IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ Next Innovation合同会社の特許一覧

<>
  • 特許-情報提供システム 図1
  • 特許-情報提供システム 図2
  • 特許-情報提供システム 図3
  • 特許-情報提供システム 図4
  • 特許-情報提供システム 図5
  • 特許-情報提供システム 図6
  • 特許-情報提供システム 図7
  • 特許-情報提供システム 図8
  • 特許-情報提供システム 図9
  • 特許-情報提供システム 図10
  • 特許-情報提供システム 図11
  • 特許-情報提供システム 図12
  • 特許-情報提供システム 図13
  • 特許-情報提供システム 図14
  • 特許-情報提供システム 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】情報提供システム
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20240826BHJP
   G08B 27/00 20060101ALI20240826BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
G09B29/00 F
G08B27/00 A
G09B29/10 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020026672
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021131464
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】510202167
【氏名又は名称】Next Innovation合同会社
(72)【発明者】
【氏名】道脇 裕
【審査官】宇佐田 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-165701(JP,A)
【文献】特開2018-112721(JP,A)
【文献】特開2015-224982(JP,A)
【文献】特開2017-091228(JP,A)
【文献】特開2003-168179(JP,A)
【文献】倉田 成人,“鹿島が取り組む建設分野におけるアプリケーション”,「COMPUTER&NETWORK LAN」,日本,株式会社オーム社,2005年04月01日,第23巻,第4号,pp.46-51,[ISSN]1348-2378
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 29/00,29/10
G08B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に設置され、該対象物及び/又は該対象物の周囲の物理状態情報を出力するセンサと、
上記センサの設置位置情報に紐付けて、上記センサが出力する物理状態情報を取得する情報取得手段と、
上記対象物の構造情報、上記対象物を含む地理情報及び/又は地図情報によって構成される空間情報における上記センサの設置位置に上記物理状態情報を紐付けてマッピング画像情報を作成する演算手段と、
使用者が持ち運び可能で、上記マッピング画像情報を取得可能なユーザ端末と、を有し、
上記ユーザ端末は、移動する当該端末の現在位置に関連する情報と上記マッピング画像情報とを含む情報に基づいたマッピング画像を表示することを特徴とする情報提供システム。
【請求項2】
前記センサは、前記対象物を構成する部材に直接形成されていることを特徴とする請求項1記載の情報提供システム。
【請求項3】
前記物理状態情報は、前記対象物の歪みを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の情報提供システム。
【請求項4】
前記物理状態情報を、前記マッピング画像内で所定のマーク及び/又は不定形の表示像で表示し、強度に応じた色変化、面積の大きさ及び/又は体積の大きさ等で表示することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の情報提供システム。
【請求項5】
前記マークは、幾何学形状、記号、紋様、キャラクタ画像の何れかであることを特徴とする請求項4記載の情報提供システム。
【請求項6】
前記空間情報は、前記対象物の設計情報又は地図情報であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の情報提供システム。
【請求項7】
前記情報取得手段は、一定時間毎に前記物理状態情報を取得し、
前記演算手段は、対応する時間毎のマッピング画像情報を作成することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の情報提供システム。
【請求項8】
前記演算手段は、前記物理状態情報及び前記空間情報に基づいて避難経路を算出することを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の情報提供システム。
【請求項9】
外部の状況を示す外部情報を取得する外部情報取得手段を有し、
前記演算手段は、上記外部状況に基づいて避難経路を算出することを特徴とする請求項8記載の情報提供システム。
【請求項10】
前記外部情報は、気象情報、渋滞情報の何れか又は両方を含むことを特徴とする請求項9記載の情報提供システム。
【請求項11】
前記位置に関連する情報は、前記ユーザ端末の位置情報及び/又は前記ユーザ端末によって取得されたスルー画像の情報であることを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の情報提供システム。
【請求項12】
前記演算手段は、前記物理状態情報及び前記空間情報に基づいて避難経路を算出し、
