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特許7542749ストレス評価装置およびストレス評価システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】ストレス評価装置およびストレス評価システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20240823BHJP
【FI】
G06Q50/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023536230
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2021026954
(87)【国際公開番号】W WO2023002528
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向山 弘記
【審査官】松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-178222(JP,A)
【文献】特開2007-334446(JP,A)
【文献】特開平06-274095(JP,A)
【文献】特開2015-125578(JP,A)
【文献】特開2018-101366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想空間の仮想作業における被験者の姿勢および動きを示す検出情報を取得する検出情報取得部と、
前記仮想作業で用いられる仮想部材を示す仮想部材情報を取得する仮想部材情報取得部と、
前記検出情報および前記仮想部材情報に基づいて、被験者の部位ごとの動作のストレスに対応するスコアが設定されたデータから被験者の部位のスコアを抽出し、抽出した各部位のスコア、または、それらの組み合わせを総合的に評価して得られる被験者の身体全体のスコアを、前記仮想部材を用いた前記仮想作業を行っている被験者に掛かると想定される、前記仮想作業によるストレスの評価値として算出するストレス評価部と、
所定時間軸上の所定の点または所定の期間に被験者に掛かるストレスの評価値のデータを、表示部に表示する表示処理部と、を備え、
前記ストレス評価部は、被験者が前記仮想作業を行っている間に算出した前記仮想作業によるストレスの評価値のデータを所定の閾値と順次比較し、
前記表示処理部は、前記ストレス評価部によって算出されたストレスの評価値のデータが前記閾値を超えた場合、前記閾値を超えたストレスの評価値の時系列データを当該閾値以下である評価値のデータとは区別して表示する
ことを特徴とするストレス評価装置。
【請求項2】
前記仮想部材の材料特性を示す材料特性情報を取得する材料特性情報取得部を備え、
前記ストレス評価部は、前記検出情報、前記仮想部材情報、および前記材料特性情報に基づいて、前記材料特性の前記仮想部材を用いる前記仮想作業における被験者の姿勢および動きによって被験者に掛かるストレスを評価する
ことを特徴とする請求項1に記載のストレス評価装置。
【請求項3】
前記材料特性情報は、前記仮想部材の仮想的な質量、仮想的な密度、仮想的な体積、仮想的な熱伝導率、仮想的な表面の摩擦係数、仮想的な弾性率および材料部材の組み付け順の少なくとも一つを示す情報である
ことを特徴とする請求項に記載のストレス評価装置。
【請求項4】
前記ストレス評価部は、被験者の部位ごとに掛かる部分ストレスの評価値を算出する部分ストレス評価部と、被験者の身体全体に掛かる総合ストレスの評価値を算出する総合ストレス評価部との、少なくともいずれか一方を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載のストレス評価装置。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のストレス評価装置と、
前記仮想空間の前記仮想作業における被験者の姿勢および動きを検出し、検出した被験者の姿勢および動きを示す前記検出情報を前記ストレス評価装置に出力する検出部と、
前記仮想部材情報を記憶する記憶部と、
験者に掛かる前記ストレスの評価値のデータを表示する表示部と、を備えた
ことを特徴とするストレス評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、仮想空間の仮想作業を行う被験者のストレスを評価するストレス評価装置およびストレス評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、作業中の作業者に作用するストレスを計算機上で評価する技術が普及している。例えば、特許文献1には、仮想空間に、可動部分を備える製品の設計に基づく仮想モデルを配置し、製品の仮想モデルにおける可動部分を移動させたときにデジタルヒューマンに作用する負荷(ストレス)を評価する製品設計評価装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-44736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実空間の作業における作業者の一連の姿勢または動きによって当該作業者にはストレスが掛かる。すなわち、作業者の姿勢または動きの変化に伴って作業者に掛かるストレスも変化する。しかしながら、特許文献1に記載された従来の技術では、「製品の仮想モデルにおける可動部分を移動させる」という一定の動作のみに起因したストレスが評価対象である。このため、従来の技術は、仮想作業が模擬する作業を行っている被験者に掛かると想定されるストレスを評価できないという課題があった。
【0005】
本開示は上記課題を解決するものであり、仮想作業によって被験者に掛かると想定されるストレスを評価することができるストレス評価装置およびストレス評価システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るストレス評価装置は、仮想空間の仮想作業における被験者の姿勢および動きを示す検出情報を取得する検出情報取得部と、仮想作業で用いられる仮想部材を示す仮想部材情報を取得する仮想部材情報取得部と、検出情報および仮想部材情報に基づいて、被験者の部位ごとの動作のストレスに対応するスコアが設定されたデータから被験者の部位のスコアを抽出し、抽出した各部位のスコア、または、それらの組み合わせを総合的に評価して得られる被験者の身体全体のスコアを、仮想部材を用いた仮想作業を行っている被験者に掛かると想定される、仮想作業によるストレスの評価値として算出するストレス評価部と、所定時間軸上の所定の点または所定の期間に被験者に掛かるストレスの評価値のデータを、表示部に表示する表示処理部と、を備え、ストレス評価部は、被験者が仮想作業を行っている間に算出した仮想作業によるストレスの評価値のデータを所定の閾値と順次比較し、表示処理部は、ストレス評価部によって算出されたストレスの評価値のデータが閾値を超えた場合、閾値を超えたストレスの評価値の時系列データを当該閾値以下である評価値のデータとは区別して表示する
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、仮想空間の仮想作業における被験者の姿勢および動きを示す検出情報と、仮想作業において被験者が用いる仮想部材を示す仮想部材情報とに基づいて、仮想部材を用いた仮想作業を行っている被験者に掛かると想定される、仮想作業によるストレスの評価値を算出する。仮想作業における一連の姿勢および動きに起因したストレスの評価値を算出できるので、本開示に係るストレス評価装置は、仮想作業によって被験者に掛かると想定されるストレスを評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係るストレス評価システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係るストレス評価システムが備える検出部と仮想作業を行う被験者との関係の概要を示す説明図である。
図3】実施の形態1に係るストレス評価方法を示すフローチャートである。
図4図4Aは、実空間における被験者の映像を示す画面図であり、図4Bは、図4Aの被験者の視野映像を示す画面図であり、図4Cは、図4Aの被験者のストレスと時間との関係を示すグラフである。
図5図5Aは、実空間における被験者の映像を示す画面図であり、図5Bは、図5Aの被験者の視野映像を示す画面図であり、図5Cは、図5Aの被験者のストレスと時間との関係を示すグラフである。
図6図6Aは、実空間における被験者の映像を示す画面図であり、図6Bは、仮想空間における被験者の視野映像を示す画面図であり、図6Cは、被験者のストレスと時間との関係を示すグラフである。
図7図7Aは、実空間における被験者の映像を示す画面図であり、図7Bは、仮想空間における被験者の視野映像を示す画面図であり、図7Cは、被験者のストレスと時間との関係を示すグラフである。
図8図8Aは、実施の形態1に係るストレス評価装置の機能を実現するハードウェア構成を示すブロック図であり、図8Bは、実施の形態1に係るストレス評価装置の機能を実現するソフトウェアを実行するハードウェア構成を示すブロック図である。
図9】実施の形態2に係るストレス評価システムの構成の一例を示すブロック図である。
