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特許7542704液晶ポリマー樹脂、及び液晶ポリマー樹脂から成る成形物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】液晶ポリマー樹脂、及び液晶ポリマー樹脂から成る成形物
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/06 20060101AFI20240823BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20240823BHJP
   C08G 63/88 20060101ALI20240823BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
C08G63/06
C08L67/04
C08G63/88
C08J5/00 CFD
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023150991
(22)【出願日】2023-09-19
【審査請求日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】112105437
(32)【優先日】2023-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】202310114906.5
(32)【優先日】2023-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595009383
【氏名又は名称】長春人造樹脂廠股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANG CHUN PLASTICS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7F., No.301, Songkiang Rd., Zhongshan Dist Taipei City,Taiwan 104
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】呉佳鴻
(72)【発明者】
【氏名】黄勁叡
(72)【発明者】
【氏名】杜安邦
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/016141(WO,A1)
【文献】特開2006-005009(JP,A)
【文献】特開2000-026743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/06
C08L 67/04
C08G 63/88
C08J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)および(II)
【化1】
【化2】
で表す構造単位から成り、熱重量減少率は0.050%以上0.088%以下である液晶ポリマー樹脂であって、
前記熱重量減少率は、[(W-W)/W]×100%の式で得られ、式中、Wは、80℃の一定温度で1分間保った前記液晶ポリマー樹脂の重量を表し、Wは、融点の一定温度で1分間保った前記液晶ポリマー樹脂の重量を表し、
前記熱重量減少率が1%である場合の熱分解温度(Td 99 )は280℃~400℃であることを特徴とする液晶ポリマー樹脂。
【請求項2】
前記熱重量減少率が1%である場合の熱分解温度は290℃~390℃であることを特徴とする請求項1に記載の液晶ポリマー樹脂。
【請求項3】
融点は230℃~360℃であることを特徴とする請求項1に記載の液晶ポリマー樹脂。
【請求項4】
全芳香族ポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載の液晶ポリマー樹脂。
【請求項5】
非再生液晶ポリマー樹脂、再生液晶ポリマー樹脂、又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の液晶ポリマー樹脂。
【請求項6】
前記液晶ポリマー樹脂は非再生液晶ポリマー樹脂と再生液晶ポリマー樹脂との組み合わせを含み、前記再生液晶ポリマー樹脂の量は前記液晶ポリマー樹脂の総重量に対して40wt%以下であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の液晶ポリマー樹脂。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の液晶ポリマー樹脂から形成した成形物であって、引張強度は1300kgf/cm以上であり、引張弾性率は5000MPa以上であり、破断伸びは8.0%以下であることを特徴とする成形物。
【請求項8】
前記引張強度は1300kgf/cm~1500kgf/cmであり、前記引張弾性率は5000MPa~7000MPaであり、前記破断伸びは3.0%~8.0%であることを特徴とする請求項に記載の成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液晶ポリマー樹脂(LCP樹脂)、及び液晶ポリマー樹脂から成る成形物、特に機械特性が良好なLCP樹脂、及びLCP樹脂から成る成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
