(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】骨髄細胞への分化誘導のための組成物と方法、およびその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 5/078 20100101AFI20240826BHJP
C12N 5/0786 20100101ALI20240826BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20240826BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240826BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240826BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20240826BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20240826BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20240826BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240826BHJP
C12N 15/869 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
C12N5/078
C12N5/0786
C07K14/47
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C12N15/867 Z
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/869 Z
(21)【出願番号】P 2022565527
(86)(22)【出願日】2020-12-30
(86)【国際出願番号】 KR2020019444
(87)【国際公開番号】W WO2021137636
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】10-2019-0178516
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515351884
【氏名又は名称】ユニスト(ウルサン ナショナル インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー)
(73)【特許権者】
【識別番号】522259304
【氏名又は名称】シューパイン セラピューティクス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUPINE THERAPEUTICS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】105-dong 220-ho, 50, UNIST-gil, Eonyang-eup Ulju-gun Ulsan 44919 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョンボム
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヒョンア
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/179718(WO,A1)
【文献】特開2019-201561(JP,A)
【文献】特表2014-506792(JP,A)
【文献】特表2013-535186(JP,A)
【文献】特表2018-531020(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0111296(US,A1)
【文献】Inflammation,2016年,Vol.39, No.1,pp.493-498
【文献】Experimental Hematology,2014年,Vol.42,p.S33 (P1042)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)FLI1(Friend leukemia(virus)integration 1、ETS transcription factor)タンパク質、
(2)前記タンパク質をコードする核酸分子、および
(3)前記核酸分子が導入されたベクターからなる群より選択される1種以上を含む、体細胞から骨髄細胞(myeloid cell)への直接交差分化誘導用組成物であって、
前記骨髄細胞は、
単球前駆細胞(monocyte progenitor cells)であり、
前記体細胞は、線維芽細胞(fibroblast)、
上皮細胞、神経幹細胞、オリゴデンドロサイト
前駆細胞、および間葉系幹細胞からなる群より選択される1種以上である、体細胞から骨髄細胞への直接交差分化誘導用組成物。
【請求項2】
