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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】単安定電磁クラッチ
(51)【国際特許分類】
   F16D 27/09 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
F16D27/09
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023058540
(22)【出願日】2023-03-31
(65)【公開番号】P2023153090
(43)【公開日】2023-10-17
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】202210350721.X
(32)【優先日】2022-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522084131
【氏名又は名称】精▲進▼▲電▼▲動▼科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】曹 ▲陽▼
(72)【発明者】
【氏名】余 平
(72)【発明者】
【氏名】李 建文
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 国山
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】実公昭30-003711(JP,Y1)
【文献】国際公開第1988/005207(WO,A1)
【文献】特開平11-247880(JP,A)
【文献】特開2019-090512(JP,A)
【文献】実公昭55-002368(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 27/02-27/118
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動組立体と、磁力組立体とを備える単安定電磁クラッチであって、前記可動組立体に弾性部品が設けられており、前記磁力組立体の電磁力及び前記弾性部品の弾性力の作用で、前記可動組立体が前記磁力組立体内を往復運動可能であり、
前記可動組立体が、可動プッシュディスクと、可動プッシュディスクに接続された複数の可動鉄心とを備え、
前記磁力組立体が、磁気ヨーク組立体と、前記磁気ヨーク組立体内に設けられた電磁コイル組立体とを備え、前記可動鉄心が前記磁気ヨーク組立体及び前記電磁コイル組立体を通り抜けて前記可動プッシュディスクに接続され
前記磁気ヨーク組立体が、第1磁気ヨーク及び第2磁気ヨークを備え、前記電磁コイル組立体が電磁コイルと、前記電磁コイルを固定するためのコイルボビンとを備え、前記電磁コイル及び前記コイルボビンが、前記第1磁気ヨークと前記第2磁気ヨークとの間に設けられており、
前記第1磁気ヨーク及び前記第2磁気ヨークは互いに平行な板であり、前記第1磁気ヨークには、前記可動鉄心の端面形状に合わせたざぐりが設けられている、ことを特徴とする単安定電磁クラッチ。
【請求項2】
前記可動鉄心が固定ピンを介して前記可動プッシュディスクに接続されている、ことを特徴とする請求項1に記載の単安定電磁クラッチ。
【請求項3】
前記弾性部品が、前記可動プッシュディスクまたは前記可動鉄心に設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の単安定電磁クラッチ。
【請求項4】
前記弾性部品がリターンスプリング組立体であり、前記リターンスプリング組立体が、線形スプリング、非線形スプリング、または線形スプリングと非線形スプリングとからなるスプリング組立体である、ことを特徴とする請求項に記載の単安定電磁クラッチ。
【請求項5】
前記第1磁気ヨーク及び前記第2磁気ヨークが、軟磁性材料製である、ことを特徴とする請求項に記載の単安定電磁クラッチ。
【請求項6】
2つの電磁コイル組立体と、2つの可動鉄心と、2つの固定ピンと、1つの可動プッシュディスクと、1つの第1磁気ヨークと、1つの第2磁気ヨークと、複数の弾性部品とを備える、ことを特徴とする請求項に記載の単安定電磁クラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチの技術分野に属し、特に単安定電磁クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
