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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】収容庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20240823BHJP
   A23L 3/36 20060101ALI20240823BHJP
   A23L 3/32 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
F25D23/00 302Z
A23L3/36 Z
A23L3/32
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023095408
(22)【出願日】2023-06-09
【審査請求日】2023-08-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002129
【氏名又は名称】住友商事株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000208709
【氏名又は名称】第一施設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】丸山 大志郎
(72)【発明者】
【氏名】孫 仙英
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-088370(JP,A)
【文献】国際公開第2019/132046(WO,A1)
【文献】特開2021-009005(JP,A)
【文献】中国実用新案第208909020(CN,U)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0028405(KR,A)
【文献】特開2000-100636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/00
A23L 3/32
A23L 3/36 ~ 3/375
A23B 4/015
A23B 7/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容室を内部に有する収容庫本体と、
前記収容室の内部を冷却する冷却部と、
電圧の印加に基づき前記収容室の内部に電場を形成する第1電極部材と、
直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路と、
前記インバータ回路により生成された前記交流電圧を昇圧させて前記第1電極部材に印加する変圧部と、
前記変圧部から前記第1電極部材に印加される前記交流電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部により検出される前記交流電圧が目標電圧となるように前記インバータ回路を制御する制御部と、
前記収容室内に収容されている物品である収容物に接触可能に配置される第2電極部材と、
前記第2電極部材を流れる電流を検出する電流検出部と、を備え、
前記制御部は、前記電流検出部により検出される電流値が大きくなるほど、前記電場が強くなるように前記インバータ回路を制御する
収容庫。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1電極部材に印加される前記交流電圧の周波数を目標周波数に更に制御する
請求項1に記載の収容庫。
【請求項3】
前記収容庫の内部の温度を検出する温度検出部を更に備え、
前記制御部は、前記温度検出部により検出される前記収容庫の内部の温度に基づいて前記目標周波数を変更する
請求項2に記載の収容庫。
【請求項4】
前記制御部は、前記目標周波数を周期的に変更する
請求項2に記載の収容庫。
【請求項5】
前記制御部は、前記目標電圧を周期的に変更する
請求項1に記載の収容庫。
【請求項6】
前記収容室内に収容されている物品を収容物とするとき、
前記目標周波数には、前記収容物を冷却状態で保持する際に用いられる第1目標周波数、及び前記収容物を解凍する際に用いられる第2目標周波数の少なくとも一方が含まれている
請求項2に記載の収容庫。
【請求項7】
前記変圧部は、絶縁材により囲われている
請求項1に記載の収容庫。
【請求項8】
前記制御部は、電源部から前記インバータ回路に印加される交流電圧に関わらず、前記電圧検出部により検出される前記交流電圧が前記目標電圧になるように前記インバータ回路を制御する
請求項1に記載の収容庫。
【請求項9】
収容室を内部に有する収容庫本体と、
前記収容室の内部を冷却する冷却部と、
電圧の印加に基づき前記収容室の内部に電場を形成する電極部材と、