前記ベクターは、プラスミドベクター、コスミドベクター、ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルス(Retrovirus)ベクター、HIV(Human immunodeficiency virus)ベクター、MLV(Murineleukemia virus)ベクター、ASLV(Avian sarcoma/leukosis)ベクター、SNV(Spleen necrosis virus)ベクター、RSV(Rous sarcoma virus)ベクター、MMTV(Mouse mammary tumor virus)ベクター、アデノウイルス(Adenovirus)ベクター、アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated virus)ベクター、 単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus)ベクター、およびエピソーマル(episomal)ベクターからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の体細胞から骨髄細胞への直接交差分化誘導用組成物。
【請求項3】
(1)FLI1(Friend leukemia virus integration 1)タンパク質、
(2)前記タンパク質をコードする核酸分子、および
(3)前記核酸分子が導入されたベクターからなる群より選択された1種以上を含む組成物を体細胞に接触、または挿入する段階を含む、インビトロで体細胞を骨髄細胞に直接交差分化する方法
であって、
前記骨髄細胞は、単球前駆細胞(monocyte progenitor cells)であり、
前記体細胞は、線維芽細胞(fibroblast)、上皮細胞、神経幹細胞、オリゴデンドロサイト前駆細胞、および間葉系幹細胞からなる群より選択される1種以上である、体細胞を骨髄細胞に直接交差分化する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
体細胞から骨髄細胞(myeloid cell)への直接交差分化を誘導するための組成物と方法、およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の胚性幹細胞および人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells)を用いた骨髄細胞(myeloid cell)への分化方法は、胚を破壊して胚性幹細胞を確立するか、体細胞から人工多能性幹細胞にリプログラミング(Reprogramming)した後に骨髄細胞への分化(Differentiation)段階を経てこそ作製することができた。このような従来の方法は、胚性幹細胞を利用するという点で倫理的問題が発生する可能性があり、人工多能性幹細胞を用いる場合、分化を行う段階において時間的、金銭的費用と労力がかかり、人為的な分化能の調節が容易でないため、収率が低く非効率的という問題点があった。また、インビトロ(in vitro)レベルで薬物代謝と毒性検証に求められる十分な数の細胞を確保することが難しく、骨髄細胞の機能の再生に向けた細胞治療を適用する段階で未分化細胞由来のテラトーマ(teratoma)が形成する可能性が高く、安全性の問題点もあった。
【0003】
上記のようなテラトーマ形成の危険性を排除するために、多能性幹細胞を介さずに体細胞を他の系統の体細胞、または多分化能幹細胞に直接交差分化(direct conversion)するための研究が進んでいるが、このような直接交差分化過程の誘導に使用された遺伝子の数が多すぎて詳細な機序を解明することが難しいため、現在までに明らかになったレベルが微小な状態である。さらに、体細胞から特定の遺伝子のみを発現させて骨髄細胞を作製する方法は、まだ知られていない。
【0004】
そこで、本発明者らは、体細胞から骨髄細胞への直接交差分化方法に関する研究を行ってい た中、単一遺伝子であるFLI1(Friend leukemia(virus) integration 1, ETS transcription factor)を体細胞に導入して異所性発現を誘導すれば、効果的に体細胞を骨髄細胞に直接交差分化できることを確認し、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、体細胞への特定遺伝子の導入または特定タンパク質の発現を通じて、骨髄細胞(myeloid cell)への直接交差分化を誘導するための組成物を提供することである。
【0006】
他の目的は、前記組成物を用いてインビトロで体細胞を骨髄細胞に直接交差分化する方法を提供することである。
【0007】
他の目的は、前記方法によって直接交差分化が誘導された骨髄細胞を提供することである。
【0008】
他の目的は、前記組成物を含む免疫疾患の予防、または治療用医薬組成物を提供することである。
【0009】
他の目的は、前記骨髄細胞を含む免疫疾患の予防、または治療用の細胞治療剤を提供することである。
【0010】
他の目的は、前記骨髄細胞を含む免疫疾患の予防、または治療用薬物スクリーニング用組成物を提供することである。
【0011】
他の目的は、前記組成物の用途を提供することである。
【0012】
