(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】気流発生システム及び気流発生方法
(51)【国際特許分類】
A63J 5/02 20060101AFI20240826BHJP
A63H 33/28 20060101ALI20240826BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20240826BHJP
G03B 21/608 20140101ALI20240826BHJP
【FI】
A63J5/02
A63H33/28 B
G03B21/14 Z
G03B21/608
(21)【出願番号】P 2021024052
(22)【出願日】2021-02-18
(62)【分割の表示】P 2020075059の分割
【原出願日】2020-04-20
【審査請求日】2022-10-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 <ウェブサイトにて公開>令和1年11月12日:https://www.teamlab.art/、https://www.teamlab.art/jp/w/clouds/令和1年11月13日:https://www.youtube.com/、https://www.youtube.com/watch?v=y0BLyW9N6IM&feature=youtu.be、令和1年11月15日:https://prtimes.jp/、https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000667.000007339.html、https://www.instagram.com/、https://www.instagram.com/p/B44Uz7LFQJx/、https://twitter.com/、https://twitter.com/teamLab_net/status/1195258727214899201
(73)【特許権者】
【識別番号】501041894
【氏名又は名称】チームラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】猪子 寿之
【審査官】柳 重幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-126769(JP,A)
【文献】特開2000-037563(JP,A)
【文献】西本 昌司,「竜巻ラボ」の設計製作および実演企画,名古屋市科学館紀要,第39号,名古屋市科学館,[online],2013年03月31日,P.59-62,[2023年10月4日検索]<http://www.ncsm.city.nagoya.jp/visit/visitors_guide/dl/kiyou_2013.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63J 5/02
A63H 33/28
G03B 21/14
G03B 21/608
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
演出空間内に気流を発生させて前記演出空
間内で泡を浮遊させる気流発生システムであって、
複数の送風機を含み、前記複数の送風機の排気口によって囲われた演出空間内に平面視において時計周り又は反時計回りの気流を発生させるように前記複数の送風機のそれぞれが送風を行うように構成され、前記演出空間の上方に前記送風機によって送風された空気を吸引する吸引口を有するトルネードファンと、
前記泡の状態を検知するためのセンサと、
前記センサの検知情報に基づいて前記トルネードファンの風量又は風速を制御する制御部と、
前記演出空間の上方に排気口が設けられ、前記吸引口に向かって送風するシーリングファンを備える
気流発生システム。
【請求項2】
演出空間内に気流を発生させて前記演出空
間内で泡を浮遊させる気流発生システムであって、
複数の送風機を含み、前記複数の送風機の排気口によって囲われた演出空間内に平面視において時計周り又は反時計回りの気流を発生させるように前記複数の送風機のそれぞれが送風を行うように構成されたトルネードファンと、
前記泡の状態を検知するためのセンサと、
前記センサの検知情報に基づいて前記トルネードファンの風量又は風速を制御する制御部と、
前記演出空間の床面付近に排気口が設けられ、前記床面に沿う方向に送風するフロアファンを備える
気流発生システム。
【請求項3】
前記複数の送風機の吸気口がそれぞれ前記吸引口の周囲に設けられている
請求項
1に記載の気流発生システム。
【請求項4】
前記演出空間内にミストを供給するミスト噴霧装置をさらに備える
