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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】ガスタービンの燃料制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02C 9/26 20060101AFI20240823BHJP
   F01D 15/10 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
F02C9/26
F01D15/10 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023509201
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2022013191
(87)【国際公開番号】W WO2022202818
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2021051222
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田邉 浩史
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-522052(JP,A)
【文献】特開2004-068685(JP,A)
【文献】特開2014-148933(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0150633(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 9/26
F01D 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンの燃料制御装置であって、
前記ガスタービンは、圧縮空気を生成する圧縮機、前記圧縮空気で燃料を燃焼させる燃焼器、及び、前記燃焼器における前記燃料の燃焼により生じた燃焼ガスで駆動されるタービンを備え、前記タービンによってモーター発電機が駆動される運転モードである通常運転モードと、前記モーター発電機が前記ガスタービンに回転動力を提供する運転モードである逆電力運転モードとを切り替え可能であり、
前記燃料制御装置は、
前記燃焼器へ供給される前記燃料の圧力を第1下限値及び第1上限値の流量範囲内で調整可能な第1弁と、
前記燃焼器へ供給される前記燃料の圧力を、前記第1下限値よりも大きい第2下限値及び前記第1上限値よりも大きい第2上限値の流量範囲内で調整可能な第2弁と
を備え、
前記通常運転モードから前記逆電力運転モードに切り替える場合、前記第1弁の開度を前記通常運転モードの開度より大きくするとともに前記第2弁の開度を前記通常運転モードの開度より小さくした後であって、前記燃料の流量を前記逆電力運転モード用の流量まで低下させる前に、前記燃料の圧力を調整するための調整対象を前記第2弁から前記第1弁に変更する、ガスタービンの燃料制御装置。
【請求項2】
前記通常運転モードから前記逆電力運転モードに切り替える場合、前記第1弁の開度を前記通常運転モードの開度より大きくするとともに前記第2弁の開度を前記通常運転モードの開度より小さくした後であって、前記燃料の流量を無負荷定速運転用の流量まで低下させる前に、前記燃料の圧力を調整するための調整対象を前記第2弁から前記第1弁に変更する、請求項1に記載のガスタービンの燃料制御装置。
【請求項3】
前記燃料の圧力を調整するための調整対象を前記第2弁から前記第1弁に変更した後は、前記第2弁の開度を一定値に維持する、請求項1又は2に記載のガスタービンの燃料制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービンの燃料制御装置に関する。
本願は、2021年3月25日に日本国特許庁に出願された特願2021-051222号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、ガスタービンによって発電機を駆動して発電を行うことが記載されている。
【0003】