他の目的は、免疫疾患の予防、または治療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、一態様は、(1)FLI1(Friend leukemia(virus)integration 1)タンパク質と、(2)前記タンパク質をコードする核酸分子、および(3)前記核酸分子が導入されたベクターからなる群より選択された1種以上を含む、体細胞から骨髄細胞(myeloid cell)への直接交差分化誘導用組成物を提供する。
【0014】
「直接交差分化(Direct Conversion)」という用語は、高等生物において全く異なる細胞型を有する成熟した(分化が終わった)細胞間の変換を誘導する過程を指す。これは、体細胞を人工多能性幹細胞(Induced Pluripotent Stem Cells, iPSCs)にリプログラミングし、これを再分化して目的の細胞にする必要がある従来技術とは異なり、胚性幹細胞(embryonic stem cells)および人工多能性幹細胞などの多能性幹細胞の段階を経ずにすぐ目的の細胞への転換を誘導するという点で違いがあり、現在、直接交差分化は疾患モデリングや新薬開発などに利用される可能性が認められており、遺伝子治療や再生医学などにも応用できる技術として知られている。
【0015】
一態様で提供される直接交差分化誘導用組成物は、(1)FLI1(Friend leukemia virus integration 1)タンパク質と、 (2)前記タンパク質をコードする核酸分子、および(3)前記核酸分子が導入されたベクターからなる群より選択された1種以上を含むことができる。さらに、一態様で提供される直接交差分化誘導用組成物は、FLI1タンパク質を含み得る。
【0016】
一実施形態では、FLI1(Friend leukemia virus integration 1)タンパク質をコードする核酸分子を含むベクターを、体細胞に導入して骨髄細胞に直接交差分化することを確認することができる。
【0017】
「ベクター」という用語は、宿主細胞において目的タンパク質を発現することができる発現ベクターであり、遺伝子挿入物が発現するよう作動可能に連結された必須の調節要素を含む遺伝子伝達体を意味することができる。
【0018】
前記ベクターは、プロモーター、オペレーター、開始コドン、終止コドン、ポリアデニル化シグナル、エンハンサーなどの発現調節要素に加えて、膜標的化、分泌のためのシグナル配列またはリーダー配列を含み、目的に応じて多様に製造されることができる。ベクターのプロモーターは構成的または誘導性であり得る。また、発現ベクターは、ベクターを含む宿主細胞を選択するための選択性マーカーを含み、複製可能な発現ベクターである場合は複製起点を含む。ベクターは自己複製または宿主DNAに組み込むことができる。
【0019】
また、前記ベクターは、プラスミドベクター、コスミドベクター、ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルス(Retrovirus)ベクター、HIV(Human immunodeficiency virus)ベクター、MLV(Murineleukemia virus)ベクター、ASLV(Avian sarcoma/leukosis)ベクター、SNV(Spleen necrosis virus)ベクター、RSV(Rous sarcoma virus)ベクター、MMTV(Mouse mammary tumor virus)ベクター、アデノウイルス(Adenovirus)ベクター、アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated virus)ベクター、単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus)ベクター、およびエピソーマル(episomal)ベクターからなる群より選択される1種以上のベクターであってもよいが、これに限定されるものではない。一実施形態では、レンチウイルスベクターを使用することができる。
【0020】
前記FLI1タンパク質は、ヒト、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラクダ、レイヨウ、イヌなどの哺乳動物由来のすべてのFLI1タンパク質を含み得る。さらに、使用可能なFLI1タンパク質は、これらの野生型(wild type)のアミノ酸配列を有するタンパク質だけでなく、FLI1タンパク質からなる群より選択された1種以上のタンパク質の変異体(例えば、各タンパク質の亜型(subtype))を含み得る。
【0021】
前記FLI1タンパク質の変異体とは、FLI1タンパク質の天然アミノ酸配列の1つ以上のアミノ酸残基が、欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、またはそれらの組み合わせによって天然アミノ酸配列と異なる配列を有し、天然(wild-type)タンパク質の固有の生物学的機能を維持するタンパク質を意味する。前記変異体は、天然タンパク質と同じ生物学的活性を示す機能的等価物であるか、必要に応じてタンパク質の物理化学的性質が変形された変異体であり得、物理、化学的環境に対する構造的安定性が増大したり、生理学的活性が増大した変異体であり得る。
【0022】
前記FLI1タンパク質またはその変異体は、天然から分離されてもよく、組換えまたは合成的に製造(non-naturally occurring)されていてもよい。
