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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 3/06 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
F03D3/06 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024019862
(22)【出願日】2024-02-13
【審査請求日】2024-02-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523294917
【氏名又は名称】パナテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【弁理士】
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【弁理士】
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 越三
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 傑三
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 庸富
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-039744(JP,A)
【文献】特開昭53-081847(JP,A)
【文献】特開昭56-083581(JP,A)
【文献】特開平03-070875(JP,A)
【文献】米国特許第1352952(US,A)
【文献】米国特許第5083902(US,A)
【文献】米国特許第2085411(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な回転部を備えた基礎支柱部と、該回転部の周囲から放射状に突設されて風を受ける複数の流体受け部と、を備え、該流体受け部の動きにより発電部を介して発電する発電装置であって、各流体受け部が風を逃す位置にて上下方向の揺動を行うものであり、
各前記流体受け部が、回転部から突設された第1バーとそれより下方に位置して自重によりフリーな状態にある第2バーと、該第1バー及び該第2バーの間に渡設された柔軟なシート体と、を備え、前記第1バーを軸として、前記第2バーが揺動するものであり、
前記回転部の周囲から前記シート体に対応する位置に放射状に突設された枠バーと、該枠バーの先端側より垂直下方に延びる半円状案内レールと、前記第1バーと前記第2バーの間を連結する揺動バーと、を備え、第1バーの先端側には、前記基礎支柱部に設けられた円形状案内レールに沿って案内される水平移動スライダが設けられ、前記揺動バーは、その中間位置に搖動スライダが設けられ、該揺動スライダが前記半円状案内レールに沿って案内されて揺動するものであることを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記半円状案内レールの中間位置にストッパが設けられており、該ストッパは前記シート体が風を受ける位置で前記揺動バーの動きを規制するものであることを特徴とする請求項記載の発電装置。
【請求項3】
前記半円状案内レールに前記回転部の回転方向側にバネ体が設けられており、
当該バネ体は前記シート体が風を受ける位置で前記揺動バーの動きを規制するものであることを特徴とする請求項記載の発電装置。
【請求項4】
前記シート体が複数の分割片が連結されてなることを特徴とする請求項記載の発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風等の流体を受ける流体受け部により軸が回転されることによって発電する発電装置に関し、更に詳しくは、流体受け部により流体のエネルギーを効率的に受けて発電する発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の潮流となっているサステナビリティの要請を受け、自然エネルギーを利用した発電方法に益々注目が集まっている。
【0003】
その中でも、自然の風の力を利用した風力発電は、従来から日本でも広く用いられている発電方法であり、種々のタイプのものがある。
例えば、特許文献1に記載されているようなマグナス原理を用いた構造のものがある。
その他、プロペラのように、回転軸と同じ方向に、直接、風を受けるための羽根部を有する構造のもの、更にまた、水車を水平にしたように、回転軸と垂直方向に、直接、風を受けるための羽根部を有する構造のもの等がある。
【0004】