前記ユーザ端末は、前記スルー画像に上記避難経路を重畳させた前記マッピング画像を表示することを特徴とする請求項11記載の情報提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提供システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、施設内の柱の側面や所定の壁の壁面に設置した表示装置に施設関連情報又は広告情報等を表示させる情報提供システムが知られ、このような情報提供システムにおいて、施設内での火災等の異常発生時に避難経路を含む異常時情報を表示させるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、火災、震災、暴動、イベント、催し物等人々を誘導する必要のある事件の発生の際、的確に安全又は必要な場所に人々を誘導する誘導管理システムが知られ(例えば、特許文献2参照)、遠隔で画像監視を行う観察装置によって人々の移動人数、密度、移動速度などの状況や避難設備の破壊状況を観察し、観測結果や予測に基づく各場所での避難者数の変化や被災状況の変化から最適な避難場所や避難経路を算出し、その避難場所や避難経路を建物の壁面、天井面や床面等の投影面に投影機で投影或いは、プラズマディスプレイ等の壁掛けテレビに表示している。
また、火災情報把握端末群によって一酸化炭素や二酸化炭素等、火災時に発生する空気中の有害物質量や、温度を計測するセンサで計測した情報を読み取ってセンタ端末に送信し、センタ端末がユーザ端末に最適な避難経路を送信する災害避難支援システム(例えば、特許文献3参照)や、建物施設において、火災、地震、騒乱、洪水(浸水)などの災害発生場所から施設利用者を安全な避難経路を選択して、安全な避難誘導を行う避難誘導システム(例えば、特許文献4参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-91228号公報
【文献】特開2003-051072号公報
【文献】特開2007-4452号公報
【文献】特開2010-86314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載された情報提供システムは、熱や煙等に基づく火災の検知やインターネット等を介して取得される災害情報によって異常の発生を検知するものであって、施設内の天井、壁、柱等の破損を直接的に検知して異常を報知することが出来ず、突発的に起こった崩落、倒壊等に対する報知が遅れて即座に異常時情報を表示できないという問題がある。
また、特許文献2の誘導管理システムでは画像監視で状況判断を行い、特許文献3の災害避難支援システムでは有害物質量や温度計測によって状況判断を行っているため、高負荷に晒されている危険箇所については、危険を予測することが不可能で且つ危険箇所近傍を避難場所や避難経路としてしまうことがあるという問題がある。
また、特許文献4の避難誘導システムにおいては、火災検知器、煙検知器等の火災検知センサによって火災の発生を検知したり、震度計の検出結果や外部からの地震に関する情報を受信することによって地震の発生を検知したり、建物施設内のカメラ等を保安員等が監視して騒乱の発生を検出した場合に操作入力装置等を利用して騒乱の発生を入力することで騒乱の発生を検出したり、浸水センサや外部からの洪水等の情報を受信したりすることで災害発生を検出しており、施設内の部材の変形等から直接異常を検知できず、即時異常を報知することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みて本発明者の鋭意研究により成されたものであり、簡易な構造によって、即時異常を報知するための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の情報提供システムは、対象物に設置され、該対象物及び/又は該対象物の周囲の物理状態情報を出力するセンサと、上記センサの設置位置情報に紐付けて、上記センサが出力する物理状態情報を取得する情報取得手段と、上記対象物の構造情報、上記対象物を含む地理情報及び/又は地図情報によって構成される空間情報における上記センサの設置位置に上記物理状態情報を紐付けてマッピング画像情報を作成する演算手段と、を有し、上記マッピング画像情報に基づくマッピング画像が表示手段に表示可能であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の情報提供システムは、前記センサが前記対象物を構成する部材に直接形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の情報提供システムは、前記物理状態情報が前記対象物の歪みを含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の情報提供システムは、前記物理状態情報を、前記マッピング画像内で所定のマーク及び/又は不定形の表示像で表示し、強度に応じた色変化、面積の大きさ及び/又は体積の大きさ等で表示することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の情報提供システムは、前記マークが幾何学形状、記号、紋様、キャラクタ画像の何れかであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の情報提供システムは、前記空間情報が前記対象物の設計情報又は地図情報であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の情報提供システムは、前記情報取得手段が一定時間毎に前記物理状態情報を取得し、前記演算手段は、対応する時間毎のマッピング画像情報を作成することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の情報提供システムは、前記演算手段が前記物理状態情報及び前記空間情報に基づいて避難経路を算出することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の情報提供システムは、外部の状況を示す外部情報を取得する外部情報取得手段を有し、前記演算手段は、上記外部状況に基づいて避難経路を算出することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の情報提供システムは、前記外部情報が気象情報、渋滞情報の何れか又は両方を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡易な構造によって、即時異常を報知するための手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の情報提供システム1を示すブロック図である。
