(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】受光装置及び距離測定装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/4863 20200101AFI20240823BHJP
G01S 7/481 20060101ALI20240823BHJP
H04N 25/773 20230101ALI20240823BHJP
H04N 25/76 20230101ALI20240823BHJP
【FI】
G01S7/4863
G01S7/481 Z
H04N25/773
H04N25/76
(21)【出願番号】P 2023023765
(22)【出願日】2023-02-17
(62)【分割の表示】P 2019050991の分割
【原出願日】2019-03-19
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】久保田 寛
(72)【発明者】
【氏名】松本 展
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-032305(JP,A)
【文献】特開2018-191041(JP,A)
【文献】米国特許第05854656(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0021302(US,A1)
【文献】特表2016-541191(JP,A)
【文献】特表2016-504890(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0091747(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - G01S 7/51
G01S 17/00 - G01S 17/95
H04N 5/30 - H04N 5/33
H04N 23/11
H04N 23/20 - H04N 23/30
H04N 25/00
H04N 25/20 - H04N 25/61
H04N 25/615 - H04N 25/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の受光素子を備え、受光した光の強度に基づく信号を出力する、画素と、
第1方向及び前記第1方向と交わる方向である第2方向にアレイ状に配置された複数の前記画素を備える、受光部と、
前記受光部に属する前記第1方向及び/又は前記第2方向において複数の連続した前記画素を備える前記受光部内の領域である、受光領域と、
前記受光領域における前記画素の相対位置に基づいて、前記受光領域に属するそれぞれの前記画素からの信号を並び替え
て出力する、スイッチ
回路と、
を備え、
前記画素は、前記受光部内において設定された前記受光領域の位置によらない
第1信号線により信号を出力するように接続され、
前記受光領域の前記受光部内における位置は、前記第1方向における位置の指定及び前記第2方向における位置の指定、により設定され、
前記スイッチ
回路は、前記第1方向における位置の指定及び前記第2方向における位置の指定に基づいて、前記
第1信号線により出力される前記画素からの信号を、前記受光領域内における所定の順番となるように入れ替え
て、前記所定の順番のそれぞれについて配置されている第2信号線から出力する、
受光装置。
【請求項2】
前記画素は、1又は複数のアバランシェフォトダイオードを備える、請求項1に記載の受光装置。
【請求項3】
前記第1方向における位置の指定及び前記第2方向における位置の指定を設定する、領域指定部をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載の受光装置。
【請求項4】
前記第1方向又は前記第2方向の少なくとも一方である補正方向において、検知された受光強度に基づいて前記受光領域の位置を補正する受光位置補正部を有する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の受光装置。
【請求項5】
前記画素において受光したことを示す信号を外部へと出力する場合に、所定時間における信号の積算値を算出する、積算器、
を備え、前記積算値を出力する、請求項1から請求項4のいずれかに記載の受光装置。
【請求項6】
対象へ光を発する、発光部と、
請求項1から請求項5のいずれかに記載の受光装置と、
前記受光装置において前記発光部が光を発したタイミングと、前記発光部が発した光を前記受光装置が受光したタイミングと、に基づいて、前記対象までの距離を測定する、距離測定部と、
を備える距離測定装置。
【請求項7】
対象へ光を発する、発光部と、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の受光装置と、
前記受光装置からの出力される信号の所定時間における積算値を算出する、積算器と、
前記発光部が光を発したタイミングと、前記受光装置が受光したタイミングと、に基づいて、前記積算器の出力を用いて前記対象までの距離を測定する、距離測定部と、
を備える距離測定装置。
【請求項8】
対象へ光を発する、発光部と、
前記発光部が発した光を受光する1又は複数の受光素子を備え、受光した光の強度に基づく信号を出力する、画素と、
第1方向及び前記第1方向と交わる方向である第2方向にアレイ状に配置された複数の前記画素を備える、受光部と、
前記受光部に属する前記第1方向及び/又は前記第2方向において複数の連続した前記画素を備える前記受光部内の領域である受光領域と、
前記受光領域における前記画素の相対位置に基づいて、前記受光領域に属するそれぞれの前記画素からの信号を並び替え
て出力する、スイッチ回路と、
前記受光領域において前記発光部が光を発したタイミングと、前記発光部が発した光を前記受光領域が受光し、前記スイッチ回路により並び替えられた信号を受信したタイミングと、に基づいて、前記対象までの距離を測定する、距離測定部と、
を備え、
前記画素は、前記受光部内において
第1信号線により信号を出力するように接続され、
前記受光領域の前記受光部内における位置は、前記第1方向における位置の指定及び前記第2方向における位置の指定、により設定され、
前記スイッチ回路は、前記第1方向における位置の指定及び前記第2方向における位置の指定に基づいて、前記
第1信号線により出力される前記画素からの信号を、前記受光領域内における所定の順番となるように入れ替え
て、前記所定の順番のそれぞれについて配置されている第2信号線から出力する、
距離測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、受光装置、受光方法及び距離測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
距離計測システムのLIDAR(Light Detection and Ranging)は、レーザを計測対象物に照射し、計測対象物から反射された反射光の強度をセンサで感知し、センサの出力に基づいて時系列のデジタル信号に変換する。この変換によりレーザが発光してからデジタル信号の信号値のピーク等までの時間差に基づいて、計測対象物の距離を計測する。
【0003】
このLIDARの技術、特に、車載用LIDARにおいて、シリコンフォトマルチプライヤ(Silicon Photo Multiplier:以下SiPMと記載する)を利用する2次元配列センサの研究が行われている。しかしながら、従来の方法では、環境光によるノイズを広く取むこと、また、受光を受け付けるセンサの正確な同期が要求されること等から、SiPMを利用した高性能のLIDARを実現することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一実施形態は、2次元配列センサの性能を向上させた受光装置及び距離測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、受光装置は、画素と、受光部と、受光領域と、を備える。画素は、1又は複数の受光素子を備える。受光部は、第1方向及び前記第1方向と交わる方向である第2方向にアレイ状に配置された複数の前記画素を備える。受光領域は、前記受光部に属する複数の連続した前記画素を備え、前記複数の連続した画素のそれぞれにおいて受光した光の強度に基づいて信号を出力する、前記第1方向における位置及び前記第2方向における位置を示す信号により前記受光部内における位置が変更される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】SiPMアレイを有する受光装置の受光部の模式的に示す図。
【
図4】一実施形態に係る画素と信号線との接続を示す図。
【
図5】一実施形態に係る画素と第1信号線との接続を示す図。
【
図6】一実施形態に係る画素と第1信号線との接続を示す図。
【
図7】一実施形態に係る画素と第1信号線との接続を示す図。
【
図8】一実施形態に係る第1信号線と第2信号線との接続を示す図。
