(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】電気自動車の充電ステーション
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240826BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20240826BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20240826BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02J7/00 P
H02J7/04 Z
B60L53/14
(21)【出願番号】P 2022567613
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2021061429
(87)【国際公開番号】W WO2021228587
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】102020113235.2
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522433166
【氏名又は名称】ジュース・テクノロジー・アーゲー
【住所又は居所原語表記】Kasernenstrasse 2 8184 Bachenbuelach Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100163186
【氏名又は名称】松永 裕吉
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ エルニ
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-101087(JP,A)
【文献】特開平04-216297(JP,A)
【文献】特開2011-125178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H02J 13/00
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給網(6)への接続部と、少なくとも一つの電気自動車(10)用の少なくとも一つの充電接続部(7)と、中央処理装置(3)とを備えた、電気自動車(10)の充電のための装置(1)であって、
リップル制御受信機として構築され、電力供給網(6)内のリップル制御送信機からの低周波リップル制御信号を受信するように構成された受信装置(4)と、
前記受信装置(4)からの制御信号を処理して前記中央処理装置(3)に伝達するリレー素子(5)と、をさらに備え、
前記中央処理装置(3)が前記少なくとも一つの充電接続部(7)に接続された電気自動車(10)の充電電流を所定の時間内に選択的に減少させるように構成されている、ことを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
前記少なくとも一つの充電接続部(7)に接続された電気自動車(10)ごとに前記充電電流の減少量が異なる、ことを特徴とする請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記リレー素子(5)が半導体リレーである、ことを特徴とする請求項1ないし2のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項4】
前記中央処理装置(3)がマイクロコントローラーである、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項5】
前記受信装置(4)が電力線通信(PLC)のようなキャリア周波数技術に従って有線回線網を通じて有線制御信号を受信するように構成されている、ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項6】
前記受信装置(4)が無線回線網を通じて無線制御信号を受信するように構成されている、ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項7】
前記受信装置(4)が前記電力供給網から110Hzからおよそ2000Hzの周波数域における低周波リップル制御信号を受信するように構成されている、ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項8】
前記リレー素子(5)の出力信号が3.5Vの電圧を超えない、ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項9】
前記中央処理装置(3)が前記少なくとも一つの充電接続部(7)から空間的に切り離されて構築されている、かつ/または、前記充電接続部(7)がウォールボックスとして構築されている、ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項10】
各充電接続部(7)への前記充電電流を前記所定の時間内に揃ってゼロに減少させるように構成されている、ことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の装置(1)。
【請求項11】
前記中央処理装置(3)がさらなる電力源および電力消費機器を制御するように構成されている、ことを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の電気自動車充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
世界の自動車市場における電気自動車やハイブリッド車の普及に伴い、電力供給網、特に公共または民間の充電ステーションの運営事業者に対する技術的な要求も高まってきている。電力供給網または電気供給網は、需要者に電気エネルギーを供給するとともに発電所や他のエネルギー変換装置を相互に接続するように繊細に構築されている。需要と供給を的確に監視することで、欧州において230Vの系統電圧で50Hzの系統周波数を維持しつつ系統損失の低減を図っている。
【0003】
