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  • 特許-注射作業用補助具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-22
(45)【発行日】2024-08-30
(54)【発明の名称】注射作業用補助具
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/00 20060101AFI20240823BHJP
【FI】
A61M5/00 500
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024101385
(22)【出願日】2024-06-24
【審査請求日】2024-06-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521301057
【氏名又は名称】秋山 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 和弘
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-079724(JP,A)
【文献】中国実用新案第207237036(CN,U)
【文献】韓国公開実用新案第20-2018-0002858(KR,U)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0095248(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射対象者の腕の近傍に配置させた際に前記腕に対する注射作業を前記注射対象者の視覚野から遮蔽する遮蔽部と、
前記腕に対する離接移動が可能なように前記遮蔽部に設けられた接触部と、
前記遮蔽部と前記接触部のうちの少なくとも一方に表示されて、前記接触部が前記腕に動的に接触する必然性を表現する図柄と、
を有することを特徴とする注射作業用補助具。
【請求項2】
前記遮蔽部は、前記腕を挿通させる挿通口を有することを特徴とする請求項1記載の注射作業用補助具。
【請求項3】
前記遮蔽部は、当該遮蔽部を自立させる脚部を有することを特徴とする請求項2記載の注射作業用補助具。
【請求項4】
前記接触部は、前記腕に対して鋭角な先端を接触させる突起形状を有することを特徴とする請求項1記載の注射作業用補助具。
【請求項5】
前記図柄は、前記接触部が生物の一部として前記腕に接触するよう表現されることを特徴とする請求項1記載の注射作業用補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射作業時に用いる注射作業用補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、注射針を備えた注射器そのものの外観と、その注射針を身体に挿入する注射作業行為に対して視覚的に不安感や嫌悪感を覚える人は少なくない。特に予防接種などで注射作業の対象者が子供である場合には、注射器と注射作業に対する恐怖心から泣き叫んでしまい円滑に注射作業を行えない場合が多くある。これに対して例えば特許文献1では、注射針の全体を覆って隠すよう筒状のカバーを注射器に取り付ける構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-156954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来技術では、注射器そのものの存在とそれを対象者の腕に押し当てる作業行為自体は対象者から目視されてしまい、それだけでも大きな恐怖心を生じさせてしまう。しかし、例えば対象者に目隠しをするなどによって単純に注射器を完全に視覚から隠した場合には、注射時の瞬間に大きなショックを与えて対象者に心的に大きな負担を強いることになる。
【0005】
本発明の目的は、注射対象者における注射作業への恐怖心や心的負担を大きく軽減できる注射作業用補助具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明の注射作業用補助具は、注射対象者の腕の近傍に配置させた際に前記腕に対する注射作業を前記注射対象者の視覚野から遮蔽する遮蔽部と、前記腕に対して離接可能なように前記遮蔽部に設けられた接触部と、前記遮蔽部と前記接触部のうちの少なくとも一方に表示されて、前記接触部が前記腕に動的に接触する必然性を表現する図柄と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、注射対象者における恐怖心や心的負担を大きく軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る注射作業用補助具を2方向それぞれから見た全体斜視図である。
図2】注射作業用補助具の分解斜視図である。
図3】注射作業用補助具の使用前の状態を表す図である。
図4】注射作業用補助具を使用した注射作業中の状態を表す図である。
図5】注射作業用補助具の図柄の変形例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は説明のためのものであり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。したがって、当業者であれば下記の各構成要素を均等なものに置換した実施形態を採用することができ、それらについても本発明の技術的範囲に含まれる。また、以下の説明では、本発明の理解を容易にするため、重要でない公知の技術的事項の説明を適宜省略又は簡略化する。