【
図9】一実施形態に係る第1信号線と第2信号線との接続を示す図。
【
図10】一実施形態に係る受光装置の画素と出力との関係を示す図。
【
図11】一実施形態に係る受光装置の機能を示すブロック図。
【
図13】一実施形態に係る画素と第1信号線との接続を示す図。
【
図14】一実施形態に係る受光装置の受光部の別例を示す図。
【
図15】一実施形態に係る受光装置の受光部の別例を示す図。
【
図16】一実施形態に係る距離測定装置の機能を示すブロック図。
【
図17】一実施形態に係る受光強度の一例を示す図。
【
図18】一実施形態に係る受光強度の分布の一例を示す図。
【
図19】一実施形態に係る受光装置の受光部の別例を示す図。
【
図20】一実施形態に係る受光装置の画素の出力の一例を示す図。
【
図21】一実施形態に係る受光装置の画素の出力の別例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。図面は、一例として示したものであり、本実施形態を限定するものではない。また、図面中の位置、寸法比等についても説明の簡単のために一例として示したものであり、特に記載の無い限り、正確な位置、正確な寸法比を示すものではない。説明において、例えば、位置を表すインデクスが小さい方を上流と呼び、信号が伝達される方向は、インデクスが小さい方から大きい方へ伝達する方向であるものとする。これらは一例として示すものであり、実装においては、一意的に信号が伝達される向きであれば、インデクスの大小が逆であっても構わない。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、受光装置1の受光部10を示す模式図である。受光装置1は、受光センサとして、受光部10を備える。受光部10は、チャネル12を備える。
図1においては、25個のチャネルが示されているがこれには限られず、受光部10は、1チャネルから構成されてもよいし、25チャネルよりも多いチャネルを備えていてもよい。すなわち、受光部10は、1又は複数のチャネル12を備える。
【0010】
図1の右図は、チャネル12部分の拡大図を示す。チャネル12は、1又は複数のSPAD14を備える。SPAD14の数は、
図1に示すものには限定されない。SPAD14は、受光素子として、例えば、アバランシェフォトダイオード(APD:Avalanche Photodiode)、又は、単一光子アバランシェフォトダイオード(所謂SPAD:Single Photon Avalanche Diode)を備える。SPAD14は、アバランシェ降伏により、フォトン単位での受光を検知し、電気信号へと変換して光を検出する。以下、本明細書においては、チャネルのことを画素と呼ぶ。一般に、SPADのことを画素(ピクセル)と呼ぶことがあるが、本明細書においては、当該呼び方はしないことに留意されたい。
【0011】
受光装置1は、アレイ状に配置された画素12うち、いずれの位置に配置された画素12により受光がされたかにより、受光位置及び受光した光の強度を検出することができる。以下、説明においては、便宜上、図示している第1方向と、第1方向と交わる方向である第2方向を用いて説明する。説明において、上下とは、第1方向に沿った方向であり、左右とは、第2方向に沿った方向を示す。これらの方向は、画素12をアレイ状に配置する場合に定義される相対的なものであり、入れ替えられてもよい。また、受光装置1の適性上、第1方向と第2方向は、垂直に交わることが望ましいが、厳密に垂直でなくてもよく、SPADの形状等に基づいて厳密には垂直ではない所定の角度で交わっていてもよい。また、画素12、SPAD14は、それぞれ正方形として図示されているがこれに限られるものではなく、他の形状、例えば、長方形であってもよい。
【0012】
図2は、本実施形態に係る受光部10における受光領域と、画素12の配置の一例を示す図である。ここで、受光領域とは単に名称であり、必ずしもこの領域全てが光を受けていなくても構わない。画素12の境界を点線で示し、受光領域16の境界を実線で示す。本実施形態では、画素12のそれぞれにおいて検知された光により位置を検出するのではなく、ある程度の範囲において検知された光に基づいて受光されたか否かを判断する。例えば、
図2においては、受光領域16は、3×4画素を有する矩形領域である。
【0013】
第1方向における受光領域16の画素数を第1所定数、第2方向における受光領域16の画素数を第2所定数と記載する。このように、受光領域16は、指定された受光する位置において所定範囲に配置される複数の連続した画素を有する領域である。例えば、
図2において、第1所定数は3であり、第2所定数は4である。
【0014】
位置の指定は、例えば、
図2に斜線で示されるように、左上の画素の第1方向及び第2方向の座標を用いて行われる。例えば、第1方向にM番目、第2方向にN番目の画素であれば、それぞれの座標M、Nを用いて位置が示される。位置の示し方は、左上に限るものではなく、例えば、左下、右上、右下等であってもよいし、中心の画素の座標であってもよく、これ以外であっても一意的に位置が決定できる示し方であれば構わない。例えば、左上の位置M、Nが指定されると、その画素12から第1方向に第1所定数、第2方向に第2所定数である矩形領域におけるそれぞれの画素12において受光した光を信号に変換して出力される。この位置を指定することにより、受光部10内の任意に指定された位置において受光されたか否かを検知する。
【0015】
受光領域16内におけるそれぞれの画素12は、それぞれに受光強度を出力する。このように、それぞれの画素12により受光された信号を結合するのではなく、それぞれの画素12からの信号を別々に出力させる。光が受光領域全域に一様に照射されるのではなく、一部の画素のみに照射される場合、それぞれの画素12からの信号を別々に出力することにより、光の照射された画素の信号だけを用いることが出来る。光の照射されなかった画素からのノイズを除去できるため、S/N比(Signal to Noise Ratio)がそれだけ高くなる。受光領域内の光の照射には偏りがあること、また、光の焦点を絞る結果この偏りは大きくなることから、別々に出力することにより、S/N比は改善される。一方で、受光領域16内のそれぞれの画素12の出力を受信したデバイス(例えば、プロセッサ)側でまとめることが可能であるので、受光領域16をあたかも1つの画素のように扱うことが可能である。
【0016】
図3は、受光領域の別の形態を示す図である。
図3に示すように、受光領域は、1つである必要は無く、複数の受光領域16A、16Bを備えていてもよい。この場合、各受光領域において座標により位置決めされる。受光領域16Aは、座標MA、NAにより決定され、受光領域16Bは、座標MB、NBにより決定される。このように複数の受光領域を備えることにより、受光の対象となるレーザ等の発光デバイスが複数ある場合に、それぞれの発光デバイスに対する受光をそれぞれの受光領域を走査することにより取得することが可能となる。また、
図3においては、受光領域16A、16Bは、隔離された構成となっているが、これには限られず一部の画素を共有してもよい。
【0017】
図4は、受光領域16を実装するための画素12に関する接続関係を示す図である。それぞれの画素12には、出力経路として、第1所定数の第1信号線100が接続される。受光領域16が
図2のように3×4の領域である場合には、
図4に示すように、3本の信号線と接続される。第1方向に沿った画素12のそれぞれは、同じ第1信号線100に接続される。
【0018】
それぞれの第1信号線100は、第2方向に沿って備えられる第2信号線140と接続される。例えば、第2信号線140は、受光領域16に存在する画素数と同じ本数、すなわち、(第1所定数)×(第2所定数)本が備えられる。上記の例では、3×4=12本の第2信号線140が備えられる。
【0019】
画素12からの信号線と第1信号線100との交点、及び、第1信号線100と第2信号線140との交点には、それぞれスイッチが備えられる。これらのスイッチによる信号線の切り替えにより、それぞれの画素12からの信号を第1信号線100及び第2信号線140を介して、それぞれ取得することが可能となる。
【0020】
スイッチの切り替えには、位置を示す選択線が用いられる。画素12からの信号線と第1信号線100とのそれぞれの交点における第1スイッチには、第1選択線が接続され、第1信号線100と第2信号線140とのそれぞれの交点における第2スイッチには、第2選択線が接続される。第1選択線及び第2選択線により上述した受光領域16の第1方向の位置及び第2方向の位置がそれぞれ示され、受光領域16が決定される。
【0021】
スイッチは、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect-Transistor)を備えて構成されてもよい。この場合、スイッチの駆動端子は、ゲートであり、選択線には、選択された場合にゲート・ソース間のしきい値電圧を超える電圧が印加される。
