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  • 特許-アイススケート靴用ブレード 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】アイススケート靴用ブレード
(51)【国際特許分類】
   A63C 1/32 20060101AFI20240826BHJP
   A43B 5/16 20060101ALI20240826BHJP
   B22C 9/04 20060101ALI20240826BHJP
   C22C 38/22 20060101ALI20240826BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20240826BHJP
   C21D 9/20 20060101ALN20240826BHJP
   C22C 38/44 20060101ALN20240826BHJP
【FI】
A63C1/32
A43B5/16
B22C9/04 C
C22C38/22
C22C38/00 301Z
C21D9/20
C22C38/44
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020106746
(22)【出願日】2020-06-22
(65)【公開番号】P2022001168
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】514053181
【氏名又は名称】新潟精密鋳造 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃義
【審査官】相川 俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-061875(JP,A)
【文献】特公昭47-030536(JP,B1)
【文献】特開2015-163727(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0206562(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63C 1/32
A43B 5/16
B22C 9/04
C22C 38/22
C22C 38/00
C21D 9/20
C22C 38/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケート靴本体の底部に取り付けられる取付部と、この取付部に垂設され下端部にエッジを有する刃板部とから成るアイススケート靴用ブレードであって、前記取付部と前記刃板部とは、下記構成の金属材料によるロストワックス精密鋳造により一体形成されていることを特徴とするアイススケート靴用ブレード。

鉄98重量%以上,炭素0.17重量%~0.25重量%,シリコン0.1重量%~0.3重量%以下,マンガン0.62重量%~0.83重量%,クロム0.85重量%~1.25重量%及びモリブデン0.13重量%~0.25重量%の金属材料を含有する構成であり、この各金属材料は合計で100重量%である。
【請求項2】
スケート靴本体の底部に取り付けられる取付部と、この取付部に垂設され下端部にエッジを有する刃板部とから成るアイススケート靴用ブレードであって、前記取付部と前記刃板部とは、下記構成の金属材料によるロストワックス精密鋳造により一体形成されていることを特徴とするアイススケート靴用ブレード。

鉄98重量%以上,炭素0.17重量%~0.25重量%,シリコン0.1重量%~0.3重量%以下,マンガン0.62重量%~0.83重量%,クロム0.85重量%~1.25重量%,モリブデン0.13重量%~0.25重量%,リン0.025重量%以下,サルファ0.025重量%以下,ニッケル0.2重量%以下及び銅0.2重量%以下の金属材料を含有する構成であり、この各金属材料は合計で100重量%である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイススケート靴用ブレードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に開示されるようなアイススケート靴(以下、従来例)が提案されている。
【0003】
この従来例は、スケート靴本体の底部にブレードを設けたものであり、このブレードは、スケート靴本体の底部に取り付けられる取付部と、この取付部に垂設され下端部にエッジを有する刃板部とから成るものである。
【0004】
ところで、この従来例は、別々に設けられた取付部と刃板部とを溶接して連結されたものが一般的であるが、継続使用によりこの溶接部分が破断したり変形したりするなど強度上の問題点がある。
【0005】
そこで、従来において、この取付部と刃板部とを切削加工により一体成形したものが提案されており、従来例に比して強度を有するものであるが、製造性が悪く高価となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開昭62-29102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のような現状に鑑みなされたもので、従来に無い実用的なアイススケート靴用ブレードを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
スケート靴本体20の底部に取り付けられる取付部1と、この取付部1に垂設され下端部にエッジ2aを有する刃板部2とから成るアイススケート靴用ブレードであって、前記取付部1と前記刃板部2とは、下記構成の金属材料によるロストワックス精密鋳造により一体形成されていることを特徴とするアイススケート靴用ブレードに係るものである。