【0023】
さらに、前記FLI1タンパク質をコードする核酸は、野生型または上記のような変異体形態のFLI1タンパク質をコードする塩基配列であり、1つ以上の塩基が置換、欠失、挿入、またはそれらの組み合わせによって変異されてもよく、天然から分離または化学的合成法を用いて製造されてもよい。前記FLI1タンパク質をコードする塩基配列を有する核酸は、単鎖または二重鎖であってもよく、DNA分子(ゲノム、cDNA)またはRNA(mRNA)分子であってもよい。
【0024】
「体細胞」という用語は、生殖細胞を除くすべての細胞を意味することができ、例えば、ヒト、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラクダ、レイヨウ、イヌなどの哺乳動物由来のもの、または分離されたものであり得る。
【0025】
前記体細胞は線維芽細胞(fibroblast)、上皮細胞、筋肉細胞、神経細胞、毛髪細胞、毛根細胞、毛包細胞、口腔上皮細胞、尿から抽出した体細胞、胃粘膜細胞、杯細胞、G細胞、B細胞、周皮細胞、アストロサイト(astrocyte)、血液細胞、神経幹細胞、造血幹細胞、臍帯血幹細胞、および間葉系幹細胞からなる群より選択される1種以上であってもよいが、これに限定されるものではない。一実施形態では、線維芽細胞を使用することができる。
【0026】
「骨髄細胞(myeloid cell)」という用語は、発育過程において、前骨髄球と後骨髄球との間の中間細胞であり、顆粒球系列の前駆体として、骨髄芽球、前骨髄球を経て骨髄球となり、再び後骨髄球、桿状核球、分葉核球に成熟する細胞を意味する。
【0027】
前記骨髄細胞は、単球前駆細胞(monocyte progenitor cells)、単球(monocytes)、マクロファージ(macrophages)、樹状細胞(Dendritic cells)、巨核球(megakaryocytes)、および血小板(platelets)からなる群より選択される1種以上であってもよいが、これに限定されるものではない。一実施形態では、単球前駆細胞であり得る。
【0028】
「単球前駆細胞(monocyte progenitor cell)」という用語は、ヒトの白血球の4~8%を占め、単核細胞で骨髄や脾臓の造血幹細胞から発生する無顆粒白血球の一種で、マクロファージ系細胞の特定の分化段階にある細胞として、骨髄から造血幹細胞、単芽球、前単球を経て単球に分化および成熟して血液内に流出した後、組織に移行し、マクロファージ(macrophage)、組織球、ランゲルハンス細胞、樹状細胞(dendritic cell)などに分化して細網内皮系を成すことができる細胞を意味する。
【0029】
「前駆細胞」という用語は、子孫に該当する細胞が特定の分化形成を発現することと判明した場合、分化形質を発現しない増殖が可能な未分化母細胞を意味する。
【0030】
さらに、「誘導された単球前駆細胞」、「iMac」および「iMOP」という用語は、例えば、一態様による直接交差分化によって体細胞から誘導された単球前駆細胞を意味することができる。
【0031】
他の態様は、(1)FLI1(Friend leukemia virus integration 1)タンパク質と(2)前記タンパク質をコードする核酸分子、および(3)前記核酸分子が導入されたベクターからなる群より選択された1種以上を含む組成物を体細胞に接触または挿入する段階を含む、インビトロで体細胞を骨髄細胞に直接交差分化する方法を提供する。
【0032】
前記直接交差分化方法は、体細胞を培地で培養する段階、前記培養した体細胞にFLI1遺伝子を挿入したベクターを形質転換(transformation)させる段階、および前記感染した体細胞を直接交差分化を誘導できる培養条件で培養する段階を含めることができる。
【0033】
前記体細胞の培養に使用される培地は、当該分野で体細胞の培養に通常使用される培地をすべて含む。培養に使用される培地は、一般に炭素源、窒素源および微量元素成分を含む。
【0034】
さらに、前記体細胞を骨髄細胞に直接交差分化誘導できる培養条件は、当該分野で体細胞に対して直接交差分化を誘導するために通常用いられる培地および/または通常の培養条件を含むことができる。
【0035】
前記直接交差分化誘導用組成物を体細胞に導入する段階を通じて、直接交差分化因子であるFLI1の異所性発現(Ectopic expression)を誘導することができる。異所性発現とは、ある遺伝子が元々発現する組織や細胞外で発現するもの、または元々発現する時期とは異なる時期に発現することを意味する。一態様の方法によれば、体細胞から骨髄細胞を効果的に作製されることができる。
【0036】
他の態様は、(1)FLI1(Friend leukemia virus integration 1)タンパク質と、 (2)前記タンパク質をコードする核酸分子、および (3)前記核酸分子が導入されたベクターからなる群より選択された1種以上を含む組成物を体細胞に接触または挿入して直接交差分化が誘導された骨髄細胞を提供する。
【0037】
一態様による組成物または方法によって誘導された骨髄細胞は、由来元の体細胞の特異的マーカーを発現することなく、骨髄細胞の特異的マーカーを発現することを特徴とすることができる。
【0038】