【0022】
各信号線と、スイッチ、及び、選択線について詳しく説明する。
【0023】
図5は、画素12と、第1信号線100との接続の一例を示す図である。説明のため、1画素について、3本の信号線と接続する図を用いる。便宜上、第1信号線100の符号を101、102、103として、第1スイッチ110の符号を111、112、113として、後述する第1ダミー線130の符号を131、132、133として、それぞれ複数の要素のうち1つを示すものとする。画素12は、第1信号線101、102、103と、それぞれ第1スイッチ111、112、113を介して接続される。
【0024】
画素12は、第1スイッチ111を介して第1信号線101と接続される。オフ状態において、第1スイッチ111は、第1信号線101と接続されない状態である。第1スイッチ111は、その駆動させるための端子が選択信号を受信する第1選択線121と接続される。第1選択線121から画素12と第1信号線101を選択する信号が入力されるとオン状態へと遷移して、第1スイッチ111が切り替わり、第1信号線101と、画素12とを接続する。選択線に流される信号は、例えば、High又はLowの値を示す信号であり、スイッチの駆動状態を当該信号により決定する信号である。
【0025】
オフ状態、すなわち、第1選択線121から第1信号線101への出力信号が入力されていない場合においては、例えば、第1スイッチ111を介して、画素12は、第1ダミー線131と接続される。第1ダミー線131は、第1信号線と接続されない信号線であり、入力された信号を装置に影響が少なくなるように処理するデバイス等へと接続される。例えば、第1ダミー線131は、接地され、画素12からの信号を接地面へと流してもよい。また、第1ダミー線131は、必須の構成ではなく、第1ダミー線131が第1スイッチ111に接続されない場合には、第1スイッチ111のオフ状態において、画素12からの信号線が開放状態となるようにしてもよい。
【0026】
同様に、画素12は、第1選択線122からの信号により第1スイッチ112を介して第1信号線102又は第1ダミー線132のいずれかと接続され、第1選択線123からの信号により第1スイッチ113を介して第1信号線103又は第1ダミー線133のいずれかと接続される。画素12は、第1信号線101、102、103のいずれか1本と接続するか、又は、いずれにも接続されないかの状態になる。
【0027】
1つの画素12についての接続は、
図5に示す通りである。次に、第1方向に並んだ複数の画素12についての接続について説明する。受光領域16の位置は、上述したように、画素12の位置を指定することにより行われる。指定された画素12に基づいて、受光領域16内のそれぞれの画素12がいずれかの第1信号線と接続される。例えば、
図2に示す受光領域16内の左上の画素12である位置M、Nが指定された場合について説明する。受光領域16の位置は、領域内の左上の画素12を指定するものとするが、他の場合であっても同様の構成をとり、動作させることが可能である。
【0028】
図6は、いくつかの画素12と、第1信号線100との接続を示した図である。第1選択線120は、第2方向に沿って配置される画素12に共通する。この
図6においては、第1選択線120が実線で、第1スイッチ110、画素12が点線で示されており、第1ダミー線130は図示されていない。以下、特に記載の無い場合、4桁の符号は、その上2桁が同じ符号で示される要素、例えば、11xxであれば第1スイッチ、10xxであれば第1信号線等を表す。
【0029】
それぞれの第1スイッチ110には、いずれかの第1選択線120が接続される。第1スイッチ110は、接続される第1選択線120から入力される選択信号に基づいて、切り替えられる。この切り替えにより、第1方向に沿った第1信号線100のうちいずれかへ画素12からの信号が選択的に出力される。
【0030】
第1方向位置Mを選択する第1選択線120は、例えば、第1方向位置Mにおける一番左の第1スイッチ1100と、第1方向M+1における左から二番目の第1スイッチ1110と、第1方向M+2における左から三番目の第1スイッチ1120と、の選択信号入力端子(駆動端子)と接続される。このように、1つの第1選択線120は、第2方向位置Nにおける画素12のうち、第1方向において第1所定数(例えば、3つ)の連続する画素12(例えば、第1方向位置M、M+1、M+2の画素)について、それぞれ異なる第1信号線100との接続を切り替えることが可能であるように備えられる。第1信号線100は、3つの第1スイッチ110の駆動端子と接続した後、適切に信号が流れるように接続、例えば、抵抗を介して接地されてもよい。
【0031】
第1方向位置Mに対応する第1選択線120は、第2方向位置N、N+1、・・・、における第1方向位置Mの画素12の出力を切り替える第1スイッチ110とそれぞれ接続される。このように、1つの信号線において選択信号を送信することにより、指定された第1方向位置に存在する画素12が選択されるように、第1スイッチ110と接続される。
【0032】
一例として、受光領域16が左上の画素12の位置により指定され、受光領域16の第1方向の画素数が3、第2方向の画素数が3以上であるものとし、左上の画素12の位置がM、Nである受光領域16を指定する場合について説明する。すなわち、受光領域16に含まれる画素が、位置M~M+2、N~N+n(n≧2)である場合について説明する。この場合、位置Mに対する第1方向における第1選択線120において、選択されたことを示す選択信号が入力される。
【0033】
図7は、上記の場合における画素12と第1信号線100との接続状態を示す図である。第1方向位置Mの第1選択線120に選択信号を流す場合について説明する。図において、実線で示される画素12が選択されアクティブになっている画素であり、実線で示される線がアクティブになっている導線を示す。
【0034】
位置M、Nの画素12は、第2方向位置Nに対応する第1信号線1010と第1スイッチ1100を介して接続される。これは、第1選択線120から入力された選択信号が第1スイッチ1100を駆動して、画素12と第1信号線1010とが接続するためである。そして、当該位置の画素12において受光され変換された信号が第1信号線1010に出力される。
【0035】
位置M+1、Nの画素12は、第2方向位置Nに対応する第1信号線1020と第1スイッチ1110を介して接続される。当該位置の画素12において受光され変換された信号が第1信号線1020に出力される。位置M+2、Nの画素12は、第2方向位置Nに対応する第1信号線1030と第1スイッチ1120を介して接続される。当該位置の画素12において受光され変換された信号が第1信号線1030に出力される。
【0036】
同様に、第2方向位置N+1、N+2、・・・に存在する、第1方向位置M、M+1、M+2に対応する画素12は、それぞれの第2位置に対応する第1信号線1011、1021、1031、1012、1022、1032と、第1スイッチ1101、1111、1121、1102、1112、1122を介して接続される。このように、第1位置M、M+1、M+2の位置に存在する画素12がそれぞれ一意的に第1信号線100と接続され、それぞれの画素12において受光した場合には、第1信号線100を介して信号が出力される。
【0037】
このように、それぞれの第1信号線100には、第1方向において指定された位置に基づいていずれかの画素12と接続され、当該画素12が受光したタイミングにおいて信号が出力される。第2方向において隣接する画素12同士の間に備えられた第1方向に沿った第1信号線100と接続され、第2方向の位置を指定するのが第2信号線140である。
図4に示すように、第2信号線140は、例えば、画素12の配置領域外に、第2方向に沿って備えられる。
【0038】
なお、
図7における配線は、一例を示すものであり、この通りの配置に配線されている必要は無い。画素12と、対応する第1信号線100、第1スイッチ110及び第1選択線120の接続状態が同じ状態となるような配線であれば構わない。例えば、第1選択線120は、第1スイッチ110のそれぞれと接続するために階段状に配線されているが、これには限られず、接続される第1スイッチ110の駆動端子と接続するように第1方向及び第2方向に対して斜めに直線状に配線されてもよい。また、2次元空間で記載されているが、3次元方向にも展開されるものであってもよい。以下の図においても同様である。
【0039】
図8は、第1信号線100と、第2信号線140との接続を示す図である。
図5と同様に、便宜上、第1信号線100の符号を101、102、103として、第2信号線140の符号を141、142、143として、第2スイッチ150の符号を151、152、153として、第2選択線160の符号を161、162、163として、第2ダミー線170の符号を171、172、173として、それぞれ複数の要素のうち1つを示すものとする。
【0040】
