IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

特許7542734自動車の変速機用の切替装置及びこのような切替装置を動作させるための方法
<>
  • 特許-自動車の変速機用の切替装置及びこのような切替装置を動作させるための方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】自動車の変速機用の切替装置及びこのような切替装置を動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/02 20060101AFI20240823BHJP
   F16H 61/68 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H61/68
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023518062
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 EP2022055245
(87)【国際公開番号】W WO2022194549
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】102021001425.1
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】ドスター,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シュスター,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ヒャーゼマン,ニールス
(72)【発明者】
【氏名】ベリビッチ,ヴァディム
(72)【発明者】
【氏名】シュテグマイヤー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー,ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】シャーラー,ウド
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-025658(JP,A)
【文献】特開2020-193648(JP,A)
【文献】特開2019-127976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00-61/12,
61/16-61/24,
63/40-63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の切替部品(18)が回転軸(22)周りに他方の切替部品(16)に対して相対回転可能であり、前記他方の切替部品(16)が前記回転軸(22)周りに自動車の変速機のハウジングに対して相対回転不能である2つの切替部品(16、18)を含む少なくとも1つの非同期式の爪切替要素(14)を備える、前記自動車の変速機用の切替装置(10)であって、
相互に係合することにより前記切替部品(16、18)が相互に相対回転不能に接続される少なくとも1つの連結位置と、相互に連結解除されることにより前記切替部品(16、18)が前記回転軸(22)周りに相互に相対回転可能となる少なくとも1つの連結解除位置との間で、前記切替部品(16、18)を前記回転軸(22)に沿って相互に相対変位可能とする、前記切替部品(16、18)のそれぞれに含まれる前記係合及び前記連結解除可能な切替歯切部(24、30)と、
前記切替部品(16、18)のうちの少なくとも一方の切替部品(18)が前記回転軸(22)周りに前記他方の切替部品(16)に対して相対回転可能な回転位置を検出可能な検出装置(36)と、
検出された前記回転位置に応じて前記切替部品(16、18)を前記連結解除位置から前記連結位置に移動させるように設計された電子計算機(38)と
を備え、
前記検出装置(36)は、少なくとも1つのセンサ要素(44)と、前記一方の切替部品(18)に相対回転不能に接続されており、それにより前記一方の切替部品(18)と共に前記回転軸(22)周りに前記センサ要素(44)に対して一緒に相対回転可能な少なくとも1つのエンコーダ要素(40)とを含み、