図2】演算処理装置を示すブロック図である。
図3】本実施形態のセンシングデバイスとしての変形検出ボルトを示す図である。
図4】本実施形態の変形検出ボルトの頭部を示す斜視図である。
図5】本実施形態の変形検出ボルトの軸部を示す図である。
図6】頭部キャップを示す斜視図である。
図7】本実施形態の情報提供システムによる避難経路表示処理を示すフローチャートである。
図8】センシングデバイスの歪み情報を記憶したテーブルを示す図である。
図9】マッピング画像の一例を示す図である。
図10】マッピング画像の一例を示す図である。
図11】避難経路を表示したマッピング画像の一例を示す図である。
図12】避難経路を表示したマッピング画像の一例を示す図である。
図13】外部情報を表示したマッピング画像の一例を示す図である。
図14】スルー画像に危険箇所と避難経路を重畳表示したマッピング画像を示す図である。
図15】マッピング画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の情報提供システムの実施形態を、図面を参照して説明する。図1は本実施形態の情報提供システム1を示すブロック図である。情報提供システム1は、計測対象となる対象物、及び/又は対象物の周辺の物理状態を反映する物理状態情報(例えば、歪み情報や温度情報、湿度情報等)を取得し、その物理状態を視認させるものであり、演算処理装置2とユーザ端末4とがネットワーク6を介して接続される。また、演算処理装置2には、複数のセンシングデバイス10(センサ)がインターネット回線や専用回線等を介して通信可能に接続される。また、演算処理装置2とセンシングデバイス10間での通信の確立は、有線及び/又は無線によってなされる。
【0019】
先ず、センシングデバイス10の構成について説明する。センシングデバイス10は、各部を統括的に制御するセンサ制御部12を具える。センサ制御部12には、記憶部14、情報取得部16、通信部18、電力供給部19が接続される。
【0020】
記憶部14は、センシングデバイス毎に採番されたセンサID、センサ制御部12による制御プログラム等を格納する。また、記憶部14は、センシングデバイス10の初期状態における設定情報や情報取得部16によって得られたセンシング情報等を記憶し、且つセンサ制御部12でなされた演算結果等を記憶可能に構成してもよい。
【0021】
情報取得部16は、歪み計測センサ(歪みゲージ及び/又は歪み計測用パターン)、A/D変換器等を有して構成され、センシングデバイス10を搭載している部材等にかかる物理状態情報を取得する。ここでは物理状態情報として歪みの情報を取得する。そのため予め、部材等の初期状態(所定状態)を基準とした物理状態の情報、即ち、設置初期に計測された歪み量に換算可能な電気抵抗値及び/又は電圧値を取得しておき、センシングデバイス10に荷重が作用したときの電気抵抗値及び/又は電圧値の変化に基づいて、荷重によって生じた歪み量や歪みの変化量等の歪み情報を取得する。
【0022】
なお、情報取得部16は、歪み計測センサ以外のセンサ、例えば姿勢(傾き、方位)を測定するジャイロセンサ、方位センサ、温度を測定する温度センサ等を具えることで、物理状態情報として姿勢情報や温度情報を取得してもよい。なお、歪み計測センサと温度センサとを併用すれば、歪み計測センサによって計測された歪みの内、温度による歪みの影響を排除できる。即ち、歪み計測センサによって計測した歪みに対し、温度センサによって計測した温度に基づく補正処理を行うことで、温度による影響を排除した歪み量の情報を取得することができる。
【0023】
なお、補正処理は、情報取得部16において回路補正によって及び/又はセンサ制御部12において演算処理によって実行してもよく、或いは及び演算処理部2において演算処理によって実行してもよい。また、情報取得部16は、上記のセンサ以外に、例えば加速度センサ、圧力センサ、臭気センサ、特定粒子官能センサ、放射線センサ、濡れセンサ、位置センサ(GPS)、人感センサ、光センサ、音センサ、磁気センサ、電流センサ、電圧センサ、回転角センサ、イメージセンサ等を有してもよい。
【0024】
通信部18は、アンテナ11を介して情報取得部16が取得した歪み情報を演算処理装置2に送信する。勿論、単に外部に信号を送信するものであってもよく、その送信手段としてはアンテナ11の他、発光部(発光素子)、スピーカ等を用いて電波や光、音等の発信波を発して情報を伝達することができる。また通信部18は、受信手段を有してもよく、例えば発信波にレスポンス信号を重畳させ、レスポンス信号の指示に従った情報を外部から受信手段を介して受信してもよい。尚、通信部18は有線によって情報の送受信を行うようにしてもよい。
【0025】
電力供給部19は、不図示の電力供給源から各部に電力供給を行う。なお、電力供給源は、電池(一次電池や二次電池)でもよく、外部電源(AC電源やDC電源)であってもよい。また電力供給部19は、受電手段を具えることで、外部から電力供給波を受け、その電力を各部に伝送するものであってもよい。なお、受電手段は、一つ以上の様々な構造を採用でき、複数を併設することも可能であるが、例えば、コイル、アンテナ、受光部(フォトニック素子系部材、ソーラーパネル等)、マイクロフォンや圧電素子等のように振動や圧力変化等を電気エネルギーに変換可能に構成された振動子等のエネルギー変換素子によって、電力供給波を受けて電力に変換するものとする。
