(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】光起電力デバイスの試験方法及び試験装置
(51)【国際特許分類】
H02S 50/10 20140101AFI20240823BHJP
F21S 2/00 20160101ALN20240823BHJP
F21Y 101/00 20160101ALN20240823BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240823BHJP
【FI】
H02S50/10
F21S2/00 600
F21Y101:00 300
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2023558364
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2022057453
(87)【国際公開番号】W WO2022218656
(87)【国際公開日】2022-10-20
【審査請求日】2023-11-17
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523359308
【氏名又は名称】パサン ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルヌー、ジル
(72)【発明者】
【氏名】バッシ、ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】フリック、ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ベッツナー、デルク
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-089632(JP,A)
【文献】特開2010-238906(JP,A)
【文献】特表2014-523728(JP,A)
【文献】特開2012-156406(JP,A)
【文献】特開2013-156132(JP,A)
【文献】特開2013-026412(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0149090(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 10/00-99/00
H01L 31/02-31/078
H01L 31/18-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの太陽電池サブセルを備えるタンデム型太陽電池(100)の電流-電圧曲線(IV)及び接合部間の電流不整合を測定及び計算する方法であって
、
A)国際規格AM1.5に対応するスペクトルを有する光ビーム(10)を提供するための少なくとも1つの第1の光源(S1)を提供するステップと、
B)少なくとも2つの異なる光ビーム(12、14)を提供するための少なくとも2つの狭帯域幅光源(S2
1、S2
2)を提供するステップであって、各光ビーム(12、14)は、前記少なくとも2つのサブセルのうちの1つによって主に吸収される、ステップと、
C)その短絡電流(Isc)を取得するために、前記第1の光源(S1)で前記タンデム型太陽電池(100)を照明するステップと、
D)前記取得された基準短絡電流に対する短絡電流の変化のオフセット値(δIsc)を取得するために、前記第1の光源(S1)で前記タンデム型太陽電池を照明し、同時に、前記少なくとも第2及び第3の光源(S2
1、S2
2)のうちの1つによって、追加の光ステップ強度を加えるステップと、
E)前記照明ステップD中に追加の低光強度ステップで取得された電流データを使用して、第1の補間の曲線(I)を実現するステップと、
F)前記照明ステップD中に追加の高光強度ステップを使用して、第2の補間の曲線(II)を実現するステップと、
G)前記第1及び第2の補間の曲線(I、II)の交点(IP)を規定するステップであって、前記交点(IP)は、1に等しい前記第1及び第2の接合部の短絡電流のバランス比Bal
12を規定する、ステップと、
H)前記交点における前記タンデム型太陽電池(100)の短絡電流Isc
matchを計算するステップと、
I)ステップHにおいて決定されたパラメータから、前記接合部間の電流の不整合(Bal12,ref)を決定するステップと、
J)前記取得された基準短絡電流に対する短絡電流の変化のオフセット値(δIsc)を取得するために、狭帯域の前記第2及び第3の光源(S2
1、S2
2)
の重ね合わせを使用することによって、
前記第1の光源(S1)を使用することなしにステップDからIを繰り返すステップと、
K)前記光源(S2
1、S2
2)の適合された
強度を使用することによって、同一のバランス比Bal12(S2)=Bal12(S1)及び同一の短絡電流Isc(S2)=Isc(S1)を達成するために、前記第2及び第3の光源(S2
1、S2
2)の必要な光強度を計算して、前記光源(S2
1、S2
2)の組み合わせ(S2)が、前記第1の光源(S1)のみで照明された場合と同じ前記太陽電池(100)の試験結果を提供するステップと、
L)ステップKに従って前記光源(S2
1、S2
2)の光学的組み合わせ(S2)である光源を使用して、試験される太陽電池(100)を照明し、前記タンデム型太陽電池(100)の電流-電圧曲線I-Vを提供するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記第1及び第2の補間は、線形補間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
3つ以上の異なる狭帯域光源(S2
N)が使用され、Nは
、少なくとも
4である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の光源(S1)は、AM1.5光スペクトルに近いスペクトルを有する光学フィルタ付きキセノンフラッシュランプである、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも2つの狭帯域幅光源(S2
1、S2
2)は、発光ダイオード又は発光ダイオードアレイを備え、前記第2の光源(S2
1)の放射光は、主に第1の接合部J1で吸収され、前記第3の光源(S2
2)の放射光は、主に被試験の前記タンデム型太陽電池の第2の接合部(J2)で吸収される、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光源(S1、S2
i)の絶対及び相対光強度は、監視される前記光源のスペクトルのみを感知する光学フィルタ付きPV監視セルによって測定及び/又は制御される、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
短絡電流(Isc)、開回路電圧(Voc)、フィルファクタ(FF)、直列抵抗(Rs)、及び並列抵抗(Rp)、又はそれらの組み合わせのような取得されたIV曲線から選択される太陽電池パラメータを計算することからなる追加のステップが実行される、請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