直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路と、
前記インバータ回路により生成された前記交流電圧を昇圧させて前記電極部材に印加する変圧部と、
前記変圧部から前記電極部材に印加される前記交流電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部により検出される前記交流電圧が目標電圧となるように前記インバータ回路を制御する制御部と、
前記収容庫本体の内部の温度を検出する温度検出部と、を備え、
前記制御部は、
前記電極部材に印加される前記交流電圧の周波数を目標周波数に更に制御し、
前記温度検出部により検出される前記収容庫本体の内部の温度が低くなるほど、前記目標周波数を高くなるように設定する
収容庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載の収容庫がある。特許文献1に記載の収容庫は、その内部に配置される電極部材と、電極部材に電圧を印加する電源とを備えている。収容庫は矩形箱状に形成されている。電極部材は収容庫の底壁部の内面又は上壁部の内面に固定されており、電源から印加される電圧に基づいて収容庫の内部に静電界を形成する。これにより、収容庫内に静電界が形成されていない場合と比較すると、収容庫に収容されている生鮮食品等の収容物の鮮度を長く保つことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-204428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の収容庫を例えば生鮮食品等の輸送のために用いた場合、輸送時間が長くなるほど収容物の腐敗が進行し易くなる。そのため、より長く収容物の鮮度を保持することが可能な収容庫が望まれているという実情がある。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より長く収容物の鮮度を保持することが可能な収容庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する収容庫は、収容庫本体と、冷却部と、電極部材と、インバータ回路と、変圧部と、電圧検出部と、制御部と、を備える。収容庫本体は収容室を内部に有する。冷却部は、収容室の内部を冷却する。電極部材は、電圧の印加に基づき収容室の内部に電場を形成する。インバータ回路は、直流電圧を交流電圧に変換する。変圧部は、インバータ回路により生成された交流電圧を昇圧させて電極部材に印加する。周波数検出部は、変圧部から電極部材に印加される交流電圧を検出する。制御部は、電圧検出部により検出される交流電圧が目標電圧となるようにインバータ回路を制御する。
【0006】
この構成によれば、収容室内に形成される電界の強さを一定の強さに制御することができるため、収容室内に形成される電界の強さを、より適切な強さに制御することが可能となる。そのため、より長く収容物の鮮度を保持することが可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の収容庫によれば、より長く収容物の鮮度を保持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態のコンテナの斜視構造を示す斜視図。
図2図1のII-II線に沿った断面構造を示す断面図。
図3】第1実施形態のコンテナの電気的な構成を示すブロック図。
図4】第1実施形態の制御部の構成を示すブロック図。
図5】第2実施形態の制御部の構成を示すブロック図。
図6】第3実施形態のコンテナの電気的な構成を示すブロック図。
図7】他の実施形態のコンテナの電気的な構成を示すブロック図。
図8】他の実施形態のコンテナの電気的な構成を示すブロック図。
図9】他の実施形態のコンテナの電気的な構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、収容庫の一実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
<第1実施形態>
はじめに、第1実施形態の収容庫について説明する。図1は、第1実施形態のコンテナ10の概略構成を示す斜視図である。図2は、図1のII-II線に沿った断面構造を示す断面図である。図1及び図2において、矢印Z1で示される方向は鉛直方向上方を示し、矢印Z2で示される方向は鉛直方向下方を示す。また、矢印Xで示される方向及び矢印Yで示される方向は、鉛直方向Z1,Z2に直交する方向であって、水平方向を示す。矢印Xで示される方向及び矢印Yで示される方向は互いに直交している。以下では、矢印Xで示される方向を「幅方向X」と称し、矢印Yで示される方向を「奥行き方向Y」と称する。本実施形態では、コンテナ10が収容庫に相当する。
