IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NOK株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-標識柱 図1
  • 特許-標識柱 図2
  • 特許-標識柱 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】標識柱
(51)【国際特許分類】
   E01F 13/02 20060101AFI20240823BHJP
   E01F 9/619 20160101ALI20240823BHJP
【FI】
E01F13/02 Z
E01F9/619
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023094802
(22)【出願日】2023-06-08
【審査請求日】2023-06-08
【審判番号】
【審判請求日】2024-01-24
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004358
【氏名又は名称】弁理士法人NYTパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(72)【発明者】
【氏名】岡田 正敏
(72)【発明者】
【氏名】岡部 均
(72)【発明者】
【氏名】吉田 修一朗
【合議体】
【審判長】有家 秀郎
【審判官】西田 秀彦
【審判官】土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-262865(JP,A)
【文献】特開平9-279534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部に支持されて前記基部から延びる柱状の柱部とを備え、
前記柱部は、復元可能に外力によって変形可能な柔軟性を有しており、
少なくとも前記柱部の前記基部から延びる部分の表面の全体に、鏡面層が設けられており、
前記鏡面層は、塗料が前記柱部の前記表面に層状に広げられて形成されており、
前記鏡面層の表面の光の反射率は、前記柱部の表面の光の反射率よりも高い、
標識柱。
【請求項2】
前記鏡面層の表面の光の反射率は、50%以上であり、金属の反射率であり、
前記光の反射率は、波長が400nm以上800nm以下の光の反射率である、
請求項1に記載の標識柱。
【請求項3】
前記鏡面層の表面の光の反射率は、70%以上である、
請求項2に記載の標識柱。
【請求項4】
前記柱部は、ポリウレタンから作られている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の標識柱。
【請求項5】
前記鏡面層は、前記柱部の表面の全部に設けられている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の標識柱。
【請求項6】
前記基部は、前記柱部を支持する凹部と、接地面である底面とを有しており、
前記凹部は、前記底面側に凹んでいる部分であり、
前記鏡面層は、前記基部の表面の前記凹部及び前記底面を除く部分に設けられており、
前記鏡面層は、前記塗料が前記基部の前記表面に層状に広げられて形成されている、
請求項1に記載の標識柱。
【請求項7】
前記基部は、前記柱部を支持する凹部と、接地面である底面とを有しており、
前記凹部は、前記底面側に凹んでいる部分であり、
前記鏡面層は、前記基部の表面の少なくとも前記凹部及び前記底面を除く部分に設けられており、
前記鏡面層は、前記塗料が前記基部の前記表面に層状に広げられて形成されている、
請求項1に記載の標識柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標識柱に関し、特に、柔軟な標識柱に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば路上に、通行人や通行車両等へ通行範囲を示すためや何らかの目印として、柱状の標識柱が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-332596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような標識柱は、人や車両等がぶつかっても、人や車両等に大きな衝撃が伝わらないように、柔軟な材料から作られている。標識柱の材料が柔軟な材料であると認識されることにより、標識柱は故意に変形されたり、衝撃を加えられたりすることがあり、これにより、標識柱が変形したり、破損したりすることがある。このため、標識柱に対して、故意に基づく損傷を防止することができる構成が求められている。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、故意に基づく損傷を防止することができる標識柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る標識柱は、基部と、前記基部から延びる柱状の柱部とを備え、前記柱部は、復元可能に外力によって変形可能な柔軟性を有しており、少なくとも前記柱部の表面の一部に、鏡面層が設けられており、前記鏡面層の表面の光の反射率は、前記柱部の前記表面の光の反射率よりも高い。
