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特許7542804澱粉粉末と水との混合物にレーザー光を照射して食品を三次元造形する方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】澱粉粉末と水との混合物にレーザー光を照射して食品を三次元造形する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A23P 30/00 20160101AFI20240826BHJP
   B29C 64/135 20170101ALI20240826BHJP
   B29C 64/165 20170101ALI20240826BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20240826BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240826BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240826BHJP
【FI】
A23P30/00
B29C64/135
B29C64/165
B29C64/268
B33Y10/00
B33Y30/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020129585
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022026221
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-07-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年8月8日 「日本食品工学会第20回(2019年度)年次大会」における公開
(73)【特許権者】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591173213
【氏名又は名称】三和澱粉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】相磯 孝輔
(72)【発明者】
【氏名】川上 勝
(72)【発明者】
【氏名】貝沼 友紀
(72)【発明者】
【氏名】古川 英光
(72)【発明者】
【氏名】高原 純一
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205241581(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0192686(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0110505(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23P 30/00
B29C 64/135
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B29C 64/268
B29C 64/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉粉末を原料として、食品を三次元造形する方法であって、
澱粉粉末と水とを混合して、澱粉粉末と水との混合物を提供する工程、
前記混合物の一部にレーザー光を照射することにより、
前記澱粉粉末の澱粉粒が前記水により膨潤して膨潤した澱粉粒が形成され、
前記膨潤した澱粉粒が糊化して糊化した澱粉が形成され、
前記糊化した澱粉粒がゲル化する
ことにより、ゲル化した澱粉を得る工程、
前記混合物から前記ゲル化した澱粉を取り出す工程、
を含み、
前記レーザー光を照射する工程が、食品の三次元形状に基づいてあらかじめ定められたパターンに従って、前記混合物に前記レーザー光を照射することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記混合物中に前記澱粉粉末が20質量%~80質量%の濃度で含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物中に前記澱粉粉末が40質量%~60質量%の濃度で含まれる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合物がさらに色素を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記色素が食用色素である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記色素が、前記レーザー光の波長に吸収を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物中に前記色素が0.001質量%~0.5質量%の濃度で含まれる、請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記レーザー光を照射するレーザー光源が可視光レーザーである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記レーザー光を照射するレーザー光源が赤外線レーザーである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記レーザー光を照射するレーザー光源の出力が1W~100Wである、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザー光のスポット径が0.01mm~1mmである、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記レーザー光を照射する工程が、前記あらかじめ定められたパターンに従って前記レーザー光を走査する工程を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記走査速度が0.5mm/s~10mm/sである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記澱粉粉末と水との混合物を提供する工程が、水中に前記澱粉粉末を分散させる工程を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記澱粉粉末と水との混合物を提供する工程が、前記澱粉粉末に水を噴霧する工程を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記取り出す工程が、前記レーザー光が照射されなかった前記混合物の部分に水を適用することにより除去する工程を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
さらに、
前記レーザー光を照射した前記混合物の上に、追加の前記混合物を提供する工程、
前記追加の前記混合物に、前記レーザー光を照射する工程を適用する工程
