(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】計時器の月相表示機構
(51)【国際特許分類】
G04B 19/26 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
G04B19/26 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023047698
(22)【出願日】2023-03-24
【審査請求日】2023-03-24
(32)【優先日】2022-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】594082512
【氏名又は名称】ブランパン・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・レイモン
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-092549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器用ムーブメント(200)によって駆動されることができる、計時器の月相表示機構(100)であって
、
前記月相表示機構(100)は、
少なくとも1つの月の表現を担持する月相インジケーター(110)と、
前記計時器用ムーブメント(200)によって駆動されることができ、かつ、前記月相インジケーター(110)をジャンプ駆動することができる、前記月相インジケーター(110)のジャンプ駆動機構(120)とを備え、
前記ジャンプ駆動機構(120)は、前記月相インジケーター(110)を1日当たりn
回断続的に所定の角度で増分
させて回転させるように構成
されており、
nは1よりも大きく、
各増分は、日当たり
の回転
ピッチ角度をnで割った角度に対応する角度α分、前記月相インジケーター(110)を回転させ
、
前記ジャンプ駆動機構(120)は、駆動フィンガーピース(124)を形成する活性領域を備えかつ前記計時器用ムーブメント(200)によって駆動可能であるカム(121)と、ピボット軸(2)を中心に回転するように取り付けられた相レバー(130)とを備え、
前記相レバー(130)は、一端において、前記カム(121)の運動を感知するフィーラー(132)を備え、他端において、前記カム(121)の前記活性領域が通過するごとに前記月相インジケーター(110)を駆動する補正ビーク(134)を備え、これにより、前記カム(121)の運動に基づいて前記月相インジケーター(110)を駆動する活性位置と前記月相インジケーター(110)を駆動しない休み位置との間で回転し、
前記カム(121)は、前記相レバー(130)が前記活性位置から前記休み位置に戻るときに前記計時器用ムーブメント(200)に応力を与えないように前記計時器用ムーブメント(200)に対し相対回転する
ことを特徴とする月相表示機構(100)。
【請求項2】
計時器用ムーブメント(200)によって駆動されることができる、計時器の月相表示機構(100)であって、
前記計時器用ムーブメント(200)は、時分割に依存して動作し、
前記月相表示機構(100)は、
少なくとも1つの月の表現を担持する月相インジケーター(110)と、
前記計時器用ムーブメント(200)によって駆動されることができ、かつ、前記月相インジケーター(110)をジャンプ駆動することができる、前記月相インジケーター(110)のジャンプ駆動機構(120)とを備え、
前記ジャンプ駆動機構(120)は、前記月相インジケーター(110)を1日当たりn回断続的に所定の角度で増分
させて回転させるように構成されており、
nは1よりも大きく、
各増分は、日当たりの回転ピッチ角度をnで割った角度に対応する角度α分、前記月相インジケーター(110)を回転させ、
前記ジャンプ駆動機構(120)は、
駆動フィンガーピース(124)を形成する活性領域があり前記計時器用ムーブメント(200)によって駆動可能であるカム(121)と、
ピボット軸(2)を中心に回転するように取り付けられた相レバー(130)とを備え、
前記相レバー(130)には、一端において、前記カム(121)の運動を感知するフィーラー(132)があり、他端において、前記カム(121)の前記活性領域が通過するごとに前記月相インジケーター(110)を駆動する補正ビーク(134)があ
り、
前記カム(121)は、12時間で完全な1回転をするように回転し、
前記カム(121)には、前記相レバー(130)を回転させて前記月相インジケーター(110)を1日2回駆動するように構成している駆動フィンガーピースを形成する単一の活性領域がある
ことを特徴とす
る月相表示機構(100)。
【請求項3】
計時器用ムーブメント(200)によって駆動されることができる、計時器の月相表示機構(100)であって、
前記計時器用ムーブメント(200)は、時分割に依存して動作し、
前記月相表示機構(100)は、
少なくとも1つの月の表現を担持する月相インジケーター(110)と、
前記計時器用ムーブメント(200)によって駆動されることができ、かつ、前記月相インジケーター(110)をジャンプ駆動することができる、前記月相インジケーター(110)のジャンプ駆動機構(120)とを備え、
前記ジャンプ駆動機構(120)は、前記月相インジケーター(110)を1日当たりn回断続的に所定の角度で増分
させて回転させるように構成されており、
nは1よりも大きく、
各増分は、日当たりの回転ピッチ角度をnで割った角度に対応する角度α分、前記月相インジケーター(110)を回転させ、
前記ジャンプ駆動機構(120)は、
