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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】箔熱転写装置
(51)【国際特許分類】
   B65C 9/02 20060101AFI20240823BHJP
   B41M 7/00 20060101ALI20240823BHJP
   B41M 3/12 20060101ALI20240823BHJP
   B65C 9/24 20060101ALI20240823BHJP
【FI】
B65C9/02
B41M7/00
B41M3/12
B65C9/24
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024030168
(22)【出願日】2024-02-29
【審査請求日】2024-04-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】724003181
【氏名又は名称】田中 慎治
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎治
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-197373(JP,A)
【文献】特開2020-121467(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101770200(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65C 9/02
B65C 9/24
B41M 3/12
B41M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に箔フィルムを熱転写する箔熱転写装置であって、
外周部に弾性体を有する熱ローラと、
前記熱ローラの径方向中心部付近に配設された熱源と、
前記熱ローラとの間に、基板と箔フィルムを挟撃する第1の加圧ローラと、
前記熱ローラの径方向を、前記第1の加圧ローラと挟撃する位置に配設された第2の加圧ローラと、
前記第2の加圧ローラの径方向中心部付近に配設された熱源と、
前記第1の加圧ローラを昇降する昇降装置と、
を有しており、
各ローラを圧接する前の状態において、前記熱ローラと前記第2の加圧ローラとの間に空隙を有しており、
前記熱ローラと前記第1の加圧ローラとの間に位置開閉自在な空隙を有しており、
前記第1の加圧ローラと前記第2の加圧ローラとの長手方向撓み強度が略一致することを特徴とする箔熱転写装置。
【請求項2】
前記第2の加圧ローラの本数が2本以上であることを特徴とする請求項1に記載の箔熱転写装置。
【請求項3】
前記第1の加圧ローラの径方向中心部付近に熱源を有することを特徴とする請求項1に記載の箔熱転写装置。
【請求項4】
前記熱ローラの外周部に熱伝導率が1~1.3W/m・Kである弾性体を有することを特徴とする請求項1に記載の箔熱転写装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トナーが熱転写されたコピー紙等に、箔フィルムから箔を熱転写
する箔熱転写装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1および特許文献2には、レーザープリンタによりトナーで文字が印刷された紙を、箔フィルムと重ねて熱圧着し、その後、紙と箔フィルムとを引き剥がすことにより、紙の文字印刷部分にのみ箔を接着する箔熱転写方法が開示されている。
また下記の特許文献3および特許文献4には,箔フィルムのキャリア層から転写箔層を効率良く分離するための方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-2098
【文献】特開2000-15944
【文献】特許6314988
【文献】特表2016-502473
