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  • 特許-振動試験装置及びその故障予知方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】振動試験装置及びその故障予知方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 7/04 20060101AFI20240826BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20240826BHJP
【FI】
G01M7/04
G01M99/00 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023206718
(22)【出願日】2023-12-07
(62)【分割の表示】P 2019164467の分割
【原出願日】2019-09-10
(65)【公開番号】P2024023583
(43)【公開日】2024-02-21
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】593040391
【氏名又は名称】エミック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽介
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-28511(JP,A)
【文献】特開2005-62097(JP,A)
【文献】特開2003-139657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
G01M 7/00-7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験体が搭載される可動部と、
透磁性を有する磁路部材と、該磁路部材に流れる磁束を発生させる磁束発生手段とを有する固定部と、を備える振動試験装置であって、
前記可動部の加速度、速度、変位の少なくともいずれかを測定する複数の1軸センサと、
前記複数の1軸センサからの出力に基づき、前記振動試験装置の故障予知を行う演算装置と、をさらに備え、
前記演算装置は、
前記複数の1軸センサからの出力に基づき、前記可動部のクロストークを測定し、該クロストークの振幅の大きさに基づいて、前記故障予知を行うことを特徴とする振動試験装置。
【請求項2】
前記演算装置は、
前記複数の1軸センサからの出力に基づき、前記可動部の変位量及び振動数の少なくともいずれかを測定し、該可動部の変位量及び振動数の少なくともいずれかに基づいて、前記故障予知を行うことを特徴とする請求項1に記載の振動試験装置。
【請求項3】
前記演算装置は、
前記複数の1軸センサからの出力に基づき、加振力係数を算出し、該加振力係数に基づいて、前記故障予知を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の振動試験装置。
【請求項4】
前記可動部が、駆動コイルを備え、
前記駆動コイルは、前記被試験体に所定パターンの振動を与えるために必要な振動信号を振動制御装置から送られるように構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の振動試験装置。
【請求項5】
前記演算装置は、
前記振動信号と、前記複数の1軸センサからの出力と、に基づき、前記振動試験装置の周波数応答を測定し、該周波数応答の共振周波数を算出し、該共振周波数に基づいて、前記故障予知を行うことを特徴とする請求項4に記載の振動試験装置。
【請求項6】
前記演算装置は、前記振動試験装置の故障が予知された場合に、警報を発するように構成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の振動試験装置。
【請求項7】
前記可動部を可動状態で保持する可動部懸架用バネをさらに備え、
前記複数の1軸センサを、前記可動部懸架用バネの鉛直方向上方に配置することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の振動試験装置。
【請求項8】
前記複数の1軸センサを、前記可動部において前記被試験体が載置される面以外の位置に配置することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の振動試験装置。
【請求項9】
前記複数の1軸センサを、前記可動部の側面において前記被試験体が載置される面寄りに配置することを特徴とする請求項8に記載の振動試験装置。
【請求項10】
被試験体が搭載される可動部と、
透磁性を有する磁路部材と、該磁路部材に流れる磁束を発生させる磁束発生手段とを有する固定部と、を備える振動試験装置の故障予知方法であって、
