(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】栽培ベンチ
(51)【国際特許分類】
A01G 9/02 20180101AFI20240823BHJP
【FI】
A01G9/02 D
A01G9/02 103J
(21)【出願番号】P 2023061280
(22)【出願日】2023-04-05
(62)【分割の表示】P 2019182324の分割
【原出願日】2019-10-02
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2018189698
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 哲平
(72)【発明者】
【氏名】大谷 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】徳川 博人
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 宏昌
(72)【発明者】
【氏名】越智 高志
(72)【発明者】
【氏名】小川 聡美
(72)【発明者】
【氏名】笠原 恵理子
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-098943(JP,A)
【文献】特開2007-020482(JP,A)
【文献】特開2010-268787(JP,A)
【文献】特開平06-125664(JP,A)
【文献】特開2012-228241(JP,A)
【文献】米国特許第04850134(US,A)
【文献】特開2010-227053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/02-9/08
A01G 22/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を栽培する栽培ベンチであって、
上方に開口し内部に培土が収容される栽培容器と、
前記栽培容器を下方から支持し、かつ前記栽培容器の長手方向に延びる通風路が一体に形成されている支持部と、
下側が前記通風路
に連通し、上側が前記栽培容器の
前記開口に連通する通気管と
、
を備え、
前記通気管は、前記栽培容器の外側部に
形成された通気溝
を含み、前記通気溝は、上下方向に延びる第1通気溝部と、前記第1通気溝部と連結し、前記第1通気溝部の下に配置され、傾斜した第2通気溝部を有
し、
前記通風路は、前記長手方向に延びるメイン通風部と、前記メイン通風部の上方に隣接して設けられて前記通気管に連通するバッファ部を有し、
前記長手方向に垂直な断面において、前記バッファ部が前記通気管に連通する連通部の幅は、前記メイン通風部の幅よりも狭く形成した栽培ベンチ。
【請求項2】
前記栽培容器の外側面には、上下方向に延びる位置決め溝を形成したことを特徴とする請求項
1に記載の栽培ベンチ。
【請求項3】
前記栽培容器
の内底面の幅方向中央には、排水用の配管が設置されていることを特徴とする請求項1
または2に記載の栽培ベンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を栽培するための栽培ベンチに関する。
【背景技術】
【0002】
イチゴの温室内栽培において、ハウス全体の温度管理を行っても温度斑が生じ、イチゴ苗の生育に支障をきたすことがある。そのため、苗の周辺部を局所的に冷却又は加温することで、イチゴ苗の生育を促すことがある。下記特許文献1には、高設ベンチ(架台)の上部にイチゴの苗が植えられた鉢(栽培容器)を設置し、加熱又は冷却された空気を導入するダクトを栽培容器の下に設けたイチゴ栽培用の空調システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の空調システムでは、栽培容器の下にダクトを設け、栽培容器を高設ベンチとともにフィルム部材で覆った構成であるため、空気の温度や流量(圧力)、流速等の影響でフィルム部材の形状が変化し、栽培容器に向けて一定量の空気を安定的に流すことが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、通風路から栽培容器に向けて一定量の空気を流すことができる栽培ベンチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の栽培ベンチは、植物を栽培する栽培ベンチであって、上方に開口し内部に培土が収容される栽培容器と、
前記栽培容器を下方から支持し、かつ前記栽培容器の長手方向に延びる通風路が一体に形成されている支持部と、