【0010】
図1に示されるコンテナ10は、食品等を冷却保管する機能を有している。コンテナ10は、固定型コンテナとして使用されてもよく、また食品を冷却保管した状態で輸送するための輸送(移動)用コンテナとして使用することもできる。固定型コンテナとしては、食品の加工工場や建屋等の屋内に設置される形態や、それ自体が倉庫として機能する形態が挙げられる。輸送用コンテナとしては、船舶に積み込まれる海上輸送用コンテナの他、飛行機、車両等の移動体に積み込まれるコンテナ等が挙げられる。コンテナ10は、固定型及び輸送用のいずれにも関わらず、冷蔵庫等であってもよい。本実施形態では、コンテナ10が収容庫に相当する。
【0011】
図1に示されるように、コンテナ10は、コンテナ本体20と、一対の扉部30とを備えている。本実施形態では、コンテナ本体20が収容庫本体に相当する。
コンテナ本体20は、奥行き方向Yの前方の端部である前端部20aに開口部を有する矩形箱状に形成されている。一対の扉部30は、コンテナ本体20の開口部に設けられており、当該開口部を開閉させる。コンテナ本体20及び扉部30は、例えばアルミニウムやステンレス鋼等の金属材料により形成されるとともに、電気的に接地されている。
【0012】
コンテナ本体20及び扉部30のそれぞれの内面により囲まれる空間は、図2に示される収容室S10を形成している。コンテナ10のユーザは、扉部30から収容室S10に入ることにより、所望の収容物70を収容室S10の内部に配置することが可能である。収容物70は生鮮食品や乳製品、麺類等である。生鮮食品は、例えば魚や貝等の魚介類、いちごやりんご等の果物、キャベツやトマト等の野菜、牛肉や豚肉等の食肉、エッグ、並びにそれらの加工食品である。乳製品は牛乳やチーズ等である。麺類は、小麦粉やそば粉等の穀物の粉体から作られるものである。なお、コンテナ10に収容される物品は、食品に限らず、生花や薬品、臓器等であってもよい。本実施形態では、収容物70が生鮮食品である場合を例に挙げて説明する。
【0013】
コンテナ本体20及び扉部30の内部には、図示しない断熱材が埋め込まれている。この断熱材は、収容室S10からコンテナ10の外部への熱伝達を抑制することにより、コンテナ10の冷却性能を高めている。
以下では、図2に示されるコンテナ本体20の複数の外壁部のうち、鉛直方向上方Z1に配置される外壁部201を「上壁部201」と称し、扉部30から見たときに右側に配置される外壁部202を「右側壁部202」と称し、扉部30から見たときに左側に配置される外壁部203を「左側壁部203」と称し、鉛直方向下方Z2に配置される外壁部204を「底壁部204」と称し、扉部30とは反対側に位置する外壁部205を「背壁部205」と称する。
【0014】
図2に示されるように、コンテナ10は、コンテナ本体20の背壁部205に設けられる冷却装置40を更に備えている。本実施形態のコンテナ10は、冷却装置40により内部の温度を調整することが可能な、いわゆるリーファーコンテナである。
冷却装置40は、コンテナ本体20の内部又は外部に設けられた電源(図示せず)に接続されており、電力供給により駆動する。冷却装置40は、コンテナ本体20の収容室S10に冷風を供給することにより、予め設定されている設定温度、又はコンテナ10のユーザにより設定された目標温度となるように収容室S10を冷却する。目標温度は、例えばマイナス温度に設定される。冷却装置40は、コンテナ本体20の収容室S10に開口する吸入口41及び吹出口42をコンテナ本体20の背壁部205に有している。吸入口41はコンテナ本体20の背壁部205の上方に設けられている。吹出口42は、コンテナ本体20の背壁部205の下方に設けられている。本実施形態では、冷却装置40が冷却部に相当する。
【0015】
コンテナ10は電場形成部50を更に備えている。電場形成部50はコンテナ本体20の上壁部201の内側付近に配置されている。電場形成部50は、絶縁部材51と、電極部材52とを備えている。電場形成部50は、電力供給によって駆動され、収容室S10の内部に電場を形成する。
【0016】
電場形成部50の幅方向Xの一端部及び他端部は載置部61,62にそれぞれ載置されている。載置部61,62はコンテナ本体20の右側壁部202及び左側壁部203のそれぞれの上方に設けられるとともに、奥行き方向Yに延在している。載置部61,62の種類は、特に限定されず、電気的な絶縁性を有する絶縁材料(例えば樹脂)でもよく、あるいは鉄やステンレス等の導電性材料であってもよい。載置部61は、右側壁部202に固定される部位610と、電場形成部50の一端部が載置される部位611とを有している。同様に、載置部62は、左側壁部203に固定される部位620と、電場形成部50の他端部が載置される部位621とを有している。載置部61,62は共に、奥行き方向Yに直交する断面形状がL字状をなす、いわゆるL字状アングル部材として構成されている。なお、電場形成部50は、コンテナ本体20の上壁部201から絶縁材の樹脂ブロックや支柱等を介して吊り下げられる形で配置されていてもよい。