新エネルギー自動車の動力系には、ギアシフト、ギア断、デファレンシャルのロック、パーキングなど、切替機構を必要とする応用場面が多く存在し、電磁クラッチが、切替機構の機能を実現するための好ましい選択肢の1つである。新エネルギー自動車産業の継続的な発展に伴い、電磁クラッチの性能に対する要求もますます高まっているが、現在、従来の電磁クラッチには、全体構造が複雑で、コンパクトではなく、占有スペースが大きく、応用場面が少なく、配置スペースと取り付け位置が限られているなどの欠点が存在し、新エネルギー自動車の動力系における様々な部品のスペース配置に、ある程度の影響を与えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記背景に対して、本発明は、上記問題を解消するために、あるいは、上記問題を少なくとも部分的に解決するために、単安定電磁クラッチを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明には、以下の技術方策が用いられている。単安定電磁クラッチが、可動組立体と、磁力組立体とを備え、可動組立体には弾性部品が設けられており、可動組立体が磁力組立体を通り抜け可能であり、磁力組立体は通電されると電磁力を発生可能であり、電磁力及び弾性部品の弾性力の作用で、可動組立体が当該磁力組立体内を往復運動可能である。
【0005】
好ましくは、可動組立体が、可動プッシュディスクと、可動プッシュディスクに接続された複数の可動鉄心とをさらに備え、可動鉄心が磁力組立体を通り抜けて磁力組立体内を往復運動可能である。
【0006】
好ましくは、磁力組立体が、磁気ヨーク組立体と、磁気ヨーク組立体内に設けられた電磁コイル組立体とをさらに備え、可動鉄心が磁気ヨーク組立体及び電磁コイル組立体の両方を通り抜けて可動プッシュディスクに接続される。電磁力及び弾性力の作用下で、可動鉄心及びそれに接続された可動プッシュディスクが、磁気ヨーク組立体及び電磁コイル組立体の内部に沿って往復運動可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の利点及び有益な効果は、次の通りである。本発明は、モジュール化設計を用いて、可動組立体、磁力組立体、および弾性部品が電磁クラッチの1つの基本ユニットとして統合されており、本発明の構造設計が柔軟でコンパクトであり、異なる用途及び異なる構造空間に応じて異なる組み合わせを行い、単独で使用したり、電磁クラッチの基本ユニットをいくつか自由に組み合わせて使用したりして、組み合わせた後、必要に応じて様々な取付位置及び空間に自由に配置し、分布空間では、実際の必要に応じて平均分布、対称分布、非対称分布などして、空間の使用を十分に最適化することができる。
【0008】
以下の好ましい実施形態の詳細な説明を読むことにより、様々な他の利点及びメリットが当業者にとって明らかになる。図面は、好ましい実施形態を例示するためのものだけであり、本発明を制限するものとして解釈されるべきではない。また、図面全体において、同じ部品には同じ参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明に係る単安定電磁クラッチの基本ユニットの断面図である。
図2図2は、図1の単安定電磁クラッチの基本ユニットの断面図である。
図3図3は、本発明の例1に係る単安定電磁クラッチの組み合わせ応用例の一つを示す。
図4図4は、本発明の例2に係る単安定電磁クラッチの組み合わせ応用例の一つを示す。
図5図5は、図4の単安定電磁クラッチの組み合わせ応用例の一つを示す。
図6図6は、本発明の例3に係る単安定電磁クラッチの組み合わせ応用例の一つを示す。
図7図7は、例2によってデファレンシャルロック機能を実現した応用例の一つである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の目的、技術案及び利点が更に明白になるように、以下、本発明の具体的な実施形態及び対応する図面と併せて、本発明の技術案を明確かつ完全に説明する。明らかなことに、記載された実施形態は、本発明の一部の実施形態に過ぎず、すべての実施形態ではない。本発明の実施形態に基づいて創造的な努力をせずに当業者によって得られた他のすべての実施形態は、本発明の保護範囲内に含まれる。
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の各実施形態による技術案を詳しく説明する。本発明の単安定電磁クラッチは、可動組立体100と、磁力組立体200とを備え、可動組立体100には弾性部品8が設けられており、実際の作動においては、可動組立体100が磁力組立体200の内部を通り抜け可能であり、磁力組立体200は通電されると電磁力を発生可能であり、電磁力及び弾性部品8の弾性力の作用下で、可動組立体100が当該磁力組立体200内を往復運動可能である。