図10図10Aは、実空間における被験者の映像を示す画面図であり、図10Bは、仮想空間における被験者の視野映像を示す画面図であり、図10Cは、被験者のストレスと時間との関係を示すグラフである。
図11図11Aは、実空間における被験者の映像を示す画面図であり、図11Bは、仮想空間における被験者の視野映像を示す画面図であり、図11Cは、被験者のストレスと時間との関係を示すグラフである。
図12図12Aは、仮想空間における被験者の視野映像を示す画面図であり、図12Bは、被験者の各部位のストレス評価値を示す模式図であり、図12Cは、被験者の総合ストレスと時間との関係を示すグラフである。
図13】仮想作業を行っている被験者に生じたストレスの評価値の時系列データの表示例(1)を示す画面図である。
図14】仮想作業を行っている被験者に生じたストレスの評価値の時系列データの表示例(2)を示す画面図である。
図15】仮想空間で仮想作業を行う被験者の俯瞰映像を示す画面図である。
図16】被験者を模擬した模擬被験者を示す画面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るストレス評価システム1の構成の一例を示すブロック図である。図1において、ストレス評価システム1は、仮想空間の仮想作業を行っている被験者のストレスを評価するシステムである。仮想空間は、被験者が仮想作業を行う作業環境を仮想的に再現したものであり、作業環境を三次元画像で表現したものである。仮想作業は、実空間の作業を模擬した仮想的な作業であり、仮想空間で行われる。実空間において作業者によって行われる様々な作業は、仮想作業として模擬することが可能である。仮想部材は、例えば、仮想作業に用いられる、作業工具、作業台および製品部材を三次元画像で表現したものである。なお、仮想作業には、仮想工具を用いた作業の他に、被験者が仮想製品を運搬するような、仮想工具を用いない作業も含まれる。
【0010】
ストレス評価システム1は、図1に示すように、ストレス評価装置2、検出部3、表示部4およびCAD装置5を備える。ストレス評価システム1において、ストレス評価装置2が被験者のストレスを評価する。ストレス評価装置2によって評価されるストレスは、仮想作業を行っている被験者に掛かると想定される、仮想作業による身体的なストレス(負荷)である。例えば、被験者の身体的な負荷には、仮想作業において被験者の各部位に加わる負荷と、被験者の身体全体に加わる負荷とが含まれる。
【0011】
ストレス評価装置2は、検出部3、表示部4およびCAD装置5が、有線または無線で接続されたコンピュータであり、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレット端末およびスマートフォンのいずれかで実現される。また、ストレス評価装置2は、通信ネットワークを介して、検出部3、表示部4およびCAD装置5と接続されたサーバ装置であってもよい。
【0012】
ストレス評価装置2は、仮想部材を用いた仮想作業における被験者の姿勢および動きが検出されると、検出された姿勢および動きに起因した被験者のストレスを評価するための評価値を算出する。そして、ストレス評価装置2は、所定時間軸上の所定の点または所定の期間に被験者に掛かると想定される、仮想作業によるストレス(以下、適宜、単に「ストレス」と記載する)の評価値のデータを、表示部4に表示する。仮想部材は、実空間の部材ではないため、仮想部材情報に基づいて、作業に用いる部材を自由に設定することが可能である。ストレス評価装置2は、被験者Aに対して、様々な仮想部材を用いる様々な作業を行わせることができ、個々の作業を行った被験者Aに掛かるストレスを評価する。例えば、被験者に対し、バーナーを用いるロウ付け作業を行わせた後に、電動ドライバを用いたねじ止め作業を行わせることも可能である。また、同じロウ付け作業であっても、種類が異なるバーナーを用いた作業を連続して行わせることができ、また、作業の途中でバーナーの種類を変えることも可能である。ストレス評価装置2は、これらの作業の進行中に被験者に掛かるストレスを評価する。
【0013】
また、ストレス評価装置2は、被験者に掛かるストレスの評価値(スコア)として、被験者が姿勢または動きに応じたスコアを算出する。例えば、ストレス評価装置2は、被験者が行った動きに対応する瞬時的なストレスのスコアを算出する。瞬時的なストレスは、ある動きを行ったときに瞬間的に被験者に掛かるストレスである。例えば、被験者が重い荷物を持ち上げるときに掛かる瞬間的なストレスが瞬時的なストレスである。一方、ストレス評価装置2は、被験者の身体に掛かった継続的なストレスのスコアを算出する。継続的なストレスには、被験者が同じ姿勢を保つことにより時間経過に伴って増加(蓄積される)するストレスと、被験者が同じ動きを繰り返すことにより個々の動きに応じて連続して被験者に掛かるストレスがある。
【0014】
例えば、ストレス評価装置2は、被験者の部位ごとの動作のストレスに対応するスコアが設定されたテーブルデータから、指定された時刻において検出された部位の動作のスコアを検索し、検索で得られた部位ごとのスコアを用いて被験者の姿勢に起因したストレスの評価値を算出する。さらに、ストレス評価装置2は、テーブルデータから、指定された時間帯において動きが検出された各部位のスコアを検索し、検索で得られたスコアを用いて、被験者の動きに起因したストレスの評価値の時系列データを算出する。
【0015】
検出部3は、仮想空間の仮想作業における被験者の姿勢および動きを検出し、被験者の姿勢および動きを示す検出情報をストレス評価装置2に出力する。表示部4は、仮想作業を行っている被験者に掛かるストレスの評価値の時系列データをストレス評価装置2から受け取り、ストレスの評価値の時系列データを画面上に表示する。
【0016】
CAD装置5は、製品のコンピュータ支援設計(CAD)を行う装置であり、仮想部材に関するCADデータを生成して記憶部51に記憶する。仮想部材に関するCADデータは、仮想作業に用いられる仮想部材の三次元形状および寸法を示すデータである。
なお、記憶部51は、ストレス評価装置2が備えてもよいし、ストレス評価装置2およびCAD装置5とは別に設けられた外部装置が備える記憶装置であってもよい。
【0017】
ストレス評価装置2は、図1に示すように、検出情報取得部21、仮想部材情報取得部22、ストレス評価部23および表示処理部24を備える。検出情報取得部21は、仮想作業における被験者の姿勢および動きを示す検出情報を取得する。例えば、検出情報取得部21は、検出部3が実空間において連続的に撮影された被験者の映像データを検出情報として取得する。被験者の映像データは、三次元情報として処理される。被験者にマーカが装着されている場合、被験者の姿勢および動きを示す情報として、マーカの変位を示す三次元情報が上記映像データから取得される。
【0018】
仮想部材情報取得部22は、仮想作業において被験者が用いる仮想部材を示す仮想部材情報を取得する。例えば、仮想部材情報取得部22は、仮想部材情報として、記憶部51に記憶された仮想部材に関するCADデータと、検出部3によって検出された操作具の操作情報とを取得する。操作具は、実空間における被験者が把持するものであり、スティック型のコントローラであってもよいし、グローブ型のコントローラであってもよい。被験者の仮想空間における視野映像には、操作具が仮想部材として表示される。
【0019】
ストレス評価部23は、検出情報および仮想部材情報に基づいて、仮想部材を用いた仮想作業を行っている被験者に掛かると想定される、仮想作業によるストレスの評価値(スコア)を算出する。仮想部材は、実空間の部材ではなく、仮想部材情報に基づいて様々な部材を設定することが可能であるため、ストレス評価部23は、様々な部材を用いた様々な作業を行った被験者Aに掛かるストレスを評価することができる。例えば、互いに異なる部材を用いた作業を行わせ、それぞれの作業におけるストレスを評価することも可能である。例えば、ストレス評価部23は、被験者が行った動きに対応する瞬時的なストレスのスコアを算出する。一方、ストレス評価部23は、被験者が同じ姿勢を保つまたは同じ動作を繰り返すことにより被験者の身体に掛かる継続的なストレスのスコアを算出する。
【0020】
また、ストレス評価部23は、被験者に掛かるストレスのスコアとして、被験者が姿勢または動きに応じたスコアを算出する。ストレス評価部23は、部分ストレス評価部231および総合ストレス評価部232の両方またはいずれか一方を備える。なお、図1は、ストレス評価部23が、部分ストレス評価部231および総合ストレス評価部232の両方を備える場合を示している。部分ストレス評価部231は、検出情報および仮想部材情報に基づいて、被験者の部位ごとに掛かると想定されるストレスとして、仮想作業による部分ストレスの評価値を算出する。総合ストレス評価部232は、被験者の部位ごとに算出した部分ストレスの評価値の組み合わせを用いて被験者の身体全体のストレスを総合的に評価することにより、総合ストレスの評価値を算出する。
【0021】