LCP樹脂は構造中に芳香族環、脂肪族環、及び脂肪族鎖を含み、規則正しく整列した分子鎖を有する。分子鎖が散在し、成形加工時に内部応力が残留しやすい従来のプラスチックとは異なり、LCP樹脂は分子鎖配列に方向性があるため、冷却固化後に安定した形態を保つことが可能であり、好ましい成形加工材料となる。
現在、LCPフィルムは、電子機器、自動車産業、及び航空宇宙産業の分野で広く使用されており、中でも電子機器用の回路基板部品はLCPフィルムを最も多く使用している。近年、世界的にLCP樹脂の需要は急増しており、7万トンを超えている。LCPフィルム製で、引張強度及び引張弾性率が高く、破断伸びの低い製品は積極的な需要があることから、LCP樹脂の機械特性をいかに全体的に向上させるかは、当業者が向上させるべき1つの課題となっている。
【0003】
特許文献1に開示されているように、芳香族液晶ポリエステルを含有する液状組成物及びそれから得られる芳香族液晶ポリエステルフィルムが提供されている。
芳香族液晶ポリエステルは、(A)芳香族ヒドロキシカルボン酸、(B)芳香族ジカルボン酸、および(C)芳香族ジオールから誘導される構造単位を含み、(B)/(C)のモル比は0.90~1.00の範囲である。
特許文献1には、このような(B)/(C)の特定のモル比を有する芳香族液晶ポリエステルは、加熱時の溶融粘度の上昇が抑制されたフィルムに形成することが好適であることが開示されている。
しかしながら、特許文献1は、芳香族液晶ポリエステルの物性を改良する技術的手段は開示しておらず、高引張強度の向上、高引張弾性率の向上、破断伸度の低減を総合的に行うことについても触れていない。
従って、LCP樹脂の機械特性を向上させ、様々な応用製品の産業ニーズを満たすことが依然として必要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-188570号公報
【発明の概要】
【0005】
先行技術の欠点に鑑み、本開示の目的の1つは、機械特性が良好なLCP樹脂を提供することである。
上記目的を達成するために、本開示は、下記式(I):
【0006】
【化1】
で表す構造単位から成り、熱重量減少率が0.038%を超え、0.108%未満であるLCP樹脂を提供する。
ここで、LCP樹脂の熱重量減少率は、[(W-W)/W]×100%の式で得られ、式中、Wは、80℃の一定温度で1分間保ったLCP樹脂の重量を表し、Wは、融点の一定温度で1分間保ったLCP樹脂の重量を表す。
本開示によれば、式(I)の構造単位を有し、熱重量減少率が上記範囲であるLCP樹脂から形成した成形物は、良好な機械特性を有する。具体的には、本開示のLCP樹脂は剛性を発揮でき、得られた成形物は引張強度及び引張弾性率が高い。
【0007】
一実施形態では、LCP樹脂の融点は230℃~360℃であってよい。好ましくは、LCP樹脂の融点は260℃~330℃であってよい。
好ましくは、LCP樹脂の熱重量減少率は0.040%以上0.100%以下であってよい。一実施形態では、LCP樹脂の熱重量減少率は0.050%以上0.088%以下であってよい。任意で、LCP樹脂の熱重量減少率は0.050%、0.051%、0.052%、0.053%、0.054%、0.055%、0.056%、0.057%、0.058%、0.059%、0.060%、0.061%、0.062%、0.063%、0.064%、0.065%、0.066%、0.067%、0.068%、0.069%、0.070%、0.071%、0.072%、0.073%、0.074%、0.075%、0.076%、0.077%、0.078%、0.079%、0.080%、0.081%、0.082%、0.083%、0.084%、0.085%、0.086%、0.087%、又は0.088%であってよいが、これに限定されるものではない。LCP樹脂の熱重量減少率の上記特定の値は他の数値範囲の端点として使用してもよい。
【0008】
好ましくは、熱重量減少率が1%である場合のLCP樹脂の熱分解温度(Td99)は、270℃以上であってよい。より好ましくは、熱重量減少率が1%である場合のLCP樹脂の熱分解温度は280℃~400℃であってよい。更に好ましくは、熱重量減少率が1%である場合のLCP樹脂の熱分解温度は290℃~390℃であってよい。任意に、熱重量減少率が1%である場合のLCP樹脂の熱分解温度は、290℃、300℃、310℃、320℃、330℃、340℃、350℃、360℃、370℃、380℃、又は390℃であってよいが、これらに限定されるものではない。熱重量減少率が1%である場合のLCP樹脂の熱分解温度の具体的な上記値は他の数値範囲の端点として使用してもよい。
一実施形態では、LCP樹脂中の式(I)は以下であってよい。
【0009】
【化2】
【0010】
また、一実施形態では、LCP樹脂は、式(I)の構造単位に加えて、更に下記式(II)