ガスタービンへの燃料供給量は、着火時に必要な燃料供給量から最大出力時に必要な燃料供給量まで幅広く制御することを求められるため、一般的に、燃料ノズルに供給される燃料の圧力を調整するために、小流量用の圧力調整弁と大流量用の圧力調整弁とを使い分けることが行われている。このような構成の場合、燃料供給の制御の安定性を考慮して、着火後、昇速中の遷移領域で小流量用の圧力調整弁から大流量用の圧力調整弁へ切り替えを行い、定速運転領域となる無負荷運転時には大流量用の圧力調整弁のみで燃料の圧力制御を行うことが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-47728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ガスタービンの外部からの給電によってガスタービンに回転動力を提供する逆電力運転モードでガスタービンを運転する場合、無負荷定速運転時よりも燃料供給量が小さくなるので、大流量用の圧力調整弁から小流量用の圧力調整弁への切り替え点付近での運転をしなければならない状況が発生し得る。大流量用の圧力調整弁から小流量用の圧力調整弁への切り替えを行うと、弁の特性上、燃料供給量が不連続的に変化して、制御が不安定になるリスクがある。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも1つの実施形態は、逆電力運転モードにおいてガスタービンの燃焼器への燃料供給を適切に制御可能なガスタービンの燃料制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係るガスタービンの燃料制御装置は、ガスタービンの燃料制御装置であって、前記ガスタービンは、圧縮空気を生成する圧縮機、前記圧縮空気で燃料を燃焼させる燃焼器、及び、前記燃焼器における前記燃料の燃焼により生じた燃焼ガスで駆動されるタービンを備え、前記タービンによってモーター発電機が駆動される運転モードである通常運転モードと、前記モーター発電機が前記ガスタービンに前記回転動力を提供する運転モードである逆電力運転モードとを切り替え可能であり、前記燃料制御装置は、前記燃焼器へ供給される前記燃料の圧力を第1下限値及び第1上限値の流量範囲内で調整可能な第1弁と、前記燃焼器へ供給される前記燃料の圧力を、前記第1下限値よりも大きい第2下限値及び前記第1上限値よりも大きい第2上限値の流量範囲内で調整可能な第2弁とを備え、前記通常運転モードから前記逆電力運転モードに切り替える場合、前記燃料の流量を前記逆電力運転モード用の流量まで低下させる前に、前記燃料の圧力を調整するための調整対象を前記第2弁から前記第1弁に変更する。
【0008】
また、本開示に係るガスタービンの燃料制御装置は、ガスタービンの燃料制御装置であって、前記ガスタービンは、圧縮空気を生成する圧縮機、前記圧縮空気で燃料を燃焼させる燃焼器、及び、前記燃焼器における前記燃料の燃焼により生じた燃焼ガスで駆動されるタービンを備え、前記タービンによってモーター発電機が駆動される運転モードである通常運転モードと、前記モーター発電機が前記ガスタービンに前記回転動力を提供する運転モードである逆電力運転モードとを切り替え可能であり、前記燃料制御装置は、前記燃焼器へ供給される前記燃料の圧力を調整可能な複数の弁を備え、前記通常運転モードでは、前記燃料の圧力を調整するための調整対象が前記複数の弁のうちの少なくとも2つの弁であり、前記通常運転モードから前記逆電力運転モードに切り替える場合、前記燃料の流量を前記逆電力運転モード用の流量まで低下させる前に、前記燃料の圧力を調整するための調整対象を、前記複数の弁のうちの1つの弁に変更する。
【発明の効果】
【0009】
本開示のガスタービンの燃料制御装置によれば、逆電力運転モードの運転時において第1弁と第2弁との切り替えがなくなることにより、逆電力運転モードの運転時において弁の特性に基づく燃料供給量の不連続性がなくなるので、ガスタービンの運転変動を抑制することができ、燃焼器への燃料供給を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係るガスタービンの燃料制御装置を含むガスタービンシステムの構成図である。
図2】本開示の一実施形態に係るガスタービンの燃料制御装置の構成図である。
図3】本開示の一実施形態に係るガスタービンの燃料制御装置に設けられる第1弁及び第2弁それぞれの弁特性を模式的に表すグラフである。
図4】本開示の一実施形態に係るガスタービンの燃料制御装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態によるガスタービンの燃料制御装置について、図面に基づいて説明する。以下で説明する実施形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0012】
