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特許7542716サーメット製の計時器または宝飾品用の構成要素
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】サーメット製の計時器または宝飾品用の構成要素
(51)【国際特許分類】
   C22C 29/02 20060101AFI20240823BHJP
   C22C 29/06 20060101ALI20240823BHJP
   C22C 29/08 20060101ALI20240823BHJP
   C22C 1/051 20230101ALN20240823BHJP
【FI】
C22C29/02 Z
C22C29/06 Z
C22C29/08
C22C1/051 G
C22C1/051 H
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023502742
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 EP2021066498
(87)【国際公開番号】W WO2022017697
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】20187228.0
(32)【優先日】2020-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ベルトヴィル,ベルナール
(72)【発明者】
【氏名】ファレ,ヤン
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-026136(JP,A)
【文献】特開昭54-116314(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第00828877(GB,A)
【文献】英国特許出願公告第01309634(GB,A)
【文献】特開2019-085646(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0136352(US,A1)
【文献】米国特許第02180826(US,A)
【文献】中国特許出願公開第111197139(CN,A)
【文献】国際公開第2004/005561(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 29/02
C22C 29/06
C22C 29/08
C22C 1/051
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化物相と、少なくとも白金を含むように形成された結合剤相とを含有するサーメット材料で作られた計時器または宝飾品用の、ニッケルおよびコバルトを含まない非強磁性構成要素であって、金属結合剤相は、3から25%の重量パーセンテージで存在し、前記炭化物相は、75から97%の重量パーセンテージで存在し、700HV30の最小硬度を有することを特徴とする、非強磁性構成要素。
【請求項2】
前記金属結合剤相は、3から22%の重量パーセンテージで存在し、前記炭化物相は、78から97%の重量パーセンテージで存在することを特徴とする、請求項1に記載の構成要素。
【請求項3】
前記金属結合剤相は、6から22%の重量パーセンテージで存在し、前記炭化物相は、78から94%の重量パーセンテージで存在することを特徴とする、請求項1に記載の構成要素。
【請求項4】
前記炭化物相は、炭化チタン、炭化モリブデン、炭化ケイ素、炭化タングステン、および炭化ニオブから選択される1つまたは複数の炭化物を含有することを特徴とする、請求項1に記載の構成要素。
【請求項5】
前記炭化物相は、最多含有成分として、炭化チタンまたは炭化モリブデンまたは炭化タングステンを含有することを特徴とする、請求項1に記載の構成要素。
【請求項6】
前記炭化物相は、最多含有成分としての炭化チタンと、炭化モリブデンとを含有することを特徴とする、請求項4に記載の構成要素。
【請求項7】
前記炭化物相は、最多含有成分としての炭化チタンと、炭化ケイ素とを含有することを特徴とする、請求項4に記載の構成要素。
【請求項8】
前記炭化物相は、最多含有成分として炭化モリブデンを含有することを特徴とする、請求項4に記載の構成要素。
【請求項9】
700から1900の硬度HV30を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の構成要素。
【請求項10】
前記炭化物相が、最多含有成分として炭化モリブデンを含有し、700から1300の硬度HV30を有することを特徴とする、請求項5に記載の構成要素。
【請求項11】
前記炭化物相が、最多含有成分としての炭化チタンと、炭化ケイ素とを含有し、1000から1900の硬度HV30を有することを特徴とする、請求項5に記載の構成要素。