前記エンコーダ要素(40)は、前記センサ要素(44)によって検出可能であって、該検出に基づいて、前記一方の切替部品(18)の前記回転位置が検出可能となる、エンコーダセグメント(42)を含み、
前記エンコーダセグメント(42)の数は、少なくとも、前記一方の切替部品(18)の切替歯切部(30)の歯(32)の数と前記一方の切替部品(18)の前記切替歯切部(30)の歯溝(34)の数との少なくとも合計に対応し、
前記エンコーダ要素(40)は、歯(32)ごと及び歯溝(34)ごとにそれぞれ、少なくとも1つのエンコーダセグメント(42)を有する
切替装置(10)。
【請求項2】
前記エンコーダセグメント(42)の前記数は、前記合計の少なくとも2倍である
ことを特徴とする請求項1記載の切替装置(10)。
【請求項3】
前記エンコーダ要素(40)は、欠歯箇所(F)を有し、前記欠歯箇所(F)においては、前記回転軸(22)を中心とする前記エンコーダ要素(40)の円周方向に延びる、前記エンコーダ要素(40)の隣接する2つのエンコーダセグメント(42)間の第1の空隙の第1の幅が、前記エンコーダ要素(40)の円周方向に延びる、前記エンコーダ要素(40)の隣接するエンコーダセグメント(42)間の第2の空隙の第2の幅より大きい
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の切替装置(10)。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一項記載の切替装置(10)を動作させるための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲における請求項1の前段に記載の自動車、特に原動機付車両の、変速機用の切替装置に関する。更に、本発明は、このような切替装置を動作させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の変速機用のこのような切替装置は、例えば、既に下記特許文献1により公知であると理解される。切替装置は、少なくとも1つの非同期式の爪切替要素、すなわち、回転軸周りに相互に相対回転可能な2つの切替部品を含む、非同期式且つ形状接続式(ポジティブロック式)の切替要素を有する。切替部品は、それぞれ1つの切替歯切部を有する。切替歯切部は、例えば、回転軸に沿って相互に対向している。切替部品は、回転軸に沿って相互に、少なくとも1つの連結位置と少なくとも1つの連結解除位置との間で相対変位可能である。連結位置では、切替歯切部は、形状接続式で相互作用するように相互係合している。これにより、切替部品は、相互に相対回転不能に接続されている。連結解除位置では、切替歯切部は、相互に連結解除されている。これは、切替歯切部が、連結解除位置では、相互係合せず、ひいては、相互作用しないため、連結解除位置では、切替部品が回転軸周りに相互に相対回転可能であることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第10 2010 043 592 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、冒頭に記載の種類の切替装置を、特に有利な切替を実現することができるように更に開発し、切替装置を動作させるための方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本課題は、請求項1の特徴を有する切替装置及び請求項6の特徴を有する方法によって解決される。本発明の目的に応じた発展形態を含む有利な実施形態は、その他の請求項に記載されている。
【0006】
単に切替要素とも称される爪切替要素の、特に連結解除位置から連結位置への特に有利な切替を実現することができるように請求項1の前段に記載の種類の切替装置を更に開発するため、本発明では、特に電気的又は電子的な検出装置が設けられ、検出装置を使用して、切替部品のうちの少なくとも一方が、他方の切替部品に対して特に連結解除位置において回転軸周りに相対回転可能である回転位置を検出可能である。換言すれば、連結解除位置では、一方の切替部品は、回転軸周りに他方の切替部品に対して相対回転されることにより、回転位置に移動することができ、したがって、他方の切替部品に対して相対的に回転位置をとることができる。