【0010】
<本実施形態の注射作業用補助具の概略的な構成>
図1(a)、図1(b)は、本実施形態に係る注射作業用補助具の概略的な構成を手前側と奥側のそれぞれから斜視で表した図である。注射作業用補助具1は、例えば小児などで予防接種のためにその腕に注射をしてもらう注射対象者(後述の図3図4参照)と、特に図示しない医師などの注射作業者との間に配置される医療用補助具である。注射作業用補助具1は、遮蔽部2と、接触部3と、脚部4とを有している。なお、図1中に示す手前、奥、上、下、左、右の各方向は、注射対象者から見た方向を基準としており、以下の各図においても共通して参照する。
【0011】
遮蔽部2は、全体が略矩形形状であって適宜の広い面積を有する平板壁部であり、奥側に向けて所定の傾斜角で傾斜する姿勢となっている。また遮蔽部2の下方側中央には、注射対象者の腕を挿通させることが可能な矩形形状の挿通口21が形成されている。
【0012】
接触部3は、後述するように遮蔽部2の内部を上下方向に貫通しており、別途作業者の手作業によってその下端部が上記挿通口21の内部で上下移動できるよう設けられている。
【0013】
脚部4は、上記遮蔽部2においてその挿通口21をはさんだ両側の下方部分にそれぞれ一体に設けられており、上述した傾斜角の姿勢を維持して自立できるよう当該遮蔽部2を支持している。
【0014】
また、本実施形態の例では、遮蔽部2の手前側の表面に鬼の顔面を表す図柄5が表示されており、上記挿通口21が鬼の口に相当してその内部に位置する接触部3の下端部が鬼の上歯列に見立てた表現となっている。
【0015】
図2は、上記図1(b)と同じ視点からみて当該注射作業用補助具1の全体の構成を詳細な部位に分解して示した斜視図である。この図2において、遮蔽部2は、手前側壁部22と、2つの中壁部23と、奥側壁部24とを有している。手前側壁部22は、その下方側中央に位置する挿通口21を囲んで全体が逆U字形状に形成された薄壁板である。中壁部23は、手前側壁部22のうちで挿通口21を左右両側に挟む2つの領域にそれぞれ重複一致する大きさと形状の薄壁板であり、それぞれ手前側壁部22の奥側表面に固定的に貼り付けられる。奥側壁部24は、挿通口21の横幅寸法W1より広い幅寸法W2と、後述するストッパ間隔H1より短い縦寸法H2との矩形形状に形成された薄壁板であり、上記2つの中壁部23それぞれの奥側表面の間に渡って固定的に貼り付けられる。
【0016】
接触部3は、接触本体部31と、2つのストッパ32とを有している。接触本体部31は、挿通口21の横幅寸法W1と同じ幅寸法W1と、上記奥側壁部24の縦寸法H2より十分長い縦寸法との略矩形形状に形成された薄壁板である。この接触本体部31の上端位置と比較的下方側の途中位置の2か所でそれぞれの奥側表面にはストッパ32が貼り付けられており、それら2つのストッパ32の間の上下方向の間隔H1は上記奥側壁部24の縦寸法H2より十分長く設定されている。また図示するこの例では、上述したように接触本体部31の下端部を鬼の上歯列に見立て、それぞれ下方に向けて先端が鋭角に尖った5つの突起形状部33が形成されている。
【0017】
脚部4は、2つの底壁部41と、2つの支持部42とを有している。2つの底壁部41は、それぞれ上記手前側壁部22の両側下端部分から上記傾斜角を成して一体に形成された薄壁部である。2つの支持部42は、それぞれ各中壁部23の裏面と各底壁部41の上面との間を渡すよう固定され、それらの間の上記傾斜角を維持させる。これにより、当該注射作業用補助具1が例えば机の上に載置された際には、各底壁部41の下面が机上面と面接触し、各支持部42が上記傾斜角での姿勢を維持して注射作業用補助具1の安定した載置が可能となる。
【0018】
また、2つの中壁部23とその間に配置される接触本体部31がそれぞれ同じ厚さ寸法であることで、接触部3の全体は遮蔽部2の内部で上下方向に移動可能に挿通された構成となっている。またその移動長さは、ストッパ間隔H1と奥側壁部24の縦寸法H2との差分寸法(H1-H2)の長さとなる。そしてその移動範囲は、接触本体部31の下端の突起形状部33(鬼の上歯列)が常に挿通口21内で見える範囲に設定される。
【0019】
<注射作業用補助具の使用形態>
以上のように構成された本実施形態の注射作業用補助具1の使用形態を、図3図4を用いて説明する。まずその使用前には、図3に示すように遮蔽部2の手前側の表面に表示されている鬼の顔面の図柄5を注射対象者に見せるよう、当該注射作業用補助具1の手前側表面を注射対象者に向けて配置する。接触部3の上端を上方に引き上げ、最も広く開口させた状態の挿通口21に注射対象者の腕100を深く挿通させる。この時点では対象者の腕100に接触部3が接触していないため、特に刺激を与えずに自由な挿通が可能である。
【0020】
そして注射作業時には、図4に示すように遮蔽部2によってその奥側に存在する注射器200の存在やそれを注射対象者の腕100へ近づける行為を注射対象者の視覚野から遮蔽することができ、注射対象者が抱く不安感や恐怖心を大きく抑制できる。そして実際に注射器200を腕に注射する際には、作業者又は別途の補助作業者の手作業によって接触部3を下方に下げ、その下端部に設けたいずれかの突起形状部33の先端を腕100に接触させて適度の刺激を注射対象者に与える。
【0021】