また、前記誘導された骨髄細胞は食作用の能力があり、マクロファージなどの免疫反応性細胞への分化能があることを特徴とすることができる。
【0039】
他の態様は、前記組成物を有効成分として含む免疫疾患の予防または治療用医薬組成物を提供する。
【0040】
一態様によって作製された骨髄細胞は免疫系において必須の役割を果たすので、免疫疾患による疾病の予防または治療に適用することができる。
【0041】
「予防」という用語は、免疫疾患の病因を排除または早期発見することによって、その疾患を防止するあらゆる行為を意味する。
【0042】
「治療」という用語は、免疫疾患による症状が改善または有利に変化するあらゆる行為を意味する。
【0043】
予防または治療が可能な前記免疫疾患は、例えば、自己免疫疾患、移植拒絶、関節炎、移植片対宿主病、細菌感染、敗血症および炎症からなる群より選択された1種以上であってもよく、前記免疫疾患は、具体的には、例えば、クローン病、紅斑病、アトピー、関節リウマチ、橋本甲状腺炎、悪性貧血、アジソン病、1型糖尿病、ループス、慢性疲労症候群、線維筋痛症、甲状腺機能低下症、亢進症、強皮症、ベーチェット病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、重症筋無力症、メニエール病(Meniere's syndrome)、ギラン・バレー症候群(Guilian-Barre syndrome)、シェーグレン症候群(Sjogren's syndrome)、白斑症、子宮内膜症、乾癬、白斑症、全身性強皮症、喘息および潰瘍性大腸炎からなる群より選択される1種以上であってもよいが、これに限定されるものではなく、免疫系の機能低下、消失、および/または異常な機能によって引き起こされる全ての疾病および/または病的症状を含むことができる。
【0044】
前記医薬組成物は、誘導された骨髄細胞と共に免疫疾患の予防または治療効果を有する公知の有効成分を1種以上さらに含むことができる。
【0045】
前記医薬組成物は、薬学的に許容可能な添加剤をさらに含むことができ、この場合、薬学的に許容可能な添加剤としては、例えば、デンプン、ゼラチン化デンプン、微結晶セルロース、乳糖、ポビドン、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸水素カルシウム、ラクトース、マンニトール、飴、アラビアガム、アルファ化デンプン、コーンスターチ、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、オパドライ、デンプングリコール酸ナトリウム、カルナウバロウ、合成ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、百糖などを使用することができる。本発明による薬学的に許容可能な添加剤は、前記医薬組成物に対して0.1~90重量部含まれることが好ましいが、これらに限定されない。
【0046】
前記医薬組成物は、実際の臨床投与時に経口または非経口の様々な製剤で投与することができるが、製剤化する場合には通常使用する、例えば、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製することができ、当技術分野において公知の適切な製剤は、文献(Remington's Pharmaceutical Science, 最近, Mack Publishing Company, Easton PA)に開示されているものを使用することが好ましい。
【0047】
前記医薬組成物に含まれ得る担体、賦形剤および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、オリゴ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油などがある。
【0048】
前記医薬組成物の好ましい投与量は、個体の状態および体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者によって適切に選択され得る。好ましい効果のために、一態様による直接交差分化が誘導された骨髄細胞は、体重が70kgの成人患者を基準にした場合、例えば、約1,000~10,000細胞/回、1,000~100,000細胞/回、1,000~10、000、000細胞/回、1,000~10,000,000細胞/回、1,000~100,000,000細胞/回、1,000~1,000,000,000細胞/回、1,000~10,000,000,000細胞/回と、一定時間の間隔を置いて1日1回~1日数回に分割して投与することもでき、一定時間の間隔を置いて複数回投与することができる。
【0049】
前記医薬組成物は個体に様々な経路で投与することができる。投与のすべての方法は予想され得るが、例えば、経口、直腸または静脈、筋肉または皮下注射によって投与され得る。
【0050】
「個体」という用語は、免疫疾患の治療を必要とする対象を意味し、より具体的にはヒトまたは非ヒトである霊長類、マウス(mouse)、ラット(rat)、イヌ、ネコ、ウマおよびウシなどの哺乳類を意味する。
【0051】
前記医薬組成物は、免疫疾患の予防または治療のために単独で、または手術、放射線治療、ホルモン療法、化学療法および生物学的反応調節剤を用いる方法と併用して使うことができる。