【0011】
【化3】
で表される構造単位から成る。例えば、式(II)は以下であってよい。
【0012】
【化4】
【0013】
一実施形態では、LCP樹脂の構造は、ナフタレン環(式(I)で表される構造単位など)を有する。好ましくは、本開示のLCP樹脂は全芳香族ポリエステルである。上述の実施形態では、LCP樹脂の溶融強度は2.0センチニュートン(cN)以上であってよい。好ましくは、LCP樹脂の溶融強度は2.5cN以上であってよい。より好ましくは、LCP樹脂の溶融強度は3.0cN以上であってよい。
本開示によれば、LCP樹脂は、非再生LCP樹脂、再生LCP樹脂、又はこれらの組み合わせである。
【0014】
一実施形態では、LCP樹脂が非再生LCP樹脂を含む場合、「非再生LCP樹脂」とは、一次LCP樹脂材料から成形物へと形成した後に再生していないLCP樹脂を指し、一次LCP樹脂材料は、限定するものではないが熱処理に供することが可能である。熱処理温度は120℃~220℃であってよく、熱処理時間は2時間~8時間であってよい。
【0015】
また、一実施形態では、LCP樹脂が再生LCP樹脂を含む場合、「再生LCP樹脂」とは、LCP樹脂から形成した成形物を再生することにより得たLCP樹脂を指し、再生プロセスは需要に応じて調整可能である。例えば、再生プロセスは、粉砕、熱処理、溶融混合、熱分解、化学分解等の工程を含んでもよいが、これらに限定されるものではない。必要に応じて、再生プロセス中に、再生LCP樹脂から形成した成形物を複数回(例えば、2回、3回、4回)再生し、その後、再生LCP樹脂を成形物の作製に再利用することが可能である。前述の工程は、必要に応じて数回繰り返してもよい。一実施形態では、再生プロセス中、熱処理温度は120℃~220℃、熱処理時間は2時間~8時間であってよい。
【0016】
一実施形態では、LCP樹脂は、非再生LCP樹脂と再生LCP樹脂との組み合わせを含む。本出願の技術的効果に悪影響を及ぼさない限り、非再生LCP樹脂と再生LCP樹脂は任意の割合で混合できる。一実施形態では、再生LCP樹脂の量はLCP樹脂の総重量に対して40重量パーセント(wt%)以下、例えば30wt%以下であるが、これらに限定されるものではない。一実施形態では、再生LCP樹脂の量はLCP樹脂の総重量に対して25wt%以下であるが、これに限定されるものではない。
【0017】
本開示によれば、LCP樹脂は、粒状微粉体又は細片の形態とすることが可能である。一実施形態では、LCP樹脂の粒状微粉体の粒度は10mm以下である。より好ましくは、LCP樹脂の粒状微粉体の粒度は0.005mm~10mmである。別の実施形態では、LCP樹脂細片の長辺の長さは20mm以下である。
1実施形態では、液晶ポリマー樹脂の熱重量減少率は熱重量分析装置を用いて分析し、Wは、60ミリリットル/分の流速の窒素雰囲気下、80℃の一定温度で1分間保った液晶ポリマー樹脂の重量を表す。
本開示は更にLCP樹脂から形成した成形物を提供する。成形物の引張強度は1300kgf/cm以上、引張弾性率は5000MPa以上、破断伸びは8.0%以下である。
本開示によれば、成形物はLCP樹脂を成形することにより得られる。例えば、成形加工は射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、又はテープキャスティングとすることが可能であるが、これらに限定されるものではない。本開示の一実施形態では、成形物は、LCP樹脂を射出成形することにより得られる。
本開示によれば、成形物は必要に応じて様々な形状に成形可能であり、例えば、成形物は細片形状又はフィルム形状であってよいが、これらに限定されるものではない。
【0018】
一実施形態では、成形物の引張強度は1310kgf/cm以上であってよい。好ましくは、成形物の引張強度は1320kgf/cm以上であってよい。別の実施形態では、成形物の引張弾性率は5100MPa以上であってよい。好ましくは、成形物の引張弾性率は5200MPa以上であってよい。より好ましくは、成形物の引張弾性率は5300MPa以上であってよい。更に別の実施形態では、成形物の破断伸びは7.5%以下であってよい。好ましくは、成形物の破断伸びは7.0%以下であってよい。より好ましくは、成形物の破断伸びは6.5%以下であってよい。
別の実施形態では、成形物の引張強度は1300kgf/cm~1500kgf/cm、引張弾性率は5000MPa~7000MPa、破断伸びは3.0%~8.0%である。
【0019】
一実施形態では、成形物は、再生前のLCP樹脂から形成した成形物と同様の機械特性を有する再生LCP樹脂から形成する。従って、本開示のLCP樹脂が再生LCP樹脂である場合、それは様々な用途での再利用に適しており、グリーンマニュファクチャリングプロセスの要件を満たしている。
【0020】
一実施形態では、成形物は再生LCP樹脂から形成する。再生LCP樹脂から形成した成形物の引張強度保持率は、非再生LCP樹脂から形成した成形物の90%を超え、引張弾性率保持率は80%を超える。好ましくは、再生LCP樹脂から形成した成形物の引張強度保持率は95%を超え、引張弾性率保持率は85%を超える。より好ましくは、再生LCP樹脂から形成した成形物の引張強度保持率は95%を超え、引張弾性率保持率は88%を超える。