請求項1又は請求項2に記載の気流発生システム。
【請求項5】
演出空間内に気流を発生させて前記演出空
間内で泡を浮遊させる気流発生方法であって、
複数の送風機の排気口によって囲われた前記演出空間内に平面視において時計周り又は反時計回りの気流を発生させるように、前記複数の送風機のそれぞれが一定方向に送風を行うことと、
前記演出空間の上方に設けられた吸引口によって前記送風機によって送風された空気を吸引することと、
前記泡の状態をセンサにより検知し、前記センサの検知情報に基づいて前記
送風機の風量又は風速を制御することと、
前記演出空間の上方に排気口が設けられたシーリングファンにより前記吸引口に向かって送風することを含む
気流発生方法。
【請求項6】
演出空間内に気流を発生させて前記演出空
間内で泡を浮遊させる気流発生方法であって、
複数の送風機の排気口によって囲われた前記演出空間内に平面視において時計周り又は反時計回りの気流を発生させるように、前記複数の送風機のそれぞれが一定方向に送風を行うことと、
前記泡の状態をセンサにより検知し、前記センサの検知情報に基づいて前記
送風機の風量又は風速を制御することと、
前記演出空間の床面付近に排気口が設けられたフロアファンにより前記床面に沿う方向に送風することを含む
気流発生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルネードファンや、それを用いた気流発生システムに関する。本発明は、さらに、トルネードファンを利用した気流発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、泡を利用して所定の演出を行う装置として、例えば特許文献1に記載のシャボン泡照明装置や特許文献2に記載の泡プロジェクションマッピングシステムが知られている。
【0003】
特許文献1のシャボン泡照明装置は、シャボン液を蓄えた容器と、この容器内のシャボン液に気体を送り込んでシャボン泡を発生させるためのシャボン泡発生手段と、この容器内に発生させたシャボン泡に光照射する光源とを備える。このように、特許文献1では、光源を点灯させてシャボン泡に光照射することにより、光がシャボン泡により拡散するので柔らかい光を放ち、視覚的に美しくディスプレイとしての興趣をかもしだすことができるとされている。
【0004】
特許文献2の泡プロジェクションマッピングシステムは、泡体が存在する位置及び範囲の少なくとも一つを検出する泡検出装置と、検出された泡体に対して画像を投影する画像投影装置を備える。このシステムでは、例えば泡体を使って手指を洗浄することを促すメッセージ等を投影画像として投影し、子供等に対して手洗いの励行を促すことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-287709号公報
【文献】特開2018-200393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1及び特許文献2に記載の装置は、いずれも泡が容器や人の手指に接触している状態で光や画像を投影することを想定したものであり、質量が軽く浮遊可能であるという泡の特性を十分に活かしたものではない。そこで、本発明は、泡の特性を効果的に活かした斬新な演出システムや演出方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面は、泡演出システムに関する。本発明に係る泡演出システムは、トルネードファンとバブルポンプを備える。トルネードファンは、複数の送風機を含んで構築されたシステムである。トルネードファンは、複数の送風機の排気口によって囲われた演出空間内に平面視において時計周り又は反時計回りの渦状の気流を発生させるように、複数の送風機のそれぞれが送風をおこなうように構成されている。トルネードファンに含まれる送風機の数は2機以上であればよく、3機以上又は4機以上であることが好ましい。例えば送風機の数が2機である場合、互いの排気口から排出された空気がすれ違うように各排気口を配置することで演出空間内に渦状の気流を発生させることができる。また、例えば送風機の数が4機である場合、演出空間の四隅に送風機の排気口を配置し、時計周り又は反時計回りに各排気口から空気を排出することで演出空間内に渦状の気流を発生させることができる。バブルポンプは、上記のようにして渦状の気流が発生した演出空間内に泡を供給する。これにより、渦状の気流によって演出空間の中央付近に泡の集合体が形成されるようになる。また、泡の集合体を浮遊させることも可能となる。
【0008】
本発明に係る泡演出システムは、演出空間の上方に、トルネードファンの各送風機によって送風された空気を吸引する一又は複数の吸引口をさらに備えることが好ましい。このように、演出空間の上方に吸引口を設けることで、演出空間内に竜巻状の上昇気流を発生させることができる。これにより、泡の集合体の浮遊状態を維持しやすくなる。