タンデム型太陽電池(100)を特性評価するための時間は、1分未
満で実行される、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載の方法に従って、少なくとも2つのサブセルを備えるタンデム型太陽電池(100)を特性評価するための太陽電池試験装置(1)であって、前記装置(1)は、国際規格AM1.5に対応するスペクトルを有する光ビーム(10)を提供するための少なくとも1つの第1の光源(S1)を備え、前記試験装置(1)は、少なくとも2つの異なる光ビーム(12、14)を提供するための少なくとも2つの狭帯域幅光源(S2
1、S2
2)を更に備え、各光ビーム(12、14)は、主に前記少なくとも2つのサブセルのうちの1つによって吸収される、太陽電池試験装置(1)。
【請求項10】
3つ以上の異なる狭帯域光源S2
Nを備え、Nは
、少なくとも
4である、請求項9に記載の太陽電池試験装置(1)。
【請求項11】
前記第1の光源(S1)は、AM1.5光スペクトルに近いスペクトルを有するフィルタ付きキセノンフラッシュランプである、請求項9又は10に記載の太陽電池試験装置(1)。
【請求項12】
前記狭帯域光源(S2
1~S2
N)のうちの少なくとも1つは、発光ダイオード(LED)である、請求項9~11の何れか一項に記載の太陽電池試験装置(1)。
【請求項13】
少なくとも1つの光強度監視デバイスを備える、請求項9~12の何れか一項に記載の太陽電池試験装置(1)。
【請求項14】
前記光強度監視デバイスは、光起電力シリコンダイオードである、請求項13に記載の太陽電池試験装置(1)。
【請求項15】
前記光強度監視デバイスは、少なくとも1つの光学バンドパスフィルタを備える、請求項14に記載の太陽電池試験装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、光起電力デバイスの分野に関する。より具体的には、本願発明は、多接合光起電力セル及びデバイスを試験するための方法に関する。本願発明はまた、模擬太陽光下において多接合光起電力デバイスの光電気特性を測定するための試験機器に関する。
【0002】
本願発明の特に有利な用途は、高速且つ低コストで多接合光起電力セルを試験することである。
【背景技術】
【0003】
太陽電池の性能は、基本的に、任意の太陽電池の設計において存在する固有の損失メカニズムに限定される。典型的な損失は、例えば、黒体放射又は再結合損失によるものであり、両方がそれぞれ損失の7%及び10%を占める。しかし、主な損失メカニズムは、太陽電池がエネルギーを欠く特定の光子から電力を抽出することができないという事実を含めて、太陽電池が太陽電池に放射される太陽光を全て抽出することが不可能であるという事実である。光子は、太陽電池材料のバンドギャップを乗り越えるのに十分なエネルギーを有する必要がある。
【0004】
光子が太陽電池材料のバンドギャップより小さいエネルギーを有する場合には、それは、電子と正孔とに変換されることができない。例えば、従来の太陽電池は、たとえ太陽によって提供される主要なポテンシャルエネルギー部分を赤外線スペクトルが表すとしても、ほとんどの赤外線スペクトルを感知しない。一方、バンドギャップより高いエネルギーを有する光子、例えば青色光は、バンドギャップより高い状態の電子を放出する。余分なエネルギーは、衝突プロセスによって失われるだけであり、それは、この失われたエネルギーを熱として太陽電池にもたらす。
【0005】
全ての損失係数を組み合わせると、従来のシリコンセルの効率は、典型的には30%未満になる場合がある。反射損失又は電荷収集導体における損失のような更なる損失を考慮すると、最新の太陽電池の効率は、約23~26%になる。
【0006】
シリコンは、低バンドギャップ材料と高バンドギャップ材料との間の良好なバランス、すなわち、1100nmの波長、すなわち、近赤外線に対応する1.1eVのバンドギャップを提供するので、他の可能な半導体の中でも良好な選択である。
【0007】
従って、異なる材料で作られ、それ故に異なるバンドギャップの多層太陽電池が提案されている。例えば、太陽電池は、スペクトルの赤色部分に調整された第1の層、及びスペクトルの緑色部分に調整された第2の層を有し得る。単層太陽電池に対して行われた分析と同様に、2ギャップデバイスのための理想的なバンドギャップは、0.77eV及び1.7eVであることが実証され得る。多接合セルとも呼ばれる多層太陽電池は、入射光側に最短波長のための高いバンドギャップ層を実現することによって作られる。次の層は、連続してより低いバンドギャップ層である。光子が多層セルを通過するときに、層を分離するために透明な層が必要になる。
図1は、上部セル及び下部セルを備える典型的な2層太陽電池の電気回路図を図示する。
【0008】
従来の太陽シミュレータは主に、太陽のような照明下において単接合の地上用PVデバイスの電流及び電圧(IV)特性を測定することを目的とする。太陽シミュレータは、太陽光のスペクトル特性に可能な限り厳密に整合する安定した光源からなり、指定された試験領域における均一な照明を可能にする。連続光太陽シミュレータと比較して、安価であり、メンテナンスの必要性が低く、エネルギー消費が少ないので、パルス太陽シミュレータを使用して、製造中に、PVデバイスは通常、特性評価される。
【0009】
多接合PVデバイスは、単接合の地上用PVデバイスと比較して効率は高が、コストがかなり高いので、主に宇宙用途向けに開発されてきた。多接合PVデバイスの特性評価は通常、多接合サブセルのそれぞれの吸収体を表す、基準となる較正された単接合セルのセットを要求する。これらは、太陽シミュレータのスペクトル放射照度を較正するために使用される。宇宙用途に特有であるこのアプローチは、設計が複雑なデバイスである太陽シミュレータが調整可能なスペクトルを有することを要求するので、コストがかかり、技術的に複雑である。このアプローチはまた、スペクトル較正の較正のための基準コンポーネントの光起電力セルの確立を要求する。更なる欠点は、そのような試験方法及びデバイスが、基準コンポーネントのセルが被試験の多接合PVデバイスの特性を表すという仮定に依存することである。
【0010】
地上用途向けの多接合PVデバイスは、これまで主に薄膜化合物として開発されていた。例えば、最近では、タンデム型ペロブスカイト/シリコンセルのような新たに生まれた技術が、非常に有望な効率を得、低コストでの生産を約束する。工業生産中のそれらの特性評価は、合理的なコストで実行されなければならず、技術的に実装することが容易でなければならない。特性評価方法は、被試験のデバイスの固有の安定化時間より長い、十分に長時間安定した光源を要求し、これは、通常、キセノンフラッシュランプでは達成されることができないが、LEDベースの光源では達成されることができる。光源は、国際規格IEC 60904-3において規定されているAM1.5に十分近いスペクトルを有しなければならず、測定方法は、国際規格IEC 60904-1及びIEC 60904-1-1において規定されている手順を満たさなければならない。