駆動フィンガーピース(124)を形成する活性領域があり前記計時器用ムーブメント(200)によって駆動可能であるカム(121)と、
ピボット軸(2)を中心に回転するように取り付けられた相レバー(130)とを備え、
前記相レバー(130)には、一端において、前記カム(121)の運動を感知するフィーラー(132)があり、他端において、前記カム(121)の前記活性領域が通過するごとに前記月相インジケーター(110)を駆動する補正ビーク(134)があり、
前記カム(121)は、24時間ごとに完全な1回転をするように回転し、
前記カム(121)には、前記相レバー(130)を回転させ前記月相インジケーター(110)を1日2回駆動するように構成している2つの駆動フィンガーピース(124)を形成する、互いに180°離れていて反対側にある2つの活性領域がある
ことを特徴とする月相表示機構(100)。
【請求項4】
計時器用ムーブメント(200)によって駆動されることができる、計時器の月相表示機構(100)であって、
前記計時器用ムーブメント(200)は、時分割に依存して動作し、
前記月相表示機構(100)は、
少なくとも1つの月の表現を担持する月相インジケーター(110)と、
前記計時器用ムーブメント(200)によって駆動されることができ、かつ、前記月相インジケーター(110)をジャンプ駆動することができる、前記月相インジケーター(110)のジャンプ駆動機構(120)とを備え、
前記ジャンプ駆動機構(120)は、前記月相インジケーター(110)を1日当たりn回断続的に所定の角度で増分
させて回転させるように構成されており、
nは1よりも大きく、
各増分は、日当たりの回転ピッチ角度をnで割った角度に対応する角度α分、前記月相インジケーター(110)を回転させ、
前記ジャンプ駆動機構(120)は、
駆動フィンガーピース(124)を形成する活性領域があり前記計時器用ムーブメント(200)によって駆動可能であるカム(121)と、
ピボット軸(2)を中心に回転するように取り付けられた相レバー(130)とを備え、
前記相レバー(130)には、一端において、前記カム(121)の運動を感知するフィーラー(132)があり、他端において、前記カム(121)の前記活性領域が通過するごとに前記月相インジケーター(110)を駆動する補正ビーク(134)があり、
前記カム(121)は、12時間ごとに完全な1回転をするように回転し、
前記カムには、前記相レバー(130)を回転させて前記月相インジケーター(110)を1日4回駆動するように構成している2つの駆動フィンガーピース(124)を形成する、互いに180°離れていて反対側にある2つの活性領域があり、
前記月相表示機構(100)は、月相周期を29.53125日にするように構成しており、
前記月相インジケーター(110)は、日当たり6.1°回転するように、1日4回、角度1.525°ずつ増分する
ことを特徴とする月相表示機構(100)。
【請求項5】
前記カム(121)は、12時間で完全な1回転をするように回転し、
前記カム(121)には、前記相レバー(130)を回転させて前記月相インジケーター(110)を1日2回駆動するように構成している駆動フィンガーピースを形成する単一の活性領域がある
ことを特徴とする請求項1に記載の月相表示機構(100)。
【請求項6】
前記カム(121)は、24時間ごとに完全な1回転をするように回転し、
前記カム(121)には、前記相レバー(130)を回転させ前記月相インジケーター(110)を1日2回駆動するように構成している2つの駆動フィンガーピース(124)を形成する、互いに180°離れていて反対側にある2つの活性領域がある
ことを特徴とする請求項1に記載の月相表示機構(100)。
【請求項7】
前記月相表示機構(100)は、月相周期を29.53125日にするように構成しており、
前記月相インジケーター(110)は、日当たり6.1°回転するように1日2回角度3.05°ずつ増分する
ことを特徴とする請求項1に記載の月相表示機構(100)。
【請求項8】
前記月相表示機構(100)は、月相周期を29.53125日にするように構成しており、
前記月相インジケーター(110)は、日当たり6.1°回転するように、1日2回、角度3.05°ずつ増分する
ことを特徴とする請求項6に記載の月相表示機構(100)。
【請求項9】
前記カム(121)は、12時間ごとに完全な1回転をするように回転し、
前記カムには、前記相レバー(130)を回転させて前記月相インジケーター(110)を1日4回駆動するように構成している2つの駆動フィンガーピース(124)を形成する、互いに180°離れていて反対側にある2つの活性領域があり、
前記月相表示機構(100)は、月相周期を29.53125日にするように構成しており、
前記月相インジケーター(110)は、日当たり6.1°回転するように、1日4回、角度1.525°ずつ増分する
ことを特徴とする請求項1に記載の月相表示機構(100)。
【請求項10】
前記ジャンプ駆動機構(120)は、前記相レバー(130)によって回転される相駆動中間車セット(140)を備え、
前記相駆動中間車セット(140)は、前記月相インジケーター(110)と噛み合う
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の月相表示機構(100)。
【請求項11】
前記相駆動中間車セット(140)は、前記相レバー(130)によって回転されるように構成している相駆動星形車(141)と、前記相駆動星形車(141)とともに回転するように前記相駆動星形車(141)と一体的となっている相駆動ピニオン(142)とを備え、
前記相駆動ピニオン(142)は、前記月相インジケーター(110)に含まれる相車(112)と噛み合う
