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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】キメラ抗原受容体及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20240823BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240823BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240823BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240823BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240823BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20240823BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20240823BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20240823BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240823BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240823BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240823BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240823BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240823BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20240823BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/13
C07K19/00
C07K16/00
C07K14/725
C07K14/705
C12N15/867 Z
C12N5/10
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 T
A61K35/17
C12N5/0783
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022576551
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 CN2021099797
(87)【国際公開番号】W WO2021249549
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】202010535848.X
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520285879
【氏名又は名称】中国科学院分子細胞科学卓越創新中心
【氏名又は名称原語表記】CENTER FOR EXCELLENCE IN MOLECULAR CELL SCIENCE, CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
【住所又は居所原語表記】Building 35, 320 Yueyang Road, Xuhui District, Shanghai, 200031, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】許▲シン▼▲チ▼
(72)【発明者】
【氏名】周秋萍
(72)【発明者】
【氏名】呉微
(72)【発明者】
【氏名】何星
(72)【発明者】
【氏名】孫赫
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/068702(WO,A1)
【文献】特表2018-515123(JP,A)
【文献】特表2019-513370(JP,A)
【文献】PLOS ONE,2013年,8(3) e57838,P.1-12
【文献】MOLECULAR THERAPY,2019年,27(11),P.1919-1929
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12N 5/10
A61P 35/00
A61P 35/02
A61K 39/395
A61K 35/17
C12N 5/0783
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
SwissProt/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
順に連結される細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを含む、キメラ抗原受容体であって、
前記細胞外ドメインは抗原認識領域とヒンジ領域を含み、
前記細胞内ドメインにおける膜貫通ドメインに連結される一端にはCD3ε細胞内領域が連結されており、
前記CD3ε細胞内領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:1に示す通りであり、
前記細胞内ドメインは、順に連結されるCD3ε細胞内領域、共刺激シグナル伝達領域及びCD3ζ細胞内領域を含む、
キメラ抗原受容体。
【請求項2】
前記共刺激シグナル伝達領域は、CD27、CD28、CD134、4-1BB及びICOSの細胞内領域のうちの1つ又は複数から選択されることを特徴とする請求項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項3】
更に、
(1)前記CD28細胞内領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:2に示す通りであり、
(2)前記CD3ζ細胞内領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:3に示す通りである、
との特徴のうちの1つ又は複数を含むことを特徴とする請求項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項4】
更に、
a.前記抗原認識領域は、腫瘍表面抗原を標的とする一本鎖抗体から選択され、前記腫瘍表面抗原は、CD19、メソテリン、CD20、CD22、CD123、CD30、CD33、CD38、CD138、BCMA、線維芽細胞活性化タンパク質(Fibroblast activation protein)、グリピカン-3(Glypican-
3)、CEA、EGFRvIII、PSMA、Her2、IL13Rα2、CD171及びGD2のうちの1つ又は複数から選択され、
b.前記膜貫通ドメインは、CD28TM、CD4、CD8α、OX40又はH2-Kbから選択される、
との特徴のうちの1つ又は複数を含むことを特徴とする請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項5】
更に、
c.前記一本鎖抗体はFMC63又はSS1から選択され、
d.前記CD28TMのアミノ酸配列はSEQ ID NO:4に示す通りである、
との特徴のうちの1つ又は複数を含むことを特徴とする請求項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項6】
前記キメラ抗原受容体のアミノ酸配列はSEQ ID NO:5又はSEQ ID NO:6に示す通りであることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項7】
(1)請求項1~のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドと、
(2)(1)で記載したポリヌクレオチドの相補的なポリヌクレオチド
から選択されるポリヌクレオチド
【請求項8】
前記ポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:7又はSEQ ID NO:8に示す通りであることを特徴とする請求項に記載のポリヌクレオチド
【請求項9】

請求項又はに記載のポリヌクレオチドを含む核酸構築物。
【請求項10】
前記核酸構築物はベクターである、請求項9に記載の核酸構築物。
【請求項11】
前記核酸構築物はレンチウイルスベクターであって、複製起点、3’LTR、5’LTR、及び請求項又はに記載のポリヌクレオチドを含む、請求項9に記載の核酸構築物
【請求項12】
請求項9乃至請求項11のいずれ1項に記載の核酸構築物及びレンチウイルスベクターの補助成分を含むレンチウイルスベクターシステム。
【請求項13】
請求項又はに記載のポリヌクレオチドを含むか、請求項9乃至請求項11のいずれ1項に記載の核酸構築物を含むか、請求項12に記載のレンチウイルスベクターシステムに感染していることを特徴とする遺伝子組換えT細胞。
【請求項14】
請求項1~のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体、請求項又はに記載のポリヌクレオチド、或いは、請求項9乃至請求項11のいずれ1項に記載の核酸構築物、或いは、請求項12に記載のレンチウイルスベクターシステムの、(1)T細胞の作製、(2)T細胞からのサイトカインIFN-γ、IL-2、TNFの分泌阻害、(3)T細胞アポトーシスの阻害、(5)T細胞の増殖能力の強化、(6)T細胞の殺傷能力の向上、(7)GrzBの産生促進、(8)脱顆粒の促進、のうちのいずれか1つ又は複数の用途の製品の製造における使用。
【請求項15】
請求項1~のいずれか1項に記載のキメラ抗原受容体、請求項又はに記載のポリヌクレオチド、或いは、請求項9乃至請求項11のいずれ1項に記載の核酸構築物、或いは
、請求項12に記載のレンチウイルスベクターシステム、或いは、請求項13に記載の遺伝子組換えT細胞の、(1)腫瘍の治療、(3)腫瘍治療時に発生するサイトカインストームの阻害、(4)腫瘍治療時に発生する神経毒性の阻害、のうちのいずれか1つ又は複数の用途の製品の製造における使用。
【請求項16】
前記腫瘍は、白血病又は固形腫瘍のうちの1つ又は複数から選択される、請求項15に記載される使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キメラ抗原受容体の分野に関し、具体的には、キメラ抗原受容体及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
キメラ抗原受容体は、CAR(chimeric antigen receptor)と略称され、特定の腫瘍抗原を標的とするCARが搭載されたT細胞をCAR-T細胞と称する。CAR-T療法は、腫瘍治療において幅広く応用されているが、依然として多くの限界が存在する。例えば、白血病や固形腫瘍の臨床治療で遭遇するサイトカインストームや神経毒性の安全上の課題、及び治療効果の向上が望まれるとの課題がある。とりわけ、固形腫瘍の免疫療法への応用においてはそうである。
【0003】
現在のところ、サイトカインストーム(CRS)と神経毒性(NT)の解決方法にはいずれも限界がある。臨床では、現在、主としてFDAで認可されているロシュ社(Roche)のアクテムラ(トシリズマブ、IL-6Rモノクローナル抗体)を使用してCRSをコントロールしている。トシリズマブは、リウマチ様関節炎の治療用として米国FDAに初めて認可されたものであり、それらのサイトカイン誘導性の炎症反応をブロック可能である。しかし、欠点として、患者体内の血液中におけるIL-6レベルを上昇させることがある。高濃度のIL-6は血液脳関門を通過可能であり、神経毒性を誘発し得る。
【0004】