前記通風路と前記栽培容器の開口とに連通する通気管と、を備えるものである。
【0007】
本発明において、前記通風路は、前記長手方向に延びるメイン通風部と、前記メイン通風部の上方に隣接して設けられて前記通気管に連通するバッファ部と、を有するものでもよい。
【0008】
本発明において、前記長手方向に垂直な断面において、前記バッファ部が前記通気管に連通する連通部の幅は、前記メイン通風部の幅よりも狭いものでもよい。
【0009】
本発明において、前記長手方向に垂直な断面において、前記バッファ部は、前記通気管に連通する連通部に向かってテーパ状に狭くなるものでもよい。
【0010】
本発明によれば、通風路と栽培容器の開口とに連通する通気管を設けることで、通風路から栽培容器に向けて一定量の空気を流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る栽培ベンチを示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る栽培ベンチを示す六面図である。
【
図3】第1実施形態に係る栽培容器を示す六面図である。
【
図5】第1実施形態に係る支持部材を示す六面図である。
【
図8】栽培ベンチを用いたハウス内のレイアウト例を示す図である。
【
図9】第2実施形態に係る栽培ベンチを示す斜視図である。
【
図10】第2実施形態に係る栽培容器を示す六面図である。
【
図12】第2実施形態に係る第1上部支持部材を示す六面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1及び
図2は、第1実施形態に係る栽培ベンチ1を示している。栽培ベンチ1は、植物を栽培するためのものであり、栽培容器2と、栽培容器2を下方から支持する支持部3とを備えている。本実施形態では、イチゴを栽培する栽培ベンチ1を示しているが、植物の種類は特に限定されない。
【0014】
栽培容器2は、上方に開口し内部に培土が収容される。栽培容器2は、平面視で一方向に長い長方形状をしており、長方形の長辺方向を長手方向D1、長方形の短辺方向を幅方向D2、長手方向D1及び幅方向D2に直交する方向を上下方向D3と称する。
【0015】
栽培容器2の開口は、栽培容器2の長手方向D1に延びている。栽培容器2は、長手方向D1に直交する断面形状が略U字状に形成されている。栽培容器2の内底面の幅方向D2中央には、長手方向D1に延びる凹部21が形成されており、この凹部21には排水用の配管(ドレン管)が設置される。
【0016】
また、栽培容器2の内底面は、凹部21に向かって下方へ傾斜しており、この傾斜面22には、幅方向D2に延びる傾斜溝221が複数形成されている。傾斜溝221を設けることで、ドレン管や凹部21とドレン管の間から培土内へ酸素を取り込みやすくなり、植物の根張りを促進させることが出来る。
【0017】
栽培容器2の内側面23の下端部には、長手方向D1に延びるシート固定用溝231が形成されている。シート固定用溝231は、栽培容器2の内部に防水シートや防根シートを設置する際、これらのシートを固定するための固定部材(例えばABS製のパイプ)が嵌め込まれる。
【0018】
また、栽培容器2の内側面23の上部には、長手方向D1に延びる目分量線232が形成されている。目分量線232は、栽培容器2の内部に培土が収容される際、培土の上限高さの目安とされる細溝である。目分量線232を設けることで、培土が目分量線232を超えて後述する排出口5bに侵入するのを防止できる。
【0019】
栽培容器2の外側面24の下部には、上下方向D3に延びる位置決め溝241が形成されている。位置決め溝241は、栽培容器2の外底面25にて開口している。位置決め溝241は、栽培容器2の長手方向D1の中央部と両端部に設けられている。ただし、位置決め溝241は、例えば、栽培容器2の長手方向D1の両端部のみに設けてもよく、位置決め溝241の個数と配置は適宜設計可能である。
【0020】
栽培容器2の外底面25の幅方向D2中央には、長手方向D1に延びる凸部26が形成されている。凸部26の内側には凹部21が配置されている。
【0021】
栽培容器2の上端面27は、幅方向D2に平行な平坦面となっている。栽培容器2の外側面24の上端、すなわち外側面24と上端面27とで構成される角部には、面取り部242が形成されている。面取り部242は、後述する通気管5の一部を構成する。面取り部242は、外側面24の上端の一部を略円弧状に面取りして形成されている。これにより、通気管5を通過する空気の圧力損失を減らすことができる。
【0022】