ことを特徴とする請求項10に記載の月相表示機構(100)。
【請求項12】
前記ジャンプ駆動機構(120)は、各増分の間に前記相レバー(130)によって回転される相駆動中間車セット(140)をインデクシングし適切な位置に保持するように前記相駆動中間車セット(140)と連係するジャンパー(160)を備える
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の月相表示機構(100)。
【請求項13】
前記月相表示機構(100)は、前記月相インジケーター(110)の位置を補正するようにユーザーによって活性化することができる迅速補正デバイス(300)を備える
ことを特徴とする請求項10に記載の月相表示機構(100)。
【請求項14】
前記迅速補正デバイス(300)は、前記相駆動中間車セット(140)によって担持され相補正コマンダー(315)によって駆動されるように構成している補正星形車(330)を備える
ことを特徴とする請求項13に記載の月相表示機構(100)。
【請求項15】
前記相車(112)には、109個の歯があり、
前記相駆動ピニオン(142)には、16個の歯があり、
前記相駆動星形車(141)には、18個の歯がある
ことを特徴とする請求項11に記載の月相表示機構(100)。
【請求項16】
前記補正星形車(330)には、9個の歯がある
ことを特徴とする請求項14に記載の月相表示機構(100)。
【請求項17】
前記月相表示機構(100)は、前記月相インジケーター(110)が前記ジャンプ駆動機構(120)によって駆動されるのと同じときに前記迅速補正デバイス(300)を介して迅速補正行為が行われるときに、前記ジャンプ駆動機構(120)を切断するための安全デバイス(180)を備える
ことを特徴とする請求項13に記載の月相表示機構(100)。
【請求項18】
請求項1から9のいずれか一項に記載の月相表示機構(100)を備える
ことを特徴とする計時器用ムーブメント(200)。
【請求項19】
運動ワーク(210)、時車(220)、及び分中央ピニオン(230)を備え、
前記月相表示機構(100)は、駆動フィンガーピース(124)を形成する活性領域があるカム(121)を備え、
前記カム(121)は、前記時車(220)の回転によって駆動される
ことを特徴とする請求項18に記載の計時器用ムーブメント(200)。
【請求項20】
前記カム(121)は、前記時車(220)と同軸に配置され、前記時車(220)に対して自由に回転するように取り付けられる
ことを特徴とする請求項19に記載の計時器用ムーブメント(200)。
【請求項21】
前記カム(121)は、前記時車(220)の方へと延在しているインデクシング要素(125)を備え、
前記時車(220)には、前記インデクシング要素(125)を受けるように構成している溝(221)があり、
この溝(221)は、前記時車(220)に対する前記カム(121)の相対的な回転を制限する当接体を形成する
ことを特徴とする請求項20に記載の計時器用ムーブメント(200)。
【請求項22】
請求項1に記載の月相表示機構(100)を備える、又は
請求項18に記載の計時器用ムーブメント(200)を備える
ことを特徴とする計時器。
【請求項23】
腕時計である
ことを特徴とする請求項22に記載の計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、完全な1月相周期の間における月の状態に関する情報を表示することを可能にする計時器の月相表示機構の分野に関する。
【0002】
本発明は、さらに、このような月相表示機構を備える計時器用ムーブメントに関する。
【0003】
本発明は、さらに、月相表示機構を備える、計時器、例えば腕時計、に関する。
【背景技術】
【0004】
月相表示機構は、月相周期の間の月の状態に関する情報を表示することを可能にする。この月相周期は、理論的には、正確に29日間12時間44分2.8秒である。
【0005】
最も一般的な月相表示機構は、2つの月の表現があるディスクを担持する59歯の星形車がジャンプ駆動する機構であり、このディスクの一部を、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)の表盤に形成された適切な形状の開口を通してユーザーが見ることができ、この開口は、漸大月、満月、欠けていく月、及び新月である異なる月相を順次見せる。
【0006】
この59歯の星形車は、24時間車によって1日1回駆動される。このような月相表示機構は、月相周期が29.5日であるように表示することを可能にし、したがって、信頼性が高く、かさばらず、低コストな機構によって概算結果を与える。しかし、このような機構は、月相周期ごとにエラーを蓄積してしまい、このようなエラーを補正デバイスによって2.65年ごとに補償しなければならない。
【0007】
計時器の分野において、月相表示機構の精度を向上させるための探索が常に行われている。
【0008】
最もよく知られている月相表示機構は、様々な機構や精密なギア比を用いて月相周期の理論値にできるだけ近づくようにすることによって、月相周期の精度を向上させようとしている。
【0009】
例えば、より複雑なジャンプタイプの月相表示機構は、29.53125日の月相周期を与えることが知られており、これによって、122.4年当たり1日分の補正しか必要なくなる。
【0010】
ドラッグタイプ(dragging type)の月相表示機構も存在しており、これにおいては、複雑で非常に大きな機構を用いて、月相周期の精度をさらに向上させ、292年279日当たり1日分、さらには1866年当たり1日分の補正しか必要ない。
【0011】