IL-1阻害剤:2018年5月、イタリアのサンラファエル病院-サンラファエル科学研究所及びMSKCC(メモリアルスローンケタリング癌センター)という2つの研究チームによる2つの独立した実験結果より、CRSは炎症性分子IL-1により誘発されるため、治療プランにIL-1受容体アンタゴニストであるキネレット(アナキンラ、リウマチ様関節炎用薬)を投入し、競合的にIL-1を阻害することでCRSを効果的に制御可能なことが証明された。これは、キネレットが血液脳関門を通過する能力を有しており、神経毒性を制御することも可能なためである。
【0005】
限界:トシリズマブ及びアナキンラは、いずれも早期に介入して細胞のCRS/NSを予防するものではなく、応急措置に相当するため、発見や処置が遅れた場合には、命に関わる危険がある。しかし、現在のところ、副作用の発生に早期に介入するための最適な手段が何であるのかは明らかとなっていない。
【0006】
よって、CAR構造そのものを対象とした改変設計がより好ましい手段と考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来技術の欠点に鑑みて、本発明の目的は、キメラ抗原受容体及びその用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的及び関連するその他の目的を実現するために、本発明は、第1の態様において、キメラ抗原受容体を提供する。当該キメラ抗原受容体は、順に連結される細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを含む。
【0009】
前記細胞外ドメインは抗原認識領域とヒンジ領域を含む。
【0010】
前記細胞内ドメインにおける膜貫通ドメインに連結される一端にはCD3ε細胞内領域が連結されている。
【0011】
本発明は、第2の態様において、ポリヌクレオチド配列を提供する。当該ポリヌクレオチド配列は、(1)請求項で記載するキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド配列と、(2)(1)で記載したポリヌクレオチド配列の相補的配列、から選択される。
【0012】
本発明は、第3の態様において、核酸構築物を提供する。前記核酸構築物は、前記ポリヌクレオチド配列を含む。
【0013】
好ましくは、前記核酸構築物はベクターである。
【0014】
より好ましくは、前記核酸構築物はレンチウイルスベクターであって、複製起点、3’LTR、5’LTR、前記ポリヌクレオチド配列を含む。
【0015】
本発明は、第4の態様において、レンチウイルスベクターシステムを提供する。前記レンチウイルスベクターシステムは、上述した核酸構築物及びレンチウイルスベクターの補助成分を含む。
【0016】
本発明は、第5の態様において、遺伝子組換えT細胞、又は当該遺伝子組換えT細胞を含む薬物組成物を提供する。特徴として、前記細胞は、前記ポリヌクレオチド配列を含むか、前記核酸構築物を含むか、前記レンチウイルスベクターシステムに感染している。
【0017】
本発明は、第6の態様において、前記キメラ抗原受容体、前記ポリヌクレオチド配列、前記核酸構築物又は前記レンチウイルスベクターシステムの、(1)T細胞の作製、(2)T細胞からのサイトカインIFN-γ、IL-2、TNFの分泌阻害、(3)T細胞アポトーシスの阻害、(5)T細胞の増殖能力の強化、(6)T細胞の殺傷能力の向上、(7)GrzBの産生促進、(8)脱顆粒の促進、のうちのいずれか1つ又は複数の用途の製品の製造における使用を提供する。
【0018】
本発明は、第7の態様において、前記キメラ抗原受容体、前記ポリヌクレオチド配列、前記核酸構築物、前記レンチウイルスベクターシステム又は前記遺伝子組換えT細胞の、(1)腫瘍の治療、(3)腫瘍治療時に発生するサイトカインストームの阻害、(4)腫瘍治療時に発生する神経毒性の阻害、のうちのいずれか1つ又は複数の用途の製品の製造における使用を提供する。
【0019】
好ましくは、前記腫瘍は、白血病又は固形腫瘍のうちの1つ又は複数から選択される。
【発明の効果】
【0020】
上述したように、本発明におけるキメラ抗原受容体及びその用途は、以下の有益な効果を有する。
【0021】
本発明のキメラ抗原受容体は、B細胞白血病/リンパ腫の治療において、B細胞白血病/リンパ腫の治療効果を更に向上させることが可能である。且つ、自身のサイトカインをダウンレギュレーションさせて、マクロファージ/単球の活性化による炎症性サイトカインの産生を低下させることで、サイトカインストームの早期予防及び神経毒性のリスク低下を可能とする。また、メソテリン陽性の腫瘍治療において、メソテリンが高発現している固形腫瘍の治療効果を更に向上させるとともに、サイトカインストームの早期予防及び神経毒性のリスク低下を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1.a】図1.aは、CD19を標的とする28Z CAR及びE28Z CARの概略構造図である。
図1.b】図1.bは、28Z及びE28Z CAR-T細胞膜表面におけるanti-CD19 CARレベルを示すフローサイトメトリーグラフである。
図1.c】図1.cは、28Z及びE28Z CAR-TにおけるCD4及びCD8の細胞割合を示すフローサイトメトリーグラフである。
図1.d】図1.dは、anti-CD19 28Z及びE28Z CARをCD19抗原で刺激したあとのCD3ζリン酸化レベルの比較である。
図1.e】図1.eは、anti-CD19 28Z及びE28Z CARをCD19抗原で刺激したあとの変化である。
図1.f-h】図1.fは、anti-CD19 28Z及びE28Z CAR-T細胞をCD19抗原で刺激したあとのサイトカインレベルの比較である。図1.gは、anti-CD19 28Z及びE28Z CAR-T細胞をCD19抗原で刺激したあとのサイトカインレベルの比較である。図1.hは、anti-CD19 28Z及びE28Z CAR-T細胞をCD19抗原で刺激したあとのサイトカインレベルの比較である。
図1.i】図1.iは、anti-CD19 28Z及びE28Z CAR-T細胞をCD19抗原で刺激したあとの脱顆粒反応である。
図1.j】図1.jは、anti-CD19 28Z及びE28Z CAR-T細胞をCD19抗原で刺激したあとのグランザイム放出反応である。
図1.k】図1.kは、CD19腫瘍細胞に対するanti-CD19 28Z及びE28Z CAR-T細胞の毒性反応である。
図1.l】図1.lは、anti-CD19 28Z及びE28Z CAR-T細胞をCD19抗原で刺激したあとの増殖状況である。
図1.m】図1.mは、anti-CD19 28Z及びE28Z CAR-T細胞をCD19抗原で刺激したあとのアポトーシス状況である。
図1.n】図1.nは、anti-CD19 28Z及びE28Z CAR-T細胞をCD19抗原で刺激したあとの生存能力である。
図1.o】図1.oは、anti-CD19 28Z及びE28Z CAR-T細胞をCD19抗原で刺激したあとの疲弊(exhaustion)状態である。
図1.p】図1.pは、anti-CD19 28Z及びE28Z CAR-T細胞をCD19抗原で刺激したあとの疲弊(exhaustion)状態である。
図1.q】図1.qは、CAR-T細胞によるRaji皮下異種移植腫瘍モデルの治療フローチャートである。
図1.r】図1.rは、CAR-T細胞による治療後のRaji皮下異種移植腫瘍の成長状況である。
図2.a】図2.aは、メソテリン(mesothelin)を標的とする28Z CAR及びE28Z CARの概略構造図である。
図2.b】図2.bは、28Z及びE28Z CAR-T細胞膜表面におけるanti-mesothelinCARレベルを示すフローサイトメトリーグラフである。
図2.c】図2.cは、anti-mesothelin 28Z及びE28Z CAR-TにおけるCD4及びCD8の細胞割合を示すフローサイトメトリーグラフである。
図2.d-f】図2.dは、anti-mesothelin 28Z及びE28Z CAR-T細胞をメソテリン抗原で刺激したあとのサイトカインレベルの比較である。図2.eは、anti-mesothelin 28Z及びE28Z CAR-T細胞をメソテリン抗原で刺激したあとのサイトカインレベルの比較である。図2.fは、anti-mesothelin 28Z及びE28Z CAR-T細胞をメソテリン抗原で刺激したあとのサイトカインレベルの比較である。
図2.g】図2.gは、anti-mesothelin 28Z及びE28Z CAR-T細胞をメソテリン抗原で刺激したあとのアポトーシス状況である。
図2.h】図2.hは、anti-mesothelin 28Z及びE28Z CAR-T細胞をメソテリン抗原で刺激したあとの生存能力である。
図2.i】図2.iは、mesothelin腫瘍細胞に対するanti-mesothelin 28Z及びE28Z CAR-Tの毒性反応である。
図2.j】図2.jは、anti-mesothelin CAR-T細胞によるヒト由来PANC-1膵臓癌細胞株(メソテリンを高発現)皮下異種移植腫瘍モデルの治療フローチャートである。
図2.k】図2.kは、anti-mesothelin CAR-T細胞による治療後のRaji皮下異種移植腫瘍の成長状況である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明で記載するキメラ抗原受容体は、順に連結される細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを含み、前記細胞外ドメインは抗原認識領域とヒンジ領域を含み、前記細胞内ドメインにおける膜貫通ドメインに連結される一端にはCD3ε細胞内領域が連結されている。
【0024】
更に、前記CD3ε細胞内領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:1に示す通りであり、具体的には、KNRKAKAKPVTRGAGAGGRQRGQNKERPPPVPNPDYEPIRKGQRDLYSGLNQRRIである。
【0025】
前記細胞内ドメインは、順に連結されるCD3ε細胞内領域、共刺激シグナル伝達領域の細胞内領域及びCD3ζ細胞内領域を含む。
【0026】
一実施形態において、前記共刺激シグナル伝達領域は、CD27、CD28、CD134、4-1BB又はICOSの細胞内領域のうちの1つ又は複数から選択される。
【0027】
更に好ましい実施形態において、前記共刺激シグナル伝達領域はCD28から選択される。この場合、殺傷能力が更に強くなる。
【0028】
CD28のアミノ酸配列はSEQ ID NO:2に示す通りであり、具体的には、RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSである。
【0029】
一実施形態において、前記CD3ζ細胞内領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:3に示す通りであり、具体的には、RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPRである。
【0030】
一実施形態において、前記抗原認識領域は、腫瘍表面抗原を標的とする一本鎖抗体から選択される。また、前記腫瘍表面抗原は、CD19、メソテリン(mesothelin)、CD20、CD22、CD123、CD30、CD33、CD38、CD138、BCMA、線維芽細胞活性化タンパク質(Fibroblast activation protein)(FAP)、グリピカン-3(Glypican-3)、CEA、EGFRvIII、PSMA、Her2、IL13Rα2、CD171及びGD2のうちの1つ又は複数から選択される。
【0031】
好ましくは、CD19又はメソテリンから選択される。この場合、標的特異性が良好となる。
【0032】
前記膜貫通ドメインは、CD28TM、CD4、CD8α、OX40又はH2-Kbから選択される。
【0033】