【0011】
国際規格IEC 60904-3については、ウェブサイト:https://webstore.iec.ch/publication/64682において説明されている。国際規格IEC 60904-1-1については、ウェブサイト:https://webstore.iec.ch/publication/29335において説明されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、技術的に実装することが容易である装置で、低コスト且つ高速で提供されなければならない多接合PVセルの工業生産中の特性評価方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明の提案された試験方法及び試験装置は、多接合デバイスのI-V曲線を特性評価することができる装置及び調整方法で、妥当なコストで特性評価方法を実装するという課題を解決する。更に、それは、単接合部及び/又は較正された基準セルを使用することなく、或いはデバイスのスペクトル応答又は量子効率を追加で測定することによって、国際規格AM1.5に従う照明下におけるその接合部の電流の不整合を抽出することができる。それは、基準AM1.5に従って、基準太陽光スペクトルに近いフィルタ付きパルス光源の優れたスペクトル整合を利用し、それを、個々の接合部の安定化された測定のために要求されるような一定期間に亘る光強度を提供することができる少なくとも2つの狭帯域幅光源と組み合わせる。このような光源は、例えばLEDアレイによって実現されることができる。パルス光源は、好ましくはパルスキセノン光源である。
【0014】
第1の態様においては、本願発明は、多接合太陽電池、好ましくは二重接合太陽電池を試験する方法によって達成される。より正確には、本願発明の方法は、以下のステップを含む。
【0015】
第2の態様においては、本願発明は、多接合太陽電池を試験するように構成された試験装置によって達成される。
【0016】
少なくとも2つの太陽電池サブセルを備えるタンデム型太陽電池の電流-電圧曲線(IV)及び接合部間の電流不整合を測定及び計算する方法が、照明基準AM1.5に従って模擬太陽放射照度下において実行され、
A)基準AM1.5に対応するスペクトルを有する光ビームを提供するための少なくとも1つの第1の光源を提供するステップと、
B)少なくとも2つの異なる光ビームを提供するための少なくとも2つの狭帯域幅光源を提供するステップであって、各光ビームは、少なくとも2つのサブセルのうちの1つによって主に吸収される、ステップと、
C)その短絡電流Iscを取得するために、第1の光源でタンデム型太陽電池を照明するステップと、
D)取得された基準短絡電流に対する短絡電流の変化のオフセット値を取得するために、第1の光源でタンデム型太陽電池を照明し、同時に、少なくとも第2及び第3の光源のうちの1つによって、追加の光ステップ強度を加えるステップと、
E)照明ステップD中に追加の低光強度ステップで取得された電流データを使用して、第1の補間の曲線を実現するステップと、
F)照明ステップD中に追加の高光強度ステップを使用して、第2の補間の曲線を実現するステップと、
G)第1及び第2の補間の曲線の交点を規定するステップであって、交点は、1に等しい第1及び第2の接合部の短絡電流のバランス比Bal12を規定する、ステップと、
H)交点におけるタンデム型太陽電池の短絡電流を計算するステップと、
I)ステップHにおいて決定されたパラメータから、接合部間の電流の不整合Bal12,refを決定するステップと、
J)第1の光源によって照明することなく、第2及び第3の光源のみを使用することによって、ステップDからIを繰り返すステップと、
K)第2及び第3の光源の適合された利得を使用することによって、同一のバランス比及び同一の短絡電流を達成するために、第2及び第3の光源の必要な光強度を計算して、第2及び第3の光源の組み合わせが、第1の光源のみで照明された場合と同じ太陽電池の試験結果を提供するステップと、
L)ステップKに従って第2及び第3の光源の光学的組み合わせである光源を使用して、試験される太陽電池を照明し、タンデム型太陽電池の電流-電圧曲線I-Vを提供するステップと
を含む。
【0017】
一実施形態においては、第1及び第2の補間が、線形補間である。
【0018】
一実施形態においては、3つ以上の異なる狭帯域光源が、場合によっては少なくとも4つ、場合によっては少なくとも5つ、更により場合によっては少なくとも6つの狭帯域光源である。
【0019】
一実施形態においては、第1の光源が、AM1.5光スペクトルに近いスペクトルを有する光学フィルタ付きキセノンフラッシュランプである。
【0020】
一実施形態においては、少なくとも2つの狭帯域幅光源が、発光ダイオード又は発光ダイオードアレイを備え、第2の光源の放射光が、主に第1の接合部で吸収され、第3の光源の放射光が、主に被試験のタンデム型太陽電池の第2の接合部で吸収される。
【0021】
一実施形態においては、光源の絶対及び相対光強度が、光学フィルタ付きPV監視セルによって測定及び/又は制御される。個別の監視セルが、監視される光源のスペクトルのみを感知する。
【0022】
一実施形態においては、短絡電流、開回路電圧、フィルファクタ、直列抵抗、及び並列抵抗、又はそれらの組み合わせのような取得されたIV曲線から選択される太陽電池パラメータを計算することからなる追加のステップが実行される。
【0023】
一実施形態においては、タンデム型太陽電池を特性評価するための時間が、1分未満、好ましくは10秒未満、より好ましくは5秒未満、更に0.15秒未満で実行される。
【0024】
本願発明はまた、少なくとも2つのサブセルを備えるタンデム型太陽電池を特性評価するための太陽電池試験装置によって達成される。試験装置が、説明されたような方法を実現するように構成される。本願発明の試験装置が、国際規格AM1.5に対応するスペクトルを有する光ビームを提供するための少なくとも1つの第1の光源を備え、試験装置が、更に、
- 少なくとも2つの異なる光ビームを提供するための少なくとも2つの狭帯域幅光源であって、各光ビームが、主に少なくとも2つのサブセルのうちの1つによって吸収される、少なくとも2つの狭帯域幅光源
を備える。
【0025】
一実施形態においては、太陽電池試験装置が、3つ以上の異なる狭帯域光源、場合によっては少なくとも4つ、場合によっては少なくとも5つ、更に場合によっては少なくとも6つの狭帯域光源を備える。
【0026】
一実施形態においては、第1の光源が、AM1.5光スペクトルに近いスペクトルを有するフィルタ付きキセノンフラッシュランプである。
【0027】
一実施形態においては、狭帯域光源の少なくとも1つが、発光ダイオード(LED)である。
【0028】
一実施形態においては、太陽電池試験装置が、少なくとも1つの光強度監視デバイスを備える。
【0029】
一実施形態においては、光強度監視デバイスが、光起電力シリコンダイオードである。
【0030】