【0007】
本発明の一態様に係る標識柱において、前記鏡面層の表面の光の反射率は、50%以上である。
【0008】
本発明の一態様に係る標識柱において、前記鏡面層の表面の光の反射率は、70%以上である。
【0009】
本発明の一態様に係る標識柱において、前記光の反射率は、波長が400nm以上800nm以下の光の反射率である。
【0010】
本発明の一態様に係る標識柱において、前記柱部は、ポリウレタンから作られている。
【0011】
本発明の一態様に係る標識柱において、前記光の反射率は、波長が400nm以上800nm以下の光の反射率である。
【0012】
本発明の一態様に係る標識柱において、前記鏡面層は、前記基部の表面の一部に設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、故意に基づく損傷を防止することができる標識柱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る標識柱の正面図である。
図2図1に示す標識柱の構成要素を分解して示す分解断面図である。
図3図1に示す標識柱における鏡面層の表面の光の反射率を具体的に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る標識柱1の正面図であり、図2は、標識柱1の構成要素を分解して示す分解断面図である。図1,2に示されるように、標識柱1は、基部10と、基部10から延びる柱状の柱部20とを備えている。柱部20は、復元可能に外力によって変形可能な柔軟性を有している。少なくとも柱部20の表面21の一部に、鏡面層30が設けられている。鏡面層30の表面31の光の反射率は、柱部20の表面21の光の反射率よりも高い。なお、図2において、柱部20の内部の断面の図示は省略せれており、柱部20の表面21の断面が図示されている。以下、標識柱1の構成について具体的に説明する。
【0017】
柱部20は、図1,2に示されるように、上下方向に柱状に延びており、上側の端である上端22と、下側の端である下端23とを有している。上端22は、例えば、上側に面する面を形成しており、下端23は、例えば、下側に面する面を形成している。柱部20は、例えば図1に示されるように、円柱状であり、円筒面状又は略円筒面状の側面24を有している。柱部20は中空となっていてもよく、中実となっていてもよい。柱部20は、下端23近傍の部分である下端部20aにおいて、基部10に支持されており、基部10から上側に延びている。なお、柱部20の形状は円柱状に限られず、角柱状であってもよく、柱部20の断面形状は、円形に限られず、三角形や四角形等の多角形であってもよく、他の形状であってもよい。
【0018】
上述のように、柱部20は、復元可能に外力によって変形可能な柔軟性を有している。具体的には例えば、人が接触する程度の衝撃に対しても変形するような柔軟性を有している。また、柱部20は、外力によって変形後に外力が取り除かれると、元の形状に、または、おおよそ元の形状に戻る復元性を有している。柱部20は、上述のような柔軟性を有する弾性材料、例えばポリウレタンによって作られている。なお、柱部20は、上述のような柔軟性を有する他の樹脂やゴム等の他の弾性材料から作られていてもよい。
【0019】
柱部20の上端22、下端23、及び側面24が、柱部20の表面21であり、上述のように、表面21の少なくとも一部には鏡面層30が設けられている。鏡面層30は、図2に示されるように、層状に又は膜状に広がっており、露出される表面31を有している。鏡面層30は、例えば、塗料等の物質が広げられて形成される。図2に示されるように、本例では、柱部20の表面21の全体又は略全体に鏡面層30が形成されている。鏡面層30は、柱部20の表面21の少なくとも一部に設けられものであり、鏡面層30が設けられる柱部20の表面21の範囲は、特定の範囲に限定されない。例えば、鏡面層30は、上端22及び側面24にのみ形成されてもよく、上端22にのみ形成されてもよく、側面24にのみ形成されてもよく、上端22及び側面24夫々の一部にのみ形成されてもよく、上端22又は側面24の一部にのみ形成されてもよい。但し、鏡面層30は、標識柱1において露出される部分に設けられる。
【0020】
上述のように、鏡面層30の表面31の光の反射率は、柱部20の表面21の光の反射率よりも高くなっている。つまり、鏡面層30は、その表面31の光の反射率が、柱部20の表面21の光の反射率よりも高くなるように形成された、柱部20の表面21上の部材である。鏡面層30は、例えば、柱部20の表面21に形成された部材を鏡面処理や鏡面加工することにより形成される。また、鏡面層30は、例えば、所定の流動体を柱部20の表面21に広げることにより形成される。