このようなドラッグタイプの月相表示機構には、月体に対する月の状態を一日にわたって正確かつリアルタイムに表示することができるという利点がある。特に、月ディスクが1日1回ジャンプ駆動されるジャンプタイプの表示機構とは対照的に、このドラッグタイプの機構においては月が1日中駆動される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、ジャンプによる表示の駆動は、日中絶えず変わる月体に対して、表示される月の状態の「表示エラー」を発生させてしまう。このジャンプ駆動のタイプにおいては、複雑であったとしても、固有な前記のような「表示エラー」が、月相表示機構の月相周期の精度にかかわらず、最大で1日当たり6.1°の累積的な表示エラーを発生させてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これに関連して、本発明は、従来技術の月相表示機構と比べて表示の精密度(resolution)が改善されたジャンプタイプの月相表示機構を提案するものである。このジャンプタイプの月相表示機構は、製造や実装が高コストであり面倒であり複雑であるドラッグタイプの表示機構の必要性をなくしつつ、現実に近くなるように「表示エラー」を小さくし、表示機構を複雑にせずに月の状態に近づけることを可能にする。
【0014】
このために、本発明は、計時器用ムーブメントによって駆動されることができる、計時器の月相表示機構に関し、前記計時器用ムーブメントは、時分割に依存して動作し、前記月相表示機構は、少なくとも1つの月の表現を担持する月相インジケーターと、前記計時器用ムーブメントによって駆動されることができ、かつ、前記月相インジケーターをジャンプ駆動することができる、前記月相インジケーターのジャンプ駆動機構とを備え、前記ジャンプ駆動機構は、前記月相インジケーターを1日当たりn増分回転させるように構成しており、nは1よりも大きく、各増分は、日当たりのピッチの回転角度をnで割った角度に対応する角度α分、前記月相インジケーターを回転させる。
【0015】
前段落に記載したものの他、本発明に係る月相表示機構は、個別に、又は技術的に可能な任意の組み合わせに従って、考慮される、以下の特徴のうちの一又は複数の相補的な特徴を有することができる。
- 前記ジャンプ駆動機構は、駆動フィンガーピースを形成する活性領域があり前記計時器用ムーブメントによって駆動可能であるカムと、ピボット軸を中心に回転するように取り付けられた相レバーとを備え、前記相レバーには、一端において、前記カムの運動を感知するフィーラーがあり、他端において、前記カムの前記活性領域が通過するごとに前記月相インジケーターを駆動する補正ビークがある。
- 前記カムは、12時間で完全な1回転をするように回転し、前記カムには、前記相レバーを回転させて前記月相インジケーターを1日2回駆動するように構成している駆動フィンガーピースを形成する単一の活性領域がある。
- 前記カムは、24時間ごとに完全な1回転をするように回転し、前記カムには、前記相レバーを回転させ前記月相インジケーターを1日2回駆動するように構成している2つの駆動フィンガーピースを形成する、互いに180°離れていて反対側にある2つの活性領域がある。
- 前記月相表示機構は、月相周期を29.53125日にするように構成しており、前記月相インジケーターは、日当たり6.1°回転するように1日2回角度3.05°ずつ増分する。
- 前記カムは、12時間ごとに完全な1回転をするように回転し、
前記カムには、前記相レバーを回転させて前記月相インジケーターを1日4回駆動するように構成している2つの駆動フィンガーピースを形成する、互いに180°離れていて反対側にある2つの活性領域があり、前記月相表示機構は、月相周期を29.53125日にするように構成しており、前記月相インジケーターは、日当たり6.1°回転するように、1日4回、角度1.525°ずつ増分する。
- 前記月相表示機構は、月相周期を29.53125日にするように構成しており、前記月相インジケーターは、日当たり6.1°回転するように、1日2回、角度3.05°ずつ増分する。
- 前記ジャンプ駆動機構は、前記相レバーによって回転される相駆動中間車セットを備え、前記相駆動中間車セットは、前記月相インジケーターと噛み合う。
- 前記相駆動中間車セットは、前記相レバーによって回転されるように構成している相駆動星形車と、前記相駆動星形車とともに回転するように前記相駆動星形車と一体的となっている相駆動ピニオンとを備え、前記相駆動ピニオンは、前記月相インジケーターに含まれる相車と噛み合う。
- 前記ジャンプ駆動機構は、各増分の間に前記相駆動中間車セットをインデクシングし適切な位置に保持するように前記相駆動中間車セットと連係するジャンパーを備える。
- 前記月相表示機構は、前記月相インジケーターの位置を補正するようにユーザーによって活性化することができる迅速補正デバイスを備える。
- 前記迅速補正デバイスは、前記相駆動中間車セットによって担持され相補正コマンダーによって駆動されるように構成している補正星形車を備える。
- 前記相車には、109個の歯があり、前記相駆動ピニオンには、16個の歯があり、前記相駆動星形車には、18個の歯がある。
- 前記補正星形車には、9個の歯がある。
- 前記月相表示機構は、前記月相インジケーターが前記ジャンプ駆動機構によって駆動されるのと同じときに前記迅速補正デバイスを介して迅速補正行為が行われるときに、前記ジャンプ駆動機構を切断するための安全デバイスを備える。
【0016】
本発明は、さらに、本発明に係る月相表示機構を備える計時器用ムーブメントに関する。
【0017】