【0021】
別の実施形態では、成形物は、複数回再生したLCP樹脂から形成してもよい。非再生LCP樹脂から形成した成形物に対し、複数回再生したLCP樹脂から形成した成形物の引張強度保持率は、90%を超え、引張弾性率保持率は80%を超える。好ましくは、複数回再生したLCP樹脂から形成した成形物の引張強度保持率は95%を超え、引張弾性率保持率は85%を超える。より好ましくは、複数回再生したLCP樹脂から形成した成形物の引張強度保持率は95%を超え、引張弾性率保持率は88%を超える。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、液晶ポリマー樹脂、及び液晶ポリマー樹脂から成る成形物の実施形態を説明するために、いくつかの調製例及び実施例を述べる。比較のために、いくつかの比較例を示す。当業者であれば、以下の実施例及び比較例から、本発明の利点及び効果を容易に実現することが可能である。本明細書で提案した記述は例示のみを目的とした好ましい例に過ぎず、本開示の範囲を限定する意図はないことは理解されたい。当業者であれば、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、通常の知識に従って本開示を実施又は応用するために様々な修正及び変形を行うことが可能である。
【0023】
<<一次LCP樹脂粒子>>
調製例1
6‐ヒドロキシ‐2‐ナフタレンカルボン酸(540g)、4‐ヒドロキシ安息香酸(1071g)、無水酢酸(1085g)、及び亜リン酸ナトリウム(1.3g)の混合液を3リットルのオートクレーブに投入し、常圧窒素雰囲気下、160℃で約2時間撹拌してアセチル化した。その後、1時間あたり30℃の加熱速度で320℃まで混合液を加熱した。この温度条件下で、760torrから3torr以下までゆっくり減圧し、温度を320℃から340℃まで上昇させた。その後、攪拌力及び圧力を上昇させ、ポリマー排出工程、素線延伸工程、及びペレット状にする素線切断工程を行い、調製例1の一次LCP樹脂材料を得た。この材料の融点は約280℃、粘度は300℃で約40Pa・sであった。
この一次LCP樹脂材料をスクリュー径27ミリメートル(mm)の二軸押出機(型式:ZSE27、メーカー:Leistritz社)に配置し、260℃~340℃の範囲の温度まで加熱して溶融させた。次いで、溶融した一次LCP樹脂材料を、直径2mmのダイに通して細片状に押し出し、空気中で冷却し、最後にペレタイザー(型式:B64、メーカー:Reduction Engineering Scheer社)でペレット化し、調製例1の一次LCP樹脂粒子を得た。
【0024】
調製例2
6‐ヒドロキシ‐2‐ナフタレンカルボン酸(400g)、4‐ヒドロキシ安息香酸(1175g)、無水酢酸(1085g)、及び亜リン酸ナトリウム(1.3g)の混合液を3リットルのオートクレーブに投入し、常圧窒素雰囲気下、160℃で約2時間撹拌してアセチル化した。その後、1時間あたり30℃の加熱速度で320℃まで混合液を加熱した。この温度条件下で、760torrから3torr以下までゆっくり減圧し、温度を320℃から340℃まで上昇させた。その後、攪拌力及び圧力を上昇させ、ポリマー排出工程、素線延伸工程、及びペレット状にする素線切断工程を行い、調製例2の一次LCP樹脂材料を得た。この材料の融点は約320℃、粘度は320℃で約40Pa・sであった。
この一次LCP樹脂材料をスクリュー径27ミリメートル(mm)の二軸押出機(型式:ZSE27、メーカー:Leistritz社)に配置し、260℃~340℃の範囲の温度まで加熱して溶融させた。次いで、溶融した一次LCP樹脂材料を、直径2mmのダイに通して細片状に押し出し、空気中で冷却し、最後にペレタイザー(型式:B64、メーカー:Reduction Engineering Scheer社)でペレット化し、調製例2の一次LCP樹脂粒子を得た。
【0025】
調製例3
テレフタル酸(266g)、イソフタル酸(150g)、4‐ヒドロキシ安息香酸(690g)、ジフェノール(466g)、及び無水酢酸(1123g)の混合液を3リットルのオートクレーブに投入し、常圧窒素雰囲気下、160℃で約2時間撹拌してアセチル化した。その後、1時間あたり30℃の加熱速度で340℃まで混合液を加熱した。この温度条件下で、760torrから3torr以下までゆっくり減圧し、温度を340℃から360℃まで上昇させた。その後、攪拌力及び圧力を上昇させ、ポリマー排出工程、素線延伸工程、及びペレット状にする素線切断工程を行い、調製例3の一次LCP樹脂材料を得た。この材料の融点は約310℃、粘度は340℃で約20Pa・sであった。
この一次LCP樹脂材料をスクリュー径27ミリメートル(mm)の二軸押出機(型式:ZSE27、メーカー:Leistritz社)に配置し、260℃~340℃の範囲の温度まで加熱して溶融させた。次いで、溶融した一次LCP樹脂材料を、直径2mmのダイに通して細片状に押し出し、空気中で冷却し、最後にペレタイザー(型式:B64、メーカー:Reduction Engineering Scheer社)でペレット化し、調製例3の一次LCP樹脂粒子を得た。