<本開示の一実施形態に係るガスタービンの燃料制御装置の構成>
図1に示されるように、ガスタービンシステム10は、燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器4と、燃焼器4に燃焼用空気としての圧縮空気を供給する圧縮機2と、この圧縮機2と共通の回転軸5を有し、燃焼器4によって生成された燃焼ガスによって駆動されるように構成されたタービン6とを有するガスタービン1を備えている。回転軸5にはモーター発電機7が連結されており、モーター発電機7は、ガスタービン1の外部の電力系統8に電気的に接続可能に構成されている。圧縮機2の入口には、吸気量を調整するための入口案内翼(IGV)3Aが設けられている。IGV3Aの開度はアクチュエータ3B(入口案内翼制御装置)によって調節可能に構成されている。アクチュエータ3Bは、制御装置15に電気的に接続されている。
【0013】
燃焼器4は、燃料供給源11から燃料供給ライン12を介して燃料が供給されるように構成されている。燃料供給ライン12には、燃焼器4に供給される燃料の流量(燃料供給量)を調節するための燃料制御装置20が設けられている。燃料制御装置20の構成を図2に示す。燃料制御装置20内において、燃料供給ライン12は、燃焼器4(図1参照)のメインノズル及びパイロットノズルのそれぞれに連通するメイン燃料供給ライン21及びパイロット燃料供給ライン22に分岐している。燃料制御装置20は、メイン燃料供給ライン21に設けられてメインノズルへの燃料供給量を調節するためのメイン燃料制御弁23と、パイロット燃料供給ライン22に設けられてパイロットノズルへの燃料供給量を調節するためのパイロット燃料制御弁24と、メイン燃料制御弁23及びパイロット燃料制御弁24のそれぞれの上流側及び下流側間の差圧を検出する差圧計25,26と、メイン燃料制御弁23よりも上流側でメイン燃料供給ライン21に互いに対して並列に設けられた差圧調整弁である第1弁27及び第2弁28と、パイロット燃料制御弁24よりも上流側でパイロット燃料供給ライン22に設けられた差圧調整弁29とを備えている。
【0014】
メイン燃料制御弁23及びパイロット燃料制御弁24はそれぞれ、制御装置15に電気的に接続されて、制御装置15によって開度が調整されるように構成されている。第1弁27と第2弁28と差圧計25とはそれぞれ制御装置15に電気的に接続されて、差圧の設定値に基づくPI制御により、第1弁27及び第2弁28のそれぞれの開度が制御装置15によって調整されるように構成されている。差圧調整弁29と差圧計26とはそれぞれ制御装置15に電気的に接続されて、差圧の設定値に基づくPI制御により、差圧調整弁29の開度が制御装置15によって調整されるように構成されている。
【0015】
制御装置15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。尚、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0016】
この実施形態では、第1弁27と第2弁28とはそれぞれ、開度と燃料の流量との関係、すなわち弁特性が互いに異なっている。図3に示されるように、第1弁27及び第2弁28はそれぞれ最小開度Omin及び最大開度Omax間で燃料の圧力を制御可能であり、開度が最小開度Ominのときにそれぞれの弁を流れる燃料の流量が最低流量F1_min及びF2_minとなり、開度が最大開度Omaxときにそれぞれの弁を流れる燃料の流量が最高流量F1_max及びF2_maxとなる。この実施形態において、F1_min<F2_minであり、かつ、F1_max<F2_maxである。
【0017】
尚、図3では、第1弁27及び第2弁28のそれぞれの最小開度Ominが同じであり、かつ、それぞれの最大開度Omaxが同じであるが、互いに異なっていてもよい。また、図3では、F1_max>F2_minとなっているが、F1_max≦F2_minであってもよい。さらに、図3では、第1弁27の弁特性の傾きが第2弁28の弁特性の傾きよりも大きくなっているが、前者よりも後者が大きくてもよいし、両者が同じであってもよい。さらに、第1弁27及び第2弁28のそれぞれの弁特性は直線関係であるが、曲線で表される関係であってもよい。