エネルギー供給事業者のリソースが限られている中で効率的な負荷管理を可能にするため、ますます多くのエネルギー供給事業者が、電気自動車の充電ステーションさらには電気自動車専用の個々のプラグソケットを電力供給網から切断できないか検討を続けている。このプロセスは負荷遮断(Lastabwurf)とも呼ばれる。
【0004】
例えば電気ボイラーシステムや太陽光発電システムのような特定の電気消費機器を接続/切断する方法として、既存の電力供給網を介して遠隔操作する、いわゆるリップル制御技術が考えられる。これによると、電力網を介して制御信号だけが中央のリップル制御送信機から分散されたリップル制御受信機へと伝送される。制御コマンドは通常の送電網電圧に所定の振幅で重畳された低周波域のパルス列によって伝送され、これにより所定のコードを伝送してパルス電文が生成される。
【0005】
電気自動車の充電に必要な電流は比較的大きいため、フル負荷状態の充電ステーションやブラグソケットを上記のリップル制御技術により突然切断すると、機械的スイッチ素子にアークが発生する危険があり、充電ステーションや場合によっては電気自動車自体の導体接点やその他の部品の損傷につながるおそれがある。
【発明の概要】
【0006】
そこで、本発明は、上記の欠点を少なくとも部分的に克服し、電気自動車充電時において、できるだけ損傷がなく抑制的で本質的にリスクのない負荷遮断および最適化された負荷管理を可能にする電気自動車充電装置を提供することを課題とする。
【0007】
当該課題は請求項1の主題により解決される。また、有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0008】
本発明によると、電力供給網への接続部と、少なくとも一つの電気自動車用の少なくとも一つの充電接続部と、中央処理装置と、リップル制御受信機として構築され、電力供給網内のリップル制御送信機からの低周波リップル制御信号を受信するように構成された受信装置と、前記受信装置からの制御信号を処理して前記中央処理装置に伝達するリレー素子と、を備え、前記中央処理装置が前記少なくとも一つの充電接続部に接続された電気自動車の充電電流を所定の時間内に選択的に減少させるように構成されている、電気自動車の充電のための装置が提供される。これによると、充電される電気自動車を特に緩やかに、抑制的に、かつ負荷のない最適な形で遮断する、すなわち送電網から切り離すことができる。急な切断をしないことで、電気自動車に、充電電流の減少または遮断に係る内部処理が開始できることを明確かつ注意深く知らせることができるようになる。さらに、実績のある信号技術を用いてコストを削減することができる。したがって、特別な通信機器を追加で設置する必要がない。
【0009】
前記少なくとも一つの充電接続部に接続された電気自動車ごとに前記充電電流の減少量が異なることが好ましい。これによると、充電ステーションを連鎖的に停止させることができ、破損のリスクをさらに低減することができる。また、最適化された負荷管理の枠組みの中でさまざまな既存の充電電流に対して特別な考慮が可能となる。
【0010】
前記リレー素子が半導体リレーであることが特に好ましい。半導体リレー(solid-state relays; SSR)は、電気機械式リレー(EMRs)に比べて小さくてプリント基板を大幅に省スペース化でき、可動部品がないためシステム信頼性が高く、制御電子機器が不要でスイッチバウンスがなく、特に出力電圧が低いといった利点がある。例えば、電気機械式リレーは10V以上の電圧でないと確実に切り替わらない。
【0011】
また、前記中央処理装置がマイクロコントローラーであることが好ましい。このような部品は、柔軟にプログラムすることができ、容易に入手できて安価である。
【0012】
前記受信装置は正または負の信号、すなわち、イエスまたはノー、0または1を明示する無電位接点を提供することが好ましい。前記受信装置はさらに、電力線通信(PLC)のようなキャリア周波数技術に従って有線回線網を通じて有線制御信号を受信するように構成されたリップル制御受信機、または無線回線網を通じて無線制御信号を受信するように構成されたリップル制御受信機であってもよい。例えば、前記制御信号は前記電力供給網から110Hzからおよそ2000Hzの周波数域における低周波リップル制御信号であってもよい。この周波数域ではあらかじめ決められたパルス列が多数存在し、それらは例えば関連するライブラリに収録されていてほとんどの電力供給事業者から入手することができる。
【0013】
さらに、前記リレー素子の出力信号が3.5Vの電圧を超えないことが好ましい。これにより、上記のマイクロコントローラーのように3Vの通常制御電圧で動作する半導体部品の制御のための追加部品が不要となり、装置のコストを低く抑えることができる。
【0014】
前記中央処理装置が前記少なくとも一つの充電接続部から空間的に切り離されて構築されている、かつ/または、前記充電接続部がウォールボックスとして構築されていることが好ましい。これにより、個々の充電ステーションや充電ソケットが自身の中央処理装置を個別に持つ必要がなく、接続されているすべてのエネルギー消費機器とエネルギー供給機器の電力管理を司る中央管理装置を建築物ごとに1個設ければ十分である。一例を挙げると、立体駐車場や地下駐車場にはエネルギー消費機器としての多数の電気自動車に対応した多数の充電ステーションがあり、オプションとして屋根に太陽光発電システムが設置される。
【0015】
上記装置が各充電接続部への前記充電電流を前記所定の時間内に揃って(geordnet)ゼロに減少させるように構成されていることが好ましい。完全なる減少は抑制的な負荷遮断に相当するが、負荷管理の必要性に応じて充電電流を所定の残留充電電流まで規制することもできる。充電電流を完全にゼロにすることで、電気自動車を電力供給網から緩やかに、負荷をかけずに切り離すことができる。これにより、接点やスイッチング素子の損傷がほとんどなくなる。
【0016】
特に前記中央処理装置がさらなるエネルギー消費機器および/またはエネルギー供給機器を制御するように構成されていることで、本発明に係る装置によって負荷管理の課題が解決される。本発明に係る装置は広く、例えば、ボイラーシステムや太陽光発電システムを抑制的に調整することも、あるいは電力供給網から切り離すこともできる。