【0009】
本発明に係る泡演出システムにおいて、複数の送風機の吸気口は、それぞれ吸引口の周囲に設けられていることが好ましい。このように、送風機の吸気口を演出空間上方の吸引口の周囲に設けることで、送風機の排気口から排出された空気のほぼ全量を当該送風機の吸気口から吸気することができる。このように演出空間内に供給される風量と演出空間から排出される風量をほぼ等しくすることで、泡の集合体の浮遊状態を維持しつつ、泡を演出空間内に留まらせやすくなる。
【0010】
本発明に係る泡演出システムは、シーリングファンをさらに備えることが好ましい。シーリングファンは、演出空間の上方に排気口が設けられており、その排気口から吸引口に向かって送風する。このように、トルネードファンとは別にシーリングファンを設けて、吸引口に向かって送風を行うことで、吸引口付近において竜巻状の上昇気流の安定性を破壊することができる。これにより、吸引口内に泡が吸い込まれることを抑制できる。
【0011】
本発明に係る泡演出システムは、フロアファンをさらに備えることが好ましい。フロアファンは、演出空間の床面付近に排気口が設けられており、この排気口から床面に沿う方向に送風する。例えば、フロアファンの排気口は、床面から高さ1m以内に設けられていることが好ましい。このように、トルネードファンとは別にフロアファンを設けておくことで、床面に沿って流れる風によって、泡の集合体が床面に接地することを抑制できる。これにより、泡の集合体の浮遊状態を維持しやすくなる。
【0012】
本発明に係る演出システムは、演出空間内にミストを供給するミスト噴霧装置をさらに備えることが好ましい。このように、演出空間内にミストを供給して演出空間内の湿度を高めることで、泡の持続力を高めることができる。
【0013】
本発明に係る演出システムは、センサと泡制御部をさらに備えることが好ましい。センサは、演出空間の状態及び泡の状態の両方又はいずれか一方を検知する。センサの例は、光センサ(例えばTOFセンサ)及び温湿度センサである。泡制御部は、センサの検知情報に基づいてトルネードファンの風量又は風速を制御する。このように、センサによる検知情報を利用してトルネードファンの風量又は風速をフィードバック制御することで、泡の集合体の浮遊状態を維持しやすくなる。なお、トルネードファンの制御では、泡の状態に対して特定の条件や閾値を設定してトルネードファンの風量又は風速を制御することとしてもよいし、ディープラーニングや強化学習といった公知の機械学習アルゴリズムを利用することもできる。
【0014】
本発明に係る演出システムは、泡(又はその集合体)に映像光を投影するプロジェクタをさらに備えることが好ましい。このように、演出空間内の中央付近において浮遊している泡の集合体に対してリアルタイムに映像光を投影することで、斬新な映像効果を視聴者に提供することができる。
【0015】
本発明の第2の側面は、泡演出方法である。本発明に係る泡演出方法は、複数の送風機の排気口によって囲われた演出空間内に平面視において時計周り又は反時計回りの渦状の気流を発生させるように複数の送風機のそれぞれが一定方向に送風をおこなう工程と、この演出空間内に泡を供給する工程とを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、質量が軽く浮遊可能であるという泡の特性を十分に活かした斬新な演出システムや演出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、泡演出システムを構成する各装置の配置の例を模式的に表した斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したシーリングレベルで、泡演出システムを構成する各装置の配置の例と各ファンからの排気方向の例を模式的に表した平面図である。
【
図3】
図3は、トルネードファンの構成の一例を模式的に表した平面図である。
【
図4】
図4は、泡演出システムを構成する各装置の例を示したブロック図である。
【
図5】
図5は、泡の集合体(泡雲)を実際に発生させた様子を示した写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0019】
図1は、泡演出システム100の概要を示した斜視図であり、主に当該システムが設置された部屋の天井付近(シーリングレベル)に配置された各装置の配置を示している。なお、シーリングレベルに位置する各装置は必ずしも床面からの高さがすべて揃っている必要はなく、高さ位置が上下にずれていても問題はない。また、