好ましくは、前記膜貫通ドメインはCD28TMから選択される。具体的に、前記CD28TMのアミノ酸配列はSEQ ID NO:4に示す通りであり、具体的には、FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVである。
【0034】
一実施形態において、前記一本鎖抗体は、軽鎖可変領域と重鎖可変領域を含む。
【0035】
一実施形態において、前記軽鎖可変領域と前記重鎖可変領域はリンカー配列で連結されている。
【0036】
一実施形態において、前記一本鎖抗体はFMC63又はSS1から選択される。
【0037】
FMC63には、市販の製品を使用可能である。
【0038】
一実施形態において、前記一本鎖抗体は、モノクローナル抗体FMC63の軽鎖可変領域と重鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域と重鎖可変領域が選択的にリンカー配列で連結されている。
【0039】
一実施形態において、前記一本鎖抗体はモノクローナル抗体SS1の軽鎖可変領域と重鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域と重鎖可変領域が選択的にリンカー配列で連結されている。
【0040】
SS1のscFvヌクレオチド配列はSEQ ID NO:9に示す通りであり、具体的には以下とする。
【0041】
CAGGTACAACTGCAGCAGTCTGGGCCTGAGCTGGAGAAGCCTGGCGCTTCAGTGAAGATATCCTGCAAGGCTTCTGGTTACTCATTCACTGGCTACACCATGAACTGGGTGAAGCAGAGCCATGGAAAGAGCCTTGAGTGGATTGGACTTATTACTCCTTACAATGGTGCTTCTAGCTACAACCAGAAGTTCAGGGGCAAGGCCACATTAACTGTAGACAAGTCATCCAGCACAGCCTACATGGACCTCCTCAGTCTGACATCTGAAGACTCTGCAGTCTATTTCTGTGCAAGGGGGGGTTACGACGGGAGGGGTTTTGACTACTGGGGCCAAGGGACCACGGTCACCGTCTCCTCAGGTGGAGGCGGTTCAGGCGGCGGTGGCTCTAGCGGTGGTGGATCGGACATCGAGCTCACTCAGTCTCCAGCAATCATGTCTGCATCTCCAGGGGAGAAGGTCACCATGACCTGCAGTGCCAGCTCAAGTGTAAGTTACATGCACTGGTACCAGCAGAAGTCAGGCACCTCCCCCAAAAGATGGATTTATGACACATCCAAACTGGCTTCTGGAGTCCCAGGTCGCTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGAAACTCTTACTCTCTCACAATCAGCAGCGTGGAGGCTGAAGATGATGCAACTTATTACTGCCAGCAGTGGAGTAAGCACCCTCTCACGTACGGTGCTGGGACAAAGTTGGAAATCAAA
【0042】
SS1のscFvアミノ酸配列はSEQ ID NO:10に示す通りであり、具体的には以下とする。
【0043】
QVQLQQSGPELEKPGASVKISCKASGYSFTGYTMNWVKQSHGKSLEWIGLITPYNGASSYNQKFRGKATLTVDKSSSTAYMDLLSLTSEDSAVYFCARGGYDGRGFDYWGQGTTVTVSSGGGGSGGGGSSGGGSDIELTQSPAIMSASPGEKVTMTCSASSSVSYMHWYQQKSGTSPKRWIYDTSKLASGVPGRFSGSGSGNSYSLTISSVEAEDDATYYCQQWSKHPLTYGAGTKLEIK
【0044】
更に、前記細胞外ドメインはシグナルペプチドを更に含み、順に連結されるシグナルペプチド-抗原認識領域-ヒンジ領域を形成している。
【0045】
一実施形態において、前記キメラ抗原受容体のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:5(Anti-CD19 E28Z CAR)又はSEQ ID NO:6(Anti-mesothelin E28Z CAR)に示す通りである。
【0046】
具体的に、SEQ ID NO:5(Anti-CD19 E28Z CAR)は以下の通りである。
【0047】
MVSKGEELFTGVVPILVELDGDVNGHKFSVSGEGEGDATYGKLTLKFICTTGKLPVPWPTLVTTLTYGVQCFSRYPDHMKQHDFFKSAMPEGYVQERTIFFKDDGNYKTRAEVKFEGDTLVNRIELKGIDFKEDGNILGHKLEYNYNSHNVYIMADKQKNGIKVNFKIRHNIEDGSVQLADHYQQNTPIGDGPVLLPDNHYLSTQSALSKDPNEKRDHMVLLEFVTAAGITLGMDELYKGSGEGRGSLLTCGDVEENPGPMLLLVTSLLLCELPHPAFLLIPYPYDVPDYADIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPDGTVKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPYTFGGGTKLEITGSTSGSGKPGSGEGSTKGEVKLQESGPGLVAPSQSLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPRKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTIIKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAIYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTSVTVSSAAAIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVKNRKAKAKPVTRGAGAGGRQRGQNKERPPPVPNPDYEPIRKGQRDLYSGLNQRRIRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR*
【0048】
SEQ ID NO:5(Anti-CD19 E28Z CAR)に対応するヌクレオチド配列はSEQ ID NO:7(Anti-CD19 E28Z CAR)である。SEQ ID NO:7は下記の通りである。
【0049】
ATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGCTGTTCACCGGGGTGGTGCCCATCCTGGTCGAGCTGGACGGCGACGTAAACGGCCACAAGTTCAGCGTGTCCGGCGAGGGCGAGGGCGATGCCACCTACGGCAAGCTGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCGGCAAGCTGCCCGTGCCCTGGCCCACCCTCGTGACCACCCTGACCTACGGCGTGCAGTGCTTCAGCCGCTACCCCGACCACATGAAGCAGCACGACTTCTTCAAGTCCGCCATGCCCGAAGGCTACG
TCCAGGAGCGCACCATCTTCTTCAAGGACGACGGCAACTACAAGACCCGCGCCGAGGTGAAGTTCGAGGGCGACACCCTGGTGAACCGCATCGAGCTGAAGGGCATCGACTTCAAGGAGGACGGCAACATCCTGGGGCACAAGCTGGAGTACAACTACAACAGCCACAACGTCTATATCATGGCCGACAAGCAGAAGAACGGCATCAAGGTGAACTTCAAGATCCGCCACAACATCGAGGACGGCAGCGTGCAGCTCGCCGACCACTACCAGCAGAACACCCCCATCGGCGACGGCCCCGTGCTGCTGCCCGACAACCACTACCTGAGCACCCAGTCCGCCCTGAGCAAAGACCCCAACGAGAAGCGCGATCACATGGTCCTGCTGGAGTTCGTGACCGCCGCCGGGATCACTCTCGGCATGGACGAGCTGTACAAGGGAAGCGGAGAGGGCAGAGGAAGTCTGCTAACATGCGGTGACGTCGAGGAGAATCCTGGACCTatgcttctcctggtgacaagccttctgctctgtgagttaccacacccagcattcctcctgatcccaTACCCCTACGACGTGCCCGACTACGCCgacatccagatgacacagactacatcctccctgtctgcctctctgggagacagagtcaccatcagttgcagggcaagtcaggacattagtaaatatttaaattggtatcagcagaaaccagatggaactgttaaactcctgatctaccatacatcaagattacactcaggagtcccatcaaggttcagtggcagtgggtctggaacagattattctctcaccattagcaacctggagcaagaagatattgccacttacttttgccaacagggtaatacgcttccgtacacgttcggaggggggactaagttggaaataacaggctccacctctggatccggcaagcccggatctggcgagggatccaccaagggcgaggtgaaactgcaggagtcaggacctggcctggtggcgccctcacagagcctgtccgtcacatgcactgtctcaggggtctcattacccgactatggtgtaagctggattcgccagcctccacgaaagggtctggagtggctgggagtaatatggggtagtgaaaccacatactataattcagctctcaaatccagactgaccatcatcaaggacaactccaagagccaagttttcttaaaaatgaacagtctgcaaactgatgacacagccatttactactgtgccaaacattattactacggtggtagctatgctatggactactggggtcaaggaacctcagtcaccgtctcctcagcggccgcaattgaagttatgtatcctcctccttacctagacaatgagaagagcaatggaaccattatccatgtgaaagggaaacacctttgtccaagtcccctatttcccggaccttctaagcccttttgggtgctggtggtggttgggggagtcctggcttgctatagcttgctagtaacagtggcctttattattttctgggtgaagaatagaaaggccaaggccaagcctgtgacacgaggagcgggtgctggcggcaggcaaaggggacaaaacaaggagaggccaccacctgttcccaacccagactatgagcccatccggaaaggccagcgggacctgtattctggcctgaatcagagacgcatcaggagtaagaggagcaggctcctgcacagtgactacatgaacatgactccccgccgccccgggcccacccgcaagcattaccagccctatgccccaccacgcgacttcgcagcctatcgctccagagtgaagttcagcaggagcgcagacgcccccgcgtaccagcagggccagaaccagctctataacgagctcaatctaggacgaagagaggagtacgatgttttggacaagagacgtggccgggaccctgagatggggggaaagccgagaaggaagaaccctcaggaaggcctgtac
aatgaactgcagaaagataagatggcggaggcctacagtgagattgggatgaaaggcgagcgccggaggggcaaggggcacgatggcctttaccagggtctcagtacagccaccaaggacacctacgacgcccttcacatgcaggccctgccccctcgctaa