【請求項12】
前記炭化物相が、最多含有成分として炭化タングステンを含有し、900から1600の硬度HV30を有することを特徴とする、請求項5に記載の構成要素。
【請求項13】
前記炭化物相が、最多含有成分としての炭化モリブデンを含み、結合剤相金が銅を含み、4MPa.m1/2以上の靭性Kiを有することを特徴とする、請求項1から8、10から12のいずれか一項に記載の構成要素。
【請求項14】
前記炭化物相が、最多含有成分としての炭化モリブデンを含み、結合剤相金がパラジウムを含み、8MPa.m1/2以上の靭性Kiを有することを特徴とする、請求項1から8、10から12のいずれか一項に記載の構成要素。
【請求項15】
腕時計製造における外装部品構成要素またはムーブメントからなることを特徴とする、請求項1から8、10から12のいずれか一項に記載の構成要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、炭化物を含むセラミック相と、貴金属を含む金属結合剤とを有するサーメットタイプの材料で作られた、計時器または宝飾品用の構成要素に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの外装部品構成要素は、金または金合金で作られる。金は、延性が高く、展性が高いという利点があり、成形が容易である。さらに、非常に高貴で特徴的な金属光沢を有する。さらに、異なる金合金は、白から赤までの様々な色合いを呈することができる。しかしながら、金およびその合金は、硬度が低く、高々300HVであるという欠点を有する。これに関し、金の硬度を高めるために、様々なセラミック複合材が開発されてきた。ほとんどの場合、製造プロセスは、高硬度のマトリックスに金を浸透させ、非常に高い圧力を加えることからなる。このプロセスの欠点は、アクセス可能な形状が、単純な幾何形状に制限されたままであり、追加の機械加工方法を使用する必要がある複雑な形状を得ることである。文献国際公開第2004/005561号に開示されているさらなるプロセスは、焼結によって得られるサーメット内の金属結合剤として、金を使用することからなる。金金属結合剤は、重量で50%をはるかに超える割合で存在する。この場合、そのような貴サーメットの硬度は低く、金の重量パーセンテージに反比例する。一般的に、サーメットは、結合剤として非貴金属を使用する。これは、文献米国特許第4,589,917号明細書に開示されているニッケルまたはコバルトなどのアレルゲン元素、または低い耐食性および高い強磁性をもたらす鉄ベースの合金を含むことが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第WO2004/005561号
【文献】米国特許第4,589,917号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、以下の基準、すなわち、
- 高い金属光沢を有すること、
- 700HV30の最小硬度を有すること、
- ニッケルまたはコバルトなどのアレルゲン元素の使用を避けること、
- 強磁性を有さず、塩腐食に耐性があること、
を満たすように最適化された組成を有するサーメットを提案することによって、上記の欠点を克服することである。
【0005】
この目的のために、本発明は、炭化物相と、銀、金、白金、パラジウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、およびそれらの合金のうちの1つから選択される金属結合剤相とを含む、サーメット材料で作られた計時器または宝飾品用の構成要素を提案する。金属結合剤相は、3から25%の重量パーセンテージで存在し、炭化物相は、75から97%の重量パーセンテージで存在する。
【0006】
このように開発されたサーメット材料は、特に金属結合剤がパラジウムである場合、研磨後にステンレス鋼で観察されるものに匹敵する金属光沢を有する。これら貴サーメットは、700から1900のHV30の硬度を有し、外装部品の生成のための十分な靭性を有する。さらに、「ニアネットシェイプ」部品を得るために、プレスや射出などの従来の粉末冶金プロセスによって成形することができる。
【0007】
貴結合剤の含有量が少ないため、使用される炭化物の反射特性および比色特性を保持するサーメットを得ることが可能となり、これは、外装部品および装飾構成要素にとって特に重要である。
【0008】
本発明はまた、以下の一連のステップ、すなわち、
a)炭化物粉末と、銀、金、白金、パラジウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、およびそれらの合金のうちの1つから選択される金属結合剤の粉末とを含む、任意選択で添加剤を含む、混合物を生成するステップと、
b)前記混合物に、構成要素の形状を与えることによって、ブランクを形成するステップと、