栽培容器2の長手方向D1の両側端面28,29には、それぞれ係合凸部281と係合凹部291が形成されている。係合凸部281は、栽培容器2の側端面28から長手方向D1に突出している。一方、係合凹部291は、栽培容器2の側端面29に設けられ、他の栽培容器2に設けられた係合凸部281と係合可能である。複数の栽培容器2を長手方向D1に接続する場合、一方の栽培容器2の係合凸部281が他方の栽培容器2の係合凹部291と係合する。
【0023】
支持部3は、第1支持部材3aと第2支持部材3bとで構成されている。ただし、第1支持部材3aと第2支持部材3bは同じ形状をしているため、ここでは第1支持部材3aについて説明する。
【0024】
第1支持部材3aは、上下方向D3に立設される本体部31を備える。本体部31は、略矩形板状である。本体部31の外側面31aの上端には、幅方向D2の外側に向かって膨む膨出部311が形成されている。膨出部311は、本体部31の上端面31bと滑らかに連続して形成されている。膨出部311を設けることで、イチゴの果梗が上端面31bの角部で折れるのを防止し、さらに本体部31の上端面31bから垂れ下がったイチゴが外側面31aに接触するのを防止することができる。
【0025】
本体部31の外側面31aの上部には、長手方向D1に延びるマルチ固定用溝312(本発明の凹部に相当する)が形成されている。マルチ固定用溝312は、膨出部311の下方に設けられている。マルチ固定用溝312は、イチゴの苗の周囲をマルチフィルムで覆う際、マルチフィルムを固定するための固定部材(例えばABS製のパイプ)が嵌め込まれる。マルチ固定用溝は、外側面31aの上部以外にも設けられてもよい。例えば、栽培ベンチ1の全体をマルチフィルムで覆う場合、外側面31aの中央部及び下部に設けられたマルチ固定用溝313,314の一方又は両方が用いられる。
【0026】
本体部31の内側面31cには、幅方向D2に突出する第1突片部32、第2突片部33、及び第3突片部34が形成されている。第1突片部32は、第1支持部材3aの長手方向D1に沿って延びる略矩形板状である。第1支持部材3aと第2支持部材3bが組み合わされた状態で、第1支持部材3aの第1突片部32と第2支持部材3bの第1突片部32は、突端部同士が接触する。第1突片部32の突端部には、長手方向D1に沿って延びる突条部321と溝部322が形成されている。第1支持部材3aの突条部321と第2支持部材3bの溝部322とが係合し、第1支持部材3aの溝部322と第2支持部材3bの突条部321とが係合するように構成されている。
【0027】
第2突片部33は、第1突片部32よりも上方に設けられている。第2突片部33は、第1支持部材3aの長手方向D1に沿って延びる略矩形板状である。ただし、第2突片部33は、突端部に向かって厚みが薄くなるように、下面33aが上方へ傾斜している。第2突片部33の本体部31の内側面31cからの突出量は、第1突片部32の本体部31の内側面31cからの突出量よりも小さい。そのため、第1支持部材3aと第2支持部材3bが組み合わされた状態で、第1支持部材3aの第2突片部33と第2支持部材3bの第2突片部33は、突端部同士が非接触となり、両者の間には隙間が形成される。向かい合う第2突片部33同士の隙間には、栽培容器2の凸部26が配置される。
【0028】
第3突片部34は、本体部31の上端に設けられている。第3突片部34は、第1支持部材3aの長手方向D1に沿って延びている。栽培容器2と第1支持部材3aが組み合わされた状態で、第3突片部34の下面は、栽培容器2の上端面27に当接する。
【0029】
第1支持部材3aと第2支持部材3bが組み合わされた状態で、第1突片部32と第2突片部33で囲まれた空間は、長手方向D1に延びる通風路4を構成する。通風路4の上部は、栽培容器2の外底面25及び凸部26で構成される。通風路4には、冷風又は温風が流される。通風路4の詳細については後述する。
【0030】
栽培容器2は、第1支持部材3aの第2突片部33と第2支持部材3bの第2突片部33により下方から支持される。また、栽培容器2は、第1支持部材3aの内側面31cのうち第2突片部33よりも上方の上部内側面31dと、第2支持部材3bの内側面31cのうち第2突片部33よりも上方の上部内側面31dとによって幅方向D2の両側から支持される。
【0031】
第1支持部材3aには、幅方向D2及び上下方向D3に連続して延びる通気溝35が形成されている。通気溝35は、長手方向D1に沿って複数形成されている。通気溝35は、第2突片部33の上面33bに形成される第1溝部35a、本体部31の上部内側面31dに形成される第2溝部35b、及び第3突片部34の下面に形成される第3溝部35cで構成されている。第1溝部35aは、第2突片部33の突端部で開口している。また、第3溝部35cは、第3突片部34の突端部で開口している。