【0017】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の実施形態の図から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る装置の好ましい実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明に係る電気自動車充電装置の好ましい実施形態を概略的に示す図である。装置1はハウジング2を備えており、ハウジング2内に、図示した実施形態ではマイクロコントローラーとして構築された中央処理装置3と、リップル制御受信機4として構築された受信装置と、および本実施形態では半導体リレーとして構築されたリレー素子5が配置されている。さらに、装置1は、ハウジング2外に配置された複数の充電接続部7(ここでは充電接続部は3つ)を備えている。本実施形態では、充電接続部7はウォールボックスとして構築されており、それぞれが電気自動車10に接続するためのタイプ2コネクタ9を備えている。なお、充電接続部7はハウジング2内に配置されていてもよい。これは特に、本発明に係る装置が、一戸建て住宅のガレージに電気自動車1台のみの充電接続部を有するように単独で設置される場合にはそうなるであろう。しかしながら、本実施形態は、多くの電気自動車10を充電するための大量の充電接続部7を有する充電ステーションが設置される立体駐車場や地下駐車場の例に向けられている。
【0020】
リップル制御受信機4は、エネルギー供給事業者の電力供給網6に接続されている。電力供給網6には、電力供給網6を制御するための低周波リップル制御信号を送信するリップル制御送信機(図示せず)がある。リップル制御受信機4は、パルス電文として送信されたリップル制御信号をフィルタリングすることでリップル制御送信機の制御情報を取得して制御信号を出力する。代替的または追加的に、受信装置は、例えば、電力網を通じてPLC信号を受信し、無電位接点で制御信号を出力するキャリア周波数装置とすることもできる。また、受信装置は、4G、LTE、5G、WLANなどの無線回線網を通じて外部から信号を受信することも可能である。
【0021】
本実施形態において、半導体リレーとして構築されたリレー素子5が受信装置4と中央処理装置3との間に配置されている。リレー素子5は、受信装置4から出力された制御信号を処理し、関連する充電接続部7に接続された電気自動車10の充電電流を減少させるよう中央処理装置3に信号を送る。受信装置4からの制御信号は異なるパルス列またはコードを含むことができ、即時負荷遮断、すなわちすべての充電プロセスを停止または切断するためのコードだけでなく、例えば、引き出し可能電力を特定の値まで減少または増加させるためのコードも含むことができる。このため、ここに示した好ましい実施形態では、リップル制御送信機は、電力供給網6からさまざまな周波数で異なる信号を送信することができるようになっている。これらは関連するライブラリに定義されており、リップル制御受信機4によるフィルタリングの後にリレー素子5においてパルス列として評価され、適当な方法で中央処理装置へ伝送される。
【0022】
本実施形態では、リップル制御送信機が、接続されているすべての負荷機器を即時遮断する信号を送信する場合を例に説明する。これはリップル制御受信機の出力の無電位接点を通じて出力される。つまり、フル充電信号で通常の充電が示されるか、無信号で充電が(もはや)許可されずにすべての充電接続部をゼロに減らすことが示される。
【0023】
マイクロコントローラーとして構築されている中央処理装置3において、即時負荷遮断のための例示的な信号が処理されて充電接続部7への出力またはライン8に関連する信号が与えられることで、各充電接続部7の充電電流が所定の期間、例えば10秒以内にゼロに減少する。これにより、ウォールボックス7や充電コネクタにおいて機械スイッチや接点にアーク放電が発生することなく部品の破損を回避できることで、抑制的な負荷遮断が可能となる。
【0024】
図2は、
図1に図示した構成の一部を示し、リップル制御受信機4、リレー素子5、および中央処理装置3への接続をより詳細に示す。リップル制御受信機4は一種のスイッチとして機能し、無電位出力にリップル制御信号のパルス列を出力する、すなわち本実施形態ではフル信号またはゼロを出力する。A1、A2は半導体リレー5の入力であり、本実施形態ではオムロン社製のG3RV-SR500-D AC230という製品である。製品名中のD AC230という記号は、230Vの入力交流電圧まで直流出力(DC出力)であることを示す。リップル制御受信機4の230Vのフル交流信号はリレー接点A1に接続され、入力A2は中性導体に接続されている。
【0025】
リレー素子5内に電気部品が示されているが、可能な構成をシンボルで表現したに過ぎない。
図2では半導体リレー5の重要な出力13、14のみが示されており、これらはPIN_1、PIN_2で表されるマイクロコントローラーや中央処理装置の論理入力に接続されている。この結果、例示的な負荷遮断のためのスイッチングロジックは次のようになる。
【0026】
この負荷遮断の0/1判定は、中央処理装置3における他のプログラミングでも実施可能であり、本発明はここに示した実施形態に限定されるものではない。例えば、マイクロコントローラーの一つ以上の論理入力を接続することができる。したがって、他の信号列は、受信装置4の出力信号としてリレー素子5を介して中央処理装置3に到達し、そこで、例えば、負荷低減、再起動、各々期間が異なる充電電流の一斉起動などの処理を行うことができる。
【0027】
本実施形態で使用されるオムロン社製の半導体リレー5に替えて、受信装置4からの信号を評価して関連する制御信号を中央処理装置3に転送するような同じタイプの別の半導体コンポーネントを使用することも可能である。
【0028】
本実施形態に示すようにライン8を通じて中央処理装置3に接続された充電接続部7は、接続された電気自動車10の充電電流を約10秒間で揃ってゼロまで規制し、続いて三相および中性導体のリレー接点を開くように制御される。これにより、コンタクターなどで急に遮断した場合でもアークの発生を防ぐことができる。これにより、充電接続部7や接続された電気自動車の機械的接点が損傷することがない。
【0029】
本発明の主題により、損傷がなく抑制的で本質的にリスクのない負荷遮断およびそれにより電気自動車充電時の最適化された負荷管理を可能にする電気自動車充電装置が提供される。