前記可動部のクロストークを複数の1軸センサを用いて測定し、該クロストークの振幅の大きさに基づいて、故障予知を行うことを特徴とする故障予知方法。
【請求項11】
前記可動部の変位量及び振動数の少なくともいずれかを測定し、該可動部の変位量及び振動数の少なくともいずれかに基づいて、前記故障予知を行うことを特徴とする請求項10に記載の故障予知方法。
【請求項12】
加振力係数を算出し、該加振力係数に基づいて、前記故障予知を行うことを特徴とする請求項10または11に記載の故障予知方法。
【請求項13】
前記可動部が有する駆動コイルに入力する振動信号と、前記可動部の振幅とから、前記振動試験装置の周波数応答を測定し、該周波数応答の共振周波数を算出し、該共振周波数に基づいて、前記故障予知を行うことを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の故障予知方法。
【請求項14】
前記複数の1軸センサを、前記可動部を可動状態で保持する可動部懸架用バネの鉛直方向上方に配置することを特徴とする請求項10から13のいずれか1項に記載の故障予知方法。
【請求項15】
前記複数の1軸センサを、前記可動部において前記被試験体が載置される面以外の位置に配置することを特徴とする請求項10から14のいずれか1項に記載の故障予知方法。
【請求項16】
前記複数の1軸センサを、前記可動部の側面において前記被試験体が載置される面寄りに配置することを特徴とする請求項15に記載の故障予知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、宇宙航空機器、自動車機器、エレクトロニクス製品、精密機器などの工業製品の振動特性試験や耐久試験などを行うための振動試験装置に関し、より具体的には、故障予知機能を有する振動試験装置及び振動試験装置の故障予知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、宇宙航空機器、自動車機器、エレクトロニクス製品、精密機器などの工業製品の振動特性試験や耐久試験などを行うために、振動試験装置を用いた振動試験が行われている。
【0003】
振動試験装置は、例えば、特許文献1,2に開示されるように、被試験体が載置される可動部と、磁路部材を有する固定部とを備え、固定部に発生させた静磁場と直交するように、可動部の駆動コイルに交流電流を流すことによって、可動部を振動させるように構成される。
【0004】
また、振動試験装置は、可動部をバネで支持したり、可動部のシャフトを拘束ベアリングで拘束することによって、可動部が所望の方向以外に振動しないように構成されている。
【0005】
また、可動部の駆動コイルに交流電流を流すための交流電源や、磁路部材に励磁コイルを用いている場合には、励磁コイルに直流電流を流すための直流電源なども設けられている。
【0006】
このような振動試験装置は、一般的に、故障などが発生した場合には安全のために自動的に停止するように構成される。しかしながら、振動試験は被試験体の種類によっては長時間を有するため、振動試験中に故障が発生し、振動試験が途中で停止してしまうようなことは、ユーザーにとって避けたい事象である。
【0007】
このため、振動試験装置の故障を防ぐためには、定期的に部品交換を行ったり、定期的なメンテナンスの際、または、実際の振動試験の前に行われる予備試験の際に異常動作や異音などが発生しないかを確認することで、振動試験装置の異常の有無を確認している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平11-44606号公報
【文献】特開2014-74612号公報
【文献】特開2005-62097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、異常動作や異音などをユーザーの感覚だけを頼りに確認していると、異常を見逃してしまう場合がある。
このため、特許文献3では、可動部の伝達特性を取得し、この伝達特性を、事前に記憶された基準伝達特性データと比較することによって、異常状態を判定するように構成することが提案されている。
【0010】
このように伝達特性に基づいて異常判定を行うことで、可動部の故障の有無を判定することができるが、振動試験装置が備える、例えば、可動コイル、励磁コイル、拘束機構(可動部懸架用バネや拘束ベアリングなど)などに生じる異常を切り分けて検知することは困難である。
【0011】
また、可動部や励磁コイルなどは故障した場合、部品の手配や交換作業などに長期間を有する場合もあるため、早期に異常を発見し、振動試験装置が使えなくなる前に、交換作業の準備に入れることが望ましい。
【0012】