図2は、泡演出システム100の概要を示した平面図であり、主に各装置の配置と各ファンからの排気方向を示している。
図3は、泡演出システム100内のトルネードファン11の構成例を示している。
図3に示したトルネードファン11は、基本的には
図1及び
図2に示したシーリングレベルよりも上方に配置されるものであるため、
図1及び
図2での図示は省略されている。
図4に示したブロック図では、泡演出システム100に含まれる各装置を一覧的に示している。
図5では、泡演出システム100によって生成された泡の集合体が演出空間内に浮遊している実際の状態を示している。
【0020】
本発明に係る泡演出システム100は、基本的に屋内の演出空間内に泡の集合体を浮遊させることを目的としたものである。泡演出システム100は、トルネードファン11等の各種ファンによって演出空間内の気流を制御する。この演出空間内には泡演出システム100が備える各種ファンによって供給された空気以外の空気が流入しないように、不図示の壁や仕切り、あるいはエアシャワー等によって空間内の気流が制限されていることが好ましい。また、演出空間は、人が立ち入ることが可能な程度の容積(横幅、奥行き、及び高さ)を有する。例えば、演出空間の横幅、奥行き、及び高さはそれぞれ少なくとも2m~5m以上とすることが好ましく、それ以上の容積を確保することも可能である。
【0021】
図1に示されるように、本実施形態では、演出空間を平面四角形状(特に平面正方形状)とすることが想定されており、この演出空間の四隅には排気用の柱であるエアピラー1が立設されている。4本のエアピラー1には、それぞれトルネードファン11に含まれる送風機110の排気口114が設けられており、送風機110によって送り出された空気がこのエアピラー1に設けられた排気口114から排出されるようになっている。
図1から
図3に示されるように、4つのエアピラー1にそれぞれ設けられた4つの排気口114(a)~(d)は、平面視において演出空間内に時計周り又は時計周りの渦状の気流が発生するように、各排気口114(a)~(d)による空気の排出方向が設定されている。具体的に説明すると、
図2に示した例では、第1の排気口114(a)は第2の排気口114(b)に向かう方向に空気を排出し、第2の排気口114(b)は第3の排気口114(c)に向かう方向に空気を排出し、第3の排気口114(c)は第4の排気口114(d)に向かう方向に空気を排出し、第4の排気口114(d)は第1の排気口114(a)に向かう方向に空気を排出する。なお、
図2に示した方向とは反対方向に、各排気口114(a)~(d)の排出方向を設定することも当然可能である。このように、各排気口114(a)~(d)の排気方向を設定することで、演出空間内に渦状の気流が発生する。
【0022】
また、演出空間の中央付近の上方には、各排気口114から排出された空気を吸引する吸引口2が設けられている。吸引口2は、演出空間の天井付近に設けられており、例えば床面から吸引口2までの高さは2~10mとすればよい。また、
図1に示されるように、本実施形態において、各排気口114は、エアピラー1の中腹に設けられている。例えば、床面から各排気口114までの高さは0.5~1m以上であって、上記した吸引口2よりも1~2m以上低い位置に設定される。これにより、各排気口114から排出された空気が吸引口2によって吸引されるとき、各排気口114によって囲われた演出空間内に竜巻状の上昇気流を発生させることができる。
【0023】
また、
図3では、トルネードファン11の詳細な構造を示している。トルネードファン11の構成要素は、前述した排気口114を除き、基本的には
図1及び
図2に示したシーリングレベルよりも上方に配置される。
図3に示されるように、トルネードファン11は、複数の送風機110を含んで構成されている。本実施形態では、前述のとおり演出空間の四隅に排気用の柱であるエアピラー1を設けているため、送風機110も4機用意されている。各送風機110には、フレキシブルな吸気用ダクト111と排気用ダクト112が接続されており、吸気用ダクト111には吸気口113が設けられ、排気用ダクト112には排気口114が設けられている。すなわち、吸気口113から吸引された空気が吸気用ダクト111を経由して送風機110に供給される。送風機110は、モータ等の回転により、吸気口113から吸引した空気を、排気用ダクト112を経由して排気口114から排出する。本実施形態では、第1から第4の送風機110(a)~(d)は、それぞれ前述した第1から第4の排気口114(a)~(d)から空気を排出するように構成されている。
【0024】
また、