その場合、他方の切替部品が連結解除位置だけではなく連結位置においても、特に常時、変速機のハウジングに相対回転不能に固定されているため、他方の切替部品は、回転軸周りにハウジングに対して相対回転不能であることが考えられ得る。これは特に、連結位置では、一方の切替部品が他方の切替部品を介してハウジングに相対回転不能に固定されていることを意味する。連結解除位置では、一方の切替部品を、回転軸周りに他方の切替部品及びハウジングに対して相対回転させることができる。したがって、連結解除位置では、一方の切替部品を、回転軸周りにハウジング及び他方の切替部品に対して相対回転させ、ひいては、回転位置に移動させることができる。特に、回転位置を検出することによって、一方の切替部品の回転位置を他方の切替部品及び/又はハウジングと関連付けて算出する又は設定することが可能であるため、検出されたそれぞれの回転位置に基づいて、相対位置又は配向(アライメント)とも称される、他方の切替部品に対する一方の切替部品のそれぞれの位置を算出又は検出することができる。特に、それぞれの回転位置を、他方の切替部品に対する一方の切替部品のそれぞれの位置として算出又は検出することができるため、例えば、それぞれの回転位置を検出することによって、一方の切替部品のそれぞれの他方の切替部品に対する位置又は配向を知ることができる。特に、検出装置は、一方の切替部品の回転数を検出するように形成されており、その一方の切替部品は、特に、連結解除位置では、その回転数で回転軸周りに他方の切替部品に対して相対回転する。したがって、検出装置は、回転数検出システムであると考えることができ、回転数検出システムを使用して、一方の切替部品の回転数、ひいては、回転位置を検出する、すなわち、測定することができる。
【0007】
更に、本発明によれば、切替装置は、検出された回転位置に応じて切替部品を連結解除位置から連結位置へ移動するように形成されている、電子制御装置とも称される電子計算機を有することが提供される。これにより、いわゆる噛み合い外れ位置が生じることなく、形状接続式の切替要素とも称される爪切替要素を切り替えることができる。換言すれば、いわゆる噛み合い外れ位置が生じることなく、切替部品を連結解除位置から連結位置へ移動することができる。その場合、本発明は、特に以下の知見に基づいている。従来より、爪切替要素は、爪切替要素の切替部品間の回転数差(回転速度差)を低減又は縮小するために、事前同期、特に摩擦同期の形態で同期され、その後ただちに、切替歯切部を互いに係合させることができる。その場合、特に、噛み合い外れ位置になることによって、摩耗の増大、及び場合によっては擦れ音、すなわち、所望しない異音、ひいては、快適性の喪失をも引き起こされるおそれがある。
【0008】
一方、本発明によれば、非同期式の爪切替要素を使用することができる、すなわち、少なくとも、爪切替要素の摩擦接続式の同期を防止することができる。他方では、本発明によれば、特に、回転角度位置とも称される回転位置が検出されるため、切替部品が検出された回転角度位置に応じて連結解除位置から連結位置へ移動することが可能となり、連結解除位置から連結位置への切替部品の移動時に、噛み合い外れ位置になることを回避することができる。回転位置を考慮することによって、電子計算機は、噛み合い外れ位置、ひいては、摩耗の増大及び所望しない異音を引き起こさないように、又はその場合に、切替部品を連結解除位置から連結位置へ移動することができる。連結解除位置から連結位置への切替部品の移動は、切替部品又は単に爪とも称される爪切替要素の噛み合いとも称される。特に、検出された回転位置(回転角度位置)に応じて爪の噛み合いを適切に制御することが可能である。特に、例えば、電気モータのように回転位置を検出するのに十分に正確なトルクエンコーダ又は回転数エンコーダと、例えば、把持歯仕様及び係止歯仕様のような適切な爪形状とを組み合わせて、係止歯、詳しく言えば第1の切替部品及び/又は第2の切替部品を適切に制御することによって、爪の噛み合い時に、噛み合い外れ位置と、それによって生じる、擦れ音、快適性の喪失又は所望しない異音といった所望しない現象と、を回避することができる。
【0009】