例えば、テーブルデータは、被験者の特定の部位である、首、体幹、脚、上腕、下腕および手首の動作範囲が設定され、各動作範囲内の位置にある部位に、各動作範囲に対応するストレスのスコアが設定されているデータである。部分ストレス評価部231は、このテーブルデータに基づいて、仮想部材を用いた仮想作業を行っている被験者の部位ごとの姿勢および動きに応じたスコアを算出する。首の動作範囲は、首振りの程度を示す範囲である。被験者の顔が真正面を向いている位置を基準の首位置とした場合、基準の首位置から顎が胸に近づく方向に頭が移動したときに首の軸線がなす角度の範囲が、首の屈曲を示す動作範囲である。また、基準の首位置から顎が胸から遠ざかる方向に頭が移動したときに首の軸線がなす角度の範囲が、首の伸展を示す動作範囲である。
【0022】
表示処理部24は、所定時間軸上の所定の点または所定の期間において被験者に掛かるストレスの評価値の時系列データを、表示部4に表示する。例えば、表示処理部24は、被験者に係るストレスに対応した評価値(スコア)の時間的な変化を表す折れ線グラフを表示部4に表示する。例えば、被験者がある姿勢または動作を行い、この姿勢または動作に応じたスコアをストレス評価部23が算出した場合、表示処理部24が表示部4に表示させる折れ線は、この姿勢または動作に応じた変化を示す。
【0023】
例えば、表示処理部24は、表示部4に対して、閾値を超えるストレスの評価値の時系列データを、当該閾値以下の評価値の時系列データとは区別して表示する。表示処理部24は、ストレスの評価値の時系列データが閾値を超えたときに、ストレスの評価値の時系列データの表示領域を、警告色である赤色で表示する。
なお、これは一例である。すなわち、ストレスの評価値の時系列データが閾値を超えたことをユーザに報知できれば、別の色で表示領域を表示してもよいし、別の表示態様としてもよい。表示処理部24は、例えば、表示領域を発光させる、最も負荷が掛かった部位のスコアの色を変える、当該スコアの表示サイズを拡大する、といった表示処理を行ってもよい。
【0024】
また、ストレス評価部23が、ストレスの評価値の時系列データが閾値を超えたとき、上記操作具に内蔵された振動デバイスを振動させることで、仮想作業で過剰なストレスが掛かったことを、操作具を把持したユーザに対して触感的に報知してもよい。
さらに、ストレス評価部23は、ストレスの評価値に応して、操作具に内蔵された振動デバイスの振動パターン、強度または周波数の少なくとも一つを変化させてもよい。
【0025】
表示処理部24は、所定時間軸上の所定の点または所定の期間における部分ストレスの評価値の時系列データおよび総合ストレスの評価値の時系列データの少なくとも一方を、表示部4に表示する。例えば、表示処理部24は、部分ストレスの評価値の時系列データを部位ごとに数値で表示部4に表示し、さらに、総合ストレスの評価値の時系列データをグラフ表示する。
【0026】
検出部3は、第1のカメラ31、第2のカメラ32および操作部33を備える。第1のカメラ31は、実空間に複数台配置されたカメラであり、複数の撮影点から被験者を連続的に撮影する。第2のカメラ32は、被験者が装着しているヘッドマウントディスプレイ(HMD)42に取り付けられ、撮影範囲が被験者の視野と重なっているカメラである。第2のカメラ32は、被験者の実空間における視野映像を撮影する。
【0027】
操作部33は、実空間における被験者によって把持される操作具である。例えば、操作部33は、前述したように、被験者の左右の手で把持されるスティック型のコントローラである。また、操作部33は、被験者の左右の手に装着されたグローブ型のコントローラであってもよい。被験者が、左右の手で持った操作部33を操作することで、仮想空間では、仮想作業に用いられる仮想工具が操作される。
【0028】
表示部4には、モニタ装置41およびHMD42が含まれる。モニタ装置41は、ストレス評価装置2が備える表示部である。また、モニタ装置41は、ストレス評価装置2とは別に設けられた外部装置が備えてもよい。外部装置は、例えば、PC、タブレット端末およびスマートフォンであってもよい。また、HMD42は、被験者の視界を覆うように装着され、仮想空間を表す三次元映像を被験者の視界領域に表示する。さらに、表示処理部24は、ストレス評価装置2とは別に設けられたモニタ装置41が備えてもよい。この場合、ストレス評価装置2がモニタ装置41にアクセスし、ストレスの評価値の時系列データをモニタ装置41に送信して表示させる。
【0029】
図2は、ストレス評価システム1が備える検出部3と仮想作業を行う被験者Aとの関係の概要を示す説明図である。ストレス評価装置2は、仮想作業中の被験者Aの姿勢および動きを検出するために、例えば光学式モーションキャプチャを用いる。光学式モーションキャプチャにおいて、ストレス評価装置2は、第1のカメラ31A、31Bおよび31Cによって撮影された被験者Aの映像データを画像解析することにより、被験者Aの姿勢および動きの三次元情報を生成する。図2に示すように、被験者Aは、HMD42を装着しており、右手に操作具33Aを持ち、左手に操作具33Bを持ち、さらに身体の複数の特定の部位にマーカ6が取り付けられている。
なお、ストレス評価システム1は、光学式モーションキャプチャに限定されるものではない。
【0030】
例えば、ストレス評価システム1は、被験者Aに装着された慣性センサが検出した加速度、角速度および方位の情報を被験者Aの骨格モデルに当てはめて身体の動きを計測する慣性センサシステムを使用してもよい。また、ストレス評価システム1は、キャプチャ空間に発生させた磁界を、被験者Aに装着された磁気センサで検出し、磁気センサによって検出された磁界に基づいて身体の動きを計測する磁気式モーションキャプチャシステムを使用してもよい。装着型モーションセンサは、被験者Aの関節に機械的に角度を計測する装置であってもよい。
【0031】
ストレス評価システム1は、被験者Aにモーションセンサを装着しないビデオ式(画像式)モーションキャプチャシステムを使用してもよい。ビデオ式のモーションキャプチャは、複数台のカメラを使って被験者Aの動きを追跡するものであり、被験者Aにマーカまたはセンサを装着しなくても、被験者Aの姿勢および動きの計測が可能である。
【0032】
また、ストレス評価システム1は、例えば、HTC VIVE(登録商標)、または、Oculus Rift(登録商標)等が提供するHMDを用いたモーションキャプチャシステムを使用してもよい。このHMDは、被験者Aの頭部に装着されることによって、被験者Aの頭部の動きを追跡して被験者Aの位置および姿勢を検出する。このモーションキャプチャシステムは、HMDに取り付けられたセンサによって被験者Aの位置および姿勢が検出された結果を、仮想空間を示す三次元映像にフィードバックする。これにより、被験者Aの頭部の動きに応じた視点位置から見た三次元映像を、被験者Aに提示することが可能である。
【0033】
ストレス評価システム1は、マーカレスモーションキャプチャシステムとして、マイクロソフト社のKinect(登録商標)を用いたモーションキャプチャ、あるいは、AIを用いて、1視点または複数視点からのRGB画像を画像解析して被験者Aのモーションデータを取得するモーションキャプチャを使用してもよい。
なお、モーションキャプチャには、前述のいずれかのシステムを用いてもよいし、個々の部品を組み合わせて用いてもよい。例えば、VIVEのHMDを用い、被験者の動きのトラッキングにKinectを用いる。
ストレス評価システム1が使用するモーションキャプチャには、マーカレスモーションキャプチャシステムが好ましいが、以降、一例として、ストレス評価システム1が、光学式モーションキャプチャを使用する場合について説明する。
【0034】
ストレス評価装置2は、仮想作業を行っている被験者Aの姿勢および動きを示す情報として、上記三次元情報として、マーカ6の変位を示す情報を生成する。第2のカメラ32は、撮影範囲が被験者Aの視野と重なっているカメラであり、被験者Aの実空間における視野映像を撮影する。仮想作業を行う前の被験者Aに対して、第2のカメラ32によって撮影された視野映像をHMD42に表示してもよい。被験者Aが仮想作業を開始すると、HMD42には、被験者Aの視野範囲内の仮想空間の映像が表示される。
【0035】
図2において、被験者Aが持つ操作具33Aおよび操作具33Bは、それぞれ、スティック型コントローラである。被験者Aは、操作具33Aおよび33Bを操作することにより、仮想部材である仮想工具が操作される。ストレス評価装置2は、被験者Aの視野映像として仮想空間を表示し、さらに、操作具33Aおよび33Bの動きに合わせて仮想工具が動く三次元映像を表示する。これにより、被験者Aは仮想作業を行うことができる。
【0036】
図3は、実施の形態1に係るストレス評価方法を示すフローチャートであって、図1に示したストレス評価装置2による一連の動作を示している。検出情報取得部21が、仮想作業における被験者Aの姿勢および動きを示す検出情報を検出部3から取得する(ステップST1)。検出情報は、検出情報取得部21からストレス評価部23および表示処理部24に出力される。
【0037】
仮想部材情報取得部22が、仮想作業において被験者Aが用いる仮想部材を示す仮想部材情報を、検出部3およびCAD装置5から取得する(ステップST2)。仮想部材情報は、検出情報取得部21からストレス評価部23および表示処理部24に出力される。
【0038】