c)ブランクを1000から1900℃の温度で、30分から10時間の期間、焼結するステップとを含む、構成要素を製造するためのプロセスにも関し、このプロセスは、炭化物粉末が、75から97%の重量パーセンテージで、金属結合剤粉末が3から25%の重量パーセンテージで、添加物が、0から4%の重量パーセンテージで存在することを特徴とする。
【0009】
白金やパラジウムなどの貴結合剤を使用すると、これら炭化物ベースのサーメットを、高温および加圧下での焼結を使用せずに、前記炭化物単独の場合よりも、はるかに低い温度から、つまり、パラジウムを用いて1250℃から、白金を用いて1400℃から、高密度化することが可能になる。
【0010】
混合物の粉末は、好ましくは20μm未満、より好ましくは10μm未満、さらにより好ましくは5μm未満のd50を有する。粒子サイズが小さいと、混合物の均一性が改善され、各炭化物粒子上の金属結合剤の優れた被覆が保証される。さらに、炭化物のサイズを低減することにより、焼結後の硬度や靭性などの機械的特性を高めながら、最終的な密度を高められる。さらに、粒子のサイズを低減することにより、高い金属光沢、すなわち、高い輝度値Lを得ることが可能になる。
【0011】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照して非限定的な例として与えられる、好適な実施形態の以下の説明において明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明によるサーメットタイプの材料で作られたミドルを備える計時器を表す図である。
図2図2は、本発明による組成(80%MoC-15%Auおよび5%Cu)のサーメットタイプの材料の電子顕微鏡画像である。
図3図3は、本発明によるさらなる組成(80%TiC-2%SiC-18%Pt)のサーメットタイプの材料の電子顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、大部分をなす炭化物相と、銀、金、白金、パラジウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、またはこれら貴元素のうちのいずれかの合金のような貴元素を含む、少量の金属結合剤相とを含む、サーメットタイプの材料からなる、特に、計時器または宝飾品用の構成要素に関する。好ましくは、金属結合剤は、銀、金、白金、パラジウム、またはこれら貴元素のうちのいずれかの合金から選択される。本発明による構成要素は、腕時計、宝飾品、ブレスレットなどの成分要素のような、装飾品を形成することができる。腕時計製造の分野では、この構成要素は、ミドル、バック、ベゼル、プッシュピース、ブレスレットリンク、文字盤、針、文字盤インデクスなどの外装部品となる。また、振動マス、プレートなどのムーブメントの構成要素からなることもできる。例として、本発明によるサーメットタイプの材料で作られたミドル1が図1に示される。
【0014】
サーメット構成要素は、炭化物粉末と金属粉末との混合物を焼結することによって生成される。この製造プロセスは、以下のa)、b)、およびc)の各ステップを含む。
【0015】
a)任意選択で、湿潤環境において、異なる粉末との混合物を生成する。混合物の粉末は、好ましくは20μm未満、より好ましくは10μm未満、さらにより好ましくは5μm未満のd50を有する。所望のd50を得るために、任意選択で、混合物をミルで生成することができる。粒子サイズの分布は、ISO 13320:2020規格に従って、レーザ回折によって測定される。
【0016】
この混合物は、重量で、75から97%、有利には78から97%、より有利には78から94%の炭化物粉末と、3から25%、有利には3から22%、より有利には6から22%の金属粉末とを含有する。混合物は、任意選択で、添加剤のすべてに対して、4%以下の重量パーセンテージで、1つまたは複数の添加剤を含有することができる。1つまたは複数の添加剤が存在する場合、添加剤は、好ましくは、添加剤のすべてに対して、重量で1から3%のパーセンテージで存在する。より具体的には、1つまたは複数の添加剤の存在下で、混合物は、炭化物粉末を、75から96%の重量パーセンテージで、金属結合剤粉末を、3から24%の重量パーセンテージで、添加剤を、添加剤のすべてに対して、1から3%の重量パーセンテージで含む。これら添加剤は、焼結中の緻密化を改善することを目的としている。たとえば、これら添加剤は、SiTiまたはSiZrなどの金属ダイシリサイドからなり得る。
【0017】