しかし、後者の直接、風を受ける風受け部を備えたタイプのものが、発電効率という点からすると優位性が高い。
ところで、後者の内、回転軸と垂直方向に、直接、風を受けるタイプのものにおいて、風力を最も効率的に利用するには、風を受ける面部の面積が極力大きくなるようにすることが重要である。
【0005】
しかし、この回転軸と垂直方向に、直接、風を受けるタイプのものは、軸を対称とする羽根部において、一方の羽根部は、回転方向と同じ向きに順風を受け、回転軸の反対側では回転方向に逆らう逆風を受けるという相矛盾する現象が生じる。
すなわち回転軸を対称として相反する位置にある羽根部は、一方が順風を受け、他方が軸の回転に負荷を与える風となる逆風を受けることになる
これでは風の力を必ずしも効率よく利用することができず、結果的に発電効率を大きく低下させることとなる。
【0006】
このような問題点を解決するために、特許文献2に記載されているような、回転する羽根部を可動式とすることにより、羽根部が逆方向に風を受けた状態では風を逃がすという構造のものが開発されている。
更に詳しくいうと、この風力発電機は、風車の羽根部が固定部と可動部に分割されている。
そして羽根部の先端が、風車の中心から偏心した回転輪の内周壁に接触していることにより、羽根部が抑え込まれて水平方向に揺動するように変形し、逆風を逃がすことができるものである。
【0007】
しかし、このような風力発電では、固定部が可動しないので、この部分において逆方向の風を効率的に逃がすことはできない。
また、羽根部が水平方向に揺動する構造のため、風の向きが突然、変化したような場合にも、それに、即座に対応することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2020-16169号公報
【文献】特開2010-25095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述のような課題を受けて開発されたものである。
すなわち、本発明は、羽根部に相当する流体受け部の回転を促す方向の風(すなわち順風)を効率的に受け、また、回転に逆らう方向の風(すなわち逆風)を効率的に逃すことができる発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は鋭意検討の結果、風受け部を上下方向に揺動可能とし、回転に寄与する方向の風を受け止め、回転を妨げる方向の風を逃がす仕組みにすることで、装置全体として風のエネルギーを効率的に利用することができることを見出した。
本発明はこのような知見に基づくものである。
【0011】
すなわち、本発明は、(1)回転可能な回転部11を備えた基礎支柱部1と、該回転部11の周囲から放射状に突設されて風を受ける複数の流体受け部2と、を備え、該流体受け部2の動きにより発電部を介して発電する発電装置であって、各流体受け部2が風を逃す位置にて上下方向の揺動を行うものであり、各前記流体受け部2が、回転部11から突設された第1バー21と該第1バー21より下方に位置して自重によりフリーな状態にある第2バー22と、該第1バー21及び該第2バー22の間に渡設された柔軟なシート体23と、を備え、前記第1バー21を軸として、前記第2バー22が揺動するものであり、前記回転部11の周囲から前記シート体23に対応する位置に放射状に突設された枠バー4と、該枠バー4の先端側より垂直下方に延びる半円状案内レール5と、前記第1バー21と前記第2バー22の間を連結する揺動バー6と、を備え、第1バー21の先端側には、前記基礎支柱部1に設けられた円形状案内レール7に沿って案内される水平移動スライダS1が設けられ、前記揺動バー6は、その中間位置に揺動スライダS2が設けられ、該揺動スライダS2が前記半円状案内レール5に沿って案内されて揺動するものである発電装置Aに存する。
【0014】
本発明は、(4)前記半円状案内レール5の中間位置にストッパTが設けられており、該ストッパTは前記シート体23が風を受ける位置で前記揺動バー6の動きを規制するものであることを特徴とする発電装置Aに存する。
【0015】
本発明は、(5)前記半円状案内レール5に前記回転部11の回転方向側にバネ体TSが設けられており、当該バネ体TSは前記シート体23が風を受ける位置で前記揺動バー6の動きを規制するものであることを特徴とする発電装置Aに存する。
【0016】
本発明は、(6)シート体23が複数の分割片231が連結されてなることを特徴とする発電装置Aに存する。
【0017】
また、本発明は、上記の各構成を適宜組み合わせたものであっても採用可能である。
【発明の効果】
【0018】