ストレス評価部23が、検出情報および仮想部材情報に基づいて、仮想部材を用いた仮想作業を行っている被験者Aに掛かる仮想作業によるストレスの評価値を算出する(ステップST3)。例えば、ストレス評価部23は、被験者Aの部位ごとのスコアが設定されたテーブルデータを検索し、指定した時刻において検出された被験者Aの部位のスコアを抽出し、各部位のスコアの組み合わせを総合的に評価して被験者Aの身体全体のスコアを算出する。ストレス評価部23は、周期的にスコアを算出することにより被験者Aの姿勢および動きに起因したストレスの評価値の時系列データを算出する。
【0039】
表示処理部24が、検出情報および仮想部材情報に基づいて、ストレスの評価値の時系列データを用いることにより、所定時間軸上の所定の点または所定の期間に被験者Aに掛かるストレスの評価値の時系列データを、表示部4に表示する(ステップST4)。例えば、表示処理部24は、被験者Aの視野映像として、仮想部材を用いた仮想作業の三次元映像をHMD42に表示する。
【0040】
また、表示処理部24は、現在時刻から過去に一定時間遡った期間内に指定された時刻または指定された時間帯において被験者Aに掛かるストレスの評価値の時系列データを、モニタ装置41に表示する。例えば、ストレス評価装置2は、被験者Aに掛かるストレス(身体に掛かる負荷)の評価結果を、下記のように表示部4に表示する。ユーザは、表示部4に表示された情報により、仮想作業を行うことにより被験者Aに掛かる負荷を視覚的に把握することができる。なお、ストレス評価装置2が表示処理部24を備えず、モニタ装置41が備える構成要素である場合には、ステップST4の処理は、モニタ装置41の動作となる。
【0041】
図4Aは、実空間における被験者Aの映像を示す画面図である。図4Bは、図4Aの被験者Aの視野映像を示す画面図であり、HMD42の画面42Aを示している。また、図4Cは、図4Aの被験者Aのストレスと時間との関係を示すグラフであり、モニタ装置41の画面41Aに表示されたストレスのスコアの折れ線グラフを示している。図4A図4Bおよび図4Cにおいて、仮想作業は、配管をロウ付けで接続する作業である。被験者Aは、頭にHMD42を装着しており、右手に操作具33Aを持ち、左手に操作具33Bを持っている。図4Aに示すように、被験者Aは屈んだ状態で上記仮想作業を行っている。ロウ付け作業には、バーナー33A1およびロウ材33B1が用いられる。
【0042】
表示処理部24は、検出情報取得部21によって順次取得される検出情報に基づいて、画面42Aにおける被験者Aの手元の位置を連続的に特定する。これにより、表示処理部24は、連続的に特定された被験者Aの手元の位置に基づいて、図4Bに示すように、HMD42の画面42Aに、バーナー33A1の画像を表示し、ロウ材33B1の画像を表示する。さらに、表示処理部24は、被験者Aが操作具33Aを操作すると、バーナー33A1の火勢を変化させた画像をHMD42の画面42Aに表示する。
【0043】
図4Bに示すように、ロウ付け対象の配管は、符号Bで示す床面に近い低い場所に設けられている。このため、図4Aに示すように、被験者Aは、屈んだ状態で当該配管のロウ付け作業を行うことになる。ストレス評価部23は、仮想的なロウ付け作業を行う被験者Aに掛かるストレスを連続的に評価する。例えば、部分ストレス評価部231が、被験者Aの姿勢および動きが連続的に検出した検出情報に基づいて、被験者Aの部位ごとに掛かる部分ストレスの評価値を順次算出する。総合ストレス評価部232は、被験者Aの部位ごとに算出された部分ストレスの評価値を用いて、総合ストレスの評価値を算出する。
【0044】
表示処理部24は、部分ストレスの評価値の時系列データおよび総合ストレスの評価値の時系列データをモニタ装置41の画面41Aに表示する。例えば、被験者Aの部位は、図4Cに示すように、首(NECK)、体幹(TRUNK)、脚(LEGS)、上腕(UPPER_ARMS)、下腕(LOWER_ARMS)および手首(WRISTS)である。画面41Aには、仮想的なロウ付け作業における、首、体幹、脚、上腕、下腕および手首の動きに応じたストレス(負荷)の評価値(スコア)が表示される。脚、上腕、下腕および手首については、左右の値が表示される。画面41Aに表示された「SCORE」は、総合ストレス評価部232によって算出された総合ストレスの評価値である。これらの評価値は、現在時刻における値である。
【0045】
表示処理部24は、図4Cに示すように、現在時刻から一定の時間遡った期間における総合ストレスの評価値の時系列データE1を表示する。ここで、一定の時間は、例えば、30秒程度である。また、現在時刻とは、被験者Aについての最新のストレスの評価値が算出された時刻である。図4Cに示すグラフにおける右端の時刻が現在時刻である。当該グラフには、現在時刻から一定の時間(30秒)遡った期間における総合ストレスの評価値の時系列データE1が連続的に表示されている。
【0046】
被験者Aが屈んだ状態でロウ付け作業を行う前では、被験者Aの総合ストレスの評価値が閾値Th以下になっている。すなわち、被験者Aの身体に掛かっているストレス(負荷)は低い状態である。この状態から被験者Aが屈む姿勢をとると、ストレスが上昇していく。被験者Aが屈んだ姿勢となり、この姿勢に応じたストレスが被験者Aに掛かると、被験者Aが屈んでいる間、このストレスが継続的に被験者Aに掛かることになる。被験者Aが屈んだ状態で仮想的なロウ付け作業を開始すると、バーナー33A1およびロウ材33B1の使用に応じたストレスの評価値も上昇する。これにより、被験者Aに掛かる総合ストレスの評価値が閾値Thを超える。
【0047】
表示処理部24は、図4Cに示すように、ストレスの評価値の時系列データE1が閾値Thを超えると、閾値Thを超えた時点からの期間における、ストレスの評価値の時系列データE1の表示領域Cを、赤色で表示する。ユーザは、図4Cのグラフを視認することにより、被験者Aが行っている仮想作業が、作業者に高いストレス(負荷)を与える改善すべき作業であると認識できる。
【0048】
図5Aは、実空間における被験者Aの映像を示す画面図である。図5Bは、図5Aの被験者Aの視野映像を示す画面図であり、HMD42の画面42Aを示している。また、図5Cは、図5Aの被験者Aのストレスと時間との関係を示すグラフであり、モニタ装置41の画面41Aに表示されたストレスのスコアの折れ線グラフを示している。図5A図5Bおよび図5Cにおいて、仮想作業は、配管をロウ付けで接続する作業である。図4と同様に、被験者Aは、第2のカメラ32を有したHMD42を装着しており、右手に操作具33Aを持ち、左手に操作具33Bを持っている。図5Aに示すように、被験者Aは立った状態で上記仮想作業を行っている。
【0049】
表示処理部24は、画面42A上で連続的に特定した被験者Aの手元の位置に基づいて、図5Bに示すように、HMD42の画面42Aにバーナー33A1の画像を表示し、HMD42の画面42Aにロウ材33B1の画像を表示する。図4と同様に、表示処理部24は、仮想部材情報として取得された操作具33Aの操作情報に応じて、バーナー33A1の火勢を変化させた画像を、HMD42の画面42Aに表示する。
【0050】
図5Bにおいて符号Bで示すように、ロウ付け対象の配管は、仮想部材である作業台に載せられ、床面から60(cm)ほど高い場所での作業可能になっている。このため、図5Aに示すように、被験者Aは、立った状態で配管のロウ付け作業を行うことができる。ストレス評価部23は、仮想的なロウ付け作業を行う被験者Aに掛かるストレスを連続的に評価する。例えば、部分ストレス評価部231が、被験者Aの姿勢および動きが連続的に検出した検出情報に基づいて、被験者Aの部位ごとに掛かる部分ストレスの評価値を、順次算出する。総合ストレス評価部232は、部分ストレス評価部231によって被験者Aの部位ごとに算出された部分ストレスの評価値を用いて、総合ストレスの評価値を算出する。
【0051】
表示処理部24は、部分ストレスの評価値の時系列データおよび総合ストレスの評価値の時系列データを、モニタ装置41の画面41Aに表示する。例えば、図4と同様に、被験者Aの部位は、首(NECK)、体幹(TRUNK)、脚(LEGS)、上腕(UPPER_ARMS)、下腕(LOWER_ARMS)および手首(WRISTS)である。
表示処理部24は、図5Cに示すように、現在時刻から一定の時間遡った期間における総合ストレスの評価値の時系列データE2を表示する。図5Cに示すグラフにおける右端の時刻が現在時刻である。当該グラフには、現在時刻から一定の時間(例えば、30秒)遡った期間における総合ストレスの評価値の時系列データE2が連続的に表示される。
【0052】
被験者Aが立った状態で行う仮想的なロウ付け作業においては、被験者Aには、バーナー33A1およびロウ材33B1を扱うことによるストレスが掛かる。ただし、被験者Aが屈む姿勢をとらないので、ロウ付け作業を行う被験者Aに掛かるストレスの評価値は、被験者Aが屈む場合より変化せず、総合ストレスの評価値の時系列データE2は閾値Th以下となる。ユーザは、図5Cのグラフを視認することにより、被験者Aが行っている仮想作業が、ストレス(負荷)の低い適切な作業であると認識できる。図4Cのグラフと図5Cのグラフとを視認して比較することにより、ユーザは、作業者が屈んでロウ付け作業行うより、ロウ付け作業を立って行った方が、作業者に掛かるストレスが低いことを認識できる。
【0053】