を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
澱粉粉末を原料として、食品を三次元造形する装置であって、
澱粉粉末と水との混合物を提供するための、混合物提供手段、
前記混合物提供手段からの前記混合物の提供を受ける、混合物収容手段、
前記混合物収容手段内に収容された前記混合物の一部にレーザー光源からレーザー光を照射することにより、
前記澱粉粉末の澱粉粒が前記水により膨潤して膨潤した澱粉粒が形成され、
前記膨潤した澱粉粒が糊化して糊化した澱粉が形成され、
前記糊化した澱粉粒がゲル化する
ことにより、ゲル化した澱粉を得るための、レーザーモジュール、
食品の三次元形状に基づいてあらかじめ定められたパターンに従って、前記混合物収容手段内の前記混合物の所定の位置に前記レーザー光を照射するために、前記混合物収容手段と前記レーザーモジュールとの相対位置を制御する、相対位置制御手段、
食品の三次元形状に基づいてあらかじめ定められたパターンに従って、前記混合物に前記レーザー光を所定の照射条件で照射するための、照射制御手段、
を備える、前記装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、澱粉粉末を原料として、澱粉粉末と水との混合物にレーザー光を照射することにより食品を三次元造形する方法及び装置(3Dフードプリンター)に関する。特に、本発明は、澱粉を原料とする食品を任意の所望の形状で造形し、かつ直ちに食用として提供することのできる方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3Dフードプリンターの開発が盛んに行われている。
例えば、スクリューで食品を押し出す方式の3Dフードプリンターは、ペースト状やゲル状の食品を出力することが可能である。この方式は、柔らかい食品を造形できるが、硬い食品を造形できない。また、この方式で中空な形状や複雑な形状を造形することは難しい。
また、インクジェット方式の3Dフードプリンターで、砂糖の粉末を様々なフレーバーを持った専用の可食インクを吹き付けて砂糖の粉末を結合させるものもある。この方式は、砂糖をベースにした特殊な食用原料を使用するものであって、この方式により造形することのできる食品は、砂糖菓子のようなものに限られる。
【0003】
さらに、ディスペンサーで造形した後にレーザーで切断したり、焦げ目を入れたりする方式がある。
例えば、米国特許出願公開第2019/110505号公報は、プリントプロセスの際に食品が通過するノズルを有するプリンターにおいて、食品がノズルから出て食用構造を形成するときに、食品の中心部を調理する可視光の第1のレーザーと、食品の少なくとも一部を焦げるようにする赤外光の第2のレーザーを照射する方法を開示している。
しかしながら、この方法は、小麦粉と水を混合して作製した生地をノズルから押し出すなどして造形したものを、さらにレーザーの照射により調理し褐変させるものに過ぎない。
これまで、レーザー光を照射することで、食品の3Dプリンティング(三次元造形)を実現した例は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2019/110505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術においてノズルなどのディスペンサーから供給されていた、生地(ドウ)のような可食インクを用いることなく、澱粉粉末を原料として、複雑な形状や中空形状など所望の形状に食品を三次元造形することが可能な方法を提供することを、目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、澱粉粉末と水との混合物にレーザー光を照射すると、照射した部分の澱粉を膨潤・糊化・ゲル化させることができるため、あらかじめ定められたパターンに従ってレーザー光を照射することにより、ゲル化した澱粉から構成される所望の形状の食品を造形することができるとともに、澱粉粉末と水との混合物とゲル化した澱粉とは容易に分離することができるため、混合物からゲル化した澱粉を取り出して三次元造形された食品を得ることができることを見出し、本発明に到ったものである。
本発明者らはまた、驚くべきことに、澱粉粉末と水との混合物にさらに色素を追加すると、従来技術のような波長の異なる複数のレーザーの併用を要することなく、色素の量を制御することで、澱粉の膨潤・糊化・ゲル化の程度を変化させることができることを見出し、本発明に到ったものである。
【0007】
すなわち、本発明は、澱粉粉末を原料として、食品を三次元造形する方法であって、澱粉粉末と水とを混合して、澱粉粉末と水との混合物を提供する工程、前記混合物の一部にレーザー光を照射することにより、前記澱粉粉末の澱粉粒が前記水により膨潤して膨潤した澱粉粒が形成され、前記膨潤した澱粉粒が糊化して糊化した澱粉が形成され、前記糊化した澱粉粒がゲル化することにより、ゲル化した澱粉を得る工程、前記混合物から前記ゲル化した澱粉を取り出す工程、を含み、前記レーザー光を照射する工程が、食品の三次元形状に基づいてあらかじめ定められたパターンに従って、前記混合物に前記レーザー光を照射することを含む、前記方法である。
【0008】
前記混合物中に前記澱粉粉末が20質量%~80質量%の濃度で含まれるのが好ましく、前記澱粉粉末が40質量%~60質量%の濃度で含まれるのがさらに好ましい。
前記混合物がさらに色素を含むものとすることができる。
その場合、前記色素が食用色素であるのが好ましい。
また、前記色素が、前記レーザー光の波長に吸収を有するものとするのが好ましい。
さらに、前記混合物中に前記色素が0.001質量%~0.5質量%の濃度で含まれるのが好ましい。
【0009】
前記レーザー光を照射するレーザー光源を、可視光レーザーとすることができる。あるいは、前記レーザー光を照射するレーザー光源を、赤外線レーザーとすることもできる。
前記レーザー光を照射するレーザー光源の出力は、1W~100Wであるのが好ましい。
また、前記レーザー光のスポット径は、0.01mm~1mmであるのが好ましい。
前記レーザー光を照射する工程が、前記あらかじめ定められたパターンに従って前記レーザー光を走査する工程を含むものとすることができる。この場合、前記走査速度を0.5mm/s~10mm/sとするのが好ましい。
【0010】
前記澱粉粉末と水との混合物を提供する工程が、水中に前記澱粉粉末を分散させる工程を含むこととすることができる。あるいは、前記澱粉粉末と水との混合物を提供する工程が、前記澱粉粉末に水を噴霧する工程を含むこととすることもできる。
また、前記取り出す工程が、前記レーザー光が照射されなかった前記混合物の部分に水を適用することにより除去する工程を含むこととすることができる。
【0011】
本発明の方法はさらに、前記レーザー光を照射した前記混合物の上に、追加の前記混合物を提供する工程、前記追加の前記混合物に、前記レーザー光を照射する工程を適用する工程を含むこととすることができる。
【0012】