【0026】
<<再生LCP樹脂粒子>>
実施例1
調製例1の一次LCP樹脂粒子を原料として用い、140℃で一晩乾燥させた後(即ち、少なくとも4時間の乾燥)、射出成形機(型式:YC90、メーカー:Year‐Chance Machinery社)を用いて標本成形を行った。成形条件では、溶融温度は270℃~340℃であり、金型温度は80℃~120℃であり、射出背圧は5bar~15barである。金型標本の寸法は、米国材料試験協会(ASTM)D638に規定されているタイプIの寸法に合わせる。
標本を破砕機(型式:A750、メーカー:Pulian International Enterprise社)で粉砕し、粒度10mm未満の破砕物を得た。その後、この破砕物をオーブン(型式:QHMO‐7S、メーカー:C Sun Mfg社)に配置して熱処理を行い、再生LCP樹脂材料を得た。熱処理は140℃で3時間行った。
再生LCP樹脂材料を、スクリュー径27mmの二軸押出機(型式:ZSE27、メーカー:Leistritz社)に入れ、260℃~340℃の範囲の温度まで加熱した。溶融した再生LCP樹脂材料を、直径2mmのダイに通して細片状に押し出し、空気中で冷却し、次いでペレタイザー(型式:B64、メーカー:Reduction Engineering Scheer社)でペレット化し、実施例1の再生LCP樹脂粒子を得た。なお、実施例1の再生LCP樹脂粒子が、実質的に一度再生した再生LCP樹脂粒子であることは理解できる。
【0027】
実施例2~8
実施例2~8の再生LCP樹脂粒子は、実施例1とほぼ同じ製造プロセスで調製した。実施例2~8と実施例1との主な違いは、選択した原料(一次LCP樹脂粒子)、熱処理温度、及び熱処理時間にある。パラメータを以下の表1に示す。なお、実施例2~8の再生LCP樹脂粒子が、実質的に一度再生した再生LCP樹脂粒子であることは理解できる。
【0028】
実施例9
実施例9では、実施例2の再生LCP樹脂粒子を原料として使用して標本を作成し、再度、再生を行った。具体的なプロセスは以下の通りである。
実施例2の再生LCP樹脂粒子を原料として用い、140℃で一晩乾燥させた後(即ち、少なくとも4時間の乾燥)、射出成形機(型式:YC90、メーカー:Year‐Chance Machinery社)を用いて標本成形を行った。成形条件では、溶融温度は270℃~340℃であり、金型温度は80℃~120℃であり、射出背圧は5bar~15barである。金型標本の寸法は、ASTM D638に規定されているタイプIの寸法に合わせる。
標本を破砕機(型式:A750、メーカー:Pulian International Enterprise社)で粉砕し、粒度10mm未満の破砕物を得た。その後、この破砕物をオーブン(型式:QHMO‐7S、メーカー:C Sun Mfg社)に配置して熱処理を行い、再生LCP樹脂材料を得た。熱処理は140℃で6時間行った。
再生LCP樹脂材料を、スクリュー径27mmの二軸押出機(型式:ZSE27、メーカー:Leistritz社)に入れ、260℃~340℃の範囲の温度まで加熱した。溶融した再生LCP樹脂材料を、直径2mmのダイに通して細片状に押し出し、空気中で冷却し、次いでペレタイザー(型式:B64、メーカー:Reduction Engineering Scheer社)でペレット化し、実施例9の再生LCP樹脂粒子を得た。なお、実施例9の再生LCP樹脂粒子が、実質的に二度再生した再生LCP樹脂粒子であることは理解できる。
【0029】
実施例10
実施例10では、実施例9の再生LCP樹脂粒子を原料として使用して標本を作成し、再度、再生を行った。具体的なプロセスは以下の通りである。
実施例9の再生LCP樹脂粒子を原料として用い、140℃で一晩乾燥させた後(即ち、少なくとも4時間の乾燥)、射出成形機(型式:YC90、メーカー:Year‐Chance Machinery社)を用いて標本成形を行った。成形条件では、溶融温度は270℃~340℃であり、金型温度は80℃~120℃であり、射出背圧は5bar~15barである。金型標本の寸法は、ASTM D638に規定されているタイプIの寸法に合わせる。
標本を破砕機(型式:A750、メーカー:Pulian International Enterprise社)で粉砕し、粒度10mm未満の破砕物を得た。その後、この破砕物をオーブン(型式:QHMO‐7S、メーカー:C Sun Mfg社)に配置して熱処理を行い、再生LCP樹脂材料を得た。熱処理は140℃で6時間行った。
再生LCP樹脂材料を、スクリュー径27mmの二軸押出機(型式:ZSE27、メーカー:Leistritz社)に入れ、260℃~340℃の範囲の温度まで加熱した。溶融した再生LCP樹脂材料を、直径2mmのダイに通して細片状に押し出し、空気中で冷却し、次いでペレタイザー(型式:B64、メーカー:Reduction Engineering Scheer社)でペレット化し、実施例10の再生LCP樹脂粒子を得た。なお、実施例10の再生LCP樹脂粒子が、実質的に三度再生した再生LCP樹脂粒子であることは理解できる。