【0050】
SEQ ID NO:6(Anti-mesothelin E28Z CAR)は下記の通りである。
【0051】
MVSKGEELFTGVVPILVELDGDVNGHKFSVSGEGEGDATYGKLTLKFICTTGKLPVPWPTLVTTLTYGVQCFSRYPDHMKQHDFFKSAMPEGYVQERTIFFKDDGNYKTRAEVKFEGDTLVNRIELKGIDFKEDGNILGHKLEYNYNSHNVYIMADKQKNGIKVNFKIRHNIEDGSVQLADHYQQNTPIGDGPVLLPDNHYLSTQSALSKDPNEKRDHMVLLEFVTAAGITLGMDELYKGSGEGRGSLLTCGDVEENPGPMLLLVTSLLLCELPHPAFLLIPYPYDVPDYAQVQLQQSGPELEKPGASVKISCKASGYSFTGYTMNWVKQSHGKSLEWIGLITPYNGASSYNQKFRGKATLTVDKSSSTAYMDLLSLTSEDSAVYFCARGGYDGRGFDYWGQGTTVTVSSGGGGSGGGGSSGGGSDIELTQSPAIMSASPGEKVTMTCSASSSVSYMHWYQQKSGTSPKRWIYDTSKLASGVPGRFSGSGSGNSYSLTISSVEAEDDATYYCQQWSKHPLTYGAGTKLEIKAAAIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVKNRKAKAKPVTRGAGAGGRQRGQNKERPPPVPNPDYEPIRKGQRDLYSGLNQRRIRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR*
【0052】
SEQ ID NO:6(Anti-mesothelin E28Z CAR)に対応するヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:8(Anti-mesothelin E28Z CAR)である。SEQ ID NO:8は下記の通りである。
【0053】
ATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGCTGTTCACCGGGGTGGTGCCCATCCTGGTCGAGCTGGACGGCGACGTAAACGGCCACAAGTTCAGCGTGTCCGGCGAGGGCGAGGGCGATGCCACCTACGGCAAGCTGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCGGCAAGCTGCCCGTGCCCTGGCCCACCCTCGTGACCACCCTGACCTACGGCGTGCAGTGCTTCAGCCGCTACCCCGACCACATGAAGCAGCACGACTTCTTCAAGTCCGCCATGCCCGAAGGCTACGTCCAGGAGCGCACCATCTTCTTCAAGGACGACGGCAACTACAAGACCCGCGCCGAGGTGAAGTTCGAGGGCGACACCCTGGTGAACCGCATCGAGCTGAAGGGCATCGACTTCAAGGAGGACGGCAACATCCTGGGGCACAAGCTGGAGTACAACTACAACAGCCACAACGTCTATATCATGGCCGACAAGCAGAAGAACGGCATCAAGGTGAACTTCAAGATCCGCCACAACATCGAGGACGGCAGCGTGCAGCTCGCCGACCACTACCAGCAGAACACCCCCATCGGCGACGGCCCCGTGCTGCTGCCCGACAACCAC
TACCTGAGCACCCAGTCCGCCCTGAGCAAAGACCCCAACGAGAAGCGCGATCACATGGTCCTGCTGGAGTTCGTGACCGCCGCCGGGATCACTCTCGGCATGGACGAGCTGTACAAGGGAAGCGGAGAGGGCAGAGGAAGTCTGCTAACATGCGGTGACGTCGAGGAGAATCCTGGACCTatgcttctcctggtgacaagccttctgctctgtgagttaccacacccagcattcctcctgatcccaTACCCCTACGACGTGCCCGACTACGCCCAGGTACAACTGCAGCAGTCTGGGCCTGAGCTGGAGAAGCCTGGCGCTTCAGTGAAGATATCCTGCAAGGCTTCTGGTTACTCATTCACTGGCTACACCATGAACTGGGTGAAGCAGAGCCATGGAAAGAGCCTTGAGTGGATTGGACTTATTACTCCTTACAATGGTGCTTCTAGCTACAACCAGAAGTTCAGGGGCAAGGCCACATTAACTGTAGACAAGTCATCCAGCACAGCCTACATGGACCTCCTCAGTCTGACATCTGAAGACTCTGCAGTCTATTTCTGTGCAAGGGGGGGTTACGACGGGAGGGGTTTTGACTACTGGGGCCAAGGGACCACGGTCACCGTCTCCTCAGGTGGAGGCGGTTCAGGCGGCGGTGGCTCTAGCGGTGGTGGATCGGACATCGAGCTCACTCAGTCTCCAGCAATCATGTCTGCATCTCCAGGGGAGAAGGTCACCATGACCTGCAGTGCCAGCTCAAGTGTAAGTTACATGCACTGGTACCAGCAGAAGTCAGGCACCTCCCCCAAAAGATGGATTTATGACACATCCAAACTGGCTTCTGGAGTCCCAGGTCGCTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGAAACTCTTACTCTCTCACAATCAGCAGCGTGGAGGCTGAAGATGATGCAACTTATTACTGCCAGCAGTGGAGTAAGCACCCTCTCACGTACGGTGCTGGGACAAAGTTGGAAATCAAAgcggccgcaattgaagttatgtatcctcctccttacctagacaatgagaagagcaatggaaccattatccatgtgaaagggaaacacctttgtccaagtcccctatttcccggaccttctaagcccttttgggtgctggtggtggttgggggagtcctggcttgctatagcttgctagtaacagtggcctttattattttctgggtgaagaatagaaaggccaaggccaagcctgtgacacgaggagcgggtgctggcggcaggcaaaggggacaaaacaaggagaggccaccacctgttcccaacccagactatgagcccatccggaaaggccagcgggacctgtattctggcctgaatcagagacgcatcaggagtaagaggagcaggctcctgcacagtgactacatgaacatgactccccgccgccccgggcccacccgcaagcattaccagccctatgccccaccacgcgacttcgcagcctatcgctccagagtgaagttcagcaggagcgcagacgcccccgcgtaccagcagggccagaaccagctctataacgagctcaatctaggacgaagagaggagtacgatgttttggacaagagacgtggccgggaccctgagatggggggaaagccgagaaggaagaaccctcaggaaggcctgtacaatgaactgcagaaagataagatggcggaggcctacagtgagattgggatgaaaggcgagcgccggaggggcaaggggcacgatggcctttaccagggtctcagtacagccaccaaggacacctacgacgcccttcacatgcaggccctgccccctcgctaa
【0054】
本発明のキメラ抗原受容体を形成する上記各部分は、互いを直接連結してもよいし、リンカー配列を介して連結してもよい。リンカー配列は、当該分野において周知の抗体に適用されるリンカー配列とすればよく、例えば、G及びSを含むリンカー配列とする。通常、
リンカーは、前後で繰り返される1つ又は複数のモチーフを含む。例えば、当該モチーフは、GGGS、GGGGS、SSSSG、GSGSA及びGGSGGとすることができる。好ましくは、当該モチーフは、リンカー配列において隣接しており、繰り返し間にアミノ酸残基は挿入されない。リンカー配列は、1個、2個、3個、4個又は5個の繰り返しモチーフを含んで構成可能である。リンカーの長さは3~25個のアミノ酸残基とすることができ、例えば、3~15個、5~15個、10~20個のアミノ酸残基とする。いくつかの実施方案において、リンカー配列はポリグリシンリンカー配列である。リンカー配列中のグリシンの数に特に制限はなく、通常は2~20個とし、例えば、2~15個、2~10個、2~8個とする。グリシン及びセリン以外にも、リンカーは、その他の既知のアミノ酸残基(例えば、アラニン(A)、ロイシン(L)、トレオニン(T)、グルタミン酸(E)、フェニルアラニン(F)、アルギニン(R)、グルタミン(Q)等)を含み得る。
【0055】
理解すべき点として、遺伝子クローン操作では、適切な酵素切断部位の設計を要することが多い。その場合、発現するアミノ酸配列の末端に必然的に1つ又は複数の無関係な残基が導入されるが、これが標的配列の活性に影響することはない。また、融合タンパク質の作製、組換えタンパク質の発現促進、宿主細胞外に自動的に分泌される組換えタンパク質の取得、或いは組換えタンパク質の有利な精製のためには、組換えタンパク質のN-末端、C-末端又は当該タンパク質内のその他の適切な領域内(例えば、適切なリンカーペプチド、シグナルペプチド、リーダーペプチド、末端伸長等を含むが、これらに限らない)に何らかのアミノ酸を添加せねばならないことが多い。そのため、本発明の融合タンパク質(即ち、上記のCAR)のN末端又はC末端は、タンパク質タグとして、1つ又は複数のポリペプチドフラグメントを更に含んでもよい。本文では、任意の適切なタグをいずれも適用可能である。例えば、前記タグは、FLAG、HA、HA1、c-Myc、Poly-His、Poly-Arg、Strep-TagII、AU1、EE、T7、4A6、ε、B、gE及びTy1とすることができる。これらのタグは、タンパク質の精製に適用可能である。
【0056】
本発明で提供するポリヌクレオチド配列は、(1)請求項で記載するキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド配列と、(2)(1)で記載したポリヌクレオチド配列の相補的配列、から選択される。
【0057】
本発明のポリヌクレオチド配列は、DNA形式であってもよいし、RNA形式であってもよい。DNA形式は、cDNA、ゲノムDNA又は人工的に合成されたDNAを含む。DNAは、1本鎖であってもよいし、2本鎖であってもよい。DNAは、コード鎖であってもよいし、非コード鎖であってもよい。本発明は、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列の縮重バリアントも含む。即ち、同一のアミノ酸配列をコードするがヌクレオチド配列の一部が異なるヌクレオチド配列も含む。
【0058】
通常、本文中で記載するポリヌクレオチド配列はPCR増幅法で取得可能である。具体的には、本文中で開示するヌクレオチド配列(特に、オープンリーディングフレーム配列)に基づいてプライマーを設計し、市販のcDNAライブラリか、当業者にとって既知の一般的な方法で作製したcDNAライブラリを鋳型として用い、増幅することで関連の配列を取得する。配列が長い場合には、2回又は複数回のPCR増幅を行ったあと、各回で増幅した断片を正しい順序で連結せねばならないことが多い。
【0059】
本発明で提供する核酸構築物は、上記のポリヌクレオチド配列を含む。
【0060】
前記核酸構築物は、更に、上記のポリヌクレオチド配列に操作的に連結される1つ又は複数の調節配列を含む。本発明で記載するCARのコード配列は、前記タンパク質の発現を