本発明はまた、澱粉粉末を原料として、食品を三次元造形する装置であって、澱粉粉末と水との混合物を提供するための、混合物提供手段、前記混合物提供手段からの前記混合物の提供を受ける、混合物収容手段、前記混合物収容手段内に収容された前記混合物の一部にレーザー光源からレーザー光を照射することにより、前記澱粉粉末の澱粉粒が前記水により膨潤して膨潤した澱粉粒が形成され、前記膨潤した澱粉粒が糊化して糊化した澱粉が形成され、前記糊化した澱粉粒がゲル化することにより、ゲル化した澱粉を得るための、レーザーモジュール、食品の三次元形状に基づいてあらかじめ定められたパターンに従って、前記混合物収容手段内の前記混合物の所定の位置に前記レーザー光を照射するために、前記混合物収容手段と前記レーザーモジュールとの相対位置を制御する、相対位置制御手段、食品の三次元形状に基づいてあらかじめ定められたパターンに従って、前記混合物に前記レーザー光を所定の照射条件で照射するための、照射制御手段、を備える、前記装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えば自立できる生地を使用する従来技術と異なり、スラリーのような無定形の混合物からあらかじめ定められたパターンに従ってレーザー光を照射することにより、ゲル化した澱粉から構成される所望の形状の食品を造形することが可能となる。しかも、レーザー光が照射されなかった混合物の部分はゲル化していないため、水を適用することなどにより容易に除去することができ、除去した部分が中空となった形状など複雑な形状で食品を三次元造形することが可能となる。このように、本発明は、従来技術に比べて設計の自由度が極めて高い食品の三次元造形方法を提供するものである。本発明の方法により三次元造形された食品は、ゲル化した澱粉から構成され、しかもゲル化していない澱粉粉末は分離されているため、直ちに食用として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一態様(「バスタブ方式」)における各工程の概要を示す模式図である。
図2】本発明の別の一態様(「バスタブ方式・ステージ使用」)における各工程の概要を示す模式図である。
図3】本発明のさらに別の一態様(「パウダーベッド方式・ステージ使用」)における各工程の概要を示す模式図である。
図4】本発明の一態様による装置の概要を示す模式図(斜視図)である。
図5A】本発明の一態様に関し、食品の三次元形状に基づくパターンとして使用したデータを示す斜視図である。
図5B】本発明の一態様に関し、図4Aのデータを使用して三次元造形した食品の斜視図、側面図及び上面図である。
図6A】本発明の一態様に関し、食品の三次元形状に基づくパターンとして使用した別のデータを示す斜視図である。
図6B】本発明の一態様に関し、図5Aのデータを使用して三次元造形した食品の斜視図、側面図及び上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明は、澱粉粉末を原料として、食品を三次元造形する方法であって、少なくとも、
(a)澱粉粉末と水とを混合して、澱粉粉末と水との混合物を提供する工程、
(b)混合物の一部にレーザー光を照射することにより、ゲル化した澱粉を得る工程、及び
(c)混合物から前記ゲル化した澱粉を取り出す工程
を含む。
これらの工程のうち、工程(a)において澱粉粉末と水とを混合する手段として、水中に澱粉粉末を分散させる方式(「バスタブ方式」と呼ぶ)や、澱粉粉末に水を噴霧する方式(「パウダーベッド方式」と呼ぶ。)などを用いることができる。
また、本発明では、工程(a)と工程(b)を繰返すこと、換言すれば、
(d)レーザー光を照射した混合物の上に、追加の混合物を提供する工程、及び
(e)追加の混合物に、レーザー光を照射する工程(工程(b))を適用する工程
をさらに含むことにより、混合物を積層しながら食品を三次元造形することができる。その際、混合物を載置するステージを用意して、ステージの移動により積層を行うことができる(「ステージ使用」と呼ぶ)。
【0016】
<バスタブ方式>
図1を参照して、図1は、バスタブ方式における各工程の概要を示す。
まず、ビーカーなどの容器に、澱粉粉末と水、必要に応じて色素を入れ、撹拌しながら混合して、澱粉粉末と水との混合物を用意し、用意した澱粉粉末と水との混合物を、混合物にレーザー光を照射するのに使用する容器(バスタブ)に提供する(工程(1))。
次に、食品の三次元形状に基づいてあらかじめ定められたパターンに従って、混合物の一部にレーザー光を照射する(工程(2))。レーザー光を照射した混合物の部分では、澱粉粉末の澱粉粒が水により膨潤して膨潤した澱粉粒が形成され、膨潤した澱粉粒が糊化して糊化した澱粉が形成され、糊化した澱粉粒がゲル化して、ゲル化した澱粉が得られる。
【0017】
この後、直ちに混合物からゲル化した澱粉を取り出してもよいが、以下のように混合物の提供とレーザー光の混合物への照射を繰り返すことにより、ゲル化した澱粉を積層させて、食品を三次元造形してもよい。
すなわち、レーザー光を照射した混合物(1層目)の上に追加の混合物を提供し、追加の混合物(2層目)にレーザー光を照射することができるように、必要に応じてレーザーモジュールを上方(Z軸方向)に上げて、2層目にレーザー光の焦点距離が合うようにしておく(工程(3))。
次いで、レーザー光を照射した混合物(1層目)の上に、ビーカーなどの容器に用意しておいた追加の混合物を提供し、追加の混合物(2層目)にレーザー光を照射する(工程(4))。
レーザー光の照射による造形がすべて完了した後は、ゲル化した澱粉から構成される三次元造形された食品を取り出す。
バスタブ方式の場合、糊化していない混合物の部分がサポート材のような役割を果たすことにより、中空形状や複雑形状の三次元造形が可能となると考えられる。
【0018】
<バスタブ方式・ステージ使用>
図2を参照して、図2は、バスタブ方式であって、上下(Z軸方向)に移動させることのできるステージを使用する場合における各工程の概要を示す。
まず、ステージの上方部分(プラットフォーム)を、用意した澱粉粉末と水との混合物の提供を受けることのできる位置に(さらには、1層目にレーザー光の焦点距離が合うように)設定する(工程(1))。
次に、容器(バスタブ)全体を混合物で満たし、プラットフォームの上に提供された混合物の一部に、食品の三次元形状に基づいてあらかじめ定められたパターンに従って、レーザー光を照射する(工程(2))。
【0019】
この後、直ちに混合物からゲル化した澱粉を取り出してもよいが、以下のように混合物の提供とレーザー光の混合物への照射を繰り返すことにより、ゲル化した澱粉を積層させて、食品を三次元造形してもよい。
すなわち、レーザー光を照射した混合物(1層目)の上に追加の混合物を提供し、追加の混合物(2層目)にレーザー光を照射することができるように、ステージを下方(Z軸方向)に下げて、2層目に焦点距離が合うようにしておく(工程(3))。これにより、ステージを使用しない場合に必要となるレーザーモジュールの、上下(Z軸方向)移動を不要とすることができる。
次いで、レーザー光を照射した混合物(1層目)の上に、用意しておいた追加の混合物を提供し、追加の混合物(2層目)にレーザー光を照射する(工程(4))。