好ましくは、炭化物粉末は、TiC、SiC、MoC、WC、およびNbCから選択される1つまたは複数の炭化物を含む。より具体的には、炭化物粉末は、主成分として炭化チタン(TiC)、炭化タングステン(WC)、または炭化モリブデン(MoC)を含有する。主成分としてとは、粉末にいくつかのタイプの炭化物が存在する場合、炭化チタン(TiC)、炭化タングステン(WC)、または炭化モリブデン(MoC)が、他の炭化物よりも高いパーセンテージで存在することを意味する。したがって、MoCが主成分として存在するMoCおよびTiCを含有することができる。また、TiCが主成分として存在するMoCおよびTiCを含有することができる。また、TiCが主成分として存在するTiCおよびSiCを含有することができる。あるいは、不純物は別として、TiC、WC、またはMoCだけで構成することもできる。金属粉末は、主成分としてパラジウム、白金、銀、金、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、またはこれら元素のいずれかの合金を含有する。不純物を除いて、白金、パラジウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、または銀だけで構成できる。金は、好ましくは、Cu、Ag、Pd、Inから選択される少なくとも1つの元素との合金形態で存在する。より具体的には、金合金は、銀および銅との金合金(3Nイエローゴールド、5Nレッドゴールド)、またはパラジウムとの金合金(ホワイトゴールド)を含有する。金属粉末はまた、粉末混合物の総重量に対して0.1から5%の重量パーセンテージで炭素を含有することができる。実際、焼結中に、MoCの一部が、Moに変換され、硬度が低下する可能性がある。炭素を添加すると、Moの形成を制限できるため、硬度レベルを維持できる。あるいは、炭化物粉末に炭素を添加することができる。したがって、炭化物粉末は、粉末混合物の総重量に対して0.1から5%の重量パーセンテージで炭素を含有する。
【0018】
例として、粉末混合物は、以下の重量分布のうちの1つを含むことができる。
【0019】
- 80から95%のTiCと、5から20%のPdまたはPt、
- 75から95%のTiCと、5から25%のAu合金、
- 50から70%のTiCと、5から30%のMoCと、5から30%のAu合金であって、好ましくは、55から65%のTiCと、10から25%のMoCと、5から25%のAu合金、
- 70から85%のTiCと、5から10%のMoCと、5から20%のPdまたはPt、
- 75から85%のTiCと、2から10%のSiCと、5から23%のPdまたはPt、
- 80から97%のMoCと、3から20%のPd、Pt、Ag、またはAu合金、
- 75から95%のMoCと、5から25%のAu合金、
- 75から95%のWCと、5から25%のPdまたはPt、
- 80から95%のWCと、5から20%のAu合金。
任意選択で、上記の混合物および有機結合剤系(パラフィン、ポリエチレンなど)を含む第2の混合物を作ることができる。
【0020】
b)たとえば、射出によって、または金型へのプレスによって、混合物に所望の成分の形状を与えることによってブランクを形成する。
【0021】
c)ブランクを不活性雰囲気中または真空中、1000から1900℃の温度で30分から10時間、好ましくは30分から5時間の期間、焼結する。混合物が有機結合剤系を含有する場合、このステップの前に、60から800℃の温度範囲で、1つまたは複数の脱脂ステップを行うことができる。
【0022】
このようにして得られたブランクは、冷却および研磨される。また、研磨の前に機械加工を行い、所望の構成要素を得ることもできる。
【0023】
この製造プロセスから得られる、成形品とも呼ばれる構成要素は、初期の粉末の重量パーセンテージに近い重量パーセンテージで、炭化物相および金属相を含有する。しかしながら、たとえばMoCからMoへの、たとえば汚染または変質のような、後の焼結から、ベース粉末と材料との間の組成およびパーセンテージのわずかな変動を排除することは可能ではない。そのため、プロセスからの最終製品では、様々な相の質量パーセンテージを次のように理解する必要がある。炭化物相は、金属結合剤とも呼ばれる金属相と区別される。炭化物相は、炭化物のみならず、上記の例のMoなどの基本的な炭化物粉末誘導体に由来する任意の元素を含有する。同様に、金属相については、初期の金属粉末の化合物のみならず、金属ベース粉末の分解または反応からの、任意選択の化合物を含有する。粉末混合物中に添加剤が存在する場合、添加剤は、炭化物相および/または金属相で検出することができる。
【0024】
構成要素は、(CIE No.15,ISO 7724/1,DIN 5033 Teil 7,ASTM E-1164規格に準拠する)CIELAB色空間を有し、材料がどのように光を反射するかを表す輝度成分Lは、60から90、好ましくは65から85、より好ましくは70から85である。
【0025】
セラミック材料は、成分のタイプ及びパーセンテージに応じて、700から1900の硬度HV30を有する。より具体的には、炭化物相は、主成分として炭化モリブデンを含有する場合、700から1300の硬度HV30を有する。炭化物相が、主成分として炭化タングステンを含有する場合、硬度HV30は、900から1600であり、炭化物相が、主成分として炭化チタンを含有する場合、硬度HV30は、700から1900である。