図3に示したように、各送風機110(a)~(d)に接続された吸気用ダクト111は、それぞれの吸気口113が、演出空間中央の上方に位置する吸引口2の周囲に配置されている。このため、各送風機110の吸気によって、演出空間内の空気が吸引口2へと導かれることとなる。すなわち、各送風機110(a)~(d)は、それぞれ、吸気口113によって演出空間中央の上方の吸引口2から空気を吸気するとともに、ここで吸気した空気を排気口114から演出空間の四隅へと排気するように構成されている。このため、各送風機110(a)~(d)が演出空間から吸引する空気量と、各送風機110(a)~(d)が演出空間内へ排気する空気量は、ほぼ等しくなる。このようにして、送風機110の吸気機能及び排気機能によって演出空間の空気を循環させる。その際に、演出空間内に竜巻状の上昇気流を発生させることができる。
【0025】
図1及び
図2に示されるように、演出空間を含む部屋のシーリングレベルには、バブルポンプ12が設置されている。バブルポンプ12は、液貯留部13(
図4参照)に貯留されているシャボン液を利用して大量の泡を生成する装置である。なお、液貯留部13は室外に配置しておけばよい。バブルポンプ12は、例えば、液貯留部13から供されたシャボン液に空気を混合し、その気液混合体に対して圧力を掛けながらメッシュ等の細かい網目を持つフィルターを通して押し出すことで泡を生成する。また、バブルポンプ12は、シャボン液をファンなどで撹拌することによって泡を生成するものであってもよいし、その他公知の構成を採用することもできる。また、バブルポンプ12の内部又はその付近には、バブルポンプ12によって生成された大量の泡を、送風機110の排気口114によって囲われた演出空間へ送り出すためのバブルファン14が設けられている。バブルポンプ12によって生成された泡は、バブルファン14から送風された風に乗って演出空間内に到達する。そして、この泡は、演出空間内の気流に乗って浮遊することとなる。また、バブルポンプ12をシーリングレベルに配置しておくことで、バブルポンプ12によって生成された泡は、最初に演出空間の上方から降り落ちることとなる。このように演出空間の上方で泡を生成することで、この空間内で泡を浮遊させやすくなる。
【0026】
演出空間を含む部屋の床面付近には、フロアファン15が設置されている。フロアファン15は、演出空間の床面付近に排気口が設けられており、この排気口から演出空間に向かって床面に沿う方向に送風を行う。例えば、フロアファン15の排気口は、演出空間を含む部屋の壁面に配置されており、その排気口から床面と平行に送風が行われる。フロアファン15の排気口は、例えば床面から1m以内又は2m以内の高さに設置されていることが好ましく、高さ0.7m以内又は0.5m以内であることが特に好ましい。また、
図1及び
図2に示されるように、フロアファン15の排気口は、隣接する2つのエアピラー1の間に亘って横長に延びていることが好ましい。例えば、隣接する2つのエアピラー1の間の間隔を100%とした場合に、フロアファン15の排気口の長さは80%以上又は100%以上とすることが好ましい。このように、フロアファン15によって床面と平行な気流を生成することで、演出空間に浮かぶ泡の集合体が床面に付着しにくくなる。これにより、泡の集合体を床面から引き剥がして、その浮遊状態を維持しやすくなる。
【0027】
演出空間を含む部屋の天井付近には、さらにシーリングファン16が設置されている。シーリングファン16は、演出空間の上方に排気口が配置されており、吸引口2に向かって送風を行う。例えば、シーリングファン16の排気口は、演出空間を含む部屋の壁面に配置されており、この排気口から部屋の天井面に沿って送風が行われる。このように、シーリングファン16によって吸引口2に向かう天井面と平行な気流を形成することで、トルネードファン11の送風効果によって演出空間内に形成された竜巻状の気流を吸引口2付近において破壊することができる。これにより、この竜巻状の気流に乗って演出空間内の泡が吸引口2に吸い込まれることを防止できる。
【0028】
演出空間を含む部屋には、さらにミスト噴霧装置17が設けられている。ミスト噴霧装置17は、ミストを噴霧することで演出空間内の湿度を高める。これにより、演出空間内で浮遊する泡の持続力を高めることができる。また、後述のとおり、本システムでは演出空間内を各種の照明装置で照らす演出を行うが、演出空間内にミストを供給することで幻想的な照明効果を得ることができる。
【0029】
泡演出システム100は、演出空間の状態や泡の集合体の状態を検出するためのセンサ21,22をさらに備える。本実施形態においては、光センサ21と温湿度センサ22が用いられている。また、