【0052】
他の態様は、前記直接交差分化によって誘導された骨髄細胞を有効成分として含む免疫疾患の予防または治療用の細胞治療剤を提供する。
【0053】
「細胞治療剤」という用語は、組織の機能を回復するために自家(autologous)細胞、同種(allogenic)細胞、異種(xenogenic)細胞を用いた治療剤であり、免疫疾患の予防または治療に使用される治療剤を意味する。前記直接交差分化が誘導された骨髄細胞を有効成分として含めると、免疫疾患の予防または治療のための細胞治療剤として活用することができる。
【0054】
前記細胞治療剤は、薬学的に許容可能な担体をさらに含み得る。前記薬学的に許容可能な担体は、例えば、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、HSA(Human serum albumin)及びこれらの成分中1種以上を混合して使用することができ、必要に応じて、抗酸化剤、緩衝液および静菌薬などの他の通常の添加剤を加えることができる。
【0055】
前記細胞治療剤は、例えば、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤および潤滑剤を追加的に添加することができ、例えば、水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用製剤に製剤化することができる。
【0056】
他の態様は、直接交差分化が誘導された骨髄細胞を有効成分として含む免疫疾患の予防、または治療用薬物スクリーニング用組成物を提供する。
【0057】
前記免疫疾患の予防または治療用薬物スクリーニング用組成物を、免疫疾患の治療候補物質の存在および不在下で、一態様による誘導された骨髄細胞の反応性を確認する方法で免疫疾患の治療剤をスクリーニングする上で有用に使用することができる。 例えば、一態様による誘導された骨髄細胞を用いて、免疫疾患の回復または治療に重要な細胞として、候補物質に対する毒性または薬効を評価することができる。
【0058】
前記毒性の評価は、治療候補物質の存在および不在下で、または一態様による誘導された骨髄細胞のIC50など、当業界で通常毒性を判断する方法に従って評価することができる。さらに、前記薬効の評価は、治療候補物質の存在および不在下で、一態様による誘導された骨髄細胞が損傷した免疫細胞の再生、またはマクロファージ(macrophage)および樹状細胞(dendritic cell)などの免疫細胞への分化能を促進するなど、当業界で免疫疾患の治療に効果があることを確認できる方法によって評価できる。
【0059】
他の態様は、免疫疾患を予防または治療するための薬剤の製造に向けた前記組成物の用途を提供する。
【0060】
他の態様は、前記医薬組成物または前記細胞治療剤を治療有効量で個体に投与する段階を含む免疫疾患の予防、または治療方法を提供する。
【0061】
重複する内容は、本明細書の複雑さを考慮して省略し、本明細書で特に定義されていない用語は、本発明が属する技術分野で通常使用される意味を有するものである。
【発明の効果】
【0062】
一態様による体細胞から骨髄細胞(myeloid cell)への直接交差分化誘導用組成物を用いると、単一直接交差分化誘導因子の発現を通じて人工多能性幹細胞の多分化能(Pluripotency)段階を経ずに効率よく体細胞から骨髄細胞への分化を誘導することができ、免疫疾患に対する効果的な予防および治療が可能である。
【0063】
また、他の態様による体細胞から骨髄細胞への直接交差分化を誘導する方法によって作製された骨髄細胞は、マクロファージ(macrophage)や樹状細胞(dendritic cell)などの免疫細胞への分化能を有するため、患者特異的な免疫細胞の作製を通じて免疫拒絶反応を排除することができ、免疫疾患治療分野で広く活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1a】
図1aは、一態様による単球前駆細胞の誘導過程の模式化である。
【
図1b】
図1bは、一態様による単球前駆細胞の誘導過程で得られた細胞の形態である。
【
図2】
図2は、一態様による誘導された 単球前駆細胞(iMac)、マウス線維芽細胞および骨髄由来の単球前駆細胞(BMDM)のCD11bおよびF4/80抗体についてのフローサイトメトリー分析を行った結果である。
【
図3】
図3は、一態様による誘導された単球前駆細胞に対して免疫細胞化学染色を行い、CD45、CX3CR1、CD11b、IBA-1の発現可否を確認した結果である。
【
図4】
図4は、一態様による誘導された単球前駆細胞の食作用(phagocytosis)能力を確認した結果である。
【
図5a】
図5aは、一態様による誘導された単球前駆細胞を活性化させた後、細胞の形の変形を確認した結果である。
【
図5b】
図5bは、一態様による誘導された単球前駆細胞を活性化させた後、免疫反応に関連する遺伝子発現量の変化を確認した結果である。
【
図6a】
図6aは、炎症性腸疾患の動物モデルにおける一態様による誘導された単球前駆細胞、または活性化マクロファージを移植した後、生存率および体重変化の結果である。
【
図6b】
図6bは、炎症性腸疾患の動物モデルにおける一態様による誘導された単球前駆細胞、または活性化マクロファージを移植した後、疾患活動性の結果である。