第1信号線101は、第2スイッチ151を介して第2信号線141と接続される。第2スイッチ151は、駆動端子に第2選択線161が接続される。第2選択線161から選択信号が入力されると、第2スイッチ151は、オフ状態からオン状態へと遷移し、第1信号線101と第2信号線141とを接続する。この状態において第1信号線101に信号が流れると、第2信号線141にも信号が出力される。第1信号線102と第2信号線142、及び、第1信号線103と第2信号線143についても同様に、それぞれ第2スイッチ152、153を介して接続が切り替えられる。第2スイッチ152、153には、それらの駆動端子に、それぞれ第2選択線162、163が接続される。
【0041】
同一の第2方向位置に属する第1信号線100に接続されるそれぞれの第2信号線141、142、143においては、第2スイッチ151、152、153に接続される第2選択線161、162、163は、電気的に接続されている、あるいは、同一の第2選択線160であってもよい。
【0042】
図9は、第1信号線100と第2信号線140との接続を示す図であり、特に、第2スイッチ150と第2選択線160の接続を詳しく示す図である。第1信号線100と第2信号線140とは、例えば、1つの第2選択線160を介して、それぞれの第2信号線140が1つの第1信号線100と接続されるように備えられる。
【0043】
例えば、実線で示されている信号線が第2方向位置Nを示す選択線である場合を説明する。第2方向位置N、N+1、N+2、N+3に対応する第1信号線100と、それぞれの第2信号線140とが一意的に接続する第2スイッチ150の駆動部と、第2選択線160は、接続される。このように接続することにより、第1方向及び第2方向に並ぶ画素12のそれぞれの出力する信号が、第2信号線140へと出力される。
【0044】
図10は、第1選択線120と第2選択線160により位置M、Nの画素12が指定された場合に、それぞれの第2信号線140においてどの画素12の出力がされるかを表す一例を示す。すなわち、
図6における第1選択線120においてMの画素を選択し、
図9における第2選択線160においてNの画素を選択するものである。本図においては、選択線、ダミー線の図示は省略する。
【0045】
第1所定数を3、第2所定数を4として、M、Nの位置の画素12を受光領域16の左上の画素として指定した場合、斜線で示した画素12からの信号を出力する。この場合、第1方向の位置M、M+1、M+2、かつ、第2方向の位置N、N+1、N+2、N+3に位置する画素12からの信号を受光領域16の信号として出力する。
【0046】
第1スイッチ110及び第2スイッチ150は、白丸又は黒丸で示される。白丸で示されるスイッチは、オフとなっているスイッチであり、例えば、ダミー線と接続されるスイッチである。黒丸で示されるスイッチは、駆動部から選択線を介して選択信号が駆動信号として印加され、オンとなっているスイッチである。すなわち、黒丸で示すスイッチにおいて、画素12からの出力と第1信号線100、又は、第1信号線100と第2信号線140がそれぞれ接続される。
【0047】
位置M、Nの画素12は、第1スイッチ110を介して接続されうる第1信号線100のうち、例えば、一番左の信号線と接続される。この第1信号線100は、図示している第2スイッチ150のうち、左上の第2スイッチ150を介して一番上の第2信号線140と接続される。そして、この一番上の第2信号線140を介して受光した情報を受信する回路(又はデバイス)と接続され、この第2信号線140を介して画素12が受光した光の情報を出力する。
【0048】
位置M+1、Nの画素12は、第1スイッチ110を介して左から2番目の第1信号線100と接続される。この第1信号線100は、第2スイッチ150を介して上から2番目の第2信号線140と接続される。位置M、N+1の画素12は、対応する第1信号線100のうち一番左の信号線と第1スイッチ110を介して接続される。この第1信号線100は、第2スイッチ150を介して上から4番目の第2信号線140と接続される。
【0049】
図10の右下に示すのは、それぞれの第2信号線140からいずれの位置にある画素12からの信号を出力するかである。このように、受光領域16を示す画素12の位置が選択されると、当該受光領域16に属するそれぞれの画素12に対する信号が一意的に第2信号線140を介して出力される。
【0050】
なお、画素12と接続される第1信号線100、及び、第1信号線100と接続される第2信号線140の並び順は、一例として示したものであり、必ずしもこの通りに並んでいるとは限らない。第2信号線140から受光領域16に属する画素12の出力がそれぞれ一意的に出力されるのであれば、どのような順番であっても構わない。
【0051】
また、受光領域16の大きさ、すなわち、第1所定数と第2所定数を、計測したい粒度に応じて変更できるようにしてもよい。この場合、第2方向に沿った画素12間には、第1所定数の最大数の第1信号線100が備えられ、(第1所定数の最大値)×(第2所定数の最大値)本の第2信号線140がそれぞれの第1信号線100と第2スイッチ150を介して接続されるように備えられる。第1選択線120は、上述の第1信号線100と画素12との接続の場合と同様に備えられる。第2スイッチ150及び第2選択線160についても同様である。
【0052】
図11は、受光装置1の回路構成(又はデバイス構成)を示す図である。受光装置1は、上述した受光部10と、領域指定部20と、信号処理部22とを備える。これらの各部は、上述した構成を含め、その一部又は全部が処理回路により構成されていてもよい。信号処理部22は、また、受光装置から独立した装置であってもよい。
【0053】
領域指定部20は、受光領域16の指定をする。受光領域16の指定は、例えば、定められたアルゴリズム(例えば、正弦振動)とパラメタに基づいて、領域指定部20により実行される。また、別の例では、外部から入力された位置情報又は同期情報に基づいて、受光領域16の指定を実行する。領域の指定は、第1方向における位置及び第2方向における位置に基づいて実行される。指定する第1方向の位置に対応する第1選択線120及び指定する第2方向の位置に対応する第2選択線160にそれぞれ、領域指定部20は、各スイッチを駆動するための電圧、又は、電流等を印加する。この領域指定部20により電圧等が印加された選択線により、受光部10における上述した動作が駆動される。
【0054】
信号処理部22は、受光部10における各第2信号線140からの出力信号を処理する。例えば、その出力信号をAD変換し、その信号がpeakを取る時刻をもって受光されたと判断する。また、別の例では、複数の出力信号のAD変換結果を積算(平均化)し、そのpeak時刻をもって受光されたと判断する。さらに別の例としては、複数の第2信号線140から出力された信号の和が第1しきい値を超えた場合に、受光領域16において受光がされたと判断する。またさらに別の例としては、第2しきい値を超える信号を出力する第2信号線の数が第3しきい値を超えた場合に、受光領域16において受光がされたと判断してもよい。さらに別の例として、第2方向Nにおける第1方向M、M+1、・・・に対応する第2信号線140からの出力の和を第4しきい値と比較して、判断してもよい。
【0055】
信号処理部22は、受光領域16において受光された時刻と、受光信号の強さ、および環境光の強さを出力する。受光領域にSAT(Smart Accumulation Technique)という技術を適用すれば、注目する画素(当該画素)について、その周囲の画素の信号のうち、当該画素の対象からの信号のみを積算することが出来る。従って、S/Nを高めて、個々の画素について結果を出力することが出来る。また、別の例として、受光領域16内の複数の画素12において検知した受光強度を補間して、受光領域全体のpeak値と強度分布を求めて出力してもよい。上記と同様に、第1方向に沿った画素12の第1所定数ごとに、第2所定数分の受光強度を出力してもよい。
【0056】
LIDARで利用する場合には、例えば、受光領域16を発光装置(例えば、レーザ)の動きと同期するようにさせることにより、受光するタイミングを測定することにより、反射物への距離の測定を行うことが可能である。前述のように、本実施形態によれば、所定の広がりを有する領域を受光領域16として設定し、当該受光領域16の位置を指定して、対応する画素12を選択することにより、ある程度の広がりを有する領域において受光をすることが可能となる。従って、ある程度の範囲でもって測定を行うので、厳密に同期を取る必要は無く、比較的緩い同期であってもLIDARによる距離測定を行うことが可能である。同様に、ある程度の範囲において測定をしているので、受光位置の位置ずれにもロバスト性を有する。さらに、画素間において受光がされた場合においても、検出することが可能である。
【0057】