非同期式の爪切替要素は、特に、摩擦接続式の事前同期を省略することができるため、安価かつ省スペース、しかも技術的に単純である。特に、駆動装置(原動機)としての電気機械による電動駆動用の変速機において、例えば、第1の切替部品又は第2の切替部品、特に一方の切替部品が、電気機械、特に電気機械のロータと、特に相対回転不能に接続されている場合、噛み合いプロセスとも称される爪の噛み合いは、電気機械を使用して制御可能である。内燃機関に比べて、電気機械は、良好かつ迅速に制御することができ、また良好かつ迅速に回転数ゼロへと制御することができるため、爪の同期を省略することができる。その結果、噛み合いは、高い切替快適性で実行することができる。
【0010】
好適には、自動車は、特に、純粋に電気的に駆動可能であるため、変速機は、好適には、特に、純粋に電気的に駆動可能である自動車の変速機である。切替部品は、例えば、切替要素半体とも称される。それぞれの切替歯切部は、爪歯とも称される歯を有する。その場合、それぞれの切替部品の爪歯のそれぞれの歯端が軸方向で、すなわち、回転軸に沿って、それぞれの対向する他方の切替部品の方を向いていることが考えられ得るため、好適には、切替部品が軸方向で、すなわち、回転軸に沿って、隣り合って又は連続して配置されていることが提供される。それによって、好適には、特に、一方の切替部品の切替歯切部が軸方向で他方の切替部品の切替歯切部を向き、他方の切替部品の切替歯切部が軸方向で一方の切替部品の切替歯切部を向いているように、一方の切替部品の切替歯切部は、軸方向に沿って他方の切替部品を向き、他方の切替部品の切替歯切部は、軸方向に沿って一方の切替部品を向いている。それぞれの切替歯切部のそれぞれの爪歯のそれぞれの長さは、例えば、切替部品ごとに共通の特定の軸方向の基準面から、それぞれの切替歯切部のそれぞれの歯が終わるそれぞれの歯端まで軸方向に延在する。
【0011】
切替部品が連結位置にある場合、爪切替要素は、締結状態にある。その場合、好適には、爪切替要素の締結状態では、それぞれの切替歯切部のそれぞれの歯は、それぞれの他方の切替歯切部の空隙又は歯溝とも称される爪溝に噛み合い、それぞれの切替歯切部のそれぞれの爪溝は、それぞれの切替歯切部のそれぞれの歯の間に、特に、回転軸周りに延びるそれぞれの切替部品の円周方向に配置されていることが提供される。
【0012】
更に好適には、それぞれの切替歯切部の少なくとも1つの爪歯は、把持歯として形成されており、その特に軸方向の長さ、したがって、回転軸に沿って延びる長さは、それぞれの切替歯切部の係止歯として形成されている他方の爪歯の長さよりも長いことが提供される。
【0013】
更に、検出装置が、少なくとも1つのセンサ要素と、一方の切替部品と相対回転不能に接続されている少なくとも1つのエンコーダ要素と、を含む場合に、特に有利であることが明らかとなった。エンコーダ要素は、好適にはエンコーダホイールである。センサ要素は、例えば、センサとも称される。例えば、センサ要素は、ハウジング及び/又は他方の切替部品と相対回転不能に接続されている。エンコーダ要素は、一方の切替部品に相対回転不能に接続されていることによって、一方の切替部品と共に、回転軸周りにセンサ要素に対して、特に、他方の切替部品又はハウジングに対して、一緒に回転可能である。エンコーダ要素は、エンコーダセグメントを有する。エンコーダセグメントは、例えば、回転軸周りに延びるエンコーダ要素の円周方向に連続して配置されている、特に、それぞれ2つの隣接するエンコーダセグメント間に、単に空隙とも称されるエンコーダ空隙が配置されるように互いに離間されている。エンコーダセグメントは、センサ要素(センサ)を使用して検出可能であるため、エンコーダセグメントの検出に基づいて、一方の切替部品の回転位置を検出可能である。換言すれば、例えば、それぞれの回転位置は、エンコーダセグメントのうちの少なくとも1つによって特徴付けられているため、エンコーダセグメントを検出することによって、特に、クランクシャフトセンサの場合と同様、回転位置を検出することができる。センサ要素は、例えば、検出されたエンコーダセグメント、ひいては、回転位置を特徴付ける、特に電気信号を提供するように設計されている。例えば、それぞれのエンコーダセグメントが信号又はセンサのそれぞれ1つのパルスを生成するため、例えば、信号は、エンコーダセグメントごとに1つのパルスを有する。信号のパルスに基づいて、エンコーダセグメント、ひいては、回転位置を検出又は算出することができる。したがって、エンコーダセグメントは、エンコーダ要素、特にエンコーダホイールのパルス送信セグメント又はパルス送信エンコーダセグメントとも称される。
【0014】