保証するために、様々な方式で操作可能である。核酸構築物をベクターに挿入する前に、発現ベクターの違いや要求に応じて、核酸構築物を操作してもよい。組換えDNA手法を利用してポリヌクレオチド配列を改変する技術は、当該分野において既知である。
【0061】
調節配列は、適切なプロモーター配列とすることができる。通常、プロモーター配列は、発現されるタンパク質のコード配列に操作的に連結される。プロモーターは、選択された宿主細胞において転写活性を示すいずれのヌクレオチド配列としてもよく、突然変異したもの、切断されたもの、及び雑種プロモーターを含む。且つ、当該宿主細胞と同種又は異種の細胞外又は細胞内のポリペプチドをコードする遺伝子から取得可能である。
【0062】
調節配列は、適切な転写ターミネーター配列、つまり、宿主細胞により識別されることで転写を終結させる配列としてもよい。ターミネーター配列は、当該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の3’末端に操作的に連結される。選択された宿主細胞において機能を有するあらゆるターミネーターを本発明に適用可能である。
【0063】
調節配列は、宿主細胞の翻訳にとって重要なmRNAの非翻訳領域である適切なリーダー配列としてもよい。リーダー配列は、当該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の5’末端に操作可能に連結される。選択された宿主細胞において機能を有するあらゆるターミネーターを本発明に適用可能である。
【0064】
好ましくは、前記核酸構築物はベクターである。
【0065】
通常は、CARをコードするポリヌクレオチド配列を操作可能にプロモーターに連結し、構築物を発現ベクターに組み込むことで、CARをコードするポリヌクレオチド配列の発現を実現する。当該ベクターは、真核細胞の複製及び統合にとって適切となり得る。代表的なクローニングベクターは、所望の核酸配列の発現を調節可能な転写及び翻訳のターミネーター、開始配列及びプロモーターを含む。
【0066】
本発明のCARをコードするポリヌクレオチド配列は、数多くのタイプのベクターにクローニング可能である。例えば、プラスミド、バクテリオファージ、ファージ誘導体、動物ウイルス及びコスミドにクローニング可能である。更に、ベクターは発現ベクターである。発現ベクターは、ウイルスベクター形式で細胞に提供可能である。ウイルスベクター技術は当該分野において公知である。ベクターとして用い得るウイルスには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス及びレンチウイルスが含まれる(ただし、これらに限らない)。通常、適切なベクターには、少なくとも1つの有機体において役割を発揮する複製起点、プロモーター配列、便利な制限酵素部位、及び1つ又は複数の選択可能なマーカーが含まれる。
【0067】
より好ましくは、前記核酸構築物はレンチウイルスベクターであって、複製起点、3’LTR、5’LTR及び前記ポリヌクレオチド配列を含む。
【0068】
適切なプロモーターの一例としては、最初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列が挙げられる。当該プロモーター配列は、自身に操作可能に連結される任意のポリヌクレオチド配列を高水準で発現可能とする強い構成型プロモーター配列である。適切なプロモーターの別の例としては、伸長因子-1α(EF-1α)が挙げられる。ただし、シミアンウイルス40(SV40)の初期プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の長い末端反復(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、EBウイルスの最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、及びヒト遺伝子プロモーター(例えば、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘムプロモーター及びクレアチンキナーゼプロモ
ーター。ただし、これらに限らない)を含む(ただし、上記に限らない)その他の構成型プロモーター配列を使用してもよい。更に、誘導型プロモーターの使用を検討してもよい。誘導型プロモーターを使用することで分子スイッチが提供される。分子スイッチは、一過性発現時において、誘導型プロモーターに操作可能に連結されているポリヌクレオチド配列の発現をオンとすることができ、発現を期待しない場合には発現をオフとする。誘導型プロモーターの例には、メタロチオネインプロモーター、糖質コルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター及びテトラサイクリンプロモーターが含まれる(ただし、これらに限らない)。
【0069】
CARのポリペプチド又はその部分の発現を評価するために、細胞に導入される発現ベクターは、選択可能なマーカー遺伝子又はレポーター遺伝子うちのいずれか一方又は双方を含んでもよい。このことは、ウイルスベクターによってトランスフェクション又は感染を試みた細胞群から発現細胞を鑑定及び選択するのに都合がよい。他方で、選択可能なマーカーは、単独のDNA断片に保持されてコトランスフェクション手順に使用することが可能である。選択可能なマーカー及びレポーター遺伝子の双方のフランキングは、宿主細胞内で発現可能となるよう、いずれも適切な調節配列を有し得る。有効な選択可能なマーカーには、例えばneoなどの抗生物質耐性遺伝子が含まれる。
【0070】
レポーター遺伝子は、潜在的にトランスフェクションされた細胞の鑑定に用いられるとともに、調節配列の機能性評価にも用いられる。DNAが受容細胞に導入されたあと、レポーター遺伝子の発現が適切なタイミングで測定される。適切なレポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターゼ又は緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードする遺伝子が含まれ得る。また、適切な発現システムは、公知且つ既知の技術で作製可能であるか、商業的に取得される。
【0071】
遺伝子を細胞に導入する方法及び遺伝子を細胞に発現させる方法は、当該分野において既知である。ベクターは、当該分野における任意の方法で容易に宿主細胞(例えば、哺乳動物、細菌、酵母又は昆虫の細胞)に導入可能である。例えば、発現ベクターは、物理、化学又は生物学的手段で宿主細胞に導入可能である。
【0072】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する物理的方法には、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝撃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション等が含まれる。また、興味のあるポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する生物学的方法には、DNA及びRNAベクターを使用する方法が含まれる。また、ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する化学的手段には、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズといったコロイド分散系や、水中油型乳剤、ミセル、混合ミセル及びリポソームを含む脂質ベースのシステムが含まれる。
【0073】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する生物学的方法には、ウイルスベクター(特に、レンチウイルスベクター)を使用する方法が含まれる。これは、遺伝子を哺乳動物(例えば、ヒト)の細胞に導入するための最も汎用的な方法となっている。その他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI型、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス等から入手可能である。遺伝子を哺乳動物の細胞に導入するための数多くのウイルスベースのシステムがすでに開発されており、例えば、レンチウイルスによって、遺伝子導入システムに用いられる便利なプラットフォームが提供されている。当該分野において既知の技術を用いれば、選択した遺伝子をベクターに導入し、レンチウイルス粒子にパッケージングすることが可能である。当該組換えウイルスは、その後分離して体内又は体外の対象細胞に導入可能となる。当該分野では、数多くのレトロウイルスシステムが知られている。また、いくつかの実施方案では、アデノウイルスベクターを
使用する。当該分野では、数多くのアデノウイルスベクターが知られている。また、一実施方案では、レンチウイルスベクターを使用する。
【0074】
本発明は、レンチウイルスベクターシステムを提供する。前記レンチウイルスベクターシステムは、上述した核酸構築物及びレンチウイルスベクターの補助成分を含む。
【0075】
前記レンチウイルスの補助成分は、レンチウイルスパッケージングプラスミドと細胞株を含む。
【0076】
前記レンチウイルスベクターシステムは、レンチウイルスパッケージングプラスミド及び細胞株の補助のもと、前記核酸構築物がウイルスパッケージングされてなる。前記レンチウイルスベクターシステムの構築方法は、当該分野において常用される方法である。
【0077】
本発明は、T細胞の体外活性化方法を提供する。前記方法は、前記レンチウイルスを使用して前記T細胞を感染させるステップを含む。
【0078】
本発明のCAR-T細胞は、安定的な体内でのT細胞の増殖と、血液及び骨髄における高水準での持続的延長時間を経て、特異的メモリーT細胞を形成可能である。代替抗原を発現する標的細胞に遭遇し、その後これが除去された場合、本発明のCAR-T細胞は、体内でセントラルメモリー様状態に分化可能である。
【0079】
本発明は、更に、細胞療法を含む。当該細胞療法において、T細胞は本文中で記載するCARを発現するよう遺伝子組換えがなされる。また、CAR-T細胞は、これを必要とする適用者に注入される。注入された細胞は、適用者の腫瘍細胞を殺傷可能である。抗体療法とは異なり、CAR-T細胞は体内で複製可能であって、持続的に腫瘍を制御可能な長期持続性を発揮する。
【0080】
CAR-T細胞に起因する抗腫瘍免疫反応は、能動的又は受動的な免疫反応である。このほか、CARにより誘導される免疫反応は、養子免疫細胞療法のステップの一部分となり得る。CAR-T細胞は、CARの抗原結合部分について特異的な免疫反応を誘導する。
【0081】
治療可能な癌は、血液腫瘍(例えば、白血病やリンパ腫)のような非固形腫瘍とすることができる。特に、本発明のCAR、そのコード配列、核酸構築物、発現ベクター、ウイルス及びCAR-T細胞を用いて治療可能な疾病は、好ましくはCD19誘導性の疾病であり、特にCD19誘導性の血液腫瘍である。
【0082】
具体的に、本文中の「CD19誘導性の疾病」には、例えば、B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、ヘアリー細胞白血病及び急性骨髄性白血病といった白血病及びリンパ腫が含まれる(ただし、これらに限らない)。
【0083】
本発明は、遺伝子組換えT細胞、又は当該遺伝子組換えT細胞を含む薬物組成物を提供する。前記細胞は、前記ポリヌクレオチド配列を含むか、前記核酸構築物を含むか、前記レンチウイルスベクターシステムに感染している。
【0084】
本発明のCAR-修飾T細胞は、単独で投与してもよいし、薬物組成物として、希釈剤及び/又はその他の成分(例えば、関連のサイトカイン又は細胞群)と組み合わせて投与してもよい。簡単に言うと、本発明の薬物組成物には、本文中で記載したCAR-T細胞と、1又は複数種類の薬学的又は生理学的に許容可能なベクター、希釈剤又は賦形剤の組み合わせが含まれ得る。このような組成物には、緩衝液(例えば、中性緩衝生理食塩水、硫酸塩緩衝生理食塩水等)、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、ショ糖又はデキ