【0021】
鏡面層30の表面31の光の反射率は、例えば、50%以上である。また、鏡面層31の表面31の光の反射率は、例えば、70%以上である。また、鏡面層30の表面31の光の反射率は、例えば、波長が400nm以上800nm以下の光、つまり可視光の反射率である。
【0022】
図3は、鏡面層30の表面31の光の反射率を具体的に説明するための図である。図3には、光の波長と反射率との関係を示すグラフが示されており、また、アルミニウム、銀、金、鉄、及び銅の分光反射率曲線が示されている。図3に示されるように、ポリウレタンの光の波長と反射率との関係は、領域Rで示された範囲の関係を有すると考えられる。このため、鏡面層30の表面31は、例えば、波長が400nm以上800nm以下の光に対して、この領域Rよりも高い光の反射率を有している。具体的な一例として、上述のように、鏡面層30の表面31の、波長が400nm以上800nm以下の光に対する反射率は、領域P1に示されるように、50%以上となっている。また、具体的な一例として、上述のように、鏡面層30の表面31の、波長が400nm以上800nm以下の光に対する反射率は、領域P2に示されるように、70%以上となっている。このような鏡面層30の表面31は、ポリウレタンの表面よりも光沢を有している。
【0023】
また、具体的には例えば、鏡面層30の表面31は、アルミニウムや銀の表面のような鏡面になっている。つまり、鏡面層30の表面31は、アルミニウムや銀の分光反射率曲線と同様に、波長が400nm以上800nm以下の光全てに対して一様に高い反射率を有している。また、鏡面層30の表面31は、色を発する光沢のある表面であってもよい。つまり、特定の領域(色)の波長の光に対する鏡面層30の表面31の反射率を高くし、その他の領域(色)の波長の光に対する鏡面層30の表面31の反射率を低くすることにより、鏡面層30の表面31が特定の色を発する光沢を有する表面となっていてもよい。具体的には例えば、鏡面層30の表面31は、青、緑、黄、赤、紫等の特定の色を発する光沢を有する表面となっている。なお、上述の鏡面層30の表面31の形態は、一例であり、鏡面層30の表面31の形態は、これらに限定されない。
【0024】
基部10は、図1,2に示されるように、標識柱1の台座として機能する部分であり、柱部20よりも径方向において外側に広がっている。なお、径方向とは、標識柱1が延びる上下方向に直交する方向である。基部10は、例えば円盤状の形状をしており、接地面としての底面11と、底面11に背向する位置に形成された、支持部12とを有している。支持部12は、柱部20の下端部20aが取り付けられて、柱部20を支持する部分である。また、支持部12は、支持部12から柱部20を取り外し可能になっている。支持部12は、例えば、図2に示されるように、柱部20の下端部20aを収容する凹部13を有している。凹部13は、下側に凹んでおり、例えば、柱部20の下端部20aが圧入されるような形状となっている。凹部13は、具体的には例えば、筒状の側面13aと、底面13bとを有している。側面13aは、凹部13に収容された柱部20の側面24に接触するようになっている。また、底面13bは、凹部13に収容された柱部20の下端23に接触するようになっている。なお、基部10の形状は円盤状に限られず、他の形状であってもよい。
【0025】
また、図2に示されるように、基部10には錘14が設けられている。基部10は、例えば、中実になっており、錘14は、基部10の内部に埋設されている。なお、錘14は、基部10の表面から露出していてもよい。また、基部10には、1つの錘14が設けられていてもよく、複数の錘14が設けられていてもよい。基部10は、例えばポリウレタンによって作られている。なお、基部10の材料は他の材料であってもよい。また、錘14は、例えば金属によって作られている。なお、基部10の材料は他の材料であってもよい。
【0026】
鏡面層30は、基部10の表面15の少なくとも一部にも設けられていてもよい。基部10の表面15は、基部15の外形を形作る面であり、底面11や凹部13を含む。例えば、図2に示されるように、基部10の表面15の底面11及び凹部13を除く部分に、鏡面層30が形成されている。鏡面層30は、基部10の表面15の少なくとも一部に設けられるものであり、鏡面層30が設けられる基部10の表面15の範囲は、特定の範囲に限定されない。但し、鏡面層30は、標識柱1において露出される部分に設けられる。
【0027】
標識柱1の基部10と柱部20とは、例えば、ポストコーン(登録商標)等の道路標識柱に類似する部材である。
【0028】