レーザー光の照射による造形がすべて完了した後は、ゲル化した澱粉から構成される三次元造形された食品を取り出す。
なお、ここでは、容器(バスタブ)の底部から延びるステージによりプラットフォームを下方(Z軸方向)に移動させる方式について説明したが、プラットフォームを容器(バスタブ)の上方から吊下げ手段を使用して吊り下げ、吊下げ手段を駆動させることによりプラットフォームを下方(Z軸方向)に移動させることとしてもよい。
また、食品を造形している間に、容器(バスタブ)全体に充填した混合物中の澱粉粉末が沈殿してしまうのを防ぐため、容器(バスタブ)中の混合物を撹拌し、あるいは循環させるのが望ましい。
【0020】
<パウダーベッド方式・ステージ使用>
図3を参照して、図3は、パウダーベッド方式であって、上下(Z軸方向)に移動させることのできるステージを使用する場合における各工程の概要を示す。パウダーベッド方式では、バスタブ方式において水中に澱粉粉末を分散させて澱粉粉末と水との混合物を用意していたのに代えて、澱粉粉末に水を噴霧することにより、混合物を用意する。
まず、プラットフォームを、混合物を用意するための澱粉粉末の提供を受けることのできる位置に(さらには、1層目にレーザー光の焦点距離が合うように)設定し、プラットフォーム上に澱粉粉末を提供する(工程(1))。
次に、プラットフォームの上に提供された澱粉粉末に水を噴霧して、プラットフォーム上に澱粉粉末と水との混合物を用意し、レーザー光の照射を受ける混合物を提供することができるようにする(工程(2))。
次いで、プラットフォームの上に提供された混合物の一部に、食品の三次元形状に基づいてあらかじめ定められたパターンに従って、レーザー光を照射する(工程(3))。
【0021】
この後、直ちに混合物からゲル化した澱粉を取り出してもよいが、以下のように混合物の提供とレーザー光の混合物への照射を繰り返すことにより、ゲル化した澱粉を積層させて、食品を三次元造形してもよい。
すなわち、レーザー光を照射した混合物(1層目)の上に追加の混合物を提供し、追加の混合物(2層目)にレーザー光を照射することができるように、ステージを下方(Z軸方向)に下げて、2層目に焦点距離が合うようにしておく(工程(4))。
次いで、レーザー光を照射した混合物(1層目)の上に、澱粉粉末を提供し、さらに澱粉粉末に水を噴霧することにより、追加の混合物を提供し、追加の混合物(2層目)にレーザー光を照射する(工程(5))。
レーザー光の照射による造形がすべて完了した後は、ゲル化した澱粉から構成される三次元造形された食品を取り出す。
パウダーベッド方式の場合、糊化していない澱粉粒の部分がサポート材のような役割を果たすことにより、中空形状や複雑形状の三次元造形が可能となると考えられる。
これらいずれかの方式あるいはその他の方式により本発明の方法を実施する場合、本発明では、澱粉粉末と水との混合物からゲル化した澱粉を取り出す必要がある。食品の造形にはある程度の時間がかかる場合があり、その間に混合物中の澱粉粉末が沈殿してしまう可能性もある。食品の造形後、混合物からゲル化した澱粉を取り出す工程を実施する際、澱粉粉末が沈殿しているような場合には、混合物の上澄み液を除去し、新たに水を供給して沈殿した澱粉粉末を洗い流しながらこの工程を実施するとよい。
【0022】
<澱粉粉末>
本発明に使用する澱粉粉末としては、特に制限されることなく様々なものを使用することができる。使用する澱粉粉末を選択する場合、澱粉粉末のアミロース含量や糊化温度、粒子径などを考慮することができる。
【0023】
アミロース含量
もち米澱粉粉末のように低アミロース含量の澱粉粉末は一般に、ゲルが固まりにくく、柔らかいゲルを形成するとともに、もちもちした、粘りのある食感となり、時間が経っても変化しにくい性質を有する傾向にある。
一方、うるち米澱粉粉末のように高アミロースの澱粉粉末は一般に、ゲルが固まりやすく、硬いゲルを形成するとともに、サックリとした食感となり、経時的に硬くなりやすい(老化しやすい)性質を有する傾向にある。
典型的な澱粉粉末のアミロース含量は、ワキシーコーン(0%)、もち米(0%)、タピオカ(17%)、うるち米(15~18%)、馬鈴薯(20%)、甘藷(21%)、小麦(24%)、コーン(26%)、エンドウ(24~28%)、ハイアミロースコーン(50~80%)である。
【0024】
糊化温度
糊化温度の低い澱粉粉末は、糊になりやすく、混合物にレーザー光を照射した時に、広い範囲が糊になるため、造形速度が速くなると考えられる。
一方、糊化温度の高い澱粉粉末は、糊になりにくく、混合物にレーザー光を照射した時に、狭い範囲が糊になるため、造形精度が高くなると考えられる。
典型的な澱粉粉末の糊化温度は、小麦(52-67℃)、馬鈴薯(56-66℃)、タピオカ(59-70℃)、もち米(58-80℃)、ワキシーコーン(63-72℃)、うるち米(61-78 ℃)、甘藷(62-80℃)、コーン(62-74℃)、エンドウ(79℃)、ハイアミロースコーン(110℃)である。
【0025】
粒子径
粒子径の小さい澱粉粉末を使用する場合、澱粉粉末と水との混合物(分散液)中で澱粉粉末が沈降しにくい傾向にある。反対に、粒子径の大きい澱粉粉末を使用する場合、澱粉粉末と水との混合物(分散液)中で澱粉粉末が沈降しやすい傾向にある。
典型的な澱粉粉末の粒子径(単位μm)は、うるち米(2-10)、もち米(2-10)、タピオカ(4-35)、エンドウ(2-40)、コーン(6-30)、ワキシーコーン(6-30)、ハイアミロースコーン(6-30)、甘藷(2-50)、小麦(2-40)、馬鈴薯(2-100)である。
【0026】
本発明では、1種類の澱粉粉末のみを使用してもよく、2種類以上の澱粉粉末を併用してもよい。例えば、食品の三次元形状のある部分と他の部分で異なる種類の澱粉粉末を含む混合物を使用することにより、造形する食品の食感を部分的に変えることができると考えられる。
【0027】
<澱粉粉末と水との混合物>
本発明では、澱粉粉末と水との混合物における澱粉粉末の濃度を適宜決定することができる。
一般に、混合物中の澱粉粉末の濃度が低い(混合物の水分含量が高い)場合、混合物にレーザー光を照射しても、膨潤した澱粉粒を糊化させることはできても、糊化した澱粉粒をゲル化させることができないことがある。この観点から、本発明で使用する澱粉粉末と水との混合物中には、澱粉粉末が少なくとも10質量%含まれるのが望ましい。
一方、混合物中の澱粉粉末の濃度が高い(混合物の水分含量が低い)場合、混合物にレーザー光を照射しても、膨潤した澱粉粒を糊化させることができないことがある。この観点から、本発明で使用する澱粉粉末と水との混合物中に含まれる澱粉粉末は、90質量%以下であるのが望ましい。
本発明で使用する澱粉粉末と水との混合物中には、澱粉粉末が20質量%~80質量%の濃度で含まれるのが好ましく、40質量%~60質量%の濃度で含まれるのがさらに好ましい。
【0028】
<色素>
本発明で使用する澱粉粉末と水との混合物はさらに、色素を含むことができる。
本発明で使用する色素は、食用色素であるのが好ましい。食用色素は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、食品を利用したものであっても、食品添加物であってもよい。