【0017】
次に、本実施形態のコンテナ10の動作例について説明する。
本実施形態のコンテナ10では、冷却装置40が、図2に示される吸入口41を介して収容室S10内の空気を吸入するとともに、吸入した空気を冷却して吹出口42から収容室S10に吹き出す。本実施形態のコンテナ10では、吹出口42から吹き出される冷風により収容室S10の内部が冷却されることで、収容室S10内に収容されている食品70が冷却状態で保存される。
【0018】
また、電場形成部50は電極部材52に所定の高電圧を印加することにより収容室S10の内に電場を形成する。この際、電極部材52に印加される高電圧は、例えば時間の経過に伴って周期的に大きさや向きが変化する交番(交流)電圧である。電極部材52に印加される電圧は、任意の大きさに設定可能であるが、例えば数百V~数万Vの高電圧に設定される。本実施形態では、電極部材52に7kVの交流電圧が印加される。
【0019】
このような電場環境において食品70が冷却状態で保存されることにより、食品70の凍結点を下げることができるため、より低温の環境下、例えばマイナス温度の環境下であっても凍結することなく食品70を保存することができる。そのため、食品70の鮮度をより長期間に亘って維持することが可能となる。具体的には、食品70の内部の食品の少なくとも一部が凍結寸前の状態(チルド状態)となるように冷却されるとともに、その状態が保持される。なお、食品の少なくとも一部とは、一つの食品内の少なくとも一部分、あるいは複数の食品のうちの少なくとも一つの食品を示す。また、凍結寸前の状態には、例えば半冷凍や半解凍のような状態や、若干表面が固くなっている状態、あるいは指で押せば1mm~2mmだけ凹むような完全凍結ではないものの、その一歩手前(解凍の初期段階)等が含まれる。
【0020】
次に、本実施形態のコンテナ10の回路構成について説明する。
図3に示されるように、コンテナ10は、整流回路100と、インバータ回路110と、高圧変圧回路120と、電源回路130と、制御部140と、第1センシング回路150と、第2センシング回路151とを備えている。これらの要素は、例えば一つの制御装置300としてモジュール化されて、図2に破線で示されるようにコンテナ10に内蔵されている。
【0021】
整流回路100は、コンテナ10の外部の商業電源200から供給される交流電圧を直流電圧に変換するとともに、変換された直流電圧をインバータ回路110に供給する。商業電源200から整流回路100に供給される交流電圧は例えば100V系、200V系、及び440V系のいずれかの系統の交流電圧である。本実施形態では、商業電源200が電源部に相当する。
【0022】
インバータ回路110は、整流回路100から供給される直流電圧を交流電圧に変換するとともに、変換された交流電圧を高圧変圧回路120の一次巻線121に供給する。インバータ回路110から高圧変圧回路120の一次巻線121に供給される交流電圧は、例えば実効値が100Vの交流電圧である。インバータ回路110と高圧変圧回路120とを接続する配線の途中には抵抗170が設けられている。
【0023】
高圧変圧回路120は、一次巻線121と、二次巻線122とを有している。高圧変圧回路120では、インバータ回路110から一次巻線121に供給される交流電圧に応じた交流電圧が二次巻線122に誘起される。本実施形態の二次巻線122には、一次巻線121に供給される交流電圧を昇圧した交流電圧、例えば実効値が7kVであって、且つ周波数が120Hzの交流電圧が誘起される。二次巻線122と接地電位とを接続する配線の途中には抵抗171が設けられている。高圧変圧回路120の二次巻線122に誘起された交流電圧は配線180を介して電極部材52に供給される。以下では、便宜上、インバータ回路110から高圧変圧回路120の一次巻線121に供給される交流電圧及び交流電流をそれぞれ「入力交流電圧」及び「入力交流電流」と称する。また、高圧変圧回路120の二次巻線122から電極部材52に供給される交流電圧及び交流電流をそれぞれ「出力交流電圧」及び「出力交流電流」と称する。
【0024】
第1センシング回路150は高圧変圧回路120の入力交流電圧及び入力交流電流のそれぞれの大きさを検出する。第1センシング回路150は、検出された高圧変圧回路120の入力交流電圧及び入力交流電流のそれぞれの大きさの情報を含む検出信号を制御部140に出力する。
【0025】