ストラン、マンニトール)、タンパク質、ポリペプチド又はアミノ酸(例えばグリシン)、抗酸化剤、キレート剤(例えば、EDTA又はグルタチオン)、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、及び防腐剤が含まれ得る。
【0085】
本発明の薬物組成物は、治療(又は予防)対象の疾病に適した方式で投与される。投与の数量及び頻度は、例えば、患者の病症、患者の疾病タイプ及び深刻度といった要素から決定する。
【0086】
「免疫学的有効量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍-抑制有効量」又は「治療量」を示す場合、投与される本発明の組成物の正確な量は医師により決定可能である。その際には、患者(対象)の年齢、体重、腫瘍の大きさ、感染又は転移の程度及び病症の個体差が考慮される。通常、本文中で記載するT細胞を含む薬物組成物の投与量は、10~10細胞/kg(体重)、好ましくは、10~10細胞/kg(体重)とすることができる。T細胞組成物は、これらの投与量で複数回投与してもよい。細胞は、免疫療法において公知の注入技術で投与可能である。具体的な患者に対する最適な投与量及び治療プランについては、医療分野の技術者であれば、患者の疾病の兆候を観察し、それにより治療を調節することで容易に決定可能である。
【0087】
対象組成物の投与は、噴霧法、注射、内服、点滴、埋め込み又は移植を含む任意の容易な方式で実施可能である。本文中で記載する組成物は、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、脊髄内、筋肉内、静脈内注射又は腹膜内注射によって患者に投与可能である。一実施方案において、本発明のT細胞組成物は、皮内又は皮下注射によって患者に投与する。他の実施方案において、本発明のT細胞組成物は、好ましくは静脈注射によって投与する。また、T細胞組成物は、腫瘍、リンパ節又は感染部位に直接注入可能である。
【0088】
本発明のいくつかの実施方案において、本発明のCAR-T細胞又はその組成物は、当該分野において既知のその他の治療法と組み合わせ可能である。前記治療法には、化学療法、放射線治療及び免疫抑制剤が含まれる(ただし、これらに限らない)。例えば、各種の放射線治療製剤を組み合わせて治療することが可能である。これらの放射線治療製剤には、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、FK506、フルダラビン、ラパマイシン及びミコフェノール酸等が含まれる。更なる実施方案において、本発明の細胞組成物は、骨髄移植や、化学療法薬(例えば、フルダラビン)、放射線外部照射療法(XRT)、シクロホスファミド又は抗体(例えば、OKT3又はCAMPATH)を利用したT細胞アブレーション療法と組み合わせて(例えば、事前、同時又は事後)患者に投与する。
【0089】
本文中の「抗腫瘍効果」とは生物学的な効果を意味し、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、転移数の減少、推定寿命の延長又は癌関連の各種生理的症状の改善によって示すことができる。
【0090】
「患者」、「対象」「個体」等は、本文中で互換的に使用可能であり、免疫反応を発生させ得る生体有機体(例えば、哺乳動物)を意味する。これには、例えば、ヒト、犬、猫、マウス、ラット及びその遺伝子組換え種が含まれる(ただし、これらに限らない)。
【0091】
前記キメラ抗原受容体、前記ポリヌクレオチド配列、前記核酸構築物、前記レンチウイルスベクターシステムは、(1)T細胞の作製、(2)T細胞からのサイトカインIFN-γ、IL-2、TNFの分泌阻害、(3)T細胞アポトーシスの阻害、(5)T細胞の増殖能力の強化、(6)T細胞の殺傷能力の向上、(7)GrzBの産生促進、(8)脱顆粒の促進、のうちのいずれか1つ又は複数の用途の製品の製造に使用される。
【0092】
前記キメラ抗原受容体、前記ポリヌクレオチド配列、前記核酸構築物、前記レンチウイルスベクターシステム又は前記遺伝子組換えT細胞は、(1)腫瘍の治療、(3)腫瘍治療時に発生するサイトカインストームの阻害、(4)腫瘍治療時に発生する神経毒性の阻害、のうちのいずれか1つ又は複数の用途の製品の製造に使用される。
【0093】
好ましくは、前記腫瘍は、白血病又は固形腫瘍のうちの1つ又は複数から選択される。
【0094】
より好ましくは、前記腫瘍は、B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、ヘアリー細胞白血病及び急性骨髄性白血病から選択される。
【0095】
以下に、特定の具体的実施例を通じて、本発明の実施形態につき説明する。なお、当業者であれば、本明細書で開示する内容から本発明のその他の利点及び効果を容易に理解可能である。更に、本発明は、その他の異なる具体的実施形態によっても実施又は応用可能である。また、本明細書の各詳細は、異なる視点及び応用に基づき、本発明の精神を逸脱しないことを前提に各種の補足又は変更が可能である。
【0096】
本発明の具体的実施形態について更に記載する前に、理解すべき点として、本発明の保護の範囲は後述する特定の具体的実施方案に限らない。更に、理解すべき点として、本発明の実施例で使用する用語は特定の具体的実施方案を記載するためのものであって、本発明の保護の範囲を制限するためのものではない。また、本発明の明細書及び特許請求の範囲では、本文中で別途明示している場合を除き、「1つ」、「一の」及び「この」といった単数形には複数形が含まれる。
【0097】
実施例で数値範囲を示している場合には、本発明において別途説明している場合を除き、各数値範囲の2つの端点及び2つの端点間の任意の数値をいずれも選択可能であると解釈すべきである。また、別途定義している場合を除き、本発明で使用するあらゆる技術及び科学用語は、当業者により一般的に理解される意味と同義である。また、実施例で使用している具体的方法、デバイス、材料のほかに、当業者による従来技術の理解及び本発明の記載に基づいて、本発明の実施例で述べる方法、デバイス、材料と類似又は同等の従来技術における任意の方法、デバイス及び材料を用いて本発明を実現してもよい。
【0098】
別途説明している場合を除き、本発明で開示する実験方法、検出方法、作製方法には、いずれも当該分野において一般的な分子生物学、生化学、クロマチン構造及び分析、分析化学、細胞培養、組換えDNA技術及び関連分野における一般的技術を用いている。
【実施例1】
【0099】
anti-CD19 28Z CARの配列は、Rosenberg,S.A.実験室がNCBIで共有した配列を参照した。我々はこれをベースに、遺伝子合成技術を利用して、CD3ε細胞内領域全体をCD28TM膜貫通ドメインの後方に挿入して新型のCARを構築し、E28Zと命名した。
【0100】
anti-CD19 E28Z CARの配列はSEQ ID NO:7に示す通りであり、具体的には以下の通りである。
【0101】
ATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGCTGTTCACCGGGGTGGTGCCCATCCTGGTCGAGCTGGACGGCGACGTAAACGGCCACAAGTTCAGCGTGTCCGGCGAGGGCGAGGGCGATGCCACCTACGGCAAGCTGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCGGCAAGCTGCCCGTGCCCTGGCCCACCCTCGTGACCACCCTGACCTACGGCGTGCAGTGCTTCAGCCGCTACCCCGACCACATGAAG
CAGCACGACTTCTTCAAGTCCGCCATGCCCGAAGGCTACGTCCAGGAGCGCACCATCTTCTTCAAGGACGACGGCAACTACAAGACCCGCGCCGAGGTGAAGTTCGAGGGCGACACCCTGGTGAACCGCATCGAGCTGAAGGGCATCGACTTCAAGGAGGACGGCAACATCCTGGGGCACAAGCTGGAGTACAACTACAACAGCCACAACGTCTATATCATGGCCGACAAGCAGAAGAACGGCATCAAGGTGAACTTCAAGATCCGCCACAACATCGAGGACGGCAGCGTGCAGCTCGCCGACCACTACCAGCAGAACACCCCCATCGGCGACGGCCCCGTGCTGCTGCCCGACAACCACTACCTGAGCACCCAGTCCGCCCTGAGCAAAGACCCCAACGAGAAGCGCGATCACATGGTCCTGCTGGAGTTCGTGACCGCCGCCGGGATCACTCTCGGCATGGACGAGCTGTACAAGGGAAGCGGAGAGGGCAGAGGAAGTCTGCTAACATGCGGTGACGTCGAGGAGAATCCTGGACCTatgcttctcctggtgacaagccttctgctctgtgagttaccacacccagcattcctcctgatcccaTACCCCTACGACGTGCCCGACTACGCCgacatccagatgacacagactacatcctccctgtctgcctctctgggagacagagtcaccatcagttgcagggcaagtcaggacattagtaaatatttaaattggtatcagcagaaaccagatggaactgttaaactcctgatctaccatacatcaagattacactcaggagtcccatcaaggttcagtggcagtgggtctggaacagattattctctcaccattagcaacctggagcaagaagatattgccacttacttttgccaacagggtaatacgcttccgtacacgttcggaggggggactaagttggaaataacaggctccacctctggatccggcaagcccggatctggcgagggatccaccaagggcgaggtgaaactgcaggagtcaggacctggcctggtggcgccctcacagagcctgtccgtcacatgcactgtctcaggggtctcattacccgactatggtgtaagctggattcgccagcctccacgaaagggtctggagtggctgggagtaatatggggtagtgaaaccacatactataattcagctctcaaatccagactgaccatcatcaaggacaactccaagagccaagttttcttaaaaatgaacagtctgcaaactgatgacacagccatttactactgtgccaaacattattactacggtggtagctatgctatggactactggggtcaaggaacctcagtcaccgtctcctcagcggccgcaattgaagttatgtatcctcctccttacctagacaatgagaagagcaatggaaccattatccatgtgaaagggaaacacctttgtccaagtcccctatttcccggaccttctaagcccttttgggtgctggtggtggttgggggagtcctggcttgctatagcttgctagtaacagtggcctttattattttctgggtgaagaatagaaaggccaaggccaagcctgtgacacgaggagcgggtgctggcggcaggcaaaggggacaaaacaaggagaggccaccacctgttcccaacccagactatgagcccatccggaaaggccagcgggacctgtattctggcctgaatcagagacgcatcaggagtaagaggagcaggctcctgcacagtgactacatgaacatgactccccgccgccccgggcccacccgcaagcattaccagccctatgccccaccacgcgacttcgcagcctatcgctccagagtgaagttcagcaggagcgcagacgcccccgcgtaccagcagggccagaaccagctctataacgagctcaatctaggacgaagagaggagtacgatgttttggacaagagacgtggccgggaccctgagatggg