色素の例としては、次のようなものが挙げられる。
オレンジ系
トウガラシ色素、アナトー色素、ウコン色素、食用黄色5号
レッド系
アカキャベツ色素、アカダイコン色素、ムラサキイモ色素、パープルキャロット色素、エルダーベリー色素、ベニコウジ色素、クチナシ赤色素、コチニール色素、ラック色素、アカビート色素、ブドウ果皮色素、
アマランス(食用赤色2号)、エリスロシン(赤色3号)、アルラレッドAC(赤色40号)、ニューコクシン(赤色102号)、フロキシン(赤色104号)、ローズベンガル(赤色105号)アシッドレッド(赤色106号)
イエロー系
パーム油カロチン、β-カロチン、リボフラビン、ベニバナ黄色素、クチナシ黄色素、マリーゴールド色素、タートラジン(食用黄色4号)
ブラウン系
カカオ色素
ブルー系
クチナシ青色素、スピルリナ青色素、ブリリアントブルーFCF(青色1号)、インジゴカルミン(青色2号)
ブラック系
植物炭末色素
【0029】
本発明では、1種類の色素のみを使用してもよく、2種類以上の色素を併用してもよい。上記の色素のうち2種類以上を任意の割合で混合することにより、所望の色を作ることができる。例えばベニバナ黄色素とクチナシ青色素を混合して、緑色の色素を作ることが可能である。
【0030】
本発明では、使用するレーザー光の波長に吸収を有する色素を使用するのが望ましい。
例えば、レーザー光として450nm(青色)の波長の光を使用する場合、この波長での食用色素の吸光度について見ると、青色1号は0.006[abs]、黄色4号は0.353[abs]、赤色102号は0.159[abs]である。この場合、混合物に青色1号を添加してレーザー光を照射すると、膨潤した澱粉粒を糊化させるために十分なエネルギーが吸収されない可能性がある。一方、混合物に赤色102号あるいは黄色4号を添加してレーザー光を照射すると、膨潤した澱粉粒が糊化して糊化した澱粉が形成され、糊化した澱粉粒がゲル化するのに十分なエネルギーが吸収されると考えられる。特に、添加物である食用色素の使用量は、少ない方が安全性の観点から望ましいと考えられることから、吸光度スペクトルのピークが青色レーザー光の波長に近い黄色4号を使用するのが好ましいと考えられる。
【0031】
混合物中の色素の含有量は、特に制限はないが、混合物中に0.001質量%~0.5質量%の濃度で色素が含まれるのが好ましい。
本発明において、三次元形状を有する食品の造形精度は、色素の濃度が高い方が良好であると考えられる。
一方、色素の濃度が非常に高くなると、造形された食品にこげ(褐変)が生ずることが考えられる。この現象を利用して、例えば食感や風味を変えたい部分を造形する際に、他の部分よりも高い濃度で色素を含む混合物を使用することができる。
さらに、混合物が高い濃度で色素を含む場合、同じ条件で混合物にレーザー光を照射したときに、混合物中の色素の濃度が低い場合に比べて、造形する澱粉の層が薄くなることが考えられる。これは、混合物中の色素の濃度が高いほど、レーザー光が混合物により吸収されやすくなり、混合物の上から照射したレーザー光が混合物の浅い部分で吸収されてしまい、混合物の深い部分にまで到達しないことが考えられるからである。もちろん、この現象を利用して、混合物中の色素の濃度を調整することにより、造形する澱粉の層の厚さを調整することもできる。
【0032】
なお、市販されている食用色素は、粉末状態で取引されており、色素単体では濃度が濃すぎるため、デキストリンなどの多糖で増量されている。これを水中に溶解させると、デキストリンなどの多糖が、界面活性剤や分散安定剤として振る舞い、それが混合された溶液中で、作用を及ぼす可能性がある。
本発明において、澱粉粉末の水分散液に、市販の食用色素(増量剤入り)を加えると、増量のための多糖類等が、澱粉粉末の分散状態や、加熱による澱粉の膨潤の速度、膨潤した澱粉粒子同士の結合のスピードなどに影響を及ぼす可能性がある点に、注意を要する。
また、色素の分散状態も、色素単体の水溶液と色素と増量剤が入った水溶液とでは異なることが予想される。このことが、色素の吸収スペクトルの変化につながる可能性がある点にも、注意を要する。
具体的には、水中の色素が分子レベルで単独に分散している場合には、光の吸収は色素分子単体の光反応プロセスのみを考慮すればよい。一方、増量剤の存在によって色素分子が集合状態で分散している場合には、吸収された光が他の色素にエネルギー移動を起こすことにより、光の吸収の効率が変化する可能性がある。
【0033】
<レーザー>
本発明は、レーザー光を澱粉粉末と水との混合物に照射することにより、澱粉粉末の澱粉粒が水により膨潤して膨潤した澱粉粒が形成され、膨潤した澱粉粒が糊化して糊化した澱粉が形成され、糊化した澱粉粒がゲル化して、ゲル化した澱粉が得られるものである。
本発明で使用するレーザー光としては、赤外線領域、紫外線領域、可視光領域など、さまざまな波長を有するものが考えられる。本発明において、レーザー光を照射するレーザー光源は、可視光レーザーであるか、あるいは赤外線レーザーであるものとすることができるが、次のような点を考慮するのがよい。
【0034】
(澱粉の可視光吸収について)
澱粉粒子の分散液(ここでは色素を含まないものを想定する)に可視光レーザーを照射した場合、照射したレーザー光のエネルギーは、澱粉粒子に光が吸収された時には、熱エネルギーに変わる。しかしながら、澱粉は可視光領域に吸収を持たないため、照射した光の大部分は澱粉粒子の表面で散乱してしまい、澱粉粒子に吸収されて熱エネルギーに変わる光のエネルギーの効率は高くないことが考えられる。澱粉粒子を分散させた溶液が白く見えるのは、光が澱粉粒子の表面でエネルギー吸収の無い弾性散乱を起こしていることを示唆している。澱粉粒子の分散液が白色に見えること自体、澱粉粒子が光を吸収しにくいことを意味している。
【0035】
(水の可視光吸収について)
水は可視光に対して透明で、光を吸収しない。したがって、照射した可視光レーザーが熱エネルギーに変わり水温を上げる効率は高くはないと考えられる。
【0036】
これらのことから、色素を含まない水による澱粉粒子の分散液の一部に可視光レーザーを照射して、分散液を局所的に温度上昇させるには、十分なエネルギーを供給することができる程度にレーザー光を照射する必要があると考えられる。
【0037】
(水の赤外光吸収について)
炭酸ガスレーザーのような赤外領域に発振波長のある赤外レーザーを用いる場合、水が赤外領域に吸収を持つことから、赤外レーザーを水に照射することで水溶液の温度を上昇させることは理論的には可能である。
ただし、一般に、水の赤外吸収はわずかで、例えば1mmの厚みの水を透過する赤外線は70~90%以上である。いわゆる光の突き抜けが起きる(具体的には、数十mm程度の深さまで光が浸透する)ために、赤外レーザーを3Dプリンターに用いる場合には、Z軸方向の分解能を出すことが容易ではないことが予想される。
さらに、白濁した澱粉粉末と水の混合物に赤外レーザーを照射した場合、澱粉粒子の表面では弾性散乱が起こり、多重散乱した光はサンプル内部を直線的に通過することはできなくなり、ランダムな散乱を繰り返して拡散的に光が伝播するようになる。その時の拡散の領域は数mmから数十mmに及ぶと考えられる。この点も、3Dプリンターの分解能を低くする要因になりうる。