また、例えば、LIDARの受光装置として用いる場合、受光光学系の焦点を無限遠とした場合に、近距離物体から反射光はデフォーカスし、広いエリアに照射されるが、このように光量に大きな差が現れる場合においても精度よく受光を検知することが可能となる。また、光量が特に大きい場合には、センサが飽和したり、長時間残留出力が残ったりすることがあるが、このように所定の広がりを有して計測する場合にも、それ以外の周辺の画素である光量の小さい領域で計測することができる。また、非同軸の光学系を適用する場合が多いが、その場合には、距離に応じて照射位置が異なる。特に、反射物体が近い場合には受光位置のずれが起こりやすいが、広がりを持って検出しているため、このような場合においても精度よく計測することができる。このように、受光装置1の受光の精度の向上を図ることが可能となる。
【0058】
図3に示すように複数個の受光領域を備えることにより、複数のレーザ光における反射を検出することができる。複数の発光デバイスを用いることにより、レーザのパワーを増大することができ、また、測定回数を増やすことが可能となる。この結果、距離や解像度の増大を図ることができる。さらに、マルチスタックの発光デバイスを用いること、特に、スタックの間隔の大きいものを活用することもできる。
【0059】
また、この実施例においては、
図4から
図10までに記した、スイッチ110による画素12と第1信号線100の接続、および、スイッチ150による第1信号線100と第2信号線140の接続により、受光領域16内における相対位置と出力の順序は、第1方向位置Mと第2方向位置Nの値によらず変わらない。例えば、
図10に示した通り、受光領域16内の左上に位置する画素が最も上に出力される。その順序は、(M,N)について昇順になる。この特徴により、信号処理部22および、その後段の回路は、第1方向位置Mと第2方向位置Nだけから、第2信号線140における出力された個々の信号が、どの画素12からの出力信号であるかを特定できる。この特定に要する処理を省くことにより、信号処理部22および、その後段の回路をそれだけ簡単にすることが可能になる。
【0060】
(第2実施形態)
図12は、前述した実施形態における第1スイッチ110の別の例を示す図である。第1スイッチ110は、例えば、トランジスタ110A、110B、110Dと、論理否定回路110Cと、論理和回路110Eと、を備える。それぞれのトランジスタは、例えば、ゲートにしきい値以上の電圧を印加するとドレインからソースへと電流を流すn型のMOSFETを備えて構成される。
【0061】
最も単純な前述の実施形態においては、上記の回路素子のうち、トランジスタ110Aを備える。この場合、トランジスタ110Aのドレインは、画素12と接続され、ゲートは、第1選択線120と接続され、ソースは、第1信号線100と接続される。
【0062】
前述の実施形態においてダミー線を有する場合には、上記の回路素子のうち、トランジスタ110A、110Bと、論理否定回路110Cを備える。この場合、トランジスタ110Aの接続は、上記と同様である。一方、トランジスタ110Bのドレインは、画素12と接続され、ゲートは、論理否定回路110Cを介して第1選択線120と接続され、ソースは、第1ダミー線130と接続される。この場合、第1選択線120において選択されている信号が印加されていない場合には、トランジスタ110Aが駆動せずにトランジスタ110Bが駆動し、第1ダミー線130へと画素12からの信号が出力される。逆に、第1選択線120において選択されている信号が印加されている場合には、トランジスタ110Bが駆動せずにトランジスタ110Aが駆動し、第1信号線100へと画素12からの信号が出力される。
【0063】
本実施形態においては、ダミー線を有する場合に加え、さらに、トランジスタ110Dと、論理和回路110Eと、を備える。また、第1スイッチ110には、当該スイッチよりも上流の第1スイッチ110において当該スイッチに対応する画素からの信号を出力したか否かを示す信号が流れる、第1フラグ線180が接続される。フラグ線に流れる信号は、例えば、選択線と同様にHigh又はLowを示す信号であってもよい。この場合、第1フラグ線180には、最上流においてLowの信号が印加される。
【0064】
全ての第1スイッチ110が
図12の構成ではなく、一部の第1スイッチ110のみを当該構成とし、他の第1スイッチ110については、前述の実施形態に記載の構成に論理和回路110Eを加えた構成としてもよい。トランジスタ110Dは、ドレインが第1信号線100と接続され、ゲートが第1フラグ線180と接続され、ソースが第1信号線及びトランジスタ110Aと接続される。
【0065】
第1選択線120において、画素12からの信号を第1信号線100へと出力する電圧が印加されていない場合、トランジスタ110Aは、オフに、トランジスタ110Bは、オンの状態となり、第1信号線100には画素12からの信号が出力されず、第1ダミー線130へと画素12からの信号が出力される。この画素12からの信号は、第1ダミー線130へと出力され、受光領域16における出力とはならないように処理される。
【0066】
この場合、第1フラグ線180には、論理和回路110Eを介して、上流からきた信号と同じ信号が下流へと出力される。すなわち、上流においていずれかの第1選択線にHighの信号が印加された場合には、当該信号が印加された画素に対応する第1スイッチより上流にあるトランジスタ110Dに対応するトランジスタがオフとなり、当該信号が印加された画素に対応する第1スイッチ以下の直近の下流にあるトランジスタ110Dに対応するトランジスタがオンとなる。この結果、選択された画素以下において第1信号線100と第2信号線140とが第2スイッチ150を介して接続される状態となる。
【0067】
一方で、第1選択線120に画素12からの信号を第1信号線100へと出力する電圧が印加されている場合、トランジスタ110Aは、オンに、トランジスタ110Bは、オフの状態となる。第1信号線100には、画素12からの信号が出力され、第1ダミー線130には、画素12からの信号が出力されない。そして、画素12からの信号は、第1信号線100へと出力され、第2スイッチ150を介して第2信号線140へと出力される。
【0068】
この場合、上流において、対応する第1選択線120における選択信号は、印加されておらず、同一の第1信号線100には画素からの信号が出力されておらず、かつ、第1フラグ線180には、信号が出力されていない、又は、Lowの信号が流れている。このため、トランジスタ110Dは、ゲートにしきい値電圧よりも低い電圧が印加されていることとなり、オフ状態となる。すなわち、第1信号線100は、この画素12よりも上流においては電気的に遮断された状態となる。
【0069】
一方で、下流に対しては、第1フラグ線180は、論理和回路110Eを介して第1選択線120と上流の第1フラグ線180とが論理和された結果が出力されるので、第1フラグ線180にはHighの信号が出力される。この結果、下流においては、この画素12から出力された信号が出力されることとなる。
【0070】
以上のように、本実施形態によっても、所定の広がりを有する領域を受光領域16として設定し、当該受光領域16の位置を指定して、対応する画素12を選択することにより、ある程度の広がりを有する領域において受光をすることが可能となる。画素12が、スイッチがオフ状態の場合において、スイッチを介してダミー線と接続されるため、選択されていない領域に属する画素12において受けた環境光(ノイズ)が出力に伝達されず、S/Nを改善することが可能である。また、大光量が照射された場合に、選択された領域以外からのキャリアが出力へと流れることを抑制することができ、画素の出力が飽和している期間を短くできるなど、飽和状態を緩和することが可能である。さらに、トランジスタ110Dにより、上流からの信号を第1信号線100に伝達するか否かを決定できるので、信号線の寄生容量を低減することが出来、その結果、画素12からの出力帯域が悪化することを抑制することが可能となる。
【0071】
なお、第1方向のみにフラグ線が存在するものとしたが、これには限られない。例えば、第2フラグ線をそれぞれの第2信号線140に沿って備え、第2スイッチ150のうち一部又は全部を
図12と同様に第2フラグ線と接続されるようにしてもよい。
【0072】
(第3実施形態)
前述の実施形態においては、第2方向に沿って隣り合う画素12同士のそれぞれの間において第1信号線100を備えるものとしたが、これには限られない。
【0073】
図13は、画素12と、第1信号線100との接続の別例を示す図である。
図13に示すように、第2方向に沿って隣り合う画素12において、第1信号線100を共有してもよい。共有することにより、第2方向に沿って隣り合う画素12において受光される場合に、その受光感度を向上させることが可能となる。
【0074】
この場合、第1信号線100及び第2信号線140の本数を削減することが可能となる。すなわち、上記の受光感度の向上とともに、実装面積の削減をすることも可能となる。また、配線自体を減らすことにより、不具合の発生確率を抑制することもできる。
【0075】
(第4実施形態)