その場合、好適には、エンコーダ要素のパルス送信セグメントの数が、少なくとも、一方の切替部品の切替歯切部の歯の数と一方の切替部品の切替歯切部の歯溝の数との合計と一致することが提供される。
【0015】
電子計算機が、検出された回転位置に応じて切替部品を連結解除位置から連結位置へ移動するように形成されているという特徴から、特に、電子計算機は、連結解除位置から連結位置への切替部品の移動をもたらすように形成されていることが理解され得る。このために、電子計算機を使用して、切替部品のうちの少なくとも一方又はアクチュエータを制御することができる。更に、好適には、電子計算機は、切替部品を連結位置から連結解除位置へ移動させるように、したがって、切替部品の連結位置から連結解除位置への移動をもたらすように設計されていることが提供される。連結解除位置から連結位置への切替部品の移動は、爪切替要素の係合とも称される。連結位置から連結解除位置への切替部品の移動は、爪切替要素の係合解除とも称される。したがって、爪切替要素は、電子制御装置によって係合可能かつ係合解除可能である。
【0016】
既に前述したとおり、好適には、第1の切替部品及び/又は第2の切替部品は、特に切替部品に関連して、切替部品のうちの一方のみが、電気機械又は前述の電気機械の従動部に駆動部として接続されていることが提供される。これにより、特に、第1の切替部品及び/又は第2の切替部品、特に、一方の切替部品が、電気機械の従動部、特にシャフトに相対回転不能に接続されていることが理解され得る。
【0017】
爪切替要素は、特に、パルスの数、すなわち、エンコーダセグメントの数が、少なくとも、一方の切替部品の切替歯切部の歯及び歯溝の数と一致するほど多い場合、高い切替快適性で噛み合わせることができる。その場合には、いわゆる絶対分解能が存在するため、切替部品の回転位置を特に精確に検出することができる。例えば、切替歯切部が60の歯、したがって、60の歯溝を有する場合、好適には、エンコーダセグメントの数は、120になるため、パルスの数も120になる。
【0018】
本発明の他の実施形態では、エンコーダセグメントの数は、前述の合計の少なくとも2倍であることが提供される。したがって、好適には、エンコーダセグメントの数は、一方の切替部品の切替歯切部の歯の数の少なくとも4倍であることが提供される。
【0019】
本発明の他の実施形態では、エンコーダ要素は、エンコーダ要素の2つの隣接するエンコーダセグメント間の第1の空隙の、回転軸周りに延びる、エンコーダ要素の円周方向に延びる第1の幅が、エンコーダ要素の円周方向に延びる、エンコーダ要素の隣接するエンコーダセグメント間の第2の空隙又は他の全ての空隙の第2の幅より大きい、欠歯間とも称される欠歯箇所を有することが提供される。欠歯箇所に基づき、回転位置のうちの一方を、基準位置又は基準場所として検出することができるのに対して、他方の回転位置を、有利には、爪切替要素が、特に例えば、噛み合い外れ位置にならないような回転位置でのみ噛み合わされるように、検出又は算出することができる。
【0020】
更に、好適には、2つの把持歯の間にそれぞれ1つの係止歯が配置されていることが提供される。
【0021】
更に、好適には、爪切替要素は、爪ブレーキとして実施されており、センサは、変速機のハウジングと固定接続されている他方の切替部品と接続されており、エンコーダ要素は、移動可能な一方の切替部品と固定接続されていることが提供され得る。これは、ハウジングに固定された切替部品の場合、センサの回転数がゼロであるため、したがって、回転軸周りにハウジングに対して相対回転しないため、係合プロセスが特に正確に制御可能である点で有利である。
【0022】
本発明の他の実施形態では、爪切替要素は、爪継手として実施されており、例えば、他方の切替部品は、車両車輪又は少なくとも又は正確に1つの車両車輪に、従動部として接続されている又は相対回転不能に接続されていることが考えられ得る。これにより、他方の切替部品の回転数は、決定(算出)することができ、したがって、既知となり得、他方の切替部品の回転数は、例えば、路面に沿って走行する自動車の速度から算出することができる。
【0023】
更なる実施形態では、電子計算機は、爪切替要素の締結解除状態で、角度位置又は回転位置をパルスに割り当てるために、自動車の発進後にパルス割当てのためのルーチンを有する又は実行することが考えられ得る。
【0024】