一実施形態においては、光強度監視デバイスが、少なくとも1つの光学バンドパスフィルタを備える。
【0031】
次に、添付の図面を参照して本願発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】2接合タンデム型光起電力デバイスの電気図を図示する。
【
図2】より短い波長をより感知する第1の接合部J1と、より長い波長をより感知する第2の接合部J2とを有する典型的なタンデム型セルの典型的なスペクトル応答を示す。
【
図3】短絡電流(Isc)、開回路電圧(Voc)、最大電力(Pmax)、最大電力時の電圧(VPmax)、及び最大電力時の電流(IPmax)のような典型的なI-V曲線パラメータを描写する典型的な電流-電圧特性(I-V曲線)を図示する。
【
図4】試験されるタンデム型太陽電池を均一に照明するように配置されている、第1の広帯域ランプ、及び2つの狭スペクトル帯域光源を備える本願発明の試験装置の光学配置を図示する。
【
図5】2つの接合部のうちの第2の接合部が制限される場合に、狭スペクトル帯域光源である第2の光源の照明下において、強度変化ステップを含む光シーケンスの結果として得られる特性図を図示する。
【
図6】
図5の特性図を生成するために使用される光シーケンスを図示する。
【
図7】2つの接合部を備えるタンデム型太陽電池の場合において、2つの接合部のうちの第1の接合部が制限される場合に、狭スペクトル帯域光源である第2の光源の照射下において結果として得られる特性図を図示する。
【
図8】
図7の特性図を生成するために使用される光シーケンスを図示する。
【
図9】2つの接合部を備えるタンデム型太陽電池の場合において、第1及び第2の狭帯域光源の組み合わせを備える光源の照明下において結果として得られる特性図を図示する。
【
図10】
図9の特性図を生成するために使用される光シーケンスを図示する。
【
図11】少なくとも2つの狭帯域光源を組み合わせることによって、広帯域光源のみで照射される場合と同じ太陽電池の試験結果がもたらされるように、2つのスペクトル的に狭い光源がどのように調整されなければならないかのグラフ表示の例を図示する。
【
図12】少なくとも2つの狭帯域光源を組み合わせることによって、広帯域光源のみで照明される場合と同じ量の太陽電池の接合部の何れかにおける光電流がもたらされるように、2つのスペクトル的に狭い光源がどのように調整されなければならないかのグラフ表示の別の例を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本願発明は、特定の実施形態に関して、特定の図面を参照して説明されるが、本願発明は、それらに限定されない。説明される図面は、概略的にすぎず限定的ではない。図面において、幾つかの要素のサイズは、説明目的のために誇張され、正確な縮尺で描かれていない場合がある。寸法及び相対寸法は、本願発明の実施に対する実際の縮小に対応していない。
【0034】
発明の詳細な説明及び特許請求の範囲における「comprising(備える)」という用語は、その後に列挙される手段に限定されるものとして解釈されるべきではなく、すなわち、他の要素を排除しないことに留意すべきである。
【0035】
本明細書全体を通じて「実施形態(an embodiment)」への言及は、その実施形態に関連して説明される特徴、構造、又は特性が本願発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、発明の詳細な説明全体の様々な場所に現れる「一実施形態において(in an embodiment)」、「一変形例において(in a variant)」という文言は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではなく、幾つかの実施形態を指す。更に、さらに、本開示から当業者には明らかなように、特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わされ得る。同様に、本願発明の様々な特徴は、本開示を読みやすくし、様々な発明の態様の1つ以上の理解を向上させることを目的として、単一の実施形態、図、又は発明の詳細な説明にグループ化される場合がある。更に、以下に説明される幾つかの実施形態は、他の実施形態に含まれる幾つかの特徴を含み、他の特徴を含まないが、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、本願発明の範囲内であり、異なる実施形態からのものであることが意味される。例えば、主張された実施形態の何れも、任意の組み合わせにおいて使用されることができる。また、本願発明は、記載された多数の特定の詳細の一部がなくても実施され得ることがまた理解される。他の例においては、発明の詳細な説明及び/又は図面の理解を曖昧にしないために、全ての構造が詳細に示されていない。
【0036】
本明細書において水平面は、タンデム型太陽電池の面及び基板に平行なX-Y平面として規定される。「垂直」という用語は、本明細書においてはX-Y面に対して垂直であることを意味し、Z軸を規定する。径方向は、水平断面において規定される方向を意味する。
【0037】
本明細書におけるタンデム型太陽電池はまた、被試験のタンデム型デバイス(DUT)、又は「太陽電池」、「タンデム型セル」、若しくは「タンデム型PVデバイス」として規定される。
【0038】
タンデム型セルの上部セルは、光源に向けられるセルとして規定される。下部セルは、上部セルの反対側のセルである。
【0039】
本明細書においては、第1の光源は、太陽のスペクトルと整合するスペクトルを有する光源である。
【0040】
第2及び第3の光源は、狭帯域スペクトル光源である。
【0041】
「光源」という用語は、本願発明の試験方法のステップ中に使用される光源を意味する。
【0042】
本明細書における「光源の光学的組み合わせ」という用語は、試験されるタンデム型太陽電池の照明源として使用されるように、光源の重ね合わせを意味する。
【0043】
近似曲線の傾きは、X-YダイアグラムのX軸に対するY軸の変化として規定される。例えば、
図5においては、X軸はSpBalの軸であり、Y軸は、δIscの軸である。
【0044】
本願発明は、タンデム型PVセルの特性評価の課題を解決するために、太陽電池試験装置1、並びにタンデム型太陽電池100の試験及び特性評価方法を提案する。
【0045】
本願発明の試験及び特性評価方法
本願発明の方法及び試験装置によって体系的且つ自動的に測定される被試験のタンデム型デバイス(DUT)の光電気特性は、以下のとおりである。
I.基準AM1.5スペクトルに厳密に適合されている短パルス光源での多接合DUTの短絡電流
II.太陽の基準スペクトル(AM1.5)に厳密に整合するスペクトル放射照度を有する模擬太陽光下における、被試験のデバイスの2つの接合部間の短絡電流の不整合(Bal12=Isc1/Isc2(IEC 60904-1-1において規定される))。Isc1及びIsc2は、被試験のタンデム型太陽電池100の上部及び下部セルの短絡電流である。
III.以下のような完全なIV特性及びその派生物(これらに限定されない)。