第4実施形態においては、受光領域16のズレを修正するために、前述の第1~第3実施形態に係る受光装置1のように、受光領域16の位置に拘わらず、受光領域16内の画素位置と出力順序の関係が一意に保たれていることが重要であった。具体的には、3×4の受光領域の場合、出力順序は、
図10に示された通り(M,N→M+1,N→M+2,N→・・・)となる。本実施形態においては、この順序を保ちつつもより配線容量を削減し、受光部の面積を削減する受光装置1について説明する。
【0076】
図14は、本実施形態に係る受光部10からの出力を示す図である。受光部10は、受光領域16からの信号を出力するために、受光部10から出力された信号の順序を整列するスイッチ回路18を介して信号処理回路と接続される。スイッチ回路18は、前述の各実施形態で示した各スイッチ及び各信号線においてM、Nが決定されると自動的に整列されていた代わりに、条件に基づいて受光領域16内の各画素12からの出力を整列する。
【0077】
なお、スイッチ回路18は、信号処理と一体化していてもよく、信号処理の一部あるいは全部の回路より後段に位置してもよい。信号処理は、先に記した様に、アンプの様なアナログ回路、AD変換器と、SATの様な積算などのロジック回路からなることが有るが、その場合、AD変換器と前記ロジック回路の間に位置させても良い。そうすることにより、スイッチ回路による、アナログ信号の劣化が発生せず、正しい出力順序あるいは画素位置情報を必要とするロジック処理が可能になるからである。
【0078】
受光領域16内の画素位置と出力順序の関係を一意に維持せず、スイッチ回路18を受光部10と信号処理の間に追加し、スイッチ回路18で出力順序を受光領域16内における一意のものに変更する。受光領域16の位置を示すNとMの信号をスイッチ回路18も受信し、MとNに基づいて、スイッチを繋ぎ変えて、出力順序を決定する。スイッチ回路18は、ロジックのみ及びテーブルに基づくものの何れかであってもよい。スイッチ回路18の入力線数は、出力線数と同じ場合と、それより多い場合の2通りがある。スイッチ回路は、後述する様なアルゴリズムに基づく論理回路、あるいはテーブルドリブンの回路にて実現する。後者は、M、N、および出力信号の順序と、受光領域内の相対位置の対応を記したテーブルを使用する。
【0079】
受光部10内の画素12は、それぞれに対応する画素スイッチ間信号線190を介してスイッチ回路18と接続される。受光領域16に属する画素12からの信号を受信したスイッチ回路18は、例えば、受光領域16内において
図14の右下に示される順序に基づいて、画素12からの信号をそれぞれの出力線192へと出力する。例えば、画素における当該順序の番号をxとすると、受光領域16内でxの位置に対応する画素は、出力線192_xを介して出力される。出力線192_xの受信側において、このnに対応して信号処理を行うことにより、前述の実施形態で示したような位置ズレ等の較正、又は、その他の受光領域16内における位置に基づいた処理を行う。このように、受光領域16内における相対的な位置に関する順序を変更せずに、信号処理を実行することが可能となる。
【0080】
図15は、
図14の受光部10をより詳しく示す図である。受光部は、第1方向の画素数と同じ数の、第1選択線120と、第2方向の画素数と同じ数の、第2選択線160を有する。第1方向の位置Nと第2方向の位置Mに基づいて、第1選択線120と第2選択線160の一部がオンとなり、その他がオフになる。右側に示した画素周りの拡大図が示すように、画素に対応する、第1選択線120と第2選択線160が両方ともオンの場合に、AND回路を介して対応するスイッチがオンとなり、その画素の信号が所定の画素スイッチ間信号線190に当該スイッチを介して接続される。スイッチについては、
図12と同じものが適用可能であり、接続されなかった画素の信号は、ダミー線(
図12の130)に接続される。このように、受光領域16に属する画素12に対して、第1選択線120及び第2選択線160に印加されている信号に基づいて、画素12からの信号を出力する制御を行う。
【0081】
本実施形態では、NとMの値に拘わらず、それぞれの画素12は、受光部10の所定の出力線に出力される。従って、信号処理のためには、出力順序を一定に保つ様に、スイッチ回路18を追加してスイッチ回路で並び替えをする必要がある。しかし、受光部10に存在する画素スイッチ間信号線は、第1選択線120、第2選択線160と画素スイッチ間信号線190となり、その本数は各段に少なくなり、その配線容量も小さくなる。また、受光部におけるスイッチ回路の総数も、第1の実施形態と比べて少なくなる。受光部においては、そのセンサの面積比率が感度を左右するが、信号線とスイッチ回路が少なくなることにより、センサの面積比率が大きくなり、感度が向上する。
【0082】
画素12と画素スイッチ間信号線190との対応は、例えば、画素12の受光部10における第1方向の位置をm、第2方向の位置をnとした場合に、mの第1所定数による剰余、及び、nの第2所定数による剰余に基づいて決定されてもよい。受光領域16が指定された場合に、当該領域内における画素が同一の画素スイッチ間信号線190に接続されないように画素と画素スイッチ間信号線190とが接続されればよい。
【0083】
第1所定数が3、第2所定数が4である場合には、例えば、mの第1所定数の剰余がa、nの第2所定数の剰余がbの画素を(a,b)と表すとき、(0,0)が、第1の画素スイッチ間信号線190_1と、(0,1)が第2の画素スイッチ間信号線190_2と、・・・、(1,0)が第5の画素スイッチ間信号線190_5と、・・・、(2,3)が第12の画素スイッチ間信号線190_12と、それぞれ接続する。
【0084】
これに対して、スイッチ回路18においては、例えば、ロジックで順序づけする場合には、受光部10内における受光領域16の位置を示すM、Nについて、それぞれ、第1所定数、第2所定数の剰余に基づいて、各画素からの出力を整列する。例えば、Mの3の剰余がA、Nの4の剰余がBであれば、X=(1+(A×第2所定数)+B)とする第Xの画素スイッチ間信号線190_Xを出力線192_1と接続し、第X+1の画素スイッチ間信号線190_(X+1)を、出力線192_2と、接続する。以下、同様に、Xの値に基づいて画素スイッチ間信号線と出力線とを接続する。なお、画素スイッチ間信号線及び出力線を示す番号(X、X+1等)が12を超える場合には、適宜1からサイクリックに数えた番号のものと接続する。
【0085】
なお、画素スイッチ間信号線190は、受光領域16に属する画素数よりも多くてもよい。この場合、剰余に関しては、当該画素スイッチ間信号線190の数に基づいて変更される。また、上述したように、剰余によるものではなく、例えば、M、Nが入力された上で、接続関係を示すテーブルに基づいてスイッチを切り替えてもよい。剰余を用いることは、あくまでも一例であり、スイッチ回路18は、順序を調整するものであればどのような回路であってもよい。また、順序は、図に示したものではなく、例えば、下記に示す実施形態において位置の調整等のために、受光位置の対応付けができるものであればよい。
【0086】
以上のように、本実施形態によっても前述の各実施形態と同様に受光領域16を設定することによりある程度の広がりを有する領域において受光をすることが可能となる。さらに、受光領域16において相対的にどこに位置する画素からの出力かを把握することが可能であるので、中間の信号線の数を削減して配線容量をより小さく、かつ受光部の面積を小さくしつつも、受光領域16内における画素の順序を維持しつつ出力をすることが可能となる。
【0087】
(第5実施形態)
前述した実施形態に係る受光装置1は、LIDARに用いられてもよい。通常のLIDARに備えられる場合、発光部と、距離測定部を備えた距離測定装置において、前述の受光装置1が備えられ、発光部が発した光を受光した受光装置1からの出力に基づいて距離の測定が行われる。本実施形態は、さらに、受光位置、すなわち、受光領域16にズレが生じた場合に、受光領域の出力に基づいて、特に、複数の出力の出力分布に基づいて、受光領域16の位置を補正する受光装置1又は距離測定装置に関する。
【0088】
図16は、本実施形態における距離測定装置(LIDAR)に受光装置1が実装された状態のブロック図の一例を示す。距離測定装置3は、受光位置補正部24をさらに備える受光装置1に加え、発光部30と、距離測定部32と、を少なくとも備える。
【0089】
発光部30は、少なくともレーザ(例えば、LD:Laser Diode)等の発光デバイスを備える。また、発光デバイスを走査させるためのデバイスを備える。また、発光デバイスの向きを計測するセンサ、当該向きに関する情報を出力する出力デバイス等のデバイス(又は回路)が備えられていてもよい。本実施形態においては、発光部30は、対象に発光するとともに、発光デバイスの計測開始のタイミング及び計測開始のタイミングにおける向きを領域指定部20へと出力するデバイスを備えていてもよい。
【0090】