標識柱1は、上述のような構成を有しており、基部10に柱部20が支持されて、基部10から上方に柱部20が延びている。標識柱1は、地面等の設置面に置かれて使用される。標識中1の使用状態において、基部10の底面11が設置面に接地しており、柱部20が設置面上に立つ。基部10には錘14が設けられているため、標識柱1は、安定して設置面上に立つことができる。
【0029】
標識柱1は、柱部20の表面21及び基部10の表面15に鏡面層30を有している。この鏡面層30の表面31の光の反射率は、柱部20の表面21の光の反射率よりも高くなっている。このため、鏡面層30は、標識柱1を見た人に、鏡面層30が形成された部分は硬い材料で形成されている印象を与える。この硬い材料の印象は、人が故意に柱部20等の標識柱1の部分に衝撃を与える行為を抑止することができる。特に、鏡面層30の表面31の光の反射率が高く、例えば、鏡面層30の表面31の光の反射率が50%以上又は70%以上の場合、鏡面層30は、標識柱1を見た人に、鏡面層30が形成された部分は金属等のより硬い材料で形成されている印象を与え、人が故意に標識柱1に衝撃を与える行為を抑止する大きな効果を有する。また、柱部20の表面21の露出している部分全体に鏡面層30が形成されている場合、または、柱部20の表面21及び基部10の表面15夫々の露出している部分全体に鏡面層30が形成されている場合、鏡面層30は、標識柱1を見た人に、柱部20全体又は標識柱1全体が金属等のより硬い材料で形成されている印象を与え、人が故意に標識柱1に衝撃を与える行為を抑止する大きな効果を有する。このため、人が標識柱1に座ったり、標識柱1に衝撃を与えたりして、故意に標識柱1に損傷が与えられることを抑制することができる。
【0030】
また、基部10と柱部20とは分離可能となっているので、基部10と柱部20とを互いに分離させ、基部10と柱部20とを分けて保管することができる。このように、標識柱1は、保管スペースを小さくすることができる。
【0031】
上述のように、本発明の実施形態に係る標識柱1によれば、故意に基づく損傷を防止することができる。
【0032】
なお、基部10の凹部13と柱部20の下端部20aとの間には、基部10と柱部20とを互いに係合させる係合部が設けられていてもよい。係合部は、例えば、基部10の凹部13に形成された突出部又は凹部と、柱部20の下端部20aに形成された凹部又は突出部である。基部10の凹部13に柱部20が収容されている状態において、この係合部が係合していることにより、基部10と柱部20との間の固定を強固にすることができる。
【0033】
また、基部10には、底面11から下方に延びるネジ部が形成されていてもよい。ネジ部には、ネジ山が形成されている。この場合、設置面に形成されたネジ穴にネジ部を締め付けることにより、設置面に標識柱1を固定することができる。
【0034】
また、柱部20は基部10に固定されていてもよい。例えば、柱部20は、基部10の凹部13に収容されて、基部10に固定されていてもよい。固定は、例えば、ボルト等の固定部材や、接着剤等によってなされる。固定方法はこれに限られない。
【0035】
以上、上記実施形態を通じて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に様々な変更又は改良を加えることができることが当業者には明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0036】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、上述の実施形態は、本発明が利用される利用対象を限定するものではなく、本発明はあらゆるものをその利用対象として含み得る。上記実施形態が備える各構成要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。例えば、本発明は、製造上の公差等の実施において発生する差を含むものである。また、技術的に矛盾しない範囲において、異なる実施形態で示した構成要素同士を部分的に置換し又は組み合わせることができる。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 標識柱、10 基部、11 底面、12 支持部、13 凹部、13a 側面、13b 底面、14 錘、15 表面、20 柱部、20a 下端部、20b 上端部、21 表面、22 上端、23 下端、24 側面、30 鏡面層、31 表面、P1,P2,R 領域
【要約】
【課題】故意に基づく損傷を防止することができる標識柱を提供する。
【解決手段】標識柱1は、基部10と、基部10から延びる柱状の柱部20とを備えている。柱部20は、復元可能に外力によって変形可能な柔軟性を有している。少なくとも柱部20の表面21の一部に、鏡面層30が設けられている。鏡面層30の表面31の光の反射率は、柱部20の表面21の光の反射率よりも高い。
【選択図】図2
図1
図2
図3