【0030】
実施例11
実施例11では、実施例10の再生LCP樹脂粒子を原料として使用して標本を作成し、再度、再生を行った。具体的なプロセスは以下の通りである。
実施例10の再生LCP樹脂粒子を原料として用い、140℃で一晩乾燥させた後(即ち、少なくとも4時間の乾燥)、射出成形機(型式:YC90、メーカー:Year‐Chance Machinery社)を用いて標本成形を行った。成形条件では、溶融温度は270℃~340℃であり、金型温度は80℃~120℃であり、射出背圧は5bar~15barである。金型標本の寸法は、ASTM D638に規定されているタイプIの寸法に合わせる。
標本を破砕機(型式:A750、メーカー:Pulian International Enterprise社)で粉砕し、粒度10mm未満の破砕物を得た。その後、この破砕物をオーブン(型式:QHMO‐7S、メーカー:C Sun Mfg社)に配置して熱処理を行い、再生LCP樹脂材料を得た。熱処理は140℃で6時間行った。
再生LCP樹脂材料を、スクリュー径27mmの二軸押出機(型式:ZSE27、メーカー:Leistritz社)に入れ、260℃~340℃の範囲の温度まで加熱した。溶融した再生LCP樹脂材料を、直径2mmのダイに通して細片状に押し出し、空気中で冷却し、次いでペレタイザー(型式:B64、メーカー:Reduction Engineering Scheer社)でペレット化し、実施例11の再生LCP樹脂粒子を得た。なお、実施例11の再生LCP樹脂粒子が、実質的に四度再生した再生LCP樹脂粒子であることは理解できる。
【0031】
実施例12
実施例12では、実施例11の再生LCP樹脂粒子を原料として使用して標本を作成し、再度、再生を行った。具体的なプロセスは以下の通りである。
実施例11の再生LCP樹脂粒子を原料として用い、140℃で一晩乾燥させた後(即ち、少なくとも4時間の乾燥)、射出成形機(型式:YC90、メーカー:Year‐Chance Machinery社)を用いて標本成形を行った。成形条件では、溶融温度は270℃~340℃であり、金型温度は80℃~120℃であり、射出背圧は5bar~15barである。金型標本の寸法は、ASTM D638に規定されているタイプIの寸法に合わせる。
標本を破砕機(型式:A750、メーカー:Pulian International Enterprise社)で粉砕し、粒度10mm未満の破砕物を得た。その後、この破砕物をオーブン(型式:QHMO‐7S、メーカー:C Sun Mfg社)に配置して熱処理を行い、再生LCP樹脂材料を得た。熱処理は140℃で6時間行った。
再生LCP樹脂材料を、スクリュー径27mmの二軸押出機(型式:ZSE27、メーカー:Leistritz社)に入れ、260℃~340℃の範囲の温度まで加熱した。溶融した再生LCP樹脂材料を、直径2mmのダイに通して細片状に押し出し、空気中で冷却し、次いでペレタイザー(型式:B64、メーカー:Reduction Engineering Scheer社)でペレット化し、実施例12の再生LCP樹脂粒子を得た。なお、実施例12の再生LCP樹脂粒子が、実質的に五度再生した再生LCP樹脂粒子であることは理解できる。
【0032】
比較例1~7
比較例1~7の再生LCP樹脂粒子は、実施例1~8とほぼ同じ製造プロセスで調製した。比較例1~7と実施例1~8との主な違いは、選択した原料(一次LCP樹脂粒子)、熱処理温度、及び熱処理時間にある。パラメータを以下の表1に示す。なお、比較例1~7の再生LCP樹脂粒子が、実質的に一度再生した再生LCP樹脂粒子であることは理解できる。
【0033】
<<非再生LCP樹脂粒子>>
実施例13及び14
実施例13及び14の非再生LCP樹脂粒子と実施例1~12の再生LCP樹脂粒子との違いは、実施例13及び14では、初めに標本状に成形せずに粒子を粉砕処理に供した点である。その代わりに、実施例13及び14は、前述の調製例における一次LCP樹脂材料(押出造粒されていない)を原料として使用し、直接、熱処理及び造粒工程を行い、非再生LCP樹脂粒子を得た。詳細な工程は以下の通りである。
【0034】
実施例13
調製例1の一次LCP樹脂材料を140℃で一晩乾燥させた後(即ち、少なくとも4時間の乾燥)、オーブン(型式:QHMO‐7S、メーカー:C Sun Mfg社)に配置して熱処理を行い、非再生LCP樹脂材料を得た。熱処理は160℃で3時間行った。
非再生LCP樹脂材料を、スクリュー径27mmの二軸押出機(型式:ZSE27、メーカー:Leistritz社)に入れ、260℃~340℃の範囲の温度まで加熱した。溶融した非再生LCP樹脂材料を、直径2mmのダイに通して細片状に押し出し、空気中で冷却し、次いでペレタイザー(型式:B64、メーカー:Reduction Engineering Scheer社)でペレット化し、実施例13の非再生LCP樹脂粒子を得た。
【0035】
実施例14
調製例2の一次LCP樹脂材料を140℃で一晩乾燥させた後(即ち、少なくとも4時間の乾燥)、オーブン(型式:QHMO‐7S、メーカー:C Sun Mfg社)に配置して熱処理を行い、非再生LCP樹脂材料を得た。熱処理は180℃で3時間行った。