本発明の更なる実施形態では、制御装置は、特に、車両製造後及び/又は車両製造時の生産ライン最終段階テスト(EOLテスト(End-of-Line-Test))において、又は変速機交換後の自動車運転時において、ティーチインルーチンを実施するために有し、そのティーチインルーチンは、爪切替要素(切替要素)が係合されているとき、パルスごとに、噛み合いが行われ得るか又は行われ得ないかを割り当てるために使用されることが考えられ得る。
【0025】
更なる実施形態では、特に、ティーチインルーチンの代わりに、エンコーダホイールがマーキング、ノッチなどを有するため、各標準(直列)変速機内のセンサに対向するエンコーダホイールの欠歯パルスの角度位置が同一の規定値を固定的に有することが提供される。エンコーダホイールが、例えば、マーキングを有し、エンコーダホイールが常に同じ角度位置で取り付けられ得ると設定されている場合、ティーチインルーチンは、省略可能である。特に、ティーチインルーチン前に新しく取り付けられた各変速機において、パルス割当てのためにルーチンが実行され得ることが考えられ得て、これは学習又はティーチインとも称される。
【0026】
欠歯箇所は、欠歯パルスとも称され、この場合、正確に1つ又は複数の欠歯箇所若しくは欠歯パルスが設けられていることが考えられ得る。欠歯箇所において他のエンコーダ空隙と比べてより大きい又はより幅広のエンコーダ空隙は、信号の隣接する2つのパルスが、隣接する残りのパルスよりも大きい間隔を互いに有するため、エンコーダ空隙又は欠歯パルスを検知することができることにつながる。欠歯パルスの後に続く全てのパルスは、インデックスを設けることができるため、例えば、シャフトと相対回転不能に接続されている一方の切替部品の、それぞれの角度位置又はそれぞれの回転位置を算出することができる。例えば、磁化された極ホイール又は歯によって生成されるパルスの数は、好適には、爪歯の数よりも相当多く、少なくとも4倍である。適切な取付及び/又はティーチインルーチンによって、空隙又は噛み合い外れ位置がパルスと一致しているかどうかについての、パルスのインデックス又は2つのパルス間の領域のインデックスが割り当てられる。このような情報及び可能な限り正確な回転数エンコーダにより、爪の係合又は噛み合いのためにその爪を空隙位置に保持することができるため、噛み合い外れ位置になることが回避される。
【0027】
本発明は、本発明に係る切替装置を動作させるための方法も含む。本発明に係る切替装置の利点及び有利な形態は、本発明に係る方法の利点及び有利な形態であると見なすことができ、逆もまた同様である。
【0028】
本発明の他の利点、特徴、及び詳細は、好ましい実施形態の以下の説明及び図面から明らかになる。先の説明において言及した特徴及び特徴の組み合わせ、並びに以下の図面の説明で挙げる、かつ/又は単一の図に単独で示す特徴及び特徴の組み合わせは、それぞれ記載されている組み合わせのみならず、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組み合わせ又は単独でも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る自動車の変速機用の切替装置の部分概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、自動車、特に、原動機付車両の変速機用の切替装置10の部分概略図を示している。変速機は、特に概略的に図示されたハウジング12を有する。切替装置10は、単に切替要素又は爪とも称される、少なくとも1つの非同期式の爪切替要素14を含む。例えば、自動車は、電気機械を含み、電気機械によって、特に、自動車の少なくとも又は正確に2つの車輪を電気機械によって駆動することができるように、特に、純粋に、電気的に駆動することができる。電気機械は、ステータと、ステータに対して相対回転可能であるロータと、を有し、そのロータを介して自動車を駆動することができる。爪切替要素14は、第1の切替部品16及び第2の切替部品18を有する。図中で破線矢印20によって具体的に示されているように、切替部品18は、回転軸22周りに、切替部品16及びハウジング12に対して相対回転可能である。その場合、特に、切替部品16は、ハウジング12に相対回転不能に固定されている、ひいては、回転軸22周りにハウジング12に対して相対回転不能であることが考えられ得る。特に、切替部品18は、電気機械のロータと相対回転不能に接続されていることが考えられ得る。