好ましいことに、前記計時器用ムーブメントは、運動ワーク、時車、及び分中央ピニオンを備え、前記月相表示機構は、駆動フィンガーピースを形成する活性領域があるカムを備え、前記カムは、前記時車の回転によって駆動される。
【0018】
好ましいことに、前記カムは、前記時車と同軸に配置され、前記時車に対して自由に回転するように取り付けられる。
【0019】
好ましいことに、前記カムは、前記時車の方へと延在しているインデクシング要素を備え、前記時車には、前記インデクシング要素を受けるように構成している溝があり、この溝は、前記時車に対する前記カムの相対的な回転を制限する当接体を形成する。
【0020】
本発明は、さらに、本発明に係る月相表示機構を備える、又は本発明に係る計時器用ムーブメントを備える、計時器に関する。
【0021】
好ましいことに、前記計時器は、腕時計である。
【0022】
図面を参照しながら以下に与えられる詳細な説明を読むことによって、本発明の目的、利点及び特徴を明確に理解することができる。すべての図において、特に言及しないかぎり、共通の要素に対しては同じ参照符号を割り当てている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る月相表示機構の1つの実施例についての斜視図を示している。
【
図2】
図1に示している月相表示機構の前記実施例を上から見た図を示している。
【
図3】
図1に示している月相表示機構の前記実施例を下から見た図を示している。
【
図4】本発明に係る月相表示機構のジャンプ駆動機構の一部についての斜視図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、概して、ジャンプタイプの月相表示機構の月相インジケーターの日当たりの駆動ピッチを分割して、表示される月相インジケーターの精密度を向上させ、昼間の月体の実際の状態に可能な限り近づけるという考えに基づいている。
【0025】
本出願において、「日当たりのピッチ」は、月相表示機構の近似的な月相周期に応じて月相インジケーターが動く日当たりの角ピッチを意味すると理解することができる。
【0026】
図1は、本発明に係る月相表示機構100の1つの実施例についての斜視図を示している。
【0027】
図2は、
図1に示している月相表示機構100の実施例を上から見た図を示しており、
図3は、同じ実施例についての下から見た図を示している。
【0028】
本発明に係る月相表示機構100は、ジャンプタイプの表示機構である。すなわち、月の表現を担持する月相インジケーターが、計時器用ムーブメントのギア列によって連続的に応力を受けない。したがって、このような機構は、機能的にも構造的にも、月相インジケーターが計時器用ムーブメントのギア列によって常に応力を受けて駆動されるようなドラッグタイプの月相表示機構とはまったく異なっている。
【0029】
本発明に係る月相表示機構100は、計時器内、例えば、腕時計(図示せず)のケース内、に収容されるように意図されている。
【0030】
本発明に係る月相表示機構100は、
図1~3に部分的に示している計時器用ムーブメント200、具体的には動作が時間の分割に依存する機構、によって駆動される。
【0031】
具体的には、計時器用ムーブメント200は、特に、分ピニオン211と分車212を含む運動ワーク210を備える。分ピニオン211は、時車220を駆動し、アセンブリーは、時車220が12時間で完全な1回転をするように構成している。
【0032】
図1~3に示している実施例において、時車220は、計時器用ムーブメント200の中心にあり、したがって、中心車を形成する。時車220には、時針(図示せず)を担持する円筒状領域222がある。分針(図示せず)は、時車220と同軸に取り付けられた分中央ピニオン230のキャノンピニオン231によって担持される。分中央ピニオン230は、運動ワーク210、特に、分車212、と噛み合う。
【0033】
月相表示機構100は、月相インジケーター110を備え、この月相インジケーター110の少なくとも一部は、計時器の表盤(図示せず)に形成された適当な形状の開口を介してユーザーが見ることができるように意図されており、これによって、漸大月、満月、欠けていく月、新月である、異なる月相を順次見せる。
【0034】
月相インジケーター110は、計時器用ムーブメント100によって、かつ/又はユーザーによって迅速補正デバイス300を介して、規則的な間隔で駆動されるジャンプ駆動機構120によって動かされる。
【0035】
月相インジケーター110は、少なくとも1つの月の表現を担持する。図示している例において、月相インジケーター110には、2つの月の表現がある。
【0036】
図示している実施例において、月相インジケーター110は、2つの月の表現を担持する上側ディスク111によって形成される。上側ディスク111は、複数の歯がある相車112と一体的であるように取り付けられる。
【0037】
ジャンプ駆動機構120は、時車220の回転によって直接駆動される相駆動要素を備える。相駆動要素は、ピボット軸2を中心に回転するように取り付けられた相レバー130と連係する。相レバー130は、月相インジケーター110と相互作用して相レバー130が傾くたびに同じように回転するように、相駆動要素によって回転される。
【0038】
図1~3に示している実施例において、相駆動要素は、計時器用ムーブメント200によって直接駆動されるカム121によって形成される。特に、カム121は、時車220によって直接回転され、時車220と同軸に取り付けられる。
【0039】
この第1の実施例において、カム121は、時車220と中央ピニオン230の間に挿入される。しかし、他の構成も可能である。
【0040】