非再生LCP樹脂材料を、スクリュー径27mmの二軸押出機(型式:ZSE27、メーカー:Leistritz社)に入れ、260℃~340℃の範囲の温度まで加熱した。溶融した非再生LCP樹脂材料を、直径2mmのダイに通して細片状に押し出し、空気中で冷却し、次いでペレタイザー(型式:B64、メーカー:Reduction Engineering Scheer社)でペレット化し、実施例14の非再生LCP樹脂粒子を得た。
【0036】
表1:実施例1~12(E1~E12)及び比較例1~7(C1~C7)の再生LCP樹脂粒子、並びに実施例13及び14(E13及びE14)の非再生LCP樹脂粒子の原料番号、熱処理温度、及び熱処理時間(N/A:熱処理なし)
【0037】
【表1】
【0038】
試験例1:熱重量減少率及び熱分解温度
試験例1では、実施例1~12及び比較例1~7の再生LCP樹脂粒子、並びに実施例13及び14の非再生LCP樹脂粒子を試験試料として使用した。試験には、熱重量分析装置(型式:Q500、メーカー:TA instruments社)を使用した。
試験試料(Wグラム)を採取し、熱重量分析装置内に配置した後、80℃まで加熱し、窒素雰囲気下(窒素流速:60ml/分)で1分間一定に保持した。その後、試験試料の重量を測定し、Wグラムとした。その後、試験試料をその融点まで加熱し、1分間一定に保持した後、試験試料の重量を測定し、Wグラムとして記録した。各試験試料の熱重量減少率は、式[(W-W)/W]×100%を用いて計算した。
次に、試験試料を連続的に加熱して熱重量曲線を得、各試験試料の熱分解温度を求めた。熱分解温度は、熱重量減少率が1.0%に達する温度に相当する。結果を表2~4に示す。
【0039】
試験例2:機械特性
実施例1~12及び比較例1~7の再生LCP樹脂粒子、並びに実施例13及び14の非再生LCP樹脂粒子を、140℃で一晩乾燥させた。その後、射出成形機(型式:YC90、メーカー:Year‐Chance Machinery社)を用いて標本成形を行い、実施例1A~14A及び比較例1A~7Aの標本を得た。成形条件では、溶融温度は270℃~340℃であり、金型温度は80℃~120℃であり、射出背圧は5bar~15barであった。金型標本の寸法は、ASTM D638に規定されているタイプIの寸法に合わせる。
試験試料として実施例1A~14A及び比較例1A~7Aの標本を分析対象とした。試験試料は、ASTM D638に準拠して万能材料試験機(型式:3367、メーカー:Instron社)を用いて分析し、各試料の引張強度、引張弾性率、及び破断伸びを求めた。試験温度は25℃、試験速度は10ミリメートル/分であった。結果を表2に示す。
【0040】
表2:実施例1~14(E1~E14)及び比較例1~7(C1~C7)の熱重量減少率及び熱分解温度;実施例1A~14A(E1A~E14A)及び比較例1A~7A(C1A~C7A)の引張強度、引張弾性率、及び破断伸び
【0041】
【表2】
【0042】
表2に示すように、実施例1~12の再生LCP樹脂粒子、又は実施例13及び14の非再生LCP樹脂粒子のいずれを採用しても、実施例1~14の熱重量減少率は0.038%を超え、0.108%未満であった。更に、実施例1~14の構造単位が全て、ナフタレン環構造を有することは、選択した原料から分かっている。対照的に、比較例1~6はナフタレン環構造を有してはいるが、熱重量減少率は0.038%未満、又は0.108%以上であった。比較例7の再生LCP樹脂粒子は特定の熱重量減少率を有してはいるが、その構造単位はナフタレン環を有していなかった。
従って、比較例1~7と比較して、調製した実施例1~14の標本では、引張強度が高く(例えば、1300kgf/cm以上)、引張弾性率が高く(例えば、5000MPa以上)、破断伸びが低かった(例えば、8.0%以下)。本開示のLCPは剛性特性に優れ、成形物の引張強度、引張弾性率、及び破断伸びは、業界の希望を満たしていることが分かる。
【0043】
また、再生LCP樹脂粒子から形成した標本の引張強度保持率及び引張弾性率保持率を評価するために、実施例13及び14の非再生LCP樹脂粒子から形成した標本の引張強度及び引張弾性率を、実施例1~12及び比較例1~6の再生LCP樹脂粒子から形成した標本の引張強度保持率及び引張弾性率保持率のための比較指標として使用した。更に、実施例1~4及び9~13、並びに比較例1、3、5、及び6は全て調製例1を原料として使用しているため、実施例1~4及び9~12、並びに比較例1、3、5、及び6の引張強度保持率は、以下の式により計算した:[(再生LCP樹脂粒子から形成した標本の引張強度)/(実施例13の非再生LCP樹脂粒子から形成した標本の引張強度)]×100%。同様に、引張弾性率保持率を上記式に従って求めた。例えば、実施例13Aの標本を、実施例1Aの標本の比較指標として使用し、上記式に従って引張強度保持率及び引張弾性率保持率を求めた。結果を表3及び表4に示す。更に、実施例5~8及び14、並びに比較例2及び4の引張強度保持率は全て調製例2を原料として使用しているため、実施例5~8、並びに比較例2及び4の引張強度保持率は、以下の式により計算した:[(再生LCP樹脂粒子から形成した標本の引張強度)/(実施例14の非再生LCP樹脂粒子から形成した標本の引張強度)]×100%。同様に、引張弾性率保持率を上記式に従って求めた。例えば、実施例14Aの標本を、実施例5Aの標本の比較指標として使用し、上記式に従って引張強度保持率及び引張弾性率保持率を求めた。結果を表3及び表4に示す。