1)本発明の発電装置Aは、回転可能な回転部11を備えた基礎支柱部1と、該回転部11の周囲から放射状に突設されて風を受ける複数の流体受け部2と、を備え、該流体受け部2の動きにより発電部を介して発電する発電装置であって、各流体受け部2が風を逃す位置にて上下方向の揺動を行うものであることにより、流体受け部2が風の流れに正対している状態にあって、風を受けるべき位置では、回転部11が回転する方向に力が有効に働く。
また、流体受け部2が風の流れに逆対している状態にあって、風を逃がすべき位置では、流体受け部2は回転部11の回転を妨げない。
その結果、風のエネルギーを効率よく利用し発電することが可能となる。
【0019】
2)本発明の発電装置Aは、各前記流体受け部2が、回転部11から突設された第1バー21と該第1バー21より下方に位置して自重によりフリーな状態にある第2バー22と、該第1バー21及び該第2バー22の間に渡設された柔軟なシート体23と、を備え、前記第1バー21を軸として、前記第2バー22が揺動するものであることにより、シンプルな構造で流体受け部2を揺動させることができ、流体受け部2を風圧により傾斜状態や自重で垂下状態にできる。
また、第2バー22が自重によりフリーな状態にあるため風の向きが突然、変化してもそれに(即座に)対応することができる。
【0020】
3)本発明の発電装置Aは、前記回転部11の周囲から前記シート体23に対応する位置に放射状に突設された枠バー4と、該枠バー4の先端側より垂直下方に延びる半円状案内レール5と、前記第1バー21と前記第2バー22の間を連結する揺動バー6と、を備え、第1バー21の先端側には、前記基礎支柱部1に設けられた円形状案内レール7に沿って案内される水平移動スライダS1が設けられ、前記揺動バー6は、その中間位置に揺動スライダS2が設けられ、該揺動スライダS2が前記半円状案内レール5に沿って案内されて揺動するものであることにより、揺動バー6を傾斜状態や垂下状態にでき、更に流体受け部2が安定した軌道でスムーズに揺動することが可能となる。
【0021】
4)本発明の発電装置Aは、前記半円状案内レール5の中間位置にストッパTが設けられており、該ストッパTは前記シート体23が風を受ける位置で前記揺動バー6の動きを規制するものであることにより、ストッパTに揺動スライダS2が当接することにより、シート体23が垂下状態(垂直状態)となり風を受けることができ、揺動スライダS2が当接しない状態では、シート体23は傾斜して風を逃がす。
【0022】
5)本発明の発電装置Aは、前記半円状案内レール5に前記回転部11の回転方向側にバネ体TSが設けられており、当該バネ体TSは前記シート体23が風を受ける位置で前記揺動バー6の動きを規制するものであることにより、バネ体TSに揺動スライダS2が当接して、シート体23が垂下状態(垂直状態)となり風を受けることができる。
バネ体TSに揺動スライダS2が当接しない状態では、シート体23は傾斜して風を逃がす。
このようなバネ体TSは、そのバネ力の設定を変えることにより、順風が作用する場合に、揺動バー6が適度な揺動を行うことを許すこともできる。
そのため順風が瞬時に異常な突風的逆風に変化した場合に、シート体23に無理が加わらないようにできる利点がある。
【0023】
6)前記シート体23が複数の分割片が連結されてなることにより、シート体23の一部が破損した場合であっても、当該一部の分割片231のみを新しいものと交換することが可能となり、資材と手間との両面においてメンテナンスコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、発電装置を模式的に示す説明図である。
図2図2は、順風を受けた位置にある流体受け部を斜視的に見た説明図である。
図3図3は、流体受け部2を外側から見た説明図である
図4図4は、逆風を受けた位置にある流体受け部を斜視的に見た説明図である。
図5図5は、回転部11の回転と流体受け部2との関係を模式的に示す説明図である。
図6図6は、他の実施形態に係る発電装置Aにおける流体受け部2を外側から見た説明図である。
図7図7は、海に設置された本発電装置全体の一実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。
更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0026】
図1は、発電装置Aを模式的に示す説明図である。
本発明の発電装置Aは、風を流体受け部2で受け、その受けた力で回転力を得ることにより発電を行う装置である。
以下、本発明について、風を対象に述べるが、本発明の技術的原理は、風以外の水(例えば潮流等)にも適用できるものである。
【0027】
発電装置Aは、主として、回転可能な回転部11を備える基礎支柱部1と、回転部11の周囲から放射状に突設されて風を受ける複数の流体受け部2と、回転部11の動き、すなわち回転力を電力に変換する発電部3と、を備えている。