図4は、時車220と中央ピニオン230と同軸に取り付けられた、相駆動要素として作用するカム121を具体的に示している。この
図4において、カム121とその相レバー130との相互作用をわかりやすくするために、時車220は示していない。
【0041】
カム121は、時車220の回転軸6を中心に自由に回転するように取り付けられる。
【0042】
カム121は、相レバー130と相互作用するように構成している感知用輪郭を形成する外側輪郭123を形成する。外側輪郭123には、時車220の回転軸6から半径方向にて最も遠い領域である活性な感知用領域がある。この活性な感知用領域は、相レバー130と接触して、カム121が回転しているときにその相レバー130を傾けるように構成している駆動フィンガーピース124を形成する。
【0043】
この駆動フィンガーピース124において、カム121には、ピン125又は他のインデクシング要素があり、これは、カム121の上面から突出して、ピン125が、カム121の上方に位置する時車220の方へと延在して、時車220と連係する。
【0044】
ピン125は、時車220の本体に形成される溝221内に挿入され、この溝221と連係するように構成している。溝221は、その形状のおかげで、時車220に対するカム121の相対的な回転を制限する当接体を形成する。したがって、カム121と一体的なピン125が溝221の周縁に当接するようになって、時車220はカム121を回転駆動する。
【0045】
特に、時車220に対してカム121が相対的に回転することで、弾性手段150の弾性の下で相レバー130がその休み位置に戻るときに、時車220に応力を与えることを避けることができる。
【0046】
この場合、
図1~4に示している実施例において、カム121は、12時間カムである。なぜなら、カム121は、単一の駆動フィンガーピースを備え、時車220の回転と同様に12時間で完全に1回転するためである。
【0047】
当然、他の実施形態も可能であり、特に、中間車及び時車220に対して1とは異なる比、及び/又は駆動フィンガーピース124を形成する複数の活性領域があるカム輪郭を用いて、時車220の1回転、すなわち、12時間、の間に相レバー130が傾く回数を増やすことができる。
【0048】
相レバー130は、ピボット軸2を中心に回転しカム121の駆動フィンガーピース124の通過によって休み位置と活性位置の間で傾くように取り付けられる。
【0049】
図3及び4に示しているように、相レバー130には、第1のアーム131があり、この第1のアーム131は、その端において、カム121の一又は複数の駆動フィンガーピース124と連係するように構成しているフィーラー132がある。特に、相レバー130は、時車220によって駆動されるカム121の回転中に駆動フィンガーピースの各通過時に傾く。
【0050】
相レバー130には、さらに、第2のアーム133があり、この第2のアーム133には、その端において、相レバー130が傾くたびに月相インジケーター110を回転させるように構成している補正ビーク134がある。
【0051】
相レバー130は、各傾斜の間に相レバー130を休み位置にするように付勢された、弾性戻し手段150、例えば戻しばね、と連係する。
【0052】
例えば、相レバー130は、相レバー130の休み位置を定めることを可能にするポジショニング用当接体(図示せず)に対して再配置される。このようなポジショニング用当接体は、例えば、カム121の外側輪郭123に対するフィーラー132の恒久的な接触をいずれも避ける。これによって、異なる部品の間の接触を最小限に抑え、部品の摩耗を低減することができる。
【0053】
本発明に係る月相表示機構100の動作について、以下に説明する。時車220は、伝統的には運動ワーク210によって駆動されて、時計回りに回転する。
【0054】
時車220の各回転ごとに、ピン125と溝221を介して、時車220の回転によって応力が与えられた、カム121の駆動フィンガーピース124が、相レバー130のフィーラー132に接触する。カム121の駆動フィンガーピース124及び相レバー130のフィーラー132の形状と幾何学的構成は、カム121が回転して活性位置になるときに相レバー130が回転するように構成しており、これによって、月相インジケーター110が増分され角度的にオフセットされることが可能になる。
【0055】
本発明に係る月相表示機構100は、ジャンプ駆動機構120が月相インジケーター110をn増分/日回転させるように構成しており、nは1よりも大きく、各増分は、日当たりのピッチの回転角度を増分の回数nで割った値に対応する角度αだけ月相インジケーター110を回転させる。
【0056】
例えば、12時間カムを用いると、月相インジケーター110は、従来技術のジャンプタイプ表示機構のように1日に1回のみではなく、1日に2回増分される。
【0057】
いくつかの異なるギア列は、1日全体の月相インジケーター110の回転が、従来技術のジャンプ駆動機構によって動かされる伝統的な月相インジケーターの日当たりのピッチと同じままとなるような寸法構成を有する。
【0058】
したがって、月相周期29.53125日を得るように構成している月相表示機構110の場合、本発明に係る月相インジケーター110は、1日2回(12時間ごと)、3.05°の角度αの分、動かされて、6.1°の回転に対応する日当たりのピッチとなる。
【0059】
当然、ジャンプ駆動機構120をさらに複雑にせずに各増分の角度的ジャンプを減らしつつ、本発明に係る月相表示機構によって表示される月の状態の精密度をさらに低下させることができ、したがって、月相インジケーター110の1日当たりの増分数を増やすことができる。
【0060】