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年レーザープリンタの印刷技術の進歩により、数十μm程度の凹凸のある紙に対してもトナーを転写して印刷することが可能となってきている。そして装飾性に対する市場ニーズから、レーザープリンタにより印刷された凹凸のある紙に対しても、箔を転写することが求められるようになってきている。
【0005】
一般に平滑な紙にレーザープリンタによりトナーで文字等が印刷された紙に箔を熱転写する装置は市場で販売され広く使用されている。
しかしながら平滑な紙に対して箔の熱転写が行える箔熱転写装置を使用して、トナーで印刷された凹凸のある紙に箔フィルムの箔を接着しようとすると、凹凸のある紙の凹部に箔フィルムを十分に密着することが難しく箔の接着が不十分となる欠点が存在した。
【0006】
このため近年市販の箔熱転写装置では、箔フィルムと紙を重ねて熱圧着するための温度と圧力を上げて、箔フィルムを熱で軟化すると共に熱ローラ外周部のゴムを高圧で弾性変形させて、箔フィルムの箔を凹部の底にも密着させることにより、数十μm程度の凹凸のある紙に対しても箔の熱転写を行うことが行われている。
【0007】
しかしながら、従来の箔熱転写装置で単に圧力を上げると問題が発生することが知られている。すなわち従来の装置で熱転写の圧力を上げると、熱ローラと圧力ローラとが互いに弓なりになる撓みが大きくなり、ローラ長手方向中央部付近の圧着力が不十分になり、凹凸紙の凹部に箔フィルムを密着させることが不十分となり、凹部において箔の熱転写が十分行われない問題が発生する。
【0008】
このため、高い圧力をかけた時に撓みの発生が少なくなるように、ローラの径を大きくして長手方向の撓みに対する剛性を強化し、またフレームの強度を上げる等の装置全体にわたる剛性強化対策が必要となり、必然的に箔熱転写装置が大重量および大型化して装置の設置に制限を受けたり、高コストになるという問題が存在した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本開示の箔熱転写装置は、基板に箔フィルムを熱転写する箔熱転写装置であって、外周部に弾性体を有する熱ローラと、熱ローラの径方向中心部付近に配設された熱源と、熱ローラとの間に基板と箔フィルムを挟撃する第1の加圧ローラと、熱ローラの径方向を、第1の加圧ローラと挟撃する位置に配設された第2の加圧ローラと、第2の加圧ローラの径方向中心部付近に配設された熱源と、第1の加圧ローラを昇降する昇降装置と、を有することを備えている。
【0010】
各ローラを圧接する前の状態において、熱ローラと第2の加圧ローラとの間に空隙を有するとよい。
熱ローラと第1の加圧ローラとの間に位置開閉自在な空隙を有するとよい。
第1の加圧ローラと前記第2の加圧ローラの長手方向撓み強度が略一致するとよい。
【0011】
また第2の加圧ローラの本数が2本以上であってもよい。
また、第1の加圧ローラの径方向中心部に熱源を有するとよい。
また、熱ローラの外周部に熱伝導率が1~1.3W/m・Kの弾性体を有するとよい。
【発明の効果】
【0012】
本構成によれば、熱ローラの長手方向撓み強度に依存することなく、熱ローラの長手方向撓みが小さい状態で箔熱転写が可能となり、その結果比較的小径の熱ローラの採用時においても大きな荷重を加圧して、接触部圧力が高くすることで、凹凸のある紙等の比較的箔熱転写が難しい基板であっても、箔熱転写が十分行える効果がある。
【0013】
本構成によれば、熱ローラの長手方向撓み強度に依存することなく、熱ローラの長手方向撓みが小さい状態で箔熱転写が可能となり、その結果比較的小径の熱ローラを採用できるので装置を小型軽量にすることが可能となり、箔熱転写装置の製作費用および設置スペースを減らすことが可能となる等の効果がある。
【0014】
熱ローラと第1の加圧ローラとは、圧接位置調整自在であり、基板が厚くても箔熱転写が可能となる効果がある。
箔熱転写を行う前の準備段階において、各ローラが離間しているので、熱ローラ外周部のゴムが変形することを避けることができる効果がある。
また加熱ローラと第2の加圧ローラとを兼用することで、箔熱転写装置の製作費用および設置スペースを減らすことが可能となる等の効果がある。