尚、図1は、便宜的に、流体受け部2が左右の2つとして示したものであり、また白抜きの矢印のように、手前から後方に向けて風が吹くことを想定している。
左側の流体受け部2は揺動しないで正面から風を受け、また右側の流体受け部2は風方向に揺動して風を逃がすことになるが、この点については後述する。
ここで発電部3としては詳しく述べないが、公知の装置を適宜適用することができる。
【0028】
基礎支柱部1は、上下方向に長い支柱部12と、該支柱部12に設けられた回転可能な回転部11を備える。
動かない支柱部12に対して回転部11は回転する。
【0029】
また、基礎支柱部1は、図示しない基礎体に据付け固定されている。
基礎支柱部1は、浮体式の発電装置の場合、水中に浮く基礎体である浮体基礎体に固定され、また着床式の場合は、水中下の基礎体である地盤基礎体に据付け固定される。
しかし、この基礎体については、本発明の本質ではないので詳しい説明は省略する。
【0030】
(流体受け部)
基礎支柱部1、詳しくは支柱部12に設けられた回転部11には、その周囲において放射状に突出するように複数の流体受け部2が設けられている。
この複数の流体受け部2はそれぞれ水平方向に等間隔である。
回転部11の回転の動きは発電部3に伝達されて、その回転力により発電部3(例えば発電機等)を使って発電される。
流体受け部2は風を受ける部分であり、この流体受け部2が軸の回転を促す方向の風(すなわち順風)を受けると、それと一体となった回転部11が回転し、回転部11と最終的に連結されている発電部3によって発電が行われる。
流体受け部2が軸の回転を阻止する方向の風(すなわち逆風)を受けた場合は、流体受け部2が揺動してその風を逃がす。
尚、軸の回転を促す方向とは、回転部11の回転を促す方向のことである。
【0031】
図2は、順風を受けた位置にある流体受け部2を斜視的に見た説明図である。
図3は、流体受け部2を外側から見た説明図である。
これらの図に基づいて本発明の装置を順次説明する。
【0032】
基礎支柱部1、詳しくは支柱部12に設けられた回転部11の周囲からは、直接、一対の枠バー4が、放射状に、複数、突設されている。
これらの枠バー4は、垂直方向の支柱部12に対して水平方向に設けられる。
また、これら枠バー4の根元側及び先端側には半円状の半円状案内レール5が渡設されている。
この各半円状案内レール5は、水平方向の枠バー4に対して垂下するように垂直方向に設けられる。
【0033】
また、一対の枠バー4の先端側には、それぞれ水平移動スライダS1が設けられている。
この水平移動スライダS1は、支柱部12を中心として外方に一定の距離をおいて配設された円形状の円形状案内レール7に沿って案内される。
また、一対の枠バー4の間隔を保持したり、また補強する観点から、一対の枠バー4の先端側や根元側(すなわち支柱部側)にはそれぞれ支持梁8が設けられる。
この支持梁8の中間位置には、後述する第1バー21の根元側及び先端側が取り付けられている。
【0034】
次に、本発明の重要な機能を達成する流体受け部2について更に詳しく説明する。
流体受け部2は、先述したように、基礎支柱部1の回転部11の周囲から放射状に突出するように設けられている。
そして流体受け部2は、第1バー21とそれより下方に位置する第2バー22と、これら第1バー21及び第2バー22の間に渡設されたシート体23と、を備える。
そして第1バー21は、その根元側及び先端側がそれぞれ先述した支持梁8の中間位置に取り付けられて回転可能に支持されている。
【0035】
第1バー21より下方に位置する第2バー22は、流体受け部2において自重により垂下しフリーな状態にある。
その理由は、第1バー21が支持梁8に取り付けられているのに対して、第2バー22は自由端となっているからである。
【0036】
第1バー21及び第2バー22は、上述した一対の枠バー4に対応する位置で、上面視で一対の枠バー4の中間に配置される。
このようなことから、上方に位置する第1バー21を軸として、それより下方に位置する第2バー22が上下方向に揺動する。
すなわち流体受け部2は、同様に上下方向に揺動することができる。
この上下方向の揺動運動は、前後方向に揺動する運動も含むものであり、本発明の重要な機能である。
【0037】
但し、後述するように、この上下方向の揺動運動は、流体受け部2(詳しくはシート体23)が逆対した状態において風を受けた場合(図4の状態)に、その風を逃がすために行われるものであり、流体受け部2が正対した状態において風を受けた場合(図2の状態)には行われない。
流体受け部2においては、第1バー21を軸として、それより下方に位置するフリーな状態の第2バー22が上下方向に揺動するものなので、無風の時には流体受け部2は、自重により垂下した状態となっている。