【0026】
また、他の電力供給の手法としては、例えば、電力供給波として音波を用い、受電手段として、ゼーベック効果を活用して起電力を得る所謂ゼーベック素子(回路)を用いてもよい。この場合、電力供給波として用いる適宜周波数の音波の音圧によって媒質中に交互に作出される高密度媒質領域と低密度媒質領域の入れ替わりを利用して、交互に生成されるそれぞれの領域に、ゼーベック素子の第一の接点と第二の接点のそれぞれに位置させ、高密度媒質領域が第一の接点を取り巻くタイミングでは第一の接点は温接点となり、他方この瞬間、第二の接点は低密度媒質領域に取り巻かれて冷接点となって所定向きの起電力が生じ、高密度媒質領域と低密度媒質領域とが入れ替わるとき、第一の接点と第二の接点とで温接点側と冷接点側が入れ替わることで、温度差による起電力の電流の向きが入れ替わる交番電流を得るように構成することができる。また、空間中の異なる二点に電力供給装置としての音源を配置して、音波の重ね合わせの音場を作出し、その結果、上記ゼーベック素子の第一の接点と第二の接点に定常的な粗密差の有る状態を設定することで当該ゼーベック素子に定常的な起電力を発生させるように構成してもよい。このような空間上の適宜の二点以上に電力供給装置としての音源を設定する方法としては、例えば、二つの電力供給装置が、受電手段を中間位置として、これら二つの電力供給装置と受電手段とが一直線上に配置され、それぞれの電力供給装置から電力供給波が受電手段に向けて発せられるように構成してもよい。このような構成とすることで、受電手段における電力供給波が定常波となって定常的な温度差を所定部位に作出することができ、直流電流を生起させることができる。
【0027】
更に受電手段は、電力供給装置から発せされる電力供給波を受信する場合に限られず、周囲の環境変動によって自然に生じる電力供給波を受電手段が受けて電力に変換しても良い。周囲環境変動とは、例えば、振動、温度変化、外光(照明光や自然光)、圧力変化(気圧変化)、外力変化(風、浮力変化、降雨)等を含む。自然環境変動と電力供給装置を組み合わせて用いても良い。
【0028】
次に、演算処理装置2について説明する。図2は演算処理装置2を示すブロック図である。演算処理装置2は、各部を統括的に制御する装置制御部20を具える。装置制御部20には、通信部22、空間情報格納部24、記憶部26、マッピング部28、経路算出部30、外部情報取得部32が接続される。
【0029】
通信部22は、ユーザ端末4との間での情報の送受信やセンシングデバイス10からの物理状態情報の受信等の通信処理を行う。空間情報格納部24は、センシングデバイス10を設置している建造物(構造体)の設計情報や、その建造物を含む広域或いは局所を示す地理情報及び/又は地図情報等の空間情報を格納する。設計情報は、例えば、設計図の情報であって建造物の内部構造、建造物内の部材の材料、センシングデバイス10の設置位置等の情報を有してもよい。また、地理情報又は地図情報は、地図上の位置に対応した建造物の所在地の情報を有するものである。
【0030】
記憶部26は、建造物に関連するセンシングデバイス10に関する各種情報を記憶する。具体的には、建造物IDに紐付けてセンシングデバイス10のセンサIDや建造物内での設置位置、取得される物理状態情報を記憶するテーブルを有する。また、記憶部26は、装置制御部20による制御プログラム等を格納する。
【0031】
なお、設置位置情報は、単に建造物の構造におけるセンシングデバイス10の位置に限定されるものではなく、配設姿勢等も示すものであってもよい。即ち、設置位置情報には、センシングデバイス10が建造物においてどの位置で、どのような姿勢(例えば、変形検出ボルト100(後述する)の軸方向が水平向きで南向きの姿勢等)で配設されているかを示す情報を含んでもよい。
【0032】
マッピング部28は、空間情報に物理状態情報を適用するマッピング処理によってマッピング画像情報を作成する。経路算出部30は、例えばマッピング画像情報における最適避難経路の算出処理を行う。例えば、物理状態情報に基づいて、歪み量が大きい程、そのセンシングデバイス10の周囲が危険であるとみなし、そこを避けるような避難経路を算出するように構成してもよい。
【0033】
外部情報取得部32は、インターネット回線等を介して、外部情報としての気象情報や渋滞情報を取得する。なお、取得された外部情報は、避難経路の算出に適用される。即ち、渋滞情報であれば、渋滞中の通路を回避した、避難経路を算出するために用いることが可能である。
【0034】
次にユーザ端末4について説明する。ユーザ端末4は、マッピング画像を表示可能な情報処理端末であり、ネットワーク6を介して演算処理装置2と通信可能であればよく、その種類が限定されるものではない。
【0035】
即ち、ユーザ端末4は、例えば、スマートフォン、携帯電話(フィーチャーフォン)、PDA(Personal Digital Assistant)、ウェアラブル端末(ヘッドマウントディスプレイ、メガネ型デバイス等)、タブレット端末、ノート型PC、デスクトップ型PC、その他各種のコンピュータや演算回路、モニタ等を有するものである。
【0036】
ネットワーク6は、無線ネットワークや有線ネットワークの何れであってもよい。具体的には、無線LAN、広域ネットワーク(Wide Area Network:WAN)、ISDNs(Integrated Service Digital Networks)、LTE(Long Term Evolution)、LTE-Advanced、CDMA(Code Division Multiple Access)、第5世代移動通信システム(5G)、LPWA(LAW Power Wide Area)等である。勿論、ネットワークは、Wi-Fiや公衆交換電話網やブルートゥース、光回線、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線、衛星通信網等を利用するものであってもよく、またこれらを組み合わせたものであってもよい。