ストレス評価装置2は、図4Aに示した被験者Aが屈んだ状態で行うロウ付け作業が、高いストレスが掛かる作業であることを認識すると、被験者Aの屈み具合を徐々に変えて最もストレスが少ないロウ付け作業を探索することができる。例えば、ストレス評価装置2は、仮想的なロウ付け作業の仮想な作業台の高さを徐々に変えて、その都度、ロウ付け作業を行う被験者Aに掛かるストレスを評価する。作業台の高さを61(cm)としたロウ付け作業によるストレスを評価し、続いて、作業台の高さを60(cm)としたロウ付け作業によるストレスを評価し、さらに、作業台の高さを59(cm)としたロウ付け作業によるストレスを評価する。作業台の高さを60(cm)したときのストレスの評価値が最小であった場合、ストレス評価装置2は、このロウ付け作業を最もストレスが少ない作業であると決定する。これにより、ストレスが最も少ない作業が探索され提案される。
【0054】
図6Aは、実空間における被験者Aの映像を示す画面図である。図6Bは、仮想空間における被験者Aの視野映像を示す画面図であり、HMD42の画面42Aを示している。図6Cは、被験者Aのストレスと時間との関係を示すグラフであり、モニタ装置41の画面41Aを示している。図6A図6Bおよび図6Cにおいて、仮想作業は、被験者Aが仮想部材である電動ドライバ61を手に取る作業である。図4および図5と同様に、被験者Aは、HMD42を装着し、右手に操作具33Aを持ち、左手に操作具33Bを持っている。図6Aに示すように、被験者Aは、身体から遠い位置にある電動ドライバ61を手に取る仮想作業を行っている。
【0055】
表示処理部24は、検出情報取得部21によって順次取得される検出情報に基づいて、画面42A上の被験者Aの手元の位置を連続的に特定する。これにより、表示処理部24は、連続的に特定した被験者Aの手元の位置に基づいて、図6Bに示すように、HMD42の画面42Aに、電動ドライバ61の画像を表示する。被験者Aは、操作具33Aを操作すると、電動ドライバ61を手に取ることができる。すなわち、表示処理部24は、仮想部材情報として取得された操作具33Aの操作情報に応じて、被験者Aが電動ドライバ61を手に取る三次元映像をHMD42の画面42Aに表示する。
【0056】
図6Bに示すように、電動ドライバ61は、被験者Aの身体から遠い位置に配置されている。このため、被験者Aは、図6Aに示すように、腕を伸ばして電動ドライバ61を手に取ることになる。ストレス評価部23は、電動ドライバ61を手に取るときに被験者Aに掛かるストレスを連続的に評価する。例えば、部分ストレス評価部231が、被験者Aの姿勢および動きが連続的に検出した検出情報に基づいて、被験者Aの部位ごとに掛かる部分ストレスの評価値を順次算出する。総合ストレス評価部232は、部分ストレス評価部231によって被験者Aの部位ごとに算出された部分ストレスの評価値を用いて、被験者Aの身体全体のストレスを総合的に評価した総合ストレスの評価値を算出する。
【0057】
表示処理部24は、部分ストレスの評価値の時系列データおよび総合ストレスの評価値の時系列データをモニタ装置41の画面41Aに表示する。例えば、被験者Aの部位は、図6Cに示すように、首(NECK)、体幹(TRUNK)、脚(LEGS)、上腕(UPPER_ARMS)、下腕(LOWER_ARMS)、および手首(WRISTS)である。画面41Aには、仮想部材である電動ドライバ61を手に取る仮想作業における、首、体幹、脚、上腕、下腕および手首の動きに応じたストレスの評価値が表示される。脚、上腕、下腕および手首については、左右の値が表示される。画面41Aに表示された「SCORE」は、総合ストレス評価部232によって算出された総合ストレスの評価値である。これらの評価値は、現在時刻における値である。
【0058】
表示処理部24は、図6Cに示すように、現在時刻から一定の時間遡った期間における総合ストレスの評価値の時系列データE3を表示する。図4および図5と同様に、一定の時間は、例えば、30秒程度である。また、現在時刻とは、被験者Aについての最新のストレスの評価値が算出された時刻である。図6Cに示す折れ線グラフにおける右端の時刻が現在時刻である。当該グラフには、現在時刻から一定の時間(30秒)遡った期間における総合ストレスの評価値の時系列データE3が連続的に表示されている。
【0059】
被験者Aが身体から遠い位置にある電動ドライバ61を手に取ろうとすると、被験者Aが右腕を伸ばすことにより両脚にも力が掛かるため、両脚、上腕、手首に掛かるストレスの評価値が上昇する。表示処理部24は、図6Cに示すように、ストレスの評価値の時系列データE3が閾値Thを超えると、閾値Thを超えた時点からの期間における、ストレスの評価値の時系列データE3の表示領域C1、C2およびC3を、赤色で表示する。ユーザは、図6Cのグラフを視認することにより、被験者Aが行っている仮想作業が、作業者に高いストレス(負荷)を与える改善すべき作業であると認識できる。
【0060】
図7Aは、実空間における被験者Aの映像を示す画面図である。図7Bは、仮想空間における被験者Aの視野映像を示す画面図であり、HMD42の画面42Aを示している。また、図7Cは、被験者Aのストレスと時間との関係を示すグラフであり、モニタ装置41の画面41Aを示している。図7A図7Bおよび図7Cにおいて、仮想作業は、被験者Aが電動ドライバ61を手に取る作業である。図6と同様に、被験者Aは、HMD42を頭に装着し、右手に操作具33Aを持ち、左手に操作具33Bを持っている。
【0061】
表示処理部24は、画面42A上の連続的に特定した被験者Aの手元の位置に基づいて、図7Bに示すように、HMD42の画面42Aに電動ドライバ61を表示する。図6と同様に、表示処理部24は、仮想部材情報として取得された操作具33Aの操作情報に応じて、電動ドライバ61を手に取る映像をHMD42の画面42Aに表示する。
【0062】
図7Bに示すように、電動ドライバ61は、被験者Aに近い位置に配置され、図7Aに示すように、被験者Aは、身体に近い位置で電動ドライバ61を手に取ることができる。ストレス評価部23は、被験者Aに掛かるストレスを連続的に評価する。例えば、部分ストレス評価部231が、被験者Aの姿勢および動きが連続的に検出した検出情報に基づいて、被験者Aの部位ごとに掛かる部分ストレスの評価値を順次算出する。総合ストレス評価部232は、部分ストレス評価部231によって被験者Aの部位ごとに算出された部分ストレスの評価値の組み合わせを用いて、被験者Aの身体全体のストレスを総合的に評価した総合ストレスの評価値を算出する。
【0063】
表示処理部24は、部分ストレスの評価値の時系列データおよび総合ストレスの評価値の時系列データを、モニタ装置41の画面41Aに表示する。例えば、図6と同様に、被験者Aの部位は、首(NECK)、体幹(TRUNK)、脚(LEGS)、上腕(UPPER_ARMS)、下腕(LOWER_ARMS)および手首(WRISTS)である。
表示処理部24は、図7Cに示すように、現在時刻から一定の時間遡った期間における総合ストレスの評価値の時系列データE4を表示する。図7Cに示すグラフにおける右端の時刻が現在時刻である。当該グラフには、現在時刻から一定の時間(例えば、30秒)遡った期間における総合ストレスの評価値の時系列データE4が連続的に表示される。
【0064】
被験者Aが身体に近い位置にある電動ドライバ61を手に取る作業において、被験者Aには、特に、電動ドライバ61を把持した手の手首にストレスが掛かるが、その他の部位に掛かるストレスの評価値は殆ど変化しないので、総合ストレスの評価値の時系列データE4は閾値Th以下となる。このため、ユーザは、図7Cのグラフを視認することで、被験者Aが行っている仮想作業がストレス(負荷)の低い適切な作業であると認識できる。
【0065】
なお、図4図5図6および図7において、被験者Aの視野映像情報(仮想作業の三次元映像)をHMD42の画面42Aに表示する場合を示したが、これに限定されるものではない。例えば、表示処理部24は、被験者Aの視野映像情報をモニタ装置41の画面41Aに表示してもよい。ユーザは、モニタ装置41の画面41Aに表示された視野映像情報を視認することにより、被験者Aの視野を共有することができる。これは、作業訓練に有効である。例えば、被験者Aが熟練の作業者である場合、ユーザは、熟練の作業者がどのような視点で作業を行っているのかを把握することできる。
【0066】
また、表示処理部24は、表示処理部24は、指定された時刻または指定された時間帯における被験者Aの視野映像情報を、モニタ装置41の画面41Aに表示してもよい。
例えば、ユーザが入力装置(不図示)を用いて任意の時刻または時間帯を指定することにより、表示処理部24は、指定された時刻または指定された時間帯における被験者Aの視野映像情報を、モニタ装置41の画面41Aに表示する。ユーザは、モニタ装置41の画面41Aに表示された視野映像情報を視認することにより、被験者Aが行う仮想作業における任意の時刻または時間帯の被験者Aの視野を共有することができる。
【0067】
ストレス評価装置2における検出情報取得部21、仮想部材情報取得部22、ストレス評価部23および表示処理部24の機能は、処理回路により実現される。すなわち、ストレス評価装置2は、図3に示したステップST1からステップST4の処理を実行するための処理回路を備える。処理回路は、専用のハードウェアであってもよいが、メモリに記憶されたプログラムを実行するCPUであってもよい。