図4に示されるように、各センサ21,22により得られた検出情報は、公知のPC等で構成されたセンサ制御部20に入力される。光センサ21の例は、TOF(Time Of Flight)センサである。具体的には、光センサ21は、発光素子から赤外線等のレーザ光をパルス投光し、このレーザ光が対象物(泡の集合体)を反射して受光素子に戻ってくるまでの時間を計測する。センサ制御部20は、光センサ21で測定した時間に基づいて、センサから対象物までの距離や演出空間内における対象物の座標値を算出することができる。このように、光センサ21からレーザ光を泡の集合体全体に投光することで、演出空間内における泡の集合体の輪郭の座標情報を得ることができる。また、これにより泡の浮遊状態や泡の集合体の容積を推測することも可能である。また、温湿度センサ22は、演出区空間を含む室内の温度及び/又は湿度を計測する。具体的には、室内の温度が高いほど泡の持続力が高くなるため、泡の持続力を推測するためには室内の湿度を計測することが有効である。
【0030】
各センサ21,22の検出情報は泡の制御に利用される。
図4に示されるように、センサ制御部20は、各センサ21,22の検出情報や、この検出情報に基づいて所定の演算処理を行うことによって得られた情報を、メインバスを介して泡制御部10に伝達する。泡制御部10は、泡制御用のプログラムを内蔵したPCであり、トルネードファン11、バブルポンプ12、バブルファン14、フロアファン15、シーリングファン16、及びミスト噴霧装置17に接続され、これら各装置の制御を行う。具体的には、泡制御部10は、各種ファン11,14~16については風量又は風速(以下風量等という)の制御を行い、バブルポンプ12については泡の生成量の制御を行い、ミスト噴霧装置17についてはミストの噴霧量の制御を行う。泡制御部10は、光センサ21や温湿度センサ22の検出情報等に基づいて、泡の集合体が演出空間内で浮遊し続けるように、これら各装置11~17の制御を行う。
【0031】
泡制御部10による制御方法の一例としては、泡の集合体の座標値や、泡の集合体の容積値、あるいは演出空間内の湿度値に連動して、各装置11~17が動作する条件を予め泡制御部10にプログラミングしておくことが挙げられる。例えば、泡の集合体の座標値位置が床面に近づいてきたときには、トルネードファン11及び/又はフロアファン15の風量等を高くして、泡の集合体を上方に持ち上げる。また、泡の集合体の座標位置が吸引口2に近づいてきたときには、トルネードファン11の風量等を低くしたり、あるいはシーリングファン16の風量等を高くすることによって、泡が吸引口2に引き込まれないようにすればよい。また、泡の集合体の容積が小さくなってきた場合には、バブルファン14による泡の生成量を増やしたり、各ファン11,14~16の風量等を低くして風によって泡が破壊されにくくしたり、あるいはミスト噴霧装置17によるミストの噴霧量を増やして泡の持続力を高めればよい。泡の集合体の容積が過剰に大きくなってきた場合には、上記と反対の制御を行う。また、演出空間内の湿度が低下している場合には泡の持続力低下が懸念されるため、ミスト噴霧装置17によるミストの噴霧量を増やせばよい。
【0032】
また、上記した泡制御部10による制御処理は、人工ニューラルネットワーク(ディープラーニング等)や強化学習などの機械学習を利用して実現することもできる。例えば、各種装置11~17の動作とその動作による泡の挙動のデータセットを教師データとしてディープラーニングを行い、その結果として得られた学習済みモデルを泡制御部10の制御処理に用いることができる。これにより、当該学習済みモデルを参照すれば、泡の挙動に応じて、泡の容積や浮遊状態が最適化されるように各種装置11~17を効率的に動作させることができる。また、強化学習を実施する場合には、泡の集合体の容積が適切な範囲にあり且つその浮遊状態が維持されている環境に対して報酬を与えたり、あるいは泡の集合体の容積が適切な範囲外となったり床面や天井に付着している環境に対して罰を与えて、報酬が最大化あるいは罰が最小化するように各種装置11~17の制御を行うようにすればよい。このように、機械学習を利用することで、演出空間内の環境によって複雑に変化する泡の集合体の挙動を効率的に最適化することができる。
【0033】
演出システム100は、演出空間あるいは泡の積層体を照明するための各種ライト31~33をさらに備える。シーリングライト31は、演出空間を含む部屋の天井付近(シーリングレベル)に設けられる。ムービングライト32は、