【0032】
栽培容器2と第1支持部材3aが組み合わされた状態で、通気溝35は、栽培容器2の外底面25、外側面24、及び上端面27との間で通気管5を構成する。第1溝部35aの開口は、通気管5の供給口5aを構成し、第3溝部35cの開口は、通気管5の排出口5bを構成する。通気管5は、通風路4及び栽培容器2の開口に連通している。
【0033】
通気溝35は、通気管5を通過する空気の圧力損失が出来る限り小さくなるように形成されている。具体的には、第1溝部35aと第2溝部35bの連結部の溝底、及び第2溝部35bと第3溝部35cの連結部の溝底は、何れも曲面となっている。また、第1溝部35aの溝底は、開口へ向かって深くなるように曲面となっている(
図6のE-E断面等を参照)。さらに、栽培容器2と第1支持部材3aが組み合わされた状態で、栽培容器2の面取り部242は、通気溝35に対向する位置に形成されており、通気管5を通過する空気の圧力損失を減らすことができる。
【0034】
また、本体部31の上部内側面31dには、上下方向D3に延びる位置決め突起36が形成されている。位置決め突起36は、隣り合う通気溝35同士の間に形成されている。栽培容器2と第1支持部材3aが組み合わされた状態で、位置決め突起36は、栽培容器2の位置決め溝241と対向する位置に形成されている。また、位置決め突起36の断面形状は、栽培容器2の位置決め溝241の断面形状と略同じとなっている。
【0035】
第1支持部材3aの長手方向D1の両側端面には、それぞれ嵌合凸部37と嵌合凹部38が形成されている。嵌合凸部37は、幅方向D2に延びる突起であり、嵌合凹部38は、幅方向D2に延びる溝である。嵌合凸部37は、第1突片部32及び第2突片部33の長手方向D1の一方の側端面から突出している。嵌合凹部38は、第1突片部32及び第2突片部33の長手方向D1の他方の側端面に開口している。複数の第1支持部材3aを長手方向D1に接続する場合、一方の第1支持部材3aの嵌合凸部37が他方の第1支持部材3aの嵌合凹部38に嵌合する。
【0036】
栽培容器2及び支持部3は、それぞれ発泡スチロールで形成される。そのため、栽培容器2及び支持部3は、軽量であり、断熱性に優れる。
【0037】
図7は、栽培ベンチ1の使用状態を示している。
図8は、栽培ベンチ1を用いたハウス内のレイアウト例を示している。複数の栽培ベンチ1が接続されて使用される。栽培ベンチ1の通風路4には、空調機9からの冷風又は温風が供給される。空調機としては、ガスヒートポンプエアコン(GHP)や電気モータヒートポンプエアコン、温風暖房を使用してもよい。また、空調機9と栽培ベンチ1の間にCO
2供給装置91を設けてもよい。
【0038】
栽培ベンチ1は、架台10の上に載置される。架台10は、パイプ材、アングル材等を組み合わせることにより構成される。架台10が設置面に固定される。
【0039】
栽培容器2の内部には培土が収容される。また、培土の上部には給水管が配置されている。栽培容器2の内底部には、防水シート(不図示)、ドレン管、防根シート(不図示)がこの順に設置される。防水シート及び防根シートは、シート固定用溝231に固定される。
【0040】
栽培容器2は、通風路4が一体に形成されている支持部3により支持されている。すなわち、栽培容器2は、通風路4の上方に配置されている。通風路4の長手方向D1の末端部は閉塞されており、通風路4内を陽圧にすることで、通風路4に供給された空気は、栽培容器2の周囲に設けられた通気管5を介して栽培容器2の開口に供給される。通風路4の末端部は、フィルム、板状部材等で閉塞される。通気管5の排出口5bは、栽培容器2の開口の中央を向いており、排出口5bから排出された空気は、栽培容器2の開口の幅方向D2の中央部に送られる。これにより、イチゴの苗のクラウンを局所的に冷却又は加温することができる。また、支持部3は断熱性に優れるため、通風路4内での冷風又は温風の温度変化を低減できる。
【0041】