【0068】
図8Aは、ストレス評価装置2の機能を実現するハードウェア構成を示すブロック図である。図8Bは、ストレス評価装置2の機能を実現するソフトウェアを実行するハードウェア構成を示すブロック図である。図8Aおよび図8Bにおいて、入力インタフェース100は、検出部3またはCAD装置5からストレス評価装置2へ出力されるデータを中継するインタフェースである。出力インタフェース101は、ストレス評価装置2から表示部4へ出力される情報を中継するインタフェースである。
【0069】
処理回路が図8Aに示す専用のハードウェアの処理回路102である場合、処理回路102は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、または、これらを組み合わせたものが該当する。ストレス評価装置2における検出情報取得部21、仮想部材情報取得部22、ストレス評価部23および表示処理部24の機能を別々の処理回路で実現してもよく、これらの機能をまとめて一つの処理回路で実現してもよい。
【0070】
処理回路が図8Bに示すプロセッサ103である場合、ストレス評価装置2における、検出情報取得部21、仮想部材情報取得部22、ストレス評価部23および表示処理部24の機能は、ソフトウェア、ファームウェアまたはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現される。なお、ソフトウェアまたはファームウェアは、プログラムとして記述されてメモリ104に記憶される。
【0071】
プロセッサ103は、メモリ104に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、ストレス評価装置2における、検出情報取得部21、仮想部材情報取得部22、ストレス評価部23および表示処理部24の機能を実現する。例えば、ストレス評価装置2は、プロセッサ103によって実行されるときに、図3に示したステップST1からステップST4の処理が結果的に実行されるプログラムを記憶するためのメモリ104を備える。これらのプログラムは、検出情報取得部21、仮想部材情報取得部22、ストレス評価部23および表示処理部24が行う処理の手順または方法を、コンピュータに実行させる。
【0072】
メモリ104は、コンピュータを、検出情報取得部21、仮想部材情報取得部22、ストレス評価部23および表示処理部24として機能させるためのプログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体であってもよい。メモリ104は、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROMなどの不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVDなどが該当する。
【0073】
ストレス評価装置2における検出情報取得部21、仮想部材情報取得部22、ストレス評価部23および表示処理部24の機能の一部を専用のハードウェアにより実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアにより実現してもよい。
例えば、検出情報取得部21および仮想部材情報取得部22は、専用のハードウェアである処理回路102によってその機能を実現する。ストレス評価部23および表示処理部24は、プロセッサ103がメモリ104に記憶されたプログラムを読み出して実行することによりその機能を実現してもよい。
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組み合わせにより上記機能を実現することができる。
【0074】
以上のように、実施の形態1に係るストレス評価装置2は、仮想空間の仮想作業における被験者Aの姿勢および動きを示す検出情報と、仮想作業において被験者Aが用いる仮想部材を示す仮想部材情報に基づいて、仮想部材を用いた仮想作業を行っている被験者Aに掛かると想定される、仮想作業によるストレスの評価値を算出する。仮想作業が模擬する作業における一連の姿勢および動きに起因した仮想的なストレスの評価値を算出できるので、ストレス評価装置2は、仮想作業によって被験者Aに掛かると想定されるストレスを評価することができる。
【0075】
実施の形態1に係るストレス評価装置2において、表示部4に対して、所定時間軸上の所定の点または所定の期間に被験者Aに掛かるストレスの評価値のデータを表示する表示処理部24を備える。ユーザは、表示部4に表示された評価値のデータを視認することで、仮想作業において被験者Aに掛かるストレスを把握できる。
【0076】
実施の形態1に係るストレス評価装置2は、仮想ストレスとして被験者Aの部位ごとに掛かる部分ストレスの評価値を算出する部分ストレス評価部231と、仮想ストレスとして被験者Aの身体全体に掛かる総合ストレスの評価値を算出する総合ストレス評価部232との、少なくとも一方を備える。これにより、ストレス評価装置2は、仮想作業において、被験者Aの部位ごとに掛かるストレスを評価でき、さらに、被験者Aの部位ごとに掛かるストレスを身体全体で総合した評価を行うことができる。
【0077】
実施の形態1に係るストレス評価装置2において、表示処理部24は、表示部4に対して、所定時間軸上の部分ストレスの評価値の時系列データおよび総合ストレスの評価値の時系列データの少なくとも一方を表示する。ユーザは、表示部4に表示された評価値の時系列データを視認することで、仮想作業において、被験者Aの部位ごとに掛かるストレスを把握でき、さらに、被験者Aの身体全体のストレスを把握することができる。
【0078】
実施の形態2.
図9は、実施の形態2に係るストレス評価システム1Aの構成の一例を示すブロック図である。図9において、ストレス評価システム1Aは、実施の形態1と同様に、仮想空間の仮想作業を行っている被験者のストレスを評価するシステムである。ストレス評価システム1Aは、ストレス評価装置2A、検出部3、表示部4およびCAD装置5を備える。ストレス評価装置2Aは、図9に示すように、検出情報取得部21、仮想部材情報取得部22、ストレス評価部23A、表示処理部24および材料特性情報取得部25を備える。
【0079】
図9において、CAD装置5は、仮想部材に関するCADデータを生成して記憶部51に記憶する。仮想部材に関するCADデータには、仮想作業に用いられる仮想部材の三次元形状および寸法を示すデータに加えて、仮想部材の材料特性を示すメタデータが含まれる。なお、記憶部51は、ストレス評価装置2が備えてもよいし、ストレス評価装置2およびCAD装置5とは別に設けられた外部装置が備える記憶装置であってもよい。
【0080】
材料特性情報取得部25は、仮想部材の材料特性を示す材料特性情報を取得する。例えば、材料特性情報取得部25は、材料特性情報として、記憶部51に記憶された仮想部材に関するCADデータに含まれる上記メタデータを取得する。材料特性情報は、例えば、仮想部材の仮想的な質量、密度、仮想的な体積、仮想的な熱伝導率、仮想的な表面の摩擦係数、仮想的な弾性率および材料部材の組み付け順の少なくとも一つを示す情報である。
【0081】
ストレス評価部23Aは、検出情報、仮想部材情報、および材料特性情報に基づいて、材料特性の仮想部材を用いた仮想作業における姿勢および動きが被験者Aに作用するストレスを評価する。例えば、ストレス評価部23Aは、材料特性情報に含まれる仮想部材の材料の密度および体積に基づいて、仮想部材の質量を求め、仮想部材の質量が被験者Aに与えるストレスを評価することができる。また、ストレス評価部23Aは、材料特性情報に含まれる仮想部材の表面の摩擦係数に基づいて、仮想部材の触感が被験者Aに与えるストレスを評価することができる。さらに、ストレス評価部23Aは、材料特性情報に含まれる仮想部材の材料の熱伝導率に基づいて、仮想部材の熱処理における被験者Aのストレスを評価することができる。ストレス評価部23Aは、材料特性情報に含まれる仮想部材の弾性率に基づいて、仮想部材の取り付け処理が被験者Aに与えるストレスを評価することができる。ストレス評価部23Aは、材料特性情報に含まれる、仮想部材の材料部材の組み付け順に基づいて、仮想部材の組み付け処理が被験者Aに与えるストレスを評価することができる。
【0082】
実施の形態1における仮想部材は、材料特性が予め決定されている。これに対し、実施の形態2における仮想部材は、材料特性情報における材料特性データを変更することで、同じ部材であっても、その材料特性を変更することが可能である。さらに、同じ作業であっても、図10および図11に示すように、その作業に使用される部材の材料特性を変更することが可能である。
【0083】
図10Aは、実空間における被験者Aの映像を示す画面図である。図10Bは、仮想空間における被験者Aの視野映像を示す画面図であり、HMD42の画面42Aを示している。また、図10Cは、被験者Aのストレスと時間との関係を示すグラフであり、モニタ装置41の画面41Aを示している。図10A図10Bおよび図10Cにおいて、仮想作業は、仮想部材200を持ち上げる作業である。被験者Aは、第2のカメラ32を有したHMD42を装着しており、右手に操作具33Aを持ち、左手に操作具33Bを持っている。
【0084】