【0037】
図3は、本実施形態のセンシングデバイス10としての変形検出ボルト100を示す図である。変形検出ボルト100は、頭部102及び軸部104を有し、部材自体にかかる曲げ応力、圧縮応力、引張応力、捻れ応力等の応力を検出し得る構成を含んだボルトである。また変形検出ボルト100には、別体である頭部キャップ106が頭部102に装着(嵌合)される。なお、変形検出対象体は、ボルトに限定されるものではない。
【0038】
また、センシングデバイス10の各部を構成する回路基板が、端子130(後述する)に通電可能に接続するように頭部102内に配設され、更に頭部キャップ106の装着によって変形検出ボルト100に搭載される。なお、回路基板(センシングデバイス10)の配設位置は、必ずしも頭部102ではなく、例えば変形検出ボルト100の先端部であってもよい。
【0039】
図4は本実施形態の変形検出ボルト100の頭部102を示す斜視図である。頭部102は、外周形状が六角形状を有し、三対の二面幅を具える。また頭部102は、軸部104と比して軸心に直交する軸直交方向の最大寸法、即ち軸部104に比して軸直交方向の長さ(幅)が大きい外形形状を有する。頭部102は、外周面の一面及び座面に亘って一連であって、且つ凹状の通電路配設部110を有する。また端部には頭部キャップ106が嵌合し得る嵌合部112を有する。
【0040】
図5は本実施形態の変形検出ボルト100の軸部104を示す図である。なお、図5においては後述するセンサパターン132を省略している。軸部104は、軸直交方向の最大寸法に比して軸方向の長さが長い外形形状を有する。軸部104は、頭部102の付け根乃至座面側に配置された円筒部120と、外周面に雄ねじ螺旋溝が形成されたねじ部122とを具える。即ち、軸部104において、頭部102が存する一端側に円筒部120が位置し、他端側にねじ部122が位置する。
【0041】
円筒部120は、柱状の外周形状を有し、全体に対して一部の領域がくびれを有するように、外形が縮小した縮形部分120aを有する。この縮形部分120aは、ねじ部122の雄ねじの谷径或いは有効径程度となるように、軸直交方向の長さが設定され、本実施形態では雄ねじの有効径と略同一とする。円筒部120は、外周面に対して凹設されたセンサ配設部124を有する。センサ配設部124は、その底面部が平面状を成し、縮形部分120aの中間部位から軸方向に沿って頭部102に向かって延設される。
【0042】
ねじ部122は、所定のリード角及び/又はリード方向の螺旋溝を形成した第一雄ねじ螺旋構造と、この第一雄ねじ螺旋構造のリード角及び/又はリード方向が相異なるリード角及び/又はリード方向に螺旋溝が設定される第二雄ねじ螺旋構造を重畳的に有している。
【0043】
ここでは、対応した右ねじとして成る雌ねじ状の螺旋条を螺合可能に構成した右ねじとなる第一雄ねじ螺旋構造と、対応した左ねじとして成る雌ねじ状の螺旋条を螺合可能に構成される左ねじと成る第二雄ねじ螺旋構造との二種類の雄ねじ螺旋構造が、ボルト型センサ2の軸方向における同一領域上に重複して形成される。勿論、第一雄ねじ螺旋構造と第二雄ねじ螺旋構造を、互いに右ねじのリード方向が同じ螺旋構造とし、リード角を相異なるように設定してもよい。なお、螺旋溝は、必ずしも重畳形成されたものである必要はないが、接合部材としての緩みを抑制し得る機構を有するものであることが、精密で確度の高い歪み計測、応力計測を行う上では好ましい。
【0044】
従って、ねじ部122は、右ねじ及び左ねじの何れの雌ねじ体とも螺合することが可能となる。なお、二種類の雄ねじ螺旋溝が形成されたねじ部122の詳細については、本願の発明者に係る特許第4663813号公報を参照されたい。
【0045】
センサ配設部124の底面には、軸部104の物理変化を検出する物理変化検出手段を構成するためのセンサパターン132が直接的に形成される。即ち、該センサパターン132は、センシングデバイス10の情報取得部16に接続する歪み計測センサとして機能し得る。またセンサパターン132は、導電材料から成り、軸方向に複数回往復して延びるセンサ構造部分と、該センサ構造部分から頭部102側に向かって延びるリード部分とから構成される。従ってセンサパターン132は、センサ構造部分における導電材料の変形に伴い抵抗値等の電気的特性が変化する。この電気的特性の変化を検出することで、物理変化検出のための各種センサとして利用し得る。
【0046】
なお、電気的特性の変化によって検出される物理変化は、熱・温度変化、湿度変化等であってもよい。例えば、センサパターン132の電気抵抗値の変化から環境温度を計測する場合、センサパターン132は所謂抵抗温度計の構成部品として用いることを意味する。また同様にして抵抗変化型の電気湿度センサとして湿度を計測してもよい。このようなセンサパターン132は、頭部102側に形成された通電路134と通電可能に接続するものである。
【0047】
次に、頭部102の通電路配設部110、嵌合部112について説明する。図3に示す通電路配設部110は、その凹状断面の底面部分が平面状であって、その底面部分に通電路134が直接形成される。通電路配設部110は、頭部102の外周面においては軸方向に沿って延び、座面上においては軸方向に直交方向に延びるように延設方向が設定される。なお通電路配設部110は、少なくとも頭部102の外周面及び座面に亘って一連であれば、外周面において軸方向に対して傾斜した方向に延設する等、延設方向は適宜設定し得るものである。また通電路配設部110の深さや幅等においても適宜設定し得るものである。
【0048】
嵌合部112は、頭部102の端面(端部)から軸方向に突出した円柱形状を有する。また嵌合部112は、図4に示す外周面上に複数の係止溝(係止部)114を有する。更に嵌合部112の端面には、通電路134と電気的に接続された端子130が直接的に形成される。
【0049】