第2センシング回路151は高圧変圧回路120の出力交流電圧及び出力交流電流のそれぞれの大きさを検出する。第2センシング回路151は、検出された高圧変圧回路120の出力交流電圧及び出力交流電流のそれぞれの大きさの情報を含む検出信号を制御部140に出力する。本実施形態では、第2センシング回路151が電圧検出部に相当する。
【0026】
電源回路130は、商業電源200から供給される交流電圧を、制御部140の動作に適した直流電圧に変換するとともに、変換された直流電圧を制御部140に供給する。電源回路130から制御部140に供給される直流電圧は例えば24Vである。
制御部140は、電源回路130から供給される直流電圧に基づいて駆動することによりインバータ回路110を制御する。なお、制御部140は、各種の論理回路の組み合わせにより構成されるものであってもよいし、CPUやメモリ等を有するマイクロコンピュータにより構成されるものであってもよい。
【0027】
制御部140には、第1センシング回路150及び第2センシング回路151からそれぞれ出力される検出信号が取り込まれている。制御部140は、第1センシング回路150の検出信号に基づいて高圧変圧回路120の入力交流電圧及び入力交流電流のそれぞれの大きさを取得する。また、制御部140は、第2センシング回路151の検出信号に基づいて高圧変圧回路120の出力交流電圧及び出力交流電流のそれぞれの大きさを取得する。制御部140は、第1センシング回路150及び第2センシング回路151からそれぞれ取得可能な情報に基づいてインバータ回路110を制御する。
【0028】
次に、制御部140においてインバータ回路110を制御する構成の一例について説明する。
図4に示されるように、制御部140は、その機能的な構成として、目標設定部141と、電圧取得部142と、減算部143と、インバータ制御部144とを有している。
【0029】
目標設定部141は、出力交流電圧の大きさの目標値である目標電圧Vs*、及び出力交流電圧の周波数の目標値である目標周波数Fs*を設定する。本実施形態では、目標電圧Vs*が例えば7kVに予め設定され、目標周波数Fs*が例えば120Hzに予め設定されている。目標設定部141は、設定された目標電圧Vs*を減算部143に出力するとともに、設定された目標周波数Fs*をインバータ制御部144に出力する。
【0030】
電圧取得部142は、第2センシング回路151の検出信号に基づいて高圧変圧回路120の出力交流電圧の実際の大きさである実電圧Vsの情報を取得する。電圧取得部142は、取得した実電圧Vsを減算部143に出力する。
減算部143は、目標設定部141により設定された目標電圧Vs*と、電圧取得部142により取得された実電圧Vsとの偏差ΔVs(=Vs*-Vs)を演算する。減算部143は、演算した偏差ΔVsをインバータ制御部144に出力する。
【0031】
インバータ制御部144は、減算部143により演算された偏差ΔVs、及び目標設定部141から出力される目標周波数Fs*に基づいてインバータ回路110を制御する。具体的には、インバータ制御部144は、高圧変圧回路120から出力される実電圧Vsが目標電圧Vs*となるようにインバータ回路110を制御する。これにより、第2センシング回路151により検出される高圧変圧回路120の出力交流電圧の大きさに基づいて、高圧変圧回路120の出力交流電圧の大きさを目標電圧Vs*にフィードバック制御することが可能となる。また、インバータ制御部144は、インバータ回路110から出力される電圧の周波数を目標周波数Fs*に制御する。これにより、高圧変圧回路120の出力交流電圧の周波数が目標周波数Fs*に制御される。
【0032】
以上説明した本実施形態のコンテナ10によれば、以下のような作用及び効果を得ることができる。
本実施形態のコンテナ10は、コンテナ本体20と、冷却装置40と、電極部材52と、インバータ回路110と、高圧変圧回路120と、第2センシング回路151と、制御部140とを備える。コンテナ本体20は収容室S10を内部に有する。冷却装置40は収容室S10の内部を冷却する。電極部材52は電圧の印加に基づき収容室S10の内部に電場を形成する。インバータ回路110は直流電圧を交流電圧に変換する。高圧変圧回路120は、インバータ回路110により生成された交流電圧を昇圧させて電極部材52に印加する。第2センシング回路151は、高圧変圧回路120から電極部材52に印加される出力交流電圧を検出する。制御部140は、第2センシング回路151により検出される出力交流電圧の実電圧Vsが目標電圧Vs*となるようにインバータ回路110を制御する。
【0033】