領域指定部20は、例えば、定められたアルゴリズム(例えば、正弦振動)とパラメタに基づいて、前述の実施形態において説明した受光領域16に対応する画素12の位置により受光部10へと受光領域16を通知する。受光領域16は、
図1及び
図2に示すように、受光部10に属する画素12のうち、所定の領域のことである。受光部10は、通知された位置に基づいて受光領域16内に存在する画素12からの出力を信号処理部22へと出力する。信号処理部22は、画素12からの信号を処理して距離測定部32及び受光位置補正部24へと出力する。本実施形態においては、例えば、信号処理部22は、第1方向に沿って連続する受光領域16内の画素12について、距離測定部32へと受光した結果を出力し、併せて、その信号強度の和を受光位置補正部24へと出力する。
【0091】
受光位置補正部24は、信号処理部22から出力された情報に基づいて、受光領域16の位置を補正する情報を決定する。この実施例では、受光領域16において受光された強度の分布に基づいて受光領域16の位置を補正する。補正情報は、領域指定部20又は受光部10へと出力され、受光装置1における受光領域16の位置の補正に用いられる。補正情報は、例えば、領域指定部20が定められたアルゴリズムとパラメタに基づいた情報に対して、補正情報に基づいて補正をして受光領域16として選択する位置を第1選択線120及び第2選択線160において選択してもよいし、受光部10において、領域指定部20から通知された情報に基づいて選択する信号の位置をずらして選択してもよい。この補正についての詳細は、後述する。
【0092】
距離測定部32は、信号処理部22において変換された信号を受信し、対象までの距離を測定する。対象までの距離は、発光部30から発光された時刻と、受光部10において受光された時刻とに基づいて決定される。この時間の決定は、距離測定部32が、発光部30の発光したタイミング、及び、信号処理部22を介して受光部10が受光したタイミングを受信して計測した結果に基づいてもよいし、発光部30が受光装置1へと発光タイミングを通知し、受光装置1において受光部10が受光したタイミングに基づいて、計測された時間を距離測定部32へと通知してもよい。
【0093】
距離測定部32は、発光及び受光したタイミングと、光速に基づいて対象までの距離を計測して外部へ出力する。
【0094】
前述で説明した受光部10の受光領域16を設定することにより、発光部30から発せられた光が広がりを有する場合について、受光することが可能であるが、受光部10等の温度変化や経年劣化等により、受光のタイミングがずれる場合がある。本実施形態では、このズレを計測し、自動的に受光領域16の位置の補正をする受光装置1について説明する。
【0095】
図16においては、受光位置補正部24は、受光装置1の内部に示されているが、これには限られず、受光装置1に備えられていてもよい。すなわち、受光装置1内で自動的に受光領域16のキャリブレーションを行ってもよいし、受光装置1外において情報を取得してキャリブレーションを行ってもよい。受光装置1外において補正情報を取得する場合には、当該補正情報を通知された受光装置1で補正をしてもよいし、受光装置1外から補正命令を通知して受光装置1における情報を補正してもよいし、あるいは、発光部30から領域指定部20への情報の通知を補正したものとして実質的に受光領域16の位置を補正してもよい。また、受光位置補正部24は、距離測定部32に備えられ、距離測定とともに受光位置の補正をしてもよい。受光装置1以外の距離測定装置3との情報の伝達において、時間が掛かることがあるので、より望ましくは、
図16に示されるように、受光装置1において受光位置補正部24が備えられる構成である。
【0096】
図17は、受光領域16における受光強度の一例を示す図である。この
図17において、受光領域16内の画素を示す色の濃さは、受光強度を示し、色が明るいほど受光強度が大きく、色が暗いほど受光強度が小さいことを示す。受光領域16は、第1所定値が3、第2所定値が5である3×5の領域で示している。受光領域16において、例えば、受光された強度が図に示すように第2位置により異なっているものとする。
【0097】
図18は、
図17の第2方向位置と受光強度との関係を示す図である。これは、例えば、遠方からの反射光を画素2つ分の幅に光がフォーカスされるようにした受光光学系設計に基づく。その設計の結果、2~3画素に遠方からの反射光が集光され、その周囲にも弱く光が当たる光の拡がりが観測される。
【0098】
なお、説明のために第2方向のみに拡がっていることを示しているが、これには限られず、第1方向にも拡がっていてもよい。以下の説明は、第2方向の広がりのみについての計測及び補正について説明するが、これは、第1方向についても同様に行うことが可能である。すなわち、第1方向又は第2方向のいずれかの方向である補正方向において、受光強度からズレを推定し、補正する。第1方向又は第2方向のいずれかではなく、双方においてズレを補正してもよく、この場合、補正方向は、それぞれの補正の向きに基づいて、第1方向又は第2方向として考慮してズレの補正を実行する。
【0099】
発光部30において発光素子が第2方向に対して単振動をして走査されている場合、例えば、受光部10において発光部30が発した光が到達する位置は、以下の式により求められる。
【数1】
【0100】
一方、実際に受光領域16において受光された光の強度について出力された信号処理部22において、第1方向に連続する画素12からの出力の和を、それぞれ
図17に示すように、210A、210B、・・・、210Eとおく。
図17の場合、受光した強度分布は、210A<210B<210C<210D>210Eとなる。当該受光領域16においては、受光領域16が左にずれており、その領域を右側へずらすことにより、より精度よく受光されることが推定される。上記のように、受光領域16中の全ての第1方向に沿って和を取った強度210A、210B、・・・について大小関係を求めてもよいし、単純に、210Aと210E(受光領域16の両端における和)を比較して、210A>210Bなら左へ、210A<210Eなら右へずれているとしてもよい。
【0101】
[数1]において、a、ω又はφの値を変更することにより受光領域16の位置を補正することが可能である。例えば、受光領域16の位置がNの小さい方から大きい方へと移動している場合について考える。この場合、単純にφを大きくして位相をずらすことにより、受光領域16を右側へずらすことが可能である。第2方向の位置Nが受光部10の中心から右側である場合には、例えば、振幅aを大きくする、又は、振動数ωを大きくすることにより、受光領域16を右側へずらすことが可能である。逆に、第2方向の位置Nが中心から左側である場合には、例えば、振幅aを小さくする、又は、振動数ωを小さくすることにより、受光領域16を右側へずらすことが可能である。このように、次の受光タイミングにおいてより望ましい結果が得られるように、受光領域16の位置を補正することができる。
【0102】
受光領域16の位置がNの大きい方から小さい方へと移動している場合には、例えば、上記の逆となるように補正を行う。また、さらに単純に、いずれの場合においても、領域指定部20が、選択する領域について、第2方向の位置を、例えば、現在の値に対して+α(α≧1)することにより、受光領域16を右側へ動かしてもよい。
【0103】
このαの値は、受光領域16において受光された強度分布に基づいて算出されてもよいし、所定の値、例えば、α=1等としてもよい。最も単純には、受光領域16が左にずれている場合には、第2方向の受光位置を+1とし、受光領域16が右側にずれている場合には、第2方向の受光位置を-1とする。
【0104】
αの値を可変とする場合、例えば、以下のようにαを求める。
図18のような強度分布になる場合、実線で示されるような上に凸の曲線を求めて分布の中央からαを推定する。また、FIR相関フィルタ等を用いて実線の曲線にフィットさせた破線の直線を求め、分布の中央を求め、αを推定してもよい。このように強度分布に基づいて推定されたαにより受光領域16の位置を補正する。
【0105】
また、対象に照射して反射された光の強度を取得して補正を行う場合、反射の対象となる物体により、反射強度にムラがでる場合がある。このような場合に対処するべく、例えば、複数回の受光データを取得し、受光領域16内における位置における受光強度の平均値等の統計量を用いて、受光領域16内における強度分布を取得し、このように取得された強度分布に基づいて、位置ズレ量αを推定する。これにより、対象となる物体における反射ムラ等の意図しない偏りを排除した安定した画素走査が可能となる。
【0106】
別の例として、上記では、210A、・・・の一つの第1方向に沿った和を対象としたが、これには限られず、例えば、210AC=210A+210B+210C、210BD=210B+210C+210D、210CE=210C+210D+210Eとして、相当数の(例えば、1フレーム分の)計測を行ってその合計値を求め、210AC、210BD、210CEの合計値の大小を比較して、補正をしてもよい。例えば、210ACの合計値が最も大きい場合には、位置を1左にずらし、210BDの合計値が最も大きい場合には、ずらさず、210CEの合計値が最も大きい場合には、位置を1右にずらす補正をする。このように、強度分布に基づいて高速に演算が行える指標を用いて補正を行う。