嵌合部112の外周面に形成された係止溝114は、頭部キャップ106の係止片106a(図6参照)を挿入し得、且つ頭部キャップ106の軸方向に位置を規制し得る形状、例えば略L字形を成している。
【0050】
この場合、係止溝114は、軸方向案内部115と周方向案内部116とを含んで成る。軸方向案内部115は、挿入口114aから軸心に沿って延設され、係止片106aの軸方向の移動を案内する。周方向案内部116は、軸方向案内部115に対して周方向に沿って湾曲或いは屈曲し、終端側に規制端部114bを形成する。規制端部114bは、軸方向に沿った頭部102の頂面側に向かって延びるように、屈曲した部分である。規制端部114bには、係止片106aが嵌まることで、係止片106aの軸方向及び周方向の移動を規制し得る。
【0051】
図6は頭部キャップ106を示す斜視図である。頭部キャップ106は、頭部102の嵌合部112に被せて装着するものであり、内周面に突起形状の複数の係止片106aを具える。なお、頭部102と頭部キャップ106の間には、介在部材を介在させることが望ましい。ここで介在部材は、所謂シール部材、パッキン等であって、可撓性を有する材質、例えばゴムやシリコーン等の弾性体から成るものとする。勿論、ここでの可撓性の部材は樹脂素材に限定されるものではなく、弾性変形及び/又は塑性変形させて強固な嵌合状態を得られるものであればよく、特に限定されない。
【0052】
次に、端子130、センサパターン132、通電路134の形成例について説明する。先ず端子130、センサパターン132、通電路134は、変形検出ボルト100の表面に直接形成するものである。例えば変形検出ボルト100の母材が導電性を有する場合、変形検出ボルト100の表面に電気絶縁層を形成し、当該電気絶縁層上に導電材料等の電気伝導性が良好な材料によって端子130、センサパターン132、通電路134のパターンを成す導電部を形成する。
【0053】
電気絶縁層は、例えば積層印刷、パット印刷、塗装、メッキ、インクジェット印刷、スパッタリング、化学蒸着法(CVD法)、物理蒸着法(PVD法)等を用いて形成し得る。または例えば所定のマスクを配置した状態で絶縁材料をスパッタリングによって被膜形成したり、シリカ材料を塗布して加熱処理したり、ポリィミド系、エポキシ系、ウレタン系、シリコーン系、フッ素系等の有機絶縁材による層を形成する等の手法を用いてもよい。
【0054】
変形検出ボルト100の母材、即ち頭部102又は軸部104が電気伝導性を有する場合には、その母材表面を酸化処理することによって酸化皮膜化し電気絶縁層としても良い。また母材がアルミニウム系の場合にはアルマイト処理によって電気絶縁層を設けても良い。勿論電気絶縁層は、これらの手法によって形成するものに限定するものではない。また変形検出ボルト100の母材が電気絶縁性を有する場合には、電気絶縁層を形成せず、母材に直接端子130、センサパターン132、通電路134のパターンを成す導電部を形成してもよい。
【0055】
導電部は、導電性ペーストを利用した積層印刷、パット印刷、塗装、メッキ、インクジェット印刷、スパッタリング、CVD法、PVD法等によって電気絶縁層に直接形成される。また導電部は、端子130、センサパターン132、通電路134の形状に合わせたマスキングを施してエッチングすることで、配線の形状を設定してもよい。このように導電部を電気絶縁層に直接形成することで、長時間に亘って、導電部が剥離しないようになっている。
【0056】
勿論、変形検出ボルト100上に、端子130、センサパターン132、通電路134を一連に形成してもよい。その場合、変形検出ボルト100の軸方向に存する軸に平行な平行面と、該平行面に略直交した直交面との境界部分102aに丸み面取り等の加工を施して曲面形状にすることが好ましい。このようにすれば、平行面と直交面間が角状となっている面上に導電部を形成する場合よりも、容易に導電部を形成することができる。
【0057】
次に、図7のフローチャートを参照して、情報提供システム1による危険箇所表示処理について説明する。ここではユーザ端末4の使用者が建造物内に居て地震等の災害時に、ユーザ端末4の表示画面に危険箇所を表示させる表示処理を行う。また、演算処理装置2の記憶部26は、図8に示すような、各センシングデバイス10から取得した歪み情報を取得日時に対応付けて記憶するテーブルを有するものとする。即ち、取得日時に対応付けたテーブルには、建造物に設置されているセンシングデバイス10の各々のセンサID、設置位置情報、設置姿勢情報、歪み情報、温度情報等が紐付けされて記憶される。従って装置制御部20は、歪み情報が取得される毎にテーブルの更新を行うようにしてもよい。
【0058】
なお、テーブルには、取得した歪み情報を全て記憶してもよいが、これに限定されるものではなく、時系列順に最新のものから過去十件分等、所定件数に限定してその件数を超えたときに、最古の歪み情報を削除してもよい。勿論、所定件数は、十に限定されるものではなく、十未満或いは十を超える件数としてもよいことは言うまでもない。
【0059】
演算処理装置2の装置制御部20は、一定時間毎に通信部22によってセンシングデバイス10との通信を行い、各センシングデバイス10から物理状態情報として歪み情報や温度情報等の受信を行う(ステップS1)。なお、物理状態情報として湿度情報等を受信してもよい。
【0060】
装置制御部20は、受信した物理状態情報を記憶部26のテーブルに記憶して待機する。一方、ユーザ端末4は、使用者による操作に基づいてマッピング画像情報を取得するための要求電文の作成を行い、演算処理装置2に送信する(ステップSA1)。要求電文には、少なくとも、ユーザ端末4の位置情報が含まれるようにしてもよい。この位置情報は、例えばGPS衛星からの測位信号の受信によって算出することが出来る。
【0061】
装置制御部20は、受信した要求電文の位置情報に基づいて、ユーザ端末4の使用者が居る建造物及びその建造物IDに対応するテーブルを特定し、該テーブルに記憶した内容に基づく危険箇所情報の作成を行う(ステップS2)。危険箇所情報は、建造物内の位置と、危険度合いとを関連付けた情報であり、歪み情報に基づいて各センシングデバイス10及びその近傍の危険度を設定して建造物内部の危険箇所を設定する。