【0038】
一方、求められる空間分解能が数mm程度であれば、赤外レーザーの照射の領域を対物レンズやピンホール、または光ファイバーなどを用いることにより、光の照射される領域を光学的に数mm程度に閉じ込めることが可能である。換言すれば、本発明において、空間分解能が数mm程度の3Dプリンターを、赤外レーザーを光源として設計することは可能である。
産業的には、炭酸ガスレーザーは、加熱と溶解、燃焼などにより固体材料を切断する、レーザーカッターの光源として広く用いられている。本発明では、澱粉粉末と水との混合物に炭酸ガスレーザーを照射して、澱粉粒をゲル化させ、固化した部分にさらにレーザー光を照射し続けて加熱することにより、この部分が炭化して褐色に変化することで光の吸収がさらに効率的に起きるようになり、澱粉の炭化を進行させることも可能である。褐色に変化するということは、澱粉中に存在する炭素の化学変化が澱粉の分子構造変化を起こし、吸収スペクトルに変化を及ぼしていることを意味している、と考えられる。この現象を利用して、本発明において、粉末のゲル化後の食品の後加工に、炭酸ガスレーザーを用いることも可能である。
【0039】
(色素の利用について)
本発明では、炭酸ガスレーザーの代わりに可視光レーザーを用いることもできる。可視光レーザーを用いる場合には、澱粉粒子の分散液の温度上昇を起こすために光を効率よく熱エネルギーに変えるための手段として、色素、特に、可視光レーザーの波長に吸収を有する色素を用いるのが好ましい。
色素を用いる場合、色素の選択によって、任意の効率で光エネルギーを熱エネルギーに変換することが可能である。したがって、この場合には、様々な波長の光を用いることができる。
【0040】
(可視光レーザーの入手容易性について)
本発明では、レーザー光を照射するレーザー光源として、出力が1W~100Wのものを好適に使用することができる。可視光レーザーは、数10mW~数100mWクラスが数千円から数万円で購入できるようになっており、民生の3Dプリンターを作るのに選択しやすくなっている。
【0041】
(ゲル化の観点での走査速度について)
本発明では、澱粉粉末と水との混合物の一部にレーザー光を照射することにより、澱粉粉末の澱粉粒が水により膨潤して膨潤した澱粉粒が形成され、膨潤した澱粉粒が糊化して糊化した澱粉が形成され、糊化した澱粉粒がゲル化することにより、ゲル化した澱粉を得る。
レーザー光の照射により水溶液中の局所的な温度を上昇させると、水中に存在する澱粉粒子の膨潤と澱粉中に含まれるアミロースの溶解が誘導される。その後の過程で、膨潤した澱粉粒子同士の接触や澱粉粒子同士を橋架けするアミロースの溶解後に起きる微結晶形成が、澱粉粒子の糊化を進行させ、分散液の粘度が上昇し、結晶形成が閾値に到達すると弾性が発生するゲル化が起きる。ひとたび膨潤が始まる温度状態になると、膨潤の進行とアミロースの溶解は、高速に進む。
従って、レーザー光照射による昇温過程がミリ秒程度の時間であれば、局所的な澱粉粒子の膨潤は十分に引き起こされると考えられる。
本発明では、一般に、レーザー光のスポット径は、0.01mm~1mmであるのが好ましい。また、レーザー光を照射する工程が、あらかじめ定められたパターンに従ってレーザー光を走査する工程を含むものである場合、走査速度を0.5mm/s~10mm/sとするのが好ましい。
具体的な数値的な見積もりの例について、以下に説明する。
【0042】
例1.スポット径0.1mm、走査速度100mm/sの場合
3Dプリンターのレーザー走査速度を100mm/sとし、この時に照射しているレーザーのスポット径を0.1mmとした場合、0.1mmのスポットに光が当たっている時間は0.1mm÷100 mm/s=1msである。
通常の温度領域における水分子の拡散係数はおよそ10-9m2/sで、
経過時間1msでは、水分子の最大移動距離は√(10-9m2/×1ms)=10-6m=1μm
経過時間100msでは、水分子の最大移動距離は√(10-9m2/×100ms)=10-6m=10μm
経過時間10sでは、水分子の最大移動距離は√(10-9m2/×10s)=10-6m=0.1mm
となり、10s経過すると0.1mmのスポット内にあった水分子は拡散によって元の水温に戻ってしまう。現実的には数秒で戻っていると考えられる。
スポット径0.1mmの場合の体積は、4π(0.01cm)3/3=約0.5pL(ピコリットル)に相当する。0.5ピコリットルの水を1℃上昇させるのに必要な熱エネルギーは0.5マイクロカロリーであり、100℃上昇させるには50マイクロカロリー、すなわち0.05ミリカロリーのエネルギーが必要である。このエネルギーは0.2mJに相当するから、1msで0.2mJの熱を発生させるには0.2mJ/1ms=0.2Wのレーザー光源を用いればいいことになる。
【0043】
例2.スポット径0.2mmの場合、走査速度5mm/sの場合
3Dプリンターのレーザー走査速度を5mm/sとし、この時に照射しているレーザーのスポット径を0.2mmとした場合、0.2mmのスポットに光が当たっている時間は0.2mm÷5mm/s=10msである。
通常の温度領域における水分子の拡散係数はおよそ10-9m2/sで、
経過時間1msでは、水分子の最大移動距離は√(10-9m2/×1ms)= 10-6m=1μm
経過時間100msでは、水分子の最大移動距離は√(10-9m2/×100ms)= 10-6m=10μm
経過時間10sでは、水分子の最大移動距離は√(10-9m2/×10s)= 10-6m=0.1mm
となり、10s経過すると0.2mmのスポット内にあった水分子は拡散によって元の水温に戻ってしまう。現実的には数秒で戻っていると考えられる。
スポット径0.2mmの場合の体積はおよそ4π(0.01cm)3/3=約4pL(ピコリットル)に相当する。約4ピコリットルの水を1℃上昇させるのに必要な熱エネルギーは41マイクロカロリーであり100℃上昇させるには400マイクロカロリー、すなわち0.4ミリカロリーのエネルギーが必要である。このエネルギーは1.6mJに相当するから、10msで1.6mJの熱を発生させるには、照射した光エネルギーが全て熱に変わるとしたら1.6mJ/10ms=0.16Wのレーザー光源を用いればいいことになる。例えば、5Wクラスのレーザーを使用すれば、熱変換効率が20%程度であったとしても1W程度の仕事率となり、十分に加熱を行うことができると考えられる。
【0044】
(走査速度と造形物の弾性率)
走査速度が大きいほど、つまり単位面積当たりに照射するレーザー光の光量が小さいほど、造形した食品の弾性率が小さくなることが考えられる。単位面積当たりの光量が小さいほど、澱粉の加熱温度が低くなり、糊化が進みにくくなり、それに伴って、弾性率が小さくなることが考えられるからである。
【0045】
(光造形方式の3Dプリンターの多様化について)
本発明では、レーザー光を照射する工程を、あらかじめ定められたパターンに従ってレーザー光を走査する工程とすることができるが、これに限られるものではない。