本発明では、このような現状に鑑み、振動試験装置の異常を早期に検知し、故障の拡大を防止するための故障予知機能を有する振動試験装置及び振動試験装置の故障予知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述するような従来技術における課題を解決するために発明されたものであって、本発明の振動試験装置は、
被試験体が搭載される可動部と、
透磁性を有する磁路部材と、該磁路部材に流れる磁束を発生させる磁束発生手段とを有する固定部と、を備える振動試験装置であって、
前記可動部の加速度、速度、変位の少なくともいずれかを測定する複数の1軸センサと、
前記複数の1軸センサからの出力に基づき、前記振動試験装置の故障予知を行う演算装置と、をさらに備え、
前記演算装置は、
前記複数の1軸センサからの出力に基づき、前記可動部のクロストークを測定し、該クロストークの振幅の大きさに基づいて、前記故障予知を行うことを特徴とする。
【0014】
このような振動試験装置では、
前記演算装置は、
前記複数の1軸センサからの出力に基づき、前記可動部の変位量及び振動数の少なくともいずれかを測定し、該可動部の変位量及び振動数の少なくともいずれかに基づいて、前記故障予知を行うことができる。
【0015】
また、前記演算装置は、
前記複数の1軸センサからの出力に基づき、加振力係数を算出し、該加振力係数に基づいて、前記故障予知を行うことができる。
【0016】
このような振動試験装置は、
前記可動部が、駆動コイルを備え、
前記駆動コイルは、前記被試験体に所定パターンの振動を与えるために必要な振動信号を振動制御装置から送られるように構成することもできる。
【0017】
この場合、前記演算装置は、
前記振動信号と、前記複数の1軸センサからの出力と、に基づき、前記振動試験装置の周波数応答を測定し、該周波数応答の共振周波数を算出し、該共振周波数に基づいて、前記故障予知を行うようにすることができる。
【0018】
このような振動試験装置では、
前記演算装置は、前記振動試験装置の故障が予知された場合に、警報を発するように構成することができる。
また、このような振動試験装置では、
前記可動部を可動状態で保持する可動部懸架用バネをさらに備え、
前記複数の1軸センサを、前記可動部懸架用バネの鉛直方向上方に配置することができる。
また、前記複数の1軸センサを、前記可動部において前記被試験体が載置される面以外の位置に配置することができる。
この場合、前記複数の1軸センサを、前記可動部の側面において前記被試験体が載置される面寄りに配置することができる。
【0019】
また、本発明の振動試験装置の故障予知方法は、
被試験体が搭載される可動部と、
透磁性を有する磁路部材と、該磁路部材に流れる磁束を発生させる磁束発生手段とを有する固定部と、を備える振動試験装置の故障予知方法であって、
前記可動部のクロストークを複数の1軸センサを用いて測定し、該クロストークの振幅の大きさに基づいて、前記故障予知を行うことを特徴とする。
【0020】
このような故障予知方法では、前記可動部の変位量及び振動数の少なくともいずれかを測定し、該可動部の変位量及び振動数の少なくともいずれかに基づいて、前記故障予知を行うことができる。
【0021】
また、加振力係数を算出し、該加振力係数に基づいて、前記故障予知を行うことができる。
【0022】
また、前記可動部が有する駆動コイルに入力する振動信号と、前記可動部の振幅とから、前記振動試験装置の周波数応答を測定し、該周波数応答の共振周波数を算出し、該共振周波数に基づいて、前記故障予知を行うことができる。
また、このような故障予知方法では、
前記複数の1軸センサを、前記可動部を可動状態で保持する可動部懸架用バネの鉛直方向上方に配置することができる。
また、前記複数の1軸センサを、前記可動部において前記被試験体が載置される面以外の位置に配置することができる。
この場合、前記複数の1軸センサを、前記可動部の側面において前記被試験体が載置される面寄りに配置することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、可動部に設けられた可動部センサからの出力に基づき、演算装置によって自動的に故障予知を行うことができるため、振動試験装置の異常を早期に検知し、故障の拡大を防止することができる。
【0024】
また、可動部センサやその他のセンサを使って、振動試験装置の異常を切り分けて診断することができるため、振動試験装置の異常箇所を早期に発見し、振動試験装置が故障する前に、ユーザーに部品交換などの修理を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の振動試験装置の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいて、より詳細に説明する。