【0012】
本発明の一実施形態において、可動組立体100が、可動プッシュディスク6と、可動プッシュディスク6に接続された複数の可動鉄心1とをさらに備え、可動鉄心1が磁力組立体200を通り抜けて磁力組立体200内を往復運動可能である。
【0013】
本発明の一実施形態において、磁力組立体200が、磁気ヨーク組立体201と、磁気ヨーク組立体201内に設けられた電磁コイル組立体202とをさらに備え、可動鉄心1が磁気ヨーク組立体201及び電磁コイル組立体202の両方を通り抜けて可動プッシュディスク6に接続される。本実施形態による動作の流れは、次の通りである。電磁コイル組立体202の非通電時には、図1に示すように、弾性部品8によって可動プッシュディスク6が第1磁気ヨーク5に近い位置まで押され、このとき、電磁クラッチは非係合状態に保たれる。電磁コイル組立体202の通電時には、図2に示すように、可動鉄心1と磁気ヨーク組立体201とによって磁気回路が形成され、この際に発生した電磁力によって可動鉄心1が第1磁気ヨーク5に近接した位置まで押され、このとき弾性部品8が圧縮され、電磁力が弾性力よりも大きくなって電磁クラッチが係合状態に保たれる。電磁力及び弾性力の作用下で、可動鉄心1及びそれに接続された可動プッシュディスク6が、磁気ヨーク組立体201及び電磁コイル組立体202の内部に沿って往復運動可能である。好ましくは、接続の安定性をより向上させるために、本発明の一実施形態において、可動鉄心1が固定ピン7を介して可動プッシュディスク6に接続されている。
【0014】
本発明の一実施形態において、弾性部品8が可動プッシュディスク6に設けられてもよいし、可動鉄心1に設けられてもよい。電磁コイル組立体202の非通電時にある限り、弾性部品8が、可動鉄心1を可動プッシュディスク6とともに、該当する位置まで押して、電磁クラッチを非係合状態に保つことができればよい。
【0015】
好ましくは、本発明の一実施形態において、磁気ヨーク組立体201が、軟磁性材料製である第1磁気ヨーク5及び第2磁気ヨーク3を備え、電磁コイル組立体202が、電磁コイル4と、電磁コイル4を固定するためのコイルボビン2とを備え、電磁コイル4及びコイルボビン2が、いずれも第1磁気ヨーク5と第2磁気ヨーク3との間に設けられている。本実施形態において、第1磁気ヨーク5、第2磁気ヨーク3、電磁コイル4が可動鉄心1と協働して電磁力を発生させ、電磁クラッチを係合状態に保つ。
【0016】
好ましくは、本発明の一実施形態において、第1磁気ヨーク5には、可動鉄心1の端面形状に合わせたざぐりが設けられている。当該ざぐりが、可動鉄心1の端面形状に合わせたものであるため、電磁クラッチが係合状態にあるとき、可動鉄心1が当該ざぐりに嵌め込み可能である。ざぐりの深さは可動プッシュディスク6または可動鉄心1のストローク距離にも関係する。
【0017】
本発明の一実施形態において、弾性部品8がリターンスプリング組立体として設けてられており、当該リターンスプリング組立体が線形スプリングであってもよいし、非線形スプリングであってもよく、または線形スプリングと非線形スプリングとからなるスプリング組立体であってもよい。
【0018】
さらに、本発明のより好ましい技術案の1つとしては、1つの単安定電磁クラッチの基本ユニットが、2つの電磁コイル組立体202と、2つの可動鉄心1と、2つの固定ピン7と、1つの可動プッシュディスク6と、1つの第1磁気ヨーク5と、1つの第2磁気ヨーク3と、複数の弾性部品8とを備える。本実施形態における1つの電磁クラッチの基本ユニットは、部品数が少なく、構造が簡単でスペースを取らなくて、単独で適用してもよいし、電磁クラッチの基本ユニットをいくつか自由に組み合わせて使用してもよく、以下の場面への応用を含むが、これらに限定されるものではない。
【0019】
例1
図3を参照すると、本実施例では、複数の電磁クラッチの基本ユニットを円周上に均等に分布するように配列して、1つの円環式電磁クラッチ構造を形成している。本実施例において、円周方向には、4つの電磁クラッチの基本ユニットが均等に分布している。第1磁気ヨーク5、第2磁気ヨーク3及び可動プッシュディスク6は、いずれも1つの完全な円形ディスクとして一体化されている。
【0020】
本実施例は、円周方向のスペースが大きく、軸方向のスペースが小さい場合に適用可能である。
【0021】
例2
図4及び図5を参照すると、本実施例では、2つの電磁クラッチの基本ユニットを組み合わせて1つの円弧状サブアセンブリを形成し、そして、2つの円弧状サブアセンブリを対称に分布させている。第1磁気ヨーク5及び第2磁気ヨーク3が2つの円弧状ディスクとして一体化されている。可動プッシュディスクが1つのL字状ディスクとして一体化されている。