光造形の方法としては、レーザーの直線的な光をガルバノミラーなどで走査させて用いるステレオリソグラフィー(stereolithography)方式(SLA方式)がある。他に、レーザー光を光ファイバーを通して液中に導入する方式(「光ファイバー方式」)もある。
また最近は、DLP方式(digital light processing)と呼ばれる、プロジェクターの光を用いる方式が、レーザーで走査するよりも面で書き込めることから格段に高速化できるため、用いられるようになっている。この方式では、数十万個の小さな微小ミラーから作られたMEMSデバイスが、プロジェクションを可能にしている。
さらに最近では、LCD方式と呼ばれる、LEDのUV光をバスタブの底面にとりつけた液晶フィルタを通過した光で反応させる方式もある。このLCD方式は、直線的に進むようなレーザー光で無くてもLCDのドットの大きさと面密度で、レーザー光を用いた時のような高い空間分解能を出すことができる。
本発明では、これらいずれの方式も、本発明の効果が得られる範囲で採用することができる。
【0046】
<食品三次元造形装置>
図4を参照して、図4は、本発明の一態様による装置の概要を示す模式図(斜視図)である。ここに示す装置は、上で説明した「バスタブ方式」を採用した装置の例である。
本発明の装置は、澱粉粉末と水との混合物を提供するための混合物提供手段(図示せず)からの混合物の提供を受ける、容器20などの混合物収容手段を備える。
容器20内に収容された混合物の一部には、レーザー光源を備えるレーザーモジュール10からレーザー光が照射される。これにより、容器20内で、澱粉粉末の澱粉粒が水により膨潤して膨潤した澱粉粒が形成され、膨潤した澱粉粒が糊化して糊化した澱粉が形成され、糊化した澱粉粒がゲル化することにより、ゲル化した澱粉が得られる。
容器20は、可動定盤21の上に載置されている。
食品の三次元形状に基づいてあらかじめ定められたパターンに従って、容器20内の混合物の所定の位置にレーザーモジュール10からのレーザー光を照射することができるように、容器20とレーザーモジュール10とのX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の相対位置を、相対位置制御手段によって制御する。具体的には、あらかじめ定められたパターンに基づく情報に応じて、ステッピングモーターによって、プーリとベルト、あるいはナットとアームなどを駆動させることにより、容器20とレーザーモジュール10との相対位置を制御することができる。
本発明の装置において、レーザーモジュール10は、照射制御手段(図示せず)による制御に応じて、食品の三次元形状に基づいてあらかじめ定められたパターンに従って、混合物にレーザー光を所定の照射条件で照射する。
【実施例
【0047】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
(食品三次元造形装置)
Geeetech社製の3Dプリンター用キット“Geeetech I3 Pro B”から、レーザーモジュールを備える食品三次元造形装置(3Dプリンター)を製作した。Geeetech I3 Pro B用の制御ソフトウェアとしては、オープンソースのRepetier-host V1.6.0を用いた。
装置のレーザーモジュールは、ステッピングモーターによってプーリとベルトを回転させる方式により、X軸方向に走査可能となっている。
装置はまた、混合物を収容する容器を載置することのできる可動定盤を備える。可動定盤は、X軸方向に直交するY軸方向に、ステッピングモーターにより移動させることができる。Y軸方向の可動定盤の移動とX軸方向のレーザーモジュールの走査との組合せにより、この装置では、レーザーモジュールと可動定盤との相対位置をXY平面内で変えながら、食品の三次元形状に基づいてあらかじめ定められたパターンに従って、混合物にレーザー光を照射することができるようになっている。可動定盤はまた、XY平面に直交するZ軸方向に、ステッピングモーターにより移動させることができる。可動定盤のZ軸方向の移動は、ステッピングモーターと全ねじを接続し、回転した際のナットの移動によってアームを上下させることで行う。
実施例で使用した装置では、可動範囲をX軸方向に200mm、Y軸方向に200mm、Z軸方向に180mmとした。
【0049】
3Dプリンター用の3Dデータは、造形しようとする三次元形状をスライサーというソフトウェアを用いて一定の間隔ごとに輪切りし、G-codeと呼ばれる3Dプリンター用のデータに変換して用意するのが通常である。このG-codeを3Dプリンターに送ることにより、所望の三次元形状を有する立体物を造形する。
3Dプリンター用キット“Geeetech I3 Pro B”は本来、FDM(Fused Deposition Modeling/熱溶解積層法)方式の3Dプリンターを製作するためのものである。FDM方式の3Dプリンターは、ヒーターによる熱で軟化したフィラメントをモーターの回転で押し出し、ノズルから射出して、立体物を造形するものである。このため、FDM方式の3Dプリンターで使用するG-codeには、フィラメントの押し出し量、及び加熱するためのヒーターの温度についての情報が、造形条件として書かれている。本発明の3Dプリンターの場合、これらの情報に代えて、レーザーモジュールの操作条件についての情報が必要となるため、FDM方式の3Dプリンターで使用するG-codeを、pythonで作成したプログラムを使用して、本発明の3Dプリンターで使用するG-codeに変換できるようにした。
【0050】
レーザーモジュールとしては、赤外線領域、紫外線領域、可視光領域など、さまざまな波長を照射することができるものが考えられるが、本発明の食品を三次元造形する方法が一般に普及した場合を想定すると、目視で確認できる波長を有するレーザー光を用いるのが望ましいと考えられる。このような観点から、実施例では、可視光領域の波長を有するレーザーとして一般的に用いられる、半導体をレーザー媒質とする青色光のレーザーモジュールを使用した。使用したレーザーモジュールは、Alfawise社製の“blue laser module”(波長450nm、出力5.5W、スポット径0.2mm、入力電圧12V)である。
【0051】
(実施例1)
まず、澱粉粉末と水、色素を混合して攪拌し、色素を含む澱粉粉末と水との混合物(懸濁液)を作製した。作製した懸濁液を直前に攪拌し、造形しようとする三次元形状を複数の層にスライスした場合の1層分の懸濁液を、容器に注入した。
懸濁液を収容した容器を、3Dプリンターの可動定盤に載置し、造形しようとする三次元形状に基づいてあらかじめ定められたパターンに従って、澱粉をゲル化させたい部分にだけレーザーを照射した。
1層分の懸濁液にレーザー光を照射した後、容器を可動定盤の上に乗せたまま、作製した懸濁液を攪拌し、懸濁液にレーザー光を照射して得られた造形物の上に、1層分の追加の懸濁液を注入した。
その後、あらかじめ定められたパターンに従って、澱粉をゲル化させたい部分にだけレーザー光を照射した。これらの工程を繰り返すことにより、積層させたゲル化した澱粉から構成される食品を三次元造形した。