【0031】
切替部品16は、第1の歯26と、歯26の間に配置された第1の歯溝28と、を有する第1の切替歯切部24を有する。切替部品18は、第2の歯32と、歯32の間に配置された第2の歯溝34と、を有する第2の切替歯切部30を有する。歯26,32のそれぞれは、回転軸22と平行に延びるそれぞれの長さを有することが理解され得る。その場合、図1中Z1で示された歯の長さは、図1中Z2で示された歯の長さよりも長く、歯Z1のそれぞれは、把持歯とも称され、歯Z2のそれぞれは、係止歯とも称される。例えば、爪切替要素14並びに切替歯切部24,30は、上記特許文献1に記載されているとおりに形成されている。
【0032】
図1から、切替歯切部24は、軸方向に、すなわち、回転軸22に沿って切替歯切部30に向いており、切替歯切部30は、軸方向で切替歯切部24に向いていることが理解され得る。切替部品16,18は、回転軸22に沿って相互に、少なくとも1つの連結位置と、図1で示された少なくとも1つの連結解除位置と、の間で相対変位可能である。連結位置では、切替歯切部24,30は、相互係合し、これにより、切替部品16,18は、形状接続式に相互に相対回転不能に連結されている。連結解除位置では、切替歯切部24,30は、相互に連結解除されている。これは、切替歯切部24,30が、連結解除位置では相互係合しないため、連結解除位置では、切替部品16,18が回転軸22周りに相互に相対回転可能であることを意味する。連結解除位置から連結位置への切替部品16,18の移動は、爪切替要素14の噛み合い又は噛み合いプロセス又は係合とも称される。
【0033】
ここで、爪切替要素14を、特に有利に噛み合わせることができるように、切替装置10は、検出装置36を含み、検出装置36により、切替部品18が回転軸22周りに切替部品16及びハウジング12に対して相対回転可能である回転位置を検出可能である、又は検出する。更に、図1で特に概略図で図示された電子計算機38が設けられており、電子計算機38により、検出された回転位置に応じて切替部品16,18を連結解除位置から連結位置へ移動させることができる。
【0034】
検出装置36は、図1で特に概略図で図示され、かつエンコーダホイールとして形成されている、エンコーダ要素40を有する。エンコーダ要素40は、例えば、特に、歯32ごと及び歯溝34ごとにそれぞれ、少なくとも1つの極対42を有する。エンコーダ要素40、ひいては、極対42は、切替部品18と相対回転不能に接続されている。検出装置36は、更に、単にセンサとも称されるセンサ要素44を含み、センサ要素44は、ハウジング12及び/又は切替部品16と相対回転不能に接続されている。極対42は、エンコーダ要素40のエンコーダセグメントであり、センサ要素44によって検出することができる。センサ要素44は、例えば、未処理信号として形成されている、特に、電気的な、信号46を提供し、信号46は、検出された極対42ごとに、特に、正確に1つのパルスPを有する。その場合、エンコーダ要素40は、回転軸22周りに延びる(回転軸22を中心とする)エンコーダ要素40の円周方向に延びる、隣接する2つの極対42間の第1の空隙の第1の幅が、エンコーダ要素の円周方向に延びる、隣接する極対42間の第2の空隙の第2の幅よりも大きい、欠歯間とも称される欠歯箇所Fを有する。信号46において欠歯箇所Fは、信号46の隣接する2つのパルスP間の第1の間隔が、信号46の別のパルス間の第2の間隔よりも大きいことを特徴とする。欠歯箇所Fは、したがって、回転位置を基準場所又は基準位置として使用することができるように、回転位置のうち1つを特徴付けている。基準位置は、したがって、例えば、既知であり、ひいては、切替部品18の既知の位置は、切替部品16に対して相対的である。その基準位置に基づいて、爪の噛み合い時に噛み合い外れ位置にならない回転位置を算出又は特定することができる。それによって、爪切替要素14を、特に有利に噛み合わせることができる。
【符号の説明】
【0035】
10 切替装置
12 ハウジング
14 切替要素
16,18 切替部品
20 矢印
22 回転軸
24 切替歯切部
26 歯
28 歯溝
30 切替歯切部
32 歯
34 歯溝
36 検出装置
38 電子計算機
40 エンコーダ要素
42 極対
44 センサ要素
46 信号
F 欠歯箇所
P パルス
Z1,Z2 歯
図1