図10Bにおいて符号Fで示すように、仮想部材200の重量は「30kg」である。このため、図10Aに示すように、被験者Aは、仮想部材200を持ち上げるために屈んだ状態になる。ストレス評価部23Aは、仮想部材200を持ち上げる被験者Aに掛かるストレスを連続的に評価する。例えば、部分ストレス評価部231Aが、被験者Aの姿勢および動きが連続的に検出した検出情報に基づいて、被験者Aの部位ごとに掛かる部分ストレスの評価値を順次算出する。総合ストレス評価部232Aは、被験者Aの部位ごとに算出された部分ストレスの評価値を用いて、総合ストレスの評価値を算出する。
【0085】
表示処理部24は、部分ストレスの評価値の時系列データおよび総合ストレスの評価値の時系列データを、モニタ装置41の画面41Aに表示する。被験者Aの部位は、図4と同様に、首(NECK)、体幹(TRUNK)、脚(LEGS)、上腕(UPPER_ARMS)、下腕(LOWER_ARMS)および手首(WRISTS)である。画面41Aには、仮想部材を持ち上げる作業における、首、体幹、脚、上腕、下腕および手首の動きに応じたストレス(負荷)の評価値(スコア)が表示される。脚、上腕、下腕および手首については、左右の値が表示される。画面41Aに表示された「SCORE」は、総合ストレス評価部232Aによって算出された総合ストレスの評価値である。これらの評価値は、現在時刻における値である。
【0086】
表示処理部24は、図10Cに示すように、現在時刻から一定の時間遡った期間における総合ストレスの評価値の時系列データE4を表示する。一定の時間は、例えば、30秒程度である。また、現在時刻とは、被験者Aについての最新のストレスの評価値が算出された時刻である。図10Cに示すグラフにおける右端の時刻が現在時刻である。当該グラフには、現在時刻から一定の時間(30秒)遡った期間における総合ストレスの評価値の時系列データE4が連続的に表示される。
【0087】
被験者Aが仮想部材200を持ち上げる作業を行う前では、被験者Aの総合ストレスの評価値が閾値Th以下になっている。すなわち、被験者Aの身体に掛かっているストレス(負荷)は低い状態である。この状態から、被験者Aが操作具33Aおよび33Bを操作することで、屈んだ状態で仮想部材200を持ち上げる作業が開始される。このとき、被験者Aには実際の荷重は掛からないが、「30kg」の仮想部材200を持ち上げる作業であるため、持ち上げ動作に関する部位(首、体幹、脚など)に掛かるストレス(負荷)が急激に上昇し、その評価値も上昇する。
【0088】
表示処理部24は、図10Cに示すように、ストレスの評価値の時系列データE4が閾値Thを超えると、閾値Thを超えた時点からの期間における、ストレスの評価値の時系列データE4の表示領域C4を、赤色で表示する。ユーザは、図10Cのグラフを視認することにより、被験者Aが行っている仮想作業が、作業者に高いストレス(負荷)を与える改善すべき作業であると認識できる。被験者Aが実際に30kgの部材を持ち上げる訳ではないので、ストレス評価装置2Aは、様々な重さの仮想部材を持ち上げる仮想作業を被験者Aに試行させることができる。
【0089】
図11Aは、実空間における被験者Aの映像を示す画面図である。図11Bは、仮想空間における被験者Aの視野映像を示す画面図であり、HMD42の画面42Aを示している。また、図11Cは、被験者Aのストレスと時間との関係を示すグラフであり、モニタ装置41の画面41Aを示している。図11A図11Bおよび図11Cにおいて、仮想作業は、仮想部材201を持ち上げる作業である。図10と同様に、被験者Aは、HMD42を頭に装着し、右手に操作具33Aを持ち、左手に操作具33Bを持っている。図11Aに示すように、被験者Aは座った状態で上記仮想作業を行っている。
【0090】
図11Bにおいて符号Gで示すように、仮想部材201の重量は「100g」である。このため、図11Aに示すように、被験者Aは、屈んだ状態にならずに対象物を持ち上げることができる。ストレス評価部23Aは、仮想部材200を持ち上げる被験者Aに掛かるストレスを連続的に評価する。例えば、部分ストレス評価部231Aが、被験者Aの姿勢および動きが連続的に検出した検出情報に基づいて、被験者Aの部位ごとに掛かる部分ストレスの評価値を順次算出する。総合ストレス評価部232Aは、部分ストレス評価部231Aによって被験者Aの部位ごとに算出された部分ストレスの評価値を身体全体で総合的に評価して総合ストレスの評価値を算出する。
【0091】
表示処理部24は、部分ストレスの評価値の時系列データおよび総合ストレスの評価値の時系列データをモニタ装置41の画面41Aに表示する。例えば、図10と同様に、被験者Aの部位は、首(NECK)、体幹(TRUNK)、脚(LEGS)、上腕(UPPER_ARMS)、下腕(LOWER_ARMS)および手首(WRISTS)である。表示処理部24は、図11Cに示すように、現在時刻から一定の時間遡った期間における総合ストレスの評価値の時系列データE5を表示する。図11Cに示すグラフにおいて、右端の時刻が現在時刻であり、現在時刻から一定の時間(例えば、30秒)遡った期間における総合ストレスの評価値の時系列データE5が連続的に表示される。
【0092】
被験者Aが仮想部材201を持ち上げる作業においては、被験者Aには、仮想部材201を持ち上げる右の上腕にストレスが掛かるだけである。このため、被験者Aに掛かるストレスの評価値は、殆ど変化せず、総合ストレスの評価値の時系列データE5は閾値Th以下となる。ユーザは、図11Cのグラフを視認することにより、被験者Aが行っている仮想作業が、ストレス(負荷)の低い適切な作業であると認識できる。
【0093】
なお、ストレス評価装置2Aにおける検出情報取得部21、仮想部材情報取得部22、ストレス評価部23A、表示処理部24および材料特性情報取得部25の機能は、処理回路により実現される。すなわち、ストレス評価装置2Aは、図8Aまたは図8Bに示した処理を実行するための処理回路を備えている。処理回路は、専用のハードウェアであってもよいが、メモリに記憶されたプログラムを実行するCPUであってもよい。
【0094】
以上のように、実施の形態2に係るストレス評価装置2Aは、材料特性情報を取得する材料特性情報取得部25を備える。ストレス評価部23Aは、検出情報、仮想部材情報および材料特性情報に基づいて、材料特性の仮想部材を用いた仮想作業における被験者Aの姿勢および動きの少なくとも一方によって被験者Aに掛かるストレスを評価する。材料特性情報は、仮想部材の仮想的な質量、密度、仮想的な体積、仮想的な熱伝導率、仮想的な表面の摩擦係数、仮想的な弾性率および材料部材の組み付け順の少なくとも一つを示す情報である。ストレス評価装置2Aは、様々な材料特性を有する仮想部材を用いた仮想作業において被験者Aに掛かるストレスを評価することができる。例えば、CADデータに含まれるメタデータに基づく仮想部材情報および材料特性情報を用いることで、ストレス評価装置2Aは、様々な材料特性を有した仮想部材を仮想作業に取り入れることができる。
【0095】
なお、実施の形態1および実施の形態2において、表示処理部24は、下記の表示処理を行ってもよい。以下の説明では、ストレス評価装置2が備える表示処理部24による表示処理を示すが、ストレス評価装置2Aが備える表示処理部24であっても、同様の効果が得られる。
【0096】
図12Aは、仮想空間における被験者Aの視野映像を示す画面図であって、HMD42の画面42Aを示している。図12Bは、被験者Aの各部位のストレス評価値を示す模式図である。図12Cは、被験者Aの総合ストレスと時間との関係を示すグラフであって、図12Cにおけるストレスポイントは、被験者Aに掛かる総合ストレスの評価値である。図12A図12Bおよび図12Cにおいて、仮想作業は、バーナー33A1とロウ材33B1を用いた配管のロウ付け作業である。
【0097】
ストレス評価部23は、仮想的なロウ付け作業を行う被験者Aに掛かるストレスを連続的に評価する。例えば、部分ストレス評価部231が、被験者Aの姿勢および動きが連続的に検出した検出情報に基づいて、被験者Aの部位ごとに掛かる部分ストレスの評価値を順次算出する。表示処理部24は、図12Bに示すように、部分ストレスの評価値の時系列データに応じた色および数値(ストレスの評価値を示すスコア)を人体シルエットに重ね合わせた画面41Cをモニタ装置41に表示する。図12Bに示す画面41Cの人体シルエットにおける評価値は、図12Cのグラフにおいて、最も高い評価値(ストレスポイント)である「9」が得られた現在時刻から22.5秒だけ遡った時刻において、被験者Aの各部位に瞬時的に掛かった部分ストレスの評価値が表示されている。また、ストレス評価部23Aは、被験者が行った動きに対応する瞬時的なストレスのスコアを算出する。また、ストレス評価部23Aは、被験者が同じ姿勢を保つまたは同じ動作を繰り返すことにより、被験者の身体に掛かる継続的なストレスのスコアを算出する。
【0098】
例えば、表示処理部24は、図12Bに示す人体シルエットの画面41Cにおいて、ストレスのスコアが高い部位を赤色で表示し、ストレスのスコアが低くなるにつれて部位の色を赤色から橙色、黄色、着色なしに変化させる。ユーザは、画面41Cを視認することで、被験者Aに掛かるストレス(負荷)を容易に把握することができる。
【0099】