栽培ベンチ1は、全体がマルチフィルム11に覆われている。全体をマルチフィルム11で覆うことで、紫外線による栽培ベンチ1の劣化を抑制できる。また、イチゴの苗の周囲をマルチフィルム11で覆うことで、イチゴの苗のクラウンを効率よく冷却又は加温することができる。マルチフィルム11は、マルチ固定用溝312,313,314に固定される。これにより、空気が支持部3の外側部から逃げるのを防止でき、イチゴの株元のマルチ穴から空気が無駄なく吐出されるようになり、効率よく株元に空気を供給することができる。さらに、マルチ固定用溝312,313,314を設けることで、マルチフィルム11を容易に、かつ何度も固定、剥離することができるため、作業性が良好となる。また、栽培ベンチ1の上方に、苗を覆うように不図示のトンネルを設けてもよい。トンネルを設けることで、冷風や温風が逃げないため、局所的に冷却又は加温でき、少ないエネルギーで空調可能となる。
【0042】
通風路4は、長手方向D1に延びるメイン通風部41と、メイン通風部41の上方に隣接して設けられて通気管5に連通するバッファ部42と、を有する。
【0043】
メイン通風部41は、第1支持部材3aの本体部31の下部内側面31eと、第2支持部材3bの本体部31の下部内側面31eとで挟まれた断面矩形状の空間である。
【0044】
バッファ部42は、第1支持部材3aの第2突片部33の下面33aと、第2支持部材3bの第2突片部33の下面33aとで挟まれた断面台形状の空間である。前述のように第2突片部33の下面33aは、第2突片部33の突端部へ向かって上方に傾斜しており、バッファ部42は、通気管5に連通する連通部42aに向かってテーパ状に狭くなっている。このように、バッファ部42が通気管5に連通する連通部42aの幅方向D2の幅w2は、メイン通風部41の幅方向D2の幅w1よりも狭くなっている。ここで、メイン通風部41の幅方向D2の幅w1は、メイン通風部41の幅方向D2の最大幅で規定される。なお、本実施形態では、メイン通風部41の断面形状が矩形となっているが、これに限定されず、メイン通風部41の断面形状は円形や楕円形等、その他の形状でもよい。この場合、バッファ部42が通気管5に連通する連通部42aの幅方向D2の幅は、メイン通風部41の幅方向D2の最大幅よりも狭くなるように構成される。
【0045】
次いで、バッファ部42の作用効果について説明する。例えば、通風路4の断面を矩形や円形などの断面中心を通る水平線または垂直線に対して線対称となるような形状のメイン通風部41のみで構成した場合、断面での流速分布も対称となり易く、流れ場は慣性力支配となり、通気管5のある方向への流れが誘起されにくくなる傾向にある。外部から冷風又は温風が供給される通風路4の入口付近は、静圧が大きいため通気管5の排出口5bから一定量の空気の流出が期待でき、また通風路4の末端付近では、慣性力が小さくなることと滞留とによって同じく通気管5の排出口5bから一定量の空気の流出が期待できる。慣性力による通気管5の排出口5bからの流量不足は、とくに通風路4の中央付近で現れる傾向が強い。これにより通風路4の長手方向D1(流れ方向)に複数設置された通気管5の排出口5bからの吐出流速にバラつきが生じる。
【0046】
一方、通風路4がバッファ部42を有することで、通風路4の中央付近においても通気管5の排出口5bからの流量不足が抑えられる。これは、バッファ部42がバッファとなり、流速分布が矩形や円形などの形状に比べて非対称となり、通気管5近傍の流れ場が慣性力支配でなくなるためである。これにより通風路4の長手方向D1(流れ方向)における通気管5の排出口5bからの吐出流速の均一化を図ることができる。その結果、通風路4からすべての通気管5へ空気が流れやすくなる。なお、バッファ部42の断面は、台形状に限定されず、例えばメイン通風部41の断面より幅の狭い矩形状等でもよい。
【0047】
バッファ部42の作用効果を十分に発揮させる観点から、メイン通風部41に対して、バッファ部42の断面積比が少なくとも6:1よりも小さくすることが好ましい。バッファ部42の断面積が大きいと、バッファとしての効果が得られにくくなる。
【0048】
[他の実施形態]
前述の実施形態では、第1支持部材3a及び第2支持部材3bにおける第2突片部33の下面33aの上端は、栽培容器2の最下端(凸部26の最下端)と略同じ高さに位置しているが、これに限定されない。第1支持部材3a及び第2支持部材3bにおける第2突片部33の下面33aの上端は、栽培容器2の最下端(凸部26の最下端)よりも高い位置に位置することが好ましい。これにより、通風路4から通気管5へ空気が流れやすくなる。
【0049】
[第2実施形態]
図9は、第2実施形態に係る栽培ベンチ1を示している。栽培ベンチ1は、植物を栽培するためのものであり、栽培容器7と、栽培容器7を下方から支持する支持部8とを備えている。
【0050】
栽培容器7は、上方に開口し内部に培土が収容される。栽培容器7は、平面視で一方向に長い長方形状をしており、長方形の長辺方向を長手方向D1、長方形の短辺方向を幅方向D2、長手方向D1及び幅方向D2に直交する方向を上下方向D3と称する。