第2の加圧ローラの材質に熱伝導性の良い材料を選択することが可能となるので、効率良く熱ローラを加熱することが可能となる効果がある。
【0015】
第2の加圧ローラの本数が複数である場合、1本である場合と比較してさらに効率良く熱ローラを加熱することが可能となる効果がある。
第1の加圧ローラの径方向中心部に熱源を設けることにより、第1の加圧ローラの外周部温度を、熱転写に最適な温度に設定することが容易になる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態1に係るローラ圧接前の状態図。(側面図)
図2】実施形態1に係るローラ圧接状態図。(側面図)
図3】実施形態1に係るローラ圧接状態図。(正面図)
図4】従来例に係るローラ圧接状態図。(正面図)
図5】実施形態2に係るローラ圧接状態図。(正面図)
図6】従来例に係るローラ圧接状態図。(側面図)
図7】実施形態1に係るローラ圧接状態図。(側面図)
図8】従来例に係るローラ圧接状態図。(側面図)
図9】凹凸のある紙に箔熱転写を行うときの圧接状態図。(部分拡大図)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、
以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0018】
次に、本実施形態の箔熱転写装置100について説明する前に、従来の箔熱転写装置100の問題点に関して、図4および図6および図9を用いて説明する。ここで、以下の従来の箔熱転写装置の説明と、後述する本実施形態の箔熱転写装置の説明に用いる符号に関して、特に区別する必要が無い限り、同様な部材については同一の符号を付して説明する。
【0019】
図6は、従来の箔熱転写装置100の一例の概要構成図、図4は、熱ローラ1と加圧ローラ5の加圧状態における撓みについての説明図である。図4では撓みを強調して作図しており、荷重と各ローラの剛性の関係によりローラの長手方向中心部付近に隙間が生じる場合と、目視では隙間が判別できない状態も存在する。
【0020】
図4および図6の詳細な説明は、以下に開示する発明の実施形態1および実施形態2の説明と重複する部分があるので省略する。ただし、従来例と発明の実施形態1および実施形態2とを比較して大きな差異は、従来例は加圧ローラが1本であるのに対し、発明の実施形態1および実施形態2では加圧ローラの本数が2本となっており、熱ローラ1を挟撃する位置に2本の加圧ローラが配置されている。また図4に示すように熱ローラ1と加圧ローラ5とは互いに弓なりに撓んでおり、ローラの長手方向中心部付近に隙間が発生する場合と、撓みを熱ローラ1の外周部の熱ローラゴム1bの変形で吸収する場合が存在するが、どちらの場合もローラの長手方向中心部付近において圧力の低下が発生する。
【0021】
次に図9を用いて説明する。
図9は基板13が例えば凹凸のある紙であって、表面にレーザープリンタでトナーを熱転写されている場合の箔フィルムによる箔の熱転写の部分拡大説明図である。
熱ローラ1と加圧ローラ5(図示せず)との間に、箔フィルム12と基板13であるところの凹凸のあるトナーで印刷された紙を重ね合わせて加圧および加熱を行っている状態を示している。これにより、箔フィルムの箔層12uを基板13に接着せしめようとする。ところが、図9に示すように、基板13であるところの凹凸のあるトナーで印刷された紙の凹部13aには箔フィルム12が接触し難いので、結果として箔フィルムの箔層12uが熱転写され難くなっている。
【0022】
そのため従来では、熱ローラ1と加圧ローラ5(図示せず)との間の圧力を上げることにより、熱ローラゴム1bを変形させて紙の凹部13aに箔フィルム12を接触せしめると共に、さらに熱ローラゴム1bの温度を上げることにより、箔フィルム12を軟化せしめて、これも合わせて紙の凹部13aに箔フィルム12を接触させようとする。
【0023】
箔フィルム12が紙の凹部13aに接触するようになる圧力と温度には、熱ローラゴム1bおよび箔フィルム12、基板13であるところの凹凸のある紙の機械的特性や温度特性によりさまざまな組み合わせ条件が存在する。また、基板13であるところの凹凸のある紙の凹凸の深さや形状によっても条件が異なる。