【0107】
さらに別の例として、迷光を用いて補正をしてもよい。迷光とは、距離測定装置3において、射出された光がその筐体により反射、散乱される場合があり、この反射、散乱のことを言う。迷光を受光部10により受光される領域が存在する場合がある。例えば、発光部30による発光デバイスの振幅が大きいと、距離測定装置3の筐体の内部において反射が発生し、この反射光を受光部10が受光する場合がある。
【0108】
このように迷光が発生する状態において、受光部10が受光する位置データ等を図示しない記憶部に記憶しておき、当該記憶された位置データとのズレをもちいて補正を行ってもよい。記憶するデータは、例えば、工場出荷時や自動車等に搭載して初めて起動したタイミングにおいて取得されたデータである。基準となる迷光の受光状態を記憶し、距離測定の実行時や実行前等に、同じ状態における迷光を受光して記憶部に記憶されている位置データと比較することにより、ズレを補正してもよい。
【0109】
この場合、検出までの時間と、強度分布とに基づいて、走査の同期、走査範囲等を調整する。迷光を用いることにより、射出した位置により一意に定まる値であるので、物体からの反射光を用いる方法と比べてより安定した調整を図ることが可能である。また、より少ない計測回数での調整が可能であるので、より迅速な調整が可能となり、異常が発生した場合にも早期に検知できる。
【0110】
従来、1画素の範囲に受光させ、その受光位置と画素位置の指定を、発光デバイスに備え付けられたセンサに基づいて合わせるには、非常に精度のセンシングと制御を必要とした。しかし、以上のように、本実施形態によれば、ある程度の範囲を有する受光領域16における画素12からの受光により、容易かつ確実に、受光位置の補正をも行うことが可能となる。また、このように補正を行うことにより、装置の経年劣化や突発的に発生した異常に対しても対応することが可能となる。
【0111】
(第6実施形態)
図19は、受光装置の出力に対して、一定時間の信号の数をカウントする積算器(積分器)を、受光装置の中に設けたものである。本実施形態において、受光装置1は、画素12と出力との間に、パルス検出器40と、各種スイッチ(第1スイッチ110及び第2スイッチ150、又は、スイッチ回路18)と、積算器42と、を備える。スイッチの構成については、前述の各実施形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。第2信号線140が、積算器42の入力として接続される。信号処理装置の有る場合は、積算器42の出力が、信号処理装置の入力として接続される。
【0112】
パルス検出器40は、画素12が検出して出力した信号からパルス状の信号を検出する。例えば、パルス検出器40は、1つの画素12に対して1つ備えられる。別の例としては、
図4等における第2信号線140のそれぞれに対して、又は、
図14に示す出力線192のそれぞれに対して1つのパルス検出器40が備えられてもよい。画素12の性能によっては、このパルス検出器40は必須の構成ではない。例えば、画素12からのパルス状の信号が積算器42においてパルス検出器40を介さずに適切に検出できる場合には、パルス検出器40を省略してもよい。パルス検出器40は、アナログ又はデジタル回路により構成されるパルス検出回路として備えられるものであってもよい。
【0113】
積算器42は、パルス検出器40が出力した結果、又は、パルス検出器40が備えられない場合には、画素12が出力した結果を、積算する。積算器42は、例えば、受光領域16内にある画素12からの出力を受信するように、スイッチを介してパルス検出器40又は画素12と接続される。スイッチについては、前述に示す各種スイッチと同様に、画素12が受光領域16内である場合にはオンとなり、それ以外の場合にはオフとなる。すなわち、受光領域16に属する画素について、パルス検出器40又は画素12と、積算器42とが接続される。また、この積算器の出力値は、定期的に、例えば、10ns毎にリセットされる。
【0114】
この積算器42は、アナログ又はデジタル回路により実装される積算回路であってもよい。また、別の例として、積算器42は、所定時間ごとにリセットされるパルスを計数するカウンタ回路であってもよい。なお、積算器42は、受光装置1の内部ではなく、外部に備えられ、受光装置1からのパルス出力に対する積算を行ってもよい。画素当たりのSPAD数が1個の場合は、出力信号は2値のデジタル信号に相当するが、この積算器により、出力信号が多値化され(多値のアナログ信号になり)、後段のAD変換器にて復元される。受光装置1と信号処理部22は異なる半導体プロセスによって製造されることが望ましく、別のICチップとして実装されることが多い。その場合に、多値化により、チップ間の配線数を低減し、チップのピン数を減らし、ICパッケージを小型化することが可能になる。
【0115】
SPADの応答は、受光する光がパルス状である場合には高速であり、例えば、数GHzの帯域を有する。これは、SPADを備える画素についても同様であり、1つのSPADを備える画素又は複数のSPADを備える画素の応答もまた、受光する光がパルス状である場合には、例えば、数GHzの帯域を有する。このため、受光装置と信号処理装置の間の配線が長い場合は、信号が劣化して伝わらない場合がある。
【0116】
そこで、例えば、10nsという時間に発生するパルスの数をカウントすることにより、受光した強度を測定する。
図20は、SPADがパルスを受光する場合の測定例を示す図である。受光したパルスの数をほぼ10nsの間維持されるアナログ値として出力することにより、より確実に伝搬させることが可能になる。
【0117】
この積算器42は、受光部10に備えられる全てのSPAD又は全ての画素に1対1対応するように搭載する必要はなく、出力と同じ数、すなわち、受光領域16に備えられるSPAD又は画素の数だけ搭載すればよい。出力の数は、受光部10に備えられる画素等の数より遥かに少ないため、全ての画素等に対応して搭載することと比較し、より少ないシリコン面積で実装できる。また、積算器42は、必ずしも受光部10に実装する必要ない。積算器42が受光部10ではなく、受光装置1、又は、受光装置1外の距離測定装置3に実装される場合、受光部10のセンサ面積比率を低下させること、すなわち、受光感度を低下させることがなく実装することが可能である。
【0118】
図21は、パルス状の光を受光する場合の測定について、別の例を示す図である。この
図21に示すように、積算器としてローパスフィルタを使用することもできる。ローパスフィルタを用いることにより、近似的に積算と同様の測定を行うことが可能である。また、ローパスフィルタの一部又は全部を受光装置の外に備えていてもよい。ローパスフィルタは、キャパシタと抵抗により構成されるが、一般には、アナログ又はデジタルの回路、IIR回路又はFIR回路により実装されてもよい。なお、ローパスフィルタの場合は、前述のリセット機能は必要ない。
図19に示すように、SPAD又は画素と出力の間に、パルス検出を行う回路を挿入し、それによりSPAD等の信号をデジタル信号に変換してから、出力することも可能である。
【0119】
本実施形態の積算器と、小型で高速なSPADを組み合わせることにより、高解像な受光装置を実現できる。例えば、従来のSPADよりも4倍高速、かつ、同じサイズのSPADを搭載し、4bitの積算器42を備えて多値化(4値化)してもよい。この場合、従来のSPAD4個と同等の検出能力が期待され、おおよそ1/4の面積で受光装置1を実現できる。また、視点を変えると、同等の面積で約4倍の画素数の受光装置1を実現できる。さらに、小さいSPADと積算器を組み合わせた場合、小さいSPADは反応速度が高速になるため、面積の小ささと積算器による多値化の相乗効果により、更に画素数の大きな(高解像な)受光装置1を実現できることになる。
【0120】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0121】
1:受光装置
10:受光部
12:画素
14:SPAD
16、16A、16B:受光領域
100、101、102、103:第1信号線
110、111、112、113:第1スイッチ
120、121、122、123:第1選択線
130、131、132、133:第1ダミー線
140、141、142、143:第2信号線
150、151、152、153:第2スイッチ
160、161、162、163:第2選択線
170、171、172、173:第2ダミー線
180:第1フラグ線
190:画素スイッチ間信号線
192:出力線
20:領域指定部
22:信号処理部
24:受光位置補正部
3:距離測定装置
30:発光部
32:距離測定部
40:パルス検出器
42:積算器