【0018】
<本開示の一実施形態に係るガスタービンシステムの動作>
次に、本開示の一実施形態に係るガスタービンシステム10の動作について説明する。図1に示されるように、ガスタービンシステム10は、タービン6によってモーター発電機7が駆動される運転モードである通常運転モードと、モーター発電機7がガスタービン1に回転動力を提供する運転モードである逆電力運転モードとを適宜切り替えて動作することが可能である。
【0019】
通常運転モードでは、圧縮機2から圧縮空気が燃焼器4に供給されるとともに燃料供給源11から燃料供給ライン12を介して燃焼器4に燃料が供給されることにより、燃料が燃焼されて燃焼ガスが生成する。この燃焼ガスがタービン6に供給されることでタービン6が駆動され、すなわち回転し、タービン6の回転が回転軸5を介してモーター発電機7に伝達されて、モーター発電機7が発電機として駆動する。モーター発電機7で発電された電力は電力系統8に送電される。
【0020】
一方、逆電力運転モードでは、ガスタービン1の外部の電力系統8から電力がモーター発電機7に給電されることで、モーター発電機7はモーターとして駆動する。モーター発電機7で発生する回転動力はガスタービン1に提供されて、ガスタービン1の運転をアシストする。このため、逆電力運転モードは一般的に、通常運転モードに比べて燃料消費量が小さくなる。
【0021】
<本開示の一実施形態に係るガスタービンの燃料制御装置の動作>
次に、ガスタービン1の燃料制御装置20の動作を、図1~3と図4のタイミングチャートとに基づいて説明する。図4のタイミングチャートは、ガスタービンシステム10が通常運転モードから逆電力運転モードへ移行する際の各種項目の経時変化を示している。時刻tまでは、ガスタービンシステム10は通常運転モードにおいて、規定の負荷Lで運転している。ガスタービンシステム10のオペレータは、後述する時刻tにおいて逆電力運転モードへ切り替えを開始するための準備を時刻tにおいて開始する。
【0022】
時刻tにおけるオペレータの操作に基づいて、制御装置15は燃焼器4への燃料供給量の制御に用いられるパラメータである燃料流量設定値を経時的に変化させることにより、ガスタービンシステム10が負荷Lで運転する場合の燃料供給量Fから、後述する最低負荷Lminでガスタービンシステム10が運転する場合の燃料供給量Fminに低下させる。また、制御装置15は、燃料流量設定値及びパイロット比率の設定値に基づいてメイン燃料制御弁23及びパイロット燃料制御弁24を制御し、燃料流量設定値の減少に対応するように各燃料制御弁の開度を減少させる。具体的には、制御装置15は、燃料流量設定値及びパイロット比率に基づいてメインノズル及びパイロットノズルに供給すべき各燃料供給量を算出し、各燃料供給量に対応する開度を示す信号をメイン燃料制御弁23及びパイロット燃料制御弁24のそれぞれに伝送する。この信号に基づいてメイン燃料制御弁23及びパイロット燃料制御弁24の開度が制御される。また、差圧計25,26それぞれの検出値が設定値となるように、第2弁28の開度と、差圧調整弁29の開度とをそれぞれ調整する。具体的には、各差圧計の検出値と設定値の差分に基づいてPI制御を行うことで適切な開度を算出し、当該開度を示す信号を第2弁28及び差圧調整弁29に伝送する。このように、燃焼器4への燃料供給を制御装置15が制御することにより、メインノズル及びパイロットノズルに供給される燃料の圧力を制御しながら、燃料供給量を当初の燃料供給量Fから後述する最低供給量Fminに向かって低下させる。この結果として、ガスタービンシステム10の負荷が低下し、時刻tにおいて最低負荷Lminとなる。ここで、最低負荷Lminでの運転とは、無負荷定速運転であり、通常運転モードにおける燃焼器4への燃料供給量を最低値、すなわち最低供給量Fminにした状態での運転を意味する。
【0023】
この実施形態では、時刻tから時刻tまでの間は、制御装置15は、第1弁27の開度を当初の開度O1_0のままに維持し、第2弁28の開度が当初のO2_0から時刻tにおいてO2_1となるように低下させることにより、メインノズルへに供給される燃料の圧力を設定値に制御している。また、時刻tにおいてメインノズル及びパイロットノズルそれぞれへの燃料供給量を低下させることと併せて、パイロット比率(燃焼器4への燃料供給量に対するパイロットノズルへの燃料供給量の比率)を当初のパイロット比率Rから上昇し始める。これにより、燃焼器4への燃料供給量が低下しても、燃焼器4がより失火しにくい状態にすることができる。時刻tに達する前に、パイロット比率はRからRに上昇する。さらに、時刻tにおいて制御装置15はアクチュエータ3Bを制御することにより、IGV3Aの開度を、燃焼器4が失火しないような開度に調節してもよい。