鉄98重量%以上,炭素0.17重量%~0.25重量%,シリコン0.1重量%~0.3重量%以下,マンガン0.62重量%~0.83重量%,クロム0.85重量%~1.25重量%及びモリブデン0.13重量%~0.25重量%の金属材料を含有する構成であり、この各金属材料は合計で100重量%である。
【0010】
また、スケート靴本体20の底部に取り付けられる取付部1と、この取付部1に垂設され下端部にエッジ2aを有する刃板部2とから成るアイススケート靴用ブレードであって、前記取付部1と前記刃板部2とは、下記構成の金属材料によるロストワックス精密鋳造により一体形成されていることを特徴とするアイススケート靴用ブレードに係るものである。

鉄98重量%以上,炭素0.17重量%~0.25重量%,シリコン0.1重量%~0.3重量%以下,マンガン0.62重量%~0.83重量%,クロム0.85重量%~1.25重量%,モリブデン0.13重量%~0.25重量%,リン0.025重量%以下,サルファ0.025重量%以下,ニッケル0.2重量%以下及び銅0.2重量%以下の金属材料を含有する構成であり、この各金属材料は合計で100重量%である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のように構成したから、強度及び耐久性に優れ、しかも、様々な形状を簡易に形成することができ、量産性に秀れてコスト安に製造できるなど、従来に無い実用的なアイススケート靴用ブレードとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施例の要部を説明する斜視図である。
図2】本実施例の要部を説明する正面図である。
図3】本実施例の製造工程を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0014】
本発明は、取付部1と刃板部2とは金属材料の鋳造により一体形成されている。
【0015】
従って、例えば継続使用により取付部1と刃板部2との連設部位が破断したり変形したりせず強度及び耐久性に優れ、しかも、様々な形状を簡易に形成することができ、量産性に秀れてコスト安に製造できることになる。
【実施例
【0016】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0017】
本実施例は、スケート靴本体20の底部に取り付けられる取付部1と、この取付部1に垂設され下端部にエッジ2aを有する刃板部2とから成るアイススケート靴用ブレードである。
【0018】
尚、本実施例ではアイススケート靴用ブレードとして、フィギュアスケート靴用のブレードが採用されているが、その他の競技(アイスホッケーやスピードスケート)用のものでも良いなど、本実施例の特性を発揮する構成であれば適宜採用し得るものである。
【0019】
具体的には、本実施例は、図1,2に図示したようにスケート靴本体20の底面前後位置に止着部材10(ビス)を介して取り付けられる板状の取付部1(ソールプレート及びヒールプレート)と、この各取付部1に連設される板状の連設部2’(支柱板)を備えた刃板部2とで構成されており、刃板部2の下縁部左右位置には、側断面視円弧状の溝を介した内外一対のエッジ2a(アウトサイドエッジ及びインサイドエッジ)が設けられ、刃板部2の先端部には山部と谷部が交互に連続するトウピック2bが設けられている。
【0020】
また、取付部1と刃板部2とは下記の金属材料の鋳造(ロストワックス精密鋳造)により一体形成されている。
【0021】

鉄98(Fe)重量%以上,炭素(C)0.17重量%~0.25重量%,シリコン・ケイ素(Si)0.1重量%~0.3重量%,マンガン(Mn)0.62重量%~0.83重量%,クロム(Cr)0.85重量%~1.25重量%及びモリブデン(Mo)0.13重量%~0.25重量%を含有した金属材料。
【0022】
実際に種々試したところ、下記の成分を追加配合しても耐久性に秀れた実用品として適することを確認している。
【0023】