【0052】
澱粉粉末は、三和澱粉工業株式会社製のコーンスターチ(商品名:コーンスターチY)を、色素は、ダイワ化成株式会社製の食用黄色4号を用いた。懸濁液は、コーンスターチと水、食用黄色4号を容器に入れ、薬さじでかき混ぜることにより作製した。5層分の懸濁液をあらかじめ作製しておき、気化しないようにラップで包み、容器に注入する直前まで保存した。作製した懸濁液中の、澱粉粉末の割合(濃度)は50質量%、食用黄色4号の割合(濃度)は0.03質量%とした。
【0053】
図5Aに示すようなピラミッド型のSTL(Stereolithography)データを用いて、三次元造形を行った。このSTLデータは、最下層が一辺10mmの正方形で、上の層に上がるほど辺の長さが2mmごと小さくなっており、各層の厚さを0.1mmに設定したものである。
まず、容器に保存しておいた懸濁液を攪拌し、内寸が縦30mm×横30mm×高さ6mmの容器に1層分(高さが0.5mmとなるように)注入した。懸濁液を収容した容器を、3Dプリンターの可動定盤に載置した後、1層目の10mm×10mmの正方形の領域に、STLデータに基づいて定められたパターンに従って、走査速度が5mm/sの条件でレーザーを照射し、10mm×10mm×0.5mmの層について造形を行った。その際、レーザーを走査した領域(線)と、次いでレーザーを走査する領域(線)との間に隙間ができないように、これらの領域が一部重複するような条件で走査を行った。
【0054】
次に、容器の中にある、懸濁液にレーザー光を照射して得られた造形物の上に、1層目と同様に、懸濁液を攪拌し、1層分(高さが0.5mmとなるように)注入した。その後、2層目に焦点距離が合うように、レーザーモジュールをZ軸方向に0.5mm上げた。そして、二層目の8mm×8mmの正方形の領域に、STLデータに基づいて定められたパターンに従ってレーザーを照射し、1層目の上に積層するように、8mm×8mm×0.5mmの領域の層を造形した。
この作業を5層目まで繰り返し、ピラミッド型のSTLデータに対応する形状を有する食品を三次元造形した。
【0055】
さらに、積層させたゲル化した澱粉から構成される三次元形状を有する食品を、容器中の懸濁液から取り出した。具体的には、レーザー光を照射する工程がすべて完了するまで10分程度の時間を要し、その間に懸濁液中の澱粉が完全に沈殿してしまうとゲル化した澱粉から構成される食品を懸濁液から取り出すことが困難になることが予想されるので、造形が完了した食品を懸濁液から取り出す際には、懸濁液の上澄み液を除去し、スポイトで新たに水を供給して沈殿した澱粉を少しずつ溶かしながら洗い流して、ゲル化した澱粉から構成される食品を取り出した。
【0056】
得られたピラミッド型に三次元造形された食品を、図5Bに示す。
図5Bから、本発明によれば、1mm単位の高精度な造形が可能なことが理解される。また、層同士がしっかりと接着している様子が観察されたことから、造形の際に懸濁液中の澱粉粒がレーザー光の照射により糊化したものと認められる。図5Bからは、造形された食品の寸法が、元となるSTLデータよりも少し大きいことが認められるが、これは、食品が懸濁液の水分を吸収して膨潤した状態で観察しているためであると考えられる。
【0057】
(実施例2)
ピラミッド型のSTLデータに代えて、図6Aに示すような「A」型のSTLデータを用い、作業を8層目まで繰り返したことを除き、実施例1と同様の方法で食品を三次元造形した。
なお、造形する際の「A」型の寸法は、18mm×20mmとした。
得られた「A」型に三次元造形された食品を、図6Bに示す。
図6Bから、本発明によれば、三次元の「A」型のように一部が中空となった複雑な形状であっても、食品を精度よく三次元造形することが可能であることが認められる。
【0058】
(実施例3~5)-澱粉粉末の濃度の検討-
澱粉粉末の割合(濃度)が50質量%のものに加えて40質量%、60質量%の懸濁液を用意し、それぞれの懸濁液を使用して、ピラミッド型のSTLデータに代えて縦10mm×横10mm×高さ0.1mmの直方体のSTLデータを用いて1層分の懸濁液にレーザー光を照射したことを除き、実施例1と同様の方法で食品を三次元造形した。結果を表1にまとめる。
【0059】
【表1】
【0060】
結果から、懸濁液を攪拌し、容器に注入する際には、懸濁液中の澱粉粉末の濃度が低い方が、取扱いが容易であることが理解される。
一方、特にレーザーを照射し始める部分の造形精度は、澱粉粉末の濃度が高い方が良好であることが認められた。
【0061】
(実施例6~9)-色素の濃度の検討-
色素の割合(濃度)が0.03質量%のものに加えて0.02質量%、0.09質量%、0.27質量%の懸濁液を用意し、それぞれの懸濁液を使用して、実施例4と同様の方法で食品を三次元造形した(実施例4と実施例7は同一である)。結果を表2にまとめる。
【0062】
【表2】
【0063】
結果から、特にレーザーを照射し始める部分の造形精度は、色素の濃度が高い方が良好であることが認められた。
一方、色素の濃度が非常に高くなると、造形された食品にこげ(褐変)が観察された。この現象を利用して、例えば食感や風味を変えたい部分を造形する際には、他の部分よりも高い濃度で色素を含む混合物を使用することが考えられる。
【0064】
(実施例10~13)-走査速度の検討-
レーザー光の走査速度を5mm/sとした場合に加えて、走査速度を1.25mm/s、2.5mm/s、10mm/sに設定した場合について、実施例4と同様の方法で食品を三次元造形した(実施例4と実施例12は同一である)。結果を表3にまとめる。
【0065】
【表3】
【0066】
結果から、特にレーザーを照射し始める部分の造形精度は、走査速度が遅い方が良好であることが認められた。
一方、走査速度が非常に遅くなると、造形された食品にこげ(褐変)が観察された。この現象を利用して、例えば食感や風味を変えたい部分を造形する際には、他の部分よりも遅い走査速度でレーザー光を照射することが考えられる。
【0067】
(実施例14~17)-澱粉粉末の種類の検討-
「A」型のSTLデータに代えて縦10mm×横10mm×高さ0.8mmの直方体のSTLデータを用いたことを除き、実施例2と同様の方法で、コーンスターチを使用した場合に加えて、うるち米澱粉(上越スターチ(株)製、商品名:ファインスノウ)、もち米澱粉(上越スターチ(株)製、商品名:モチールB)、及び、馬鈴薯澱粉(東部十勝農産加工農業協同組合連合会製、商品名:精製でんぷん)を使用した場合について、食品を三次元造形した。ただし、澱粉粉末の種類によって澱粉粉末の濃度が同じでも粘度が異なるため、粘度が同程度となるようにそれぞれの澱粉粉末の濃度を調節した。結果を表3にまとめる。
【0068】
【表4】
【0069】
結果から、例えば造形する食品の食感を部分的に変えたい場合には、ある部分と他の部分で異なる種類の澱粉粉末を含む混合物を使用することが考えられる。
【符号の説明】
【0070】
10 レーザーモジュール
20 容器
21 可動定盤
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B