このため、実験的に箔熱転写を行って圧力や温度の条件を設定することが行われており、箔熱転写が行える紙の種類も選択することが行われている。
【0024】
一般的に数十μm程度の凹凸のある紙に熱転写を行う場合、平滑な紙であれば100℃~130℃程度である熱ローラゴム1bの温度を180℃から200℃程度に上げることが行われている。また、熱ローラ1と加圧ローラ5との間の圧力も、平滑な紙であれば30N/cm2程度であるが、凹凸のある紙に対しては100/cm2程度に上げることが従来から行われている。
【0025】
圧力を上げると熱ローラ1と加圧ローラ5の長手方向撓みが大きくなるので、熱ローラ1と加圧ローラ5の剛性を上げるために、ローラの外径を大きくして撓みが発生し難いように装置を大型化することが行われてきた。
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(発明の実施形態1)
以下、実施形態1を、図1図3を用いて説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は、箔熱転写装置100を示す。図1は各ローラの圧接前の状態を示している。熱ローラ1および第1の加圧ローラ5の外周面は互いに対向するように配置されている。
熱ローラ1は第1の加圧ローラ5との間に図中d1で示す隙間を設けている。この隙間d1に箔フィルム12および基板13の表面が、熱ローラ1および第1の加圧ローラ5の外周面と対向するように配置されている。
【0027】
熱ローラ1の外周に熱ローラゴム1bを有する。この熱ローラゴム1bはシリコンゴムであることが望ましいが、シリコンゴムに添加物を加えることにより熱電導率を1W/m・K以上にすることが望ましい。第1の加圧ローラ5は金属で製作されることが多く鋼が望ましいが、アルミニウム等の金属で製作しても良い。熱ローラ1および第1の加圧ローラ5の長手方向両端部には、それぞれ熱ローラ軸受1aおよび加圧ローラ軸受5aを有する。
【0028】
カム6はカム回転軸7を中心に回転することができる。
箔フィルム12は箔フィルムの移送層12t上に配置される箔フィルムの箔層12uを有する。箔フィルム12は、箔フィルムの箔層12uが、熱転写される基板13の表面に対向するように配置される。箔フィルムの箔層12uは、熱により活性化可能な接着層でコーティングされてもよい。箔フィルムの移送層12tからの箔フィルムの箔層12uの分離を促進する、離型層が、箔フィルムの移送層12tと箔フィルムの箔層12uとの間に配置されても良い。
第2の加圧ローラ2は鋼あるいはアルミニウム等の金属で製作することが望ましい。第2の加圧ローラ2の長手方向両端には第2の加圧ローラ軸受2aを有する。
【0029】
第1の加圧ローラ軸受5aの外周面は、自重により、カム6の外周面と摺動自在に当接している。また第1の加圧ローラ軸受5aの外周面は、軸受ガイドC10に案内されて図中鉛直方向に自在に昇降することが可能となっている。
熱ローラ軸受1aは軸受ガイドB9により、所定の位置から鉛直下向き方向に脱落しないように支持されているとともに、鉛直上向き方向には、軸受ガイドB9により自在に昇降することが可能となっている。
第2の加圧ローラ軸受2aは軸受ガイドA8により、所定の位置から鉛直下向き方向に脱落しないように支持されているとともに、鉛直上向き方向には、軸受ガイドA8により自在に昇降することが可能となっている。また、圧縮コイルばね4により、押圧部材3を介して第2の加圧ローラ軸受2aを軸受ガイドA8に押圧している。
【0030】
以上の状態において、第2の加圧ローラ2の外周面と熱ローラ1の外周面との間には隙間d2が設けられている。
箔フィルム12は巻き出しローラ(図示せず)から巻き出されて、箔フィルムガイド11に巻きまわされて、熱ローラ1と第1の加圧ローラ5との間の隙間d1を通過するように配設されている。それ以降、箔フィルム分離部材15に巻きまわされた後、巻取ローラ(図示せず)に巻き取られる構成となっている。
以下図2を使用して説明する。
図2では各ローラが圧接して、図中矢視方向の基板13および箔フィルム12を移送する状態を示している。