リン(P)0.025重量%以下,サルファ(S)0.025重量%以下,ニッケル(Ni)0.2重量%以下及び銅(Cu)0.2重量%以下の成分。
【0024】
尚、本実施例では、取付部1と刃板部2から成るアイススケート靴用ブレードをロストワックス鋳造法により得ているが、これに限らず、例えば砂型鋳造法や消失鋳造法などでも良いなど、本実施例の特性を発揮する鋳造法であれば適宜採用するものである。
【0025】
以下、本実施例に係るアイススケート靴用ブレードの製造工程について図3に基づいて説明する。
【0026】
ロストワックス精密鋳造により鋳造製品を得る。
【0027】
具体的には、先ず、図面よりロウ模型用の金型を製作する。
【0028】
続いて、上記金型でロウ模型を製作する。
【0029】
続いて、上記ロウ模型に鋳造の際の湯道を設置(ロウ模型の組立)する。
【0030】
続いて、上記湯道が設置されたロウ模型に鋳型用セラミック材を塗布(コーティング)する。
【0031】
続いて、上記セラミック材が塗布された鋳型を湯道の開口が下となる逆さ状態とし、この状態で蒸気窯で溶かしてロウを排出させて除去(脱ロウ)する。
【0032】
続いて、上記セラミック材が塗布された鋳型を焼成(1000℃×1時間)する。
【0033】
続いて、上記焼成された鋳型に鋳造(1650℃の上記金属材料(溶融メタル)を鋳込み)する。
【0034】
続いて、上記鋳込みされた鋳型を自然冷却させ、ハンマーで叩いて崩壊させて鋳物を取り出す。
【0035】
続いて、鋳物の製品部を湯道から切り離す。
【0036】
続いて、製品部をグラインダーなどで仕上げる(鋳造で出来た穴(ガスホール穴など)を溶接(同じ材質の溶接棒)で埋めて、グラインダーで慣らしたり、バリや凹凸などを除去する)と、鋳造製品が完成する。
【0037】
次に、前述したロストワックス精密鋳造により得た鋳造製品を加工する。
【0038】
具体的には、先ず、複数の鋳造製品を熱処理炉(加熱装置)に入れて焼鈍(550~650℃)して空冷する。
【0039】
続いて、上記焼鈍した鋳造製品を矯正(プレス矯正で変形を補正)する。鍛造後は熱変形で曲がっている為、取付部1と刃板部2(連設部2’)とをT字状に整える修正と、エッジ2aを平らにする修正をプレスで行う。
【0040】
続いて、上記プレス矯正した複数の鋳造製品を熱処理炉に入れて熱処理(850~900℃)して油冷を行い(一次焼入れ)、更に、この一次焼入れした複数の鋳造製品を熱処理炉に入れて熱処理(800~850℃)して油冷を行い(二次焼入れ)、更に、この二次焼入れした複数の鋳造品を熱処理炉に入れて熱処理(150~200℃)して空冷を行う(焼戻)。
【0041】
続いて、上記焼入れ及び焼戻した鋳造製品の前面をニッケルクロムでメッキ処理(防錆目的)する。
【0042】
続いて、上記メッキ処理した鋳造製品の刃板部2における滑走面(底面)にエッジ2aを設ける刃付け研磨(専用機での砥石グラインダーで刃付け研磨)して完成する。
【0043】
本出願人は以上のようにして製造されたアイススケート靴用ブレードは、以下の強度を有することを確認している。
【0044】
引張強さ98kgf/mm以上
伸び15%以上
絞り42以上
硬さ(HRC35~45)
【0045】
本実施例は上述のように構成したから、取付部1と刃板部2とは金属材料の鋳造により一体形成されているから、例えば継続使用により取付部1と刃板部2との連設部位が破断したり変形したりせず強度及び耐久性に優れ、しかも、様々な形状(柄・模様・凹凸などの三次元形状)を簡易に形成することができ、量産性に秀れてコスト安に製造できることになる。
【0046】
また、本実施例の鋳造はロストワックス精密鋳造であるから、薄い板状の取付部1及び刃板部2を精度良く製造することができる。
【0047】
また、本実施例は、金属材料として、鉄98重量%以上,炭素0.17重量%~0.25重量%,ケイ素0.1重量%~0.3重量%,マンガン0.62重量%~0.83重量%,クロム0.85重量%~1.25重量%及びモリブデン0.13重量%~0.25重量%を含有した金属材料を採用したから、高強度のアイススケート靴用ブレードを製造することができる。
【0048】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0049】
1 取付部
2 刃板部
2a エッジ
20 スケート靴本体
図1
図2
図3