【0022】
本実施例は、円周方向のスペースが限られている場合に適用可能である。
【0023】
例3
図6を参照すると、本実施例では、電磁クラッチの基本ユニットを四隅に独立して分布させている。第1磁気ヨーク5と第2磁気ヨーク3は、空間及び磁路に応じて設計され、磁路に影響を与えることなく、他の構成部品や組立体をできるだけ避けるようになっており、空間の使用を十分に最適化して、可動プッシュディスクを1つの全体が円形のL字状ディスクとして一体化している。
【0024】
例4
図7を参照すると、本実施例は、例2を具体的にデファレンシャルロック機能に応用したものである。本実施例では、例2における電磁クラッチをデファレンシャルの一方側に設置し、可動プッシュディスク6とL字状の可動プッシュディスク10とをベアリング9を介して接続することで、電磁クラッチ本体の可動組立体が軸方向にのみ直線運動するようにしている。同時に、電磁クラッチ本体の可動組立体の円周回動や他の自由度の運動を制限するために、本実施例では、更に可動プッシュディスク6に位置決めピン16を設けており、位置決めピン16が固定されて、可動組立体を軸方向にのみ移動するように制限している。L字状の可動プッシュディスク10と端面歯プレート12は、L字状の可動プッシュディスク10/端面歯プレート12上に設けられたボルト、ピン、または突起などで接続され、接続部分がデファレンシャルケース11を通過している。端面歯プレートの外縁にはキーが設けられ、それに合わせて、デファレンシャルケースには、対応するキー溝が配置されており、デファレンシャルは、回転中にキーによって端面歯と接続され、端面歯によって回転速度及びトルクを伝達させる。
【0025】
図7に示すように、端面歯サイドギヤ15には、端面歯プレート12における端面歯と噛合可能な端面歯が設けられている。デファレンシャルケース11とL字状の可動プッシュディスク10との間には弾性組立体が設けられている。電磁クラッチが非係合状態にあるとき、デファレンシャルケース11とL字状の可動プッシュディスク10との間の弾性組立体により、端面歯プレート12における端面歯と端面歯サイドギヤ15における端面歯とが非係合状態に保たれ、このとき、デファレンシャルによる差動と正常な動作が可能である。電磁コイル4に励磁電流を流すと、電磁クラッチが係合動作を行い、可動鉄心1が第1磁気ヨーク5に向かって移動するとともに、固定ピン7を同じ方向に移動させ、固定ピン7が可動プッシュディスク6を同じ方向に移動させ、可動プッシュディスク6がベアリング9を介してL字状の可動プッシュディスク10を押し進め、L字状の可動プッシュディスク10が接続部分を介して端面歯プレート12を端面歯サイドギヤ15に向かって移動させるように押し進め、最終的に、端面歯プレート12と端面歯サイドギヤとの端面歯が係合される。可動組立体は、デファレンシャルケース11及びL字状の可動プッシュディスク10における位置規制装置まで移動すると停止する。このとき、デファレンシャルロックが係合/ロック状態になる。デファレンシャルがロックされると、端面歯サイドギヤ15とデファレンシャルケース11とは、相対的に移動しない。このとき、デファレンシャルの内部の端面歯サイドギヤ15が遊星歯車13を介して回転速度及びトルクを他方のサイドギヤ14に伝達する。このとき、デファレンシャル両側のトルクが全く同じになり、デファレンシャルロック機能が実現される。
【0026】
上述したのは、あくまでも本発明の具体的な実施形態であり、本発明の上記教示の下で、当業者は、上記実施形態に基づいて他の改良または変形を行うことができる。当業者であれば、上記の具体的な記載は、本発明の目的をより良く解釈するためのものであり、本発明の保護範囲が特許請求の範囲の保護範囲に基づくものであることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0027】
100 可動組立体、200 磁力組立体、201 磁気ヨーク組立体、202 電磁コイル組立体、1 可動鉄心、2 コイルボビン、3 第2磁気ヨーク、4 電磁コイル、5 第1磁気ヨーク、6 可動プッシュディスク、7 固定ピン、8 弾性部品、9 ベアリング、10 L字状の可動プッシュディスク、11 デファレンシャルケース、12 端面歯プレート、13 遊星歯車、14 サイドギヤ、15 端面歯サイドギヤ、16 位置決めピン、17 位置センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7