【0031】
カム6がカム軸7を中心として回転すると、カム6の外周面が第1の加圧ローラ軸受5aの外周面と摺接する。この時、第1の加圧ローラ軸受5aが軸受ガイドC10に案内されて、第1の加圧ローラ5は図中鉛直上向き方向移送される。
第1の加圧ローラ5が図中鉛直方向に移送されると、第1の加圧ローラの外周面が熱ローラ1の外周面と当接して、熱ローラ1を鉛直上向き方向に移送する。
熱ローラ1が鉛直上向きに移送されると、熱ローラ1の外周面が第2の加圧ローラ2の外周面と当接して、第2の加圧ローラ2が鉛直上向きに移送されるので、第2の加圧ローラ軸受2aがさらに押圧部材3を鉛直上向きに移送して、圧縮ばね4を圧縮する。
【0032】
圧縮ばね4を圧縮することにより発生するばね力により、熱ローラ1と第1の加圧ローラ2との間に圧力が発生する。
この圧力で、箔フィルム12を基板13に押し付けて、箔熱転写を行う。
以下図3を用いて説明する。
図3は、図2の各ローラの圧接状態における、各ローラの撓みの発生状態を説明する図である。図3において、熱ローラ1は長手方向におおむね撓みが発生していない状態を示している。このような状態は、第1の加圧ローラおよび第2の加圧ローラのたわみ強度が略一致している場合に発生する。つまり、熱ローラ1の撓み強度が弱くても、熱ローラ1を挟持する位置に撓み強度がおおむね一致する2本のローラを配置することにより実現される。
【0033】
熱ローラ1の撓みを考慮する必要が少ないので、熱ローラの外径を自比較的自由に選択することが容易となる。
図1図3の第1の加圧ローラと第2の加圧ローラの外径は異なっているが、図1図3の場合は、第1の加圧ローラ5を鋼で製作し、第2の加圧ローラ2をアルミニウムで製作する時に、鉄とアルミニウムのヤング率が大きく異なるために、アルミニウムで製作した第2の加圧ローラの外径を大きくする場合がある。
ヤング率の例
炭素鋼 S45C ヤング率 205 GPa
アルミニウム合金 A5052 ヤング率 70.6 GPa
以上まで、第1の加圧ローラ5と第2の加圧ローラ2の長手方向撓み強度が略一致する場合を示してきたが、箔熱転写を行う際に支障のない範囲で撓み強度が異なってもよい。
(発明の実施形態2)
以下、実施形態1を、図5および図6を用いて説明する。
【実施例2】
【0034】
図5および図6は第1の加圧ローラ5と第2の加圧ローラ2の材料を同一材料とした場合であり、撓み強度を略一致させるためにローラ外径を略同一にしている。
その他の構成は実施形態1と同様である。
実施形態2によれば、第1の加圧ローラ5と第2の加圧ローラ2を同一の部材で製作することも可能となる。
【0035】
(発明の実施形態1および実施形態2の熱伝導に関する説明)
以下に実施形態1および実施形態2が箔熱転写を行うために必要となる熱について説明する。
図2において、熱ローラ1の中心部にハロゲンヒーターA16を配置し、第1の加圧ローラ5の中心部にハロゲンヒーターC18を配置し、第2の加圧ローラ2の中心部にハロゲンヒーターB17を配置している。
【0036】
通常、熱ローラ1の中心部に配置したハロゲンヒーターA16を点灯して、熱ローラ1の熱ローラゴム1bのゴムを加熱する。箔フィルム12および基板13を図2の矢視方向に移送すると、熱ローラゴム1bの熱が箔フィルム12および基板13に奪われて温度が低下するために、ハロゲンヒーターA16を点灯して加熱する。このとき、熱ローラ1の芯金部および熱ローラゴム1bを熱が伝導するので、熱ローラゴム1bの表面温度センサー(図示せず)の温度測定値によって温度調整を行う時には熱伝導時間の遅れが発生し、精度の良い温度制御が難しい。
【0037】
そこで、特許6314988に示すように、熱ローラゴム1bの表面を直接ハロゲンヒーターで加熱を行ったり、図8に示すように中心部にハロゲンヒーターD20を配置した加熱ローラ19を熱ローラ1に当接して加熱することが行われてきた。 加熱ローラ19は熱伝導率が高いアルミニウムの材料で製作されることが多い。
【0038】