順風を受ける状態では、流体受け部2であるシート体23が自重によって垂下状態にあり、これ以上揺動しないが、逆風を受ける状態では、上下方向の揺動を行い傾斜する。
【0038】
その理由は、後述するように揺動スライダS2はストッパTに当接しており、順風時にはストッパTが揺動スライダS2の動きを阻止するように機能するが、逆風時にはストッパTはそのように機能しないからである。
【0039】
一方、第1バー21及び第2バー22の根元側すなわち基礎支柱部側と先端側には、
揺動バー6が渡設されている。
そして根元側及び先端側における揺動バー6の中間位置には、各々揺動スライダS2が設けられており、これらの揺動スライダS2は、前述した枠バー4の根元側及び先端側に渡設された半円状案内レール5に沿って案内が可能である。
【0040】
そして、この各半円状案内レール5の中央位置、すなわち最下点に相当する位置、には、ストッパTが取り付けられている。
更に詳しくいうと、このストッパTは、半円状案内レール5の中央位置より少し前方に取り付けられており、無風時に流体受け部2が垂直に垂下している状態では、揺動スライダS2はストッパTに当接している。
ストッパTは、揺動スライダS2の動きを停止させる役割を果たすもので、揺動スライダS2は半円状案内レール5に沿って案内されるが、ストッパTに当接することにより停止する。
【0041】
このように風に正対した状態で風を受けると、流体受け部2は垂下した垂直状態で風を受けるため、回転力が働き、回転部11は、図2の矢印の方向である時計周り方向に回転する。
因みに、流体受け部2が揺動するのは、流体受け部2(詳しくはシート体23)が逆対した状態において風を受けた場合にその風を逃がすためである。
【0042】
図4は、逆風を受けた流体受け部を斜視的に見た説明図である。
図のように流体受け部2が風に逆対した状態において風を受けた場合、揺動バー6の揺動スライダS2は半円状案内レール5に取り付けられたストッパTによって、動きを阻止されることはない。
この場合、ストッパTは機能しないのである。
【0043】
そのため半円状案内レール5に沿って容易に案内され、流体受け部2全体が上方に揺動することとなる。
このように揺動スライダS2は半円状案内レール5に沿って案内されるため、流体受け部2が安定した軌道で上下方向に揺動することができる。
流体受け部2の揺動によって、逆風は逃がされることとなり、回転部11の時計回りの回転力を妨げることにはならない。
【0044】
(シート体)
ここで流体受け部2を構成するシート体23について述べると、シート体23は、例えば、ヨットに使う帆布のような柔軟なものである。
そして、このシート体23は、複数の独立した短冊状(すなわち長方形状)の柔軟な分割片231が並列に連結された構造となっている。
連結する場合、例えば、分割片231に設けた図示しない鳩目孔同士を連結紐等で結ぶように連結する。
【0045】
因みに、風を効率よく受けるため、分割片231同士の間に極力空間が生じないようにすることが好ましいが、連結の仕方によっては、積極的に一定量の風を逃がすことも可能である。
積極的に逃がすことによって、異常に強烈な風による構造上受ける衝撃を回避することができる。
シート体23が複数の分割片231よりなることにより、シート体23の一部が破損した場合であっても、その一部である破損した分割片231のみを別の新しい分割片231と交換することが可能となる。
このように流体受け部2はメンテナンスが極めて効率的でありコスト削減にもなる。
【0046】
更に分割片231の材料についていうと、この分割片231は、耐久性や屈曲性の観点から炭素繊維により形成されていることが好ましい。
分割片231が炭素繊維により形成されたものであることにより、シート体23全体は、船帆のような撓みが保証される。
【0047】
また、分割片231は、水に対する耐久性にも富み、且つ軽量化も可能となる。
分割片231自体としては、例えば、細幅(例えば2センチ幅)の炭素繊維シートを使った平織のシートや編シートが採用される。
尚、織地のシート体や編地にシート体、或いは分割片231を樹脂加工することも当然可能である。
【0048】
次に発電装置Aが作動する場合の理解として、流体受け部2の動きについて1つの流体受け部2を例に説明する(図2参照)。
シート体23は上述したように、第1バー21を軸として揺動するように、すなわち上下方向に揺動するように設けられており、風が作用していない状態では、シート体23が自重により垂下した状態にあることは既に述べた。
【0049】
今、シート体23が風に正対した状態において、風が作用すると(図2の状態)、揺動バー6の揺動スライダS2は、半円状案内レール5に取り付けられたストッパTに当接して前方への動きが阻止されるので、シート体23は垂下した状態を維持し、風を効率よく受けることができる。