例えば、歪み情報としての歪み量の範囲を複数設定し、歪み量が大きい順に危険度を大・中・小等に分類する。また、センシングデバイス10で計測不可等によって歪み情報を取得できなかった場合は、危険度大に分類するようにしてもよい。
【0062】
装置制御部20は、建造物IDにかかる設計情報と、ステップS2で作成した危険箇所情報とを対応付けるマッピング処理を行う(ステップS3)。具体的に装置制御部20は、建造物IDにかかる設計情報を空間情報格納部24から読み出し、該設計情報の各センシングデバイス10の設置位置に、歪み情報に基づく危険度を対応付けてマッピング画像情報の作成を行う。
【0063】
装置制御部20は、通信部22によってマッピング画像情報をユーザ端末4に送信し(ステップS4)、ユーザ端末4に対してマッピング画像情報に基づくマッピング画像を表示させる(ステップSA2)。ここで図9は、マッピング画像の一例を示す図であり、(a)は平常時、(b)は災害時を示している。マッピング画像には、建造物内部の構成が示され、図9は一フロア部分の平面図を示している。なお、建造物は多層階の建物であっても、平屋であってもよく、多層階の建造物の場合には、複数フロアを表示し得るように分割させた画面を示してもよい。また、図9(a)における黒点は、センシングデバイス10の配設位置を示している。
【0064】
ユーザ端末4に表示されるマッピング画像には、危険度に応じた円を表示する。例えば、危険度が高い程、面積が大きい円を表示し、建造物の右側に集中して荷重が作用し、当該荷重が集中した領域内のセンシングデバイス10から大きな歪み情報(歪み量)が出力された場合、図9(b)に示すように危険度が大や中であることを示す円が集中して表示される。このため、ユーザ端末4に表示されたマッピング画像から建造物の危険箇所を直感的に把握できる。
【0065】
以上、説明したように、本発明の情報提供システム1によれば、センシングデバイス10から取得した歪み情報に基づく危険度を設定してマッピング画像情報を作成し、それをユーザ端末4に表示させるので、ユーザ端末4の使用者は、マッピング画像から危険箇所を直感的に把握することができる。従って、ユーザ端末4にマッピング画像を表示させることで、建造物に生じた異常を即時報知することができる。
【0066】
また、ユーザ端末4の使用者は、マッピング画像を確認して建造物内でどの箇所が危険であるかを把握することで、避難経路の決定に役立てることができる。また、建造物内に取り残された被災者の救助戦略においてもマッピング画像を有効に活用することができる。
【0067】
また、センシングデバイスが変形検出ボルトであるため、建造物を構成する壁、天井、柱、梁等の接合部分にかかる負荷等による変形を検出するので、建造物内部で見た目では崩れていない箇所についても、変形検出ボルトに高負荷が作用している箇所が危険度大として表示するので、使用者に危険箇所であることを認識させることができる。
【0068】
なお、上記実施形態においては、歪み情報に基づく危険度を円の大きさで示したが、これに限定されるものではなく、円の色で示してもよい。例えば危険度小の場合は青色、中の場合は黄色、大の場合は赤色等とする。更に危険度の分類を細分化する場合には、色の濃淡によって区別することも可能である。例えば、淡い赤色よりも濃い赤色の場合は、より危険度が大きいことを示すようにする。更に円の大きさと色とを組み合わせて表示してもよく、例えば、危険度小の危険箇所には、淡い青色で面積の小さい円を表示し、危険度大の危険箇所には、濃い赤色で面積の大きい円を表示してもよい。
勿論、この危険度表示は、円形に限定されるものではなく、所望の幾何学図形や紋様、図画(キャラクタ画像)、絵、記号、文字等を適宜選択することが可能である。
【0069】
また、上記実施形態においては、建造物内での危険箇所を示すマッピング画像情報を作成したが、これに限定されるものではなく、屋外における危険箇所を示すマッピング画像情報を作成してもよい。例えば、使用者が屋外にいるときに災害が発生した場合に、所定の避難所や避難場所(学校、スポーツセンタ、公園等)を含む領域の地図に危険箇所を示した、マッピング画像情報を作成することができる。
【0070】
この場合のマッピング画像は、図10に示すような避難場所と危険箇所とが配された地図情報を表示する。危険箇所は、建造物毎の各センシングデバイス10の歪み情報の総合的な判断により適宜決定し得る。例えば建造物内の全センシングデバイス10の内、危険度大となっている数量の閾値を定め、閾値を超えた建造物については倒壊或いは危険度大とみなす。閾値は、センシングデバイス10の数量に限定されるものではなく、建造物に配設されたセンシングデバイス10の全数に対する割合(例えば、六割等)としてもよい。また建造物における、危険度大となっている危険箇所の密度等を閾値としてもよい。
勿論、設計情報に危険箇所を表示した場合と同様に、センシングデバイス10の位置毎に危険箇所を表示してもよい。結果、地図情報の建造物には、複数の円が重畳表示されて当該複数の円が重なりあって集合することで、図15に示すように不定形の表示像様を形成し得る。また、危険度大の危険箇所が集中した建造物には、赤色で且つ面積の大きい表示像が表示され得る。
【0071】
また、危険箇所を表示する際に、歪み情報に基づく危険箇所と、その他の情報に基づく危険箇所とを区別可能に表示してもよい。例えば、センシングデバイス10が取得した温度情報に基づき、建造物における火災の有無を判断し、火災が発生していると判断した場合に火のマーク(図10参照)を地図情報に重畳表示させてもよい。即ち、センシングデバイス10で取得した温度が数百℃を超える値となっているような場合には、当該センシングデバイス10を配している建造物には、火災が発生しているものとみなして当該建造物に火のマークを重畳表示させることができる。
【0072】