本発明の実施形態1における図1および図2においては、第2の加圧ローラ2の中心部にハロゲンヒーターを配置するとともに、第2の加圧ローラ2の材質としてアルミニウム等の熱伝導率が高いが、ヤング率は比較的低い材料採用する場合の実施形態を例示している。
【0039】
第2の加圧ローラにアルミニウムを使用するのは、熱伝導率が高い材料を使用したい等の場合である。つまり、第2の加圧ローラの径方向中心部付近に配設されたハロゲンヒーターB17で発生した熱を、効率的に熱ローラ1の外周部にある熱ローラゴム1bに伝えることができる。これにより、箔熱転写を連続して行う場合に、基板13および箔フィルム12に奪われる熱量を効率的に補充する。
【0040】
熱伝導率の例
炭素鋼 S45C 熱伝導率 45.0 W/m・K
アルミニウム合金 A5052 熱伝導率 138 W/m・K
同様の理由で、熱ローラゴム1bの材料として、熱伝導率が1~1.3W/m・Kのシリコンゴムを採用するとよい。通常のシリコンゴムの熱伝導率は、0.2W/m・K程度であるが、シリコンゴムに無機質充填剤を添加することにより、熱伝導率を1~1.3W/m・K程度にまで高くしたゴム材料が製品化されている。
【0041】
この熱伝導率が高いゴムを採用することにより、熱ローラ1の径方向中心部付近に配置されたハロゲンヒーターA16で発生した熱を効率的に熱ローラゴム1bに伝えて、箔熱転写を連続して行う場合に、基板13および箔フィルム12に奪われる熱量を効率的に補充することができる。
また、第1の加圧ローラ5の径方向中心部付近にハロゲンヒーターC18を配設している。基板13であるところの、レーザープリンタによりトナーで印刷された紙と、第1の加圧ローラは箔熱転写中に接触している。この、第1の加圧ローラ5の温度は、50℃~100℃程度にするとよいことが実験的に確かめられている。
【0042】
つまり、温度が高過ぎるとトナーが溶融して基板13に付着するので、箔熱転写が十分に行えない。また低すぎると、箔フィルムの箔層12uとトナーとの接着性が低下して品質上好ましくない。
(発明の実施形態1および実施形態2についての厚い基板を使用する場合の説明)
また、図7に示すように、カム6の回転角度を調整することにより、基板13の厚さが変化しても、適切な圧力を加えることが可能となる構成となっている。
また、図1および図2には第2の加圧ローラ2が1本の場合を例示しているが、第2の加圧ローラが複数あっても良く、熱ローラ1の撓みがおおむね発生しないローラの撓み強度と配置を適宜選択すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本開示に係る箔熱転写装置によれば、大荷重かつ大熱量で箔を基板に熱転写することが可能となる。結果として、レーザープリンタによりトナーで文字が印刷された凹凸のある紙に対しても、小型の装置で箔熱転写を行うことが可能となり、熱転写を用いた箔熱転写装置全般に対する用途に適用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 熱ローラ
1a 熱ローラ軸受
1b 熱ローラゴム
2 第2の加圧ローラ
2a 第2の加圧ローラ軸受
3 押圧部材
4 圧縮ばね
5 第1の加圧ローラ
5a 第1加圧ローラ軸受
6 カム
7 カム回転軸
8 軸受ガイドA
9 軸受ガイドB
10 軸受ガイドC
11 箔フィルムガイド
12 箔フィルム
12t 箔フィルムの移送層
12u 箔フィルムの箔層
13 基板
13a 基板の凹部
14 熱転写された基板
15 箔フィルム分離部材
16 ハロゲンヒーターA
17 ハロゲンヒーターB
18 ハロゲンヒーターC
19 加熱ローラ
20 ハロゲンヒーターD
100 箔熱転写装置
【要約】
【課題】レーザープリンタによりトナーで印刷された凹凸のある紙に、比較的剛性の低い小径の熱ローラを採用した小型の箔熱転写装置を使用して、箔を熱転写すること。
【解決手段】箔を熱転写する時の熱ローラの撓みによる箔の熱転写不良の品質を改善すべく、熱ローラを挟撃する位置に第1の加圧ローラと第2の加圧ローラとを配置するとともに、第2の加圧ローラと加熱ローラとを兼用する構成とした。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9