これは、月相インジケーター110の1日全体の回転が、日当たりの駆動ピッチ、この場合、29.53125日の月相周期の場合に6.1°、と同じであることを維持するように、いくつかの異なるギア列を構成しつつ、例えば、カム121の外側輪郭123にある駆動フィンガーピース124の数を増やして、時車220の1回転当たり相レバー130を数回傾斜させることによって可能になる。
【0061】
例えば、カム121には、相レバー130が時車220の1回転当たり2回、すなわち、1日当たり4回、傾くように、互いに反対側(すなわち、互いに180°離れている)の2つの駆動フィンガーピース124があることができる。このように、異なるギアは、この場合に6時間ごとに発生する、月相インジケーター110の各増分が、1.525°である角度αによる月相インジケーター110の回転に対応するような寸法構成にされ、これによって、日当たりのピッチに対応する1日当たり6.1°の全体的な回転を維持する。
【0062】
このような代替的実施形態は、さらに、日当たりのピッチが依然として6.1°であるにもかかわらず、1日にわたる月の状態の表示の精度を改善する。
【0063】
図1~4に示している実施例において、相レバー130は、相車112とは直接連係しない。特に、ジャンプ駆動機構120は、相レバー130と、月相インジケーター110との間、具体的には相車112との間、に配置される相駆動中間車セット140を備える。
【0064】
図示していない代替的実施形態において、相レバー130は、相駆動中間車セットを使用せずに、相車112を直接駆動する。
【0065】
特に、相駆動中間車セット140は、月相インジケーター110の相車112と噛み合う相駆動ピニオン142とともに回転するように一体的となっている相駆動星形車141を備える。
【0066】
相駆動星形車141は、相レバー130によって動かされる相駆動星形車141の各ジャンプ(又は増分)の間に適切な位置に相駆動星形車141を保持するように構成しているジャンパー160と連係する。
【0067】
ジャンパー160は、ピボット軸4を中心に動くことができ、伝統的には、相レバー130の効果の下で歯の高点を通過した後に相駆動星形車141の2つの歯の間にジャンパー161を配置するように付勢された弾性手段161と連係する。
【0068】
好ましいことに、ジャンパー160は、相車112に直接作用せず、相駆動中間車セット140、具体的には相駆動星形車141、に作用する。このようなアーキテクチャを使用するおかげで、特に、大きな寸法構成の月相インジケーター110の慣性を吸収することが可能になる。
【0069】
本発明に係る月相表示機構100は、さらに、独立した迅速補正デバイス300を備え、この迅速補正デバイス300は、例えば計時器用ムーブメント200の長期間のシャットダウンの後に、必要に応じて月相インジケーター110の位置を補正する。
【0070】
迅速補正デバイス300は、相駆動中間車セット140によって担持される補正星形車330を備え、この補正星形車330は、相駆動ピニオン142とともに回転するように相駆動ピニオン142と一体的であり、これによって、補正星形車330に対する作用が月相インジケーター110を回転させる。
【0071】
迅速補正デバイス300は、さらに、押ボタンやアクチュエート用スタッド316を介してユーザーが操作することができる相補正コマンダー315を備える。相補正コマンダー315は、ピボット軸5を中心に回転するように取り付けられる。
【0072】
相補正コマンダー315は、ピボット軸3を中心に回転するように取り付けられた中間相補正レバー320と連係する。中間相補正レバー320には、相補正コマンダー315がユーザーによって操作されているときに補正星形車330の歯と連係するように意図されている補正ビーク321がある。
【0073】
迅速補正デバイス300は、ユーザーが相補正コマンダー315を操作していないときに、相補正コマンダー315と中間相補正レバー320を中立の休み位置に再配置するように構成している弾性手段310を備える。
【0074】
図示している実施例において、弾性手段310は、中間相補正レバー320に支えられる。しかし、弾性手段310は、相補正コマンダー315に支えられることができる。
【0075】
別の実施形態において、相補正コマンダー315は、中間相補正レバー320を省くことができるように、相補正星形車330に直接作用することができる。
【0076】
図示している実施例において、カムは、12時間ごとに、すなわち、時車220の各回転ごとに、相レバー130を活性化させる12時間カムである。相車112には、105個の歯がある。相車112と噛み合う相駆動ピニオンには、16個の歯がある。相駆動星形車141には、18個の歯がある。補正星形車には、9個の歯(すなわち、相駆動星形車141の歯の数の半分)がある。
【0077】
したがって、時車220からのギア比は105×9/16=59.0625であり、これは、月相周期29.53125に対応する。なぜなら、月相インジケーター110には2つの月の表現があるためである。
【0078】
この構成において、月相インジケーター110は、1日2回、3.05°の角度増分されて、6.1°の日当たりの回転となる。
【0079】
図1~4に示している実施例において、補正星形車330には、好ましいことに、相駆動星形車140の歯の半分の歯がある。なぜなら、相駆動星形車140は、1日2回増分されるからである。したがって、迅速補正デバイス300のおかげで、1日の駆動(日当たりのピッチ)と同等な補正が可能になる。このような構成は、好ましいことに、補正コマンダーを動かすたびに1日の補正を行うことに慣れている着用者の習慣を変えないで済む。
【0080】