- Isc,短絡電流
- FF,フィルファクタは、VocとIscとを組み合わせて、太陽電池からの最大電力を決定するパラメータである
- Rsh,シャント抵抗
- Voc:開回路電圧
- Rse:直列抵抗
【0046】
次に、本願発明を理解するための基礎として、多接合光起電力デバイスの主な特性が説明される。
【0047】
図1は、一般にタンデム型PVデバイスと呼ばれる2接合PVデバイスの電気図を図示する。このようなタンデムPV型デバイスの電気的特性は、直列に配置された2つの単一ダイオード回路からなるモデルで近似される。
【0048】
図2は、より短い波長を感知する第1の接合部J1と、より長い波長を感知する第2の接合部J2とを有する典型的なタンデム型太陽電池の典型的なスペクトル応答を示す。接合部J1、J2は、広スペクトル照明に曝される場合に、電流発生源として機能する。
図2のスペクトル放射照度の単位によって生成されるスペクトル応答、すなわち、電流I1、I2によって図示されるように、各接合部J1、J2は、タンデム型太陽電池への入射光の光スペクトルの異なる部分を吸収する。
【0049】
自然太陽光下、又は国際規格IEC 60904-3に従って標準化されたスペクトル下において、タンデム型太陽電池100の特定のアーキテクチャに応じて、一方の接合部は、他方の接合部より多くの電流を生成し得る。これは、2つの接合部J1、J2の電流I1、I2の不整合を与える。この不整合は、国際規格IEC 60904-1-1において以下のように規定される比率によって表される。
【数1】
【0050】
インデックスi及びjは、接合部の番号を表す(J1:i=1;J2:j=2)。
【0051】
2つの接合部J1、J2が直列に接続されている場合、すなわち、2端子のタンデム型セルとして接続されている場合、(
図1に表されるような)総出力電流Ioutは、以下のように制限している接合部を規定する、全ての接合部の最小電流I
DUToutによって制限される。
【数2】
【0052】
実際に、総出力電流Ioutのみが測定可能である。数式2の条件は、
図3のIV特性に示されるように、端子で測定された電圧がゼロである場合に短絡電流Iscをもたらす短絡状態で、デバイスが接続される場合に特に当てはまる。
【0053】
国際規格IEC 60904-1Ed.3の発信元は、例えば、ウェブサイト:https://webstore.iec.ch/publication/64682において見つけられる。
【0054】
より正確には、本願発明の方法は、少なくとも2つの太陽電池サブセルを備えるタンデム型太陽電池の電流-電圧曲線(IV)及び接合部間の電流不整合を測定及び計算することを可能にする。
【0055】
この方法は、国際規格照明AM1.5に従って模擬太陽放射照度下において実行される。この方法は、更により詳細に説明され、以下を備える本願発明の太陽電池試験装置1によって実行される。
- 太陽の光に厳密に整合し、制限された強度変動性及び制限されたパルス持続時間(典型的には5~20ミリ秒)を有するパルス光源S1
- 被試験のタンデム型太陽電池100の接合部のうちの1つによって主に吸収されるスペクトルを有する、同数Nの狭帯域スペクトル光源S2i(i=1・・・N)
- 被試験の太陽電池に電圧波形を印加しながら、タンデム型太陽電池100の電流及び電圧を測定するための能動電子負荷を備える電子回路
- 何れかの光源の強度の駆動制御手段を有する電力電子機器
【0056】
実施形態においては、この装置は、例えば、監視セルの電流を測定することによって、各光源の光強度を独立して制御するための手段を備える。
【0057】
本願発明の試験及び特性評価方法は、
A)国際規格AM1.5に対応するスペクトルを有する光ビーム10を提供するための少なくとも1つの第1の光源S1を提供するステップと、
B)少なくとも2つの異なる光ビーム12、14を提供するための少なくとも2つの狭帯域幅光源S21、S22を提供するステップであって、各光ビーム12、14は、少なくとも2つのサブセルのうちの1つによって主に吸収される(Nは少なくとも2である)、ステップと、
C)その短絡電流Iscを取得するために、第1の光源S1でタンデム型太陽電池100を照明するステップと、
D)第1の光源S1でタンデム型太陽電池100を照明し、同時に、狭帯域幅光源である少なくとも第2及び第3の光源S21、S22のうちの1つに、強度ステップとして規定される追加の光強度の増加を加えるステップであって、短絡電流の変化のオフセット値δIscを取得することを可能にするステップと、
E)照明ステップD中に追加の低光強度ステップで取得された電流データを使用して、第1の補間の曲線を実現するステップと、
F)照明ステップD中に追加の高光強度ステップを使用して、第2の補間の曲線を実現するステップと、
G)第1及び第2の補間の曲線の交点を規定するステップであって、交点は、1に等しい第1及び第2の接合部の短絡電流のバランス比Bal12を規定する、ステップと、
H)交点におけるタンデム型セル100の短絡電流Iscmatchを計算するステップと、
I)ステップHにおいて決定されたパラメータから、接合部間の電流の不整合Bal12,refを決定するステップと、
J)第1の光源S1によって照明することなく、第2及び第3の狭帯域幅光源S21、S22のみを使用することによって、ステップDからIを繰り返すステップと、
K)第2及び第3の光源S21及びS22の調整された強度レベルを使用することによって、同一のバランス比、すなわち、Bal12(S2)=Bal12(S1)、また、同一の短絡電流、すなわち、Isc(S2)=Isc(S1)を達成するために、第2及び第3の光源S21、S22の必要な光強度を計算して、その結果が、第1の光源S1のみで照明された場合と同じになるようにするステップと、
L)それに応じて組み合わせた光源S21及びS22の照明を調整して、タンデム型太陽電池100の電流-電圧曲線I-Vを測定するステップと
を含む。
【0058】
一実施形態においては、第1及び第2の補間は、線形補間である。
【0059】
一実施形態においては、3つ以上の異なる狭帯域光源S2Nが使用され、Nは、場合によっては少なくとも4、場合によっては少なくとも5、更により場合によっては少なくとも6である。
【0060】
一実施形態においては、第1の光源S1は、AM1.5光スペクトルに近いスペクトルを有するフィルタ付きキセノンフラッシュランプである。
【0061】
一実施形態においては、少なくとも2つの狭帯域幅光源S21及びS22は、発光ダイオード又は発光ダイオードアレイを備え、第2の光源S21の放射光ビームは、主に第1の接合部J1で吸収され、第3の光源S22の放射光は、主に被試験のタンデム型太陽電池100の第2接合部J2で吸収される。
【0062】
一実施形態においては、光源S1、S2i(l=1・・・N)の絶対及び相対光強度は、カットオフ波長がセルの接合部のスペクトル応答の50%以内、場合によっては20%、更に10%未満である、選択的なスペクトル感度を有する光学フィルタ付きPV監視セルによって測定及び/又は制御される。
【0063】