【
図6c】
図6cは、炎症性腸疾患の動物モデルにおける一態様による誘導された単球前駆細胞、または活性化マクロファージを移植した後、大腸の長さの結果である。
【
図6d】
図6dは、炎症性腸疾患の動物モデルにおける一態様による誘導された単球前駆細胞、または活性化マクロファージを移植した後、組織学的スコアの結果である。
【
図6e】
図6eは、炎症性腸疾患の動物モデルにおける一態様による誘導された単球前駆細胞、または活性化マクロファージを移植した後、腸組織のH&E染色の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下、本発明の理解を助けるために実験例、および実施例を挙げて詳細に説明する。ただし、下記の実験例および実施例は、本発明の内容を例示するものであり、下記の実施例および実験例に範囲が限定されるものではない。本発明の実施例および実験例は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0066】
実施例1 クローニングおよびレンチウイルスプラスミドのパッケージング
【0067】
転写因子(FLI1)をHepG2のcDNAを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅させた。その後、増幅されたFLI1をレンチウイルスベクターに導入し、塩基配列分析でこれを確認した。レンチウイルスのパッケージングをXtremeGENE 9 DNAトランスフェクション試薬 (Roche, 06365787001)を用いて、レンチウイルストランスファープラスミド(lentiviral transfer plasmid)、パッケージングプラスミド(packaging plasmid, psPAX2)、およびエンベローププラスミド(envelope plasmid, VSV-G)をそれぞれ3:2:1の比で添加して行った。DMEM(Gibco、10313-021)を添加して総容量を200μlにした混合物を50%培養密度(confluency)の293T細胞(Thermo Fisher Scientific)に処理して48時間形質転換した。その後、細胞培養培地を超遠心分離機で1時間30分間80,000gで遠心分離し、その後遠心分離した上清液で得られたレンチウイルスペレットを1mlのDMEMに希釈した。
【0068】
実施例2 RNA抽出とcDNA合成
【0069】
細胞溶解物のtotal RNAをRiboEX(Geneall、301-001)で抽出した。RNA抽出は製造業者のプロトコルに従って行った。合計20μlの反応混合物に500ngのRNAおよびオリゴdTプライマーを添加し、M-MuLV逆転写酵素(NEB、M0253L)でcDNAを合成した。
【0070】
実施例3 免疫細胞化学染色
【0071】
細胞を室温で10分間、4%のパラホルムアルデヒド(Tech&Innovation、BPP-9004)で固定した。固定した細胞をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS, Corning, 21-031-CV)で3回洗浄した。その後、室温で10分間、0.1%のトリトンX-100(Sigma、T9284)を含むDBPSを処理して細胞を透過性を持つようにした。DPBSで3回洗浄した後、4%のFBSを含むDPBSで室温で1時間反応させて非特異的結合を遮断した。細胞を室温で一次抗体と共に1時間インキュベートした後、0.05%のTween 20(Sigma、P7949)を含むDPBSで3回洗浄した。その後、二次蛍光抗体を処理し、暗所で1時間インキュベートした。二重染色が必要な場合、上記の手順に従って一次抗体を処理する前に30分間追加の遮断(blocking)段階を行った。
【0072】
実施例4 定量リアルタイムPCRによる免疫反応および炎症反応の確認
【0073】
DNAを含まない全RNAをRNeasy mini kit(Qiagen)を用いて抽出した。反応当たり合計500ngのRNAを用いてSuperscriptIII逆転写酵素(Invitrogen)でcDNAを合成した。合成されたcDNAは、総容量20μlでライトサイクラー480用 SYBR GreenIマスターミックス(Roche)を用いて鋳型として使用した。免疫反応関連遺伝子について実験を3回繰り返し行い、ハウスキーピング遺伝子(housekeeping gene)GAPDHで正常化した。遺伝子発現はCt値計算方法で測定し、全ての実験は製造業者のプロトコルに従って行った。
【0074】
実施例5 炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease, IBD)動物モデルの作製と細胞移植
【0075】
大腸炎動物モデルは、4週齢のラットにデキストラン硫酸ナトリウム塩(DSS)を経口投与して作製した。5日間DSSを摂取させて急性大腸炎を誘発した後、誘導された単球前駆細胞または活性化されたM1/M2マクロファージをラットの大腸に移植した。
【0076】
実験例1 直接交差分化因子による誘導単球前駆細胞(induced monocyte progenitor cells)の作製
【0077】