補正星形車330には9個の歯があり、相駆動星形車141にはその2倍の歯があるので、補正星形車330には、ジャンパー160に対する相駆動星形車141の位置に応じて2つの異なるインデクシング位置があることができる。したがって、補正星形車330の2つのインデクシング位置に対して、補正星形車330の歯と補正ビークの間の距離は異なり、したがって、補正星形車330のインデクシング位置に応じて中間レバーの補正ビークの作用は異なる。
【0081】
迅速補正が行われる1日における時間に応じて、したがって、補正星形車330のインデクシング位置に応じて、補正コマンダー315がアクチュエートされると、補正コマンダー315が動かされるたびに完全な日当たりのピッチ(この場合、6.1°の回転)だけ、補正星形車330を前進させることができ、あるいは補正コマンダー315が動かされるたびに、まず、日当たりのピッチの半分、すなわち、3.05°の回転(1日当たり2つの相駆動星形車141のインデクシングの場合及び1日の第1の12時間のインデクシングが行われる場合)だけ、補正星形車330を前進させ、その後に、完全な日当たりのピッチ(6.1°の回転)だけ、補正星形車330を前進させる。
【0082】
月相表示機構100は、さらに、安全デバイス180を備え、この安全デバイス180は、ユーザーによって迅速補正が行われるときに、同じ相駆動中間車セット140に作用する迅速補正デバイス300を介して、ジャンプ駆動機構120を切断することを可能にする。この安全デバイス180のおかげで、月相インジケーター110が相レバー130によって駆動されるのと同じときに迅速補正行為が発生したときに、ジャンプ駆動機構120を切断することが可能になる。
【0083】
例えば、
図1~4に示しているように、安全デバイス180は、相レバー130に設けられる爪によって形成される。
【0084】
具体的には、この爪は、第2のアーム133の高さにて設けられ、相駆動中間車セット140と連係する補正ビーク134が弾性ストランド181の端に配置されて、ユーザーによって補正行為が行われたときに、相駆動中間車セット140を回転させる迅速補正デバイス300を介して切断可能なようにされる。
【0085】
したがって、補正ビーク134が相駆動中間車セット140に接触しているときに同時的に迅速補正行為が行われる場合、弾性ストランド181の弾性のおかげで、補正ビーク134を相駆動星形車141との係合から解放することが可能になり、そして、ジャンプ駆動機構120を破損や損傷させてしまうリスクなしに相駆動中間車セット140を回転させることが可能になる。
【0086】
図1~4に示している実施例において、相駆動要素を形成するカムは、時車220と同軸である。しかし、他の実施形態も可能である。
【0087】
例えば、相駆動要素を形成するカムは、時車220と直接噛み合う中間車によって担持することができる。
【0088】
この中間車は、時車220とギア比が1であるように構成していることができ、また、1ではないように構成していることができる。
【0089】
例えば、中間車に対する時車220のギア比を低くすることによって、各増分の角度的ジャンプを減らして、月相表示機構100の月相周期に対応する日当たりの角ピッチに対応する日全体にわたっての回転を維持しつつ、上述のように、1日にわたって表示される月相インジケーター110の精密度を高くすることができる。すなわち、月相インジケーター110の増分数を増やすことができる。
【0090】
例えば、時車220と、カムを担持する中間車の間のギア比が0.5であると、中間車は6時間で1回転、すなわち、12時間で2回転、する。したがって、カムに単一の駆動フィンガーピースがある場合、月相インジケーター110の日当たりの角ピッチを、1日に4回の増分、すなわち、6時間当たり1回の増分、に分割することができる。
【0091】
時車220と相駆動中間車の間のギア比が同じ0.5であり、カムに互いに180°離れた反対側の2つの駆動フィンガーピースがあることによって、月相インジケーター110の日当たりの角ピッチを、1日当たり8回の増分に、すなわち、3時間ごとに1回の増分に、分割することができる。
【0092】
当然、いずれの実施形態が選択されたとしても、相車112、相駆動ピニオン142及び相駆動星形車141の間のギア比は、所望の増分数に応じた日当たりのピッチに対応する月相インジケーター110の全体的な日当たりの回転を分割するように構成される。
【0093】
当然、必要に応じて、時車23と相駆動車110の間に一又は複数の中間車を用いることもできる。
【0094】
別の実施例において、相駆動要素は、機構の異なるレベルに配置されるいくつかの相レバーにて相互作用する複数の重なり合ったカムによって形成することができ、これによって、月相インジケーター110のいくつかの増分を1日にわたって何倍かする。
【0095】
本発明は、さらに、本発明に係る月相表示機構100を備える計時器用ムーブメント200に関する。
【0096】
本発明は、さらに、本発明に係る計時器用ムーブメント200を備える、腕時計のような計時器に関する。
【符号の説明】
【0097】
2、3、4 ピボット軸
100 月相表示機構
110 月相インジケーター
112 相車
120 ジャンプ駆動機構
121 カム
124 駆動フィンガーピース
125 インデクシング要素
130 相レバー
132 フィーラー
134 補正ビーク
140 相駆動中間車セット
141 相駆動星形車
142 相駆動ピニオン
160 ジャンパー
180 安全デバイス
200 計時器用ムーブメント
210 運動ワーク
220 時車
221 溝
230 分中央ピニオン
300 迅速補正デバイス
315 相補正コマンダー
330 補正星形車