この構成によれば、収容室S10内に形成される電界の強さを一定の強さに制御することができるため、収容室S10内に形成される電界の強さを、より適切な強さに制御することが可能となる。例えば本実施形態のコンテナ10を輸送用のコンテナとして用いた場合、国や輸送モードによって電力事情が異なることが考えられるが、そのような事情によらず、収容室S10内に形成される電界の強さを、より適切な強さに制御することが可能である。なお、国による電力事情には、例えば出荷地の電力事情や荷受地の電力事情等がある。また、輸送モードには、コンテナ10を輸送する移動体がMGシャーシであるときの電力事情や、その移動体が船であるときの電力事情等がある。収容室S10内に形成される電界の強さを、より適切な強さに制御することが可能となることにより、より長く食品70の鮮度を保持することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態のコンテナ10では、制御部140が、電極部材52に印加される交流電圧の周波数を目標周波数Fsに更に制御する。
この構成によれば、例えば電極部材52に印加される交流電圧の周波数を、商業周波数(50Hz又は60Hz)よりも高い周波数(例えば120Hz)に制御することができるため、そのような周波数帯の電場を収容室S10内に形成することができる。これにより、食品70に含まれる水分子にスピンが生じるため、食品70に摩擦熱を発生させることができる。そのため、食品70の凍結を効率良く回避することが可能である。なお、電極部材52に印加される交流電圧の周波数は、商業周波数よりも高い周波数であれば、例えば60Hz~1,000Hzの周波数に設定してもよい。さらに、電極部材52に印加される交流電圧の周波数は、商業周波数と同程度の周波数、商業周波数よりも低い周波数、あるいは1,0000Hzよりも大きい周波数に設定することも可能である。
【0035】
さらに、本実施形態のコンテナ10の構造を採用すれば、図2に示される制御装置300と共に高圧変圧回路120等をコンテナ10に内蔵することができるため、例えばコンテナ10の外部に変圧器等を設ける場合と比較すると、コンテナ10の構成を簡素化することができる。
(変形例)
次に、第1実施形態のコンテナ10の変形例について説明する。
【0036】
目標周波数Fs*を一定の値に固定した場合、例えば食品70に含まれる菌等が電場環境に耐性を有することにより、食品70に含まれる菌等が増加する可能性がある。
そこで、本変形例の目標設定部141は、目標周波数Fs*を一定値に固定するという方法に代えて、目標周波数Fs*を周期的に変化させる。例えば目標設定部141は、60Hzから例えば120Hzの範囲で目標周波数Fs*を周期的に変化させる。この構成によれば、収容室S10の内部の電場の周波数を所定の周期で変化させることができるため、食品70に含まれる菌が所定の周波数に耐性を有するような状況が発生し難くなる。よって、食品70において菌が増加することを回避することができる。同様に、目標設定部141は、目標電圧Vs*を周期的に変化させてもよい。
【0037】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態のコンテナ10について説明する。以下、第1実施形態のコンテナ10との相違点を中心に説明する。
第1実施形態のようなコンテナ10では、例えば食品70の鮮度保持効果を高めるために、収容室S10の温度を、食品70が凍結しないぎりぎりの温度に設定したような場合、外的要因等により食品70の温度が変化することにより、食品70が凍結又はそれに近い状態になる可能性がある。外的要因には、外気温や輸送日数、収容室S10の内部の積載量の多寡等が含まれる。例えば輸送日数が長くなるほど、食品70は凍り易くなる。仮に食品70が凍結又はそれに近い状態になると、食品70を販売する際に問題が生じる可能性がある。
【0038】
また、食品70の凍結を回避するために収容室S10の温度を高めに設定したような場合、仮に凍結することなく、また腐食することなく食品70を輸送できたとしても、食品70に含まれる菌数が高くなることにより、賞味期限が短くなる可能性がある。
一方、発明者の実験によると、食品70に印加される電場が大きくなるほど、またその電場の周波数が高くなるほど、食品70が、より低い温度でも凍結し難くなることが確認されている。
【0039】
以上を考慮すると、収容室S10の設定温度を低く設定した上で、外的要因等により食品70の凍結の可能性が高くなった場合には収容室S10内の電場の周波数を高くすれば、食品70をより適切に輸送することが可能である。そこで、本実施形態のコンテナ10は、収容室S10の温度に基づいて、電極部材52に印加される交流電圧の周波数を変更する。
【0040】
次に、本実施形態のコンテナ10の具体的な構成について説明する。