【0044】
表3:実施例1~8(E1~E8)及び比較例1~6(C1~C6)の熱重量減少率;実施例1A~8A(E1A~E8A)及び比較例1A~6A(C1A~C6A)の引張強度保持率及び引張弾性率保持率
【0045】
【表3】
【0046】
上記表3に示すように、比較例1~6と比較して、実施例1~8の再生LCP樹脂粒子から形成した標本は、引張強度保持率及び引張弾性率保持率が比較的高く、応用製品への再製造に寄与するものであった。
これに対し、比較例1~6の再生LCP樹脂粒子から形成した標本は、非再生LCP樹脂粒子から形成した標本と同様の引張強度及び引張弾性率を維持できず、従って高い引張強度保持率と引張弾性率保持率とを同時に維持することはできなかった。以上の結果から、これら再生LCP樹脂粒子の機械特性は標本へと形成した後に弱まり、業界が希望する基準を満たすことができず、LCP樹脂粒子を有効に再生及び再利用できないことが分かった。
更に、複数回再生したLCP樹脂粒子の引張強度保持率及び引張弾性率保持率を、原料としての再生LCP樹脂粒子(即ち、実施例2)の再生プロセスを繰り返すことにより求め、以下の表4に示す。
【0047】
表4:実施例2及び9~12(E2、E9~E12)の熱重量減少率、並びに実施例2A及び9A~12A(E2A、E9A~E12A)の再生回数、引張強度保持率、及び引張弾性率保持率
【0048】
【表4】
【0049】
上記表4に示すように、実施例2及び9~12の再生LCP樹脂粒子は、順次1~5回再生したLCP樹脂粒子であり、引張強度保持率及び引張弾性率保持率は共に95%以上である。構造単位及び熱重量減少率を制御することにより、本開示のLCP樹脂は、再生プロセスを繰り返した後でも良好な機械特性を有し、複数回の再生に適していることが分かる。
【0050】
試験例3:溶融強度
試験例3では、実施例2及び6、並びに比較例7の再生LCP樹脂粒子を試験試料として使用した。高圧細管レオメーター(型式:RHEOGRAPH20、メーカー:GOTTFERT社)及び溶融張力測定装置(型式:RHEOTENS71.97、メーカー:GOTTFERT社)を使用して試験を実施した。
試験試料を融点より10℃高い温度まで加熱し、溶融物にした。溶融物が細管を通って流出すると、溶融物が固化する前に、速度調整可能な一式のローラーに導入した(ローラーの初速:30mm/秒)。一式のローラーは、一式のマイクロ化学天秤に接続していた。溶融物を破断したときの延伸に要する力を、上記ローラー速度の変化から測定した。実施例2で得られた溶融強度は3.2cNであり、実施例6の溶融強度は3.0cNであり、比較例7の溶融強度は0.33cNであった。
【0051】
実施例2及び6の再生LCP樹脂の溶融強度は、比較例7の再生LCP樹脂の溶融強度に比べて著しく高いことが分かり得る。更に、実施例2及び6、並びに比較例7の再生LCP樹脂粒子は、対応する調製例1~3の一次LCP樹脂粒子から形成した。ここでは、実施例2及び6の再生LCP樹脂粒子は全てナフタレン環構造を有していたが、比較例7の再生LCP樹脂粒子はナフタレン環構造を有していなかった。従って、実施例2及び6はナフタレン環構造を有し、熱重量減少率が特定の範囲にあるため、再生後の溶融強度が高い。このことは後続の加工に有利であり、製膜プロセス中にフィルムが破断しにくい。
【0052】
総括すると、本開示のLCP樹脂はナフタレン環構造を有し、熱重量減少率が特定の範囲にあるため、LCP樹脂から形成した成形物に高引張強度、高引張弾性率、及び低破断伸びという特徴を持たせることを可能にする。一実施形態では、本開示のLCP樹脂は再生LCP樹脂であり、その再生LCP樹脂から得た成形物は、再生前のLCP樹脂から形成した成形物と同様の機械特性を保持する。このことから、本成形物は製品へ再製造できる可能性があり、グリーンマニュファクチャリングプロセスに応えられることが分かる。
【要約】      (修正有)
【課題】機械特性が良好な液晶ポリマー樹脂、及び液晶ポリマー樹脂から成る成形物を提供する。
【解決手段】式(I)で表される構造単位から成り、熱重量減少率は0.038%を超え、0.108%未満である液晶ポリマー樹脂であって、熱重量減少率は、[(W-W)/W]×100%の式で得られ、式中、Wは、80℃の一定温度で1分間保った液晶ポリマー樹脂の重量を表し、Wは、融点の一定温度で1分間保った液晶ポリマー樹脂の重量を表す。この液晶ポリマー樹脂から形成した成形物の引張強度は1300kgf/cm以上であり、引張弾性率は5000MPa以上であり、破断伸びは8.0%以下である。更に、再生液晶ポリマー樹脂から形成した成形物は、再生前の液晶ポリマー樹脂から形成した成形物と同様の機械特性を有する。

【選択図】なし