第一弾性部材K1と、を備え、前記可動シールリング2の周方向における前記端面は、前記軸線O方向から見て径方向に広がっており、前記第一弾性部材K1は、前記可動シールリング2を周方向両側から付勢している。
【0048】
上記構成によれば、可動シールリング2の周方向における端面が径方向に広がっているとともに、第一弾性部材K1によって周方向両側から付勢されている。これにより、可動シールリング2には周方向の中央に向かって圧縮力が加わった状態となる。その結果、可動シールリングに撓みが生じることをさらに抑制することができる。
【0049】
(7)第7の態様に係るシール装置100は、軸線O回りに回転可能なロータ90の外周面90Aに対向した状態で径方向に変位可能に配置された可動シールリング2と、前記可動シールリング2の周方向における各端面に設けられた第一弾性部材K1と、前記可動シールリング2の周方向における端部に設けられ、前記第一弾性部材K1を押圧可能な押圧部5と、前記押圧部5によって前記第一弾性部材K1が圧縮方向に弾性変形した状態で、前記押圧部5の前記圧縮方向とは反対側への変位を規制する規制部62と、を備える。
【0050】
上記構成によれば、押圧部5によって押圧されることで第一弾性部材K1が圧縮方向に弾性変形した状態となっている。この状態で、規制部62は、押圧部5の圧縮方向とは反対側への変位を規制している。つまり、第一弾性部材K1には予め圧縮荷重が付加された状態となっている。これにより、可動シールリング2は、この圧縮荷重を相殺する大きさの荷重が加わるまで径方向への変位が制限される。その結果、圧縮荷重の大きさを変えることのみによって、可動シールリング2が変位を始めるタイミングを精緻にコントロールすることが可能となる。
【0051】
(8)第8の態様に係るシール装置100は、軸線O回りに回転可能なロータ90の外周面90Aに対向した状態で径方向に変位可能に配置された可動シールリング2と、前記可動シールリング2の周方向における各端面に設けられた第一弾性部材K1と、前記可動シールリング2と周方向に隣接して設けられた固定シールリング1と、を備え、前記固定シールリング1の周方向における端面には、前記可動シールリング2側に向かって突出する突出部Pが形成され、前記可動シールリング2の周方向における端面には、前記突出部Pに摺動する摺動面Raが形成されている。
【0052】
上記構成によれば、可動シールリング2の摺動面Raが、固定シールリング1の突出部Pの内周側を向く面と摺動可能に接触している。つまり、可動シールリング2は、周方向両側の突出部Pによって外側から挟まれている。これにより、可動シールリング2に自重や背圧による撓み(外側に広がるような変形を伴う撓み)が生じることをさらに抑制することができる。
【0053】
(9)第9の態様に係るシール装置100は、前記摺動面Raに設けられ、該摺動面Raと前記突出部Pとの間の摩擦力を低減する低摩擦部をさらに有してもよい。
【0054】
上記構成によれば、低摩擦部が設けられていることによって、可動シールリング2に変位を生じさせるような荷重が加わった場合であっても、摩擦力が低減されていることから、その変位が妨げられることを抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本開示によれば、撓みが抑制されることでシール性能がさらに向上したシール装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
100 シール装置
1 固定シールリング
1t 端部
2 可動シールリング
2t 端部
5 押圧部
6 ケース
30 ヘッド部
31 接続部
32 可動シールリング本体
40 シールフィン
51 延長部
52 押圧部本体
61 ケース本体
62 規制部
70 ケーシング
80 ホルダー
81 係合部
82 側部
83 基部
90 ロータ
90A ロータ外周面
C コーティング
C1 ころ
C2 板ばね
K1 第一弾性部材
K2 第二弾性部材
P 突出部
Pa 対向面
Pr 収容凹部
R 凹部
Ra 摺動面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8