【0051】
栽培容器7の開口は、栽培容器7の長手方向D1に延びている。栽培容器7は、長手方向D1に直交する断面形状が略U字状に形成されている。栽培容器7の内底面の幅方向D2中央には、長手方向D1に延びる凹部71が形成されており、この凹部71には排水用の配管(ドレン管)が設置される。
【0052】
また、栽培容器7の内底面は、凹部71に向かって下方へ傾斜しており、この傾斜面72には、幅方向D2に延びる傾斜溝721が複数形成されている。傾斜溝721を設けることで、ドレン管や凹部71とドレン管の間から培土内へ酸素を取り込みやすくなり、植物の根張りを促進させることが出来る。
【0053】
栽培容器7の内側面73の上部には、長手方向D1に延びる目分量線732が形成されている。目分量線732は、栽培容器7の内部に培土が収容される際、培土の上限高さの目安とされる細溝である。目分量線732を設けることで、培土が目分量線732を超えて後述する排出口5bに侵入するのを防止できる。
【0054】
栽培容器7の外側面74には、上下方向D3に延びる位置決め溝741が形成されている。位置決め溝741は、栽培容器7の外底面75及び上端面77にて開口している。位置決め溝741は、栽培容器7の長手方向D1の中央部と両端部に設けられている。ただし、位置決め溝741は、例えば、栽培容器7の長手方向D1の両端部のみに設けてもよく、位置決め溝741の個数と配置は適宜設計可能である。
【0055】
栽培容器7の外底面75は、上方へ向かって傾斜する傾斜部75aを有する。傾斜部75aは、後述する通気溝85との間で通気管5を構成する。
【0056】
栽培容器7の上端面77は、幅方向D2に平行な平坦面となっている。栽培容器7の外側面74の上端、すなわち外側面74と上端面77とで構成される角部には、面取り部742が形成されている。面取り部742は、後述する通気管5の一部を構成する。面取り部742は、外側面74の上端の一部を略円弧状に面取りして形成されている。これにより、通気管5を通過する空気の圧力損失を減らすことができる。
【0057】
栽培容器7の長手方向D1の両側端面78,79には、それぞれ係合凸部781と係合凹部791が形成されている。係合凸部781は、栽培容器7の側端面78から長手方向D1に突出している。一方、係合凹部791は、栽培容器7の側端面79に設けられ、他の栽培容器7に設けられた係合凸部781と係合可能である。複数の栽培容器7を長手方向D1に接続する場合、一方の栽培容器7の係合凸部781が他方の栽培容器7の係合凹部791と係合する。
【0058】
支持部8は、第1上部支持部材8aと、第2上部支持部材8bと、下部支持部材8cとを備えている。ただし、第1上部支持部材8aと第2上部支持部材8bは同じ形状をしているため、ここでは第1上部支持部材8aについて説明する。
【0059】
第1上部支持部材8aは、上下方向D3に立設される本体上部81を備える。本体上部81は、略矩形板状である。本体上部81の外側面81aの上部には、長手方向D1に延びる嵌合溝811が形成されている。嵌合溝811は、開口ほど幅狭になるように形成されている。
【0060】
本体上部81の外側面81aの上部には、長手方向D1に延びるマルチ固定用溝812(本発明の凹部に相当する)が形成されている。マルチ固定用溝812は、嵌合溝811の下方に設けられている。マルチ固定用溝812は、イチゴの苗の周囲をマルチフィルムで覆う際、マルチフィルムを固定するための固定部材(例えばABS製のパイプ)が嵌め込まれる。マルチ固定用溝は、外側面81aの上部以外にも設けられてもよい。例えば、栽培ベンチ1の全体をマルチフィルムで覆う場合、外側面81aの中央部及び下部に設けられたマルチ固定用溝813,814の一方又は両方が用いられる。
【0061】
第1上部支持部材8aは、上下方向D3に立設される本体下部82を備える。本体下部82は、略矩形板状である。本体下部82は、本体上部81に対してオフセットして設けられている。本体下部82と本体上部81との間の段差部83は、後述する掛止部として機能する。本体下部82の下端面には、係止突起821が形成されている。係止突起821は、先端ほど幅広となるように形成されている。
【0062】
第1上部支持部材8aは、段差部83から幅方向D2に突出する突片部84を備える。突片部84は、第1上部支持部材8aの長手方向D1に沿って延びる略矩形板状である。ただし、突片部84は、突端部に向かって厚みが薄くなるように、上面84aが下方へ傾斜している。第1上部支持部材8aと第2上部支持部材8bが組み合わされた状態で、第1上部支持部材8aの突片部84と第2上部支持部材8bの突片部84は、突端部同士が非接触となり、両者の間には隙間が形成される。