体細胞から単球前駆細胞を直接交差分化するために、マウス線維芽細胞を1.5×10
4細胞で培養培地に分注し、24時間後に実施例1で製造したレンチウイルス発現系を介して転写因子であるFLI1を線維芽細胞に形質転換した。24時間後、培地組成物を単球前駆細胞誘導培地と交替して、単球前駆細胞への分化を誘導した。単球前駆細胞の群集を機械的に分離し、誘導された単球前駆細胞を選別(picking)および継代培養(subculture)した。前記実験の過程を図式化して
図1Aに示し、前記誘導された単球前駆細胞を培養した細胞の組織学的形態を
図1Bに示した。
【0078】
図1Bに示すように、レンチウイルスで形質転換後、36日程度たった時点で細胞集合体が形成され、これを分離および培養した後に典型的な単球前駆細胞の形態が現れることを確認した。このような結果を通じて、FLI1を体細胞である線維芽細胞に処理して前記因子の異所性発現(ectopic expression)を誘導すれば、効果的に単球前駆細胞を作製できることを確認した。特に、上記の手順によって誘導された単球前駆細胞は、実際の単球前駆細胞に現れる組織学的形態が現れることを確認した。
【0079】
実験例2 誘導された単球前駆細胞の特徴確認
【0080】
実験例2.1. フローサイトメトリー
【0081】
実験例1で誘導された単球前駆細胞(iMac)が組織学的形態だけでなく、実際の単球前駆細胞の特徴を示すかどうかを確認するために、蛍光活性化細胞選別(fluorescence activated cell sorter:FACS)分析を行った。具体的には、実験例1で得た誘導された単球前駆細胞が単球前駆細胞特異的マーカーであるCD11b及びF4/80を発現するか否かを確認するために、線維芽細胞および骨髄由来の単球前駆細胞 それぞれについてCD11bおよびF4/80抗体を用いたFACS分析を行い、その結果を
図2に示した。
【0082】
図2に示すように、誘導された単球前駆細胞は線維芽細胞と発現様相が明確に異なっており、骨髄由来の単球前駆細胞と同様に線維芽細胞では発現しなかった単球前駆細胞マーカーであるCD11bおよびF4/80が強く現れることを確認した。誘導された単球前駆細胞は、CD11bおよびF4/80マーカーの発現レベルが、骨髄由来の単球前駆細胞の発現レベルである97.2と同様の程度で85.4を示すことを確認した。
【0083】
これにより、実験例1に記載の方法は効率的に単球前駆細胞を誘導できることが分かった。
【0084】
実験例2.2. 免疫細胞化学染色
【0085】
実験例1で誘導された 単球前駆細胞が単球前駆細胞特異的マーカーであるCD45、CX3CR1、CD11b、IBA-1を発現するか否かを確認するために、実施例3に記載の方法で免疫細胞化学染色を行い、その結果を
図3に示した。
【0086】
図3に示すように、誘導された単球前駆細胞がCD45、CX3CR1、CD11b、IBA-1を全て発現することを確認した。
【0087】
これにより、実験例1に記載の方法により体細胞から直接交差分化が誘導された単球前駆細胞は単球前駆細胞の形態だけでなく、実際の特性も有することが分かった。
【0088】
実験例3 誘導された単球前駆細胞の食作用(phagocytosis)能力の確認
【0089】
実験例1で誘導された単球前駆細胞が免疫細胞の代表的な特性である食作用の能力を有しているかどうかを確認するために、細胞培養液に緑色蛍光標識されたラテックスビーズ(latex bead)を処理し、捕食作用を通じてビーズが細胞質に流入するかどうかを蛍光顕微鏡で確認して、その結果を
図4に示した。
【0090】
図4に示すように、誘導された単球前駆細胞の細胞質内に緑色のビーズが流入したことにより、誘導された単球前駆細胞が外部物質を捕食する能力があることを確認した。
【0091】
実験例4 誘導された単球前駆細胞の免疫反応(immune response)の確認
【0092】
単球前駆細胞は免疫細胞であり、外部物質や病原菌によって炎症反応を起こすM1マクロファージ、または抗炎症作用をするM2マクロファージとして活性化される。実験例1で誘導された単球前駆細胞の免疫反応を確認するために、免疫反応誘発物質であるLPS、IL-4、TGFb1、IFN-ガンマをそれぞれ、または組み合わせで処理して誘導された単球前駆細胞を活性化させた後、細胞形態を観察し、実施例4に記載の方法で免疫反応関連遺伝子の発現程度をリアルタイムRT-PCR分析により確認して、その結果を
図5に示した。
【0093】
図5に示すように、活性化された単球前駆細胞は、食作用細胞の特徴である平滑なアメーバ様、または分枝状の細胞形態を示し、炎症作用または抗炎症作用に関与する遺伝子の発現が増加することを確認した。
【0094】
実験例5 誘導された単球前駆細胞のin vivo(生体内)での治療効果を確認する
【0095】
実験例1で誘導された単球前駆細胞のInvivo機能的な特性を確認するために、実施例5で作製した炎症性腸疾患の動物モデルラットに誘導された単球前駆細胞移植を行い、ラットの生存率と体重変化を分析してその結果を
図6に示した。
【0096】
図6に示すように、誘導された単球前駆細胞を移植した群の生存率が高く、体重減少が少ないことを確認した。さらに、疾患活動性指標および大腸の正常な長さの維持も誘導された単球前駆細胞を移植した群で改善された。