また、上述したマッピング画像には、危険箇所が表示されるが、更に危険箇所を避ける避難経路を表示させてもよい。具体的には、装置制御部20は、経路算出部30により、ユーザ端末4の位置から避難所(或いは建造物の出口)までの経路で且つ危険箇所を避ける経路情報を算出し、経路情報を含めたマッピング画像情報を作成してもよい。このようなマッピング画像情報によれば、図11に示す太線や矢印等により、建造物内の空間情報における現在位置から危険度大の近傍を通らずに出口へと誘導する避難経路を表示することが出来る。
【0073】
また、避難経路の算出を行う場合に、更に外部情報を用いてもよい。具体的には装置制御部20は、外部情報取得部32によって気象情報を取得し、その気象情報の風向き情報を参照する。これにより装置制御部20は、火災が起きている建造物の風下を避けるような避難経路を設定し得る。例えば、図12の短い矢印で示すように各地で風が吹いている場合、火災が起きている建造物の直ぐ風下の通路や、火災が起きている建造物の風下の避難所を避け、延焼の可能性が低く、より安全な避難所に向かって避難経路を設定し得る。なお、図12に示す短い矢印は、風速によって太さを変えており、太さが速さに対応しているものとし、このような表示によれば、各地での風の強さを示すことができ、火災に対する延焼の可能性等を使用者に把握させ得る。
【0074】
また、気象情報としての台風情報及び/又は竜巻情報を用いてもよく、例えば、暴風が吹いているとき、倒壊或いは倒壊の虞がある建造物の風下を避けるような避難経路を設定し得る。また外部情報として渋滞情報を用いてもよく、渋滞中の道路を避けるような避難経路を設定し得る。
【0075】
このような避難経路を含んだマッピング画像の表示により、災害時に最適な避難経路を提供することができ、安全な避難を促すことができる。また外部情報をマッピング画像情報の作成に反映させることで、更に安全な避難を促すことができる。
【0076】
なお、避難経路を算出する際に外部情報を利用するものとしたが、避難経路を算出する場合に限られるものではなく、危険箇所と合わせて外部情報を表示させてもよい。例えば、図13に示すように風向きや渋滞中の道路等を示す外部情報を地図情報に重畳表示させてもよい。危険箇所と共に外部情報を配したマッピング画像に表示させることで、安全な避難経路の決定や、被災者の救助戦略等のための重要な情報を提供することが出来る。
【0077】
また、ユーザ端末4で、時系列に沿ったマッピング画像を表示させるようにしてもよい。即ち、演算処理装置2の記憶部26は、取得日時に紐付けした歪みの情報等を記憶したテーブルを有するため、装置制御部20は、取得日時毎のマッピング画像情報を作成し且つユーザ端末4に送信することで、ユーザ端末4にこれらのマッピング画像を任意に切り替え可能に表示させてもよい。
このように、時系列に沿った複数のマッピング画像を切り替え可能に表示させれば、危険箇所が時間の経過によってどのように拡がっていくか、又危険度がどのように変化するか等を確認でき、安全な避難経路の決定や被災者の救助戦略等のための情報を提供することができる。
【0078】
また、マッピング画像は、二次元画像に限定されるものではなく、三次元形状が表示可能で斜め上から見下ろしたような三次元画像等であってもよい。その場合、危険箇所を示すマークを略球形状や半球形状等の三次元形状で表示させてもよい。
【0079】
また、上述した実施形態においては、ユーザ端末4に表示させるマッピング画像を地図様や設計図様の画像としたがこれに限定されるものではない。例えば、カメラで撮影しているスルー画像に危険箇所や避難経路を重畳させたマッピング画像を表示してもよい。
【0080】
このようなマッピング画像を表示する場合、ユーザ端末4には、カメラ機能、方位計測機能等、位置情報取得機能等が搭載される。ユーザ端末4は、スルー画像撮影時に、方位計測機能によって撮影向きを特定し、位置情報取得機能によって取得した現在位置情報から撮影向きに沿う所定範囲に配置されているセンシングデバイス10をマッピング画像情報によって特定する。ユーザ端末4は、特定されたセンシングデバイス10の危険度をスルー画像内でのセンシングデバイス10のおおよその位置に配する。
これにより、例えば、図14に示すように、建造物内を撮影しているスルー画像内に危険箇所とその危険度、避難経路を示す矢印等を表示させることができる。
【0081】
また、上述した実施形態においては、演算処理装置2がマッピング画像情報を作成したが、これに限定されるものではなく、ユーザ端末4でマッピング画像情報を作成させてもよい。即ち、危険箇所情報、空間情報(設計情報や地図情報)等をユーザ端末4に送信することで、ユーザ端末4にマッピング画像情報を作成させるようにしてもよい。また避難経路や外部情報をユーザ端末4に表示させてもよい。即ち、演算処理装置2の経路算出部30や外部情報取得部32による演算結果をユーザ端末4に送信することで、ユーザ端末4に避難経路や外部情報を含むマッピング画像情報を表示させてもよく、或いはユーザ端末4に経路算出部や外部情報取得部に相当する部位を設けることで、ユーザ端末4側で避難経路の算出、外部情報の取得を行って避難経路や外部情報を含むマッピング画像情報を表示させてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1…情報提供システム、2…演算処理装置、4…ユーザ端末、6…ネットワーク、10…センシングデバイス、11…アンテナ、12…センサ制御部、14…記憶部、16…情報取得部、18…通信部、19…電力供給部、20…装置制御部、22…通信部、24…空間情報格納部、26…記憶部、28…マッピング部、30…経路算出部、32…外部情報取得部、100…変形検出ボルト、102…頭部、104…軸部、106…頭部キャップ、110…通電路配設部、112…嵌合部、120…円筒部、122…ねじ部、124…センサ配設部、130…端子、132…センサパターン、134…通電路。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15