これによって、回転部11は、順風の方向に、すなわち時計回り方向に回転する。
【0050】
図2の状態から回転部11が回転を続けると、流体受け部2は支柱部12を対称として反対側、例えば、180°回り込み、順風の風が、流体受け部2に対し、今度は逆風の風として作用するようになる(図4の状態)。
【0051】
図4は、逆風を受けた位置にある流体受け部2を斜視的に見た説明図である。
このように流体受け部2が風と逆対する状態においては、風を受けても、揺動スライダS2にはストッパTが作用しない。
そのための揺動バー6は風と同じ方向に揺動することができる。
これにより、流体受け部2は逆風を逃すことができるため、回転部11が時計周り方向に回転するのを妨げることにはならない。
尚、ここで突然に逆風方向の強い突風が発生して、流体受け部2が風を逃がすよう上方に急激に揺動し、その結果、揺動スライダS2が枠バー4の付近に衝突するというようなことを防止するため、枠バー4の付近に図示しないショックアブソーバ(バネ、緩衝材等)を設けておくことも可能である。
【0052】
さて本発明においては、流体受け部2が回転部11の周囲に放射状に複数設けられていることにより、ある流体受け部2が風を逃しているとき、他の流体受け部2は風を受け止めることができる。
その結果、流体受け部2が回転部11の回転を妨げるようなことはなく、風のエネルギーを効率よく活用することができ極めて有用である。
【0053】
次に、図5は、上述の回転部11の回転と流体受け部2との関係を模式的に示す説明図である。
ここでは流体受け部2が3つの場合の例で説明する。
細縦線の左側は、流体受け部2が風を受ける位置にある領域であり、右側は風を逃がす位置にある領域である。
尚、実線の矢印は風向きを示し、白抜きの矢印は回転部11の回転方向を示す。
【0054】
まず図5(A)の状態において、3つの流体受け部2が風を受けた際、回転部11の回転に対して順風を受ける状態にある流体受け部2a、及び流体受け部2bは、揺動スライダS2がストッパTにより規制された状態となっている。
そのため、流体受け部2は、自重により垂直に垂下した状態にある。
これにより、流体受け部2は風を受けて回転部11が時計回り方向に回転する。
【0055】
一方で、逆風を受ける状態の流体受け部2cは、揺動スライダS2がストッパTにより規制されないフリーな状態であるため、大きく上方に揺動し、風を逃がすことができる。
これにより、回転部11の回転が妨げられることはない。
【0056】
次に図5(A)の状態から回転部11が回転を続けることで、図5(B)の状態となる。
このとき、流体受け部2aは引き続き風に対して正対した状態を維持しているが、一方で、流体受け部2bは、回転部11の回転により、順風を受ける位置から、逆風を受ける位置へと移動する。
また、流体受け部2cは風を逃がす状態を維持している。
この状態では、流体体受け部2bは、揺動スライダS2がストッパTにより規制されない。
フリーな状態であるため、逆風を受けても大きく上方に揺動し、風を逃がすことができる。
そのため、回転部11の回転が妨げられることはない。
【0057】
さらに図5(B)の状態から、回転部11が回転を続けることにより、図5(C)の状態となる。
このとき、流体受け部2aは風に対して正対した状態を維持し、流体受け部2bは風を逃がす状態を維持している。
一方で、流体受け部2cは、回転部11の回転より、逆風を受ける位置から、順風を受ける位置へと移動する。
この状態では、流体受け部2cは、揺動スライダS2がストッパTにより規制された状態となっている。
そのため、流体受け部2cは、自重により垂直に垂下した状態にある。
これにより、流体受け部2は風を受けて回転部11が時計回り方向に回転する。
【0058】
以上説明したように、図5(A)では、流体受け部2a及び流体受け部2bは、風と正対した状態にあるため風を受け、流体受け部2cは、風と逆対した状態にあるため風を逃がす。
また、図5(B)では、流体受け部2aは、風と正対した状態にあるため風を受け、流体受け部2b及び流体受け部2cは、風と逆対した状態にあるため風を逃がす。
【0059】
更にまた、図5(C)では、流体受け部2a及び流体受け部2cは、風と正対した状態にあるため風を受け、流体受け部2bは、風と逆対した状態にあるため風を逃がす。
このように流体受け部2は、風に正対した状態では、回転部11の回転に寄与し、また風に逆対した状態では、回転に寄与しないが、回転を妨げるのを避けるように寄与するのである。
【0060】
次に本発明の他の実施態様について述べる。
図6は、他の実施形態に係る発電装置Aにおける流体受け部2を外側から見た説明図である。