一実施形態においては、Isc(短絡電流)、Voc(開回路電圧)、FF(フィルファクタ)、Rs(直列抵抗)、及びRp(並列抵抗)、又はそれらの組み合わせのような取得されたIV曲線から選択される太陽電池パラメータを計算することからなる追加のステップが実行される。
【0064】
一実施形態においては、タンデム型太陽電池を特性評価するための時間は、5分未満、好ましくは1分未満、更により好ましくは10秒未満、場合によっては0.15秒未満で実行される。このような試験速度は、従来技術の試験システムで、本願発明の試験システムで達成されるような要求される測定精度では達成されることができない。
【0065】
理解を完全にするために、本願発明の方法が、次に更により詳細に説明される。この方法は、3つのフェーズ(フェーズI~III)に分割され得る。
【0066】
フェーズI
第1のフェーズIは、次のステップに基づく。
- 短絡電流を測定する:標準IEC 60904-3に従う基準照明下におけるIscref
- 基準照明下において、接合部1及び接合部2の電流間の電流比Bal12の不整合を見つける
【0067】
試験手順の第1のフェーズIは、少なくとも2つのスペクトル的に狭い光源(
図4のS21、S22)と組み合わされた基準光源(
図4のS1)を使用して実行される。
【0068】
短絡電流Isc,refの測定は、パルスキセノンランプのような第1の光源S1のみを使用することによって行われる。次に、狭スペクトル帯域光源S21、S22のうちの1つの強度が、段階的に変更され、タンデム型セル100の対応する短絡電流Iscが、それらの照明下において測定される。これは、第3の光源S22からの光を追加することによって測定点2、3、及び4のδIscの値を図示し、第2の光源S21からの光を追加することによって測定点5のδIscの値を図示する
図5の例において図示される。
【0069】
各照明ステップにおいて、次の量が評価される。
1.被試験の太陽電池の短絡電流Isc
2.第2の光源S21の光強度又は利得G1
3.第3の光源S22の光強度又は利得G2
【0070】
これらの量から、次の観測量が決定される。
- 第2の光源S2
1及び第3のS2
2を含む光源のスペクトルバランス
【数3】
- 短絡電流の相対的な増加
【数4】
【0071】
ここで、Isc,refは、基準短絡電流である。
【0072】
G1,ref及びG2,refは、例えば、フィルタ付き監視セルMC1及びMC2によってそれぞれ測定される基準放射照度である。
【0073】
ここでの基準短絡電流Isc,refは、太陽のスペクトルに厳密に整合する光源S1下において短絡電流Iscが測定されることを意味する。これは、そのトレーサビリティ・チェーンを有する較正された基準を指すものではない。
【0074】
パラメータSpBal12及びδIscは、基準光源S1を使用してシーケンスの最初のステップ中に規定される。それ故に、規定によって、不バイアスS1光源で測定が実行される場合に、SpBal12=0及びδIsc=0であり、それらは、データポイント1を有する
図5のセル特性図の原点を形成する。
【0075】
規定によって、S1は、キセノンフラッシュ光源のような基準フルスペクトル光源であり、AM1.5スペクトルに最も厳密に整合する。この方法は、AM1.5基準スペクトル下において少なくとも2つの接合部J1、J2間の電流の不整合を決定することを目的とする。この不整合Bal12,refは、比率として表される。不整合がない場合には、Bal12,refは1に等しい。
【0076】
これを行うために、制限している接合部の電流のみが測定されることができるので、整合する比率に達するまで、すなわち、すなわち、Bal12が1に等しいくなるまで、スペクトルがバイアスされる。S2
2の強度が増加する場合にはSpBal12が増加し、S2
1の強度が増加する場合にはSpBal12が減少するように、任意の追加量のS2
iでバイアスされたS1の組み合わせが、シーケンスの次のステップにおいてスペクトルのアンバランスを生じさせる。SpBal12は、
図5、7、9の図の例における図のx座標である。
【0077】
明確にするために、可変率Bal12の重要性は、次に更により詳細に説明される。
【0078】
Bal12は、数式(1)によって規定され、2つの電流(すなわち、タンデム型太陽電池の上部セル及び下部セルのうちの1つ)の比率であるので、次元を有さない。
【0079】
上部セルと下部セルとが整合している場合に、すなわち、同じ電流を供給している場合に、Bal12=0になる。これは、特定の照明条件下、それ故に、第2及び第3の光源S21及びS22の強度の特定の構成による場合のみである。
【0080】
第2及び第3の光源S21、S22による照明は、Bal12=1によって規定される整合点である照明条件を見つけるように調整されるべきである。
【0081】
Bal12=1を見つけるために必要である基準スペクトルAM1.5とは異なる照明の変化によって、基準照明下におけるセルの接合部の電流不整合に関する情報が与えられる。本明細書における基準照明は、国際規格IEC 60904-3で規定されるような照明であり、空気湿度及び地面アルベドのような特定の環境条件下における方位角43°における太陽のスペクトルに近い。
【0082】
本願発明の方法は、AM1.5スペクトルによく適合される、第1のランプS1、典型的にはフラッシュキセノンランプの場合と同じ各接合部における生成キャリア密度を得るために、狭帯域照明源、典型的には2つのLEDアレイ下において適切な「光混合」を見つけることを可能にする。そして、第1の光源S1の照明下と同じ、第2の光源S21の照明下における太陽電池の出力電流が望ましい。
【0083】
それ故に、この方法のステップは、次のような状況を見つけることを可能にする。
Bal12(S2)=Bal12(S1)であり、ここで、S2=S21+S22であり、これは、試験方法によって得られるように、2つのLEDのような第2及び第3の狭帯域光源S21、S22の最適化された混合を表す。
【0084】
好ましくは、S21、S22は、2つのLED(又は2つのLEDアレイ)であり、S1は、好ましくはキセノンフラッシュ光源であるが、他の光源が使用され得る。
【0085】
被試験のタンデム型太陽電池100の全電流は、両方の照明下、すなわち、第2及び第3の光源の混合下、又は第1の光源下において同一、すなわち、I(S2)=I(S1)であるべきであり、ここで、Iは接合電流である。
【0086】
同じ試験方法が、3つ以上の狭帯域光源、及び2つの接合部J1、J2より多い3つ以上の接合部を備えるタンデム型セルに適合され得ることが理解される。
【0087】
試験手順の副産物として、被試験のデバイスの整合点Bal12=1が見つかる。別の言い方をすれば、本明細書においてδIsmatchとして規定される、基準照明で見つかった点からの整合点における全電流の偏差を見つけることが可能である。
【0088】