図5に示されるように、本実施形態のコンテナ10は温度センサ190を更に備えている。温度センサ190は、収容室S10の内部の温度を検出するとともに、検出された温度に応じた検出信号を出力する。温度センサ190の検出信号は制御部140の目標設定部141に取り込まれている。本実施形態では、温度センサ190が温度検出部に相当する。
【0041】
目標設定部141は、温度センサ190の検出信号に基づいて収容室S10の内部の温度の情報を取得するとともに、取得した収容室S10の内部の温度に基づいて目標周波数Fs*を設定する。具体的には、目標設定部141は、収容室の内部の温度と目標周波数Fs*との関係を示すマップや演算式等を用いることにより、収容室S10の内部の温度から目標周波数Fs*を演算する。目標設定部141により用いられるマップや演算式等は、収容室の内部の温度が低くなるほど、目標周波数Fs*が高くなるように作成されている。
【0042】
以上説明した本実施形態のコンテナ10によれば、以下のような作用及び効果を得ることができる。
制御部140は、温度センサ190により検出されるコンテナ10の内部の温度に基づいて目標周波数Fs*を変更する。この構成によれば、外的要因等により収容室S10の温度が変化した場合であっても、収容室S10の内部に形成される電場の実際の周波数を、その時々の収容室S10の温度に対応した適切な周波数に設定することができる。よって、より適切な状態で食品70の鮮度を保持することが可能となる。
【0043】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態のコンテナ10について説明する。以下、第1実施形態のコンテナ10との相違点を中心に説明する。
図6に示されるように、本実施形態のコンテナ10では、抵抗171とコンテナ本体20との間に電流センサ400が設けられている。電流センサ400は、抵抗171を流れる電流を検出する。本実施形態では、電流センサ400が電流検出部に相当する。
【0044】
電流センサ400には、収容室S10内における食品70の有無に応じた電流が流れる。具体的には、収容室S10内に生鮮食品等の食品70が存在する場合には、電場環境下に食品70が置かれることにより食品70に微弱な電流が流れる。図2及び図6に示されるように、コンテナ本体20の底壁部204に食品70が接触するように配置されている場合、食品70は、一方の電極部材52と、他方の電極部材であるコンテナ本体20の底壁部204との間に挟み込まれるように配置されることになる。図6に示される一点鎖線の領域Aeは、電極部材52とコンテナ本体20との間に形成される電界領域を模式的に示したものである。本実施形態では、コンテナ本体20が第2電極部材に相当する。電極部材52とコンテナ本体20との間で食品70が一種の誘電体として働くことにより、電流センサ400により検出される電流値に変化が生じる。具体的には、収容室S10内に食品70が存在しない場合よりも、食品70が存在する場合の方が、電流センサ400を流れる電流が大きくなる。また、収容室S10内に存在する食品70の全体の体積が大きくなるほど、電流センサ400を流れる電流が大きくなる。
【0045】
そこで、本実施形態では、電流センサ400により検出される電流が大きくなるほど、収容室S10内に形成される電場を強くする。具体的には、目標の強さの電場を収容室S10内に形成した際に電流センサ400を流れる電流の値が予め実験等により計測されており、その電流の計測値が目標電流値I*として制御部140の記憶装置に予め記憶されている。インバータ制御部144は、電流センサ400の検出信号に基づいて、電流センサ400を流れる電流値Iの情報を取得する。インバータ制御部144は、電流センサ400により検出された電流値Iに基づいてインバータ回路110を制御する。例えば、インバータ制御部144は、電流センサ400により検出された電流値Iが目標電流値I*よりも小さくなった場合には、それらの偏差(I*-I)が大きくなるほど、高圧変圧回路120の一次巻線121に印加される交流電圧が大きくなるようにインバータ回路110を制御する。
【0046】
以上説明した本実施形態のコンテナ10によれば、以下のような作用及び効果を得ることができる。
コンテナ10は、食品70に接触可能に配置される第2電極部材としてのコンテナ本体20と、コンテナ本体20を流れる電流を検出する電流センサ400とを更に備える。制御部140は、電流センサ400により検出される電流に基づいてインバータ回路110を制御する。この構成によれば、食品70の有無、並びに食品70の全体の体積等に応じてインバータ回路110から電極部材52に印加される交流電圧を制御するため、より適切な電界を食品70に印加させることができる。よって、より適切な状態で食品70の鮮度を保持することが可能となる。