図1に示した例において、演出空間の中央の上方に設けられており、吸引口2の上方に位置し、この吸引口2を通じて泡の積層体に対して照明光を照射する。フロアライト33は、演出空間を含む部屋の床面に設けられる。これらのライト31~33は、公知のPC等で構成されたライト制御部30に接続されている。ライト制御部30は、各ライト31~33の照明光の光量(明るさ)や、光の色、明滅を制御する。特に、ライト制御部30は、ムービングライト32については光の照射方向を制御できる。具体的には、ライト制御部30は、メインバスを介してセンサ制御部20から泡の集合体の輪郭の座標情報を受け取り、この座標情報に基づいてムービングライト32の照射方向を制御するとよい。例えば、泡の集合体に光が照射されるようにムービングライト32の照射方向を制御することができる。これにより、リアルタイムに形状や位置が変化する泡の集合体であっても適切に照明することが可能である。
【0034】
演出システム100は、演出空間を含む部屋内にスピーカ41をさらに備える。特に、
図1に示した例では、スピーカ41は、部屋の天井付近(シーリングレベル)に設置されている。また、このスピーカ41は、公知のPC等で構成された音響制御部40に接続されている。音響制御部40は、スピーカ41から放音するBGMや効果音などの音響効果の制御を行う。また、音響制御部40は、メインバスを介してセンサ制御部20から各センサ21,22の検出情報等を受け取り、この検出情報に基づいてスピーカ41から出力する音響を制御してもよい。例えば、演出空間内における泡の集合体の位置や容積に応じて、音響を変化させることも可能である。
【0035】
演出システム100は、泡の集合体に映像光を投影するプロジェクタ51をさらに備える。
図1及び
図2に示した実施形態において、プロジェクタ51は、演出空間の中心を挟んで対称となる位置に2台設置されている。このため、演出空間内の中心付近に集まる泡の集合体に対して、2台のプロジェクタ51により左右両側から映像光を投影することができる。これにより、泡の集合体のほぼ全体に対して映像光の投影が可能となる。なお、プロジェクタ51の台数は、例えば演出空間の大きさや想定される泡の集合体の大きさを考慮して適宜増減させることができる。また、
図1に示されるように、各プロジェクタ51は、演出空間を含む部屋の天井付近に設置しておけばよい。各プロジェクタ51は、公知のPC等によって構成された映像制御部50に接続されており、この映像制御部50の制御に従って泡の集合体に映像光を投影する。
【0036】
映像制御部50は、各プロジェクタ51を制御して、泡の集合体に対していわゆるプロジェクションマッピングを行う。映像制御部50は、泡の集合体に投影するCG映像等を記憶しており、この映像を各プロジェクタ51から投影する。また、映像制御部50は、メインバスを介してセンサ制御部20から泡の集合体の輪郭の座標情報を取得する。この泡の集合体の座標情報に基づいて、映像制御部50は、リアルタイムに各プロジェクタ51から投影する映像を変化させたり、映像光の投影方向を制御したりする。例えば、映像制御部50は、泡の集合体の大きさや形状、あるいは浮遊位置に応じて、当該集合体に投影する映像の内容や光の色を変化させてもよい。これにより、演出空間に浮遊する泡の集合体を投影面として、効果的なプロジェクションマッピングを行うことができる。
【0037】
図1及び
図2では、模式的に1つの演出空間とそこに泡の集合体を形成するための1つのシステム100を示している。ただし、同じ室内に複数のシステム100を並べて配置することで、一つの室内に複数の演出空間を形成することとしてもよい。
【0038】
図5は、室内に実際に泡の集合体を浮遊させ、この集合体に照明を当てた様子を示している。
図5に示したように、本発明に係る泡演出システム100によれば、演出空間内に実際に泡の集合体が浮遊させることができるため、この中に人が立ち入ることも可能である。このように、泡は、質量が軽いため浮遊しやすく、また雲のような集合体を形成するという特性を有している。本発明に係るシステム100は、演出空間内に人工的に竜巻状の上昇気流を発生させ、この気流に泡を乗せることで、上記した泡の特性を効果的に活かした斬新な演出効果を提供することができる。
【0039】
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、泡の集合体を空中に浮遊させることのできる泡演出システムや泡演出方法に関する。従って、本発明は、エンターテインメント業や広告業において好適に利用し得る。
【符号の説明】
【0041】
1…エアピラー 2…吸引口
10…泡制御部 11…トルネードファン
12…バブルポンプ 13…液貯留部
14…バブルファン 15…フロアファン
16…シーリングファン 17…ミスト噴霧装置
20…センサ制御部 21…光センサ
22…温湿度センサ 30…ライト制御部
31…シーリングライト 32…ムービングライト
33…フロアライト 40…音響制御部
41…スピーカ 50…映像制御部
51…プロジェクタ 100…泡演出システム
110…送風機 111…吸気用ダクト
112…排気用ダクト 113…吸気口
114…排気口