基準スペクトルにおいて、太陽電池100の接合部の個々の電流が整合しない場合に(すなわち、Bal12≠1)、太陽電池の電流の段階的増加を測定するために使用される追加の狭帯域光源S2iが、電流制限している接合部に追加の照明を追加するように選択される。この追加の照明によって、タンデム型太陽電池の測定電流が増加する。増加率は、制限している接合部のスペクトル応答及び光源S2iのスペクトル放射照度に依存する。光源S2iが制限している接合部を照明する場合に、δIscの値は、SpBal
12の変化とともに増加し、接合点J2が制限している
図5及び他の接合点J1が制限している
図7の例に図示されるように、線形関数Iによって近似されることができる。2つのサブセルの電流整合点を超えると、制限している接合部が変化するように、基準スペクトルに対するスペクトルのアンバランスが生じる。これは、第2の線形関数、すなわち、
図5及び
図7の例の線形フィットIIによって近似されることができる、電流増加率の急激な変化をもたらす。
図6及び
図8は、使用される第2の光源S1に強度ステップを適用することによる強度の変化を概略的に示す。
【0089】
変形例においては、適合曲線は、非線形曲線であり得る。
【0090】
追加の照明が接合部のうちの1つのみによって吸収され、制限している接合部にシャントがない場合に、電流増加率はゼロになる。
【0091】
図5及び
図7の適合曲線IとIIとの交点IP(星印によって表される)は、2つの接合部の電流が整合する点を決定し、これは、値δIsc
match(S1)によって表されま。
【0092】
光源S2iのうちの1つが、被試験の太陽電池の両方の接合部によって吸収されるスペクトルを放射している場合に、それは、光源のクロストークとして規定される。クロストークは、整合点を超える光強度の更なる増加が2つの線形近似I、IIにおいて区別可能な傾きを与えるように、制限されなければならない。これは、接合部のスペクトル応答に対して光源を慎重に選択することによって達成される。また、制限している接合部が十分に高いシャント抵抗を有することが要求される。接合部のうちの1つが低いシャント抵抗を有する場合には、この方法は失敗し得る。このようなデバイスは、効果的に選別され、欠陥品として診断されることができる。
【0093】
制限している接合部を照明する光源のクロストークがゼロである場合には、以下のように、Bal12,refは、δIsc
match(S1)から導出されることができる。
【数5】
JIimは、制限している接合部のインデックスである。例えば、上部セルについてはJIim=1であり、下部セルについてはJIim=2である。
【0094】
δIsc
match≧0であるので、接合部J2が制限している場合には(JIim=2)(
図5)、Bal12≧0であり、接合部J1が制限している場合には(JIim=1)(
図7)、Bal12≦0である。クロストークが制限している接合部においてゼロに等しくない場合には(適合曲線IIの傾き)、数式(5)は、クロストークが小さい限りのみ近似になり、これは、この方法が作動するための装置の必要条件である。
【0095】
完全な特性評価のために、適合曲線I及びIIが得られ、従って、制限している接合部が識別されると、線形フィットIIIが任意に決定されることができる。それは、SpBal12を反対方向に変化させることによって得られる。適合曲線IIIの傾きがゼロに等しくない場合には、それは、接合点jが光源S2iを感知し(すなわち、光源設計の不完全性によるクロストーク)、或いは制限している接合部がシャント動作を示すことを意味する。この情報は、試験された太陽電池の正しいバランスを決定するために使用される。
【0096】
フェーズIの説明された全ての必要な測定は、光源S1の単一の短いパルス中に有利には行われることができることが強調されなければならない。より正確には、S1の光パルスの持続時間内で、S1+S21又はS1+S22の組み合わせを使用することによって、電流が測定されることができる。
【0097】
フェーズII
試験方法の第2のフェーズIIの目的は、第1の光源S1を使用することなく、スペクトル的に狭い第2及び第の3の光源S21及びS22のみの重ね合わせからなる、スペクトル的にバランスが取れ、強度が較正された複合光源S2のための狭帯域光源S2iの設定値を決定することである。
【0098】
適切に設定されている場合には、パルス光源S1で測定されたのと同じ個々の接合部の電流バランスBal12、ref、及び同じタンデム型太陽電池の全短絡電流が確立される。
【0099】
フェーズIIの最初のIscの測定値は、2次的な光源の組み合わせS21+S22に対する最良の推定光強度設定点を使用して取得される。これは、
図9に図示される特性図の最初の点を得る。
図10は、光シーケンスのステップを図示する。
【0100】
S1照明下において得られた基準Isc,ref(
図5及び
図7)と比較された、抽出されたIscの相対的な差δIscは、最良の推定光強度設定点に依存する。
【0101】
フェーズIIは、S2の照明(すなわち、S21及びS22による同時照明の組み合わせ)下における太陽電池特性図が得られるように、2つの狭帯域光源のうちの1つS21又はS22の段階的増加、及び対応するIsc値の抽出を含む。
【0102】
図9の図から、以下の量が導出される。
【数6】
【数7】
【0103】
数式(7)のδIsc1(S2)のインデックス1は、フェーズIIの最初のIscの測定値を指す。
【0104】
特性評価の目的は、以下の2つの条件を満たす2つの光強度設定値を決定することである。
【数8】
【数9】
【0105】
これらの条件が満たされる場合には、これは、電流不整合Bal12,refが、
図9の図の測定点P1において光源S2
1及びS2
2で取得され、二色光源がスペクトル的にバランスが取れているとして見做されることを意味する。この目標を達成するための詳細な方法論は、使用される装置(光源及び制御手段)に大きく依存する。数式(8)及び(9)で表される条件は、光源(S2
1及びS2
2)が、既に前述されたように光源S1と同じIscを得るために調整される場合に、フェーズIIで評価された設定で、より重要なことには、各接合部における同じキャリア注入で満たされることができる。この条件は、
図5及び
図9のような特性図を使用して、グラフ的な方法で表示及び構築されることができる。
【0106】
正しい設定のグラフ表示のための2つの異なる例が、
図11及び
図12に与えられる。両方の例が、点P1から図において表されるフェーズIIの初期特性評価点をy軸上に移している。y交点は規定によって、ΔIscである。条件ΔIsc=0は、x軸全体で満たされる。
図11及び
図12においては、被試験の太陽電池の正しいスペクトルバランスがx軸上にX十字で記され、実際には、X十字のy値と同じy値を有する図における任意の点が、数式(9)の条件、すなわち、ΔIsc
match=0を満たす。これは、2つの接合部の注入が、光源S1での照明下と同じ比率を有することを意味する。グラフ的には、この条件は、
図11及び
図12において+十字(IP)によって表される、ΔIsc
matchの縦軸成分の距離で点P1を通る線形関数(I)上の点を構築することによって見つけられる。
【0107】