【0024】
時刻tにおける運転条件を、時刻tから時刻tまで維持する。時刻tから時刻tまでの運転期間は、運転モードの切り替えについて、オペレータからの命令信号、若しくは、ガスタービンシステム10又はガスタービンシステム10と接続された他のシステムからの命令信号を受け付けるための時間である。時刻tにおいて、例えばガスタービンシステム10のオペレータが運転モード切替ボタンを押すことによって、通常運転モードから逆電力運転モードへの切り替えを開始する。時刻tにおいて、制御装置15は、燃焼器4への燃料供給量を最低供給量Fminに維持したままパイロット比率の上昇を開始し、時刻tにおいてパイロット比率をRとする。
【0025】
燃焼器4への燃料供給量を最低供給量Fminに維持したままパイロット比率をRからRへ上昇させるために、制御装置15は、メイン燃料制御弁23の開度を低下させるとともにパイロット燃料制御弁24の開度を増加させる。このとき、制御装置15は、差圧計25の検出値が設定値となるように、時刻tから時刻tにおいて第1弁27の開度を増加させ、略同期するように第2弁28の開度を低下させる。パイロット比率がRとなる時刻tにおいて、第2弁28の開度はO2_2まで低下し、第1弁27の開度はO1_1まで増加する。また、制御装置15は、時刻tから時刻tまでの間で、アクチュエータ3Bを制御することによりIGV3Aの開度を、逆電力運転モードに適した開度に制御してもよい。
【0026】
時刻tから時刻tにかけて、制御装置15は、燃焼器4への燃料流量設定値を制御して、燃料供給量をFminから逆電力運転モード用の供給量FGMに低下させる。制御装置15は、燃料流量設定値及びパイロット比率の値に基づいて、メイン燃料制御弁23及びパイロット燃料制御弁24のそれぞれに開度の情報を示す信号を伝送する。また、差圧計25,26それぞれの検出値が目標差圧設定値となるように、第1弁27の開度と、差圧調整弁29の開度とを調整する。
【0027】
具体的には、時刻t以降、制御装置15は、第2弁28の開度をO2_2のまま一定にして(第2弁28を全閉のままにすることも含む)、第1弁27の開度調整のみでメイン燃料制御弁23の上流側及び下流側間の差圧を調整することにより、メインノズルに供給される燃料の圧力を調整する。図4では記載されていないが、時刻t以前の通常運転モードでは、逆電力運転モードに比べて燃焼器4への燃料供給量が大きいため、メインノズルに供給される燃料の圧力を調整するための調整対象は第2弁28である。したがって、制御装置15は、時刻t以降、メインノズルに供給される燃料の圧力を調整するための調整対象を第2弁28から第1弁27に変更する。
【0028】
時刻tにおいてガスタービンシステム10の負荷がゼロになるが、燃料流量設定値をさらに減少させて、燃焼器4への燃料供給量を低下させる。時刻t以降は、電力系統8から電力がモーター発電機7に給電されるようになる。したがって、時刻t以降は、モーター発電機7はモーターとして駆動し、モーター発電機7で発生する回転動力はガスタービン1に提供される。時刻tにおいて、燃焼器4への燃料供給量が、逆電力運転モード用の燃料供給量FGMに到達し、逆電力運転モードへの切り替え動作が完了する。このとき、第1弁27の開度はO1_2まで低下する。図4ではO1_2>O1_0となっているが、通常運転モードにおける第1弁27の開度O1_0の大きさ次第では、O1_2≦O1_0となり得る。
【0029】
この実施形態では、逆電力運転モードにおけるメインノズルに供給される燃料の圧力の調整は第1弁27の開度調整のみで行われることになる。このため、逆電力運転モードにおいて第1弁27と第2弁28との切り替えがなくなることにより、弁の特性に基づく燃料供給量の不連続性がなくなるので、ガスタービン1の運転変動を抑制することができ、逆電力運転モードの運転時においてガスタービン1への燃料供給を適切に制御することができる。
【0030】
<本開示の一実施形態に係るガスタービンの燃料制御装置の動作の変形例>