このとき、注射針を腕に差し込む直前のタイミングで接触部3を腕100に接触させることが望ましく、さらにその後適宜の時間の間で上下動を繰り返して断続的に接触させてもよい。また接触させる強さについても、注射針が腕に差し込まれる際に与える刺激と同程度かもしくはそれより少しだけ弱い程度の強さで接触させることが望ましい。以上によって注射対象者の心理としては、仮想的に鬼の口に噛まれることの刺激に注力することになり、実際の注射作業による刺激を大きく軽減させて紛らわせることができる。特に注射対象者が小児である場合には、図柄5の鬼に噛まれるという仮想的な状況に対しての不安が優先して、注射作業に対する現実的な恐怖心を忘れさせることができる。
【0022】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の注射作業用補助具1においては、注射対象者の腕100の近傍に配置させた際に腕に対する注射作業を注射対象者の視覚野から遮蔽する遮蔽部2と、腕100に対する離接移動が可能なように遮蔽部2に設けられた接触部3と、遮蔽部2に表示されて、接触部3が腕100に動的に接触する必然性を表現する鬼の顔面の図柄5と、を有している。
【0023】
これにより、遮蔽部2によってその奥側に存在する注射器200の存在やそれを注射対象者の腕100へ近づける行為を注射対象者の視覚野から遮蔽することができ、注射対象者が抱く不安感や恐怖心を大きく抑制できる。そして実際に注射器200を腕に注射する際には、別途作業者の手作業によって接触部3を腕100に接触させて適度の刺激を注射対象者に与えることができる。以上によって注射対象者の心理としては、仮想的に鬼の口に噛まれることの刺激に注力することになり、実際の注射作業による刺激を大きく軽減させて紛らわせることができる。特に注射対象者が小児である場合には、図柄5の鬼に噛まれるという空想的な状況に対しての不安が優先して、注射作業に対する現実的な恐怖心を忘れさせることができる。この結果、注射対象者における注射作業への恐怖心や心的負担を大きく軽減できる。
【0024】
また、本実施形態では特に、遮蔽部2が、腕100を挿通させる挿通口21を有している。これにより、注射対象者は挿通口21に腕100を挿通させるだけで容易かつ正しい配置関係で遮蔽部2を腕100の近傍に配置させることができる。
【0025】
また、本実施形態では特に、遮蔽部2は、当該遮蔽部2を自立させる脚部4を有している。これにより、当該注射作業用補助具1の使用時に別途の作業者が手に持って注射対象者の腕100の近傍に配置させる必要がなく、例えば机の上などに脚部4を介して遮蔽部2を自立させ、注射対象者自身によって容易に腕100を挿通口21に挿通させるよう使用できる。
【0026】
また、本実施形態では特に、接触部3は、腕100に対して鋭角な先端を接触させる突起形状部33を有している。これにより、接触部3の突起形状部33を腕100に当てることで、注射時の刺激に近い刺激を注射対象者に与えることができ、実際の注射作業による刺激を大きく軽減させて紛らわせることができる。なお、突起形状部33は1つ以上あればよく、接触部3にも図柄を表示してもよい。
【0027】
また、本実施形態では特に、図柄5は、接触部3が生物の一部として腕に接触するよう表現されている。これにより、注射対象者の心理としては、腕100に与えられる刺激が注射針によるものではなく、生物の仮想的な行為により刺激が与えられているとして意識できる。このため、特に注射対象者が小児である場合には、図柄5の生物に噛まれるという空想的な状況に対しての不安が優先して、注射作業に対する現実的な恐怖心を忘れさせる効果が期待できる。
【0028】
なお、図柄としては上記実施形態のような鬼の顔面に限られず、他にも図5に示すように仮想的に腕100に針を刺す状況のミツバチの図柄6など多様な図柄が適用可能である。他にも腕100に向けて刺激を与える状況を示す図柄であればよく、特に図示しないが小さい男の子や女の子、他の動物、怪獣、車などの乗り物、または人気キャラクターなどをモチーフとした図柄を表示することが特に小児対象者には有効である。
【0029】
また、特に図示しないが、遮蔽部2に液晶パネルを搭載して図柄を動的なアニメーションで表示させてもよく、接触部3に対してもコンピュータやコントローラによるモータ駆動制御によってアニメーションの動きと同期するよう接触動作を制御させてもよい。
【0030】
なお、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0031】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0032】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0033】
1 注射作業用補助具
2 遮蔽部
3 接触部
4 脚部
5 鬼の顔面の図柄
21 挿通口
33 突起形状部
100 注射対象者の腕
200 注射器
【要約】
【課題】注射対象者における注射作業への恐怖心や心的負担を大きく軽減する。
【解決手段】注射対象者の腕100の近傍に配置させた際に腕に対する注射作業を注射対象者の視覚野から遮蔽する遮蔽部2と、腕100に対して離接可能なように遮蔽部2に設けられた接触部3と、遮蔽部2と接触部3のうちの少なくとも一方に表示されて、接触部3が腕100に動的に接触する必然性を表現する図柄5と、を有し、接触部3は、腕100に対して鋭角な先端を接触させる突起形状部33を有し、図柄5は、接触部3が生物の一部として腕100に接触するよう表現される。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5