この実施形態は、半円状案内レール5を移動する揺動スライダS2の移動を徐々に規制する例である。
ここでは、半円状案内レール5には、ストッパTの代わりに、揺動スライダS2の動きを徐々に規制すべく長尺のコイルスプリング状のバネ体TSが設けられる。
【0061】
このバネ体TSは、前述したストッパTが設けられた位置から半円状案内レール5に沿って90度の範囲を規制するように設けられる。
シート体23に順風が作用すると、半円状案内レール5に設けられた長尺のバネ体TSが揺動バー6の揺動スライダS2の動きを規制するので、シート体23は、揺動を押し止められて風を受けることとなる。
【0062】
また、今度は、シート体23に逆風が作用する逆対した状態にある場合、半円状案内レール5に設けられた長尺のバネ体TSは揺動スライダS2の動きを規制することがないので、シート体23はフリーの状態となり上方に揺動し、風を逃がす。
このようなバネ体TSは、そのバネ力の設定を変えることにより、順風が作用する場合に、揺動バー6の適度な揺動を許すこともできる。
そのため順風が瞬時に異常な突風的逆風に変化した場合に、シート体23に無理が加わらないようにできる利点がある。
【0063】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0064】
本発明において、自重によりフリーとなっている第2バー22に重量を付加することにより揺動の度合いを変えるにことも可能である。
本発明において、回転部11に放射状に突設された流体受け部2の数は任意であるが、連続的且つスムーズに、その回転を継続させるためには3個以上であることが好ましい。
【0065】
また、枠バー4を半円状案内レール5に取り付ける位置は、図2のような水平移動スライダS1より内側ではなく水平移動スライダS1より外側にする構造を採用することも可能である。
また、第1バー21を延長して、直接、基礎支柱部1の回転部11から突設させることも可能である。
【0066】
また、シート体23を形成する分割片231は、既に述べたように、矩形のものが好ましいが、その分割された個数は任意である。
因みに、シート体23を分割しないで一体のものとすることも可能である。
【0067】
更に参考までに示すと、図7は、海に設置された本発電装置全体の一実施例を示す説明図である。
尚、この例では、流体受け部2が4個の場合を示している。
この風力発電装置Aは、基礎支柱部1を浮かせて係留する構造を有するものである。
具体的にいうと、基礎支柱1は、筐体Kに固定されており、該筐体Kには発電部3が組み込まれている。
【0068】
また、筐体Kは係留されている環状浮体Fの浮力により支えられている。
円形状案内レール7は、筐体Kから上方に突設されたレール支持柱7Aによって支持されている。
そのため円形状案内レール7は、基礎支柱部1に一体となって設けられていることになる。
尚、この例では、環状浮体Fには漁網Nが取り付けられており、これによって養魚機能が発揮される。
ここで環状浮体Fは、先述した浮体基礎体に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の発電装置Aは、風受け部の回転を促す方向の風である順風を効率的に受け、また回転に逆らう方向の風である逆風を効率的に逃がすことができる。
この原理からすると、水等の流体、例えば潮流を用いて発電に利用することも可能である。
【符号の説明】
【0070】
1・・・基礎支柱部
11・・・回転部
12・・・支柱部
2、2a、2b、2c・・・流体受け部
21・・・第1バー
22・・・第2バー
23・・・シート体
231・・・分割片
3・・・発電部
4・・・枠バー
5・・・半円状案内レール
6・・・揺動バー
7・・・円状案内レール
7A・・・レール支持柱
8・・・支持梁
A・・・発電装置(風力発電装置)
S1・・・水平移動スライダ
S2・・・揺動スライダ
F・・・環状浮体
T・・・ストッパ
TS・・・バネ体
K・・・筐体
N・・・漁網
【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、羽根部に相当する流体受け部の回転を促す方向の風(すなわち順風)を効率的に受け、また、回転に逆らう方向の風(すなわち逆風)を効率的に逃すことができる発電装置を提供する。
【解決手段】回転可能な回転部11を備えた基礎支柱部1と、該回転部11の周囲から放射状に突設されて風を受ける複数の流体受け部2と、を備え、該流体受け部2の動きにより発電部を介して発電する発電装置であって、各流体受け部2が風を逃す位置にて上下方向の揺動を行う発電装置。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7