この実施形態では、メインノズルに供給される燃料の圧力を調整するための調整対象を第2弁28から第1弁27に変更することを、時刻tまで、すなわち、ガスタービンシステム10の負荷を最低負荷Lminから低下し始めるまでに行っているが、この形態に限定するものではない。このような変更は少なくとも時刻tまで、すなわち、燃焼器4への燃料供給量がFGMまで低下することで逆電力運転モードへの切り替え動作が完了するまでに行えばよい。このため、時刻tよりも前まで、例えば、燃焼器4への燃料供給量が無負荷定速運転用の流量まで低下させる前に、すなわち時刻tまでに行うこともできる。このようにすると、通常運転モードから逆電力運転モードへの切り替え中においてもガスタービンへの燃料供給を適切に制御することができる。
【0031】
この実施形態では、通常運転モードから逆電力運転モードに切り替える場合、第1弁27の開度を通常運転モードの開度より大きくするとともに第2弁28の開度を通常運転モードの開度より小さくした後に、燃料の圧力を調整するための調整対象を第2弁28から第1弁27に変更しているが、この動作は必須の構成ではない。ただし、このような動作を行うことで、逆電力運転モードにおいて燃焼器への燃料供給をより適切に制御することができる。
【0032】
この実施形態では、メインノズルに供給される燃料の圧力を調整するための調整対象を第2弁28から第1弁27に変更後、第2弁28の開度は一定値であったがこの形態に限定するものではない。メインノズルに供給される燃料の圧力の調整とは無関係に、第2弁28の開度が非常に狭い範囲内で変動する状態であってもよい。ただし、第2弁28の開度を一定値に維持しておけば、逆電力運転モードにおける燃料の圧力を調整するための調整対象を完全に第1弁27のみにすることができるので、逆電力運転モードにおいて燃焼器4への燃料供給をより適切に制御することができる。
【0033】
この実施形態では、メインノズルに供給される燃料の圧力を調整するための差圧調整弁として、互いに弁特性が異なる2つの弁、すなわち第1弁27及び第2弁28を用いているが、この形態に限定するものではなく、互いの弁特性が同じである2つの弁を用いてもよい。この変形例において、通常運転モードでは、メインノズルに供給される燃料の圧力を調整するための調整対象を2つの弁とし、逆電力運転モードでは、メインノズルに供給される燃料の圧力を調整するための調整対象をいずれか一方の弁のみにする。この変形例でも、逆電力運転モードにおいて調整対象の弁の個数の切り替えがなくなることにより、燃料供給量の不連続性がなくなるので、ガスタービン1の運転変動を抑制することができ、燃焼器4への燃料供給を適切に制御することができる。
【0034】
尚、この変形例では、弁の個数は2つではなく、3つ以上の任意の個数としてもよい。この場合、通常運転モードでは、メインノズルに供給される燃料の圧力を調整するための調整対象を3つ以上の弁のうちの少なくとも2つの弁とし、逆電力運転モードでは、メインノズルに供給される燃料の圧力を調整するための調整対象を3つ以上の弁のうちのいずれか1つの弁とすることにより、同じ作用効果を得ることができる。
【0035】
この実施形態では、逆電力運転モード時に電力系統8からモーター発電機7に電力が給電されていたが、この形態に限定するものではない。他のプラント等で過剰となっている電力をモーター発電機7に給電するようにしてもよい。
【0036】
この実施形態では、メインノズルに供給される燃料の圧力の調整のみを説明したが、差圧調整弁29を第1弁及び第2弁から成る構成にして同じような制御を行うことで、パイロットノズルに供給される燃料の圧力の調整も可能である。
【0037】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0038】
[1]一の態様に係るガスタービンの燃料制御装置は、
ガスタービン(1)の燃料制御装置(20)であって、
前記ガスタービン(1)は、圧縮空気を生成する圧縮機(2)、前記圧縮空気で燃料を燃焼させる燃焼器(4)、及び、前記燃焼器(4)における前記燃料の燃焼により生じた燃焼ガスで駆動されるタービン(6)を備え、前記タービン(6)によってモーター発電機(7)が駆動される運転モードである通常運転モードと、前記モーター発電機(7)が前記ガスタービン(1)に前記回転動力を提供する運転モードである逆電力運転モードとを切り替え可能であり、
前記燃料制御装置(20)は、
前記燃焼器(4)へ供給される前記燃料の圧力を第1下限(F1_min)値及び第1上限値(F1_max)の流量範囲内で調整可能な第1弁(27)と、