【0063】
第1上部支持部材8aと第2上部支持部材8bが組み合わされた状態で、本体下部82と突片部84で囲まれた空間は、長手方向D1に延びる通風路4を構成する。通風路4の上部は、栽培容器7の外底面75で構成される。通風路4の下部は、下部支持部材8cで構成される。通風路4には、冷風又は温風が流される。通風路4の詳細については後述する。
【0064】
栽培容器7は、第1上部支持部材8aの突片部84と第2上部支持部材8bの突片部84により下方から支持される。また、栽培容器7は、第1上部支持部材8aの本体上部81と第2上部支持部材8bの本体上部81とにより幅方向D2の両側から支持される。
【0065】
第1上部支持部材8aには、幅方向D2及び上下方向D3に連続して延びる通気溝85が形成されている。通気溝85は、長手方向D1に沿って複数形成されている。通気溝85は、本体上部81の内側面81cに形成される第1通気溝部85a、及び突片部84の上面84aに形成される第2通気溝部85bで構成されている。第1通気溝部85aは、本体上部81の上端面81bで開口している。また、第2通気溝部85bは、突片部84の突端部で開口している。
【0066】
栽培容器7と第1上部支持部材8aが組み合わされた状態で、通気溝85は、栽培容器7の外側面74及び傾斜部75aとの間で通気管5を構成する。第2通気溝部85bの開口は、通気管5の供給口5aを構成し、第1通気溝部85aの開口は、通気管5の排出口5bを構成する。通気管5は、通風路4及び栽培容器7の開口に連通している。
【0067】
通気溝85は、通気管5を通過する空気の圧力損失が出来る限り小さくなるように形成されている。具体的には、第1通気溝部85aと第2通気溝部85bの連結部の溝底は、曲面となっている。また、第2通気溝部85bの溝底は、開口へ向かって深くなるように曲面となっている(
図13のL-L断面等を参照)。さらに、栽培容器7と第1上部支持部材8aが組み合わされた状態で、栽培容器7の面取り部742は、通気溝85に対向する位置に形成されており、通気管5を通過する空気の圧力損失を減らすことができる。
【0068】
また、本体上部81の内側面81cには、上下方向D3に延びる位置決め突起86が形成されている。栽培容器7と第1上部支持部材8aが組み合わされた状態で、位置決め突起86は、栽培容器7の位置決め溝741と対向する位置に形成されている。また、位置決め突起86の断面形状は、栽培容器7の位置決め溝741の断面形状と略同じとなっている。
【0069】
第1上部支持部材8aの長手方向D1の両側端面には、それぞれ複数の嵌合凸部87と複数の嵌合凹部88が形成されている。嵌合凸部87は、本体上部81、本体下部82、及び突片部84の長手方向D1の一方の側端面から突出している。嵌合凹部88は、本体上部81、本体下部82、及び突片部84の長手方向D1の他方の側端面に開口している。複数の第1上部支持部材8aを長手方向D1に接続する場合、一方の第1上部支持部材8aの嵌合凸部87が他方の第1上部支持部材8aの嵌合凹部88に嵌合する。
【0070】
下部支持部材8cは、第1上部支持部材8aと第2上部支持部材8bとともに通風路4を構成する。下部支持部材8cは、断面形状が略U字状に形成されている。
【0071】
下部支持部材8cは、第1上部支持部材8aと第2上部支持部材8bの下部に脱着可能に取り付けられる。下部支持部材8cを第1上部支持部材8aと第2上部支持部材8bに対して着脱可能とすることで、支持部8のメンテナンス性が向上する。例えば、下部支持部材8cを取り外すことで、通気管5を通って通風路4に落下したゴミや通風路4に発生したカビ等を除去しやすい。
【0072】
下部支持部材8cの上端面には、第1上部支持部材8a及び第2上部支持部材8bの係止突起821を係止する係止溝822が形成されている。係止溝822は、開口ほど幅狭になるように形成されている。
【0073】
下部支持部材8cの長手方向D1の両側端面には、それぞれ一対の嵌合凸部87と嵌合凹部88が形成されている。複数の下部支持部材8cを長手方向D1に接続する場合、一方の下部支持部材8cの嵌合凸部87が他方の下部支持部材8cの嵌合凹部88に嵌合する。
【0074】
支持部8は、果梗(果梗枝ともいう)を下方から受け止め可能な果梗受け部8dを備えていてもよい。果梗受け部8dは、栽培容器7の上部に、幅方向D2の外側へ向かって突出するように設けられる。果梗受け部8dの上面は、幅方向D2の外側へ向かうにつれて垂れ下がる形状をしている。
【0075】