gggaaagccgagaaggaagaaccctcaggaaggcctgtacaatgaactgcagaaagataagatggcggaggcctacagtgagattgggatgaaaggcgagcgccggaggggcaaggggcacgatggcctttaccagggtctcagtacagccaccaaggacacctacgacgcccttcacatgcaggccctgccccctcgctaa
【0102】
CARをレンチウイルス発現プラスミドpHAGEベクターにサブクローニングし、CAR発現プラスミドとパッケージングプラスミドpSPAX2及びpMD2Gをそれぞれ10:7.5:3.5の割合で混合したあと、リン酸カルシウムトランスフェクション手法で293FT細胞に導入し、レンチウイルス粒子を生成した。次に、超高速遠心分離手法を用い、28Z CAR又はE28Z CARをそれぞれ発現したレンチウイルスを濃縮して小体積・高力価ウイルス(~10^8/ml)としたあと、αCD3/αCD28 Ab-beadsで1日活性化した初代T細胞(MOI=10)にそれぞれトランスフェクションした。T細胞完全培地(XIVO-15+1%P.S.+10ng/ml human IL-7+10ng/ml human IL-15+10mM+5%Human AB serum,10mM neutralized NAC)を用いた初代T細胞の培養期間は、ウイルスを1日トランスフェクションしたあと除去した。そして、抗体で4日間刺激したあとこれも除去し、抗体での刺激から5日目に、CAR発現量が同様のCAR-T細胞を分別した。次に、一定時間増幅したあと、CARの膜上レベル、CD4とCD8のサブセット割合、インビトロでのサイトカイン分泌、インビトロでの殺傷能力、インビトロでの増殖能力、インビトロでのアポトーシスレベル、インビトロでの生存継続能力、及びインビボでの抗腫瘍効果等の一連の指標鑑定をCAR-Tについて行った。
【0103】
CD19を標的とする28Z CAR及びE28Z CARの構造は図1:aに示す通りである。
【0104】
Alexa Fluor647結合anti-mouse FM63 scFv抗体を用いて、28Z CAR-T及びE28Z CAR-T細胞膜表面におけるCARレベルをフローサイトメトリー測定した。フローサイトメトリーグラフの結果を図1:bに示す。グラフより、両者のCAR陽性率及び発現量(MFI)に差は見られなかった。
【0105】
anti-human CD4-APC及びanti-human CD8-PE-Cy7抗体を用いて、28Z CAR-T及びE28Z CAR-T細胞につきフローサイトメトリー測定を行った。フローサイトメトリーグラフの結果を図1:cに示す。グラフより、両者のCD4CAR-T細胞及びCD8CAR-T細胞の割合は類似していた。
【0106】
CAR-T細胞とCD19リンパ腫細胞株Rajiを1:1の割合で混合し、4℃で遠心分離して細胞間の接触を促進させた。これを37℃のウォーターバスに入れて計時し、一連のタイミングでLDSサンプルバッファを用いて反応を停止させたあと、anti-pCD3ζ(p142)抗体を用いてウエスタンブロッティング検出を行った。結果は図1:dに示す通りであった。図中のpCD3ζバンドから明らかなように、E28Zは、0min(即ち、CD19抗原に未遭遇)時のバックグラウンドにおけるpCD3ζリン酸化レベルが28Z CAR-T細胞よりも明らかに高かった。且つ、CD19抗原で特異的に刺激したあと、pCD3ζのリン酸化は上昇後に低下した。また、pCD3ζのリン酸化後期の低下速度は、E28Zの方が28Z CAR-T細胞よりも明らかに速かった。
【0107】
10万個のCAR-T細胞とCD19リンパ腫細胞株Rajiを1:1の割合で1.5ml EPチューブにて混合したあと、室温で遠心分離(400g、1min)にかけて
細胞間の接触を促進させた。次に、完全培地を用い、37℃のインキュベーター内で培養し、一連のタイミングで冷却PBSによりCARのエンドサイトーシス反応を停止させた。その後、サンプルを回収して氷上に載置し、冷却PBSで1回洗浄した。そして、Alexa Fluor647結合anti-mouse FM63 scFv抗体を用いて染色し(4℃、30min)、28Z CAR-T及びE28Z CAR-T細胞膜上のCARのレベルをフローサイトメトリー測定した。結果は図1:eに示す通りであった。図より、28Z及びE28Z CARの膜上レベルは、急激に低下したあとゆっくりと回復し、上昇した。そのうち、28Z CARの膜上レベルはE28Z CARよりも低下が速く、その後の回復及び上昇も明らかにE28Z CARより速かった。
【0108】
10万個のCAR-T細胞とCD19リンパ腫細胞株Rajiを1:1の割合で丸底の96ウェルマイクロプレートに移植し、均一に混合したあと、室温で遠心分離(400g、1min)にかけて細胞間の接触を促進させた。次に、完全培地を用い、37℃のインキュベーター内で1日培養してからサンプルを回収した。また、サンプル回収の6時間前に1×BFAを加えてサイトカインの放出を阻害し、サンプル回収後にPBSでサンプルを1回洗浄した。その後、4%PFAを用いて室温で5min固定し、0.1%トリトンX-100を用いて室温で5min穿孔した。そして、通常の操作に従って細胞内染色を行い、IL-2、IFN-γ、TNF-αを検出した。結果は図1:f~hに示す通りであった。図より、E28Z CAR-T細胞は、CD19細胞による特異的刺激後に産生したサイトカインIL-2、IFN-γ、TNF-αがいずれも28Z CAR-T細胞よりも明らかに少なかった。
【0109】
図1dと図1eを組み合わせることで、E28Z CARのpCD3ζリン酸化レベルの低下が速かったのは、CARの膜上レベルのダウンレギュレーションが原因ではないことが説明される。なぜなら、CD19で特異的に刺激したあとの28Z CARの膜上レベルは、反対にE28Z CARよりも低下が速かったからである。
【0110】
10万個のCAR-T細胞とCD19リンパ腫細胞株Rajiを1:1の割合で丸底の96ウェルマイクロプレートに移植し、均一に混合したあと、室温で遠心分離(400g、1min)にかけて細胞間の接触を促進させた。次に、完全培地を用い、37℃のインキュベーター内で2h、4h培養した。このとき、完全培地には、anti-human
CD107a-eFluor660抗体及び1×モネンシン(anti-human CD107a抗体のエンドサイトーシスによる分解を防止する)を更に加えた。サンプル回収時には、冷却PBSを用いて反応を停止させ、PBSで1回洗浄したあとフローサイトメトリー測定を行った。結果は図1:iに示す通りであった。図より、E28Z CAR-T細胞は、CD19抗原による特異的刺激後の脱顆粒反応速度が28Z CAR-T細胞よりも明らかに速かった。
【0111】
10万個のCAR-T細胞とCD19リンパ腫細胞株Rajiを1:1の割合で丸底の96ウェルマイクロプレートに移植し、均一に混合したあと、室温で遠心分離(400g、1min)にかけて細胞間の接触を促進させた。次に、完全培地を用い、37℃のインキュベーター内で1日培養してからサンプルを回収した。また、サンプル回収の6時間前に1×BFAを加えてグランザイムの放出を阻害し、サンプル回収後にPBSでサンプルを1回洗浄した。その後、4%PFAを用いて室温で5min固定し、0.1%トリトンX-100を用いて室温で5min穿孔した。そして、通常の操作に従って細胞内染色を行い、グランザイム(Granzyme B)を検出した。結果は図1:jに示す通りであった。図より、E28Z CAR-T細胞は、CD19細胞による特異的刺激後に産生したグランザイム(Granzyme B)が28Z CAR-T細胞よりも明らかに多かった。
【0112】
anti-CD19 28Z及びE28Z CAR-Tは、CD19腫瘍細胞に対して毒性反応を示す。そこで、CD19K562細胞を1640無血清培地に再懸濁したあと、1×CellTraker deep red dyeで予め染色した(37°ウォーターバス、30min)。続いて、1640無血清培地を1回洗浄し、T細胞完全培地を用いて再懸濁したあと、CD19K562_CD19(IRES mCherry)細胞と1:1で混合して標的細胞とした。そして、CAR-T細胞を当該混合型標的細胞と3:1、1:1、1:3の割合で混合し、丸底の96ウェルマイクロプレートにプレーティングして均一に混合したあと、室温で遠心分離(400g、1min)にかけて細胞間の接触を促進させた。次に、完全培地を用い、37℃のインキュベーター内で1日培養してからサンプルを回収し、氷上に載置した。そして、CD19K562細胞(APC、mCherry)のパーセンテージとCD19K562_CD19細胞(APC、mCherry)のパーセンテージの変化をフローサイトメトリー測定し、実験群の「CD19K562細胞(APC、mCherry)のパーセンテージ/CD19K562_CD19細胞(APC、mCherry)のパーセンテージ」をNとした。N値は、CAR-T細胞を添加していない混合型標的細胞サンプルウェルの「N=CD19K562細胞(APC、mCherry)のパーセンテージ/CD19K562_CD19細胞(APC、mCherry)のパーセンテージ」を基準としたあと、生存割合N/Nを算出した。即ち、殺傷率の式は「Lysis(%)=1-N/N」とした。結果は図1:kに示す通りであった。図より、CD19腫瘍細胞に対するanti-CD19 E28Z CAR-Tの毒性は、28Z CAR-T細胞よりも大きかった。
【0113】
10万個のCAR-T細胞とCD19リンパ腫細胞株Rajiを1:1の割合で丸底の96ウェルマイクロプレートに移植し、均一に混合したあと、室温で遠心分離(400g、1min)にかけて細胞間の接触を促進させた。次に、完全培地を用い、37℃のインキュベーター内で一定時間培養した。続いて、異なるタイミングでサンプルを回収したあとPBSでサンプルを1回洗浄し、Foxp3/Transcription Factor Staining Buffer Set試薬キットの説明書に従い操作して、anti-human Ki67-APC抗体により染色してから、Ki67の発現量をフローサイトメトリー測定した。結果は図1:lに示す通りであった。anti-CD19 E28Z CAR-Tは、CD19Raji細胞で刺激したあと、一定時間は終始28Z CAR-Tよりも急速に増殖を続けた。
【0114】
10万個のCAR-T細胞とCD19リンパ腫細胞株Rajiを1:1の割合で丸底の96ウェルマイクロプレートに移植し、均一に混合したあと、室温で遠心分離(400g、1min)にかけて細胞間の接触を促進させた。次に、完全培地を用い、37℃のインキュベーター内で一定時間培養した。続いて、異なるタイミングでサンプルを回収したあとPBSでサンプルを1回洗浄し、Annexin V Apoptosis Detection Kit APC試薬キットの説明書に従って染色してから、CAR-T細胞におけるアネキシンV(Annexin V)の発現レベルをフローサイトメトリー測定した。結果は図1:mに示す通りであった。図より、anti-CD19 E28Z CAR-Tは、CD19Raji細胞で刺激したあとのアポトーシスレベルが、一定時間は終始28Z CAR-Tよりも明らかに低いままであった。
【0115】
10万個のCAR-T細胞とCD19リンパ腫細胞株Rajiを1:1の割合で丸底の96ウェルマイクロプレートに移植し、均一に混合したあと、室温で遠心分離(400g、1min)にかけて細胞間の接触を促進させた。次に、完全培地を用い、37℃のインキュベーター内で一定時間培養した。続いて、異なるタイミングでサンプルを回収したあとPBSでサンプルを1回洗浄し、anti-human CD4-APC及びanti-human CD8-PE-Cy7抗体により染色して、CART細胞の生存数を検