前記燃焼器(4)へ供給される前記燃料の圧力を、前記第1下限値(F1_min)よりも大きい第2下限値(F2_min)及び前記第1上限値(F1_max)よりも大きい第2上限値(F2_max)の流量範囲内で調整可能な第2弁(28)と
を備え、
前記通常運転モードから前記逆電力運転モードに切り替える場合、前記燃料の流量を前記逆電力運転モード用の流量まで低下させる前に、前記燃料の圧力を調整するための調整対象を前記第2弁(28)から前記第1弁(27)に変更する。
【0039】
本開示のガスタービンの燃料制御装置によれば、逆電力運転モードの運転時において第1弁と第2弁との切り替えがなくなることにより、逆電力運転モードの運転時において弁の特性に基づく燃料供給量の不連続性がなくなるので、ガスタービンの運転変動を抑制することができ、燃焼器への燃料供給を適切に制御することができる。
【0040】
[2]別の態様に係るガスタービンの燃料制御装置は、[1]のガスタービンの燃料制御装置であって、
前記通常運転モードから前記逆電力運転モードに切り替える場合、前記燃料の流量を無負荷定速運転用の流量(Fmin)まで低下させる前に、前記燃料の圧力を調整するための調整対象を前記第2弁(28)から前記第1弁(27)に変更する。
【0041】
このような構成によれば、通常運転モードから逆電力運転モードへの切り替え中においても燃焼器への燃料供給を適切に制御することができる。
【0042】
[3]さらに別の態様に係るガスタービンの燃料制御装置は、[1]または[2]のガスタービンの燃料制御装置であって、
前記通常運転モードから前記逆電力運転モードに切り替える場合、前記第1弁(27)の開度を前記通常運転モードの開度より大きくするとともに前記第2弁(28)の開度を前記通常運転モードの開度より小さくした後に、前記燃料の圧力を調整するための調整対象を前記第2弁(28)から前記第1弁(27)に変更する。
【0043】
このような構成によれば、第1弁による燃料の流量の低下幅を大きくできるので、逆電力運転モードにおいて燃焼器への燃料供給をより適切に制御することができる。
【0044】
[4]さらに別の態様に係るガスタービンの燃料制御装置は、[1]~[3]のいずれかのガスタービンの燃料制御装置であって、
前記燃料の圧力を調整するための調整対象を前記第2弁(28)から前記第1弁(27)に変更した後は、前記第2弁(28)の開度を一定値に維持する。
【0045】
このような構成によれば、逆電力運転モードの運転時における燃料の圧力を調整するための調整対象を完全に第1弁のみにすることができるので、逆電力運転モードの運転時において燃焼器への燃料供給をより適切に制御することができる。
【0046】
[5]一の態様に係るガスタービンの燃料制御装置は、
ガスタービン(1)の燃料制御装置(20)であって、
前記ガスタービン(1)は、圧縮空気を生成する圧縮機(2)、前記圧縮空気で燃料を燃焼させる燃焼器(4)、及び、前記燃焼器(4)における前記燃料の燃焼により生じた燃焼ガスで駆動されるタービン(6)を備え、前記タービン(6)によってモーター発電機(7)が駆動される運転モードである通常運転モードと、前記モーター発電機(7)が前記ガスタービン(1)に前記回転動力を提供する運転モードである逆電力運転モードとを切り替え可能であり、
前記燃料制御装置(20)は、前記燃焼器(4)へ供給される前記燃料の圧力を調整可能な複数の弁を備え、
前記通常運転モードでは、前記燃料の圧力を調整するための調整対象が前記複数の弁のうちの少なくとも2つの弁であり、
前記通常運転モードから前記逆電力運転モードに切り替える場合、前記燃料の流量を前記逆電力運転モード用の流量まで低下させる前に、前記燃料の圧力を調整するための調整対象を、前記複数の弁のうちの1つの弁に変更する。
【0047】
本開示のガスタービンの燃料制御装置によれば、逆電力運転モードの運転時において第1弁と第2弁との切り替えがなくなることにより、逆電力運転モードの運転時において弁の特性に基づく燃料供給量の不連続性がなくなるので、ガスタービンの運転変動を抑制することができ、燃焼器への燃料供給を適切に制御することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ガスタービン
2 圧縮機
4 燃焼器
6 タービン
7 モーター発電機
10 ガスタービンシステム
20 燃料制御装置
27 第1弁
28 第2弁
図1
図2
図3
図4