図1は、本発明の振動試験装置の一実施形態を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態の振動試験装置10は、磁路部材16などを有する固定部11と、被試験体(図示せず)が搭載される可動部30と、を備えている。
【0027】
固定部11は、例えば、鉄などの透磁性を有する材料から構成される磁路部材16と、この磁路部材16に流れる磁束を発生させる励磁コイル14(磁束発生手段)とを備えている。励磁コイル14は、図示しない定電圧源から直流電圧が印加されることによって、磁路部材16に一定の磁束を流し、磁路部材16の空隙部24に挿入される駆動コイル36に対して直交する磁界(静磁場)を発生させるように配置される。
【0028】
可動部30は、被試験体(図示せず)を載置する試験台33と、可動部30と固定部11とを連結し可動部30を可動状態で保持する可動部懸架用バネ34と、を備えるとともに、可動部30の底部には、磁路部材16の空隙部24に挿入される駆動コイル36が設けられている。
【0029】
駆動コイル36は、電力増幅器46を介して振動制御装置48に接続されており、被試験体に所定パターンの振動を与えるために必要な振動信号を振動制御装置48から電力増幅器46を介して流すことができるように構成されている。
【0030】
また、可動部30は、固定部11に設けられた軸受け22に挿入される軸(拘束シャフト39)を有している。軸受け22には、拘束ベアリング42が設けられており、この拘束ベアリング42によって、可動部30の拘束シャフト39が拘束される。
可動部30は、軸(拘束シャフト39)、軸受け22及び拘束ベアリング42と、上述する可動部懸架用バネ34とを有する拘束機構によって、水平方向及び鉛直方向の可動域を所定の範囲に制限されている。
【0031】
また、拘束機構としては、固定部11と可動部30との間に、ダンパー(図示せず)を設けることもできる。このようにダンパーを設けることにより、可動部30に必要以上の加振力が加わり破損するようなことを防止できる。
【0032】
なお、拘束機構としては、上述する全ての機構を含んでいてもよいし、一部の機構のみを含むようにしてもよく、拘束機構の種類などは、振動試験装置10の仕様等により適宜変更することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、励磁コイル14によって静磁場を発生させるように構成しているが、励磁コイル14の代わりに永久磁石を設けるようにすることもできる。また、励磁コイル14や駆動コイル36に電流を流すことによって発生した熱によって、振動試験装置10が故障することを防止するために、例えば、空冷や水冷などの冷却手段を設けることが好ましい。
【0034】
このように構成される本実施形態の振動試験装置10には、可動部30に可動部センサとして3軸センサ31が設けられている。3軸センサ31は、可動部30の振動方向と一致するX軸方向と、X軸に直交するY軸方向及びZ軸方向の加速度、速度、変位の少なくともいずれかを測定することができるものである。
【0035】
なお、本実施形態では、可動部30の振動方向が一方向であるため、これとX軸方向とを一致させるようにしているが、可動部30の振動方向が例えば二方向の場合には、それぞれをX軸方向及びY軸方向と一致させるように3軸センサ31を可動部30に設けることができる。
【0036】
3軸センサ31は、例えばコンピュータなどの演算装置50に接続されており、演算装置50は、3軸センサ31の出力に基づいて、振動試験装置10の故障予知を行うように構成されている。
【0037】
なお、演算装置50としては、例えば、パーソナルコンピュータやマイクロコントローラなどを用いることができ、振動試験装置10の振動制御装置に組み込むこともできる。
【0038】
演算装置50は、以下のようにして、振動試験装置10の故障予知を行う。
(1)クロストーク測定
3軸センサ31の出力に基づき、振動試験装置10の加振軸、すなわち、本実施形態ではX軸以外に生じる振動であるクロストークを検出する。本実施形態では、Y軸方向の振動及びZ軸方向の振動がクロストークとなる。
【0039】
クロストークは、いわゆる機械的な遊びなどによって若干ながら発生するものであるが、特に、拘束機構の故障や激しい消耗によって、クロストークが大きくなってしまう。
演算装置50は、検出したクロストークの振幅が、事前に設定された所定の振幅閾値よりも大きくなった際に、警報を発するように構成される。警報は、例えば、表示手段などに表示するようにしてもよいし、ブザーなど音により報知するようにしてもよい。
【0040】
このように、3軸センサ31を用いてクロストークを測定することによって、拘束機構の消耗を検出することができ、拘束機構が故障する前に、ユーザーに対して警報を発し、拘束機構の交換などを促すことができる。