【0047】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態のコンテナ10について説明する。以下、第1実施形態のコンテナ10との相違点を中心に説明する。
本実施形態の目標設定部141は、目標電圧Vs*として第1目標電圧Vs1*及び第2目標電圧Vs2*を有するとともに、目標周波数Fs*として第1目標周波数Fs1*及び第2目標周波数Fs2*を有している。第1目標電圧Vs1*及び第1目標周波数Fs1*は、収容室S10に収容される食品70等を冷却状態で保持するのに適した電圧及び周波数にそれぞれ設定されている。第2目標電圧Vs2*及び第2目標周波数Fs2*は、食品70等を解凍するのに適した電圧及び周波数にそれぞれ設定されている。目標設定部141は、例えばコンテナ10に設けられる操作パネルに対するユーザの操作に基づいて、目標電圧Vs*を第1目標電圧Vs1*及び第2目標電圧Vs2*のいずれかに設定するとともに、目標周波数Fs*を第1目標周波数Fs1*及び第2目標周波数Fs*2のいずれかに設定する。
【0048】
以上説明した本実施形態のコンテナ10によれば、以下のような作用及び効果を得ることができる。
本実施形態のコンテナ10によれば、目標電圧Vs*が第1目標電圧Vs1*に設定され、且つ目標周波数Fs*が第1目標周波数Fs1*に設定されることにより、より適切に食品70等を冷却状態で保存することが可能である。また、目標電圧Vs*が第2目標電圧Vs2*に設定され、且つ目標周波数Fs*が第2目標周波数Fs2*に設定されることにより、食品70等を解凍することが可能となる。
【0049】
<他の実施形態>
本開示は上記の具体例に限定されるものではない。
例えば、図7に示されるように、インバータ回路110は制御部140に組み込まれていてもよい。
【0050】
図8に示されるように、配線180と第2センシング回路151との間に分圧回路500を設けた上で、高圧変圧回路120から電極部材52に印加される交流電圧を分圧回路500により降圧して第2センシング回路151に入力してもよい。これにより、第2センシング回路151は、第2電極部材52に実際に印加されている交流電圧よりも低い交流電圧で検出することが可能となる。
【0051】
各実施形態のコンテナ10では、高圧変圧回路120から電極部材52に印加される出力交流電圧の周波数を第2センシング回路151により更に検出した上で、第2センシング回路151により検出された出力交流電圧の周波数に基づいて、インバータ回路110から出力される交流電圧の周波数をフィードバック制御してもよい。
【0052】
図9に示されるように、高圧変圧回路120は絶縁部材600により覆われていてもよい。この構成によれば、例えば高圧変圧回路120の動作時に発生する電磁波等が、高圧変圧回路120の周辺に配置される低圧部品に漏れることにより、低圧部品が劣化することを未然に回避できる。
【0053】
上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。また、本開示において、例えば1つの「工程」、「ステップ」、「部」、「体」、「室」、「装置」、「機」、「器」、「手段」、「機構」、「システム」、及びそれらの一部や全部の機能や構成が、それらの2つ以上によって実現されてもよく、或いは、それらの2つ以上が、1つによって実現されてもよい。
【符号の説明】
【0054】
S10:収容室、10:コンテナ(収容庫)、20:コンテナ本体(収容庫本体、第2電極部材)、40:冷却装置(冷却部)、52:電極部材(第1電極部材)、70:食品(収容物)、110:インバータ回路、120:高圧変圧回路(変圧部)、151:第2センシング回路(周波数検出部)、140:制御部、190:温度センサ(温度検出部)、200:商業電源(電源部)、400:電流センサ(電流検出部)。
【要約】
【課題】より長く収容物の鮮度を保持することが可能な収容庫を提供する。
【解決手段】収容庫は、電極部材52と、インバータ回路110と、高圧変圧回路120と、第2センシング回路151と、制御部140と、を備える。電極部材52は、電圧の印加に基づき収容室の内部に電場を形成する。インバータ回路110は、直流電圧を交流電圧に変換する。高圧変圧回路120は、インバータ回路110により生成された交流電圧を昇圧させて電極部材52に印加する。第2センシング回路151は、高圧変圧回路120から電極部材52に印加される交流電圧を検出する。制御部140は、第2センシング回路151により検出される交流電圧が目標電圧となるようにインバータ回路110を制御する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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