総合ストレス評価部232は、部分ストレス評価部231によって被験者Aの部位ごとに算出された部分ストレスの評価値の組み合わせを身体全体で評価した値を総合ストレスの評価値として算出する。表示処理部24は、図12Cに示すグラフにおいて、現在時刻から一定時間遡った期間における総合ストレスの評価値の時系列データを表示する。当該グラフには、現在時刻から一定の時間(30秒)遡った期間における総合ストレスの評価値の時系列データが連続的に表示される。図12Cに示すグラフには、閾値Th1およびTh2が設定されている。閾値Th2は、閾値Th1よりも大きい値である。
【0100】
図12Cに示すグラフにおいて、表示処理部24は、被験者Aに掛かるストレスの評価値の時系列データが閾値Th1を超えると、閾値Th1を超えた部分を注意喚起色である黄色で表示する。さらに、ストレスの評価値の時系列データが閾値Th1を超えた場合、表示処理部24は、閾値Th2を超えた部分を警告色である赤色で表示する。ユーザは、図12Cのグラフを視認することにより、被験者Aが行っている仮想作業が、どの時点で作業者に高いストレス(負荷)が掛かっているのかを認識できる。さらに、ユーザは、図12Cのグラフを視認することにより、どの時点から継続的に、作業者に高いストレスが掛かっているのかを認識できる。
【0101】
図13は、仮想作業を行っている被験者Aに生じたストレスの評価値の時系列データの表示例(1)を示す画面図である。図13に示す画面41Dは、表示処理部24によってモニタ装置41に表示される。画面41Dには、被験者Aを示す人体シルエット41D(1)と、総合ストレスの評価値の時系列データを示すグラフ41D(2)と、被験者Aの特定の部位(図示の例では、左上腕)に掛かる部分ストレスの評価値の時系列データを示すグラフ41D(3)が表示されている。
【0102】
ユーザが人体シルエット41D(1)を参照して特定の部位を選択することにより、表示処理部24は、グラフ41D(3)において、選択された部位に掛かる部分ストレスの評価値の時系列データを表示する。ユーザは、グラフ41D(3)を視認することにより任意の部位に掛かるストレスの評価値を把握することができる。
【0103】
また、グラフ41D(2)および41D(3)において、表示処理部24は、ストレスの評価値の時系列データが閾値Th1を超えると、閾値Th1を超えた部分を注意喚起色である黄色で表示する。さらに、ストレスの評価値の時系列データが閾値Th1を超えた場合、表示処理部24は、閾値Th2を超えた部分を警告色である赤色で表示する。
【0104】
ユーザは、グラフ41D(2)および41D(3)を視認することにより、被験者Aが行っている仮想作業が、どの時点で作業者に高いストレスが掛かっているのか、および、どの時点から継続的に作業者に高いストレスが掛かっているのかを認識できる。例えば、時刻T1を選択することで、時刻T1における総合ストレスの評価値と部分ストレスの評価値を確認可能であり、仮想作業の振り返りが可能である。
さらに、ユーザは、グラフ41D(2)および41D(3)を用いて、仮想ストレスを低減した最適な作業を決定することが可能である。
【0105】
図14は、仮想作業を行っている被験者Aに生じたストレスの評価値の時系列データの表示例(2)を示す画面図である。図14に示す画面41Eは、表示処理部24によってモニタ装置41に表示される。画面41Eには、被験者Aを示す人体シルエット41E(1)と、総合ストレスの評価値の時系列データを示すグラフ41E(2)と、被験者Aの視野映像の画像41E(3)と、仮想空間で仮想作業を行う被験者Aの俯瞰映像41E(4)が表示されている。
【0106】
人体シルエット41E(1)において、表示処理部24は、例えば、ストレスのスコアが高い部位を赤色で表示し、ストレスのスコアが低くなるにつれて部位の色を赤色から橙色、黄色、着色なしに変化させる。ユーザは、画面41Cを視認することにより、被験者Aに掛かるストレス(負荷)を容易に把握することができる。
【0107】
グラフ41E(2)において、表示処理部24は、被験者Aに掛かるストレスの評価値の時系列データが閾値Th1を超えると、閾値Th1を超えた部分を注意喚起色である黄色で表示する。さらに、ストレスの評価値の時系列データが閾値Th1を超えた場合に、表示処理部24は、閾値Th2を超えた部分を警告色である赤色で表示する。ユーザは、グラフ41E(2)を視認することにより、被験者Aが行っている仮想作業が、どの時点で作業者に高いストレスが掛かっているのか、およびどの時点から継続的に作業者に高いストレスが掛かっているのかを認識できる。
【0108】
ユーザは、画面41E(3)に表示された視野映像情報を視認することで、被験者Aの視野を共有することができる。これは、作業訓練に有効である。例えば、被験者Aが熟練の作業者である場合、ユーザは、熟練の作業者がどのような視点で作業を行っているのかを把握することできる。
【0109】
ユーザは、俯瞰映像41E(4)を視認することにより、被験者Aの身体の全体的な動きを容易に確認することができる。図15は、仮想空間で仮想作業を行う被験者Aの俯瞰映像を示す画面図である。図15に示す画面には、表示時刻を選択するスライダ152が表示されている。スライダ152において、スライド部152Aを左右に移動させることにより、ユーザは任意の時刻を選択することができる。
【0110】
スライダ152には、被験者Aに掛かるストレスの評価値が閾値Th1またはTh2を超えた時刻に対応する部分が、注意喚起色または警告色で表示されている。ユーザは、当該俯瞰映像およびスライダ152を視認することにより、被験者Aが行っている仮想作業が、どの時点で作業者に高いストレスが掛かっているのか、およびどの時点から継続的に作業者に高いストレスが掛かっているのかを認識できる。
【0111】
ユーザが図15に示す俯瞰映像において操作ボタン153を操作することにより、表示処理部24は、操作ボタン153の操作に応じた自由な方向から被験者Aをみた俯瞰映像に変更する。ユーザは、当該俯瞰映像を視認することにより、仮想作業が行っている被験者Aを様々な方向から確認することができる。
【0112】
図16は、被験者Aを模擬した模擬被験者161を示す画面図である。図16に示すように、表示処理部24は、被験者Aを模擬した模擬被験者161を、表示部4に表示してもよい。模擬被験者161は、被験者Aが仮想作業において行った動作を再現させるものである。ユーザは、模擬被験者161を視認することにより、被験者Aが仮想作業において行った動作を確認可能である。
【0113】
また、表示処理部24は、表示部4に対して、所定時間軸上の所定の点または所定の期間における模擬被験者161を表示してもよい。表示処理部24は、被験者Aが仮想作業を行っている期間に取得された検出情報および仮想部材情報を用いることで、指定された時刻または指定された時間帯における模擬被験者161を、表示部4に表示させる。ユーザは、模擬被験者161を視認することにより、仮想作業を行う被験者Aが任意の時刻または時間帯で行った動作を確認可能である。
【0114】
なお、実施の形態1および実施の形態2において、仮想作業に用いる部材が仮想部材である場合を示したが、ストレス評価装置2または2Aは、実部材を用いた仮想作業を行う被験者Aに掛かるストレスを評価可能である。実部材は、材料特性が既知である実空間の部材である。例えば、ストレス評価装置2または2Aに対し、実部材に関する情報を設定しておく。これにより、ストレス評価装置2または2Aは、実部材に関する情報に基づき実部材を仮想部材と同様に扱うことができるので、実部材を用いた仮想作業を行う被験者Aに掛かるストレスを評価することが可能である。また、実部材に関する情報を設定したストレス評価装置2または2Aは、実部材および仮想部材の両方を用いる仮想作業を行う被験者Aのストレスを評価することができる。
【0115】
なお、各実施の形態の組み合わせまたは実施の形態のそれぞれの任意の構成要素の変形もしくは実施の形態のそれぞれにおいて任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本開示に係るストレス評価装置は、例えば、作業を行う作業者に掛かるストレスを低減させる姿勢および動きの訓練を支援する作業訓練支援システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0117】
1,1A ストレス評価システム、2,2A ストレス評価装置、3 検出部、4 表示部、5 CAD装置、6 マーカ、21 検出情報取得部、22 仮想部材情報取得部、23,23A ストレス評価部、24 表示処理部、25 材料特性情報取得部、31,31A~31C 第1のカメラ、32 第2のカメラ、33 操作部、33A,33B 操作具、33A1 バーナー、33B1 ロウ材、41 モニタ装置、51 記憶部、61 電動ドライバ、100 入力インタフェース、101 出力インタフェース、102 処理回路、103 プロセッサ、104 メモリ、152 スライダ、152A スライド部、153 操作ボタン、161 模擬被験者、200,201 仮想部材、231,231A 部分ストレス評価部、232,232A 総合ストレス評価部。
図1
図2
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