【0041】
(2)変位測定
3軸センサ31の出力に基づき、可動部30の変位として、変位量や振動数を検出する。
可動部30の変位は、拘束機構、特に、可動部懸架用バネ34の消耗により変化してしまう。
【0042】
演算装置50は、検出した可動部30の変位量が、事前に設定された所定の変位量閾値よりも大きくなった際に、または、検出した可動部30の振動数が、事前に設定された振動数閾値よりも小さくなった際に、警報を発するように構成される。
【0043】
このように、3軸センサ31を用いて可動部30の変位を測定することによって、拘束機構、特に、可動部懸架用バネ34の消耗を検出することができ、拘束機構が故障する前に、ユーザーに対して警報を発し、拘束機構の交換などを促すことができる。
【0044】
なお、本実施形態では可動部30の変位を、3軸センサ31を用いて検出しているが、3軸センサ31とは別の変位センサ(図示せず)を設けて検出するように構成することもできる。
【0045】
(3)加振力係数測定
3軸センサ31の出力に基づき、可動部30の加振力係数を下記式(1)のように算出する。
【0046】
【数1】
【0047】
通常、駆動コイル36に印加する電流が大きくなれば、加速度は増加する。しかしながら、駆動コイル36や励磁コイル14の故障や激しい消耗によって、駆動コイル36に同じ電流を流しても、加速度が低下してしまう。
【0048】
演算装置50は、算出された加振力係数が、事前に設定された所定の加振力係数閾値よりも小さくなった際に、警報を発するように構成される。
【0049】
このように、3軸センサ31を用いて加振力係数を測定することによって、駆動コイル36や励磁コイル14の消耗を検出することができ、駆動コイル36や励磁コイル14が故障する前に、ユーザーに対して警報を発し、駆動コイル36や励磁コイル14の交換などを促すことができる。
【0050】
(4)伝達特性測定
振動制御装置から振動試験装置10に入力される振動信号と3軸センサ31の出力(可動部30の振幅)に基づき、振動試験装置の伝達特性(周波数応答)を測定し、その共振周波数を算出する。
【0051】
共振周波数は、振動試験装置10の構成によって固有のものであるが、駆動コイル36や拘束機構などの故障や激しい消耗によって、変化してしまう。
演算装置50は、算出された共振周波数が、事前に設定された共振周波数閾値よりも小さくなった際に、警報を発するように構成される。
【0052】
このように、伝達特性を測定することによって共振周波数を算出し、この共振周波数によって、駆動コイル36や拘束機構などの消耗を検出することができ、駆動コイル36や拘束機構が故障する前に、ユーザーに対して警報を発し、駆動コイル36や拘束機構の交換などを促すことができる。
【0053】
上述する本実施形態では、各軸方向における加速度、速度、変位の少なくともいずれかを3軸センサ31を用いて測定しているが、3軸センサ31に限らず、例えば、1軸センサを3つ使って測定するようにしたり、また、1軸センサを必要な軸方向にあわせて設けて測定するように構成することもできる。
【0054】
また、故障予知に加えて、例えば、駆動コイル36に、熱電対などの熱センサを設け、駆動コイル36の温度を測定することで、この温度に基づき、演算装置50によって故障予防を行うこともできる。
【0055】
(5)駆動コイルの温度測定
熱センサの出力に基づき、駆動コイル36の温度を測定する。
駆動コイル36は、可動部30に接着剤などによって固定されているため、駆動コイル36の温度が高くなりすぎると、接着剤が劣化し、駆動コイル36にガタつきが発生したりする。
【0056】
演算装置50は、駆動コイル36の温度が、事前に設定された制限温度閾値よりも大きくなった際に、警報を発するように構成される。制限温度閾値としては、振動試験装置10の仕様や接着剤の種類などによって適宜設定することができ、例えば、90℃~200℃とすることができる。
【0057】
このように、故障予知とともに故障予防の手段もあわせて講じることによって、故障が発生しにくい振動試験装置10とすることができる。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、上記実施形態では、故障予防のために熱センサを設けているが、これに限らず、故障予防のために様々な手段を講じてもよいなど、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 振動試験装置
11 固定部
14 励磁コイル
16 磁路部材
22 軸受け
24 空隙部
30 可動部
31 3軸センサ
33 試験台
34 可動部懸架用バネ
36 駆動コイル
39 拘束シャフト
42 拘束ベアリング
46 電力増幅器
48 振動制御装置
50 演算装置
図1