出した。結果は図1:nに示す通りであった。図より、anti-CD19 E28Z CAR-Tは、CD19Raji細胞で刺激したあとの生存数が28Z CAR-Tよりも明らかに多かった。
【0116】
10万個のCAR-T細胞とCD19リンパ腫細胞株Rajiを1:1の割合で丸底の96ウェルマイクロプレートに移植し、均一に混合したあと、室温で遠心分離(400g、1min)にかけて細胞間の接触を促進させた。次に、完全培地を用い、37℃のインキュベーター内で一定時間培養した。続いて、異なるタイミングでサンプルを回収したあとPBSでサンプルを1回洗浄し、anti-human PD-1-APC及びanti-human TIM3-PE抗体により染色して、CART細胞のPD-1及びTIM3の発現状況を検出した。結果を図1:o~pに示す。図より、anti-CD19
E28Z CAR-Tは、CD19Raji細胞で刺激したあとのPD-1及びTIM3の発現状況が、7日後に28Z CAR-Tよりも低くなった。これは、バックグラウンドに強いpCD3ζリン酸化レベルを有していたとしても(図1d)、E28Z CARがT細胞のexhaustion状態を引き起こさなかったことを意味している。
【0117】
無菌操作により、3×10^7/mlのRaji細胞-PBS再懸濁液を準備した。そして、6週齢の各B-NDG雌マウスの左側背部に100μl・3百万個のRaji細胞を皮下移植し、この時点をday0とした。6日後に、Raji皮下腫瘍が直径7~8mmまで成長した時点でマウスをランダムに群分けし、各マウスの尾静脈に100μl・8百万個のCAR-T細胞を注射した。モデルについては図1:qを参照する。その後、定期的にノギスで腫瘍の大きさを測定し、データを記録した。また、腫瘍面積=長さ×広さとした。結果を図1:rに示す。結果から明らかなように、vector対照群のマウスは腫瘍の成長が最も速く、その次が28Z群であった。また、治療効果が最も良好だったのはE28Z群であり、E28Z群の治療効果は明らかに28Z群よりも高かった。
【実施例2】
【0118】
図2:aに示すように、CD19を標的とする28Z CAR及びE28Z CARのFMC63 scFv(anti-CD19)配列を、順にSS1 scFv(anti-mesothelin)に入れ替えた。即ち、それぞれ、メソテリンを標的とする28Z CAR及びE28Z CARとなった。
【0119】
一次抗体Rat anti-HA及び二次抗体goat anti-Rat IgG-Alexa Fluor647抗体を用い、28Z及びE28Z CAR-T細胞膜表面におけるCARレベルをフローサイトメトリー測定した。フローサイトメトリーグラフの結果を図2:bに示す。グラフより、両者のCAR陽性率及び発現量(MFI)に差は見られなかった。
【0120】
anti-human CD4-APC及びanti-human CD8-PE-Cy7抗体を用いて、anti-mesothelin 28Z CAR-T及びE28Z CAR-T細胞につきフローサイトメトリー測定を行った。フローサイトメトリーグラフの結果を図2:cに示す。グラフより、両者のCD4CAR-T細胞及びCD8CAR-T細胞の割合は類似していた。
【0121】
10万個のanti-mesothelin CAR-T細胞とメソテリンを過剰発現したK562-Mesothelin細胞株を1:1の割合で丸底の96ウェルマイクロプレートに移植し、均一に混合したあと、室温で遠心分離(400g、1min)にかけて細胞間の接触を促進させた。次に、完全培地を用い、37℃のインキュベーター内で1日培養してからサンプルを回収した。また、サンプル回収の6時間前に1×BFAを加えてサイトカインの放出を阻害し、サンプル回収後にPBSでサンプルを1回洗浄した。その
後、4%PFAを用いて室温で5min固定し、0.1%トリトンX-100を用いて室温で5min穿孔した。そして、通常の操作に従って細胞内染色を行い、IL-2、IFN-γ、TNF-αを検出した。結果を図2:d~fに示す。図より、anti-mesothelin E28Z CAR-T細胞は、K562-Mesothelin細胞による特異的刺激後に産生したサイトカインIL-2、IFN-γ、TNF-αがいずれもanti-mesothelin 28Z CAR-T細胞よりも明らかに少なかった。
【0122】
10万個のCAR-T細胞とメソテリンを過剰発現したK562-Mesothelin細胞株を1:1の割合で丸底の96ウェルマイクロプレートに移植し、均一に混合したあと、室温で遠心分離(400g、1min)にかけて細胞間の接触を促進させた。次に、完全培地を用い、37℃のインキュベーター内で一定時間培養した。続いて、異なるタイミングでサンプルを回収したあとPBSでサンプルを1回洗浄し、Annexin V Apoptosis Detection Kit APC試薬キットの説明書に従って染色してから、CAR-T細胞におけるアネキシンV(Annexin V)の発現レベルをフローサイトメトリー測定した。結果を図2:gに示す。anti-mesothelin E28Z CAR-Tは、K562-Mesothelin細胞株で刺激したあとのアポトーシスレベルが、一定時間は終始anti-mesothelin 28Z CAR-Tよりも明らかに低いままであった。
【0123】
10万個のCAR-T細胞とメソテリンを過剰発現したK562-Mesothelin細胞株を1:1の割合で丸底の96ウェルマイクロプレートに移植し、均一に混合したあと、室温で遠心分離(400g、1min)にかけて細胞間の接触を促進させた。次に、完全培地を用い、37℃のインキュベーター内で一定時間培養した。続いて、異なるタイミングでサンプルを回収したあとPBSでサンプルを1回洗浄し、anti-human
CD4-APC及びanti-human CD8-PE-Cy7抗体により染色して、CART細胞の生存数を検出した。結果を図2:hに示す。図より、anti-mesothelin E28Z CAR-Tは、K562-Mesothelin細胞株で刺激したあとの生存数が28Z CAR-Tよりも明らかに多かった。
【0124】
mesothelinK562細胞を1640無血清培地に再懸濁したあと、1×CellTraker deep red dyeで予め染色した(37°ウォーターバス、30min)。続いて、1640無血清培地を1回洗浄し、T細胞完全培地を用いて再懸濁したあと、mesothelinK562_mesothelin(IRES mCherry)細胞と1:1で混合して標的細胞とした。そして、CAR-T細胞を当該混合型標的細胞と3:1、1:1、1:3の割合で混合し、丸底の96ウェルマイクロプレートにプレーティングして均一に混合したあと、室温で遠心分離(400g、1min)にかけて細胞間の接触を促進させた。次に、完全培地を用い、37℃のインキュベーター内で1日培養してからサンプルを回収し、氷上に載置した。そして、mesothelinK562細胞(APC、mCherry)のパーセンテージとmesothelinK562_mesothelin細胞(APC、mCherry)のパーセンテージの変化をフローサイトメトリー測定し、実験群の「mesothelinK562細胞(APC、mCherry)のパーセンテージ/mesothelinK562_mesothelin細胞(APC、mCherry)のパーセンテージ」をNとした。N値は、CAR-T細胞を添加していない混合型標的細胞サンプルウェルの「N=mesothelinK562細胞(APC、mCherry)のパーセンテージ/mesothelinK562_mesothelin細胞(APC、mCherry)のパーセンテージ」を基準としたあと、生存割合N/Nを算出した。即ち、殺傷率の式は「Lysis(%)=1-N/N」とした。結果を図2:iに示す。図より、mesothelin腫瘍細胞に対するanti-mesothelin E28Z CAR-Tの毒性は、28Z CAR-T細胞よりも大きかった。
【0125】
無菌操作により、2×10^7/ml PANC-1細胞-PBS再懸濁液を準備した。そして、6週齢の各B-NDG雌マウスの左側背部に100μl・2百万個のPANC-1細胞を皮下移植し、この時点をday0とした。7日後に、PANC-1皮下腫瘍が直径7~8mmまで成長した時点でマウスをランダムに群分けし、各マウスの尾静脈に100μl・6百万個のanti-mesothelin CAR-T細胞を注射した。モデルは図2:jに示す通りであった。その後、定期的にノギスで腫瘍の大きさを測定し、データを記録した。また、腫瘍面積=長さ×広さとした。結果を図2:kに示す。vector対照群と実験群である28Z群のマウスの腫瘍成長は最も速く、両者に差はなかった。一方、E28Z群は治療効果が比較的良好であり、統計的に有意な差があった。
【0126】
実験結果:
(1)E28Z及び28Z CAR-T細胞は、膜上レベル及びCD4/CD8比が同等であった。
【0127】
(2)CAR-T細胞をRaji細胞によりインビトロで特異的に刺激したところ、E28Zが分泌したサイトカイン(IFN-γ、IL-2、TNF)は28Zよりも明らかに低く、産生されたGrzBは28Zよりも明らかに高かった。
【0128】
(3)CAR-T細胞をRaji細胞によりインビトロで特異的に刺激したところ、最初の短時間は、28Zの方が表面CAR(%)の低下速度がE28Zよりも速く、表面CAR(%)の回復速度についてもE28Zより明らかに速かった。
【0129】
(4)CAR-T細胞をRaji細胞によりインビトロで特異的に刺激し、一定時間増幅させたあと、異なるタイミングでサンプルを採取してアポトーシスレベルを検出したところ、E28Zと28Zの比較において、最初は双方が同等であったが、その後は、E28Zのアポトーシスレベルが28Zよりも明らかに低下した。
【0130】
(5)CAR-T細胞をRaji細胞によりインビトロで特異的に刺激し、一定時間増幅させたあと、異なるタイミングでサンプルを採取して増殖能力(即ち、Ki67の発現レベル)を検出したところ、E28Zの増殖能力は28Zよりも明らかに高かった。
【0131】
(7)CAR-T細胞をRaji細胞により特異的に刺激し、一定時間増幅させたあと、異なるタイミングでサンプルを採取して、増幅したCART細胞の数を検出したところ、時間の経過とともにE28Zの数は28Zよりも明らかに高くなった。
【0132】
(8)CAR-T細胞とCD19K562:CD19K562を共培養するインビトロ殺傷実験において、高い投与量のE28Zの殺傷能力は28Zよりも明らかに高くなり得た。
【0133】
(9)マウス体内での抗腫瘍実験において、E28Zの治療効果は28Zよりも明らかに高くなり得た。
【0134】
以上は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を形式的及び実質的になんら制限するものではない。指摘すべき点として、当業者であれば、本発明の方法を逸脱しないことを前提に、若干の改良及び補足が可能であって、これらの改良及び補足もまた本発明の保護の範囲内とみなすべきである。本専門分野に精通した技術者が、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、上記で開示した技術内容を利用して実施可能な些細な修正、追加及び変形の等価の変更は、いずれも本発明における等価の実施例である。また、本発明の実質的技術に基づいて上記の実施例に対し実施される任意の等価の変更の修正、追加及び変形も
、本発明の技術方案の範囲に属する。
図1.a】
図1.b】
図1.c】
図1.d】
図1.e】
図1.f-h】
図1.i】
図1.j】
図1.k】
図1.l】
図1.m】
図1.n】
図1.o】
図1.p】
図1.q】
図1.r】
図2.a】
図2.b】
図2.c】
図2.d-f】
図2.g】
図2.h】
図2.i】
図2.j】
図2.k】
【配列表】
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