【0026】
セラミック材料は、少なくとも2MPa.m1/2の、20MPa.m1/2を超える可能性もある靭性Kcを有する。靭性は、以下の式に従って、ビッカース硬度インプリントの対角線の4つの端部における亀裂長さ測定に基づいて決定される。
【0027】
【0028】
ここで、Pは、印加される荷重(N)、aは、半対角線(m)、lは、測定された亀裂長さ(m)である。
【0029】
以下の表1から表3は、本発明によるサーメットの様々な例を含む。
【0030】
溶媒の存在下で、ミル内で27の粉末混合物が調製された。混合物は、結合剤なしで生成された。それらは、一軸加圧によってチップ状に圧縮され、真空中、または粉末組成に依存する温度で5から100ミリバールのアルゴン分圧下で焼結された。焼結後、サンプルは、機械的に平面研磨された。
【0031】
表1は、TiC、MoCまたはTiCおよびMoCを含む炭化物相と、Pd、AuまたはAu合金を含む結合剤相とを有する試験番号1から番号9を含む。試験7では、Moの形成を制限するために、0.5%のCが追加される。
【0032】
表2は、TiC、TiCおよびSiC、またはTiおよびMoCを含む炭化物相と、PtまたはPdを含む結合剤相とを有する試験番号11から番号18を含む。試験16では、粉末混合物は、高密度化を改善する添加剤を含む。この添加物は、2%の重量パーセントで存在するSiTiである。
【0033】
表3は、MoCまたはWCを含む炭化物相と、Pd、Pt、Ag、Ag合金またはAu合金を含む結合剤相とを有する試験番号19から番号27を含む。
【0034】
サンプルの表面でHV30硬度測定が行われ、上記の硬度測定に基づいて靭性が決定された。
【0035】
Lab比色値は、以下の条件、すなわち、SCI(鏡面成分を含む)測定およびSCE(鏡面成分を除く)測定、傾斜8°、直径8mmのMAV測定ゾーンにおいて、KONICA MINOLTA CM-5分光光度計を使用して、研磨されたサンプルで測定された。
【0036】
これら試験から、主成分としてTiCを含有する炭化物相を有するサーメットは、主成分としてMoCを含有する炭化物相を有するサーメットよりも全体的に高い硬度を有することが明らかである。したがって、硬度は、主成分としてMoCを含むサーメットの場合、750から1200のHV30範囲内の値と比較して、TiCを含むサーメットの場合、750から1800のHV30である。TiCおよびAu合金を含有するサンプル4は、TiCおよびAu合金を含有するサンプル3の硬度(1209 HV30)と比較して、焼結時間が短いため、低い硬度(761 HV30)を有する。さらに、サンプル4は、サンプル3と比較して低い靭性を有する。
【0037】
MoCおよびPdを含むサーメットは、8%以上のPd含有量に対して、10MPa.m1/2を超える非常に高い靭性値を有する(試験6,20,21)。特定の組成では、HV30硬度測定中に亀裂の伝播がなく、したがって、靭性値を測定できなかった。
【0038】
主成分としてMoCを含むサーメットは、主成分としてTiCを含むサーメットの場合の70~75範囲内の値とは逆に、使用される貴結合剤(Pt、Pd、Ag、Au-Cu)のタイプに関わらず、80のオーダの値の、高い輝度指数Lを有する。
【0039】
質量で80%の割合の炭化タングステンと、貴金属結合剤として20%のパラジウムのみで構成されるサーメットは、高い硬度(1472 HV30)および優れた靭性(6.3MPa.m1/2)を有しており、また、密度が高いため、振動質量などの機能部品を生成するための優れた候補となる。
【0040】
微細構造に関して、図2は、重量で80%のMoC、15%のAu、および5%のCuを含む粉末混合物からの焼結サンプルの電子顕微鏡画像を表す。炭化物相は、MoCで構成される暗い灰色ゾーンと、Moが豊富な中程度の灰色ゾーンとから形成される。焼結中に、MoCの一部がMoに変換され、硬度が低下する。金属相AuCuは、白い相である。
【0041】
図3は、重量で80%のTiC、2%のSiC、および18%のPtを含む粉末混合物からの焼結サンプルの電子顕微鏡画像を表す。黒色ゾーンおよび灰色ゾーンから形成された炭化物相があり、TiCが豊富な黒色ゾーンと、TiCおよびPtを含む灰色ゾーンとを有する。金属相は、白である。
【0042】
上記で説明したように、本発明は、サーメット材料で作られた構成要素に関する。この構成要素は、たとえば、計時器の外装部品またはムーブメントの要素など、特に腕時計製造や宝飾品の分野における用途用に考案された。明らかに、本発明による構成要素は、腕時計製造に限定されない。したがって、非限定的な例として、この構成要素を食器、カトラリー、皮革製品、または宝飾品の分野に適用できることも考えられる。
【0043】
【0044】
【0045】
図1
図2
図3