+十字点(IP)から、測定されたセル100の特性評価の線形化は、δIscmatch(S1)=δIscmatch(S2)の関係、従って数式(9)を満たす。+十字(IP2)のx軸への投影、すわなち、x十字(IP1)は、特に注入バランス比を一定に保ちながら、全スペクトル光源S1と同じ各接合部への注入のために二色光源S21及びS22の両方の強度の調整のグラフ表示である。
【0108】
グラフ的には、フェーズIIの初期測定点P1からX十字(IP1)までの経路は、それぞれS2
2及びS2
1がラベル付けされ、矢印によって表示される、
図10及び
図12の2つのベクトルによって表される二色光源S2
1及びS2
2の各成分の個別の変化に分解されることができる。各ベクトルは、それに応じてラベル付けされた二色光源のうちの1つのみの別個の調整による図におけるセル特性のシフトを表す。
【0109】
図11及び
図12において与えられる2つの例は、両方とも下部限定のタンデム型セル100の場合を表す。
【0110】
図11及び
図12は、数式(8)及び(9)の条件を満たすために、スペクトル的に狭い光源がどのように調整されなければならないかのグラフ的な構成の例を図示する。三角点(P1)は、シーケンスのフェーズIIの最初の測定点を示す。
【0111】
図11及び
図12に図示される両方の場合において、初期に測定されたIscは高すぎる(Isc>0)。二色光源の必要な調整は、注入の比率が上部セルに向かってシフトするように(ΔIsc
match>0)、行われなければならず、これは、X十字(IP1)の位置がSpaBal12の左側(負の方向)にあることと同等である。
図11においては、(|ΔIsc
match|<|ΔIsc|)であるので、これを達成するために両方の光源の強度を減少させる必要がある。この減少は、
図11の下向きの2つの矢印によって示される。
【0112】
それ故に、
図11の場合においては、ΔIsc>0であり、|ΔIsc
match|<ΔIscである。ΔIsc
matchは、結果であり、この場合の要件ではない。
図11の場合においては、LED2は、LED1より強く低減されなければならないことに注意すべきである。
【0113】
図12に図示される例の場合においては、第3の光源S2
2の強度の減少の後に得られる電流が低すぎるので(|ΔIsc
match|>|ΔIsc|)、第2の光源S2
1の強度の増加(上向きの短い矢印によって示される)によって、被試験の太陽電池の電流を調整することが要求される。
【0114】
それ故に、
図12の場合においては、|ΔBal
12|<|ΔI
sc|及びΔBal
12<0は、結果であり、ΔI
scは、正又は負になることができる。
【0115】
個々の光源S21及びS22の各々の強度調整の情報は、特性評価装置の不可欠な部分である、基底ベクトルの長さ及び光源強度の較正関数に含まれる。
【0116】
一般的に、得られた監視値G1,ref及びG2,refに依存する
図9に図示されるように、フェーズIIの初期測定点P1がSpBal12=0に位置しない場合があることが強調されなければない。調整は、初期点P1に対するものであるので、絶対x値の影響を受けず、従って、初期点P1がy軸上に変換されている、
図11及び
図12において選択されるようなより直観的な表示に変換されることができる。言い換えれば、定数のx値による図の変換は、狭スペクトル帯域光源S2の調整を表す結果として得られるベクトルに影響を与えない。
【0117】
測定シーケンスのフェーズIII
測定シーケンスのフェーズIIIは、同じ短絡電流Isc、及び光源S1と同じ電流不整合Bal12、すなわち、Bal12(S1)=Bal12(S2)を保証する光源S21及びS22の決定された利得で、スペクトル的に調整された光源S2(すなわち、S21及びS22の組み合わせ)を使用するフルIV特性評価である。
【0118】
本願発明の太陽電池試験装置1
本願発明はまた、本明細書で記載されるような本願発明の試験方法に従ってタンデム型太陽電池100を測定及び特性評価するために、太陽シミュレータとしても規定される試験装置1によって達成される。
【0119】
試験装置は、本明細書に記載されるような本願発明の試験及び特性評価方法の全てのステップを実行することを可能にする。
【0120】
本願発明の試験装置は、好ましくは、
- 強度(1sun±20%)及びパルス持続時間(典型的には5~20ミリ秒)に関する制限された変動性を有する、基準スペクトルAM1.5(典型的にはフィルタ付きキセノン光源)に厳密に整合する1つの短(5~20ミリ秒)パルス光S1、並びに
- 個別に制御されることができる接合部と同数の狭スペクトル帯域光源であって、これらの光源は、被試験のタンデム型太陽電池の接合部のうちの1つを主に励起することができるスペクトルを放射し、例えば、各単接合部のスペクトル応答と一致する中心波長を有するLEDベースの光源であり、各光源は、幾つかのPV技術の要件に対応するために、強度(それは、典型的には、タンデム型デバイスの対応する接合部において2つの太陽の照明で得られるのと同じ電流を生成することができる)及び持続時間(典型的には最大1秒)に関する大きな動作変動性を有する、狭スペクトル帯域光源
からなる。
【0121】
更に、必須ではないが使用を容易にするために、試験装置1は、光強度監視デバイスを備えることができる。このデバイスはまた、波長選択的にすることができ、例えば、狭帯域光源のうちの1つを選択することができる。通常、この監視セルは、光学バンドパスフィルタを備える光起電力シリコンダイオードで作られる。監視セルは、好ましくは、被試験のデバイスと同じレベル、及び均一な照明領域内に配置されなければならない。しかし、これは、必須ではなく、高精度の監視にまさに適している。これは、少なくとも、DUTに入射する光強度を表さなければならない。
【0122】
試験装置はまた、好ましくは、
- DUTの電流及び電圧、並びに適用可能な場合には、任意の要求された一時的に課せられた電圧波形を同じDUTに適用しながら、各監視セルの電流を測定することができる能動電子負荷
を備える。
【0123】
図1は、様々なタイプの光源、被試験の多接合デバイス、及び監視セルで測定するために使用される試験装置の光学配置の原理を示す。第1の光源S1は、試験されるタンデム型太陽電池全体に入射する光ビームを放射し、方向付けるように構成される。少なくとも2つのLEDのような狭帯域光源S21及びS22は、試験されるタンデム型太陽電池全体に入射する光ビーム12、14を提供するように構成される。
図4に図示されるように、各光ビーム10、12、14は、被試験の太陽電池を完全にカバーしなければならない。
【0124】
本願発明の試験装置1は、特に、2つの接合部J1、J2の最小電流に対応する、被試験の太陽電池100の短絡電流Iscの決定を可能にする。この装置の光源S1、S21、S22の各組み合わせに対して、Iscが、決定されることができ、個々の光源強度は、それらの制御手段又は独立した測定手段によって決定される。
【0125】
この方法及び試験装置の変形例においては、測定の精度及び/又は速度が改善され得るように、選択されたパルス周波数を有する、使用されるパルス光源に実装するための手段が提供されることができる。