栽培容器7の上部は、第1上部支持部材8aと第2上部支持部材8bの上部により幅方向外側から覆われており、果梗受け部8dは、第1上部支持部材8a及び第2上部支持部材8bの上部に対して着脱自在に取り付けられることが好ましい。果梗受け部8dの上面は、第1上部支持部材8aと第2上部支持部材8bの上端面81bと略同じ高さとなっている。果梗受け部8dを着脱可能とすることで、品種によって異なる果梗の長さに応じて、果梗受け部8dのサイズを変更したり、また、果梗受け部8dが不要の場合には果梗受け部8dを取り外したりすることができる。
【0076】
果梗受け部8dの側面には、第1上部支持部材8a及び第2上部支持部材8bの嵌合溝811に嵌合する嵌合突起823が形成されている。嵌合突起823は、先端ほど幅広となるように形成されている。嵌合突起823を嵌合溝811に挿入することで、果梗受け部8dは第1上部支持部材8a及び第2上部支持部材8bに取り付けられる。なお、嵌合突起823と嵌合溝811との間にマルチフィルムを挟みこんで固定してもよい。これにより、マルチフィルムを容易に固定することができるだけでなく、空気の漏れを防ぐことができる。
【0077】
栽培容器7及び支持部8は、それぞれ発泡スチロールで形成される。そのため、栽培容器7及び支持部8は、軽量であり、断熱性に優れる。
【0078】
図14は、栽培ベンチ1の使用状態を示している。栽培ベンチ1は、支持部8の段差部83を被掛止部材としての架台10に掛止することで、架台10に吊り下げられた状態で配置される。栽培ベンチ1を架台10に吊り下げる形態とすることで、第1上部支持部材8a及び第2上部支持部材8bの本体下部82や下部支持部材8cの強度を高くする必要
がないため、製造コストを抑えることができる。
【0079】
架台10は、パイプ材、アングル材等を組み合わせることにより構成される。架台10には、幅方向D2に延びる補強バー10aや沈下防止バー10bが設けられている。架台10は設置面に固定される。
【0080】
栽培容器7の内部には培土が収容される。また、培土の上部には給水管が配置されている。栽培容器7の内底部には、防水シート(不図示)、ドレン管、防根シート(不図示)がこの順に設置される。
【0081】
栽培容器7は、通風路4が一体に形成されている支持部8により支持されている。すなわち、栽培容器7は、通風路4の上方に配置されている。通風路4の長手方向D1の末端部は閉塞されており、通風路4内を陽圧にすることで、通風路4に供給された空気は、栽培容器7の周囲に設けられた通気管5を介して栽培容器7の開口に供給される。通風路4の末端部は、フィルム、板状部材等で閉塞される。通気管5の排出口5bは、栽培容器7の開口の中央を向いており、排出口5bから排出された空気は、栽培容器7の開口の幅方向D2の中央部に送られる。これにより、イチゴの苗のクラウンを局所的に冷却又は加温することができる。また、支持部8は断熱性に優れるため、通風路4内での冷風又は温風の温度変化を低減できる。
【0082】
通気管5は、上下方向D3に延びて栽培容器7の開口に連通する第1通気管5cと、上下方向D3に対して傾斜する方向に延びて第1通気管5cと通風路4とに連通する第2通気管5dと、を備えている。第1通気管5cは、第1上部支持部材8aと第2上部支持部材8bに形成された第1通気溝部85aで構成され、第2通気管5dは、第1上部支持部材8aと第2上部支持部材8bに形成された第2通気溝部85bで構成される。通風路4に連通する第2通気管5dを上下方向D3に対して傾斜させることで、仮に排出口5bからゴミが侵入した場合にも、ゴミが通気管5を通って通風路4に落下しやすい。
【0083】
通風路4は、長手方向D1に延びるメイン通風部41と、メイン通風部41の上方に隣接して設けられて通気管5に連通するバッファ部42と、を有する。
【0084】
メイン通風部41は、第1上部支持部材8a及び第2上部支持部材8bの本体下部82と、下部支持部材8cとで囲まれた断面矩形状の空間である。また、第2実施形態のバッファ部42は、第1上部支持部材8aの突片部84と第2上部支持部材8bの突片部84とで挟まれた断面矩形状の空間である。
【0085】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1 栽培ベンチ
2 栽培容器
3 支持部
3a 第1支持部材
3b 第2支持部材
4 通風路
41 メイン通風部
42 バッファ部
5 通気管
5c 第1通気管
5d 第2通気管
7 栽培容器
8 支持部
8a 第1上部支持部材
8b 第2上部支持部材
8c 下部支持部材
8d 果梗受け部
D1 長手方向
D2 幅方向